私的整理、全債権者の同意不要に 企業再生へ新法案
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『政府は10月末にまとめる総合経済対策で、岸田文雄首相が掲げる「新しい資本主義」の追加策を打ち出す。経営不振に陥った企業が債務を圧縮する私的整理を全債権者の同意がない場合でも進められるようにし、早期の再建を促す。新型コロナウイルス禍からの経済の再生を加速する。2023年の通常国会への新法案の提出をめざす。
首相がトップの「新しい資本主義実現本部」が4日、重点項目を示す。
企業再建で民事再生などの法的整理は一般に時間がかかる。金融機関との協議の上で債務を軽減する私的整理は比較的簡便ながら、債権者全員の同意が必要なことがハードルだった。同意を得られずに結局、法的整理になるケースもある。
新たに検討する「私的整理円滑化法案」は多数決による決議と裁判所の認可で手続きを迅速に進める方式を想定する。企業の経営が著しく悪化する前に予防的にかじをきれるようにする。破綻を避けられれば債権者全体の利益になる。
一方で、再建の見込みの薄い企業の安直な延命につながらないように丁寧な制度設計が求められる。公平性の担保も課題だ。同様の仕組みが既にある欧州などは反対する債権者が異議を申し立てたり、債権買い取りを請求したりできるルールを設けている。
新資本主義の追加策は物価高への対応も重視する。「物価上昇率をカバーする賃上げ」を目標に労使で賃金交渉してもらう考えを打ち出す。
中小企業が賃上げしやすい環境を整えるため適正な価格転嫁も促す。悪質な発注元は公正取引委員会と連携して企業名の公表も検討する。下請けの価格交渉を理由なく拒み、不適切な対応を続けるケースが念頭にある。
資産所得の倍増に向けては、個人型確定拠出年金(iDeCo)の加入年齢拡大などの改革を年末までに決めると明記する。個人の投資促進へ中立的な「助言者制度」の創設も検討する。
非正規労働者の待遇改善も掲げる。「同一労働同一賃金」が守られているかどうか、労働局だけでなく、労働基準監督署もチェックする体制をつくる。リスキリング(学び直し)の促進では「5年間で1兆円」の施策パッケージを用意する。
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