イラン、米外交の混乱見透かす 核施設カメラ再設置容認

イラン、米外交の混乱見透かす 核施設カメラ再設置容認
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB167RS0W1A211C2000000/

『【ドバイ=岐部秀光】イランは15日、首都テヘランの北西カラジにある核関連施設に監視カメラを年内に再設置することで国際原子力機関(IAEA)と合意した。アフガニスタンからの軍の撤収で批判を浴びた米バイデン政権の外交の混乱を見透かし、進行中のイラン核合意の再建交渉で有利な条件を引き出すための揺さぶりを強めている。

IAEAのグロッシ事務局長は声明で今回の合意を歓迎するとともに「イランとの建設的な議論が続くことを切望している」と述べた。IAEAにとってはイラン重要核施設の最低限の監視活動が可能となり、難航する核合意再建協議を継続する一定の時間を稼いだ意味がある。

カラジのウラン濃縮遠心分離機の部品製造施設は6月にサイバー攻撃を受けて稼働停止し、監視カメラも破壊された。イランは攻撃にイスラエルが関与したと主張。施設の捜査などを理由にIAEAの査察や監視カメラの設置を拒否してきた。現在、カラジの施設が再稼働しているかどうかもわからない状況だ。

イランは交渉の決裂をぎりぎりで避けながら、米国の核合意復帰の見返りとして、できるだけ多くの譲歩を引き出そうとしている。米バイデン政権は中国との戦略的な覇権争いに集中したいと考えながらも、アフガン混乱の収拾に追われる現実がある。イラン指導部は中東でイランと決定的な対立を引き起こす余裕は米国にないとみているようだ。

イラン核合意は2015年にイランと米英独仏中ロの6カ国がむすんだ取り決め。イランが原子力活動を制限する見返りに国際社会が関連する制裁を解除した。米国のトランプ前政権が18年に核合意から一方的に離脱すると、反発するイランが原子力活動を再拡大した。』