4月に並木書房から刊行された『武装商船「報国丸」の生涯』(森永孝昭氏著)は、読みでのあるおそろしい労作…。

4月に並木書房から刊行された『武装商船「報国丸」の生涯』(森永孝昭氏著)は、読みでのあるおそろしい労作…。
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『※4月に並木書房から刊行された『武装商船「報国丸」の生涯』(森永孝昭氏著)は、読みでのあるおそろしい労作で、改めて学べることに満ちている。

戦後78年を閲し、わが国の兵器メーカーは、実戦の被弾損害を暗黙知としてもちあわせなくなった。

そこは是非、戦後日本人の開発関係者としては、先の大戦の経験をデータ化することで、埋め合わせるしかないんだという自覚をもつべきなのだが、遺憾千万にも、その自覚が希薄なのである。

もしその自覚があるなら、被弾すれば悲惨な結果になるのは必定の《欠陥兵器》がず~っと改修もされないで、用途廃止の日が来るまで放置されるなんてこともあり得ないのである。

いったん「正式の制式」と決めてしまった「仕様」を後から修正できないという文化的な病気がわが国の風土病としてあるのならば、なおさら、「正式の制式」を決めてしまう前に、「先の大戦の経験データ」を「悪魔の論駁人」とする想像力が発揮されなくてはならない。

1万439トンもあった優秀な武装商船(特設巡洋艦)の『報国丸』は、6341トンの空荷のタンカー『オンディナ』号を拿捕しようとして不用意に近づきすぎ、敵船の船尾に1門だけあった10.2センチ砲を1発喰らった。

それで搭載の零式水偵のガソリンが火を発した。

その水偵の搭載爆弾と中層甲板貯蔵の魚雷(味方潜水艦に補給する予定のもの)が火災の熱で相次いで誘爆。『報国丸』はインド洋で沈没した。

これが、世界の水兵がガソリンを嫌う理由である。

昔と違って、インジェクション方式とすればピストンエンジンを回すのにもJP5やJP8が使えるようになっているのに、今日の艦艇内に、わざわざガソリン発動機を置きたがる海軍は、どこにもない。』