独ショルツ政権、「暖房法案」で混乱 支持率は最悪水準
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『【ベルリン=南毅郎、フランクフルト=林英樹】ドイツで暖房規制案を巡り混乱が広がっている。2024年1月から新設の暖房システムに再生可能エネルギーの利用を義務付け、ガスや灯油など化石燃料の利用を原則禁止する内容だ。国民から設備投資の負担増に反発が強まり、ショルツ政権の支持率は最悪水準に急低下した。
「33年間、灯油の暖房を使ってきたが、来年以降は故障したら修理できなくなるかもしれない」。フランクフ…
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『フランクフルト郊外に住むロバート・シュナイダーさんは不安を募らせる。暖房の切り替えを業者に相談したところ、暖房の方式によっては1万4500〜3万1000ユーロ(約220万〜470万円)と高額な費用になることが分かったためだ。
ドイツで建造物エネルギー法案(通称「暖房法案」)が大きな論争を呼んでいる。24年1月以降に設置する暖房システムは、少なくとも65%の再エネ利用が義務化になる。4月中旬に閣議決定したものの、導入が拙速として議会でも議論が紛糾。環境意識が高いはずのドイツ国民からも批判を浴びる事態になっている。
国民が警戒するのは設備投資の負担増だ。ドイツでは国内4100万世帯のうち、およそ半分はガスによる暖房が占める。次いで灯油が25%だ。ウクライナ危機に伴う急激なインフレが長引くだけに、暖房法案の是非を巡って世論は揺れ動いている。
公共放送ARDがまとめた6月の世論調査では、ショルツ政権への満足度が20%と21年12月の政権発足以降で最悪水準になった。ウクライナ侵攻直後の22年3月には50%を超えていたのが、下落基調は止まらない。
政党別の支持率もじわり変わった。ショルツ首相が率いてきたドイツ社会民主党(SPD)は18%で、連立を組む環境政党の「緑の党」は15%に沈んだ。対照的に、極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」は18%と躍進。SPDに並ぶほどになった。
批判の矛先が向かうのは、暖房法案を主導してきた緑の党出身のハベック経済・気候相だ。ハベック氏は政治家別の支持率で首位争いを演じるほどの人気があったが、縁故採用を巡る疑惑で次官を事実上更迭するなどの不祥事も重なった。
ショルツ政権は同氏が率いるSPDと、緑の党、自由民主党(FDP)の連立政権だ。暖房法案を巡ってはFDPが「国民を不安にさせている」と法案見直しを訴えるようになった。
ショルツ政権が暖房システムに着目するのはドイツ固有の事情も大きい。寒くて長い冬を迎えるドイツでは、効率的な暖房システムの構築が脱炭素社会の実現へカギとなるからだ。
ドイツ政府は温暖化ガスの排出を実質ゼロにするカーボンニュートラルの達成目標を50年から45年に前倒しする方針を決定済みだ。欧州連合(EU)がめざす50年より早く構造転換が必要となる。
ドイツ政府は、電気で大気中や地中の熱を取り込んで圧縮し、つくりだした温水を家中に循環させる「ヒートポンプ」への切り替えを奨励する。ただヒートポンプは高価で、機器の盗難事件も起きるほどだ。
混乱は暖房業界にも及んでいる。ドイツの暖房メーカー、フィースマンは4月下旬、ヒートポンプを含む空調部門を、競合の米社キヤリア・グローバルに売却すると発表した。暖房の切り替え需要に対応しようとしたが、自社の資金力だけでは投資が追いつかないと判断した。
今回の混乱劇では、生活の安定へ現実問題を優先せざるを得ないドイツ国民の姿勢が改めて鮮明になった。「脱原発」が完了した今春には、原子力発電所の運転延長を求める世論が盛り上がった。
政権運営の混乱を前に、ショルツ氏は指導力を発揮できるのか。一部の世論調査では、次の国政選挙を控える25年までに政権が崩壊するとの回答が51%と過半に達した。
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