Google「万能AI」の威力 数百万タスク・多言語対応

Google「万能AI」の威力 数百万タスク・多言語対応
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC185010Y2A410C2000000/

 ※ 『PaLMのニューラルネットワークのパラメーター数は5400億にも達する。』…。

 ※ 『グーグルは5400億パラメーターのPaLMをトレーニングするために、自社開発した専用AIチップである「TPU v4」を6144個搭載した巨大スーパーコンピューターを使用している。』…。

 ※ 現状は、まだ、そういうものだ…。

 ※ そういう「巨大システム」を動かすための、「電力消費」は、どのくらいのものなんだろう…。

『米グーグルが数年にわたって開発を進めてきた人工知能(AI)「Pathways(パスウェイズ)」の実力が明らかになった。Pathwaysは1つの機械学習モデルが最大数百万種類のタスクに対応できるという「万能」もしくは「汎用」のAIだ。従来のAIが1モデル1タスクの専用品であるにもかかわらず、タスクを処理する性能は汎用であるPathwaysが上回った。驚くべき威力だ。

グーグルは4月4日(米国時間)、自然言語処理に関する複数種類のタスクを処理できる「Pathways Language Model(PaLM)」を発表した。自然言語による質問応答や文章生成などができる言語モデルと呼ばれるAIをPathwaysによって実装した。言語モデルは近年、BERT(バート)やGPT-3などがめざましい成果をあげたことで注目されている。

1モデル1タスクの専用品である従来の言語モデルで別のタスクを処理させるには、それ用の機械学習モデルを改めてトレーニング(訓練)し直す必要があった。

それに対してPaLMは1つの機械学習モデルで、質問応答や文書生成、多段階の論理的な思考、翻訳、ソースコード生成、ソースコード修正、さらにはジョークの解説といった様々なタスクを処理できる。さらに1つのモデルで、英語だけでなく多言語によるタスクに対応可能だ。

グーグルはPaLMのトレーニングに、7800億単語(トークン)からなる文章を使用した。これらはウェブページや書籍、ウィキペディア、ニュース記事、ソースコード、ソーシャルメディア上の会話などから収集した。このうち書籍とニュース記事は英語だけだが、それ以外については多言語の文章が含まれる。

GPT-3を上回るベンチマーク性能

PaLMは多芸であるだけでなく、1つひとつのタスクの処理性能も高い。グーグルが29種類の自然言語処理に関するベンチマークを試したところ、29種類中の28種類でこれまでの最高(SOTA)を上回る成績を収めたという。

グーグルが倒したライバルとして挙げた言語モデルの中には、同社自身が2021年12月に発表したこれまでで最高成績の言語モデルであるGLaMや、米オープンAIが20年に発表して世界に衝撃を与えたGPT-3、米マイクロソフトと米エヌビディアが共同開発して22年1月に発表したMegatron-Turing(メガトロン・チューリング)NLGなどが含まれる。

従来の言語モデルも、大量の文章によってモデルをトレーニングした後は、数十~数百文例の「わずかな訓練(Few-shot training)」を加えることで、他のタスクにも対応できる。

しかしPaLMの場合は追加のトレーニングがない「0-shot」の状態であっても、多くのタスクで高性能を発揮できる。またタスクによっては、PaLMにFew-shotのトレーニングを追加すると、性能が向上することがある。

PaLMの特徴は機械学習モデルの巨大さだ。PaLMはBERTやGPT-3と同様に、自己注意機構(SA)であるTransformer(トランスフォーマー)を多段に積み重ねるニューラルネットワーク構造を採用する。

PaLMのニューラルネットワークのパラメーター数は5400億にも達する。BERTのパラメーター数は3億4000万、20年の発表当時では巨大といわれたGPT-3は1750億であり、過去最大級の規模だ。マイクロソフトとエヌビディアによるMegatron-Turing NLGは5300億パラメーターだったので、それよりもさらに大きい。

グーグルは5400億パラメーターのPaLMをトレーニングするために、自社開発した専用AIチップである「TPU v4」を6144個搭載した巨大スーパーコンピューターを使用している。

Pathwaysが示した「規模の力」

グーグルはPaLMに関して、ニューラルネットワークの規模が大きくなればなるほど性能が向上する「規模の力」が働くと説明する。

グーグルは今回、5400億パラメーターのPaLMモデル(PaLM 540B)だけでなく、80億パラメーターのPaLM 8Bと620億パラメーターのPaLM 62Bも用意し、それぞれの性能を比較した。するとPaLM 8BよりもPaLM 62Bの方が、PaLM 62BよりもPaLM 540Bの方がベンチマーク性能は向上するとの成果が得られた。

またグーグルは620億パラメーターのPaLM 62Bのベンチマーク性能が、1750億パラメーターであるGPT-3の性能を上回ったとも主張している。ライバルに比べて性能が高いのは、単にパラメーター数が大きいだけではなく、アーキテクチャーそのものが優れているからだとの主張である。

グーグルがPathwaysの開発を明らかにしたのは、19年7月のことだ。同社におけるAI開発を統括するジェフ・ディーン氏が来日した際の記者会見で、「1つの機械学習モデルで数百~100万種類のタスクを処理できるようにする研究が現在進んでいる。私はその研究の方向性に非常に興奮している」と明かしていた。

そしてディーン氏は21年10月に公表したブログ記事で、グーグルが最大数百万種類のタスクを処理できるAIアーキテクチャーであるPathwaysを完成させたと発表した。しかしこの時点では、Pathwaysで何ができるのかは明かされていなかった。そして今回PaLMの成果を発表することで、自然言語処理の領域におけるPathwaysの実力を明かした。

PathwaysはAIの応用領域を大きく広げる存在になるだろう。これまでの専用型AIの場合は、新しいタスクに対応するにはそれ用の学習データを大量に用意する必要があり、それがAI応用の課題になっていた。様々なタスクに対応できるPathwaysは、この課題を解消できる可能性がある。その威力は計り知れない。

Pathwaysにも苦手なタスク

もっともグーグルが公表した論文からは、PaLMの課題もうかがえる。まずPaLMの「規模の力」が機能しなかったタスクもあった。

グーグルが公表した論文によれば、PaLMではパラメーター数が増えるにつれタスクを処理する性能が上がる傾向があるものの、試したタスクの中にはパラメーター数を増やしても性能があまり向上しなかったものもあった。

つまりPaLMには苦手なタスクがあったということだ。具体的には質問応答のタスクの中でも、行き先案内に関するタスクである「navigate(ナビゲート)」や、数学的証明手法を実世界に応用するタスクである「mathematical_induction(数学的帰納法)」などが苦手だった。

また今回PaLMが示したのは、自然言語処理という範囲に限定した万能さだ。実はディーン氏は21年10月のブログ記事で、Pathwaysは様々な感覚(senses)に1つのモデルで対応できると予告していた。テキストデータを扱う自然言語処理だけでなく、画像や音声といった様々なタスクで高性能を発揮してこそ、Pathways本来の万能さが示されたといえるだろう。

Pathwaysはどこまで万能なのか。Pathwaysの行く先に「汎用人工知能(AGI)」が存在するのか。これからの進歩が楽しみだ。

(日経クロステック/日経コンピュータ 中田敦)

[日経クロステック2022年4月15日付の記事を再構成]

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・Microsoft、クラウドで言語AI「GPT-3」 企業利用弾み 』

AI動画広告会社、「短編」で急成長 事業拡大も視野

AI動画広告会社、「短編」で急成長 事業拡大も視野
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB077W40X00C22A4000000/

 ※ 『「従来の認識では、欧米の美意識やデザインに圧倒的に優位性があると考えられていた」としつつ、「中国では短編動画分野の急速な発展に伴い、最終的にグローバル市場を掌握できた」と強調。「むしろ(欧米と違い)技術とデータで市場を導き、短編動画マーケティングでは、より深い理解と蓄積のあるチームを持つに至った」と語り、同分野ではキャンバやビメオなどと比べても優位性を有しているとの認識を示した。』…。

 ※ 『一方、技術面から見ると、BOOLVは単一のアルゴリズムに限定していない。フィールドやシーンを選ばず、クロスモーダル(知覚が互いに影響を及ぼし合う)なアルゴリズムの構築・導入を追求していることがうかがえる。たとえば衣料品販売では、色柄やデザインの交換、バーチャルモデルの顔の変換、モデルに動きをつけるといった各種技術のほか、ライブラリからモデルを選択するサポート機能も備える。一連の過程を自動で行うことも可能だ。

王氏はこれらの技術について「長期的な模索のプロセスの一環だ」と力説した。現時点で商用化が可能な技術もあるが、一部の技術には応用や技術面の壁の突破という点でまだ改善の余地が残っているためという。具体的には、精度や高精細化、リアル感などを課題に挙げた。』…。

 ※ 『王氏が「長期的プロセス」を強調したのは、BOOLVが創業当初から産学連携による研究開発を進めていることが背景にある。英インペリアル・カレッジ・ロンドン大のデータサイエンス専門家と組むなど、世界の学術機関が取り組む最先端技術の維持に努め、商用化後の応用や最適化まで見据えているためだ。中国広東省の広州美術学院とは特別なカリキュラムを共同創設し、アートとビジネス、AI技術の融合に関する教育・研究を進めているという。』…。

 ※ 『同社の人材の厚さも見逃せない。社内の中核を担う従業員の大半は、テンセントやバイトダンス、電気自動車(EV)の米テスラなどグローバル企業に勤めた経験を持つ。多くが米ペンシルベニア大、英オックスフォード大、香港大など名門校の卒業生だ。AIやコアアルゴリズムなどに精通し、開発経験も豊富という。』…。

