イタリア新首相の静かな船出、効いたドラギ氏の戒め
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR07D0E0X01C22A1000000/
『10月に発足したイタリアのメローニ新政権が堅実な政権運営をみせている。極右「イタリアの同胞(FDI)」の党首として反移民などで過激な発言を繰り返したメローニ氏のかじ取りには欧州内で不安視する向きがあったが、これまで財政、外交など主要政策でドラギ前政権を踏襲する方針を示している。穏健路線への修正の舞台裏には、去りゆくドラギ前首相の働きかけもあったようだ。
10月23日、ローマの首相官邸で開かれた新旧首相の引き継ぎ式。通常は新首相へベルを渡すという形式的なものだが、その前に密室で行われた会談は異例の90分にわたった。
イタリアメディアによると、欧州中央銀行(ECB)前総裁として市場の信認が厚かったドラギ氏はメローニ氏に債務問題やインフレ対策などの詳細を懇々と説明し、こう打ち明けた。「私の首相就任時は、新型コロナウイルスのパンデミック最盛期だった。ここの前でもデモが起こっていて、社会的結束(が崩れること)を心配した。だから私は広場に緊張が起きないようにできるだけのことをした」
イタリア政府は同国の2023年の実質経済成長率が0.6%に減速すると予測している。ロシアのウクライナ侵攻を受けたエネルギー価格の高騰もあり、マイナス成長に陥るとの見方も広がる。ドラギ氏の発言は「厳しい局面になるのだから過激な言動で事を荒立てることを控えるべきだ」というアドバイスだったのは間違いない。
メローニ氏は就任後、これにおおむね従っているようにみえる。会談後の閣議では閣僚たちに「言葉は少なくてよい。最善を尽くそう」と強調。25日の下院での所信表明演説では財政拡大を伴う公約の一部の先送りにも言及した。
外交面でも「欧州で孤立してはならない」と訴えたドラギ氏のアドバイスを尊重しているようにみえる。最初の外遊先には欧州連合(EU)本部があるブリュッセルを選び、「反EU」として知られた自身への不信感の払拭に努めた。閣僚人事でも外相に欧州議会の議長を経験した親EU派のタヤーニ氏を起用した。
市場はメローニ氏の穏健路線をおおむね評価している。イタリアの代表的な株価指数であるFTSE MIBは持ち直し、9月下旬の総選挙直後に比べると2割高の水準で推移している。
今後は極右「同盟」など連立相手の強硬路線を抑えられるかが焦点となる。同盟を率いるサルビーニ副首相は「反移民」の立場から地中海の移民救助船の受け入れ拒否の決定を主導。穏健路線に傾くメローニ氏を揺さぶり、同船の受け入れを求めたフランスとの関係悪化ももたらした。
(ウィーン=田中孝幸)
日経ヴェリタス https://www.nikkei.com/theme/?dw=20062208 』
