ファーウェイ「入ってる」EV続々

ファーウェイ「入ってる」EV続々 部品供給、車も販売
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM2529Y0V20C21A8000000/

『【広州=比奈田悠佑】中国の通信機器最大手、華為技術(ファーウェイ)が電気自動車(EV)関連の事業を開拓している。米中貿易戦争を受けてスマートフォンなど消費者向けビジネスの世界展開が難しいためだ。電子部品やソフトを「基幹システム」としてEVメーカーに供給し、これを搭載したEVの代理販売で提携ブランドを2社に広げた。新興メーカーがひしめく中国のEV業界を足がかりに、新たな収益の柱を探る。

ファーウェイ・インサイド

ファーウェイは2021年内に、北京汽車集団傘下のEVメーカー、北汽藍谷新能源科技のEVを自社の店舗で発売する。9月下旬に北汽藍谷が発表した。

ファーウェイは車関連のより高度な部品やソフトウエアを「HI(ファーウェイ・インサイド)」と銘打ち、EVメーカーへの売り込みを強めている。今回は北汽藍谷の高級EVブランド「ARCFOX」のうち、HIを組み込んだ車種を販売する。

ファーウェイが自社店舗で扱うEVとしては、中堅メーカー重慶小康工業集団の傘下企業が生産するEV「セレスSF5」を4月に発売して以来、2社目の案件となる見込みだ。ファーウェイはHIの採用や知名度の拡大へ同様の提携企業を広げる構えだ。

ファーウェイの電気製品の店舗でEV「セレスSF5」に見入る来店客ら(北京市)=ロイター
中国メディアによると、ファーウェイ側は店舗で販売したEVの売上高の1割を得られる。そのうち7~8割が販売店の取り分となる。販売店の多くは直営ではなく、別のオーナーがいる「代理店」だ。セレスSF5の四輪駆動モデル(24万6800元=約425万円)で計算すると、1台あたりのファーウェイの取り分は10万円前後になる。

スマホ店員にEV教育

「売れ行きが良く、生産能力が追いついていない。納車には2カ月かかる」――。広州市中心部のファーウェイ販売店を訪ねると、男性従業員がセレスSF5の好調をアピールした。この店では6月下旬に販売を始め、1カ月間で10台を売った。

男性従業員はもともとスマホなどの製品を売っていたが、セレスSF5販売開始の2カ月前からEV関連の教育を受け始めた。メーカーの本拠地である重慶にも研修で足を運んだという。

4月以降、中国各地でEVを取り扱うファーウェイ店が増えている。車ディーラーなどで経験を持つ人材の採用も進めており、求人アプリを見ると、製品説明や試乗に付き添う従業員を円換算で18万円近い月給で募集している。全国の小売りや卸売り関連の平均月収が12万円程度であることから比較的良い待遇だ。

米中貿易戦争がファーウェイの大きな障壁に(同社の任正非・最高経営責任者=CEO)=ロイター

年間売上高が約15兆円に上るファーウェイにとってEV関連の収益はまだ限定的だ。それでもEVに真剣に取り組み始めた背景に、同社がHIに託す新たな戦略がある。

車関連の開発に年10億ドル

同社は21年以降、自動運転関連を含め、車分野の研究開発に毎年10億ドル(約1100億円)を投じる計画だ。スマートカーソリューション・ビジネスユニットの王軍・総裁は「ネットにつながるEVで求められる部品は従来の車部品とは異なる。市場の潜在力は大きい」と話す。車のIT化や自動化ニーズのなかで、自社のノウハウが生きるとみる。

主力としてきたスマホ事業への逆風は強い。ファーウェイは米政府が20年に打ち出した輸出規制の強化により、スマホ生産に不可欠な半導体の調達が厳しく制限された。同年11月には低価格のスマホブランド「HONOR(オナー)」を売却する事態となり、米調査会社IDCによると21年1~3月期の中国のスマホ出荷台数シェアで、トップ5位から脱落した。

既存事業が袋小路に入るなか、ファーウェイはEV販売で完成車メーカーを側面支援しながら、自社の部品やソフトの採用拡大を狙う。EV販売では大手メーカーが大通り沿いなど「ロードサイド」型の店舗でしのぎを削るなか、ファーウェイは市街地のショッピングセンターに多い自社店舗を引き続き活用する。

日系車メーカーの営業担当者は「スマホ店舗でのEV販売は時流に合っている」と話す。集客にコストをかけなくても常に多くの消費者が行き交う立地で、家電販売などとの相乗効果も期待できる。

ただ、ショッピングセンターの店舗では保守・修理への対応が難しく、試乗も少し離れた駐車場などへの移動が必要になる。部品やソフト開発での安全評価も通信機器とは異なる厳格な水準が求められ、事業を本格軌道に乗せるには課題も多い。米国などの通商規制の先行きによっては、ファーウェイの部品やシステムの搭載を避けるEVメーカーが相次ぐ可能性もある。』

Microsoft、ビジネスSNS「リンクトイン」中国版を閉鎖

Microsoft、ビジネスSNS「リンクトイン」中国版を閉鎖
米系SNS、中国で消滅
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN14ESR0U1A011C2000000/

『【シリコンバレー=奥平和行】米マイクロソフト傘下でビジネス向けSNS(交流サイト)を運営する米リンクトインは14日、中国版を年内に閉鎖すると発表した。2014年に中国でサービスを立ち上げて同国で利用できる唯一の主要米系SNSとなっていたが、インターネットに関する規制強化により事業の継続が難しいと判断した。

リンクトインのモハック・シュロフ上級副社長が公式ブログを通じて発表した。中国版について「中国の利用者を対象とした求職サービスとしては成果を上げているが、交流機能は同じ水準の成功に達していない」と述べた。さらに「事業環境が非常に厳しくなり、法令順守の要求が強まっている」と説明した。

リンクトインの中国版は閉鎖する一方、求職・求人サービスに特化した新サービス「InJobs(インジョブス)」を同国で年内に始めるとしている。

リンクトインは米国で02年にサービスを始めた。利用者は実名や職歴を登録し、相互にフォローしたり、投稿や記事を共有したりすることができる。マイクロソフトが16年に約260億ドル(当時の為替レートで約3兆円)で買収した。

現在は約200カ国・地域でサービスを提供し、直近の利用者は約7億7000万人だった。このうち中国は5000万人程度だったもようだ。

中国ではネットを通じた反体制的な言論を取り締まることなどを目的に、ネットサービスの運営企業に検閲を求めている。フェイスブックをはじめとする米国のSNS運営企業は世界最大のネット人口を抱える中国への進出を模索してきたが、言論の自由を重視する米国の世論や社員の声などと折り合いを付けることができず、実現していない。

また、中国当局は国内におけるこうしたサービスの使用を禁じ、VPN(仮想私設網)を使うなどしないと利用できない状況が続いてきた。一連の規制は参入障壁としても働き、微博(ウェイボ)が「中国版ツイッター」として人気を集めるなど、米国企業と同様のサービスを提供する中国のネット企業を育成する役割も果たしてきた。

リンクトインは用途をビジネス向けに限定しているほか、中国にサーバーを設置するなど法令を順守する姿勢を示したことで中国版の提供を認められてきた経緯がある。

ただ、同国は今年9月にデータの統制を強化するデータ安全法(データセキュリティー法)を施行し、11月には個人情報保護法も予定している。規制強化により不透明感が高まり、企業の対応コストが上昇する懸念が強まっていた。

多様な観点からニュースを考える

※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。

浅川直輝のアバター
浅川直輝
日経BP 「日経コンピュータ」編集長
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ひとこと解説

中国政府は2021年にデータ安全法と個人情報保護保護法を相次ぎ成立させ、サイバーセキュリティ法と合わせてデータ保護の基本法を整備しました。

当局はこうした法律に基づき、国内・国外を問わずIT事業者へのデータ統制を強めています。

例えば2021年7月には滴滴出行のアプリで「個人情報の収集と使用に関する重大な違反を確認した」として、サイバーセキュリティ法に基づきアプリのダウンロード停止を命じました。外国企業に対しても、これまで以上に厳しい措置を取ることが予想されます。

2021年10月15日 7:48 』

【解決】IT/Sier業界・業種分かりずらい!分り易く解説

【解決】IT/Sier業界・業種分かりずらい!分り易く解説|素人向け
https://itinfoshop.com/it-work-overview/

 ※ 良記事だ…。

 ※ 一口に「IT業界・IT職種」と言っても、なかなか分かりずらい…。

 ※ この記事読めば、大体のところ、その全体像が把握できる…。

 ※ 丸々紹介する…。

法人最低税率、なぜ15%で合意? 企業の税逃れに歯止め

法人最低税率、なぜ15%で合意? 企業の税逃れに歯止め
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA08CZ20Y1A001C2000000/

『経済協力開発機構(OECD)加盟国を含む136カ国・地域が8日、国際的な法人課税の新たなルールで合意した。法人税の最低税率を15%にするなど、国際社会が100年ぶりとも言われる歴史的な改革に踏み出したのはなぜか。3つのポイントから読み解く。

・税率の引き下げ競争はなぜ起きたのか
・国際的な課税ルールの改革機運が高まったきっかけは
・グローバル企業への課税はどう変わるのか

(1)法人税率の引き下げ競争はなぜ起きたのか

企業が事業などを通じてもうけたお金にかかるのが法人税だ。多くの国にとって法人税は、個人が稼いだ給与などに課す所得税、モノやサービスの取引にかける消費税(付加価値税)と並んで税収の大きな柱になっている。

税の徴収は国家の主権にかかわる問題だ。自国の領土内で活動する企業にどんな税金をどのくらい課すかはその国だけが決められる。企業が国境を越えて活動する機会が少なく、特定の国の領土内にとどまっていた時代は、法人税がどんなに高くてもその国の企業は甘んじて受け入れるしかなかった。