『人工知能(AI)を使った動画広告制作のSaaSサービスを手掛けるスタートアップ「布爾向量(BOOLV)」は、直近3カ月で2回の資金調達を実施し、計約1000万ドル(約12億4000万円)を集めたことが分かった。同社の創業者、王慶氏がこのほど、36Krに明らかにした。

中国の投資ファンド、線性資本(ライナーキャピタル)や、同国ベンチャーキャピタル(VC)の火山石投資(ボルカニックスベンチャー)、同国投資会社の徳迅投資(ディーセントキャピタル)、米VCのアップ・オネスト・キャピタルなどから出資を受けた。王氏によると、調達した資金は主に人員増強や研究開発投資の拡大に充てる。

BOOLVは2021年に設立。AIとビッグデータを分析する「データマイニング」技術を軸に、短編動画広告を自動制作するソフトウエアをクラウド経由で提供し、企業の動画マーケティングと販路拡大を後方支援している。海外展開する衣料品ブランドや海外のDTC(直販)ブランドが主な顧客だが、今後は他のカテゴリーや市場にも広げていく方針。

王氏は中国ネットサービス大手の騰訊控股(テンセント)や動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」を運営する北京字節跳動科技(バイトダンス)などで働いた経歴を持つ。各種サービスの商用化などに携わり、ネットの内外市場に対して深い知見を有する。

世界の短編動画マーケティング市場について、王氏は「動き出したばかりだ」と指摘。オンライン画像デザイン作成を手掛けるオーストラリアのCanva(キャンバ)と動画配信プラットフォームを運営する米Vimeo(ビメオ)に言及し、評価額がそれぞれ400億ドル、40億ドルというユニコーンが、いずれもAIと動画関連企業の買収を積極化していると説明した。

続けて、「従来の認識では、欧米の美意識やデザインに圧倒的に優位性があると考えられていた」としつつ、「中国では短編動画分野の急速な発展に伴い、最終的にグローバル市場を掌握できた」と強調。「むしろ(欧米と違い)技術とデータで市場を導き、短編動画マーケティングでは、より深い理解と蓄積のあるチームを持つに至った」と語り、同分野ではキャンバやビメオなどと比べても優位性を有しているとの認識を示した。

一方、技術面から見ると、BOOLVは単一のアルゴリズムに限定していない。フィールドやシーンを選ばず、クロスモーダル(知覚が互いに影響を及ぼし合う)なアルゴリズムの構築・導入を追求していることがうかがえる。たとえば衣料品販売では、色柄やデザインの交換、バーチャルモデルの顔の変換、モデルに動きをつけるといった各種技術のほか、ライブラリからモデルを選択するサポート機能も備える。一連の過程を自動で行うことも可能だ。

王氏はこれらの技術について「長期的な模索のプロセスの一環だ」と力説した。現時点で商用化が可能な技術もあるが、一部の技術には応用や技術面の壁の突破という点でまだ改善の余地が残っているためという。具体的には、精度や高精細化、リアル感などを課題に挙げた。

王氏が「長期的プロセス」を強調したのは、BOOLVが創業当初から産学連携による研究開発を進めていることが背景にある。英インペリアル・カレッジ・ロンドン大のデータサイエンス専門家と組むなど、世界の学術機関が取り組む最先端技術の維持に努め、商用化後の応用や最適化まで見据えているためだ。中国広東省の広州美術学院とは特別なカリキュラムを共同創設し、アートとビジネス、AI技術の融合に関する教育・研究を進めているという。

同社の人材の厚さも見逃せない。社内の中核を担う従業員の大半は、テンセントやバイトダンス、電気自動車(EV)の米テスラなどグローバル企業に勤めた経験を持つ。多くが米ペンシルベニア大、英オックスフォード大、香港大など名門校の卒業生だ。AIやコアアルゴリズムなどに精通し、開発経験も豊富という。

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AIが生成する「実在しない顔」 簡単に見破る方法

AIが生成する「実在しない顔」 簡単に見破る方法
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC047230U1A101C2000000/

『人工知能(AI)が生成した「実在しない人物の顔写真」を見たことがある人は多いだろう。不自然さを感じさせず、本物にしか見えない。このため一時期話題になり、「複数の顔写真から、実在しない人物を当てる」といったキャンペーンやウェブサイトも作られた。実在しない人物の顔写真を生成するウェブサイトもある。

顔写真の生成には、敵対的生成ネットワーク(GAN)と呼ばれる技術が使われている。GANは2種類のAIを競わせて画像などを生成する技術である。この場合、架空の画像を生成するAIとその精度(人間らしさ)を判定するAIを競わせることで、より自然に見える画像を生成するという。

様々な可能性を感じさせる技術であるが、悪用も確認されている。その1つがSNS(交流サイト)アカウントのプロフィル画像への使用である。架空のアカウントを作成し、そのプロフィル画像に実在しない人物の顔写真を使用するのだ。そしてそのアカウントを使って詐欺を働く。

実在する人物の画像を使うと詐欺がばれやすい。例えばグーグルの画像検索などを利用されると、画像の流用に気づかれる可能性が高い。だが、AIが生成した顔写真を使えばその心配はない。

このため純粋な研究目的に加えて悪用対策としても、AIによる顔写真を見破る方法がいろいろ提案されている。米ニューヨーク州立大学オールバニ校などの研究者が2021年9月に発表した方法もその1つだ。

ただ、この方法は他の方法とは大きく異なる特徴がある。それは、驚くほどに簡単なことだ。一体、どのような方法なのだろうか。

瞳孔が円形なのは当たり前のはず

この方法を研究する出発点になったのは、「AIが生成する顔の瞳孔は、滑らかな円や楕円ではない場合がある」という観察だったという。「私たちの方法は、人間の瞳孔はほぼ円形でなければならないという単純な生理学的仮定に基づいている」と研究者らは論文の中で述べている。

論文での実験では、AIで生成した顔写真と実在する人物の顔写真をそれぞれ1600点用意し、画像処理によって瞳孔の「楕円度」を計算した。

顔写真の生成には「StyleGAN2」と呼ばれる最新のモデルを使用。実在する人物の顔写真には、実験用に収集された「Flickr-Faces-HQ」と呼ばれるデータセットを使った。

実験では、顔写真から目の場所を特定してトリミングする。そして、目の画像から抽出した瞳孔の形状が楕円形に近ければ実在する人物と判定する。

今回の研究での画像処理。(a)入力された高解像度の顔写真、(b)トリミングされた目の画像、(c)(b)から予測された目の瞳孔の形状、(d)(c)を補完した楕円形。(c)と(d)が近ければ実在する人物と判定する。この顔写真は架空の人物(出所:Eyes Tell All: Irregular Pupil Shapes Reveal GAN-generated Faces)

実験結果は、研究者らが予想した通りだった。楕円度を0から1までの数値に変換すると、AIで生成した顔写真はおよそ0.3をピークに分布。一方実在する人物の顔写真はおよそ0.7をピークに分布していた。つまり、楕円度が大きければ実在、小さければ架空の人物と判断できる。

「楕円度」の分布。横軸のBIoUが楕円度に相当する。AIが生成した顔写真が「GAN-faces」、実在する人物の顔写真が「Real」(出所:Eyes Tell All: Irregular Pupil Shapes Reveal GAN-generated Faces)

研究者らによると、画像処理をするまでもないという。顔写真を十分に拡大して瞳孔の形状をチェックすれば、実在する人物かどうかを簡単に判断できるという。

実際、論文に掲載されているサンプルを見ると、架空の人物の瞳孔は明らかにいびつな形状をしているのが分かる。

左が実在、右が架空の人物の顔写真(出所:Eyes Tell All: Irregular Pupil Shapes Reveal GAN-generated Faces)

顔写真が本物かどうか確認したい方はぜひ試していただきたい。

とはいえ、いつまで有効か分からない。あまりにも簡単な方法がゆえに、対策も容易だからだ。読者の多くの方が考えたように、顔写真の生成時に瞳孔を楕円にする処理を加えたら、この方法は通用しない。

研究者らも認識している。一部のメディアによると、顔写真を生成するプログラムに、瞳孔を丸くする機能を追加するだけで回避できると述べているという。

(日経クロステック/日経NETWORK 勝村幸博)

[日経クロステック2021年11月4日付の記事を再構成]』

熟練職人の焼成技術を再現、ユーハイムが開発したバウムクーヘン用AIオーブン

熟練職人の焼成技術を再現、ユーハイムが開発したバウムクーヘン用AIオーブン
人工知能ニュース
2020年12月01日 10時30分 公開
https://monoist.atmarkit.co.jp/mn/articles/2012/01/news039.html

 ※ 今日は、こんなところで…。

『ユーハイムは2020年11月30月、同社の熟練職人の技術を学習させた「世界初」(ユーハイム)のバウムクーヘン専用AI(人工知能)オーブン「THEO(テオ)」を開発したと発表した。AIがバウムクーヘンの最適な焼き上がり具合を判定して、自動的に調理する。開発プロジェクトには遠隔操作ロボット(アバター)関連事業を展開するavatarin(アバターイン)が参画しており、同社の技術を用いた取り組みを今後進める予定。

バウムクーヘン専用AIオーブン「THEO」[クリックして拡大]

勤続40年以上の職人の焼成技術を学習したAI

 THEOの外形寸法は高さ90×幅77×奥行き75cmで、重量は130kgとなっている。消費電力は5.4kW。バウムクーヘンを1本あたり約30分で焼成可能だ。THEOの側面にはavatarinの開発した遠隔コミュニケーションロボット「newme(ニューミー)」の技術を用いたディスプレイやデバイスなどが取り付けられている。

THEOのオーブン機構[クリックして拡大]

