失敗から学んだロシア軍、徘徊型弾薬でウクライナ軍の防空能力を制限か

失敗から学んだロシア軍、徘徊型弾薬でウクライナ軍の防空能力を制限か
https://grandfleet.info/us-related/russian-military-learns-from-failure-to-limit-ukrainian-air-defense-capabilities-with-loitering-ammunition/#comment_headline

『海外のディフェンスメディアは待望の反攻作戦が始まったザポリージャ州とドネツク州の状況を危惧しており、どうやら「徘徊型弾薬を使用した敵防空網制圧」と「Shahed-136やミサイルによる都市攻撃」が前線上空の力関係に影響を与えているらしい。

参考:Russia’s improved weaponry and tactics challenge Ukraine offensive
参考:Ukraine’s Armor Appears To Have A Russian Attack Helicopter Problem

現在のウクライナには選択肢がない前線上空のギャップ

ロシア軍は16日午前にウクライナ南部のムィコラーイウ州をShahed-136で、午後に北部のキーウをキンジャールをKalibrで攻撃したが、ウクライナ空軍は「Shahed-136を2機、キンジャールを6発、Kalibrを6発撃ち落とした」と発表、久々に飛来した全てのミサイル迎撃に成功した。

ただ海外のディフェンスメディアは待望の反攻作戦が始まったザポリージャ州とドネツク州の状況を危惧しており、中々興味深い考察を披露している。

米ディフェンスメディアは「15ヶ月間に渡る戦いでミスを犯したロシア軍は失敗から学び技術と戦術を改善してきた。ロシアは約1,000kmの前線に沿って厳重に強化された防衛ラインを築き、ウクライナ軍の優位性を相殺するため電子戦機器を改善してセンサーと通信を妨害し、2,000ポンド~3,300ポンドの爆弾を精密誘導が可能な滑空爆弾に作り替えてきた。ウクライナ軍の反撃はロシア軍の戦術的な変化により迅速な勝利を収めるのが困難になるかもしれない」と指摘。

出典:Vitaly V. Kuzmin/CC BY-SA 4.0

別のディフェンスメディアも「侵攻初期は散々だったロシア軍の航空戦力が戦場環境に適応し、前線近く重要な地域で空からアクセス権を獲得し始めている」と指摘し、この話を要約すると以下のようになる。

ハルキウ反撃は当該地域を守るロシア軍の戦力密度が異常に低く、防衛ラインの構築も疎かで、ウクライナ軍は地上配備型防空システム(S-300やBukなど)を反撃地域に移動、反撃部隊にも近接防空システム(Tor、Osa、Strela-10、Tunguskaなど)を随伴させて前線を上空をカバーしたため、ロシア軍は空の攻撃を有効に活用出来なかったが、どうやら「徘徊型弾薬を使用した敵防空網制圧」と「Shahed-136やミサイルによる都市攻撃」が前線上空の力関係に影響をもたらしているらしい。

Момент атаки российского дрона-камикадзе «Ланцет» на комплекс ПВО IRIS-T SLM. Момента удара не видно, но атаковали радар TRML-4D, который ценнее пусковой установки. По видео не скажешь, насколько серьезно он поврежден. Однако похоже, что его бросили под обстрелом. pic.twitter.com/ji5Iiqvnql

— IanMatveev (@ian_matveev) June 7, 2023

ロシア軍は前線近くでレーダー波を検出すると(大まかな)位置を割り出してLancetやKUB-BLAを発射、レーダー波を止めても徘徊型弾薬は視覚的に地上配備型の防空システムを攻撃してくる可能性があり、実際にIRIS-T SLMのレーダーがLancetの攻撃で損傷(6月頃/ヘルソン地域)したのが確認されている。

さらに部隊に随伴して頭上を守る近接防空システムもShahed-136やミサイルによる都市攻撃の阻止に駆り出されているため、固定翼機を阻止するため地上配備型の防空システムを前進させれば徘徊型弾薬に攻撃されるリスクが、回転翼機を阻止するため近接防空システムを前線に回せば都市攻撃(Shahed-136)を阻止できなくなり、このディフェンスメディアはロシア人ブロガーの指摘を引用して「現在のウクライナには選択肢がない」と述べているのが興味深い。

出典:U.S. Army photo by Sgt. Cesar Rivas

仮にF-16の提供が反攻作戦に間に合っていても、高度な防空システム(S-300、S-350、S-400)とMiG-31BMを搭載するR-37Mがカバーする前線空域でF-16が満足に活動できるとは考えにく、近接防空システム(アベンジャーやゲパルトなど)の供給が最も確実性の高い解決策と言えそうだが、直ぐにどうにかなる問題でもないためウクライナ軍にとって厳しい戦いが続くことになるだろう。

因みにウクライナ兵士はLancetについて「(価値の高い)目標が見つからないと陣地に対して自爆攻撃を行うため本当にクソ兵器だ」と述べている。

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※アイキャッチ画像の出典:ZALA AERO Lancet
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投稿者: 航空万能論GF管理人 米国関連 コメント: 61 』