EUという巨大な官僚機構 : 机上空間
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『今、欧州の各国で、指導者がリベラルから保守に切り替わっています。直近で話題になったのが、イタリアの政権交代です。それによって、確定ではありませんが、連立与党側でジョルジャ・メローニ氏を首相に立てると思われます。この方は、学生時代にムッソリーニの考え方を支持していて、ネオ・ファシスト党である「イタリア社会運動」の青年部に所属していた事もあるので、「極右」と表現される事が多いようです。
ただし、現在、所属している「イタリアの同胞」は、中道右派であり、バリバリの右派とは距離を置いています。青年時代に極端な思想に走るのは、生真面目に政治を考える人には、ありがちな事で、一つの考えで全ての問題が解決できない事が理解できると、自然と極端な思想からは遠のきます。
ウィンストン・チャーチルが言ったとされる言葉で、「二十歳までに共産主義にかぶれない者は情熱が足りないが、二十歳を過ぎて共産主義にかぶれている者は知能が足りない。」というものがあります。つまり、その時々の人生経験や心の置き方で、思想などというものは、ブレて当然という事です。
ちなみに、この言葉をチャーチルが言ったという史実は無く、捏造です。ただ、言葉自体は、短く趣旨を伝えるという意味で使い勝手が良いですね。
イタリアの事情として、日本以上に細かい政党が多いので、政権を組む時には、連立しないと成立しません。なので、今回の選挙で勝った右派連合の中には、それこそ「極右」もいれば、「中道保守」もいます。その中で、一番得票したのが「イタリアの同胞」で、メローニ氏は、そこの党首なので首相に就任するだろうという話です。
イタリアは、経済状況が「かなり」ヤバイのですが、大きな期待を受けて首相に就任した前任のマリオ・ドラギ氏が、結局財政を更に悪化させた為、その反動で今回の選挙で右派が勝った形です。
ちなみに、ドラギ氏は、前欧州中央銀行総裁(つまりユーロ通貨を管理する銀行)、その前はイタリア銀行総裁と、金融畑を歩いてきたスーパーエリートで、欧州債務危機の時にユーロの崩壊を防いだ立役者として、「スーパーマリオ」と渾名が付く辣腕を振るった人です。それでも、現在のイタリア経済を立て直すのは難しいという事です。
この原因とされているのが、EUと各加盟国の経済の二重構造です。EUは、組織全体の経済価値を担保する為に、各国に財政の健全化を義務付けていて、各国独自で突出した財政出動などの思い切った経済政策を打てなくなっています。
その為、いかに優秀な人物がリーダーになっても、EUという制限がある為、その枠組みの中でしか政策を実行できず、劇的な改善は望めなくなっています。基本的には、経済が沈む中で、親EU派が敗北して保守派が各国で台頭してきている理由です。
他に保守系が勝利して政権交代が起きる国としては、ポーランド、スウェーデンなどがあり、フランスのマクロン大統領も再戦を果たしましたが、与党が過半数割れをするなど、保守が勢力を強めています。
政権交代までいかなくても、重要な選挙区で保守が躍進する例が増えており、EU離れが現象として目立っています。
以前にもブログで取り上げた事がありますが、根本的な原因は、EUが加盟各国のエリート選抜による巨大な官僚組織であり、そこで「正しい」政治が決められてしまう事に問題があります。
ちなみに、EUには、選挙で選出された議員が所属する欧州議会という組織もありますが、各国の国会のように大きな権限を持っていません。殆どは、EUに所属する官僚が決定します。この議会は、立法権は持っているのですが、法案の提出権を持っていないので、おおまかな方向は決められても、実務適用される細かい法律はエリート官僚まかせです。そして、その官僚達は市民に選ばれたわけではなく、各国から選抜されたエリート達です。
その為、地域の特殊な事情や、慣習、文化を無視して、一律適用でEU基準を強要するので、各地で大きい軋轢を生んでいます。特に、野菜の形による等級分けなど、EU経済圏全体で流通する事を前提で、かなり細かいところまで規定していくので、その必要がまったく無い地域でも、基準が適用されて、価格が変わったりします。
そういう意味で、EUは加盟国の体制がどうであろうと、EU自体は巨大な社会主義国と言えます。
この緩やかな全体主義が、大きな経済問題や難民問題を抱える加盟国において、親EU派が勢いを無くしている原因です。
余りにも思想的に均された基準が、生活のあらゆる場面で適用されるので、それ自体が実害を引き起こしているのです。例えば、自動車保険において、運転する機会が多い営業マンと、運転する機会の少ない専業主婦で、保険の賭け金が違うというのは、事故を起こす可能性の差から当たり前に行われていますが、EUですと、「男女平等」という事から、賭け金に差をつける事が禁止されています。それゆえ、買い物ぐらいにしか使わない女性も、高い賭け金を支払わないといけなくなっています。
EUの面倒くさいところは、経済活動に対して、いちいちLGBTQなどの思想的な判断を引っ張りだして来ることで、場合によっては経済の効率を妨げている点です。
しかし、これが、「正しい政治」とEUが判断すれば、加盟国は従う義務があります。脱炭素やガソリン車からEVへの転換なども、各国の事情を無視して、目標だけ決めてしまうので、可能な国はどんどん進めていますが、それどころじゃない台所事情の国は多いです
そして、巨大官僚国家というのは、ロシアや中国を観察していると判るのですが、一度方針が決まると、目標数値を達成するまで、ゴリ押しします。
失敗を認めて軌道修正するのは、EUに出てくる程のエリートにとっては苦痛でしかないので、例え民主国家出身の人材でも、官僚という組織に属した途端に、定めたゴールに向かって脇目も振らずに進むのが正しい事になりがちです。
それゆえ、経済的に自立しているところから、EU離脱を始めるわけです。
イギリスは、自国通貨のポンドを国民投票でユーロに替えなかったので、離脱する事ができました。また、没落したとはいえ、一時期は世界帝国を作った国家ですから、世界中に飛び地で、イギリス王室直轄領・イギリスに属する自治領を所有しています。そして、その多くがタックスヘイブンで、裏経済を仕切っていたりします。
イギリスの経済基盤は、表で見えているだけではなく、公にできない裏経済もあります。そこでは、合法・非合法・国連決議に関係無く、売り手と買い手がいれば、あらゆるものが取引されています。他の国では、こうはいきません。
ロシアのウクライナ侵攻で、結束が試されているNATOと、大きな枠組みとしてのEUですが、実は内部崩壊の種も、ずいぶん前から抱えています。』