カナダ移民相「大量の移民受け入れ継続」 労働力補う
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN3001M0Q3A530C2000000/

『【ニューヨーク=大島有美子】カナダが移民の受け入れを加速する。ショーン・フレーザー移民・難民・市民権大臣が日本経済新聞の取材に応じ「労働者不足を補うため、今後も大量の移民を受け入れる必要がある」と述べた。医療や住宅など特に人手不足が深刻な産業分野に、移民を重点配置していく考えだ。
カナダは2022年に過去最高となる43万人の移民を新たに受け入れた。政府は25年に移民の受け入れ人数を21年より23…
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『政府は25年に移民の受け入れ人数を21年より23%多い年間50万人に増やす計画を掲げる。フレーザー氏は25年以降もこのペースを維持または上回るとの見方を示した。「カナダはより多くの移民を受け入れ続けるだろう」と述べた。
カナダが移民を増やす最大の理由は労働力不足だ。カナダの人口は4000万人弱だが22年4〜6月期には人口の2.5%に当たる100万人もの求人が発生した。フレーザー氏は「地域経済とその雇用を守るため、必要な労働者を集めなければいけない」と語った。労働力不足が続けば「税収でまかなう公共サービスの維持にも支障が出る」と懸念する。
人口動態の変化に伴い、必要とされるサービスが変わっていることも焦点だ。高齢化が進めば医療サービスの充実が不可欠となる。医療従事者のほか、住宅建設の人材も不足している。こうした課題解決のため「多くの移民を受け入れ続ける必要がある」。特に小規模な自治体では地元経済を守るために「長期間に及ぶ人材確保が必要」だ。
手は打っている。2022年に移民・難民保護法を改正し、カナダの経済的優先順位に基づき、受け入れる移民の属性を選択する権限を大臣に与えた。フレーザー氏は5月31日、医療、技術、農業、熟練工などで実務経験を持つ移民を重点的に受け入れる手続きを始めたと発表した。「特に人手不足が顕著で、その状態が今後2〜3年続く部門にした」という。
一方、不法移民に対しては厳正に対処する方針も示す。実質的に米国経由での不法移民を受け入れる状況につながっていた「安全な第三国」協定の内容を3月に見直し、不法移民対策を強化した。フレーザー氏は「弱い立場の人々を正規のルートで受け入れる」と説明した。
カナダ国内で移民受け入れに慎重な保守層への対応にも腐心する。「移民が社会問題を悪化させるのではなく、軽減させるのに役立ち、地域社会に利益をもたらすことを示す」。フレーザー氏は医療従事者などの重点的な受け入れ施策で、国内不安の払拭に努める。
カナダでは21年、人口の23%にあたる830万人以上を移民や永住者が占めた。1921年の22%を上回り過去最高の割合となった。2016〜21年にカナダに新たに来た移民のうち、最も多かったのはインドで、全体の19%を占める。フィリピン(11%)、中国(9%)が続く。
高度な技術人材の受け入れを強化しているため、アジアの移民に占める存在感が高まっている。近年は中国による統制が厳しくなる香港からも人気の移民先となっており、カナダ政府も受け入れを加速させる施策をとっている。米国のトランプ前政権が高度人材の移民の受け入れを制限したことで、カナダに流れたという事情がある。
高齢化が進み、出生率が下がるなか移民は人口増の原動力となっており、今後さらに移民の占める割合は増える見通しだ。同国の移民政策は高齢化と人口減に直面する日本にも示唆に富む。
Sean Fraser 21年から現職。政界に入る前は弁護士として国際紛争解決などに携わった。自身もスコットランドからの移民にルーツを持つ。39歳。』