起訴されて支持率上がるトランプ、大統領再選に近づいたのか?

起訴されて支持率上がるトランプ、大統領再選に近づいたのか?
https://wedge.ismedia.jp/articles/-/30585

『今回のテーマは、「トランプは有罪になるのか、それとも無罪になるのか? ーー2024年米大統領選挙への影響」である。ドナルド・トランプ前大統領は、意図的な国家安全保障の情報保持、司法妨害、文書と記録の隠蔽や工作などを含めた37の罪で、連邦大陪審に起訴された。

 ポルノ女優への口止め料を弁護士料として改ざんした罪で今年3月、ニューヨーク州マンハッタン地区の検事に起訴されたのに続き、2回目の起訴となった。ただし、今回の起訴は連邦レベルであり、有罪になった場合、罪が重い。

 トランプ前大統領は有罪になるのか、それとも無罪になるのか。評決の24年米大統領選挙への影響はーー。
6月13日、フロリダ州マイアミの連邦地裁に出廷した後、ニュージャージー州のTrump National Golf Clubに場所を移し、集会を行なったトランプ前大統領(REUTERS/AFLO)
トランプに有利に働く2回の起訴

 まず、2回目の起訴後の世論調査をみてみよう。2回にわたるトランプ起訴にもかかわらず、共和党支持者はトランプ支持で固まりつつあるようだ。

 米公共ラジオ(NPR)、公共放送(PBS)、マリスト大学(東部ニューヨーク州)の共同世論調査(23年6月12~14日実施)によれば、トランプ前大統領に対する捜査に関して、米国民の50%が、同前大統領が「違法なことをした」、23%が「道徳的に間違ったことをしたが、違法なことはしていない」、25%が「違法なことは何もしていない」と回答した。しかし、共和党支持者の50%がトランプ氏は「違法なことは何もしていない」と答えた。

 また、「トランプ大統領は大統領選挙から撤退すべきか、それとも継続すべきか」という質問に対して、全体で56%が「撤退すべき」、43%が「継続すべき」と回答し、「撤退」が「継続」を13ポイント上回った。ただし、共和党支持者の83%は「継続すべき」と考えている。

 さらに、「もしドナルド・トランプが選挙を継続するならば、彼を支持しますか」という質問に関して、共和党支持者の68%が「ドナルド・トランプを支持する」、29%が「他の共和党候補を支持する」と回答した。現時点で共和党内では主要候補が13人に達したが、これではトランプ氏に対して勝ち目はない。

 同調査によれば、2回目の起訴後、共和党支持者と同党に傾いている無党派層の間で、トランプ前大統領の好感度が上昇した。彼らの76%がトランプ氏に対して「好感が持てる」と回答した。23年2月の同調査では、トランプ氏の好感度は68%であったので、8ポイントアップしたことになる。

 共和党内では、2回の起訴はトランプ前大統領に有利に働いていると言える。
バイデン陣営の本音

 雑誌エコノミストと調査会社ユーゴヴの共同世論調査(23年6月10~13日実施)の結果も紹介しよう。同調査では、米国民の38%が2回目の意図的な国家安全保障の情報保持による起訴を「強く支持する」、14%が「やや支持する」と回答し、「支持」の合計は52%であった。一方、26%が「強く支持しない」、10%が「やや支持しない」と答え、「不支持」の合計は36%になり、「支持」が「不支持」を16ポイント上回った。

 ただし党派別にみると、民主党支持者は「支持」の合計が85%、無党派層は53%であったのに対して、共和党支持者はわずか17%であった。20年米大統領選挙においてトランプ前大統領に投票した有権者の中で起訴を「支持する」と回答した者は13%で、さらに4ポイント低かった。

 次に、米クイニピアック大学(東部コネチカット州)が6月14日に発表した世論調査結果を見ると、2回目の起訴後、共和党内の支持率においてトランプ前大統領がライバルのロン・デサンティスフロリダ州知事を30ポイントも引き離した。今年2月16日の時点では、トランプ氏がデサンティス氏を6ポイントリードしていた。同調査でも今回の起訴が、確実にトランプ氏の追い風になっていることが分かる。

 さて、どの世論調査を見て語ったのかは不明だが、米メディアは、2回目の起訴後に実施された調査結果を知ったファーストレディのジル・バイデン夫人が、ニューヨーク市のアッパー・イースト・サイドにあるマンションに集まった民主党支持者に、「彼ら(共和党支持者)は起訴を気にかけていません。少しショックです」と本心を明かしたと報じた。

 バイデン陣営は、2回目の起訴で共和党支持者がトランプ支持を再考し始めることを期待していたのかもしれない。ジル夫人のこの発言はバイデン陣営の本音だろう。』

『全てを知る人物

 起訴されたトランプ前大統領の裁判の行方に多大な影響を与える可能性が高い人物が2人いる。1人はトランプ氏の近侍ウォルト・ナウター氏(41)である。米メディアによると、グアムで生まれた元米海軍のナウター氏は、ホワイトハウスの食堂で働いたのち、執務室の近侍になった。その際、トランプ前大統領と接点ができたのかもしれない。

