米国務長官「越境なら迅速に厳しく対処」 ロシアに警告
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『【ベルリン=石川潤】ブリンケン米国務長官は20日、訪問先のベルリンでベーアボック独外相と記者会見し、ロシア軍が国境を越えてウクライナを攻撃すれば「迅速に厳しく対処する」と語った。小規模な侵攻であれば制裁を弱めるとも受け取れる19日のバイデン米大統領の発言を事実上修正し、いかなる侵攻も容認しない姿勢を改めて明確にした。
ロシアはウクライナ国境に10万とされる兵力を集めており、侵攻への警戒が高まっている。ブリンケン氏は和平の糸口を探るため、21日にスイスのジュネーブでロシアのラブロフ外相と会談する。ベルリンではベーアボック氏、ショルツ首相のほか、英仏の高官とも協議し、対ロシアでの米欧の協調を確認した。
ベーアボック氏は会見で「対話こそが危機から抜け出す唯一の道だ」と語った。国境への軍隊の移動やベラルーシとの演習などを念頭に「気がかりな動きがさらに強まっている」と指摘。緊張緩和に向けて一歩踏み出すようにロシア側に求めた。
ドイツはロシアとガスパイプライン(ノルドストリーム2)計画を進めており、稼働中止を求める米国との温度差もかねて指摘されてきた。だが、ロシアの強硬姿勢が強まるにつれ、ドイツ側も侵攻があれば稼働は認められないとの立場に傾いている。ベーアボック氏は「さらにエスカレートすれば、あらゆる手段をとる」と述べた。
ロシアが侵攻した場合、米欧は厳しい経済制裁に踏み切るとみられている。ただ、欧州経済はエネルギー分野などでロシアと密接に絡み合っている。エネルギー価格の高騰でただでさえインフレが勢いづくなかで、ロシアへの制裁は自分の首を絞めかねない難しさがある。
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岩間陽子
政策研究大学院大学 政策研究科 教授
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分析・考察
ここの所米欧間で、対ロ方針がバラバラになっていたので、一旦ラインを揃えるために、米英仏独「クアッド」、米独外相、ブリンケンとショルツ会談が立て続けに行われ、一定の成果はあげた印象です。
記者会見の中で、ノルマンディー・フォーマットを利用して独仏外相がウクライナへ近日中に行くとアナウンスされています。
また、ブリンケンに、目的がディエスカレーションであり、ロシアの「正当な安全保障上の憂慮」に対して配慮して対話を継続する、とも言わせました。
これでジュネーブでの米ロ外相会談を、何とか全面対決・決裂を避けて、交渉継続でまとめれば喉元は過ぎるのですが、まだまだ危険領域は脱していない印象です。
2022年1月21日 10:09
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菅野幹雄
日本経済新聞社 ワシントン支局長・本社コメンテーター
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ひとこと解説
この時期に、興味深い組み合せの会談です。ベーアボック外相はドイツの3党連立政権の中でロシアに最も厳しく、ノルドストリーム2にも批判的な立場。ブリンケン氏としてはいま最も「ウマが合う」ドイツの相手では。
ショルツ首相のドイツ社会民主党で前に首相を務めたシュレーダー氏はパイプライン事業法人の重役を務めるプーチン大統領の長年の友人です。
対ロビジネスの思惑も濃淡があります。欧州の代表国ドイツ政権内の微妙な立場の違いを埋めつつ、欧州と米国の一枚岩を見せてロシアに対峙するという、かなり難度の高い調整をブリンケン氏は強いられているわけです。
2022年1月21日 7:53 』