https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR16BJI0W0A211C2000000


『【ウィーン=細川倫太郎、イスタンブール=木寺もも子】米国の離脱で崩壊の瀬戸際にあったイラン核合意の「復活」へ向けた動きが始まった。次期米大統領に就任するバイデン氏は復帰に意欲を示し、イランも義務を履行する用意を表明した。両者が求める条件やタイミングを巡る意見の隔たりは大きく、道のりは険しい。
核合意の当事国である英独仏中ロとイランは16日、オンラインで次官級の会合を開いた。ロシアの在ウィーン国際機関代表部のウリヤノフ常駐代表は終了後、ツイッターに「参加国は核合意を強く支持し、外交努力を続ける用意があることを確認した」と投稿した。21日に閣僚級会合を開くことでも合意した。
関係国は、2021年1月20日に発足するバイデン次期米政権に期待している。「イランが厳格に合意を履行するなら、米国は核合意に戻る」。バイデン氏は米紙のインタビューで核合意への復帰に前向きな姿勢を示した。イランのロウハニ大統領も16日の会合に先立ち「米国次第だ。道は開かれている」と述べた。
米復帰へのハードルは高いとの見方もある。バイデン氏は、条件としてイランが核合意を厳密に履行することを挙げている。イランは18年に米国が一方的に核合意を離脱して対イラン制裁を復活させた後、段階的に合意義務から逸脱してきた。国際原子力機関(IAEA)の最新の報告書によると、イランの低濃縮ウランの貯蔵量は定められた規定より約12倍多い。米国内ではイランの弾道ミサイル開発計画の停止も求めるべきだとの議論もある。
イラン最高指導者のハメネイ師は16日、国営テレビを通じ「米国の(イランへの)憎悪はトランプ大統領が離れた後も終わらない」と不信感をあらわにした。11月には著名な核科学者モフセン・ファクリザデ氏が暗殺される事件があり、イランは米国と親密なイスラエルが関与したとみる。穏健派のロウハニ氏も、まずは米国が先に核合意に復帰し、制裁の損害の補償もした上で、イランが合意義務を履行すると主張する。
イランは12月上旬、2カ月以内に制裁が緩和されなければ、ウラン濃縮度を20%まで引き上げることなどを定めた法律を成立させた。20%まで濃縮度を高めれば、核兵器級とされる90%までの到達は容易になるとされている。法律ではIAEAの抜き打ち査察の停止も定める。今のところIAEAはイランは査察官を全面的に受け入れていると報告しているが、停止すればイランの核活動の把握は困難になる。グロッシ事務局長は米メディアとのインタビューで、IAEAが将来も適切に査察ができるかは「核合意の参加国の決定にかかっている」と述べた。
任期切れ間際のトランプ米政権はイランへの圧力を強めている。16日には米国が禁じるイランの石油化学製品輸出にかかわったとして、アラブ首長国連邦(UAE)、中国、ベトナムの企業の資産を凍結するなどの制裁を矢継ぎ早に発動した。ムニューシン財務長官は「米国はイランの石油化学製品の販売に関与する不正行為を支援する者に対し行動する」と話した。こうした動きはバイデン次期米政権とイランの交渉を難しくしそうだ。
ウィーン外交筋によると、イランは16日の会合で、原油輸出禁止など米制裁の緩和へ支援を求めた。英独仏は米国の強力な制裁を恐れて有効な手立てを示せないのが現状だ。欧州がイランとの貿易を継続するために設立した貿易取引支援機関(INSTEX)も事実上、機能していない。』