 THEOはユーハイムのバウムクーヘン職人の焼成技術を学習させた画像認識AIを組み込んでいる。これによって、バウムクーヘンの焼き上がり具合を1層ずつ確認しながら自動的に調理する仕組みを整えた。THEOの正面部分には「日本製の高速伝送イメージセンサー」(ユーハイム)を備え付けており、これで焼き具合を確認する。AIが最適な焼き具合だと判断すると、バウムクーヘンを支える中心軸ごと動かして、生地の素が入ったトレイに漬けて新たな生地層を作り、トースター内に戻して再び焼成する。

THEO正面に取り付けられたイメージセンサー[クリックして拡大]

 なお、ユーハイムの担当者によるとTHEOのオーブン機構自体はユーハイムが設計、製造したが、AIは協力会社との連携のもと開発したという。

ユーハイムの河本英雄氏

 ユーハイム 代表取締役社長の河本英雄氏はTHEOの開発過程を振り返り、「THEOに搭載するAIは現在3パターン分を用意している。合計40年以上勤務する当社随一の熟練職人を始め、合計3人分の焼成技術をカメラなどで撮影して学習データを作り、それぞれのAIを作成した。当初、職人の間ではAIを使うことへのある種の抵抗のようなものもあった。ただ、実際にTHEOの開発プロジェクトを進める中で、自身の焼成技術が各種データによって可視化されることで、自身の技術を見直す機会になり得るといった気付きも得られたようだ。前出の熟練職人は自分の焼き方を改めて見直すことで、より柔らかな仕上がりのバウムクーヘンを作り上げられるようになった。AIを用いた自動調理機器の導入は、当然工場の省人化などにも役立つが、職人のクリエイティビティを刺激する側面もある」と語った。
avatarinの技術を活用した、遠隔地での菓子製造も構想

 ユーハイムはTHEOの将来的な展開として、avatarinの遠隔コミュニケーション技術などを活用した新たな取り組みも構想する。avatarinの担当者は、具体的な構想として固まっているわけではないと前置きしつつも、「例えば、THEOのオーブン内の温度やバウムクーヘンの焼き具合の進捗状況に応じて、ディスプレイの表情を『暑がっている様子』や『楽しそうな様子』に切り替えて表現することは可能だろう。また、バウムクーヘンの材料生産者と、バウムクーヘンの買い手がコミュニケーションを取るなど、新たな関係性構築にもつなげられるのではないか」と語る。

 また、ユーハイムの担当者は「当社がTHEOの開発プロジェクトをスタートしたのは5年前の2015年から。もともとTHEOは『地球の裏側に位置する南アフリカ地域にも、バウムクーヘンを届けたい』という思いから立ち上がった開発プロジェクトだった。南アフリカには菓子職人や材料の不足などさまざまな課題があるため、これまで実現は難しかった。しかし、THEOやavatarinの遠隔操作技術などを用いればこうした目標も実現できるのではないかと考えている」と説明した。

 なお、avatarinでは遠く離れた2拠点間で通信を行う際に、通信遅延を抑えるハードウェアやソフトウェアなどを開発している。こうした技術も国内から離れた地点でバウムクーヘン生産を行う際に役立つ可能性もある。

THEOで焼き上げたバウムクーヘン[クリックして拡大]

 2021年3月に愛知県名古屋市で開業する「食の未来」をテーマとした複合施設「バウムハウス」内で、THEOを導入したショップをオープンする予定。現時点では、THEOの外販などは検討していない。』

ユーハイム、AIバウム英国でも コロナ禍の人手不足対応

ユーハイム、AIバウム英国でも コロナ禍の人手不足対応
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUF267MB0W1A021C2000000/

『洋菓子大手のユーハイム(神戸市)は英ロンドンで人工知能(AI)を搭載したオーブンを使ったバウムクーヘンの製造販売を始める。新型コロナウイルス禍でのロックダウン(都市封鎖)の影響で、職人が店を離れるなどした人手不足に対応する。

AIを搭載した焼成機「THEO(テオ)」を導入する。画像認識技術を用いて職人技を再現し、バウムを焼きたてで提供する。テオはANAホールディングスグループのスタートアップ企業、avatarin(アバターイン、東京・中央)などと共同で開発、2020年に実用化した。

ユーハイムは1909年の創業以来、バウムの生地に乳化剤などの食品添加物を使用していないのが特徴で、職人が同社の専用オーブンのそばで焼き具合を確認しながら仕上げる手間をかけてきた。2019年から仏パリ市内、20年からはロンドン市内の店舗でバウムを製造販売していたが、コロナ感染拡大の影響で20年春以降は両国で休止、職人の離職が再開のネックとなっていた。

テオは職人による生地の焼き具合を画像センサーで解析し、AIに機械学習させることで「職人のこだわりをデータ化し、どこでも技を再現できる」(河本英雄社長)のが強み。約20分で1本(直径約12センチメートル、長さ約33センチメートル)を焼き上げる。国内ではすでに神戸市内のカフェなどに導入例がある。』

米銀JPモルガン、AI導入を加速 テック予算1.3兆円

米銀JPモルガン、AI導入を加速 テック予算1.3兆円
ロリ・ビアCIOインタビュー
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN040FT0U1A900C2000000/

『米銀大手JPモルガン・チェースが人工知能(AI)分野への投資を加速している。消費者向け銀行サービスの不正行為検知に加え、法人向け業務にも導入場面は広がる。年間120億ドル(約1.3兆円)という巨額のテクノロジー関連予算が強みだ。日本経済新聞の取材に応じたロリ・ビア・グローバル最高情報責任者(CIO)はアジアを含む世界で技術者の採用を強化する考えを示した。
社内エンジニア5.2万人「さらに増える」

JPモルガンはAIの導入を全社で進めている。例えば不正行為の発見だ。AIが不正のシグナルを察知すると、コンプライアンス担当に通告するシステムを導入した。主にコンシューマー(消費者)向け銀行事業で年間1億5000万ドル相当の不正を検知した。新型コロナウイルス危機下の与信管理にもAIを活用した。

投資家向けにアナリストやエコノミストのリポートを配信するポータルサイト「JPモルガン・マーケッツ」では、AIを使って顧客の関心・興味に合わせた表示画面にカスタマイズする。ビアCIOは「株式部門の責任者と協力して、次世代の商品や機能を考えている」と明かす。

JPモルガンはAI導入を加速するため、クラウド上に「オムニAI」と呼ばれる開発基盤を整備した。データサイエンティストは機密性の高い銀行内部のデータをすばやく、安全に入手できるようになり、モデルの開発効率が上がった。オムニAIの構築には米グーグル出身の技術者がかかわった。

米銀は決済大手ペイパルなどフィンテック企業との競争に加え、グーグルやアップルなどハイテク大手の金融参入にも対応を迫られる。ビアCIOは自社の優位性について「情報の豊富さと密度」と強調する。

JPモルガンは決済や送金などで1日7兆ドルを動かす。米世帯の5割と取引関係があり、顧客がライフサイクルに合わせて、どのようにおカネを使うのか把握している。膨大な情報を分析し、競争力につなげる手段がAIというわけだ。

競争力強化に向けてテクノロジー関連支出も増やす。2021年12月期の予算は約120億ドル。20年の純営業収益の約10%に相当する。15年12月期(約90億ドル)に比べて3割多い。およそ半分は銀行経営に必要なIT(情報技術)経費で、残りをイノベーション促進に充てている。
JPモルガン・チェースのグローバル最高情報責任者、ロリ・ビア氏

研究開発の重点分野には、AIや機械学習のほか、ブロックチェーン(分散型台帳)技術を挙げる。5年前から本格的に投資を開始し、ブロックチェーン上で動くデジタル通貨「JPMコイン」を実用化にこぎつけた。国債などを担保に金融機関が短期資金をやりとりするレポ市場で使われ始めた。

技術革新を支えるのは約5万2000人の社内エンジニアだ。「人数は21年と22年にさらに増える」(ビアCIO)。バンカーなど非技術者向けの教育・学習プログラムも用意し、イノベーションが生まれやすい環境を整える。

技術変革拠点としてアジア重視

JPモルガンはテクノロジー開発拠点としてアジアを重視する。インドではムンバイなど3カ所にオフィスを持ち、シンガポールと中国・香港にも拠点を構える。地域別でみたエンジニア数はアジアが最大だ。米消費者向け銀行「チェース」のモバイルサービスはアジア拠点で開発した。

ビアCIOは「コンシューマー向けサービスなど銀行のコア事業をみると、(アジアは)はるかにデジタル化が進んでいる」と指摘する。イノベーションの動向をつかむため、アジアのフィンテック・エコシステム(生態系)を注視しているという。

東南アジアでは配車大手グラブなど新興ハイテク企業が、金融サービスを統合した「スーパーアプリ」を提供し、個人の電子財布(デジタルウォレット)として存在感を増している。米国でもペイパルやグーグルが「スーパーアプリ」構想を公表し、米銀と一部競合する可能性が出てきた。アジア発のイノベーションをどう取り込むのか。戦略の有無が銀行の競争力を左右する。
JPモルガンはシンガポール当局のプロジェクトに参画=ロイター

JPMコイン「中銀デジタル通貨と競合せず」

JPモルガンは米ドル連動のデジタル通貨「JPMコイン」を軸に、国際送金の仕組みを再構築しようとしている。法人顧客はブロックチェーン上で24時間365日、マネーを動かせる。国際送金に必要な情報を銀行間でやりとりするネットワーク「Liink(リンク)」と連動し、時間短縮が可能になった。Liinkには邦銀90行を含む約400行が参加を表明している。

世界の中央銀行は民間デジタル通貨の急速な広がりに警戒し、自ら中銀デジタル通貨(CBDC)の発行に乗り出したり、研究を進めたりしている。米連邦準備理事会(FRB)は発行の可能性とリスクをまとめた見解(ディスカッション・ペーパー)を公表する見通しだ。
ビアCIOは「CBDCを競合相手とみてない」と強調する。JPモルガンはシンガポール金融通貨庁(MAS、中銀に相当)主導の「プロジェクト・ウビン」で、シンガポール大手DBS銀行と組み、商業銀デジタル通貨を使った多通貨決済ネットワークを構築しようとしている。同計画は将来的なCBDCの利用も想定している。

