長期化するウクライナ戦争 露わになるプーチンの誤算
岡崎研究所
https://wedge.ismedia.jp/articles/-/28074
『フィナンシャル・タイムズ紙は、「プーチンの諸々の誤算(Vladimir Putin’s catalogue of miscalculations)」と題する社説を9月17日付で掲載している。社説の主要点は次の通り。
・ハルキウ地方でのロシア軍の敗走は、ロシアの大きさと軍事力が、より小さなウクライナを簡単に制圧でき、ウクライナ人はロシアを「解放者」として歓迎するとのクレムリンの間違った期待を再度際立たせた。
・同地方での敗走は、それまで投入した兵力をキーウ周辺と北部から同地に振り向ければ、総動員なしでも東部ウクライナ全域を占拠、保持できると考えたモスクワの過ちを明らかにした。
・西側諸国が彼ら自身の経済をも傷つける対ロシア制裁に対し意欲を欠き、西側の団結は早く壊れ、キーウに戦争をやめるように圧力をかけるという前提も誤りだった。プーチンは欧州への天然ガス供給を急激に減らしたが、欧州連合(EU)各国間に相違は残るものの、共同の準備と衝撃緩和のための大きな前進が見られた。
・西側の協調した反対姿勢は、非西側諸国、特に中国が米国中心の国際秩序に挑戦するという共通の利益のために味方になるとの、プーチンのもう一つの前提についても、後退を余儀なくさせた。
・上海協力機構会議で、習近平はウクライナ戦争への「疑問や懸念」をロシアに伝えるとともに、カザフスタンに対し「いかなる勢力の干渉」(注:ロシアの干渉が最もあり得る)に対してもカザフスタンの主権と一体性を守ると述べた。
・同じくインドのモディ首相は、今は「戦争の時期ではない」と述べ、公にウクライナ侵攻を批判した。
・プーチンの誤算は西側民主主義国には朗報であり懸念材料でもある。これまでの多くの誤算は、プーチンがウクライナでより広い敗走に直面した場合、今後の彼の決定も賢明であるとは信頼できないことを示すからだ。
この社説は、ウクライナ戦争についてプーチンが多くの誤算を重ねてきたことを指摘している。これらの指摘はかなり当たっていると言ってよい。
まず、プーチンは、ウクライナ側の抵抗を過小評価した。ゼレンンスキーはウクライナ東部でロシアから奪還した領土を訪問した際に、今でもプーチンはロシア人とウクライナ人とは一つの民族と考えているのかと皮肉っている。
西側諸国の対応についても、見誤ったと言える。
サマルカンドでの上海協力機構会議での習近平の対応とモディの批判は、プーチンにはかなり厳しい印象を残したのではないかと思われる。特に習近平がカザフスタンのトカエフにカザフスタンの主権と一体性を支持すると述べたことは重要である。
プーチンはウクライナ侵攻直前にルハンスク、ドネツク人民共和国の独立を承認したが、トカエフはこのロシアの承認行為を認められないとしてきた。カザフスタン北部のロシア人居住地の分離独立は受け入れられないと意思表示しているわけで、それを習近平が支持したことは大きな意味を持つ。』
『プーチンはこの首脳会議の後、ウクライナ東部全域を解放するまで特別軍事作戦を続けると言っているが、これはキーウ攻略とウクライナ全土の傀儡政権による掌握はもうあきらめたことを示している。
戦争の流れはウクライナの側に有利になって来ていることは否めない。
国内反発を受ける動きも
プーチンは国内のタカ派から総動員令の発布を求められ、9月21日に予備役の部分動員令を発した。ショイグ国防相によれば、予備役約30万人を段階的に招集するとしている。しかし、ロシア国民の反発はかなり強く、抗議デモが起きたり、招集から逃れようとする若者たちがロシアから出国するなどといった事態が起きている。
また、プーチンは、ハルキウでの敗走は自分に責任がなく参謀本部の責任であるとするなど、最高司令官としての責任感に欠ける発言も見られる。
今後のウクライナ戦争にはまだ紆余曲折はあろうが、プーチンが当初考えた戦争目的、ウクライナを国家としてなきものにし、ロシアに統合するとの目的を達成することはできないことは既に明らかであると言える。』