ウクライナのダム決壊、「渡河作戦」困難に 反攻に影響
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『【ウィーン=田中孝幸】ウクライナ南部ヘルソン州で6日に起きたダム決壊による洪水で、領土奪回に向けた本格的な反転攻勢を前に南部での戦況に影響が出ている。被災地域への支援の遅れへの懸念も広がる。ゼレンスキー大統領は7日、国際機関の動きの遅さに危機感を表明した。
国営ロシア通信によると被災したロシア支配下の当局者は8日、洪水で5人が溺死したと明らかにした。AFP通信によると、これまでに被災地域の約6千…
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『AFP通信によると、これまでに被災地域の約6千人の住民が避難を余儀なくされた。水没した地域の状況把握はいまだ難しく、実際の被災規模はこれを上回るとの見方が多い。
南部の広大な戦闘地域が被災したことで、すでに戦況への影響が出ている。ヘルソン州でロシア側が任命した当局者はダムの決壊による洪水でウクライナにとってドニエプル川の渡河作戦が困難になったと指摘。「軍事面では戦術的にロシア軍に有利な方向に進んでいる」と語った。
一方、米戦争研究所は7日に発表した戦況分析で、洪水により前線地域の地形が変化し、同川の東岸にあったロシア軍の防御陣地の多くが破壊されたと指摘した。衛星画像を基に、最前線にいた一部のロシア軍部隊は「洪水で撤退を余儀なくされた可能性が高い」との見方を示した。
西側各国からは被災地への支援の表明が相次いでいる。欧州連合(EU)のフォンデアライエン欧州委員長は6日、加盟各国と浄水ステーションやポンプなどの提供に向けた調整をしていると明らかにした。
ドイツ政府は5千台の浄水器と56台の発電機に加え、テントやベッドを供与すると発表した。フランスのマクロン大統領も7日、緊急援助を送ると表明した。
北大西洋条約機構(NATO)のストルテンベルグ事務総長は7日、ウクライナのクレバ外相と電話協議した。同氏によると、ストルテンベルグ氏はNATOの枠組みで人道支援を実施する意向を示した。
ただ、これらの支援の大半は復旧作業を後押しするものの、水没した家屋などに取り残された人々の救出には間に合わない可能性がある。水没地域の水位は週内は低下に向かわない見通しで、洪水で汚染物質が広範囲に拡散し、衛生環境も悪化している。
ロシアの支配下にある被災地での窮状はとりわけ深刻になっている。ゼレンスキー氏は7日、ツイッターへの投稿で「状況はまさに壊滅的だ。ロシアの占領者は人々をひどい状況に放置している。占領地域では救助も飲料水も医療活動もなく、どれだけの人々が死ぬかも分からない」と強調した。
赤十字国際委員会など国際機関からの支援が得られていないとも指摘した。「国際機関が直ちに救助活動に参加し、ヘルソン地域の(ロシア)占領地域の人々を助ける必要がある」と訴えた。8日にはヘルソン州の被災地域を訪れ、住民の避難や救助について現地の担当官と協議した。
援助機関の動きの遅さは、ロシアの占領当局との連携が極めて難しいことも背景にある。国際非政府組織(NGO)ワールド・ビジョンでウクライナ危機対応を担うクリス・パルスキー氏は「国際援助団体はロシア支配地へのアクセスを得られていない」と語る。
同州の州都ヘルソンの住民で、被災地域の支援に当たってきたワレリー・コマゴロフさん(32)は「現場で最も不足しているのは救助ボートだ」と語る。ヘルソン郊外の住宅地では8割が水没していると指摘。民間のボランティアが救出努力を続けていると述べたうえで「支援は早さが大事だ。この数日で物資が届かなければ多くの人命が失われる恐れがある」と訴える。
ダムの決壊は6日未明に発生。ウクライナとロシアの双方が相手側の攻撃の結果だとして非難している。トルコのエルドアン大統領は7日、ゼレンスキー氏、ロシアのプーチン大統領とそれぞれ電話で協議し、ロシアとウクライナ、トルコと国連などの専門家による国際調査委員会の設置を提案した。
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