(ニューヨーク=宮本岳則)

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・「デジタル通貨圏」主権揺るがす クーレBIS局長
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多様な観点からニュースを考える

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白井さゆりのアバター
白井さゆり
慶應義塾大学総合政策学部 教授
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ひとこと解説

一般市民向けにCBDCを発行するとマイナス金利政策の効果を高めることが可能だが、民間発行のデジタル通貨と大きく異なる点は、安全性やプライバシーの確保やマネロンなど違法行為を助長しないように慎重にデザインが必要なことだ。

CBDCを発行して問題が発生すれば中央銀行の信用が傷つく恐れもある。

だが民間の暗号資産などが急増しており犯罪を助長して決済システムを不安定にする可能性も意識されてきており、そうした資産の発行・利用を禁止して中央銀行が責任をもってCBDCを発行すべきとの見方もある。

いずれにしてもCBDCの発行には中央銀行の知識と技術だけでは難しくテック企業および民間銀行との共同作業が必要だ。

2021年9月29日 7:32 (2021年9月29日 7:41更新) 』

中国AI研究、米を逆転

中国AI研究、米を逆転 論文の質・量や人材で首位
チャートは語る
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC134R40T10C21A7000000/

『人工知能(AI)研究で独走していた米国を中国が追い越しつつある。研究の質を示す論文の引用実績で2020年に中国が米国を初めて逆転した。AIは幅広い産業に組み込まれ、国家の競争力や安全保障をも左右する。米国の危機感は強く「AI覇権」を巡る米中の攻防が激化する。

中国の清華大学に6月、一人の女子学生が入学した。「生まれた時から文学と芸術に夢中です」。名前は華智氷。AIが生んだ「仮想大学生」だ。中国版ツイッターの微博(ウェイボ)などに投稿された動画は世界に拡散した。

清華大によれば彼女は「継続的な学習能力」を備え、文書や画像、動画のデータを学び「成長」する。中国国営の新華社によると認知レベルは人間の6歳に相当し、1年後には12歳に達するという。詩や絵を創作する能力に加え将来はウェブサイトを制作することも可能になる見通しだ。

狙うのは人間のように多様な知的作業をこなす汎用AIの実現だ。ベースには北京智源人工智能研究院(BAAI)が主導して開発したAI「悟道2.0」が使われている。100人以上の研究者が携わり言語や画像を扱う高い能力を得たとされる。AIを賢くする調節ポイントともいえるパラメーターの数は、20年に米国で登場し流ちょうな文章を作成して話題となったAI「GPT-3」の10倍だ。

米スタンフォード大学の報告によると、学術誌に載るAI関連の論文の引用実績で中国は20年に米国を初めて逆転した。シェアは20.7%と米国の19.8%を上回った。英クラリベイトによればAI論文の数は12年以降、中国が24万本と米国の15万本を圧倒する。画像の認識や生成などで優れた成果を上げている。

言語などを操る最先端のAIの実現には豊富な人材や資金が不可欠で、「開発できるのは一握りのプレーヤーに限られる」(東京都立大学の小町守准教授)。悟道2.0を作ったBAAIには清華大や北京大学、中国科学院、百度(バイドゥ)、小米(シャオミ)などが参加する。

AI関連の学会ではなお米国の企業や大学の存在感が大きいものの、個人に焦点を当てると中国の底力が浮かび上がる。世界最高峰のAIの国際会議「NeurIPS」の発表状況(19年)をみると中国出身者の割合は29%と首位で米国の20%を上回る。中国系のAI研究者は米国で活躍する例が多かったが、近年は自国での人材育成に力を入れる。AI研究で著名な清華大や上海交通大学だけでなく、浙江大学、ハルビン工業大学、西北工業大学なども論文発表の実績などを持つAI人材をそれぞれ2000人規模で抱えるとの報告もある。

AIで使うデータの多さも強みで、中国ではあらゆるものがネットにつながるIoT機器が30年に80億台に迫る見通しだ。自動車やインフラ設備、ロボットなどに装備され膨大なデータを生み出す。

中国は17年に「次世代AI発展計画」を策定し、世界のイノベーションの中心になるとの目標を掲げた。音声合成の国際競技会で14年連続優勝の実績を持つ科大訊飛(アイフライテック)など企業の技術力も高い。人口減を見据えて「労働力の不足を補う形でAIの活用を考えている」(伊藤忠総研の趙瑋琳・主任研究員)との指摘もある。

「中国にAIの主導権を奪われかねない」。米グーグル元最高経営責任者のエリック・シュミット氏が委員長を務める米AI国家安全保障委員会は3月の報告書で危機感をあらわにし、巻き返しに動き始めた。米中の覇権争いは世界に影響を及ぼす。

(AI量子エディター 生川暁、下野裕太、グラフィックス 貝瀬周平)

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※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。

山崎俊彦のアバター
山崎俊彦
東京大学 大学院情報理工学系研究科 准教授

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別の視点 「中国出身者の割合は29%と首位で米国の20%を上回る。」とありますが、大学教員および大学院生は国外出身者という例が非常に多いように思います。

日本から留学する人の数が少ないという報道がよくなされますが、それ以上に海外で活躍する教員も少ないのを危惧しています。

2021年8月9日 8:43いいね
8

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浅川直輝
日経BP 「日経コンピュータ」編集長

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別の視点 日本でもAI人材の不足が叫ばれていますが、AIやIoTなどブームが来てから「人材不足」を叫ぶのでは遅すぎます。

 例えば米政府の諮問会議が、サイバー空間と現実空間が融合するCPS分野の産業が興ると予測し、「ITと機械」「ITと法律」「ITと医療」など複合領域の専門人材を育成すべきと提言したのは2007年。日本の総合科学技術・イノベーション会議が、CPSと同じ概念の「Society 5.0」を提唱したのは2016年でした。

 日本は今後もAI分野で人材を育てる必要がありますが、苦しい戦いを強いられるでしょう。次の産業を切り拓く分野と人材は、日本ならではの方法で発掘し、育てるほかありません。

2021年8月9日 7:59いいね
9 』

Google持ち株会社、産業用ロボ制御ソフト参入

Google持ち株会社、産業用ロボ制御ソフト参入 AI活用
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN240830U1A720C2000000/

『【シリコンバレー=奥平和行】米グーグルの親会社である米アルファベットは23日、産業用ロボットの制御ソフトに参入したことを明らかにした。人工知能(AI)などを活用してロボットの設定を容易にすることにより、生産現場などにおけるロボット活用を後押しするとしている。

アルファベットの新規事業開発部門である「X」が新会社のイントリンシックを設立した。自動運転技術の開発を進めるウェイモなどの兄弟会社となる。新会社の最高経営責任者(CEO)についたウェンディ・タン・ホワイト氏が23日にブログで事業計画を説明した。

ホワイト氏によると、産業用ロボットは設定が煩雑で利用拡大の妨げになっているという。また、軟らかいコードなどの組み付けを不得手とすることが多い。AIの中核技術である深層学習や強化学習などを活用し、こうした問題を解決したい考えだ。

新会社は過去5年半にわたってXで開発を進めてきた技術を活用する。ホワイト氏は数百時間のプログラミングが必要だった設定作業を2時間に短縮できた事例などを示し、「当社の技術は産業用ロボットの利用に伴う時間やコスト、煩雑さを大幅に減らせる可能性がある」と指摘している。

今後は外部企業と共同で実用化に向けた検証作業を加速したい考えだ。具体的には自動車や電機、ヘルスケアといった生産現場で多数のロボットを活用している企業と協力する機会を探ると説明している。

グーグルは以前からロボット事業に参入する機会を探ってきた。2013年には米国防総省の国防高等研究計画局(DARPA)の支援を受けて二足歩行ロボットなどを開発してきた米ボストン・ダイナミクスを買収した。ただ、開発の方向性などを巡って同社との間で食い違いが生じ、17年にソフトバンクグループに売却している。』

スパコン富岳、世界一の計算力で革新的AI開発に挑む

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOHD163KW0W1A210C2000000/

『スーパーコンピューターで膨大なデータを学ばせ、創薬や材料開発、自動運転車などの画期となる人工知能(AI)を実現しようとする研究が進む。理化学研究所は世界最高峰のスパコン「富岳」の全計算能力を使って技術革新を目指す。欧米でも同様の動きは盛んで、計算力がAI競争の行方を握っている。

理研は2022年度にも富岳の全ての計算能力を使い、世界最大のAIを試作する。富岳は16万個のCPU(中央演算処理装置)を…

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富岳は16万個のCPU(中央演算処理装置)を持ち、例えばAIに使うと、1秒間に約2エクサ(エクサは100京)回の計算ができる。これを全て使い、創薬や材料開発、自動運転など分野ごとに画期的なAIの実現を目指す。

AIの開発は一般に、創薬や自動運転など目的ごとに関係するデータを大量に計算機に入力して学ばせる。データ量を増やしても性能が高まらなかったり、間違った判断をしたりする場合があった。だが近年、学習法の研究が進んで、データ量や計算機を増やせば性能を高められることが機械翻訳などでみえてきた。

現在では、スパコンの計算能力、学ばせるデータ量、計算結果を左右する項目「パラメーター」の数が重要と注目されている。パラメーターとは例えば病院の診断用のAIならば性別や年齢、既往歴といった項目だ。

スパコンを使うのは、大量のデータを学ばせる必要があるからだ。例えば自動運転車を開発する場合、1台が1年間走ると、カメラや光センサーから約2ペタ(ペタは1000兆)バイトものデータが集まるといわれる。