状況を大きく変えたのが、1970年代以降に加速した経済のグローバル化だ。国境を越えて世界中の国に活動の拠点を置く企業が増えた。こうした多国籍企業は事業環境がより有利な国に工場を建てたり、店舗を置いたりする。どの国で活動するかを決める際に、重要な判断材料の一つとなるのが税制だ。法人税など税負担の軽い国が企業をひき付ける。

特に80年代に入ると、サッチャー英政権やレーガン米政権が経済を活性化する切り札として法人税率の引き下げに動き始めた。背景にあったのが、新自由主義と呼ばれる経済思想だ。国家は企業の活動にできるだけ介入すべきでないという主張で、税金も安ければ安いほどいいと考える。

英米による法人税率の引き下げをきっかけに、世界的な減税競争が始まった。税金が高いままでは企業がどんどん税率の低い国に逃げてしまうからだ。日本もこうした競争と無縁ではいられず、80年代に40%を超えていた法人税率(国税)は2018年度に23.2%まで下がった。

(2)国際的な課税ルールの改革機運が高まったきっかけは

IT大手の課税逃れへの批判が国際ルール見直し機運が高まる一因となった

グローバル化に続き、2000年代に入って押し寄せたのがデジタル化の波だ。IT(情報技術)を駆使して世界中で稼ぐ米GAFA(親会社のアルファベットを含むグーグル、アマゾン・ドット・コム、フェイスブック、アップル)のようなデジタル企業が経済の中心に躍り出た。

デジタル企業は事業所など物理的な拠点を置かない国でもインターネットを通じてビジネスを展開できる。いまの法人課税には1920年代にできた「恒久的な施設なくして課税なし」という国際的な原則がある。これに基づけば、デジタル企業はある国で消費者にモノやサービスを売ってどんなに巨額の利益をあげても、その国に工場や店舗といった物理的な拠点がなければ法人税を払わなくて済む。法人税率が低い国に拠点を置き、サービスの利用者がいる別の国で税金を払わずに稼ぐやり方が広がった。

法人税率の引き下げ競争とデジタル化の流れが加速する中で、課税をうまく逃れた多国籍企業やデジタル企業は富を蓄積した。こうした企業の税逃れを問題視する機運が高まった契機は、2008年秋に起きたリーマン・ショックだ。危機を克服するために各国は大規模な景気対策を打ち出し、財政状況が悪化した。にもかかわらず、富をため込んだ多国籍企業が払うべき税金を払っていないという批判がわき起こった。

OECDは2012年に「BEPS(税源浸食と利益移転)」と呼ばれるプロジェクトを立ち上げた。各国政府が連携して多国籍企業による税逃れを防ぎ、公平な競争条件を整える手立てを話し合うためだ。

(3)グローバル企業への課税はどう変わるのか

法人税の最低税率とデジタル課税の国際ルールづくりを柱とするBEPSの議論はなかなか進まなかった。参加国が多く、利害の調整が難しかったからだ。しかし、2020年に始まった新型コロナウイルスの危機が転機となる。各国が巨額の財政出動を繰り返し、税財源の確保が必要になったためだ。法人税率の低さを競う余裕はなくなった。

21年1月に発足したバイデン米政権は5月に法人税の最低税率を「少なくとも15%」とする案を提示し、主要7カ国(G7)が同調した。OECD加盟国を含む130以上の国・地域も賛同し、8日の最終合意にこぎ着けた。

今回の合意では、法人税の最低税率を「15%」とする各国共通のルールを設けるとともに、GAFAのような巨大IT企業を念頭にデジタル課税の仕組みも決めた。全世界の売上高が200億ユーロ(約2.6兆円)を超し、利益率が10%超の企業が対象だ。

この条件に合う約100社のグローバル企業が稼いだ利益のうち、総収入の10%を超える利益を「超過利益」とし、その25%にサービスの利用者がいる国・地域が課税できるようにする。対象企業が工場や店舗などの物理的な拠点を置かない国や地域も課税できるようになるわけだ。実際の課税権は、売上高に応じて各国・地域に配分する。

1920年代にできた「恒久施設なくして課税なし」の原則をおよそ100年ぶりに転換する歴史的な改革だ。新ルールは2023年からの実施をめざす。

(経済部長 高橋哲史)』

<Q&A>法人課税強化、国際合意のポイントは? デジタル課税、最低税率15%以上
2021年7月3日 06時00分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/114283

『OECDが多国籍企業の課税逃れを防ぐため、法人税の新たな国際ルールをつくることに大枠で合意しました。このルールの狙いと中身についてまとめました。(原田晋也)

 Q なぜ、新ルールが必要なのですか。

 A 現行ルールでは、工場や支店など拠点がなければ、その国は企業に課税しないのが原則です。しかし、拠点を世界各国に置かなくても、インターネットを使って事業を展開する「GAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)」などの巨大IT企業が登場。これらの企業に対し、課税ができない国が増えました。サービスを展開しているのに拠点がないとの理由で課税を逃れる企業が増え、経済の変化に税制が追いついていませんでした。
 「タックスヘイブン(租税回避地)」と呼ばれる法人税率が低い国に拠点を置く多国籍企業が増えたことも理由です。企業誘致のために各国で税率引き下げ競争が起き、財政悪化や格差拡大を招いたとの批判が根強くありました。

 Q 合意の内容は。

 A 巨大IT企業を想定した「デジタル課税」と、「最低法人税率」の二つがあります。デジタル課税では、多国籍企業の拠点がない国でも、サービスが行われていたら、消費国(市場国)として課税できるようになります。具体的には、巨大IT企業の利益率のうち10%を超える部分に、20~30%の税率が適用され、市場国に税収が分配されます。
 Q 最低法人税率の方はどんな仕組みですか。

 A 最低法人税率を「15%以上」とすることで合意しました。仮に、多国籍企業が税率がより低い10%の国に子会社を置いても、親会社が所在する国からも、15%から10%を差し引いた5%分を追加的に課税できるようになります。タックスヘイブンを使った課税逃れが難しくなるかもしれません。

 Q 各国はなぜ合意に向かうことができたのでしょうか。

 A 米国は従来、多国籍企業に対する課税強化には否定的でした。しかし、バイデン政権が誕生し、税の公平性に重きを置くようになり、最低税率導入を推進するようになったためです。また、新型コロナウイルス対策で大型の景気対策を打った各国の財政状況が厳しくなっているという事情があります。

【関連記事】デジタル税、日本も数社対象か OECD大枠合意 』

GAFAを作った「01年」 米同時テロ20年と人材吸引力

GAFAを作った「01年」 米同時テロ20年と人材吸引力
本社コメンテーター 中山淳史
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCD25C040V20C21A8000000/

『米ニューヨークで起きた同時テロから9月11日で20年になる。

あの日は早朝の当番でマンハッタンにある日本経済新聞の米州総局にいた。「セスナ墜落か」のテロップがCNNテレビに流れたのは午前9時前。しばらくして飛び込んできたのが、2機目の旅客機が世界貿易センタービルに衝突する衝撃の映像だった。

事件から半年間は世界中の都市で航空便が乱れた。効率経営の象徴だった「ジャストインタイム方式」によるモノの流れも滞り、企業には「BCP(事業継続計画)」という言葉が一気に広まった。「挑まれた国家」。米紙ニューヨーク・タイムズに載った記事は今も記憶に鮮明だが、挑戦されたのは米国だけではなく、グローバル化した世界だった。

第一生命経済研究所の永浜利広首席エコノミストは「この20年の世界の変化は多くが同時テロ事件に起因する」と見る。景気浮揚を狙った米国の金融緩和は住宅ブームを経て2008年のリーマン・ショックへの流れを作った。

海外ではアフガニスタン、イラクへと戦線が広がり、今日のアフガン混乱を生んだ。米国の戦費増加は11年の米国債格下げの一因にもなった。

中国のWTO加盟も01年

01年は米国と対立を深める中国が世界貿易機関(WTO)に加盟した年でもあった。中国はこれを機に資本財への積極投資を進め、「世界の工場」と呼ばれるようになる。リーマン危機後の世界経済をけん引したのは中国だった。

この20年をチャンスに変えたのは米国の企業の中にもあった。特に目立ったのがIT(情報技術)大手のGAFAである。

4社が設立されたのは、アップルが1976年、アマゾン・ドット・コムが94年、グーグル(アルファベット子会社)が98年、フェイスブックが04年だ。だが、業績の指数関数的な伸びは00年代初めから半ばにかけて始まる。

決定づけたのは主に2つだ。高速大容量の通信技術の革新を背景にインターネット人口が増加したこと、同時テロでも止まることのなかったグローバル化が一段と進展したことだ。

アップルには中国のWTO加盟も飛躍する要因となった。同社は中国を中心にサプライチェーン(供給網)を世界に広げ、やはり01年に運用が始まった通信規格「3G」も駆って、「iPhone」を07年に生み出す。

iPhoneの供給網は部品の移動距離(延べ)が月と地球を7往復する長さに匹敵するという。中国はそうしたアップルの供給網の拡大と軌を一にして、資本財から消費財まであらゆるモノを自国で内製できる力をつけていく。

最大の消費地でもある中国での動きは、国境をまたぐモノの貿易量の伸びが経済成長率を下回る「スロートレード」の一因をつくった。新興国に輸出して稼ぐ日本などの先進国は大きな試練に直面した。

アップルなど3社、株式報酬を本格支給

GAFAが築いた分業体制、いわゆる「最適化された世界」はモノやカネを超えた領域にも及んだ。ヒトだ。不断の技術革新を実現するには、優秀な人材を世界中から引き寄せ、定着させる必要がある。その「吸引装置」の働きをしたのが、報酬制度だった。

GAFAが毎年、経営幹部だけでなく、従業員にも広く自社株を割り当てていることはあまり知られていない。現金の給与に上乗せする「株式報酬」だ。フェイスブックを除き、アップルなど3社が株式報酬を本格的に支給し始めた時期は、01年ごろだった。

米国ではアップルなど多くの企業が株式報酬を導入しているが日本の大企業ではまだ少ない

企業が1年間に発行済み株式の何%を従業員に与えたかを示す割合を「バーンレート」と呼ぶ。報酬コンサルタントのペイ・ガバナンスによれば、アップルの19年のそれは0.83%。その時点の株式時価総額が100兆円だったとして計算すると、8300億円相当の自社株が、社員に行き渡ったことになる。

