「ロシア編入」問う住民投票、ウクライナ占領地で始まる

「ロシア編入」問う住民投票、ウクライナ占領地で始まる
侵攻7カ月、戦況劣勢で「賭け」
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR22CM50S2A920C2000000/

『親ロシア派武装勢力が占領するウクライナの一部地域で現地時間23日午前8時(日本時間同日午後2時)、ロシアへの編入の賛否を問う住民投票が始まった。ロシアによる完全な統制下にあり、賛成票が多数を占めるのは確実な情勢だ。24日で7カ月となるウクライナ侵攻は、ロシア軍の劣勢が目立つ。支配地併合を通じて戦況の好転を狙う「賭け」に出た。

住民投票はウクライナ東部のドネツクとルガンスク、南部のへルソンとザポロジエの4州のロシア側支配地で始まった。現地メディアが伝えた。激しい戦闘が続く中での異例の投票となる。

投票方法は占領地によっても異なるが、23~26日は主に住宅地に投票箱を置き、最終日の27日は投票所を開くという。ロシア国内にも投票所を設け、移住した親ロ派地域の住民に投票を促す。

即日開票し、現地時間27日深夜から28日にかけて大勢が判明する見通し。親ロ派は直ちにロシアのプーチン大統領にロシアへの編入を要請し、プーチン氏が承認、編入の条約に署名する。ロシア議会の批准などを経て、9月末までに手続きが完了する可能性がある。ロシアによるウクライナ領の併合は、2014年3月の南部クリミア半島以来となる。

ルガンスク州のガイダイ知事は23日、「占領者が投票率を上げようとしている」と通信アプリで批判した。同州の一部企業の経営者が、従業員に投票参加を義務付け、不参加なら解雇すると脅していると指摘した。

ルガンスク州の通りには「ロシアとともに永遠に、9月27日」と描かれた広告が飾られた=AP

ロシアは編入後、4州の住民もロシア軍に徴兵するとの見方が強い。ウクライナ侵攻の長期化でロシア軍の死傷者は拡大しているためだ。南部ザポロジエ州メリトポリのフェドロフ市長は21日、徴兵年齢の男性に対して「即時退去」を通信アプリで呼びかけた。ロシアは同日、戦闘継続のために部分動員令を発令している。

プーチン氏は21日のテレビ演説で、住民投票について「我々は支持する」とし併合する考えを表明。「すべての手段を利用する」と話し、併合地域を守るため核兵器の使用も辞さない考えを示唆した。

プーチン政権に近いロシアの社会団体は23日、モスクワのクレムリン前の広場で、ロシア編入に向けた住民投票を始めた親ロシア派占領地域の住民を支持する大規模な集会を開いた。「同胞を見捨てない」と名付けた集会には、数万人が集まるとみられている。

住民投票はロシアが管理下に置き、公正な投票はありえないと国際的な批判を浴びている。21日に米ニューヨークで開いた外相会合で主要7カ国(G7)が「いかさまの住民投票」と糾弾したほか、中国やインドもロシアと距離を置く姿勢に転じており、孤立感を深める。エネルギーのロシア依存脱却を進める欧州連合(EU)などは追加制裁も検討している。
ウクライナのゼレンスキー大統領はかねて、ロシアが占領地域を併合すれば「(和平)交渉の機会を自ら閉じることになる」と指摘していた。21日の国連総会でのビデオ演説では「武器供給の支援が不可欠だ」と国際社会に訴え、攻勢を強める考えを強調した。

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