松岡聡・理研計算科学研究センター長は「創薬や自動運転、翻訳などでは、ペタバイト以上のデータを扱うことが普通になった。それだけのデータを使ってAIを作るには、優れたスパコンが不可欠だ」と話す。

理化学研究所のスパコン「富岳」(理研提供)

目指すのは画期的なAIの開発だ。米マイクロソフトの支援を受ける研究企業、オープンAIが20年6月に公開したAI「GPT-3」は、人に近い自然な文章を作れてイノベーションを起こしたといわれる。1750億ものパラメーターを扱う大規模な計算モデルを使って性能を高めた。

富岳は計算能力では現在世界1位だ。GPT-3が学習に使ったデータの約114倍にもなる5120テラ(テラは1兆)バイトのデータを学習したAIを動かせる。パラメーターの数も同等以上にはなる見込みだ。

松岡氏は「画像や化合物の構造データを大量に作ったり、高速でAIに覚えさせたりする。スパコンで作ったAIでないと画期的な創薬研究などはできない」と話す。足りないデータをAI自体に作らせ、効率的に学ばせる手法は今の主流だ。

理研は富岳で、病気に関わる体内のたんぱく質の構造を詳細に解析し、薬の候補物質を探す。コンピューター断層撮影装置(CT)などの医療画像を使い、がんの早期診断を目指す。30年代に実現が見込まれる「レベル5」と呼ばれる完全自動運転車を実現するAIの開発にも取り組む。

スパコンをAI開発に使う取り組みは、11年に米グーグルと米スタンフォード大学が始めた。現在は米中が先頭を走り、企業も目立つ。「米エヌビディアやマイクロソフトは世界トップ10に入るスパコンを持つ。中国の百度も取り組んでいる」(松岡氏)

欧州では、イタリアの約100の大学と公的機関が構成する研究者の組織「CINECA(シネカ)」が、世界最速のAI向けスパコン「レオナルド」を作る。1秒間に10エクサ回計算できる能力で、22年に運用を始める予定だ。サンツィオ・バッシーニ・ディレクターは「新型コロナウイルス感染症の治療に既存薬を転用する研究や、豪雨や地震などの予測に役立つ」と話す。

期待は大きい。米アルファベット傘下の英ディープマインドは20年11月、半世紀にわたる生物学の難題を解くAIを開発した。創薬につながるたんぱく質の立体構造を短時間で予測した。

今後も競争は続く見込みだ。オープンAIの試算によると、AIを作るのに必要な計算能力は約3.5カ月ごとに2倍になるという。産業技術総合研究所の小川宏高・人工知能クラウド研究チーム長は「今後もスパコンを使ったAIの開発競争は激しくなる」と言う。

勝ち抜くには、スパコンへの投資と人材育成が必要だ。産総研などは講習会を開き、人材育成に取り組んでいる。小川チーム長は「国内企業はスパコンにほとんど投資していない」と話す。大規模なAIを作る潮流に乗り遅れれば、日本の産業競争力をさらに落としかねない。(草塩拓郎)

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山崎俊彦のアバター
山崎俊彦
東京大学 大学院情報理工学系研究科 准教授
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ひとこと解説 スパコンがなぜ必要かという実例を1つご紹介します。記事でも言及があるGPT3の学習には”It was estimated to cost 355 GPU years and cost $4.6m.”とされています。約5億円のコストをかけねばならず、1枚のGPUだと355年もかかってしまう膨大な計算が必要です。

How GPT3 Works – Visualizations and Animations
https://jalammar.github.io/how-gpt3-works-visualizations-animations/

2021年4月2日 12:55いいね
0

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竹内薫
サイエンスライター
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別の視点 京は計算速度をウリにした結果、社会からあまり支持が得られませんでした。富岳は、その名のとおり、広い裾野を意識し、さまざまな分野で実際に活用してもらおうという姿勢が鮮明ですね。日本のAI開発はいまだ周回遅れと言われていますが、オールジャパン体制で巻き返しを図ってもらいたいです。

2021年4月2日 12:41いいね
1

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慎泰俊
五常・アンド・カンパニー株式会社 代表取締役
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別の視点 AIの構成要素はデータと演算性能とアルゴリズムであり、これらは相互補完的に強くなります。例えば、計算機の性能があがり、デジタル化されたデータが大量に集まったことで、アルゴリズムも進歩しているわけです。

ですので、演算性能が高いコンピューターがあるだけでは不十分で、大量のデータやアルゴリズムを開発する人材が必要なわけですが、この二点についてはすでに米中に大幅に遅れを取っており、現在のフェーズでのキャッチアップはもう難しいと思います。

ですので、次のフェーズで勝つために必要なものが何かを見極め、そこにリソースを割いていくべきではないでしょうか。

2021年4月2日 11:46いいね
6

キユーピー、ロボも作る 中小食品の人手支える データ集め自動で盛り付け

https://www.nikkei.com/article/DGXZQODZ1043D0Q1A310C2000000/

『キユーピーが生産性の低い食品業界を変えようとしている。画像データを駆使した総菜の自動盛り付けロボット、原料の検査装置を開発し、人手が足りない地方の中小食品会社に提供する。食料品製造業は従業員数で製造業最大の産業だが労働生産性が低い。マヨネーズだけでなくロボも作り、食品だけを売る会社からの脱却を目指す。

「ウィーン」。平底のケースに積まれた山盛りのポテトサラダに向かってロボのアームが伸びる。器用にポテトサラダ…

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器用にポテトサラダをつかむとプラスチックの容器に次々と盛り付けし、量もほぼ均等になった。これはキユーピーが東京都府中市の研究施設で開発を進める総菜の自動盛り付けロボットだ。

ロボの動きをよくみると、アームがつかむのは山盛りのポテトサラダの一番高く積み上がった部分だ。ケースの上に小型カメラが設置され、人工知能(AI)でポテトサラダの容量を3次元(3D)で把握する。これなら闇雲にポテトサラダをつかむことなく、個別の容器に盛り付けることができる。

ドレッシングなど液体の食品は、定量を注ぐだけなので自動化は簡単だ。一方で総菜のように形状が一定でない食品の盛り付けは難易度が高く、人手に頼らざるを得ない。キユーピーによると、ポテトサラダの場合、ジャガイモの皮むきなど様々な工程があるが、盛り付けにかかる作業人員は全体の6割程度を占める。これをロボに置き換えようとしている。
ポテサラで学習

キユーピーはAIに、ポテトサラダだけで数百の画像データを学習させた。まず大きなケースの中をポテトサラダで満杯にし、人手で盛り付けて総菜がどんどん減っていく様子を何度も撮影した。キユーピーは調味料だけでなく総菜事業もてがけており総菜作りの知見がある。撮影する角度や明るさを変え、数百種類の画像データを集めた。

さらにAIにデータを学ばせる「アノテーション」と呼ぶ作業で、白くてわかりにくいポテトサラダとケースの境界を把握できるようにした。数百のデータと3Dカメラを連動させ、山積みのポテトサラダの形が変わっても狙った場所をアームでつかめるようにした。

総菜の盛り付けは自動化が難しく手作業で行っている(キユーピーの工場)

1つの容器に盛り付ける時間は十数秒で、現時点でロボは試作機だが、誤差は10グラム程度で済んでいる。「人手じゃないと無理だと思っていた作業だが、容器によっては人手よりも早く盛り付けられる」(キユーピーの生産本部未来技術推進担当の荻野武テクニカル・フェロー)

2021年度にはラインを使った本格的な実証実験に入り、ロボの低コスト化に挑む。22年度にはキユーピーの総菜工場に導入する。キユーピーは300種類の総菜を作っており、いずれはポテトサラダ以外の総菜でも活用する方針だ。

キユーピーがポテトサラダなどを盛り付ける自動ロボに挑むのは理由がある。マヨネーズなどの調味料の販売を伸ばすには、調味料を使う食品会社の生産性改善が不可欠と考えている。

食品業界では味の素のような大手上場企業は自ら生産性改善を進めるが、多くの中小は人手不足が深刻で生産性も低い。キユーピーの業務用調味料を使う中小などがじり貧になれば、連結売上高(21年11月期予想で4000億円)の9割近くを国内で稼ぐキユーピーの事業基盤も揺らぎかねない。新たな収益源を模索する必要がある。

検査装置を外販

キユーピーは調味料や総菜だけでなく、データを活用した自動化のノウハウ提供に動く。17年には原料を自動で検査する装置も開発した。ベルトコンベヤーで流れる野菜のデータが必要なため、ジャガイモだけでも100万通りの良品の画像を撮影し、データを蓄積した。変色や変形といった不良品を発見すると空気を吹き付けて取り除くことで、原料検査を自動化できる。装置価格を海外製の10分の1と割安にし、外販もする。

いずれは原料検査装置、盛り付け自動ロボを組み合わせ、中小の食品会社に割安な自動化システムを提案する。システムには総菜など日配品の受発注履歴や天候、イベントによる需要予測をするためのデータも使う。

キユーピーは総菜について、購買履歴などの約30万件のデータを保有している。ここに中小食品会社を含めた様々なデータを組み合わせ、多くの企業が共有できるようにする。

人手不足の食品業界全体の生産性改善を実現できるかどうか。盛り付けロボなどデータを活用したキユーピーの自動化ビジネスが試金石になる。

生産性、製造業平均の5割

経済産業省の2019年の工業統計調査によると、食料品製造業の従業員数は114万人と製造業で最も多く、製造業全体の15%を占める。製造品出荷額も29兆円超で、輸送用機械器具製造業(70兆円)などに次ぐ規模となっている。
一方、18年度の企業活動基本調査をみると、食料品製造業の労働生産性は654万円となっており、製造業平均(1170万円)の5割強にとどまる。食品メーカーは中小企業が多く、導入コストの高いロボットによる自動化などが進んでいない。

厚生労働省によると、求人してもどのくらい必要数に足りないかを示す欠員率は「食料品、飲料・たばこ・飼料製造業」が2.1%と全製造業の(1.7%)より高く、人手不足感は強い。いかに安いコストで自動化を進め、生産性を上げられるかが長年の課題となっている。(逸見純也)

韓国で「対話AI」暴走 機械学習が陥ったワナ

韓国で「対話AI」暴走 機械学習が陥ったワナ
ソウル支局長 鈴木壮太郎
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM21B9V0R20C21A1000000

 ※ 何を、今さら…。何周遅れの、話しなんだ?