投資運用会社、みさき投資の中神康議社長がペイ・ガバナンスの集計値をもとにアップルとソニーの1人当たりの株式報酬を比較している。アップルは8300億円のうち2%が経営幹部向け。98%の従業員向けも役職や成果によって金額は異なるようだが、あえて総額を均等に割って単純平均すると、19年の株式報酬は1人約600万円だ。

一方、その年のソニーのバーンレートは0.26%で、同様に計算すると、株式報酬は1人約6万円。制度の対象は経営幹部が中心とみられるが、アップルと同様に従業員数で割って平均した。

株式報酬は今では多くの米国企業が導入しているが、日本の大手企業の採用例はまだ少ない。導入していても経営幹部向けに限るストックオプション(新株予約権)などの場合が大半だ。

テック人材の約5割が外国人

この差は大きいかもしれない。アップルの場合、時価総額は現在約270兆円に達している。勤続が長い人ほど保有する株の価値も上がったほか、今後も毎年、新たな自社株が支給される。

米カリフォルニア州によれば、シリコンバレーを含む同州北部のハイテク地帯、ベイエリアで働く「テック人材」は約5割が外国人だという。GAFAから競うように広がった報酬制度の吸引効果は絶大だったと言えるだろう。

日本企業はGAFAを超える「最適化された世界」を構築し、大きな成長の波に乗れるのか。重い課題が突きつけられるばかりの20年でもあった。

ニュースを深く読み解く「Deep Insight」まとめへDeep Insight

中山 淳史

自動車、電機など産業動向、経営トレンドに精通。編集委員、論説委員などを経て2017年2月より現職。「GEと東芝」「移動の未来」などで講演多数。2001年の米同時テロをニューヨーク駐在時に取材。アルゼンチン留学も。

GAFAを作った「01年」 米同時テロ20年と人材吸引力(10:00)
「循環経済」でルールを握れ 欧州が狙う脱炭素の次(18日)』

デジタル決済、勝者なき消耗戦 グーグル参入の衝撃

デジタル決済、勝者なき消耗戦 グーグル参入の衝撃
キャッシュレス新世紀(中)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB14EGK0U1A710C2000000/

『米グーグルがスマートフォンの決済アプリを運営するpring(プリン、東京・港)の買収を決めた。2022年春にも送金・決済事業を本格展開するとみられる。大手銀行は「ユーザー層の厚みを考えると脅威」(メガバンク幹部)と警戒する。キャッシュレス後進国の日本。決済サービス乱立は、勝者なき消耗戦を長引かせることになる。

【前回記事】塗り替わる世界金融地図 フィンテック、低所得層に恩恵
プリンは社員わずか12人。グーグルがそれでも目をつけたのは送金サービスの潜在力だ。利用者同士ならアプリ内の送金は無料で、3メガ銀など50行以上で入出金できる。法人向けサービスでも約400社を顧客に持つ。グーグルには「グーグルペイ」があるが、クレジットカード保有者などに利用が限られる。

グーグルは検索エンジンや地図サービス、動画配信に強みがある。連絡先一覧から友人とお金をやり取りしたり、地図アプリで目当ての飲食店に事前に注文して決済をすませたりできる。プリン買収で想定される金融サービスは多様だ。

20年の国内個人消費に占めるキャッシュレス決済比率は約3割にとどまる。7~9割の韓国や中国に遠く及ばない。日本は1人当たり約10の銀行口座を持つほど金融インフラが整っているにもかかわらず、「現金信仰」が根強い。グーグルはその落差を市場拡大の好機ととらえた。

実はグーグルの買収劇には対抗馬がいた。米ペイパル・ホールディングス。米国の個人間送金で9割超の利用率を誇るガリバーだが、プリンが最後になびいたのはグーグルだった。総額200億円程度の買収額だけでなく、「我々の送金機能と掛け合わせたサービスの広がりが決め手になった」。プリン関係者は語る。

日本はデジタル決済のサービスが乱立する。セブンイレブン店頭では電子マネーからQRコードまで30を超える支払い手段がある。各社は大型還元を先行させ、登録者が4000万人を超える最大手PayPay(ペイペイ)でさえ、21年3月期は700億円超の営業赤字を計上した。
グーグル買収の報は、収益化を狙うペイペイなどが今秋にも中小加盟店への手数料を有料化しようとする矢先に舞い込んだ。思わぬライバル登場で消耗戦がさらに長引く公算が大きい。

東京五輪に伴う訪日観光客の増加がキャッシュレス決済の起爆剤になるとの期待もあった。例えば、国際ブランドのビザはクレジットカード内蔵のICチップをかざす「タッチ決済」の普及を狙っていたものの無観客開催で目算は狂った。

グーグル買収劇は伝統的な金融機関の限界も露呈させた。18年にプリン買収に動いたみずほ銀行は、金額で折り合えずに最終的に断念した。その後独自にスマホ決済「Jコインペイ」を立ち上げたものの、メガバンクや有力地銀は参加を見送ったままだ。

米国は大手銀が外部とのデータ連携に必須の技術「API」を提供する。フィンテックの台頭を受け、大手銀もデジタル決済に参入して協業する道を選んだ。米ゴールドマン・サックスなどはオンライン決済のストライプと組み、ネット通販業者など新たな顧客開拓を進める。

日本は伝統的な金融機関が収益基盤を守るために自前主義にこだわり、フィンテックとの連携が進まない。その鈍重な動きはデジタル金融における日本の周回遅れを定着させるリスクもはらむ。

【関連記事】
・デジタル決済、米欧の新興勢台頭 収益化に課題も
・金融庁、デジタル金融の規制点検へ 研究会初会合
・「脱現金」世界で加速 デジタル決済、5年で7割増 』

Google持ち株会社、産業用ロボ制御ソフト参入

Google持ち株会社、産業用ロボ制御ソフト参入 AI活用
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN240830U1A720C2000000/

『【シリコンバレー=奥平和行】米グーグルの親会社である米アルファベットは23日、産業用ロボットの制御ソフトに参入したことを明らかにした。人工知能(AI)などを活用してロボットの設定を容易にすることにより、生産現場などにおけるロボット活用を後押しするとしている。

アルファベットの新規事業開発部門である「X」が新会社のイントリンシックを設立した。自動運転技術の開発を進めるウェイモなどの兄弟会社となる。新会社の最高経営責任者(CEO)についたウェンディ・タン・ホワイト氏が23日にブログで事業計画を説明した。

ホワイト氏によると、産業用ロボットは設定が煩雑で利用拡大の妨げになっているという。また、軟らかいコードなどの組み付けを不得手とすることが多い。AIの中核技術である深層学習や強化学習などを活用し、こうした問題を解決したい考えだ。

新会社は過去5年半にわたってXで開発を進めてきた技術を活用する。ホワイト氏は数百時間のプログラミングが必要だった設定作業を2時間に短縮できた事例などを示し、「当社の技術は産業用ロボットの利用に伴う時間やコスト、煩雑さを大幅に減らせる可能性がある」と指摘している。

今後は外部企業と共同で実用化に向けた検証作業を加速したい考えだ。具体的には自動車や電機、ヘルスケアといった生産現場で多数のロボットを活用している企業と協力する機会を探ると説明している。

グーグルは以前からロボット事業に参入する機会を探ってきた。2013年には米国防総省の国防高等研究計画局(DARPA)の支援を受けて二足歩行ロボットなどを開発してきた米ボストン・ダイナミクスを買収した。ただ、開発の方向性などを巡って同社との間で食い違いが生じ、17年にソフトバンクグループに売却している。』

〔ビジネス系のサブスク・モデルは、成功しているのか?〕

 ※ オレも、一時はMSの「Officeスイート」を使っていたことがある…。

 ※ けっこうな額だった、記憶がある…。

 ※ しかし、「AOO(アパッチ・オープン・オフィス)」に乗り換えてからは、とんとご無沙汰だ…。

 ※ 別に、「マクロ」組んだりしなければ、これで充分なんだよな…。

 ※ せいぜいが、「文書作成」して、印刷したり、「表計算ソフト」ちょっと使ったりするくらいのものだ…。「関数」だって、「平均」くらいしか、使わんしな…。

 ※ ただし、昔からの「マクロ」の蓄積があったり、「VBA」でバリバリ「プログラミング」したりしている場合は、「囲い込まれて」泥沼となるんだろう…。

「Office 365」移行を急ぐ企業が増えているのはなぜ?
https://techtarget.itmedia.co.jp/tt/news/1502/19/news05.html

「365 使っているけど よく分からん」 ニトリのOffice 365導入、成功のカギは“アンバサダー制度”にあった
https://www.itmedia.co.jp/enterprise/articles/1811/20/news015.html

売り上げ1兆円突破、アドビがサブスク化に成功した理由。幹部が語った「データ重視経営」の核心
https://www.businessinsider.jp/post-189531

Twitter、インドで苦情処理責任者採用 IT規制に対応

Twitter、インドで苦情処理責任者採用 IT規制に対応
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM08D7V0Y1A700C2000000/

『米ツイッターは8日、インドで新たに導入されたIT(情報技術)規制に従って苦情処理責任者を採用する方針を示した。インド政府はツイッターの規制違反を問題視し、投稿内容に関する同社の免責措置を解除すると主張していた。

インド政府は2月にSNS(交流サイト)運営企業などに対する規制を発表し、不適切とされる投稿の削除規定などを定めた。苦情処理などに対応するインド在住の責任者設置なども義務付けたが、ツイッターが適切な担当者を任命していないと批判していた。

ツイッターは8日にデリー高等裁判所に提出した文書で、常勤の苦情処理責任者を8週間以内に直接雇用する方針を明らかにした。暫定的な苦情処理責任者は11日までに任命する。チーフ・コンプライアンス・オフィサーの任命など、ほかの規制についても順次対応していく。

