ウクライナ戦争はこのままでは泥沼化…バイデン大統領の対応にこれだけの疑問符
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※ 『米国の地政学的大目標が「ロシアを自国に対抗できない従属的な地位に追いやること」であることは明らかだが、ウクライナ危機を決着させる具体的なプランを持っていないのではないかと思わざるを得ない。』…。
※ 米国の立場では、「決着させる具体的なプラン」は必要ないだろう…。
※ 「状況対応」で、「事態をコントロールしながら」、ジワジワ自国有利に持って行けば、足りる…。
※ ジワジワと、ロシアの国力が低下してくれれば、御の字だろう…。
※ 「プーチン政権」瓦解の場合も、同じだ…。「状況対応」で、「事態をコントロールしながら」、ジワジワ自国有利に持って行けばよい、という話しだろう…。
※ それと、間違ってはいけないことは、この戦争は、プーチン氏が決断すれば、直ちに「停まる」ということだ…。
※ そもそもが、「彼の始めた戦争」なんだから…。
※ その尻を、米国やバイデン氏に持ってくるのは、「筋が違う」というものだろう…。
『ロシアのウクライナ侵攻から2ヶ月が経ったが、紛争が沈静化するどころか、今後さらに激化する可能性が高まっている。
【写真】プーチン大統領と事実婚状態とされる元五輪金メダリスト「アリーナ・カバエワ」
3月からロシアとウクライナの間の停戦協議が断続的に行われてきたが、ウクライナ首都のキーウ近郊のブチャで多数の民間人の遺体が見つかった4月上旬以降、目立った進展はなくなってしまった。
ロシアのラブロフ外相は4月19日、同国によるウクライナ侵攻が「新たな段階」に入ったと述べた。ウクライナ東部ドンバス地方で戦闘が激化しており、ラブロフ氏の発言はロシア軍による大規模な攻撃開始に言及したものとみなされている。
これに対し、西側諸国は重火器の追加供与を含むさらなる軍事支援を準備している。
ブリンケン米国務長官が欧州の同盟国に対し「ウクライナでの戦闘は今年末まで続く可能性がある」と伝えるなど、ウクライナ危機は泥沼の様相を呈し始めている。
欧州地域で久しく経験していなかった大規模な戦争が勃発してしまったがために、沈着冷静であるべき政府首脳までもが激しく動揺している印象が強い。
そのせいだろうか、もともと反ロシア色が強かった西側諸国では「戦略的思考」がすっかり消えてしまい、ロシアへの「怒り」の感情一色に染まっていると言っても過言ではない。
ウクライナ側の抵抗は予想をはるかに上回る見事なものだった。SNSをうまく使っているので、私たちは「ロシアは負け戦となっている」とついつい思いがちになる。
だが、ウクライナ側の軍事的抵抗の成功を喜んでばかりはいられない。
米国がもっと前面に出てくるべき
ウクライナ軍が強く抵抗するほど、ロシア軍はより攻撃的になるからだ。戦闘が激化の一途をたどれば、「1980年代に旧ソ連が侵攻したアフガニスタンのようにウクライナ全土が焦土と化してしまう」との悪夢が頭をよぎる。
このような悲劇を繰り返さないためには早期の停戦合意が不可欠だ。だが両者の隔たりは大きく、国際的な仲介なしでは停戦実現は難しい。
ロシアとウクライナの停戦を仲介するためにトルコなどが精力的に動いているが、筆者は「米国がもっと前面に出てくるべきではないか」と考えている。
戦闘の前線に米兵は派遣されていないが、米軍はロシア軍との間で実質的な戦闘状態になっているからだ。
米国からの巨額な支援のおかげで欧州有数の軍事力を有するようになったウクライナは、米国の軍事衛星からの情報に支えられてロシア軍の侵攻を必死に食い止めている。「自国民の死者を出したくない米国は、ウクライナ人を盾にしてロシアと戦っている」との批判も出ているぐらいだ。
ウクライナ政府に最も影響力を持っている米国のバイデン大統領だが、停戦合意に向けた環境整備を行わないばかりか、むしろこの動きを阻害しているようにみえる。
バイデン大統領はプーチン大統領のことを「殺人者」「戦争犯罪人」と呼ぶことにまったくためらいを感じていない。このような発言はロシア側の反発を募らせるばかりで、事態を沈静化させようとしている国際社会の努力に水を差す形になっている。
バイデン大統領はプーチン政権打倒を示唆する発言も繰り返している。
米国の地政学的大目標が「ロシアを自国に対抗できない従属的な地位に追いやること」であることは明らかだが、ウクライナ危機を決着させる具体的なプランを持っていないのではないかと思わざるを得ない。
米国政府は「ロシアの体制転換を望まない」と表明しているが、ウクライナとの戦いでの勝利に固執するプーチン大統領が政変などで排除されなければ、ロシアが外交交渉に転じる可能性は少ないと見ている節がある。』
『仮に「プーチン失脚」ならば…
「プーチン大統領の失脚」という事態が短期的に起きる見込みは低いが、仮に起きた場合どうなってしまうのだろうか。
1991年のソ連邦崩壊の時には15の共和国という受け皿があったが、現在のロシアにはプーチン大統領に代わって国を統治しうる政治勢力は存在しないと言われている。
プーチン体制が瓦解すれば、内戦を含む政治的混乱の中から民族主義的な勢力が台頭するリスクも指摘されている。
経済力は衰えたものの、ロシアは世界最大の領土と約4500発の核兵器を擁する軍事大国だ。プーチン後のロシアの秩序構築に失敗すれば、ユーラシア大陸が大動乱となるのは必至だが、米国にとっては「対岸の火事」なのかもしれない。
プーチン大統領は既に核兵器の使用をちらつかせており、「戦闘が長期化すれば戦術核兵器が使われるのではないか」と懸念されている。そうなれば「第3次世界大戦」という最悪の展開となり、米国にとっても「死活問題」になるはずだ。
米国は21世紀に入り、アフガニスタンやイラクなどで長期にわたり戦争を繰り広げてきたが、これにより安定した国際秩序が構築できたとはお世辞にも言えない。
「世界一の軍事大国である米国自身が侵攻されるリスクがないから、戦争の失敗を繰り返す」との嘆き節が聞こえてくる。
ウクライナ危機は既に世界全体に深刻な悪影響を及ぼしている。国際社会は「ロシア憎し」の衝動でひた走る米国に対して、ウクライナ危機の現実的な落としどころを見定めるよう、強く促すべきではないだろうか。
中でも日本は欧州と同様、ロシアと隣国関係にある。感情的にならざるを得ない状況下でも「長期的な国益」をけっして見失ってならない。
藤和彦
経済産業研究所コンサルティングフェロー。経歴は1960年名古屋生まれ、1984年通商産業省(現・経済産業省)入省、2003年から内閣官房に出向(内閣情報調査室内閣情報分析官)。
デイリー新潮編集部』