緊迫するウクライナ情勢 ロシア、なぜここまで強硬?
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『緊迫するウクライナ情勢を巡り、21日には米国のブリンケン国務長官とロシアのラブロフ外相が会談する。バイデン米政権はロシアがウクライナに侵攻した場合、ロシアの銀行によるドル取引を停止することなどを含む厳しい制裁を科す方針を明らかにしている。それでもロシアは隣国ウクライナが欧米主導の軍事同盟の北大西洋条約機構(NATO)に加盟しないとの確約を求め、交渉は難航している。なぜロシアのプーチン政権は強硬姿勢でウクライナにこだわるのか。3つのポイントをまとめた。
・ロシアとウクライナの歴史的な経緯とは
・「大国復活」目指すプーチン氏の野望とは
・なぜNATOの東方拡大をここまで警戒するのか
ロシアとウクライナの歴史的な経緯とは
「ロシア人とウクライナ人の歴史的な同一性について」。プーチン大統領は2021年7月にこう題した論文を発表し、「1つの民族」だと主張した。ウクライナをロシアの勢力圏に取り戻すことが自らの使命だと考えているようだ。
ロシアとウクライナ、ベラルーシは同じ東スラブ民族で、統一国家の始まりは9世紀から12世紀ごろまで栄えたキエフ・ルーシにある。中心地は現在のウクライナの首都キエフだった。その後も現ウクライナ領には独自の国が長く形成されず、ロシア帝国やポーランドなどの支配下に置かれた。
ウクライナはほぼ20世紀を通して旧ソ連の一部であり、本格的な国家として歩み始めたのは1991年のソ連崩壊後だ。欧州連合(EU)とロシアに挟まれた影響力争いの舞台となり、政権も親欧米と親ロシアとが交互に発足した。2014年に民主化を求める親欧米派による政変で親ロ派政権が倒れると、ロシアはクリミア半島を一方的に併合し、ロシア系住民の多い東部にも侵攻した。
「大国復活」目指すプーチン氏にとってのウクライナとは
ウクライナは4000万を超す人口と広大な国土を持つ旧ソ連第2の大国だ。ウクライナなしでロシアは帝国にはなれない――。ブレジンスキー元米大統領補佐官はこう述べたことがある。「大国の復活」の野望を抱くプーチン氏にとって、ウクライナを自らの勢力圏にとどめることは絶対条件だ。
鉄道を使ってベラルーシに到着したロシアの装甲車など(1月19日)=ロシア国防省プレスサービス・AP
ロシアは13世紀から15世紀にモンゴルに支配され、19世紀初めにナポレオン率いるフランスにモスクワを占領された。第2次世界大戦でもナチスドイツに国土深く攻め込まれた。
こうした経緯もありロシアは伝統的に安保意識が強いとされ、プーチン政権は安保を重視する治安機関や軍関係者ら保守強硬派の影響力が強い。ロシアと欧州の真ん中に位置するウクライナが欧米陣営に加わるのを容認することは国民感情の面からも極めて難しい。
なぜNATOの東方拡大をここまで警戒するのか
ウクライナを巡る米欧とロシアの対立は、ソ連崩壊後、新たな欧州安保体制構築の試みが挫折したことも意味する。プーチン氏は昨年12月、東欧諸国を加盟させないというNATOの約束が過去に破られてきたとして「ひどくだまされた」と恨みを口にした。2000年代初めまでは米ロは融和に向かうかに見えたが、プーチン政権は米欧への反発を強めていった。
一方、ウクライナはNATO加盟を国家目標に掲げ、ロシアとの対立を深めた。ロシアは米欧の部隊や攻撃兵器がロシアの西部国境近くに展開され、自国の安全保障が決定的に損なわれると懸念する。東部紛争を巡って軍事圧力を強めてウクライナの後ろ盾である米国を交渉に引き出し、ウクライナのNATO非加盟を確約させようとした。
(モスクワ=石川陽平)
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岩間陽子
政策研究大学院大学 政策研究科 教授
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分析・考察
思い起こして頂きたいのですが、ロシアはセルビアという小さな兄弟国をかばって第一次世界大戦を始め、その結果すでにヨタヨタだったロマノフ帝国は滅びました。
ついでにオーストリア=ハンガリー帝国もドイツ帝国も道連れにしました。
第二次世界大戦が始まるときは、ヒトラーのドイツを信頼できると勘違いして独ソ不可侵条約を締結し、酷い目に合いました。
現在ロシアが積極的に戦争を望んでいるとは思いませんが、西側を読み間違えている可能性は十二分にあります。
振り上げた拳の降ろしどころがなくなって戦争が始まるかもしれません。本日の米ロ外相会談の目的は、とにかく戦争を回避して話し合いを続けること、それに尽きます。
2022年1月21日 17:25
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柯 隆
東京財団政策研究所 主席研究員
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ひとこと解説
ロシアでは、プーチンはロシアを救ったヒーローと思われている。
ロシア人は大きなものが好きなようである。30年まであのままやっていけないので、ソ連が崩壊してしまった。
でも、ロシア人は帝国になる夢を諦めたわけではない。プーチンは名実とも強い指導者でタフーである。それとバランスを取らなければいけないホワイトハウスの主は老衰で想像力も欠けている。
プーチンにとって強いロシアを取り戻す好機にみえている
2022年1月21日 16:54』