インド政府は5日にデリー高裁に提出した文書で、猶予期間を過ぎてもツイッターの違反が続いているとして、SNS運営企業がユーザーの投稿内容に直接の責任を負わない免責措置が解除されるとの見解を示した。デリー高裁はツイッターに対し、違反状態を是正する見通しについて報告を求めていた。

IT規制を巡っては米フェイスブック傘下の対話アプリ大手ワッツアップが5月に、プライバシー保護の観点からデリー高裁に違憲申し立てを行った。』

インド政府、ツイッターの免責解除主張 IT規制巡り

インド政府、ツイッターの免責解除主張 IT規制巡り
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM06E940W1A700C2000000/

『インド政府と米ツイッターの対立が激化している。インド政府はIT(情報技術)規制違反を理由に、不適切な投稿に関するツイッターの免責措置が解除されると主張した。デリー高等裁判所は6日、ツイッターに対し違反状態をいつまでに解消できるか8日までに報告するよう求めた。

現地メディアなどが報じた。インド政府は2月にSNS(交流サイト)運営企業などに対するIT規制を発表し、問題があると判断された投稿に対する削除規定などを定めた。当局と協力して苦情処理などに対応するインド在住の責任者任命も義務付けた。

インド政府は発表から3カ月の準備期間を過ぎても、ツイッターが適切な責任者を任命していないと批判していた。デリー高裁に5日に提出した文書では同社の違反が続いているとして、SNS運営企業として投稿内容に直接の責任を負わない免責措置が解除されるとの見解を示した。今後は投稿されたツイートなどに対して、ツイッターの刑事責任も問えるとの姿勢をみせた。デリー高裁はツイッターに、責任者の任命見通しなどについて8日までに回答を準備するよう促したという。

インドのIT規制では、問題のあるコンテンツについて「最初の発信者」を特定できるようにする規定も盛り込まれている。米フェイスブック傘下の対話アプリ大手ワッツアップは5月に、プライバシー保護の観点からデリー高裁に違憲申し立てを行っていた。』

IDを握れ、ネット広告で経済圏攻防

IDを握れ、ネット広告で経済圏攻防 広がる脱クッキー
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC3043R0Q1A630C2000000/

『世界でインターネット広告市場の地殻変動が起きようとしている。米グーグルはネット利用者の嗜好などを把握するサード・パーティー・クッキーを2023年にも廃止する方針を発表。プライバシー保護の流れが加速するなか、膨大なユーザー数を基盤とする電子商取引(EC)やSNSなどプラットフォーマーによるネット広告の主導権争いが始まる。』

『脱クッキー「絶好のビジネスチャンス」
「脱クッキーは当社の広告事業を伸ばすうえで絶好の機会と捉えている」。楽天グループ執行役員の紺野俊介氏はこう意気込む。楽天グループのID保有者数は1億人を超える。ECのみならず、旅行予約、金融、携帯電話といったさまざまなサービスを展開し、物販にとどまらないデータを蓄積している。ここ数年でポイント制度を既存の小売事業者に導入することで、オフラインのデータ取得にも力を注ぐ。

楽天グループは2017年に電通と共同出資会社の楽天データマーケティングを設立し、楽天グループのデータを活用した広告事業を本格化。従来は楽天市場の出店者向けの広告サービスが中心だったが、徐々にメーカーなど非出店者も活用可能な広告商品を増やしている。

楽天グループの広告事業の最大の強みは「購買データ」だ。例えばSNSの事業者は利用者が閲覧したコンテンツや検索などの行動を基に、興味関心などを推測して、ターゲティングメニューとして提供する。一方、楽天グループはどの商品を購入したかというデータを基に会員を抽出して広告を配信できる。

「楽天グループの広告事業の屋台骨を支えているのは楽天市場。市場上の売買データが増えるほど、広告精度も高まる。それを基盤にビジネスを拡大する」と紺野氏は語る。楽天グループはIDを軸にデータを蓄積したファースト・パーティー・データを広告事業に用いるため、クッキー規制の影響を受けにくい。』

『フェイスブック、脱クッキーの仕組み検証

フェイスブックは新たなネット広告の仕組み作りを急ぐ(ロイター)
米フェイスブックも、クッキー経済圏からID経済圏への移行に向けた準備を進めている。これまで「フェイスブック ピクセル」という広告配信や効果検証の仕組みを提供してきた。広告主企業のサイトを訪問した、あるいは申し込みボタンを押したといった行動の歴をサード・パーティー・クッキーとして記録し、フェイスブックやインスタグラム上の広告配信に活用する仕組みだ。

今後、サード・パーティー・クッキーが利用できなくなる状況に備え、フェイスブックは「コンバージョンAPI」という仕組みを用意した。クッキーを使わずに広告主企業とフェイスブックのサーバー間で通信をするためのプログラムである。20年秋に公開され、広告主企業との検証が始まっている。』

『ネット広告の転換期に

「単なる規制の問題ではなく、あらゆるサービスが利用者基点へと変わっていく地殻変動だと捉えている」。そう話すのはフェイスブックのマーケティングサイエンス ノースイーストアジア地域統括の中村淳一氏だ。パソコンからスマホに移行したモバイル革命で多くの企業が様々な対応を余儀なくされたように、デジタルのエコシステム全体が変わる”プライバシー革命”が近づいているとみる。

「優秀なファースト・パーティーのデータを自前で持てる企業は限られる。スケールを取るにはIDが多いサービスと組むのが有利なのは間違いない」と中村氏は言う。サード・パーティー・クッキーに依存しない計測機能を強化し、有利な立場にいる状況を維持していく考えだ。

大規模なIDや独自性のあるデータを保有するID経済圏は多数ある。例えば、アマゾン・ドット・コムやZOZOも購買データを起点とした広告事業が好調だ。化粧品口コミサービス「アットコスメ」や飲食店口コミサービス「食べログ」は、特定の業種に特化したファースト・パーティー・データを基にした広告事業を展開する。

NTTドコモやKDDIといった携帯キャリアは多くの加入者を持ち、独自のIDの下でモバイル決済サービスなどを展開してデータ基盤を強化している。』

『メルカリは広告事業を展開していないものの、数千万単位の利用者と大きな購買データを持つため、広告プラットフォーマーとしてのポテンシャルも高そうだ。

ネット広告の新たなID経済圏が広がる中で、台風の目となるのは米グーグルであることは間違いない。広告業界が対策に追われる中で、意外にも「待った」をかけたのがグーグルだった。同社は米国時間の2021年6月24日、ネット閲覧ソフト(ブラウザー)「クローム」におけるサード・パーティー・クッキー廃止を23年後半に延期すると発表した。

背景には、デジタル広告市場におけるグーグルの独占・寡占への懸念が広がっていることがある。英国の競争・市場庁など規制当局が調査に乗り出しており、その調整に時間を要していることもグーグルは明かしている。』

『グーグル、代替技術の開発主導

グーグルが主導で開発してきたサード・パーティー・クッキーの代替技術「FLoC(フェデレーテッド・ラーニング・オブ・コホート)」にも課題は多い。

FLoCはクロームの利用データを人工知能(AI)で解析し、利用者を「コホート」と呼ぶグループに分類。そのコホートのIDを広告識別子として、広告会社に提供する方法だ。4月には、FLoCを活用した実際の広告配信テストも始まっている。

だが、FLoCはあくまでグーグルが提供するもの。同社を中心に仕様などを含めてコントロールすることになる。グーグルはオープンな仕組みであることを強調するが、汎用技術のサード・パーティー・クッキーと比較して公共性が低いと見られる可能性もある。

FLoCのIDは、AIが「何かの違いがありそうだ」と区分けした集団にすぎず、それ単体では何を意味するのか広告会社は分からないという課題もある。

FLoCを活用した広告配信などでデータを蓄積し、「AというIDは自動車関心層である」といった具合に配信のアルゴリズムを再構築する必要がある。

そうしたノウハウがうまく構築できない場合、サード・パーティー・クッキーを用いた配信に比べて、広告効果が減少する恐れがある。電通デジタルの杉浦友彦副社長は「ターゲティング広告の配信精度の低下や、広告効果の計測がしづらくなるなど、一時的に不都合が出ると思っている」と見る。

こうした背景から、グーグルに限らずIDで顧客やデータを囲い込む「ウォールド・ガーデン(囲まれた庭)」と呼ばれる経済圏を築くプラットフォーマーがより力を持つ可能性がある。

IDを軸に取得したデータは、プラットフォーマーにとってファースト・パーティー・データに当たり、クッキー規制の影響を受けにくいからだ。グーグルであればクロームで閲覧したサイト情報や検索履歴、「ユーチューブ」の視聴履歴などが挙げられる。IDを軸とした経済圏を築くグーグルの広告プラットフォームは、脱クッキー時代でも高精度の広告配信を維持できるため、広告主も広告費を投下しやすいというわけだ。

従来、ウォールドガーデンは主にGAFA(グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル)を指すことが多かったが、その概念はより広いものとなっていく。』

『ネット広告、プラットフォーマー間の競争へ

クッキー経済圏からID経済圏へと移り変わろうとするなか、マーケタ―は各広告プラットフォームを吟味し、自社の商品やサービスに合った広告出稿のポートフォリオを組むことが求められる。広告主の今後の決断を手助けするために、広告会社も支援サービスの強化を急ぐ。

「サード・パーティー・クッキーに依存した広告が使いづらくなることで、より効果が出る主要プラットフォーマー主軸の経済圏マーケティングが進むと思っている」。電通デジタルの杉浦氏は指摘する。

これに対応するため、電通デジタルは「データクリーンルーム」と呼ばれる取り組みを強化している。

データクリーンルームとは、プラットフォーマーが提供する分析環境下でプラットフォーマーが持つIDにひも付くデータと、広告主企業が持つファースト・パーティー・データを連携させて分析する仕組みだ。

プラットフォーマー側が用意したデータの箱に自社の顧客データを入れることで、プラットフォーマーが持つデータを用いて自社の顧客を分析したり、広告配信のセグメントをつくったりすることができる。』