 ナウター氏は司法妨害、政府文書の隠蔽や米連邦捜査局(FBI)に対する虚偽の発言など6件の罪で起訴された。トランプ前大統領の指示で機密文書が入った箱を移動しているところが、セキュリティのカメラに写っていたと言う。また、FBIはナウター氏の携帯を没収し、トランプ氏との通話履歴を取得しているとも言われている。

 トランプ前大統領の機密文書保持について「全てを知る人物」と見られているナウター氏が、刑を減らし軽くするために、司法取引に応じて検察官に協力するのかが、今後の焦点になる。ただ、現時点(23年6月18日)で、同氏のトランプ前大統領に対する忠誠心が弱まっているという報道はない。
トランプ寄りの連邦地裁判事

 もう1人が裁判地となるフロリダ州南部連邦地裁のアイリーン・キャノン判事(42)である。保守派のキャノン判事は、トランプ前大統領によって任命された。

 裁判の経験が浅いキャノン判事は昨年8月、トランプ氏弁護団に対してFBIがトランプ氏の自宅マーラ・ア・ラーゴで没収した機密文書を綿密に調べる「特別管理人」の任命を認めた。その裏にはFBIの捜査を遅らせる意図があったとみてよい。

 トランプ氏弁護団は、裁判を引き延ばす戦略に出ることは明らかだ。キャノン判事は、トランプ氏弁護団の意向を汲んで、裁判の日程を決定するかもしれない。
トランプ有利の陪審員か?

 周知の通り、米国は陪審員制度を採用している。今回の裁判では、フロリダ州南部地区の市民から12人の陪審員が選任される。選任された12人全員が賛成しなければ、再審になる。トランプ支持者が1人でも陪審員になれば、トランプ前大統領が有罪になる可能性は下がるということだ。

 率直に言えば、その公算は高い。というのは、フロリダ州は保守化が進み、もはや激戦州ではないと指摘されているからだ。

 16年と20年の米大統領選挙において、トランプ前大統領はフロリダ州で、18年と22年の同州知事選では、デサンティス知事が勝利を収めた。有権者登録者数は、共和党が民主党を約47万人上回っている(23年4月30日時点)。加えて、キャノン判事が12人の陪審員選任のプロセスに影響を及ぼすのではないかという懸念があるからだ。』

『「トランプ無罪」と「トランプ有罪」の大統領選挙への影響

 裁判は、24年米大統領選挙期間中に終了しないという見方がある。しかし、仮に選挙期間中に「トランプ無罪」の評決が出た場合、選挙戦にどのような影響を及ぼすのか。

 トランプ前大統領が無罪になると、盛り上がりに欠けているバイデン支持者の士気が一気に高まり、皮肉にも彼らを投票所に向かわせることになる。さらに、無党派層や鍵を握る郊外に住む女性が、トランプ無罪の評決に疑問を持ち、トランプ前大統領に票を投じない可能性がさらに高まる。

 逆に「トランプ有罪」の評決が出れば、無党派層および郊外に住む女性は、有罪の大統領候補に投票しないとみてよい。おそらく、消極的にバイデン大統領を選ぶか、投票所に出向かないだろう。

 ということは、いずれにしても24年米大統領選挙の投開票日である11月5日までに評決が出れば、バイデン大統領に有利に働くと言えそうだ。

 ただ、有罪か無罪かの評決が出るタイミングが極めて重要になってくる。繰り返しになるが、裁判の日程を決定するのはキャノン判事である。となると、同判事は選挙期間中に裁判を終わらせないかもしれない。
トランプが大統領選挙で勝利したら……

 キャノンン判事が裁判を引き延ばし、その間にトランプ前大統領が大統領選挙で勝利したら、同前大統領はどのような行動に出るのだろうか。このケースも考えてみよう。

 大統領に就任すると即座に、トランプ前大統領が司法省を動かして、「トランプ起訴」を取り下げる可能性は否定できない。ただし、トランプ氏はバイデン大統領が独立機関である司法省に介入したと激しく非難している。仮に起訴の取り下げ命令を出せば、トランプ氏こそが司法省に介入したと反発を買うのは必至だ。

 では、トランプ前大統領が第47代大統領に就任して、自分に「恩赦」を出した場合、無党派層と民主党支持者はどのような反応を示すだろうか。もちろん彼らは「自己恩赦」に怒り、トランプ氏は非難を浴びることになる。米国社会の統一はますます困難になるだろう。

 選挙と裁判の交差点に立っているトランプ前大統領は、どちらの方向へ進めば有罪を逃れることができるのか、模索していることだけは確かだ。』