クルーズ船対応「旗国主義」の穴 義務なかった日本 国際法・ルールと日本

 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO55736490X10C20A2PP8000/

『政府は17日、新型コロナウイルスによる肺炎に集団感染したクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」への対応を続けた。英国籍の同船には日本の法律や行政権を適用できない原則があり、対応を複雑にした。国際法上の「旗国主義」がこうした船舶内の感染症対策で落とし穴となっている。』
『国際法では公海上の船舶は所属国が取り締まる「旗国主義」という考え方をとる。国連海洋法条約で、公海上の船舶は旗国の「排他的管轄権に服する」と明記する。旗国の義務として「行政上、技術上および社会上の事項について有効に管轄権を行使しおよび有効に規制を行う」と定める。』
『例外として(1)海賊行為(2)奴隷取引(3)無許可の放送(4)無国籍や国籍を偽る――という外国船舶の取り締まりを認める。今回のような感染症拡大の防止は想定していない。』
『日本の領海を航行中であっても外国船籍の船舶は陸上と同等の日本の管轄権は及ばない。犯罪の結果が日本に及ぶ場合の刑事裁判権や、領海通航中に発生した債務や責任に関する民事裁判権などに限られる。』
『クルーズ船では乗員・乗客の集団行動や共用設備が多い。運航中に新型コロナウイルスが広がったとみられる。公海上にあった同船舶には国際法上、日本が感染拡大の措置を講じる権限や義務はなかった。義務を負っていたのは船舶が籍を置く英国だった。』
『日本が着岸を認め、乗員・乗客の検査や生活支援に取り組んだのは国際法上の義務ではない。乗客の半数近くが日本人という事情を踏まえた判断だった。その結果として米国やカナダなどが自国民を下船・帰国させるのにも協力する。日本政府関係者は「本来はクルーズ船の着岸を拒否することもできた」と語る。』
『集団感染の疑いがある船舶の受け入れには各国ともに二の足を踏む。アジアを回るクルーズ船には入港拒否が相次ぐ。

米ホーランド・アメリカ・ラインが運航するオランダ籍の「ウエステルダム」はその例だ。5日に台湾を出た後、接岸できる港を見つけられず、カンボジアに受け入れられるまで1週間あまり洋上をさまよった。同船には日本も出入国管理法に基づいて外国人の乗員・乗客の入国を拒否した。

日本は7日、台湾で寄港を断られて那覇に向かっていた香港の企業が運航するバハマ籍船についても入港辞退を求めた。』
『ダイヤモンド・プリンセス号の場合を含め、船籍国と運航会社のある国、沿岸国がそれぞれ異なる。一般的にどの国も自国民がほとんど乗っていなかったり、地理的に遠かったりする船舶には積極的に対応しない。』
『国連海洋法条約は旗国と船舶の間の「真正な関係(genuine link)」を求めるが、実際は船舶の所有会社と登録先の国が異なる場合が多い。国によっては登録料収入などを期待し、船籍を容易に与える。日本のタンカー船でもパナマ船籍が多い。こうした「便宜置籍船」はかねて問題になっている。』

 ※ 「インバウンド」の観点から、お金を落としてくれる「宝の山」だったものが、一転して、忌まわしい「疫病神」となるわけだ…。「中…人観光客」は、当分の間、「コロナウィルス」のアイコンとなるだろう…。そして、それを払拭するには、長い時間がかかるだろう…。