『広告主企業には約2年の準備期間

グーグルは「Ads Data Hub(ADH)」というクラウドベースのデータ分析基盤を提供している。

ADHに広告主の広告配信データを接続することで、広告に反応した層がどのような層だったかを、配信後でも分析可能になる。これを基に広告効果が高い層を見つけ出し広告配信のセグメントとして切り出し、次のマーケティング施策に生かせる。

例えば、ビール会社であれば、広告配信データをデータクリーンルームに入れて、プラットフォーマーのデータを併せて分析すれば、その分析結果を次の広告配信や電子商取引(EC)サイトなどでのレコメンドの精度向上に活用するといった具合だ。

電通デジタルはグーグル以外のプラットフォーマーともこうした、データクリーンルームの構築を目指した議論を進めているという。

「脱クッキー時代ではプラットフォーマーがより力を持つことは避けられない。であれば、そのデータを使えるだけ使うという発想が大切だ」と杉浦氏は強調する。

グーグルがサード・パーティー・クッキーの受け入れ停止を2023年に延期したことにより、結果的に2年の猶予が生まれたことになる。とはいえ、ID経済圏へと移行する大きな流れは変わらない。

広告主企業は十分な準備期間が与えられたと考え、あらためて対策を練りなおしていくべきだろう。

(日経クロストレンド 中村勇介、松元英樹)』

5Gインフラ、コスト4割減 携帯にも「脱ハード」の波

5Gインフラ、コスト4割減 携帯にも「脱ハード」の波
基地局クラウド化、ベライゾンなど動く
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC259MF0V20C21A6000000/

 ※ 楽天が、確か、これをやろうとしていたはずだが…。

 ※ この頃、話しを聞かなくなったな…。

『携帯電話の通信インフラをクラウド上のソフトウエアに置き換える動きが広がっている。専用機器が減り、大がかりな通信基地局をつくる必要がなくなる。最新の第5世代(5G)で、インフラの構築費を4割程度減らせるとの見方もある。通信にも「脱ハード」の波が及び、業界秩序を揺さぶる。通信費の低下につながる可能性もある。

世界各国で5Gのインフラ構築が本格化し、通信業界は10年に1度の設備の刷新期にある。通信制御の新たな仕組みとして「クラウド基地局」の採用が進む。』

楽天が狙う「5G×MEC革命」 エッジコンピューティングを全国展開
https://businessnetwork.jp/Detail/tabid/65/artid/7053/Default.aspx

『今年10月、無償サービスという形で限定的にMNOサービスを開始した楽天モバイル。既存MNOとの最大の違いとしてアピールしているのが、“世界初”とうたう「完全仮想化クラウドネイティブネットワーク」だ。コアネットワークから基地局などのRAN(Radio Access Network)までをエンドツーエンドで仮想化する。

「自動車にたとえると、iPhoneが“クルマ”の革命だったとすれば、楽天モバイルは“道路”の革命を起こす」。三木谷氏はこう意気込むが、この革命は一体何をもたらすのか。実は、その1つがMECである。MECとは、ユーザーの近くにコンピューティングリソースを置いて処理するアーキテクチャのこと。楽天モバイルは仮想化されたRANを活用し、日本全国4000カ所以上にMEC環境を構築する計画だ。』

楽天モバイルの現状は?加入時の懸念点を検証!
https://maruwakarinet.com/rakutenmb/#:~:text=2020%E5%B9%B44%E6%9C%888%E6%97%A5%E3%80%81%E6%96%B0%E3%83%97%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%82%92%E3%81%B2%E3%81%A3%E3%81%95%E3%81%92%E6%9C%AC%E6%A0%BC%E7%9A%84%E3%81%ABMNO%E3%82%B5%E3%83%BC%E3%83%93%E3%82%B9%E3%82%92%E9%96%8B%E5%A7%8B%E3%81%97%E3%81%9F%E6%A5%BD%E5%A4%A9%E3%83%A2%E3%83%90%E3%82%A4%E3%83%AB%E3%81%A0%E3%81%8C%E5%A5%91%E7%B4%84%E6%95%B0%E3%81%AF%E4%BA%88%E6%83%B3%E3%82%88%E3%82%8A%E3%82%82%E4%BC%B8%E3%81%B3%E3%81%A6%E3%81%8A%E3%82%89%E3%81%9A%E3%80%81%E9%80%9A%E4%BF%A1%E9%9A%9C%E5%AE%B3%E3%82%84%E7%9B%B4%E8%BF%91%E3%81%AE%E6%8A%80%E9%81%A9%E9%96%A2%E9%80%A3%E3%81%AE%E9%81%95%E5%8F%8D%E7%96%91%E7%BE%A9%E3%81%AA%E3%81%A9%E3%81%A7%E3%83%8D%E3%82%AC%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%96%E3%81%AA%E8%A9%B1%E9%A1%8C%E3%81%8C%E5%A4%9A%E3%81%8F%E3%81%AA%E3%81%A3%E3%81%A6%E3%81%84%E3%82%8B%E3%80%82,%E3%81%93%E3%81%AE%E8%A8%98%E4%BA%8B%E3%81%A7%E3%81%AF%E7%8F%BE%E5%9C%A8%E5%A5%91%E7%B4%84%E3%82%92%E6%A4%9C%E8%A8%8E%E3%81%97%E3%81%A6%E3%81%84%E3%82%8B%E6%96%B9%E3%82%84%E6%A5%BD%E5%A4%A9%E3%83%A2%E3%83%90%E3%82%A4%E3%83%AB%E3%81%AE%E5%8B%95%E5%90%91%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6%E7%9F%A5%E3%82%8A%E3%81%9F%E3%81%84%E6%96%B9%E5%90%91%E3%81%91%E3%81%AB%E3%80%81%E7%8F%BE%E7%8A%B6%E8%80%83%E3%81%88%E3%82%89%E3%82%8C%E3%82%8B%E6%87%B8%E5%BF%B5%E7%82%B9%E3%82%84%E4%BB%8A%E5%BE%8C%E3%81%AE%E5%B1%95%E6%9C%9B%E4%BA%88%E6%B8%AC%E3%82%92%E8%A7%A3%E8%AA%AC%E3%81%97%E3%81%A6%E3%81%84%E3%81%8D%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82

 ※ 現状は、苦戦しているようだ…。

Facebook流出データ再拡散 保存・複製に中長期リスク

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC051X50V00C21A4000000/

『米フェイスブックの利用者5億人以上の個人情報がインターネット上で閲覧可能となっていたことが5日までに分かった。同社は2019年に大規模な情報流出を起こしており、これらデータが再拡散したとみられる。新規の情報流出ではないため、専門家の多くは「フェイスブックの法的責任を問うのは難しい」と見る。保存や複製が容易なデータが中長期で悪用されるリスクがあらわになっている。

フェイスブックは「(今回ネット上で閲…

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フェイスブックは「(今回ネット上で閲覧可能になった)当該データは19年に報道された古いものであり、19年8月に既に問題は修復済みだ」と説明している。フェイスブックとしては情報が漏れないよう穴は塞いだとの立場。米連邦取引委員会(FTC)にも個人情報の管理不備で50億㌦(約5400億円)の制裁金を支払った。今回は漏れたあとのデータを同社の関与が及ばないハッカーがネットに上げたとの主張だ。

とはいえデータ再拡散により、メールアドレスなどがサイバー犯罪に悪用されるなど被害が広がる可能性がある。セキュリティー対策に詳しいS&J(東京・港)の三輪信雄社長によると、日本のユーザーと見られるデータは約43万件が流出しているもようだ。利用者のIDや氏名、所属先のほか、一部には住所情報も含まれているという。

一方で今回の問題でフェイスブックの責任を問うのは容易ではない。個人データに詳しい弁護士は「一度漏れてしまったものについて、食い止めるのは現実的に難しい。再拡散を理由に(フェイスブック)の責任を問うのは困難だ」と話す。

15年に発覚した利用者の同意がないまま顔写真などの生体データを利用した問題では、米国で約160万人の利用者を対象とした集団訴訟に発展した。21年2月に、約6億5千万㌦を支払うことで和解が成立した。ユーザー1人あたり345ドルを受け取ることになる計算だ。

ただ今回について海外の個人情報保護ルールに詳しい杉本武重弁護士は「生体データのような重要な個人情報を含んでいないため、同様の高額賠償を伴う集団訴訟になる可能性は低い」とみる。訴えが起こされた場合も、「データ流出によって具体的にいくらの損害が発生したか」という因果関係の証明が難しい。米国はカリフォルニア州などで厳しい個人情報保護ルールはあるものの、連邦法で個人情報保護を包括的に定める法令がなく、データ漏洩そのものの責任を問うハードルが高い。

裁判などで賠償を求める道が険しい以上、利用者はデータ漏洩の被害を最小限に防ぐ自衛を余儀なくされる。

フェイスブックは過去のデータ流出の度に、利用者にパスワードの変更などを呼びかけてきた。万が一、本人が変更しなかったために自分のパソコンなどに侵入され、サイバー犯罪の被害に遭った場合について、大井哲也弁護士は「全てが利用者の自己責任になるわけではなく、フェイスブックの損害賠償責任と利用者の過失が相殺されるのが法律上の考え方だ」と話す。ただ、そもそもフェイスブックの損害賠償責任が裁判所などで認められなければ、利用者は被害にあっても泣き寝入りしなければならないのが実情だ。

一方で当局が動いた場合はフェイスブックが再び責任を問われるとの見方もある。杉本弁護士は「(今回の再拡散で)被害が拡大したとしてFTCの追加調査が始まれば、19年よりも高額の制裁金が命じられる可能性がある」と指摘する。

日本の場合、個人情報保護法で個人情報を扱う事業者に安全管理の義務を定めている。今回の問題でフェイスブックが義務違反に問われる可能性があるが、罰金は軽微だ。日本の被害者が、自分のデータ流出に伴う損害賠償を求めて同社を訴えることもできるが、米国での裁判同様、因果関係の立証が大きな壁となる。「必要な資料を集めるなどの作業を、利用者ひとりひとりの力で行うのは相当難しい」(杉本弁護士)。

