ゼレンスキー大統領、反転攻勢は「希望より遅い」
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR216VI0R20C23A6000000/
『ウクライナのゼレンスキー大統領は21日、反転攻勢の成果について「希望より遅れている」との認識を示した。ロシア軍は占領する南部ザポロジエ州など広い地域に地雷を敷設して防御態勢を固めており、軍事的な前進は容易ではないと強調した。
英BBCの取材に応じ「ハリウッド映画のようにすぐに結果を期待する人々もいるが、(現実は)違う。人命がかかっている」と述べた。「我々は戦場において最善と思う方法で前進を続けて…
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『「我々は戦場において最善と思う方法で前進を続けていく」とも語り、ウクライナ軍に迅速な成果を求める動きをけん制した。
ウクライナ軍の反転攻勢はロシア軍の頑強な抵抗を受けている。ウクライナのマリャル国防次官は21日に通信アプリ「テレグラム」において、ザポロジエ州の主要都市メリトポリや港湾都市ベルジャンスクに向けて攻勢を続けていると投稿したが、進軍のペースは鈍っている。20日には「前進は一歩ずつにならざるを得ない」と認めた。
ロシア軍は東部ドネツク州に戦力を集中し、攻勢を強めているもようだ。マリャル次官は21日、同州のリマンやバフムト方面で激しい攻防があり、ウクライナは防戦を続けていると明らかにした。ロシア軍はウクライナ各地へのミサイル攻撃も継続し、20日には南部ヘルソン州で少なくとも2人が死亡した。
ロシア国防省は21日、首都モスクワ郊外のモスクワ州でドローン(無人機)3機を撃墜したと発表した。電波妨害によりドローンは操作不能となり、墜落したという。ウクライナ政府によるテロ攻撃だと批判した。
一方、ウクライナ国防省のブダノフ情報総局長は20日、ザポロジエ原発に冷却水を供給する貯水池周辺に、ロシア軍が地雷を敷設していると主張した。欧州最大規模の同原発は、昨年2月のウクライナ侵攻開始直後からロシア軍に占拠されている。
クリメンコ内相はテレグラムに投稿し、ヘルソン州のカホフカダムの決壊による死者が21人に達したと公表した。うち5人はロシア軍の攻撃によって死亡したと主張した。
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上野泰也
みずほ証券 チーフマーケットエコノミスト
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ひとこと解説 ゼレンスキー大統領自らが、新たに入手した兵器を投入したウクライナ軍による対ロシア反転攻勢は、進捗が想定よりも遅れていることを認めた。(1)時間をかけて準備したロシアの三層構造の防衛ラインを突破するのにかなりの手間がかかること、(2)ダム崩壊で浸水した地域が広がってウクライナ軍の前進を阻んでいること、そして、(3)ロシア軍が強力な攻撃用ヘリ「Ka52」を投入していることが、攻勢進捗がはかばかしくない主な原因とみられている。ウクライナ軍は攻勢に投入できる部隊をまだ多数保持しているとみられるが、今回の攻勢で局面を劇的に転換させられる可能性は大きくないと、ドライにみるべきだろう。
2023年6月22日 8:11 』