追い詰められたプーチン政権 独裁強化か崩壊か
欧州総局長 赤川省吾
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR050PP0V01C22A0000000/
『ウクライナの戦場で劣勢に立たされたプーチン政権の先行きは2つのシナリオが考えられる。独裁強化で国内の不満分子を徹底的に弾圧するか、クーデターなど身内の反乱による政権崩壊か。近くロシアは岐路を迎える。
核兵器で脅すロシア。まず核実験で国際社会の反応を探るとの見方がある。
核兵器は抑止力であって使うべき軍事力ではない。廃止するのが理想的。侵略戦争において核のボタンを押すのは言語道断だ。
ウクライナは動じない。ゼレンスキー大統領は停戦交渉に応じる構えをみせず、ロシアが一方的に併合を宣言した地域に猛攻撃をかける。
高まる核リスク。ところが欧州は米国と足並みをそろえて武器供与を続ける。ロシアは極右が勢いを増すイタリアなど「弱い輪」につけ込もうとするが、いまのところ欧州勢にウクライナをなだめすかし、ロシアとの停戦を強いる動きはない。そんなことをすれば核の脅しに屈してウクライナにロシアへの領土割譲を迫る形になってしまうからだ。「ロシアが核を実戦で使う可能性は低い」との判断もある。
日本で思われているより欧州のウクライナへの連帯感は強い。欧州連合(EU)はウクライナを「加盟国候補」にした。「ウクライナは仲間」という政治メッセージを発したのだ。もう後戻りはない。
ロシアは厳しい。部分動員令で戦力を増やしても「せいぜい戦線を膠着させるだけ。反転攻勢の余力はないだろう」と欧州の国防関係者は取材に口をそろえた。
苦戦が続くプーチン大統領は国内の批判を抑え込むしかない。責任を軍高官になすりつけ、ショイグ国防相を更迭。一方、古巣の情報機関をフル活動させ、反乱の芽を摘む――。そんな噂が駆け巡る。
独裁強化で耐え忍び、西側の自壊を待つ戦略だ。スタグフレーション(インフレと景気後退の併存)による経済疲弊と、2024年の米大統領選での「トランプ復活」に賭ける、というわけだ。
ウクライナの攻勢で、ロシア軍が2月の軍事侵攻前の戦線も維持できなくなれば「独裁強化による持久戦」も難しくなる。ロシアにとっても得るものがなく、大勢が死傷した無益な戦争。ロシア伝統芸のクーデターが排除できなくなる。
目先の注目点は11月にインドネシアで開かれる20カ国・地域(G20)首脳会議。プーチン氏の参加はオンラインか対面か。世界景気の減速を招いた侵略戦争に中印は苦言を呈するのか。ロシアが振り回す核戦争や第3次世界大戦というカードの現実味を探る歴史的な会合になるかもしれない。
[日経ヴェリタス2022年10月9日号に掲載]
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