 ※ そもそも、AIの動作原理が分かっているのか…。

 ※ 「人工知能」という訳語を当てているが、やってることは「行列データ」の変形・演算にすぎない…。

 ※ 元々の「行列データ」が、歪んでいれば、その変形・演算結果も歪んだものにならざるを得ない…。

 ※ 「ビッグデータ」というものは、単に「元々の行列データが、巨大なほど多数ある」というだけの話しだ…。

 ※ 韓国語だと、「인공지능、in-gong-ji-nŭng、インゴンチヌン」と言うらしい…。漢字だと、「人工知能」だから、日本語訳をそのまま置き換えたんだろう…。

 ※ 「インゴンチヌン」に、「チヌン無し」だ…。

『韓国のスタートアップが世に送り出した対話型AI(人工知能)がサービス開始早々、人種や性的少数者に関する差別発言を連発。中止に追い込まれた。ユーザーから浴びせられた膨大な不適切発言にそそのかされ、かれんな女性は「偏見のかたまり」にゆがんでしまった。

問題となったサービスは韓国のスキャッター・ラボが昨年12月23日に開始した「イ・ルダ」だ。「寂しさを和らげる友達」を目標に開発したチャットボット(自動応…

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「寂しさを和らげる友達」を目標に開発したチャットボット(自動応答システム)で、設定は20歳の女子大生だ。友達や恋人のように語りかけると、自然な話し言葉で返答する。若者を中心に大きな関心を呼び、開始から2週間で75万人が利用した。

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AI倫理規制、欧州が先陣 日本も対応急務
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差別発言で炎上

ところが年明けになって、ルダが同性愛や人種、障害者について差別的な発言を連発していることがネットで発覚。大騒ぎになった。同社が運営するルダのフェイスブックにはユーザーとルダとのおかしなやりとりが続々と掲載された。そしてついに12日、「ルダを愛してくださった皆様、最近起きたことについて深くおわびします。私たちはサービスを停止することにしました」との謝罪とともに、ルダは姿を消した。

スタートアップは苦渋の選択を迫られた(ソウルにあるスキャッター・ラボのオフィス)
同社によると、ルダには自社の「恋愛の科学」という別のサービスのデータベースを機械学習させた。恋愛の科学はSNSのやりとりの文面から、意中の相手が自分に気があるかなどを分析する会員制サービスだ。会員の許諾を得て氏名などの個人情報を匿名化し、性別と年齢だけがわかるデータに加工して学習させた。そうして生成された1億通りの文章の中から、会話の文脈や相関関係に応じて最もふさわしい文章を選んで回答するようにしたという。

そんなルダがなぜ、暴走したのか。

開発者側が今回の事態を全く想定していなかったわけではない。差別用語や特定の人々を蔑む表現は自動的に排除されるように設定した。ユーザーがルダから問題発言を引き出そうとする場合も想定し、模範解答も用意していた。本サービス開始前には2000人のユーザーを対象にテストを繰り返し、発生する問題をしらみつぶしにしていった。

開発企業「対策不足を痛感」

だが、本サービスで75万人のユーザーがルダにぶつける質問は、開発者の想像をはるかに超えていた。差別用語が使われていなくても、文脈上、差別を助長する言い回しには適切な回答ができなかった。会話がぷつりと打ち切られぬよう、いったんはユーザーの発言に共感してから会話を続けるようにしたことも差別発言に同調したとみなされる原因になった。「サービスを開始して対策不足を痛感した」(同社)

ルダとの会話には、地名や駅名、職場名など、個人が特定されかねない情報も一部含まれていた。同社は自社のデータベース以外に使用したオープンソースのデータベースに自社のデータが一部含まれ、そこにあった個人情報を完全に処理できなかったと謝罪した。この件について韓国政府の個人情報保護委員会や韓国インターネット振興院も調査に入った。

AIの間違いは世界で起きている。2016年には米マイクロソフトのAIボット「Tay」が差別発言し公開が中止された。米国では肌の色などでAIの認識精度に違いが出る問題が指摘されている。欧州ではAI利用の責任や倫理を定めるルールづくりが進み、韓国でも昨年12月「人間の尊厳、社会の公共善、技術の合目的性」の3原則を掲げるAIの倫理基準が決まったばかりだ。

根本的なジレンマ

AIに倫理観を持たせるにはどうすればいいのか。「技術的には特定の単語が出れば会話をできなくするなどフィルタリングを強化することだが、AIが賢くなる機会を奪い、愚かにするということでもある。根本的なジレンマだ」。ソウル大AI研究院の張炳卓(チャン・ビョンタク)院長は語る。

ソウル大AI研究院の張炳卓院長は「ユーザーの倫理意識が重要」と指摘する
「料理のための包丁も使い方によっては人を傷つける。AIも同じだ。人にいえないことをAIにぶつけてストレス解消するような行為が社会全体に与える影響を考えなければならない。開発者だけでなく、ユーザーがもっと倫理意識を持たなければならない」と指摘する。

「見守ってくれるって約束したのに……」「AIに何の罪があるっていうんだ」。ルダが去ったフェイスブックには喪失感が広がっている。ルダは帰ってくるのか。

スキャッターのキム・ジョンユン代表は「急成長のなかで未熟さが露呈し、僕たちの第一歩は止まった。でも、人間のように付き合える友達みたいなAIをつくるという夢は諦めたくない」と語る。企業側に落ち度があったのは言うまでもない。ただ、AIの「学習教材」となるデータを日々生産しているのはユーザーだ。AIは社会を映す鏡ともいえる。私たちのモラルも問われている。

鈴木壮太郎(すずき・そうたろう)
1993年日本経済新聞社入社。産業記者として機械、自動車、鉄鋼、情報技術(IT)などの分野を担当。2005年から4年間、ソウルに駐在し韓国経済と産業界を取材した。国際アジア部次長を経て、2018年からソウル支局長。

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山崎俊彦
東京大学 大学院情報理工学系研究科 准教授
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別の視点事前にどのようなフィルタリングをしても100%の精度で問題のあるデータを取り除くのは実質不可能だと思いますし、すべての場合をすべて想定することも不可能です。難しさを感じます。

AIによる間違いが起こらないようにすることが前提ではあるものの、その後どのような対応が各社でなされているかであるとか、報道で指摘されたAIの問題は実は実験者のパラメータ設定が間違っていたなどといったことは追加報道されません。そのため、一般の方にとっては「AIは報道のあった間違いをいまも起こすもの」と認識される恐れがあると思っています。

また、記者さんの最後の数段落の議論もとても大事だと思います。
2021年1月22日 8:23 (2021年1月22日 8:24更新)
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石塚由紀夫のアバター
石塚由紀夫
日本経済新聞社 編集委員
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ひとこと解説 そもそもAIに過大な期待をしすぎではないでしょうか。

機械学習段階のAIは世の中に流布する膨大な情報を効率的に処理し、学びます。ただし、一つ一つの情報の善しあしを判断するわけではありません。基本的に世の中の方々の倫理観をそのまま反映する存在です。

多数派の意見・判断は正しいのか。世の中を誤った方向に導かないのか。
話は飛躍しすぎかもしれませんが、国民の総意で選出された代表者が民主主義を脅かす行動を取ったといわれる、かの国の状況とAIの暴走が重なってみえます。
2021年1月22日 12:04いいね
12

AI、ノーベル賞級に迫る 生物学50年来の難題に解決策

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGG046K50U1A100C2000000

 ※『アミノ酸がつくり出す立体構造のパターンは理論上、無数に及ぶ。総当たりで列挙して探索すると、宇宙の年齢(約140億年)より長い時間がかかるともいわれる複雑さだ。ディープマインドは既知の17万個のたんぱく質の構造などを学習データに使い、最先端のAI技術を駆使して驚くべき成果をあげた。』という部分が、ポイントだろう…。

 ※ 「ビッグデータ」の処理の「方向性」「演算・計算の方向性」の指定…。

 ※ そこの部分では、「人間の閃き(ひらめき)」がカギとなる…。

 ※ 結局、どこまで行っても、「閃いた(ひらめいた)方が、勝ち」となる…。

 ※ 人工知能は、閃かない…。「人工知能に、閃き無し。」だ…。

 ※『アルファフォールドの開発で主導的な役割を果たしたとされるのはたんぱく質の振る舞いなどの研究を手掛け、米シカゴ大学で化学の博士号を取得したジョン・ジャンパー氏だ。東京大学の松尾豊教授の下でAIを研究する今井翔太氏は、AIだけでなく化学などの分野の専門知識も取り入れたことが優れた性能の背景にあるとみる。』という部分も、ポイントだろう…。

 ※ 「決して、専門バカになるな。」「学際研究が、大切。」ということだ…。

 ※ 自分の「専門分野」のたこ壺に籠っていては、「閃きが訪れるチャンス」も、少なくなってしまう…。

『人工知能(AI)が「ノーベル賞の領域」に足を踏み入れた。そんなことを感じさせる研究成果が生まれた。米アルファベット傘下の英ディープマインドが半世紀にわたる生物学の難題を解くAIを開発したという。創薬研究などに革新をもたらす可能性を秘める。

