多摩川に姿を現す羽田連絡道路、台風で遅延していた台船架設が完了
大村 拓也 写真家
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00129/082000061/
『2019年10月の台風19号で多摩川に土砂が堆積した影響などで、進捗が遅れていた「羽田連絡道路」の台船による桁架設がようやく完了した。多摩川渡河部の長さ602.55mのうち、約半分以上を架け終わった。
多摩川左岸から見た台船架設の様子。架設した桁は長さ42.5m、重量681t。午前5時前に台船の移動を開始し、桁の荷重を午前8時までに架設済みの桁とベントに受け替えた。2020年7月21日撮影(写真:大村 拓也)
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羽田連絡道路の事業は、再開発が進められる羽田空港跡地の「羽田グローバルウィングス」と、川崎市殿町地区の「キングスカイフロント」の連携強化や活性化につながると期待されている。多摩川渡河部と川崎市側のアプローチ部は、五洋建設・日立造船・不動テトラ・横河ブリッジ・本間組・高田機工JVが上下部一括で設計・施工を担っている。
羽田連絡道路の位置図(資料:川崎市)
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羽田連絡道路の完成イメージ(資料:川崎市)
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橋は多摩川渡河部の鋼3径間連続鋼床版箱桁(複合ラーメン)と、川崎市側のアプローチ部の鋼2径間連続鈑桁から成る。台船架設は、多摩川渡河部の中央径間と左岸側の側径間で合計5回実施。1回目は3分割した中央径間のうちの1ブロックを19年9月に架設した。
しかし、同年10月の台風19号の影響で多摩川に大量の土砂が堆積。東京湾から現場付近まで作業船が航行できなくなったため、五洋建設JVは河川内の架設工事を中断し、土砂を浚渫(しゅんせつ)した。これにより、2回目の台船架設は予定よりも約半年間遅れ、20年4月に再開したばかりだ。
その後、河川内に仮設したベントを併用し、20年6月に左岸側の側径間に当たる長さ66.9mの桁を架設。さらに7月21日には長さ42.5mの桁を継ぎ足した。残りの左岸側70.15mは、7月21日に架設した桁の端部からトラベラークレーンで張り出し架設する。この径間は堤防や環状8号線の上空に架かる計画だ。
羽田連絡道路の平面図(資料:川崎市)
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『工事費は約55億円増加
右岸側の側径間173mは干潟が広がる「生態系保持空間」なので、台船架設ではなく、橋脚柱頭部からの張り出し架設と、右岸からの手延べ工法による送り出し架設を組み合わせる。今年度中に全ての径間の架設完了を目指す。
右岸側から見た多摩川渡河部。写真の右手は生態系保持空間で、トラベラークレーンで張り出し架設する。2020年8月4日撮影(写真:大村 拓也)
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施行主体の川崎市は当初、20年7月の開通を念頭に置いていた。しかし、着工した17年に多摩川の河床に想定を上回る土砂が堆積していることが判明し、浚渫する必要が生じたので、橋脚工事の着手が遅れた。
さらに、橋脚付近の地盤が想定以上に硬く、基礎工事に使用した鋼管矢板の施工に時間を要した。これらの遅れに、19年の台風の影響が加わり、現在、21年度中の開通を見込んでいる。20年8月時点で工事費も当初から約55億円増え、約272億円になった。多摩川渡河部の工事費は、事業主体である川崎市と東京都が折半する。
2020年8月上旬に、右岸のヤードで地組みした長さ54mの桁と長さ76.9mの手延べ桁を47.25m前進させた。今後、後方に長さ50m分の桁を地組みし、20年12月に河川内へ向けて送り出す(写真:大村 拓也)
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