今回の問題は、容易に複製可能でいったん流出したら被害が終わらないデータ流出特有の問題を改めて印象づけた。日本プルーフポイントの増田幸美氏は「一度やられると何度でもやられる。 IDやパスワードは使いまわされることが多いため、こういったデータのリークが他の情報窃取事件へとつながることがある」と指摘する。「パスワード管理ツールを使うなどして使い回しを避け、セキュリティを維持しながらネットサービスを使うことが重要だ」と強調している。

(渋谷江里子)

【関連記事】

Facebook、流出の5億人情報が再び閲覧可能に 米報道

Microsoft、米陸軍に特注版ホロレンズ供給 最大2.4兆円

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN0102R0R00C21A4000000/

『【シリコンバレー=佐藤浩実】米マイクロソフトは3月31日、米陸軍にAR(拡張現実)端末「ホロレンズ」の特注版を供給すると発表した。陸軍によれば契約期間は最大10年で、契約額は218億8000万ドル(約2兆4000億円)に上る可能性がある。大型契約により、次世代のコンピューティング技術と目されるARへの投資に弾みがつく。

兵士が戦闘のリハーサルや訓練に使う「IVAS」と呼ぶシステムの供給契約を結んだ。ARヘッドセットとクラウドコンピューティングを組み合わせ、敵との交戦前の訓練などに利用する。基本契約期間は5年で、さらに5年の延長権を含む。米メディアによれば、供給するヘッドセットの数は12万台に上るという。

両者は2019年から、兵士の訓練でのAR端末の活用について検討してきた。当時マイクロソフトの従業員の間では軍への技術提供を批判する声も上がったが、サティア・ナデラ最高経営責任者(CEO)は米軍を民主主義のもとで選んだ機関とし「道義的な決断」と説明していた。

ARやVR(仮想現実)機器はコンピューターの世界で、メインフレーム、パソコン、スマートフォンに続く基幹製品になると見られている。マイクロソフトのほか、米フェイスブックや米アップルなどIT(情報技術)各社が研究開発に力を入れている。

【関連記事】
離れていてもホログラムで共同作業 Microsoftが新技術
手首を流れる電流でAR眼鏡操作 Facebookが実用化へ

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NYタイムズが「アップル・ニュース」から撤退( 2020/07/10 11:00 )

https://www.yomiuri.co.jp/world/nieman/20200708-OYT8T50023/

『ケン・ドクター(米ジャーナリスト)
激震か微動か
 ニューヨーク・タイムズ紙(以下タイムズ)が、アップル社のニュースフィード「アップル・ニュース」からの撤退を決めた。

 これだけだと、主要メディアと巨大プラットフォーム(サービス基盤)の間で、また何か駆け引きがあったようにしか見えないだろう。だが、これは何か大きな動きが起きる前触れなのかもしれない。今年中にもプラットフォームのニュースに対する力関係に地殻変動が起きるのか、それとも微動で終わるのかという話だ。

 (米国での人種差別抗議運動を発端に広がった)グローバル企業によるフェイスブック社への広告掲出ボイコットの動きも、この振動がより大きな揺さぶりにつながる可能性をうかがわせる。全米各州や連邦の司法当局が進める、GAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾンのプラットフォーム4社)を念頭に置く反トラスト法(日本の独占禁止法に相当)違反追及の動きにしてもそうだ。

 「巨大プラットフォームとの関係を見直す時が来た」とタイムズの最高執行責任者(COO)メレディス・ルビーン氏は語り、三つの軸で再検討を進めていると明かす。

(1)その企業が、タイムズの記事に閲覧者を招き入れるのにどのような役割を果たしているか。

(2)タイムズの主目的は読者との直接的な関係を拡大し、(記事への)接触を習慣づけ、最終的に購読してもらうことだが、その企業はどのような役割を果たしているか。

(3)その企業が、タイムズがジャーナリズムのために行った投資から相当な利益を得ていることがわかっていても、なお割に合う関係なのか。

 ルビーン氏は3年前にCOOとなり、マーク・トンプソン最高経営責任者(CEO)の後継候補に広く目されている。その人物が「この時点でアップル・ニュースに参入し続ける意味はもう見いだせない」と言うのだ。

 タイムズがプラットフォームとの関係修正に乗り出すのは、これが最後でもないだろう。ルビーン氏は「過去18か月、我々はプラットフォームとの関係について真剣に考えてきた。生態系の中での現実に合わせ、自分たちをどこまで刈り込むかという計測を周到に進めた。我々は少しずつ、年々、改善してきたからこそ、このような変化を今、行えるようになった」と述べる。要するに、タイムズは2025年に購読者を1000万人まで増やすという目標を「独力で」達成できることが実証されつつあるというのだ。

コロナも転機に
 「新型コロナウイルスの危機的状況がピークだったころ、タイムズのニュース利用者は2億5000万~3億人に達した。3月には米国で、成人10人のうち6人がタイムズを利用していた。読者との関係を築く上で、これほど大きな機会はかつてなかった」とルビーン氏は指摘。さらに、「我々の最終目標は、より多くの人々の暮らしに、より大きな役割を果たすことだ。我々は年々、その目標に向け、自力でできることが増えている。だからと言って配給パートナーがいらないというわけではない。ただ、そうした企業を評価する方程式に変化が生じた」と今回の決断を巡る状況について説明した。

 つまり、タイムズはプラットフォームとの関係をすべて断つわけではないが、これが微震にとどまるような話でもないということだ。

危険なダンスは続く
 例えば、タイムズは、アップルとこれからもポッドキャストでは緊密に協力していくだろう。主力アプリ「ザ・デイリー」はその価値を増している。アップストアを通じて販売されるタイムズのアプリは、購読者との接触時間を固める鍵になっている。

 トンプソンCEOは、メディア発行人として巨大プラットフォームとの危険なダンス(駆け引き)は続けざるを得ないと率直に認める。トンプソン氏はわずか1年前、なぜタイムズがワシントン・ポスト紙のように雑誌読み放題アプリ「アップル・ニュース+」の立ち上げに加わらないかについて、「いろんなニュースを寄せ集めて、うわべだけ魅力的な混ぜ物を作ろうとしているからだ」と酷評していた。

 ニュースをどこから得ているかと問われて、「携帯電話から」と答える人は多いだろう。だがタイムズは、他の新聞社同様、購読料金の獲得を唯一の進むべき道とみており、ニュースを提供しているのは自分たちだと読者に認知してほしいのだ。タイムズは、読者と直接的な接触を持ち、可能ならば購読契約につなげたいと考えている。

 もちろん、ニュースを発行する側と集積する側との緊張関係は、インターネットの初期時代からあった。ヤフーニュースを巡っては20年以上、メディア各社の中で、加わるべきか、仮に加わるならどのような形で、という議論が続いてきた。

 タイムズは長年、アップル・ニュースに配信する記事を限定してきた。配信の見返りにタイムズが得たのは、ニュースレターや購読を募る広告などの呼びかけを行う場だった。アップル・ニュースでのニュース視聴回数はデジタル市場分析大手のコムスコア社によるインターネット視聴率測定に反映されるメリットもあった。ただ、これらは主にブランドイメージと到達率であり、直接の利益につながるルートではなかった。

アップルは静観
入り口に大きなロゴを掲げたニューヨーク5番街のアップルストア(2019年9月、ロイター)
 アップル・ニュースが実際は何であるのかを誤解している人は、ユーザーの中にもいる。多くの人にとって、それは「携帯に出てくるニュース」で、意図的にせよ、偶然にせよ、画面を操作することで特定のお知らせや記事のまとめが見られる。アップル・ニュースのユーザー数は今年4月現在で1億2500万人。ほんの3か月前の1億人から増えている。

 アップル・ニュースによれば、撤退したメディアはタイムズのほかにはほとんどない。アップルの広報担当は、「ニューヨーク・タイムズはアップル・ニュースに毎日数本しか記事を提供してこなかった」とする声明を発表。「我々は1億2500万のユーザーに最も信頼できる情報を届けるよう努めている。今後もウォール・ストリート・ジャーナルやワシントン・ポスト、ロサンゼルス・タイムズ、ヒューストン・クロニクル、マイアミ・ヘラルド、サンフランシスコ・クロニクルを含むメディア数千社と協力し、さらに多くのすばらしいメディアを加えていくことで読者への務めを果たす」と続けた。

 声明はさらに「我々は広告料や購読料などでの定評あるビジネスモデルを通じ、質の高いジャーナリズムを支えることにも尽くす」とした。

撤退への二つの計算
 タイムズによる撤退決断の背景にはもっぱら、ニュースを直接発行する者の力、すなわちジャーナリストと読者の関係があった。この関係こそが購読料収入を得るための核心であり、購読料獲得こそが今のメディア企業が前進する唯一の道なのだ。

 ただタイムズの行動は同社ならではのもので、大転換の先駆けになるかどうかは微妙だ。何しろタイムズは計600万人の読者を擁し、その数は紙の新聞がピークだった頃の3倍以上だ。

 より多くの読者と購読契約者がいればデータが集積され、どういった読者に何が有効かの分析もできる。その分析の結果が、タイムズにとってアップル・ニュースはプラスにはならないというものだった。

 二つの計算があった。第一は、タイムズが、今現在ニュースを見ている人たちをどうすれば購読契約者にできるかだ。

 ルビーン氏は「我々は、自社のプラットフォームを使って読者との関係を築き、拡大することに自信を深めている」と話す。その上で、「配給パートナーが何をもたらしてくれるか。その製品は主として、あるいは純粋に、タイムズのニュースに読者を引きつけるためのものであるのか」を問い続けているのだという。

