ケニア財務相、東アフリカの統合加速 7カ国で単一通貨
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCD282CQ0Y3A520C2000000/




『2023年5月29日 20:27
ケニアのヌジュグナ・ヌドゥング財務・計画相は、ケニアやタンザニア、ウガンダなど7カ国で構成する東アフリカ共同体(EAC)の枠組みで経済統合を加速する考えを表明した。日本経済新聞社のインタビューに応じた。アフリカ各国は物価高や通貨安に直面し、インド太平洋地域との貿易拡大や天然資源の有効活用で経済のテコ入れをはかる。デジタル金融決済の増加をふまえ、東アフリカで単一通貨の導入を進めると語った。
ヌドゥ…
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『ヌドゥング財務相は「東アフリカはインド太平洋に面する立地や豊富な天然資源、再生可能エネルギーの普及で優位性がある。資源の利用やブルーエコノミーを考えれば最も豊かな地域だ。アフリカは大きすぎ、54カ国での調整は非常に難しい。EACの7カ国の経済統合を加速する」と述べた。
EACはケニア、タンザニア、ウガンダが2001年に本格的に立ち上げ、財やサービスでの関税同盟、ヒト・モノ・資本の自由移動に取り組んでいる。07年以降にルワンダ、ブルンジ、南スーダン、コンゴ民主共和国が新規加盟した。
東アフリカの「玄関口」に
財務相は「コンゴや南スーダンには豊富な天然資源があり、ウガンダやタンザニアの農業生産の潜在力は非常に高い。経済統合によってこれらの生産地とケニアのモンバサ港などの海岸線がつながり、鉱物資源や農産品の輸出を効果的に拡大できるようになる」と強調した。鉱物加工や食品産業の育成を通じて後背地である内陸部の経済発展も見込めるとした。
アフリカは域内での貿易比率が極めて低い。国連貿易開発会議(UNCTAD)によると、欧州の68%、アジアの58%に対してアフリカは12%にとどまる。道路や鉄道などのインフラが未整備なこともあり、広大な内陸部にある国が海上輸送にアクセスするのは難しい。財務相は経済統合の利点を指摘すると同時に、日本が協力するモンバサの経済特区や道路の整備が「東アフリカのゲートウエーであるケニアが輸出ルートを確保するうえで極めて重要だ」とも述べた。
さらに「経済統合には国境を越えた金融決済が極めて重要になる。ケニアではモバイル金融が革命的なプラットフォームになっており、クロスボーダーの決済を推進するためにEACでは単一通貨の導入に向けたロードマップを策定している」と語った。ケニアの通信会社が運営するモバイル金融システム「M-PESA(エムペサ)」は利用者が約4000万人に上るとされる。単一通貨の導入は加盟国の国境を越えた決済を拡大するとともに、通貨の信用力の補完も期待できる。財務相は「自国の通貨の信頼維持だけを考え、周辺国に悪影響を与える政策は採るべきではない」とした。
グリーン水素を対日輸出
再生エネの電力だけでつくる「グリーン水素」の日本への輸出に期待を示した。ケニアは地熱や水力、風力に恵まれ、総発電量の約9割を再生エネでまかなう「脱炭素大国」。天然資源の持続可能な利用とグリーン経済への移行が将来の経済成長を支えるとの考えを示した。
ケニア経済は厳しい状況が続く。ケニヤッタ前大統領が中国との関係を深め、インフラ開発事業に絡む中国からの債務が増大した。資金流出による通貨安も響き、今年3月の物価上昇率は9.2%に達した。
22年に就任したルト大統領が経済改革に取り組んでおり、財務相は物価抑制などの経済運営に「自信がある」としたうえで「ピラミッドの底辺にいる人々に焦点を当て、適切に資源を配分することで経済発展の勢いを生み出す」と語った。投資誘致や輸出拡大によって農産品加工などの産業を育成し、幅広い雇用の創出を目指す考えを示した。また、深刻な干ばつに見舞われるなど「気候変動に関連する供給ショックに振り回されている」と指摘。気候変動対策の開発支援の重要性を訴えた。
「法の支配」支持、中立は取らない
グローバルサウス(南半球を中心とする新興・途上国)の一角であるアフリカでは西側陣営ともロシアや中国とも付き合いながら、一定の距離を保つ国が多い。これに対して財務相は「ケニアは中立的な立場は取らない。国際的な法の支配を強く支持し、国家主権を尊重する立場だ」と明言した。
軍と準軍事組織「即応支援部隊(RSF)」の対立が続くスーダンについては戦闘の終結を支持していると述べた。「われわれは平和の配当に大きな投資をしている。アフリカでは天然資源の配分をめぐる紛争が多いが、貿易拡大や経済成長で大きなケーキを作るようにすれば、小さなケーキを奪い合う紛争は少なくなるはずだ」と強調した。
(聞き手は編集委員 下田敏)
グローバルサウス 』