新型肺炎 国内感染どう対応 重症者対策に重点/検査1日3000件に倍増

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO55741510X10C20A2EA2000/

『新型コロナウイルスによる肺炎の人的被害を抑えるには、重症化するリスクの高い人に焦点を当てた対策が焦点となる。国内で感染が広がる一方、大半は軽症で治まっている。リスクの高い高齢者などの感染予防を徹底するとともに、発症した患者を早期に発見して優先的に治療する態勢が求められる。』
『厚生労働省によると、新型ウイルスによる感染症では発熱や喉の痛みのほか、せきが1週間前後続き、強い倦怠(けんたい)感を訴える人が多く、重症化すると肺炎になる。高齢者、糖尿病や呼吸器疾患などの基礎疾患がある人は重症化リスクが高い。』
『1人の感染者からうつる人数を世界保健機関(WHO)は1.4~2.5と見積もるが、フロリダ大や北京微生物流行病研究所などのチームは3.8程度としている。03年に流行した重症急性呼吸器症候群(SARS)は2~4、09年の新型インフルエンザは1.4~1.6とされる。』
『WHOによると、感染者の8割は比較的軽い症状で済み、致死率は世界全体で約2%とされる。現状で感染者を全て把握できているわけでないため実際はもっと低いとみられ、北海道大学の西浦博教授は「0.3~0.6%」との見方を示す。』
『リスクが高い人への感染を抑えるには院内感染の防止がポイントの一つとなる。SARSや中東呼吸器症候群(MERS)は医療関係者を通じてウイルスが拡散した。

今回の新型肺炎では、中国の武漢市の医師が138人の患者を対象に行った調査で41%が院内感染を疑われている。国内でも和歌山県と神奈川県で院内感染が疑われる事例が発生し、医療関係者や患者の感染が判明している。

高齢者施設での感染予防も重要で、沖縄県立中部病院の高山義浩・感染症内科副部長は「100人の入所者がいる施設で感染が広がった場合、30人以上が発症し、数人が死亡するというイメージを持つ必要がある」と警鐘を鳴らす。』
『高リスクの患者を早く発見する狙いもあり、厚労省はウイルス検査を拡充する。中国とのつながりなどにとらわれず「医師が総合的に判断し、感染を疑う」場合も検査対象とするようにした。

検査は当初、国立感染症研究所と地方衛生研究所で1日1500件程度可能だったが、人員や試薬の不足でフル稼働できなかった。体制整備を進めたうえで民間企業や大学にも協力を求め同3千件超まで引き上げた。』
『現時点で新型肺炎専用の薬はなく、治療は肺炎などの対症療法となる。エイズ治療薬などを転用して効果が出たとの報告もあり、厚労省は転用薬の投与を臨床試験(治験)と位置づけ、患者の自己負担が生じないよう研究費を支援している。』