野村コロナで大チョンボ 機関に「売り」個人に「買い」
編集委員 前田昌孝
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO60979790Q0A630C2000000/
『「故意ではないが、結果的にそうなってしまった」。こんな釈明を聞いても納得できない投資家もいるかもしれない。野村証券が6月9日にホームページに掲載した主要企業の業績見通しは「金融を除く全産業」のベースで2020年度に0.2%の経常増益だが、同時に機関投資家には2ケタ減益の見通しを示していたからだ。増益見通しに安心して株式を買った個人投資家は、11日からの急落で大損を被った可能性もある。野村は責任を免れるか。』
『大手証券会社が3カ月ごとにまとめる主要企業の業績見通しは広くメディアでも報じられ、日本の市場インフラの一角をなしている。コロナ禍で上場企業の決算発表が遅れ、新年度の業績予想を示せないところが相次ぐなど異例の環境下ではあった。それでもアナリストは一応、「感染第2波は起きない」など一定の前提を置けば、独自の業績予想を出す能力を持った人たちだと考えられている。
だから今年はどんな予想が出るか投資家も注目していたし、アナリストらも満を持して予想に臨んだはずだ。例年よりも5日遅れではあったが、先陣を切って野村が6月9日に発表した見通しは、金融を除く全産業306社ベースで、20年度が0.2%の経常増益、21年度が25.7%の経常増益を見込んでいた。「コロナ禍による打撃はあまり大きくないんだな」と受け止めた人も多かったと思われる。』
『リポートには5月31日時点の予想との断り書きもあり、「アナリストによる業績予想の修正が完全に終わっていない」「再び感染者数の増加ペースが加速する場合、予想が下方修正される」などの文言もある。ただ、遅れ気味だった上場企業の決算発表も5月31日には終わっていたため、リポートの読者の多くは19年度の実績を踏まえたうえで、プロが責任を持って新年度の予想を出したと受け止めただろう。
問題はリポートを発表した6月9日の段階で、野村の内部では20年度は2ケタ減益になるという別の見通しが共有されていたことだ。アナリストの予想の集計値は日々更新されているが、筆者が入手した6月4日時点の数値は金融を除く全産業が11.0%の経常減益見通しになっている。この予想は個人顧客にも営業担当者が伝えることがあるが、一定の取引がある機関投資家はオンラインで入手できる。
つまり、野村は大半の個人顧客やホームページの読者に増益見通しだと伝えるのと同時に、機関投資家には2ケタ減益の実態を示していたことになる。多少の予想のズレは例年あるが、普通は6月上旬に正式リポートを発表した後の修正は小幅にとどまる。ところが、今年は6月に入ってから大幅修正したアナリストが多く、結果的に個人には増益で買い、機関投資家には減益で売りを推奨をするかたちになったようだ。』
『野村の広報担当者の説明によると、数字だけを出している日々の集計値と異なり、リポートには分析なども掲載しているため、作成や審査に時間がかかり、基準日と公表日はどうしてもずれるとのこと。リポートでは下方修正の可能性にも触れた文章も含めて投資判断をしてほしいと訴えていた。しかし、投資情報の提供は野村の本業だ。機関投資家と個人投資家に同時に正反対の情報を伝えれば、何が起きるかが想像できないはずはない。
今年の特殊な環境を踏まえれば、正式リポートの発表を予想の修正作業が一巡するまで遅らせるか、早期に公表するのならば最新の集計値を併記するなどの工夫の余地はあった。「金持ちけんかせず」を信条とする顧客が多そうなので大丈夫かもしれないが、リポートを信じて投資し、多額の損失を被った投資家が損害賠償請求訴訟を起こせば、野村の不手際が司法の場で厳しく追及されるだろう。
野村は予想の修正作業が一巡した6月24日に顧客限りの新たなリポートをまとめた。金融を除く全産業の20年度の経常利益は13.9%減と一段と減益率が拡大する。しかし、21年度は増益率が41.3%に高まる。20年度の谷がより深くなる分、21年度の回復力が高まるイメージだ。このリポートの基準日は6月23日に設定している。』
※ 株屋の「レポート」なんて、こんなモン…。
言うことは、いつも殆んど同じだ…。「◯月頃には、上がります。」「その悪材料は、織り込み済みです。」「長期の視点からは、上昇トレンドにあると見ています。」これの繰り返しだ…。
大体、株屋も「営利企業」だ…。公正な第三者機関であるものでも無い…。他人の注文の「取り次ぎ」もやるが、「自己勘定」での売買もやっている(そういう「リスキー」な取り引きを可能にするべく、「商業銀行」から分離されたのが「証券会社」だ。そこいら辺があいまいだった米国金融を震源地として、世界的な金融危機に派生したのが「リーマン」だ…)。
そりゃあ、個々の「アナリスト」の能力は高いんだろう…。しかし、その「レポート」をどういう形で外に発表するのかを決定するのは、「上の人」だ…。その決定は、会社としての「経営判断」によってなされる…。その程度のものなんだよ…。真に受けたり、信じ込んだりしてはいけない…。
それと、ついでだから言っておく…。
「オンライン取り引きにおける手数料」の問題だ…。
ネット証券花盛りで、新興勢が「格安手数料」を競い合っている…。
しかし、一番重要なことは何だと思う?それは、「暴落局面」「激しい下げ局面」における「売り注文」の受け付け・実行の確実さだ…。
そういう「緊急事態」でも、しっかり「注文」をこなせるだけの、それを「実行」できるだけの「システム」になっているのかどうか、ということだ…。
「平時」には、難なくこなせる「システム」でも、注文が殺到し、みんなが血まなこで「逃げよう」としている阿鼻叫喚の時に、それをしっかり受け止めることができるのかどうかは、また「別の話し」だ…。安ければいい…、というものでは無いんだ…。
普段は、そういうことは表には出てこない…。「100年に1度」「10年に1度」とかの「緊急時」に、そういう「実力」が露わになるんだよ…。
そういうことも考えながら、選択していかないとな…。