トルコ、ベトナムなどSNS大手に圧力 接続制限も 言論規制強化の恐れ

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『【イスタンブール=木寺もも子】トルコやベトナムなど新興国を中心に、政府当局がSNS(交流サイト)大手に言論規制の圧力を強めている。従わない場合は利用者が接続できなくなり、サービスの提供が大幅に制限される可能性がある。一方、人権団体などはSNS大手が言論統制に協力していると批判。各社は難しい判断を迫られている。

米グーグル傘下のユーチューブは16日、トルコに拠点を開設すると発表した。7月に成立したS…』

【イスタンブール=木寺もも子】トルコやベトナムなど新興国を中心に、政府当局がSNS(交流サイト)大手に言論規制の圧力を強めている。従わない場合は利用者が接続できなくなり、サービスの提供が大幅に制限される可能性がある。一方、人権団体などはSNS大手が言論統制に協力していると批判。各社は難しい判断を迫られている。

・7月に成立したSNS規制法で、大手各社はトルコ人の国内責任者を置くよう義務付けられた。

・ビルギ大のヤマン・アクデニズ教授によるとインターネットでも接続が遮断されたサイトは約50万件に上るという。

・SNSへの圧力はベトナムでも高まっている。ロイター通信によると、当局はこのほど、米フェイスブックに対して、検閲を強化しなければサービスを閉鎖すると警告した。

・タイでは反体制デモが拡大した10月、政府が裁判所にデモ隊のフェイスブックページや、フェイスブック上で動画配信するニュースメディアの閉鎖を申し立てた。これを受け裁判所は一時、ネットメディアに配信停止を命じた。政府はバンコクを対象に非常事態宣言を発令し、デモを扇動する情報の流布を禁止していた。

・タイ政府は8月にもフェイスブックに対し王室に批判的な団体が運営するページの削除を要請。フェイスブックはタイ国内から同ページへのアクセスを遮断し、「タイ政府から強要された」との声明を出した。

・フィリピンでは9月下旬、反政府政党や人権活動家らを批判する64のアカウントをフェイスブックが一斉に閉鎖した。軍・警察の関係者が身分を偽り運営していることを理由に挙げた。これに対し、ドゥテルテ大統領はオンラインの会見で不快感を示し、「フェイスブックよ、聞け。国民のために働く政府を支援しないのであれば、事業を続けさせる意味はない。話し合いをしよう」と発言。暗に政府に協力するよう、圧力をかけた。

・過激主義の拡散防止を理由にインターネットへの規制を強めてきたロシアでは19年に、ネット上のフェイク(偽)ニュースを禁止する法律が成立。11月にはフェイスブックや米ツイッターなどによるロシア政府系メディアの投稿削除に対し、閲覧制限などの罰則を科す法案も下院に提出した。ペスコフ大統領報道官は「ロシアの利用者の権利が侵害されている」と規制強化を正当化している。

・フェイスブックのニック・クレッグ副社長は12月、オンラインのイベントでトルコ、ベトナム、ロシアなどを名指しし「厳しい検閲でデータに関する適切な保護や法の執行が行われない」という中国のような状況になりつつあると指摘。バイデン次期米政権に対し、自由で開かれたインターネットの復権に向けた対応を求めた。

・SNSが人気を集めるこれらの国は、各社にとって失いたくない市場だ。フェイスブック、ツイッターなどの米国のSNS大手はいずれも検閲などを巡って巨大市場の中国での事業展開を断念した苦い経験がある。だが一方で、強権国家におもねれば国際社会で自社のイメージを損なうというジレンマもある。国際人権団体のアムネスティ・インターナショナルは12月、ベトナムで強まる言論統制にフェイスブックやグーグルが加担していると非難した。

・米人権団体フリーダムハウスによると、世界65カ国を調査した「ネットの自由度」は10年連続で低下している。