 第二は、アップル・ニュース(あるいはタイムズのコンテンツを扱いたい他のプラットフォーム)が、忙しい読者にとって新聞の代替物になり得るかというものだ。

 ルビーン氏は「部分的にせよ、新聞の代替物になる製品があるのか、真剣に考えてきた。仮にそうならば、我々は(ニュースを提供することに対し)どのような対価を得られるのか。それはお金なのか、我々の方に視聴者が誘導されるのか、あるいは我々が読者と直接の関係を築くことを容易にするものなのか。こういったことを計算した」と話す。

ニュースがすべての基盤
 タイムズの撤退は、主要メディアとGAFAとの関係により広範な変化をもたらすのだろうか。

 グーグルとフェイスブックは最近、メディア支援に力を入れている。支援は実質を伴い、訓練や資金面での援助に加え、極めて選別的ではあるが、いくつかの社にはニュース素材への代価が支払われている。現時点では、地方紙の発行者からは「コンテンツに直接料金が支払われたことはない」との声が寄せられるが、それも変わるかもしれない。

 こうしたメディア支援プログラムの拡充は、少なくとも三つの大陸で同時に巨大プラットフォームへの圧力が強まっていることと無関係ではない。オーストラリア、カナダ、そして欧州ではプラットフォーム批判が強まり、規制が強化され、プラットフォーム側からすると、脅威は新局面に入りつつある。

 メディア側から聞こえる呪文は、「我々に金を払え」というものだ。

 プラットフォームに対し世界規模で高まる懸念やポピュリスト的反動、情報技術(IT)企業への反発を背景に、グーグル、フェイスブック両社のみならず、アップル、アマゾン両社に加えツイッター社も、少しは譲らなければならないことがわかってきた。

 だからプラットフォーム各社は、知的利益の最大化に企業としてできる貢献を行う。規制や反トラスト、課税を通じた情け容赦ない締め付けが強化されないよう、「自主的に」、何を差し出せるか計算しているのだ。

 ルビーン氏に、アップル・ニュースからの離脱はタイムズでなければできなかったかどうかを聞いてみた。同氏の答えは、「他社に成り代わって話すことはできないが、どの新聞社にも自社やフリーのジャーナリストの仕事を支えられるような財政基盤があるべきだ」というものだった。

 「我々がジャーナリズムに対して行っている投資は、増え続ける一方だ。(コロナ禍の)今年でさえ増え続けている。技術者とデータ分析者、製品管理とデザインの専門家も少なからず増やした。広告部門は今年、ますます厳しい状況にある。我々のしようとすることには常に投資が必要だ。好況の時も不況の時も、ニューヨーク・タイムズの投資はまずジャーナリズムのために行われる」

 デジタル・ニュースのビジネス上の成果を測る指標がいくつあっても、一番の基盤は元のニュースと解説の質だ。報道機関がいったい何人のジャーナリストや関連分野の技能を持つ人材を支えていけるのか。そしてプラットフォームとの個別の取引がその助けになるのか、ならないのか。それこそが、すべての鍵となる指標なのだ。

(6月29日配信、原文は こちら )』

LINEでの行政サービスを停止 総務省 政府、各省庁で利用状況を調査

https://www.nikkei.com/article/DGXZQODE18DVS0Y1A310C2000000/

『武田良太総務相は19日の閣議後の記者会見で、総務省が対話アプリ「LINE」を通じて提供している行政サービスの運用を停止する考えを示した。国内利用者の個人情報が中国でアクセスできる状態になっていた問題を受けた措置だ。

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停止の対象となるのは意見募集や問い合わせの対応など。LINEのような外部サービスで業務上の情報を扱わないよう、職員に注意喚起した。

全国の自治体がLINEをどう活用しているか調査に乗り出したことも明らかにした。自治体では粗大ゴミの収集や保育所入所などの申請に活用しているケースがある。26日までに報告を求め、セキュリティー面での対応を検討する。

菅義偉首相は19日午前の参院予算委員会で、LINEに関して各省庁で職員の利用状況の調査を始めたと表明した。民間アプリを使って機密情報を扱わないルールがあると紹介し「改めて確認している。引き続きセキュリティー確保に努めたい」と強調した。

自民党の山田宏氏はフェイスブックなど民間メッセージアプリの多くが外国製だと指摘し、国産アプリの開発支援を政府に求めた。梶山弘志経済産業相は「経済安全保障のひとつだと認識している」と述べた。

加藤勝信官房長官は19日の閣議後の記者会見で「内閣官房で現在、利用状況について改めて確認している。個人情報などの管理上の懸念が払拭されるまでは利用停止などの対応を予定している」と述べた。

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LINE、個人データ管理に不備 中国委託先で閲覧可能に

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『LINEがシステム開発を委託している中国の関連会社で、国内利用者の氏名など個人情報に現地の技術者がアクセスできる状態になっていたことが17日、分かった。データの取り扱いなどを定めたプライバシーポリシーでも、海外からのアクセスについて十分な説明をしていなかった。LINEは政府の個人情報保護委員会に報告した。既に関連会社で閲覧ができないように対応済みとしており、近く調査のための第三者委員会を立ち上げる。

上海の関連会社の従業員4人が2018年8月から、国内にサーバーがある利用者データにアクセスできる状態だった。データには利用者の名前、電話番号、IDなどのほか、一部暗号化していなかった「トーク」の内容も含まれていたとみられる。LINEはこの関連会社について「業務に必要な範囲でアクセス権限をつけて管理していた。不適切なアクセスは把握していない」としている。

LINEは国内で8600万人が利用する。一部自治体で住民票や給付金などの申請窓口になっているほか、新型コロナウイルスワクチンの予約システムも提供するなどインフラとしての性格を強めている。同社や親会社のZホールディングスが、一連の経緯について17日に発表する。

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「ニュース対価」巡り米公聴会 対IT大手の団体交渉焦点

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN1300O0T10C21A3000000/

 ※ 前記のような「構造」の文脈に置いてみれば、プラットフォーマーが中小の報道機関を、潰してしまって良いのか…、という話しだ…。

 ※ 「資本の論理」「商業の論理」からすれば、「大が小を併合する」「優れた技術が、旧式の技術を置き換えて行く」というのは、「自然の流れ」と言える…。

 ※ しかし、ここでも「その流れ」を肯定して、「中小の報道機関」「各地域の報道機関」を潰してしまった場合、「民主主義」に必要となる「人々の判断形成」に役に立つ情報というものが、十分に流通する…、ということになるのか…。何らかの規制が、必要ではないのか…。

 ※ まあ、そういう話しだ…。

『【ニューヨーク=清水石珠実】米議会下院で12日、報道機関に対して、情報技術(IT)大手との「団体交渉」を一時的に認める法案を巡って公聴会が開かれた。新聞業界団体やジャーナリスト労働組合の代表、地方テレビ局の経営者などが証言し、報道機関側の交渉力強化につながる同法案を支持するように求めた。

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法案は、新聞やテレビなどの報道機関を4年間独占禁止法の適用から外し、ネット広告収入の分配などについてIT大手と合同で交渉できるようにする内容だ。デジタル広告市場ではフェイスブックとグーグルの2社が過半のシェアを握る。ネットを通じてニュースを流しても、広告収入が両社に流れることが地方紙などローカル報道の弱体化につながっているとの指摘がある。

約2000の米報道機関が加盟する業界団体「ニュースメディア連合(NMA)」のデビッド・シャーバン代表は公聴会で、「偽情報への対抗策として、ローカル報道は重要だ」と述べ、地方メディアの弱体化が不正確な情報がまん延しやすい環境を作っていると指摘した。また、団体交渉の許可に加え、記事への対価を決める交渉などの場でIT大手が誠意をもって対応しているかどうかを監視する仕組みを作ることも要請した。

米国ではこの15年間に米地方紙の約4分の1に当たる2100紙が廃刊になった。地元に報道機関のない地域が拡大していることに懸念を示し、参加議員からは法案を支持する声が上がった。一方で、独禁法を緩めることに対しては、共和党議員を中心に「一部のメディアの力がさらに強くなるだけではないか」との懸念も出た。

IT大手からはマイクロソフトのブラッド・スミス社長が公聴会に参加し、法案に賛成する意向を示した。グーグルとフェイスブックからの証言者はなかった。グーグルは事前に書簡を提出し、「グーグルはこの20年間、報道業界と緊密に連携し、デジタル時代にあった質の高いジャーナリズムの実現に多額の支援を行ってきた」と述べた。

オーストラリア連邦議会は2月下旬、ネット大手が表示するニュース記事の利用料に対して、報道機関への支払いを義務付ける法案を可決した。世界的にネット大手に対してニュース記事掲載に相応の対価を求める動きが強まっている。

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「ネットは痛みではない」米名門紙復活させたベゾス流

「ネットは痛みではない」米名門紙復活させたベゾス流
ワシントン・ポスト前編集主幹、バロン氏に聞く
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN08C7I0Y1A300C2000000/

 ※ 「報道の自由」と、「表現の自由」は、ちょっと違う…。

 ※ 「表現の自由」は、「考えたり、思ったりしたことを、自由に表現できること」…。「報道の自由」は、「世の中に起きたり、生じたりしていること(事実)を、自由に伝えることができること」だ…。

 ※ 例えば、クーデターが生じたとする…。「生じたということ(事実)」を伝えるのが、「報道の自由」で、それに対して「自分の見解を述べたり、論評を加えたりする」のが、「表現の自由」だ…。

 ※ どちらも、「民主主義」にとっては、その「基盤」となる…。

 ※ 「民主主義」ってのは、被統治者である「国民」が、統治する側に参画していく、統治する任務を担う者を選択していくというシステムだ…。

 ※ そういうシステムがちゃんと機能するためには、自らが統治に参画する資格があること、統治する任務を担います…と手を挙げた者(立候補者)がふさわしい者なのか、見抜く「眼力」を備えている必要がある…。

 ※ そういう「資格」や、「眼力」の形成のためには、世の中に流通している「事実」や「見解・論説」から、的確に「取捨選択」して、「自分なりの判断」を培っていく必要がある…。

