最も重要な「揺れる州」 米国知事選、両党幹部に聞く

最も重要な「揺れる州」 米国知事選、両党幹部に聞く
アメリカン・デモクラシー 中間選挙まで50日・インタビュー
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN140170U2A910C2000000/

『米国のコカ・コーラやデルタ航空が拠点を置く南部ジョージア州。11月の中間選挙で「最も重要なスイングステート(揺れる州)」(米NBCテレビ)とも呼ばれる激戦州だ。知事選や上院選に注目が集まるが、民主と共和のどちらの党が制すのか。現地の両党幹部らに展望を聞いた。

州最南端の町バルドスタで6日、民主党の知事選候補ステイシー・エイブラムス氏が集会を開いた。仕切った民主党ラウンズ郡支部のキャスリン・グラント副会長は「有権者の間で(前回2018年の選挙と比べて)エイブラムス氏を選ばないといけないという『切迫感』がある」と話す。

新型コロナウイルスで多くの州民が亡くなり、共和党で現職のブライアン・ケンプ知事への批判票が集まるとみる。

共和党の予備選では「トランプ派」と「反トランプ派」が競った。グラント氏は「共和党は2つのグループに分断しており、本選を懸念しているようだ」と分析する。ただケンプ氏に逆風になるかどうかは「現時点では読みにくい」と控えめだ。

エイブラムス氏はほかの民主党候補と同様、中絶問題を争点に掲げて選挙戦を戦っている。州都アトランタなどに支部を持つ左派団体「全米アジア太平洋系米国人女性フォーラム」のトップを務めるスン・ヨン氏は「中絶問題は中間選挙で投票に行くかどうかを決める要素になっている」と語る。

同団体は女性有権者に投票を呼びかける活動を展開する。ヨン氏は「これまでは中絶の権利がなくなる可能性に触れても、切迫感を覚える有権者は少なかった。今回は消極的だった有権者も投票しないといけないと認識を改めている」と世論の変化を感じ取っている。
一方、共和党は経済を争点に据える。アトランタ近郊のグイネット郡支部会長を務めるサミー・ベイカー氏は「インフレはとんでもない事態になっており、あらゆる人種、民族に打撃を与えている」と民主党政権を批判する。

アトランタの学生共和党団体「エモリ・カレッジ・リパブリカン」のロバート・シュマッド氏は民主党が争点化する中絶問題について「(経済の方が重要であり)中絶が選挙戦を大きく左右するだろうか」と首をかしげる。

共和党内の対立を巡っては、グイネット郡のベイカー氏は「とても小さな亀裂はあるが、党内は分断されていない。(トランプ支持者も)今はすべてケンプ氏支持でまとまっている」と強調する。さらに「今回の選挙はトランプ氏が候補者ではない」と指摘し、同氏の言動が州の選挙には大きな影響を及ぼさないとみる。

ジョージア州では民主党支持者が多い黒人の有権者が増えている。学生団体のシュマッド氏は「一般的には共和党候補にとって不利な環境になっている」と認める。それでもケンプ氏は世論調査の支持率平均でエイブラムス氏を6ポイント前後リードしており「過去の経歴からみても非常に強力な候補者だ」と評価する。

ただジョージア州の今後についてシュマッド氏は「24年は大統領選で(共和党が)まだ勝てるとは思うが、その後になると少し難しくなるだろう」と漏らす。中長期的には人口動態の変化が共和党に不利に働くと見通している。

(ジョージア州バルドスタで、鳳山太成)

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