米大ウクライナ研究所長「停戦はロシアに強化の猶予」
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB123NN0S3A610C2000000/
『米ハーバード大学でウクライナ研究所長を務めるセルヒ・プロヒ教授は12日、東京都内の日本記者クラブで講演した。ロシアによるウクライナ侵攻をめぐり「終結する唯一の道は、ロシアが徹底的に敗北することだ」と指摘した。停戦や暫定合意はロシアに武力の再強化の猶予を与えるだけだと主張した。
2022年2月に始まったウクライナ侵攻は現在も終結が見通せない状況が続く。一部にはウクライナが奪われた領土を妥協することが和平の近道になるとの主張もある。
これに対してプロヒ氏は「ロシアが将来再び侵略戦争を起こせない状況まで敗北させるべきだ」と強調。終結をめぐり「停戦や暫定的な合意はロシアにとっての時間稼ぎにしかならない」と述べた。
プーチン大統領をめぐっては、侵攻前に本人が執筆した論文に言及した。プーチン氏が「中世までさかのぼってロシアとウクライナの歴史を持ち出し、侵略を正当化した」と指摘。こうした思想は19世紀のロシア帝国に共通するものだとし、「旧ソ連の解体をなかったことにしたいという願望がある」と読み解いた。
「ウクライナは旧ソ連諸国のなかで数少ないスラブ圏だった」にもかかわらず、ソ連崩壊後は徐々に欧州連合(EU)陣営に接近。04年にウクライナで起きた民主化運動「オレンジ革命」が直接の契機となり、プーチン氏はウクライナの存在に危機感を抱くようになったと話した。
プーチン氏は核兵器の使用にも言及してウクライナや西側諸国を脅している。ただ米国が1945年、広島と長崎に原爆を投下した時代とは「世界の(核兵器に対する)見方が大きく変わっている」と指摘。もしロシアが実際に核兵器を使うことがあれば、欧米諸国だけでなく「中国やインドからも(国際社会で)つまはじきにされる」と見通した。
冷戦時代と現在の国際情勢の相違点については「米国が強大国ではなくなった」と指摘。「経済的にも政治的にも強くなったドイツと日本の役割が一段と大きくなる」と呼びかけた。
プロヒ教授は57年、当時のソ連生まれの歴史学者。ドニプロ国立大学を卒業後、カナダのアルバータ大学などを経て2007年にハーバード大学教授。12年よりウクライナ研究所長を務める。』