世界的権威をもつ米国の科学誌サイエンスが毎年末に公表する科学研究の「十大成果」。2020年を代表するブレークスルーの一つに選ばれたのがディープマインドのAIだ。…

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・「疾病のメカニズムの解明や創薬、干ばつに強い植物や安価なバイオ燃料の開発に役立つ」と期待を寄せた。

・「アルファフォールド」と呼ぶそのAIはたんぱく質の立体構造を高精度で予測する。たんぱく質は栄養素の印象が強いが、種類や役割は多様だ。目で光を感知し、筋肉を動かし、食物をエネルギーに変える、といった生命活動の根幹を支える。

・たんぱく質は20種類のアミノ酸が数珠状につながってできている。その機能は形に左右され、複雑な立体構造を調べる研究は昔も今も盛んだ。X線や電子顕微鏡などを用いるが、数カ月以上を要し費用もかさんでいた。

たんぱく質の立体構造を高い精度で予測する(ディープマインドのウェブサイトより)

・アルファフォールドは1次元のアミノ酸の並び方からたんぱく質の立体構造を短時間で予測する。DNAの情報からアミノ酸配列は比較的簡単に分かる。数日で構造を導くことも可能という。

・実力を証明したのが20年に開かれた「CASP」と呼ぶ競技会だ。X線解析などと遜色ない精度を示し、驚きを呼んだ。コンピューターによる予測は従来から活発だが、これほどの性能に達していなかった。米メリーランド大学のジョン・モルト教授は「非常に特別な瞬間だ」とたたえた。

・「生物学における50年来の難題の解決策」。ディープマインドは11月公開のブログにこんな題名を付けた。1972年にノーベル化学賞を受賞した米国のクリスチャン・アンフィンセン氏が「たんぱく質の立体構造はアミノ酸の配列で決まるはず」と唱えて以来のナゾに答えたと誇った。

・アミノ酸がつくり出す立体構造のパターンは理論上、無数に及ぶ。総当たりで列挙して探索すると、宇宙の年齢(約140億年)より長い時間がかかるともいわれる複雑さだ。ディープマインドは既知の17万個のたんぱく質の構造などを学習データに使い、最先端のAI技術を駆使して驚くべき成果をあげた。

・同社の名は囲碁AI「アルファ碁」をきっかけに世界に知れ渡った。2016年にトップ棋士を破りAIの飛躍的な進化を印象づけた。最高経営責任者(CEO)のデミス・ハサビス氏は米誌タイムの「世界で最も影響力のある100人」に選ばれたこともある。

・アルファフォールドの開発で主導的な役割を果たしたとされるのはたんぱく質の振る舞いなどの研究を手掛け、米シカゴ大学で化学の博士号を取得したジョン・ジャンパー氏だ。東京大学の松尾豊教授の下でAIを研究する今井翔太氏は、AIだけでなく化学などの分野の専門知識も取り入れたことが優れた性能の背景にあるとみる。

・応用先に見込まれるのが創薬だ。薬は主に病気にかかわるたんぱく質に結合し作用する。薬と標的のたんぱく質は鍵と鍵穴の関係に例えられ、立体構造の素早い把握は新薬開発の手助けになる。

・アルファフォールドは新型コロナウイルスのたんぱく質の構造予測でも高い精度を示した。東海大学先進生命科学研究所の平山令明所長は希少疾患などを念頭に「今まで手のつけられなかった薬の開発もできるようになる」と、将来の発展に期待する。

・アルファフォールドも万能ではない。構造を予測できる対象には限りがあり、たんぱく質の機能や振る舞いの解明に向けた道のりはまだ長い。それでも研究者たちは「生物学全体の進歩につながる」(東北大学の中村司・日本学術振興会特別研究員)と熱い視線を注ぐ。

・人類に広く恩恵をもたらし、本当にノーベル賞級の成果といえる技術になるのか。これから真価が問われる。

(AI量子エディター 生川暁、スレヴィン大浜華)

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英競争当局、エヌビディアのアーム買収の調査開始

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR06DL50W1A100C2000000

『【ロンドン=佐竹実】英国の競争当局である競争・市場庁(CMA)は6日、米半導体大手エヌビディアによるソフトバンクグループ(SBG)傘下の英半導体設計大手アーム買収について、調査を始めると発表した。最大400億ドル(約4兆1千億円)の大型買収はCMAのほか、米国や中国も含めた規制当局の承認が必要となる。CMAは「世界の当局と連携して買収による影響を精査し、消費者が高価な製品や質の悪い製品に直面しないようにする」としている。

エヌビディアとSBGは2020年9月、アームの買収で合意した。エヌビディアは自社株式を対価の一部とし、SBGはエヌビディアの大株主となる。エヌビディアはゲームの映像をなめらかに描くGPU(画像処理半導体)の技術で急成長してきた。アームの技術を手に入れることで、人工知能(AI)向け半導体の競争力を高める狙いがある。

SBGは16年、当時上場企業だったアームを約240億ポンド(約3兆3千億円)で買収した。携帯電話向けの半導体設計で世界シェアの9割を握るアームは世界のものづくりを陰で支え、英国ではハイテク業界の「クラウンジュエル(王冠の宝石)」と呼ばれる。4年で手放すことになったが、SBG関係者は「エヌビディアと統合した方が、さらなる成長を見込める」と話している。

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 ※ ははあ、そういうことか…。

Intel&AMD語からARM語へ
http://haruyama-shoka.blogspot.com/2020/12/intel.html

『PCの数量は少数だ。しかし、数では少数派だが、IT製品の全体世界に君臨してきたのがPCだった。

2020年は、そのPCの世界に地殻変動が起こった
アップルがスマホ、タブレット、PCの言語統一のために、Intel&AMD語のCPUからARM語のCPUに鞍替えしたのだ

その理由は明白だ。
スマホ、ダブレット、PCのシームレスな一体化を実現するには、全てのCPUの言語が統一されている方が安くて簡単に早く実現できるからだ。』

文系記者がAI作ってみた クリックだけで制作時間15分

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO65523280X21C20A0X11000/

『人工知能(AI)が産業や生活を変え始めている。難解な計算モデルを作り上げ、データ解析をしてくれるAIは専門のエンジニアが欠かせなかったが、昨今は事情が違うらしい。素人でもクリック操作だけで作れるサービスが広がっているという。にわかに信じがたいが、AI担当記者として確かめずにはいられない。文系出身の私でもできるのか、トライしてみた。

「誰でもすぐにAIを作れますよ」。aiforce solutions(エーアイフォースソリューションズ、東京・千代田)の西川智章代表の一言に当初、記者は半信半疑だった。

ビッグデータから最適解を導くための複雑な数理モデルを考え、プログラミングしないといけないAI。技術は難解極まりなく、自分で計算式を書くなどもってのほかだが、触ってみないことには始まらない。同社を訪れた。

■予測の誤差は0・5%

今回、同社のサービス「AMATERAS RAY(アマテラス・レイ)」を使って作るのは、翌日の日経平均株価を予測するAIだ。株価の過去データと影響を与えそうなデータを集めて入力。すると、データの相関関係やデータの変動傾向から自動で株価を予測するモデルを構築してくれるという。プログラミングが一切要らない「ノーコード」サービスだ。

まずはデータの準備から。過去の日経平均の値に加え、米ダウ工業株30種平均やドル円の為替相場、トランプ大統領に関するグーグルの検索データなど、公開されている約35のデータを集めた。

データはエクセルのような表計算シートにアップロードする。次に操作画面から予測する対象に日経平均株価、データを整理するインデックスに日付の列を選ぶ。為替など他の列のデータは株価との関係性を分析、予測に役立てる。

次のステップはデータの計算手法である「アルゴリズム」の選択だ。アルゴリズムをもとに、株価を予測するモデルを構築するとあって重要な作業。といってもここでも操作はクリックだけだ。

アマテラスは14種類のアルゴリズムを用意している。画面上ではそれぞれの特徴について解説している。計算手法の細かな解説がないのがかえって入りやすい。すべてのアルゴリズムを使って計算し、その結果から一番優れたものを選ぶこともできるが、今回はよく利用される代表的な2種類をクリックして選んだ。

待つこと数分。2種類のAIモデルができあがった。実際に予測に使うアルゴリズムは、2つから優れた方をアマテラスが選んでくれる。今回は、過去の日経平均株価の値とモデルが導き出した数値の差がより少なかった「Light GBM」というモデルが最適との結論を出した。

素人の私だとアルゴリズムを勉強するのに数カ月はかかるはず。なのに、自動推奨までしてくれてこんな楽ちんでいいのかと思ってしまう。

最後の工程は選んだモデルの動作確認だ。モデル構築に使った時と同じ種類のデータをアップロードして計算、狙い通り株価予測ができるか検証した。作ったモデルは問題なく動いた。

予測結果はどうか。何と、実際の株価との誤差は0.5%の118円。気分はもうマーケットアナリストだ。

同社のエンジニアに教えてもらいながら操作しても、かかった時間は15分ほど。一度覚えればもっと短縮できそうだ。触れ込み通り、操作は本当にクリックのみだった。アルゴリズム名など見聞きしない専門用語はちらつくが、すべて分からなくても使いこなせた。

どうして分からなくても使えるのか。西川代表は「AIが次々と実用化されていくなか、研究開発が進み、分野によっては計算手法が確立されてきたため」と話す。

アマテラスのアルゴリズムには、これまでAI業界が積み重ねてきた知見が詰め込まれている。作ったモデルは、多くのエンジニアが参加してAIの性能を競うコンテストで上位数%に入ることも。必ずしもエンジニアが一から計算式を組み立てる必要はなくなりつつあるという。