 ※ 逆に、報道機関や論者は、そういう「人々の判断形成」に「役に立っているのか」を、「自らに、問いかける」必要がある…。

 ※ SNSやIT機器の発達は、情報の「伝達手段・経路」を大分変えたが、「ことの本質」は変わらない…。

 ※ 基本的には、上記のような「構造」だ…。

『米名門紙ワシントン・ポストを編集トップとして8年間率いたマーティン・バロン編集主幹が2月末で退任した。任期中に同紙の電子版有料読者は約300万人に達し、編集部員数は2倍近い1000人規模に拡大した。2013年10月に同紙を買収したアマゾン・ドット・コムの創業者ジェフ・ベゾス氏とともに名門紙を復活させたバロン氏に、ベゾス氏の影響やデジタル化の取り組みなどについて聞いた。(聞き手はニューヨーク=清水石…

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(聞き手はニューヨーク=清水石珠実)

ーー就任から約半年で、ベゾス氏がワシントン・ポストを買収しました。どのような影響がありましたか。

「(ベゾス氏は)買収してすぐにワシントン・ポストは戦略を変えるべきだと指摘した。首都ワシントンや近隣州の住民を意識した記事作りは今までは正しかったかもしれないが、デジタル時代には全米、さらには世界で読まれる媒体を目指さなくてはいけないと語った。ワシントン・ポストは米国政治の中心を取材し、全米で知名度があり、ウォーターゲート事件以来、知られていない真実を掘り起こす報道機関というアイデンティティーがある。(ベゾス氏は)全国の読者に受け入れられる下地があるし、読んでもらえるはずだから、迅速に戦略を変えるべきだと考えていた」

「(ベゾス氏は)インターネットがもたらす『痛み』は受けているのに、なぜ『ギフト(贈り物)』のほうは受け取らないのかと指摘した。ネットは確かに広告という収入の柱を奪った。だが、同時に世界中に追加費用なしで記事を配れるというギフトをもたらす存在でもある。(ベゾス氏が)もう紙の新聞を物理的に届ける必要はないのだから、ワシントン・ポストが全国紙に転換する好機だと気がつかせてくれた」 

ーー就任した時はベゾス氏による買収は想定していませんでした。当初、どのように編集部を変革しようと思っていたのですか。

「業界他紙と同様、ワシントン・ポストの編集部も縮小傾向にあった。軍隊に例えて、規模の大きな米国軍にはなれないが、少数精鋭の特殊部隊になればいいと考えていた。(前職の)ボストン・グローブでもそうした考え方で編集部を運営していた。精密に戦略を立て、正確に実行し、全力を尽くして、あとは結果が出てから考えればいいと思っていた。だが、結果として(ベゾス氏が)買収したことで、こうした縮小型の発想から脱却できた」

米首都ワシントンに本拠を置くワシントン・ポスト紙=ロイター
ーーベゾス氏による買収なしでもワシントン・ポストは成功できたと思いますか。

「可能性はゼロではないが、成功していなかったと思う。ベゾス氏がいなければ、ほかの地方紙と同じように、人員を削減し読者も減るという悪循環に陥っていたと思う。地方紙から全国紙にカジを切るという戦略もなかったし、デジタル化に投資する資金力もなかったからだ」

ーーワシントン・ポストを「全国紙」にするためにどのような変革を行ったのですか。

「全国のジャーナリストをつなぐネットワークを作り、支局のない場所でのニュースも拾える体制を作った。ローカル紙の弱体化で多くの地方在住のジャーナリストが失業したり、早期引退を余儀なくされたりしている。こうした優れた人材が、必要な時に応じてワシントン・ポスト紙に記事を出稿する仕組みだ」

「過去に新聞社での勤務経験がなく、ネット媒体で活躍してきたような人材も雇用するようになった。ワシントン・ポストではなじみの薄かった『フード』や『ネット文化』といったトピックも扱うようにした。ブログも始めた。また、朝イチで読めるコンテンツを作る夜に働くチームを編集部に置いた。こうした取り組みが現在の編集24時間体制につながっていった」

ーーデジタル時代に対応するために、編集部の人材の入れ替えは必要ですか。

「もちろん、ワシントン・ポストはテクノロジーに精通した人材も雇用した。だが、伝統的なジャーナリストの存在の重要性は変わっていない。(デジタル化にカジを切った13年を境に)人材の入れ替えが進んだわけではない。大半の人材がいまでも編集部で働いている。メディアの形態が変わったことを認め、その状況に対応すればいいだけだ。私も旧来型のジャーナリストだ」

「担当する分野に精通した記者はかけがえのない存在だ。編集部は、いい情報源を持ち、きちんとした記事を書ける記者を必要としている。記者が『自分が1番詳しい。この分野で権威だ』と思うことはいいことだと思っている。だが、その記事を読者に読んでもらうためには、デジタル時代に対応する必要がある。対応した形で届けなかったら、対応した別の記者の記事が先に読者のもとに届いてしまうからだ」

ーーデジタル時代になり、「いい記事」「いい記者」の定義は変わったのでしょうか。

「変わっていない。『質の高いジャーナリズム』の定義に変更はない。届け方が変わっただけだ。今までよりもっと早く、デジタル媒体で見やすいかたちで届けることが重要だ。こうした状況に対応することはそんなに難しいことではなく、ワシントン・ポストでは実行した」

ーー24時間の編集体制実現のためのアジアの編集拠点に、韓国・ソウルを選びました。

「香港は、最近の政治混乱を考慮し、選択肢から外れた。東京、シンガポール、ソウルなどが候補になり、コストや移動の利便性の面などからソウルが一番理にかなっているいうことになった。日本もニュース面で大きな存在だが、最近は韓国のほうがニュースが多いと感じている」

ーー報道への関心を高めたトランプ政権が終わりました。今後も読者を獲得できますか。

「トランプ氏の影響でワシントン・ポストが多くの読者を獲得できたことは否定しない。この4年間で、米国民の意識は変わったと思う。報道の自由が脅かされたり、偽情報が出回ったりする状況を体験し、質の高いジャーナリズムを維持するためには購読料を払って支援する必要があると気がついた。トランプ政権の時よりは報道への関心はやや薄れるかもしれないが、報道機関にお金を払うという習慣は根付いたと思う」

ーーネット社会に対応した24時間の報道体制は、報道の現場が目の前の事案に注意を奪われ、長期的な視点が失われる危険性があります。

「電子版のいいところは、有料読者がどんな記事に関心を示しているのかがはっきりと分かることだ。ワシントン・ポストの読者は、奥の深い記事、分析のある記事、調査報道を求めている。ワシントン・ポストでしか読めない記事にお金を払っているのだから、我々はそこに投資する義務がある」

▼マーティン・バロン 米国のジャーナリズムの現場で45年の経験を持つ。大学卒業後、マイアミ・ヘラルド入社。ロサンゼルス・タイムズ、ニューヨーク・タイムズを経て、01年にボストン・グローブ編集主幹に就任。カトリック教会を舞台とした児童への性的虐待の実態を明らかにした同紙の調査報道チーム「スポットライト」の活躍は、同名の映画にもなった。13年1月、ワシントン・ポストに移籍した。フロリダ州出身、66歳。

日本郵政 楽天に約1500億円出資 両社が資本・業務提携

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210312/k10012911431000.html

『日本郵政がIT大手の楽天におよそ1500億円を出資し、両社が資本・業務提携することになりました。物流やモバイル、DX=デジタルトランスフォーメーション、金融など幅広い分野で連携を強化するとしています。

日本郵政と楽天は12日午後に記者会見を開き、資本・業務提携を結んだと正式に発表しました。

日本郵政が楽天の第三者割当増資を引き受ける形でおよそ1500億円を出資し、楽天の株式8.32%を保有します。

幅広い分野で業務提携し、物流では両社がもつデータを共有するとともに、拠点や配送システムを共同で構築します。

モバイルでは、郵便局で楽天の携帯電話を申し込めるようにします。

また、楽天から日本郵政グループにデジタル技術に詳しい社員を派遣して業務のデジタル変革を支援するとしています。

キャッシュレス決済や保険といった金融の分野やネット通販の分野でも協業を検討するということです。

楽天は去年12月に日本郵政の傘下の日本郵便と物流のデジタル改革で戦略的な提携を結んでいましたが、今回の資本・業務提携によってさらに幅広い分野で提携を深めることになります。

一方、楽天は携帯電話事業の設備投資などに充てるため、日本郵政以外に中国のIT大手テンセントグループと、アメリカの流通大手ウォルマートなどからも、合わせて920億円余りの出資を受けることになりました。

日本郵政 楽天の4番目の大株主に
今回の資本・業務提携によって日本郵政は楽天の大株主となります。

楽天の一連の増資によって、創業者である三木谷社長の資産管理会社が14.38%を保有し、引き続き筆頭株主となります。

次いで三木谷社長が個人として11.2%、三木谷社長の親族が8.43%を保有し、日本郵政は8.32%を持つ4番目の大株主になります。

新たに楽天に出資するテンセントグループは3.65%、ウォルマートは0.92%を保有することになります。

日本郵政 増田社長「楽天グループは最高のパートナー」

日本郵政の増田寛也社長は、記者会見で「全国に展開する郵便局、そして強固な物流というリアルネットワークを強みとしている日本郵政グループにとって、先進的なデジタル技術と豊富なノウハウを生かし、さまざまな事業領域でインターネット関連サービスを提供している楽天グループは最高のパートナーだ。協業を通じてデジタルとリアルで双方の特徴、強みをうまく掛け合わせることで、提携のシナジー効果を最大限引き出し、お客様に喜んでいただける新たな価値を創出をしていきたい」と述べました。

楽天 三木谷社長「金融・モバイルでも提携進めたい」

楽天の三木谷浩史社長は記者会見で「去年12月に発表した物流の提携にとどまらず、金融、モバイルでもさまざま提携を進めたい。コロナ渦で今まで以上にDXが加速し、ネットがなくてはやっていけない時代になっていて、地方経済をいかに元気づけるかが大切になっていく。一方でグローバル化も進み、世界的にITの力が巨大になっていて、リアルとバーチャルの大きな力が合わさって新しい形を作ることにわくわくしている」と述べました。』