銀座線渋谷駅の新駅舎にある「M形アーチ」の建設秘話

https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00649/051400029/

『020年1月から運用を始めた、東京メトロ銀座線渋谷駅。新駅舎は長さが110mで、全体がアルミパネルとガラスに覆われています。

 銀座線の高架橋をつくり直し、7本あった橋脚を3本に集約。架け直した鋼製桁の上に、新しい駅舎を建てました。JR山手線をまたぎ、東急百貨店東横店西館3階にあった旧駅舎から、東に約130m移動したことになります。

 新駅舎で目を引くのが、頂部をへこませた「M形アーチ」がもたらす無柱空間です。そのM形アーチについて、正しい記述はどれでしょうか。』

『正解はこちら
1.45本あるM形アーチは全て、違う形をしている』

『アーチの形状が一般的な円弧ではなく、あえてM形にしたのには訳があります。新駅舎を取り巻く様々な条件を合理的に解く構造の在り方を追求した結果、M形になりました。M形鉄骨アーチの利点の1つは、異なる幅や高さに柔軟に対応できることです。

 新駅舎は複雑な形をしています。長さ110mの上屋の幅は、線路の線形の関係で、西から東に向けて25mから20mまですぼんでいます。

 断面も変則的です。東側は西側に比べてホームの位置が低いため、東側屋根のアーチは高く、幅は狭くなります。一方、西側屋根のアーチは低く、幅広です。東西で生じる、最大で高さが約1.8m、幅が約5mの差を、約2.5m間隔で並べた45本の鉄骨フレームの形を少しずつ変えることで調整したのです。』
『線路の勾配に屋根が合っていないのは、将来、渋谷駅の真上にある超高層ビル「渋谷スクランブルスクエア」の中央棟と、その東側にある超高層ビル「渋谷ヒカリエ」(12年完成)をつなぐ歩道「スカイウェイ」を整備するためです。

 「断面形状が連続的に変化していく屋根に歩道の荷重がかかるという条件が、アーチ形状を選択する決め手になった」。構造設計を担当した、KAP(東京都千代田区)代表の岡村仁氏はそう振り返ります。

 歩道のレベルや荷重、電車の建築限界などを踏まえて解析すると、シンプルな円弧状のアーチを成立させるのは難しいことが判明しました。「色々な検討をした結果、円弧の頂部をへこませると、うまく力を処理できることが分かった」(岡村氏)

 岡村氏が行き着いたM形アーチの案に、新駅舎の設計を手掛けた内藤廣建築設計事務所(東京都千代田区)代表の内藤廣氏も、「頂部が張弦梁(はり)のような構造になり、合理的と思った。東京メトロのマークである『M』にも通じて面白い」と賛同したそうです。』