ノーベル賞ペーボ氏 古代人DNAから現代人のルーツ探る

ノーベル賞ペーボ氏 古代人DNAから現代人のルーツ探る
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC03AF70T01C22A0000000/

『【この記事のポイント】

・ノーベル生理学・医学賞はネアンデルタール人の遺伝情報解読の成果

・スバンテ・ペーボ氏は沖縄科学技術大学院大学教授(非常勤)も兼任

・遺伝情報に合わせて現代人の脳細胞を改造した「ミニ脳」も生まれている

ノーベル生理学・医学賞の受賞が決まったドイツのマックス・プランク進化人類学研究所のスバンテ・ペーボ氏らは、3万~4万年前に絶滅したネアンデルタール人の遺伝情報を解読した。その成果は、私たち「ホモ・サピエンス」が唯一の人類となったわけを知る手掛かりを与えてくれる。授賞理由にもなった第3の人類「デニソワ人」の発見も含め、同時代に共存した「人類」を理解してこそ、現代人とは何かがわかる。

ホモ・サピエンスはずっと唯一の人類だったわけではない。かつて欧州にはネアンデルタール人が暮らし、アジアにはデニソワ人が進出した。時に私たちの祖先にあたるホモ・サピエンスとも交雑した。

ところが、ほかの人類は絶滅した。ホモ・サピエンスだけが現在に至るのは大きな謎だ。
ネアンデルタール人は体格が良く、道具も使えた。大きな獲物を狩る能力があり、体の大きさを考えると脳の大きさは現代人とほぼ同じだったとみられる。

姿を消した古代人の謎を解くうえで、科学者が頼りにしたのがペーボ氏らが解読した骨の遺伝情報だった。

絶滅は食糧難や病気と関連づける説もある。しかし世界の科学者はペーボ氏らの研究をもとに、ネアンデルタール人とホモ・サピエンスの違いを脳の働きの差に見いだそうとしてきた。

ネアンデルタール人の遺伝情報に合わせて現代人の脳細胞を改造した「ミニ脳」も生まれている。ネアンデルタール人の「脳」と化したミニ脳は、チンパンジーの脳のようになったとの研究もある。古代人の遺伝情報は、遺伝子の変異が人間の脳の発達に大きな影響を与えたことを物語っている。

複数の人類同士を比べることによって、初めて現代人であるホモ・サピエンスと絶滅人類の命運を分けたのが何かに迫れるといえる。

(サイエンスエディター 加藤宏志)

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