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『【ワシントン=永沢毅】米大統領選で勝利を確実にした民主党のバイデン前副大統領の新政権の主な顔ぶれが固まった。重要ポストに女性や黒人を配する人選は、多様性を求める党内左派の圧力を反映する。人事の議会承認のカギを握る共和党に配慮する必要もあり、板挟みの人事を強いられている。
バイデン氏は10日、オバマ前政権で国連大使などを歴任したスーザン・ライス氏をホワイトハウスで内政を束ねる国内政策会議(DPC)委員長に、議会法律顧問のキャサリン・タイ氏を米通商代表部(USTR)代表に起用するなどの人事を発表した。ライス氏は黒人、タイ氏はアジア系で、いずれも女性だ。
タイ氏は米中貿易摩擦に対応し、ライス氏は人種問題や新型コロナウイルス対策にも関わる見通し。ともに波紋を呼んだトランプ政権の政策を引き継ぐことになる。
バイデン氏は新政権の人事について「人種や性別などでかつてなく多様性のある顔ぶれにする」と公言してきた。大統領選では非白人や女性からの得票がトランプ大統領をそれぞれ45ポイント、15ポイント(CNNの出口調査)上回っただけに、期待に応える意味合いもある。
選挙後、民主党の左派や黒人、ヒスパニック(中南米系)の支持者や団体は人事の多様化を要求してきた。「閣僚級にアフリカ系米国人を希望する」。米議会で黒人議員連盟会長を務めるカレン・バス下院議員は公然と要求した。
最重要閣僚の一つ、国防長官には黒人のロイド・オースティン元陸軍大将が起用された。バイデン氏は8日、全米黒人地位向上協会幹部から人種問題を専門に扱う補佐官ポストの新設も求められた。一方、国防長官起用説があった白人女性のミシェル・フロノイ元国防次官は、軍事産業とのつながりを懸念する左派に配慮し、起用が見送られたとみられる。
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現時点では閣僚に黒人が3人、ヒスパニックが2人、女性は6人の起用が固まった。サンダース、ウォーレン両上院議員ら急進左派の起用は見合わせている。「バイデン氏は急進左派の支援がなければ勝てなかった。それなのにその代表が閣内にまだいない」。サンダース氏は米メディアにこう不満をあらわにしている。
閣僚の人事を承認する権限のある米議会上院は2021年1月の南部ジョージア州の決選投票しだいでは、共和党が過半数を確保する可能性がある。このためバイデン氏は共和党への配慮も欠かせない。左派色の強すぎる人選は承認へのハードルが高くなる。ライス氏を上院の承認が不要なホワイトハウス高官に起用したのも、こうした思惑があるとみられる。
一部には共和党からの閣僚起用論も浮上する。オバマ前大統領は1期目の人事でゲーツ国防長官ら2人を共和党から起用した。金融危機後、超党派で国民の結束を訴える狙いがあった。
バイデン氏の人事は多様性を優先するあまり、政策実現に支障をきたす懸念もくすぶる。国防長官に指名されたオースティン氏はアフガニスタンやイラクなどでのテロとの戦いは経験豊富だが、最優先課題となる中国をはじめアジアでの経験はほぼ皆無だ。
「いま必要なのは中国に対抗するのに指導力を発揮できる人物だ。中国の軍事力の脅威を深刻にとらえていない人事の象徴だ」。元国防総省高官のエルブリッジ・コルビー氏はこう危惧する。』