米大統領、ウクライナ侵攻なら「ロシアのドル取引停止」

米大統領、ウクライナ侵攻なら「ロシアのドル取引停止」
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN200MM0Q2A120C2000000/

『【ワシントン=坂口幸裕】バイデン米大統領は19日、ホワイトハウスで記者会見し、ロシアのプーチン大統領が2014年に続きウクライナへの軍事侵攻に踏み切るとの見方を示した。「私の推測では彼は侵攻するだろう」と述べた。侵攻した場合はロシアの銀行によるドル取引を停止する措置を検討していると明かした。

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20日に就任から1年になるのを前に開いた記者会見は2時間近くにおよんだ。バイデン氏はプーチン氏について「中国と西洋の間で自分の居場所を見つけようとしている状況だ。彼は何かしなければならない」と指摘した。

バイデン氏は大規模な侵攻と別に「小規模な侵攻があった場合にどう対処するか議論する場合もある」と言及した。小規模な侵攻だった場合は制裁も弱める意向を示唆した発言とみられる。

記者会見後、ホワイトハウスの報道担当者はツイッターで「小規模な侵攻」に関し「ロシア人による軍事的行動と、(親ロシア派武装勢力などの)非軍事組織による侵攻やサイバー攻撃との違いに触れた」と釈明した。

ウクライナに侵攻すれば「ロシアにとっては最悪の事態になる」と改めて警告した。欧州の同盟国などと協力し「ロシア経済に厳しい代償と大きな損害を与える準備ができている」とも語った。

ロシアは21年12月に欧州の新たな安全保障体制に関する合意案を提示した。バイデン氏はロシアが強く要求する北大西洋条約機構(NATO)の東方拡大停止を確約するのは難しいとの考えを示した。一方、NATOがウクライナに戦略兵器を配備しない保証については「何かできるかもしれない」と話した。

米欧はロシア軍がウクライナ国境付近に10万人規模の部隊を展開していると分析。14年に続きウクライナに侵攻できる態勢が整っていると警戒する。バイデン氏はロシアが懸念するウクライナのNATO加盟について「近いうちに加盟する可能性は高くない」と明言した。

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岩間陽子
政策研究大学院大学 政策研究科 教授
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分析・考察

これからブリンケン長官がラブロフ露外相と会うという重要な局面ですが、バイデン政権は、国内の支持率しか見ておらず、深刻な状況です。

ドイツやフランスがなんとか外交交渉の糸口を作ろうとしているのですが、それを片端からつぶしています。

金融制裁はロシアとの取引の多い欧州諸国が難色を示していて、簡単に使える手段ではありません。これほど同盟国の立場を無視していれば、欧州の米国離れがこの機会に加速しても仕方ありません。

日本としても深刻です。エネルギー価格高騰に備えること、アジアの危機の際にバイデン政権と意思疎通をするのチャンネルをしっかり作っておくこと。当分厳しい時代が続きます。

2022年1月20日 11:25

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赤川省吾
日本経済新聞社 欧州総局編集委員
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分析・考察

バイデン発言の問題は2つあります。

ひとつは「大規模な侵攻」と「小規模な侵攻」を分けたこと。これでは「小規模な侵攻」なら大した制裁にはならない、とロシアにメッセージを送ったことになります。

二つ目はロシアに隣接する欧州諸国との調整が不足していることです。

ただ政権が発足したばかりのドイツに火中の栗を拾う力はなく、フランスは選挙モード。いまの独仏に今回の紛争を仲介する外交力があるとは思えません。仮にロシアの軍事侵攻なら渋々米国に寄り添って経済制裁に加わるでしょう。

ロシアはG7分断のため、北方領土を餌に日本に近づくかもしれません。日本は強権国家に毅然とした態度で臨むべきです。

2022年1月20日 13:10 (2022年1月20日 13:11更新)

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滝田洋一
日本経済新聞社 編集委員
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ひとこと解説

ロシア金融機関によるドル取引停止は、確かに強力な金融制裁。怪しい雲行きを察して、投資資金が商品に走りました。

原油だけではありません。金も急上昇し、一時1830㌦台に跳ね上がりました。そのほか、
・銀 24㌦台、プラチナ 1000㌦突破、パラジウム 2000㌦乗せ
・大豆、トウモロコシ、小麦、砂糖も軒並み高
・指標となるダウ商品指数は初の1000乗せ
となっています。インフレやFRBの利上げ回数を論じていられるうちは、まだ平時モードとさえいえます。

米国がドルをカードに使えば、ロシアは欧州とはユーロ、中国とは人民元に走るでしょう。基軸通貨ドルの行方とも絡む新たなリスク要因です。

2022年1月20日 11:41 (2022年1月20日 13:07更新)

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柯 隆
東京財団政策研究所 主席研究員
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分析・考察

バイデン政権の対ロシアについて弾切れ感がある。ウクライナに対して侵攻するロシアに金融制裁の「平和」なやり方でいいのか。

やるべきことは、国連を改革して、国連をより有力な組織にすべきではないか。今の国連はまったく無力になっており、アメリカも弾切れになりつつある。今とこれからの世界はリーダーが不在でルールも機能しない乱世になる

2022年1月20日 12:22

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慎泰俊
五常・アンド・カンパニー株式会社 代表取締役
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分析・考察

ウクライナのことも重大な懸念だと思うのですが、東アジア関連で懸念しているのが、ロシアがウクライナに侵攻し、欧米諸国の関心と兵力がそちらに集中しているタイミングで中国が台湾に侵攻することです。

2022年1月20日 12:02

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鈴木一人
東京大学 公共政策大学院 教授
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分析・考察

これまでクリミア半島の占拠に関しても金融制裁を含む経済制裁を行ってきたわけだが、ロシアにはそれなりにダメージを受けつつも、自らの政策を変更しようという姿勢は見せなかった。

ウクライナに対して武力侵攻するとなると、ロシアはさらに覚悟した上での行動だろうから、経済制裁でそれを止めるということにはならないように思える。

経済制裁が武力侵攻の抑止をするということを期待するのは無理と言わざるを得ない。

2022年1月20日 11:29 』