「トランプ政治」継続か決別か 共和有力候補出そろう

「トランプ政治」継続か決別か 共和有力候補出そろう
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『【デモイン(米中西部アイオワ州)=坂口幸裕】マイク・ペンス前米副大統領が7日に2024年11月の米大統領選への出馬を表明し、野党・共和党の有力候補が出そろった。「トランプ政治」の継続か決別か――。乱戦の様相をみせる共和の候補者指名争いの論戦が本格化する。

「憲法より自らを優先させるよう求める人は再び米国の大統領になるべきではない」。ペンス氏は7日、中西部アイオワ州デモイン郊外のイベント会場で20…

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『ペンス氏は7日、中西部アイオワ州デモイン郊外のイベント会場で200人ほどの支持者を前に演説し、「元上司」との対決を宣言した。

演説でトランプ政権時代の功績を評価しつつ、21年1月の議会占拠事件を巡る前大統領の対応に話題を移すと厳しい非難に転じた。20年大統領選で敗れた前大統領が当時副大統領で上院議長を兼務したペンス氏に選挙結果を覆すよう要求し、同氏は拒んだ。

「トランプ政治」との決別か継続かが争点の一つとなる=AP

支持を期待するキリスト教右派が重んじる人工妊娠中絶への反対を明確にし、前大統領は考えを後退させていると決めつけた。前大統領は中絶の権利を制限する連邦法の支持を明言せず、各州に委ねるべきだとの立場をとる。

ペンス氏が抑えてきた前大統領に対する批判のトーンを強めた背景には、保守層の間で前大統領への不満が膨らんでいるとの読みがある。これまでは攻撃対象を議会占拠事件への対応に絞り、熱狂的な支持層を持つ前大統領への配慮をにじませていた。

フロリダ州のデサンティス知事=AP

南部フロリダ州のロン・デサンティス知事も5月24日の出馬表明後にアイオワを訪れ、中絶問題などを念頭に「彼はいくつかの問題で左派に寄った」と断言した。

アイオワは1972年から最初の党候補者指名争いとなる党員集会を開いてきた場所で、24年も各州の先陣を切って1月にも実施予定だ。選挙戦に弾みをつける初戦の勝利を各候補とも重視しており、前大統領やニッキー・ヘイリー元国連大使も現地に入った。

2月に予備選を開く予定の南部サウスカロライナ州はヘイリー氏が知事を務めたお膝元で、出馬表明の地に選んだ。前大統領とデサンティス氏もサウスカロライナと、同じく序盤戦の東部ニューハンプシャー州に足を運んだ。

前大統領とデサンティス氏の地元で大票田でもあるフロリダは16年と同じ日程なら3月中旬になる。3月上旬を見込む各州の予備選が集中する「スーパーチューズデー」までの戦いで水をあけられれば指名獲得は遠のく。

共和候補の政治コンサルティング会社「ファイアハウス・ストラテジーズ」のマット・テリル氏は「アイオワ州で勝てば勢いがついて知名度が上がり、党指名候補になる可能性はかなり高まる」と分析する。

前大統領と各候補の距離も展開を左右する。現時点で前大統領の優位は動かない。米リアル・クリア・ポリティクスによると前大統領の平均支持率は53%で、デサンティス氏が22%で続く。3位のヘイリー氏は4.4%、4位のペンス氏は3.8%にとどまる。

外交面では中国への強硬姿勢で各候補とも大きな差はない。違いが明確になっているのがウクライナ支援だ。前大統領は巨額支援の継続について言及を避ける。「欧州は努力せず、米国に頼っている。不公平だ」と提起し、欧州に負担増を迫る。

デサンティス氏は3月、一段のウクライナ紛争への関与は「(米国の)重要な国益」にならないとの認識を示した。ウクライナ支援の縮小を唱える共和支持層をおもんぱかったが、党内から批判も出た。

ペンス氏は支援の継続を訴える。「ロシアを撃退するまで必要な支援を続けるのは欧州での勝利と同時に、武力で国境線を引き直すのは許さないという中国へのメッセージになる」と明言。中国を「最大の経済的、戦略的な脅威」と位置づける。

ヘイリー氏も「ウクライナの勝利が米国の安全にとって最善の道だ」と話す。ロシアによるウクライナ侵攻を「領土争い」だと言及したデサンティス氏を「間違いだ」と断じた。
ニッキ-・ヘイリー氏は世代交代を訴える(米南部サウスカロライナ州)

共和の候補者は乱立する。ティム・スコット上院議員、東部ニュージャージー州のクリス・クリスティー前知事、南部アーカンソー州のエイサ・ハチンソン元知事も名乗りを上げた。候補者が増えれば反トランプ票が分散し、熱狂的な支持者を持つ前大統領に有利になるとの見方が広がる。

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前嶋和弘
上智大学総合グローバル学部 教授
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ひとこと解説 「アイオワ州デモイン郊外での出馬イベント」がポイント。宗教保守の多い「アイオワ州で善戦し、一気に」という狙い。同州の共和党予備選投票者とみられる7,8割は宗教保守。一方でその中には強いトランプ支持も少なくないため、どうなるか。
2023年6月8日 8:02いいね
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上野泰也
みずほ証券 チーフマーケットエコノミスト
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ひとこと解説ペンス前副大統領のトランプ批判は切れ味が鈍いものにとどまらざるを得ない。筆者がそう考える理由は2つ。まず、トランプ政権を副大統領として自らが支えたこと。立場上、この政権の実績を否定するわけにはいかない。今回の出馬表明では、トランプ氏が大統領として実現した成果に「感謝している」とも述べた。もう1つは、共和党支持者のうちかなり多くがトランプ支持だという事実。この人々から決定的に嫌われてしまうと、仮に何らかの理由でトランプ氏が指名争いから脱落する場合でも、ペンス氏が勝ち抜く可能性はほとんどなくなる。トランプ批判で舌鋒が最も鋭いのは「カミカゼ・クリスティー」ことクリスティー前ニュージャージー州知事か。
2023年6月8日 7:53 』