米沿岸警備隊、インド太平洋に巡視船追加配備へ
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN07CYK0X00C23A6000000/
『【ワシントン=中村亮】米沿岸警備隊のリンダ・フェーガン司令官が日本経済新聞の書面取材に応じ、年内にインド太平洋地域へ巡視船を追加配備する方針を示した。アジア各国の海上警備や違法漁業監視の能力向上を支援する狙いで、民間漁船や海警局の船舶を使って海洋進出を図る中国の「グレーゾーン戦略」に対抗する。
フェーガン氏は4日にシンガポールで閉幕したアジア安全保障会議(シャングリラ会合)に2年連続で出席した。…
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『フェーガン氏は4日にシンガポールで閉幕したアジア安全保障会議(シャングリラ会合)に2年連続で出席した。陸海空、海兵隊、宇宙軍を含めて、制服組トップに女性として初めて就き、沿岸警備隊を率いている。
フェーガン氏は「さらなる巡視船の監視活動や特別部隊を含めてインド太平洋における長年の活動を続けていく」と言及した。12月に米南部バージニア州ポーツマスを母港とする巡視船ハリエット・レーンをインド太平洋地域へ配置すると説明した。
沿岸警備隊は2021年、米領グアムに3隻の即応巡視船を新たに配備していた。24会計年度(23年10月から24年9月)の大統領予算教書にインド太平洋向けの即応巡視船4隻の取得に向けた予算が盛り込まれず、予算権限を持つ議会に復活を要請した。
沿岸警備隊は国土安全保障省に属し、漁船の違法操業や密貿易を監視したり、船舶内で起きた犯罪を捜査したりするための法執行機関だ。港湾のテロ対策や移民の取り締まりにも関与する。
フェーガン氏は「一国や一つの行政機関だけでインド太平洋が直面する課題に対処できない」と触れた。東南アジアで日本、太平洋島しょ国でオーストラリアと連携し、各国の沿岸警備隊の能力向上を支援する。日本との2国間協力についても、日本の海上保安庁や海上自衛隊との交流拡大を通じ「相互運用性を高められる」と訴えた。
中国が「グレーゾーン戦略」 漁船や海警局の船を駆使
米国が日豪と組んでインド太平洋地域に力を入れるのは、中国のグレーゾーン戦略に対応するためだ。中国は東南アジア諸国と領有権を争う南シナ海で海上民兵や漁船、海警局の船舶を駆使し、軍事衝突を招かない範囲で時間をかけて実効支配を強めてきた。
米軍が艦船を派遣して対応すれば、地域の緊張を高めるリスクがある。仮に中国漁船が異常接近してきても米軍は軍事力行使のハードルが極めて高く、法執行を担う沿岸警備隊の対応が望ましいとの見方が広がってきた。
米国と南シナ海で共同監視活動を計画するフィリピンのホセ・マヌエル・ロムアルデス駐米大使は5月、日本経済新聞の取材で両国の海軍ではなく、沿岸警備隊が監視活動を実施する可能性に触れた。「時間がくれば米国は(巡視船の)配備を増やすと想定している」と話していた。
中国の関与が頻繁に指摘される違法漁業の摘発はアジア各国が問題視している。フィジーのティコンドゥアンドゥア内務・移民相はシャングリラ会合の演説で、米中競争よりも差し迫った太平洋島しょ国の課題の一つに「違法かつ報告がなく無制限に行われる漁業」をあげた。
ブリティッシュ・コロンビア大のラシダ・スマイラ教授らは20年に公表したリポートで、世界の違法漁業は最大で年間172億ドル(2兆4000億円)にのぼると推計。アジアとオセアニア地域が計45%を占めた。海に囲まれた太平洋島しょ国は漁業への依存度が高いケースが目立つ。
フェーガン氏は違法漁業への対処などを念頭に「訓練担当チームは各国が排他的経済水域(EEZ)などを保護できる能力を身につけられるように海上の法執行やその他の特別訓練の提供に向けたしっかりとした配備日程を組んでいる」と強調した。』