ノーベル平和賞、ウクライナ侵攻非難 抵抗支援呼びかけ

ノーベル平和賞、ウクライナ侵攻非難 抵抗支援呼びかけ
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『7日発表された、2022年のノーベル平和賞はウクライナの「市民自由センター(CCL)」とロシアの「メモリアル」という2人権団体と、ベラルーシの人権活動家アレシ・ビャリャツキ氏に授与されることが決まった。ロシアによるウクライナ侵攻への強い非難を込めた。旧ソ連型の抑圧を繰り返す強権体制への抵抗を支えるべきだとの呼びかけでもある。
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ノーベル賞委員会がCCLへの授賞理由として強調したのが、ロシアが2月に開始したウクライナ侵攻の戦争犯罪を特定・記録する活動だった。

ウクライナ侵攻では、ロシア軍のミサイルなど無差別攻撃が指摘され、ウクライナ軍が奪還した地域では、拷問された形跡が残る民間人の遺体が多数見つかった。民間人の死者は6千人を超えた。

授賞の知らせを受け、CCLは「誇りに思う。多くのウクライナの人権活動家の仕事が認められた」とツイッターに投稿した。

ロシアのプーチン大統領は00年以降、首相職を挟みながら一貫してトップに君臨。国内で自由な言論を封じ、自身への批判や忠告を遮断する体制を作り上げた。14年にはウクライナ南部クリミア半島を一方的に併合、今年2月には再びウクライナに攻め込んだ。

メモリアルはプーチン政権からにらまれ、閉鎖に追い込まれた後もSNS(交流サイト)に「完全な人権センター2.0」と名付けたアカウントを開設し、人権侵害の情報発信を続けている。

ロイター通信によると、メモリアルの幹部は「言いようのない攻撃や報復」を受け続けている同僚たちを勇気づけるものだと喜びを語った。「新たな場所で活動する私たちの決意を後押ししてくれる」と話した。

プーチン氏と同盟関係にあるベラルーシのルカシェンコ大統領は「欧州最後の独裁者」と呼ばれ、ソ連崩壊後間もない1994年から大統領の座にある。6選が発表された20年の大統領選で、選挙不正に抗議する大規模デモが広がった。

「人権と民主主義を守るための闘いで一歩も引かなかった」とノーベル賞委員会が評価したビャリャツキ氏をはじめとする多くの活動家や一般の市民までもが弾圧された。同氏が率いた人権団体「春」によると、現在も同氏を含む1348人が政治犯として拘束されている。

威圧と扇動、テクノロジーを使った偽情報の流布などを組み合わせたロシア型の強権統治モデルは国外にも広がる。民主主義や自由な市民社会の影響力は世界各地で衰えが目立つ。

戦争犯罪や国家による人権侵害を記録、記憶し続けることやその支援を通じて、強権体制に対峙する。プーチン氏らへの警告は明白だ。

AP通信によると国連人権理事会は7日、ロシアでの人権侵害の状況を調査する「独立した専門家」を任命する決議を採択した。』