中国はロシアへの兵器提供を「自制」できるのか

中国はロシアへの兵器提供を「自制」できるのか
https://wedge.ismedia.jp/articles/-/29716

『2023年3月2日付の英エコノミスト誌が、ウクライナの戦争でロシアを支援するため殺傷兵器を中国が供与するかについての記事を掲載し、中国は目下のところ慎重に構えているが、ロシアが戦場で苦境に立つ時、中国の辛抱が試されることになろうと述べている。

 ロシアはウクライナへの侵略で戦車を含む9400台以上の装備を失った。ロシアには弾薬が不足している。もし、中国がロシアに兵器を提供することになれば、戦争の趨勢を変えることになろう。また、中国と欧米との関係に深刻な危機の引き金となろう。

 2月23 日付の独シュピーゲル誌はロシア軍が中国企業から攻撃型ドローン100機を買いつけるために交渉していると報じた。2月24日、米ワシントン・ポスト紙は、中国は砲弾のロシアへの供与を考慮していると報じた。

 中国は世界第4位の兵器輸出国であり、7つの中国企業がトップ20の防衛企業に入っている。これは米国に次ぐ2位である。

 ウクライナ戦争はロシアとの防衛関係をリバランスさせる機会を中国に提供するかもしれない。長い間、中国はロシアの軍事技術を輸入し、模造品を作ってきた。2017~21年の間の防衛関係輸入の81%はロシアからであった。中国の最新ステルス戦闘機のエンジンもそうである。

 中国はロシアに、ドローン、巡航ミサイルなどの精密兵器を提供し、見返りに、宇宙への打ち上げに(潜在的には弾道ミサイルにも)使われるロシアのロケットエンジンの技術を望むかもしれない。潜水艦技術やジェットエンジンも魅力的な候補となろう。

 中国の指導部は割れている。ロシアのウクライナ侵攻に先立つ数週間前、中露両国は「限りない」友好を祝った。中国には米国のエネルギーをインド太平洋から欧州に振り向けさせるとの考えを好む向きもある。

 しかし、自制する理由もある。ロシアによる戦争を支援することは中立的な仲介者という中国の装いを破裂させる。それは、米国との関係に毒を盛り、欧州の反発を誘発する。

 目下のところ、中国は慎重に構えている。2 月 24日、バイデン大統領は「ロシアに対する兵器の提供を中国がすることは予期していない」と述べた。もし、この春あるいは夏に、戦場でロシアの地位が絶望的となれば、中国の辛抱は強烈な圧力に晒されるであろう。

*    *    *

 中国がロシアに対する殺傷兵器の支援に踏み切れば、それはウクライナ戦争の帰趨を左右し得るインパクトを持つであろう。イランや北朝鮮による支援の比ではあり得ない。米国をはじめとする西側が警戒するのは当然である。

 2月19日にテレビ番組でブリンケン米国務長官は、中国はロシアに弾薬を含む殺傷兵器を提供することを検討しているとの情報があると述べ、ミュンヘンで会談した王毅国務委員に対し、その場合には「深刻な結果(serious consequences)」を招くことを警告したことを述べた。

 2月20日、中国外交部の報道官は「戦場に武器を流し込んでいるのは米国であって、中国ではない。米国は中国にどうすべきかを指図し得る立場にない」と述べ、ロシアとの関係についてあれこれ言われることは容認しないとの趣旨を述べた。』

『上記のエコノミスト誌の記事によれば、ロシアと中国の間の議論の焦点は砲弾にあるようである。ウクライナの戦争は主として砲撃の応酬で戦われている。双方とも大量の砲弾を急速に消費しており、ロシアの砲弾は恐らくほぼ払底していると見られている。

 中国にはソ連時代の砲に適合する砲弾の在庫があり、中国の支援が得られれば、この先、戦況を左右すると見られる春・夏の攻防において、ロシアにとって大きな助けになるであろう。
中国を「自制」させ得る要因とは何か?

 中国は殺傷兵器の支援を決めた訳ではないようである。中国は慎重に構えているというのがこの記事の見立てである。しかし、中国に自制を促すものがあるとすれば、それは何か。

 人民解放軍の職歴を有し現在は中国の清華大学戦略安全保障研究センター(CISS)の上級フェローであるZhou Boが英フィナンシャル・タイムズ紙(FT)に一文を寄稿し、中国は中立を貫く、兵器をロシアに提供することはあり得ない、ロシアとの関係がいかに緊密であろうと同盟ではない、ウクライナ戦争で中国がロシアの側に立てば、第三次世界大戦の幕開けとなるなどと述べ、中国が戦争の終結に向けて建設的役割を果たすことを強調している。

 ここに描かれているのは、政権が世界に喧伝したい建設的役割を果たす中国の姿であろうが、それが、中国の自制の要因であり続けるかとなると心許ない。この記事が指摘するように、米欧との関係悪化も自制の理由の一つには違いなかろうが、どれほど強い理由たり得るかとなると疑問が残る。

 いずれにせよ、今後も引き続き警戒を要する。ロシアが戦場で苦境に立つ場合がある時、中国は決定的な選択を迫られるであろう。』