ウクライナ戦争で中国への不信感を強める欧州

ウクライナ戦争で中国への不信感を強める欧州
https://wedge.ismedia.jp/articles/-/30561

『5月26日付の米ウォールストリート・ジャーナル紙(WSJ)に、Pancevskiドイツ特派員とMackrael記者が「ヨーロッパはウクライナ停戦を進めて西側を分断しようとする中国の試みをはねつける。欧州の高官は北京が正直な仲介者である能力を疑問視している」との解説記事を書いている。
(Albert_Karimov/gettyimages)

 ウクライナ戦争の停戦のために、キーウ、ワルシャワ、ベルリン、パリに派遣された中国の李特使は、欧州の米国の同盟国は自立すべきで、ロシアにその占領地域を保持させたまま即時の停戦を行うよう提案した。

 欧州高官はモスクワと緊密な関係をもつ中国が正直な仲介者となりうる能力を疑問視し、ロシア軍がウクライナから撤退するまで平和は不可能であると述べた。李と会った高官は「紛争の凍結はロシアが撤退しない限り国際社会の利益にならない。米欧を分断するのは不可能で、欧州はウクライナ支援を続ける」と李に述べたと言う。

 ウクライナ戦争は民主的西側と権威主義の中ロの対立の中心的前線になってきている。北京はロシアが西側の経済制裁の対象となる中、ロシアにとっての経済的生命線になっている。北京は大量のロシアのエネルギーを買い、軍民両用の半導体その他の電子部品の輸出をウクライナ戦争開始後、増やしている。

 習近平は3月にモスクワでプーチンと会い、両国は多くの「同じような目標」を持っており、協力と相互作用でこれらの目標を必ず達成すると述べた。欧州諸国は中国の和平計画とロシア支持は、北京は中立ではなく、ロシア寄りであることを示すと言っている。

 欧州は、以前は中国により柔らかい対応をしていたが、最近は経済安全保障と貿易で米国の立場に近くなり、中国への警戒心をもっている。

 米国は、中国の停戦の呼びかけを「ロシアの征服の承認になる」と言っている。欧州もロシア軍の撤退なしではウクライナの平和はないという事で米国とほぼ同調している。

 仏外務省は、フランスはウクライナの公正で永続する平和に中国は建設的な役割を果たしうると信じるとすると共に、ウクライナの主権と領土一体性の尊重の必要性を強調し、フランスと欧州連合(EU)は長期にわたりウクライナを支援する決意であるとの声明を出した。

 ポーランド外務省は「ポーランドは侵略国家ロシアとの2国間関係の強化に努めるとの北京の声明に懸念を持つ」と李に伝えたと発表した。

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 このウォールストリート・ジャーナルの記事は、ウクライナ戦争について和平をもたらすための中国のウクライナ、ロシア、欧州諸国への働きかけを報じたものである。』

『李中国特使の提案は、ロシアがウクライナ領土の20%近くを占領している現状をそのままにしたままで、まず停戦をしてはどうかというものであったようであるが、ウクライナにもウクライナ支援をしている欧州諸国にも到底受け入れられる提案ではなく、ウクライナと欧州諸国は明確に拒絶した。

 中国はこういう提案をすることで、ロシアの侵略とその成果を認める姿勢を示したが、これで仲介できると考えるのは中国の情勢判断能力に疑問を抱かせるものであると言わざるを得ない。さらに、今はウクライナが反転攻勢を加えようとしている時期であり、ピントの外れた仲介であると言わざるを得ない。

 主要7カ国首脳会議(G7広島サミット)の頃に、習近平は中央アジア5か国の首脳を招いて中国陝西省西安市で首脳会議を開催したが、そこではこれら5か国の主権と領土の一体性の尊重をうたいあげている。この姿勢とも大きく矛盾する提案である。

行き当たりばったりの国になった中国

 最近、中国は状況対応型で原理原則のない国になり、信用できない国であると思わざるを得ないことが多くなった。北方領土問題についても、1964年、毛沢東が日本の立場への支持を打ち出したが、最近それを取り下げ、日本の立場を支持することはやめると言った。立場を平気でころころと変えるような国、首尾一貫しない国を信用するのは大きな間違いにつながる。中国を不信の目で見ることが必要と思われる。 

 欧州側が李特使の考え方に強く反発したのは当然であり納得できるが、ウクライナ戦争とそれへの対応を見て、欧州の対中不信や姿勢はより厳しくなると思われる。そのこと自体は歓迎できることであろう。

 フランスは、今なお中国のウクライナでの永続する平和への役割がありうるとしているが、何を念頭においているのか、理解しがたい。マクロン大統領の訪中の際の共同声明、その後のマクロンの対露、対米姿勢、特に北大西洋条約機構(NATO)や台湾問題に関する発言等には、要注意である。』