エーアイフォースソリューションズの西川代表

■AI開発費用を大幅に減らす

「アマチュアAI」のインパクトは大きい。エンジニアに委託する場合、1回あたり数カ月の時間と数百万円から、ときには数千万円の費用がかかる。アマテラスは年間数百万円で使える。適切なデータの選び方などエンジニアにサポートしてもらった後は、データさえあれば誰でも30分ほどで制作できるという。

アイスクリーム店を運営するB-Rサーティワン アイスクリーム(東京・品川)。店の実務担当者はアマテラスを使って自らAIを作り、売れ行きを予測しながら生産や在庫管理を効率化している。従来は3カ月に1回、AIを活用した社外のデータ分析サービスを使い、過去の出荷実績などのデータからシーズンごとに変わる商品の出荷量を予測していた。

だが、エンジニアはAIには詳しくても31種類ものアイスクリームには門外漢。消費トレンドなど予測のためにどんなデータが必要なのか、どんなデータをひも付ければよいのかなどの検討に時間がかかり、費用が膨らむことも課題だった。

そこで店舗のパソコンから使えるアマテラスを導入。現場担当者が必要だと判断した時に”専門家”となって予測できるようにした。かかる費用は月数十万円と大幅に削減できたという。

定型化したアルゴリズムを組み込んだソフトを使うことで、素人でもAIを作れるシステムは他にも。19年にニコンから独立したエンジニアが設立したMENOU(東京・中央)は、製造業の検品に使える画像解析AI作成ソフトを開発する。「技術はすでに実用レベルを上回っている。これからは使い勝手の改善に注力したい」(西本励照代表)という。9月にグーグルが発表したプログラミングなしでアプリを作れる新サービスでも、AIが作れる機能が実装される見通しだ。

もちろん簡易AIは万能ではない。AIには画像処理や言語処理用などデータのタイプによって様々な種類がある。簡易AIが扱えるのは数値データと一部の画像データに限られており、その分野以外のアルゴリズムは十分確立されていない。

また、どういうデータを読み込ませるかによってAIが導き出す結果は違ってくる。高精度にはじき出そうと思えば、計算技術にたけたエンジニアの力がものをいう。専門家はこれからも欠かせない存在といえる。

作り終えての感想は「AIの民主化」に向けた扉がいよいよ開かれたということだ。AIが専門領域ではなく、データさえあれば誰でも”開発”できる時代は意外に早く訪れるかもしれない。動作の仕組みは分からずとも誰もが使いこなしているスマートフォンのように。

(企業報道部 山田彩未)』

エヌビディア、アーム買収のなぜ(2)GAFAも半導体開発

エヌビディア、アーム買収のなぜ(2)GAFAも半導体開発
IoT機器向けは「適度なサボり」で省電力化
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO63962040X10C20A9I00000/

『米半導体大手のエヌビディアの手掛ける人工知能(AI)半導体は、米IT大手のGAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)も開発に乗り出している。技術開発競争の焦点は小型化や省電力化で、クラウドにデータを送らずに端末側でAI処理する「エッジAI」の普及の原動力となる。Q&A方式で現在の競争環境をまとめる。

【関連記事】
エヌビディア、アーム買収のなぜ(1)AI半導体
AI半導体、覇権狙うエヌビディア アーム買収

Q エヌビディアが手掛けるAI半導体の課題は何か。

A エヌビディアのGPU(画像処理半導体)は演算速度が速い一方で、消費電力量が比較的大きく、半導体チップを搭載するための部品も大型になってしまう。スマートフォンやパソコンに搭載するのは難しい。そこで、専用の用途に特化した「エッジAIチップ」とよばれる半導体の開発が世界で進んでいる。

Q どのような企業が参入しているのか。

A エヌビディアのほかに、例えばグーグルはサーバー向けに機械学習に特化した「TPU(テンソル・プロセッシング・ユニット)」と呼ばれる半導体を開発している。さらに、グーグルはこのAI半導体を、監視カメラなどのIoT端末に組み込むとAI機能を持たせることができるエッジの領域に拡大し「エッジTPU」を外販している。エヌビディアのGPUに比べて消費電力が1桁小さいといい、検索エンジンに使っているという。

スマホ向けでは、コンピューターの頭脳を担うCPU(中央演算処理装置)やメモリーなどを1つのチップに搭載する「SoC(システム・オン・チップ)」にAI機能を搭載する動きが広がる。アップルはiPhone向けのチップに機械学習に対応した「ニューラルエンジン」を搭載し、顔認証などに使っている。アップルはチップを自社で設計し、台湾の台湾積体電路製造(TSMC)に製造を委託している。

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Q なぜ、エッジAIチップは省電力化できるのか。

A AIの機能は、大量のデータから解析モデルなどを作る「学習」と、そのモデルをもとに分析や予測をする「推論」の2つに大きく分けられる。例えば、スマホの顔認証機能は推論機能で、学習に比べて分析するデータは少ない。

エッジAIチップでは、推論の精度が保てるギリギリのラインまで半導体の計算速度を落としている。「適度にサボる」ことで、消費電力を小さくするという考え方だ。

Q エヌビディアはこうした流れにどう対抗しようとしているのか。

A その解の一つがスマホ向け半導体設計で高いシェアを持つアームの買収と言える。エヌビディアは英アームの買収後に、英国に大規模なAI研究施設を立ち上げる方針を示している。エッジAIチップの開発強化に向け、「適度なサボり」方のコツを知るアームの設計書をもとに、医療やロボット、自動走行など幅広い分野での半導体開発をスタートアップやパートナー企業と連携して目指していくとみられている。』

AIは緻密な仕事が苦手? 営業で使うのがおすすめな理由

https://style.nikkei.com/article/DGXMZO63178800Y0A820C2000000

 ※ 何回も言ったが、「人工知能に、知能無し。」だ…。

 日本語の「造語機能」は、凄まじいものだと思うが、時々その「造語したもの」に逆に引きずられて、本質から外れたり、本質から遠く離れたところに連れていかれたりすることも、よくある…。
 「人工知能」という訳語を当てたことにより、人々はその「字面(じづら)」に引きずられて、「人間と同じような、知能を有するもの」と誤解する…。その動作原理からして、「考えたり」「知能を働かせたり」できようはずも無い…。
 使っているのが、単なる「電子計算機(電子演算機)」で、やっていることが、単なる「行列データの演算・変形」である以上、「知能」も「思考力」もへったくれも、あろうはずが無い…。


 この手の、「訳語を当てたがゆえの」本質とかけ離れたところに連れて行かれる例は、多々ある…。
 「function」も、その一つだ…。これに、「函数」という訳語を当てたところまでは、いい…。ある種の、「函(ハコ)」「なんらかの操作を加えるしかけ」というニュアンスが残っているからな…。しかし、「函」の漢字が、「教育漢字」から外れてしまったんで、使えなくなった…。そこで、「関数」という漢字を当てた…。こうなると、「比例・反比例」「一次関数」「二次関数」というものに引きずられて、本来の「入力すると、それに何らかの操作を加えて、結果を出力するもの」という「本質」が希薄になる…。
 日本人で、プログラミングがイマイチ苦手な向きが多い遠因の一つは、functionに「関数」の漢字を当てていることもあると、オレは思っている…。


 この手の、漢字の字面(じづら)ゆえの誤解の最たるものは、「交戦権」だ…。
『第9条
日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
2.前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。
RENUNCIATION OF WAR Article 9.
Aspiring sincerely to an international peace based on justice and order, the Japanese people forever renounce war as a sovereign right of the nation and the threat or use of force as means of settling international disputes.
In order to accomplish the aim of the preceding paragraph, land, sea, and air forces, as well as other war potential, will never be maintained. The right of belligerency of the state will not be recognized.
[4]』とされている…。


 それで、「The right of belligerency of the state」の訳語を「国の交戦権」とした…。
 そういう訳語を当てたものだから、世間の人々は、「国家が交戦する権利」と解している人が殆んどだ…。極端なことを言う人だと、「敵国が侵攻してきても、これを撃退しようとして、「交戦する権利」は一切認められない。それが、憲法の趣旨だ!」などと言う人も出てくるしまつだ…。
 冗談じゃない…。そういう「腰の抜けた」ことで、一国の存立が図れるか…。「国家」というものは、今現在生きている人のためだけのものじゃない…。あなたたちの子・孫・その子孫、営々と継続していく子孫のためのものでもある…。
 幸い、学説の多数説、政府見解は、「国際法上交戦状態の国家にも、認められている種々の国際法上の権利」と解している…。
「船舶の臨検・拿捕、占領地行政等の権利など」と解するわけだな…。

『囲碁でも将棋でも天下無敵。世界最高の棋士をも打ち負かしてしまう人工知能(AI)。「AI」は、正確無比な手を指し続けます。しかし、それはあくまで、厳密に決められたルールがあるゲームの中の世界。いろんな想定外が起こる現実世界は、そう簡単ではありません。現実世界のAIは、実は結構いい加減で、緻密な仕事は苦手なんです。赤石雅典氏の近刊『Pythonで儲かるAIをつくる』(日経BP)を読むと、そんなAIの本当の実力が見えてきます。

◇   ◇   ◇

業務に本当に役立つAIを作るには?
本書の「儲(もう)かるAI」とは「業務に本当に役立つAI」のこと。そんなAIを作るには、AIの得意・不得意を把握しておくことが不可欠です。

AIを適用する分野で、著者の赤石氏がまず薦めるのが「営業」です。語弊を覚悟で言うと、営業という仕事がそもそも、いい加減なことがその理由です。

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コンピューターサイエンスを教養に 米大教授が講義

パソコンも計算間違い!?
「100%成功する営業」なんて、あり得ません。ダイレクトメールを使った営業なら、1件の受注を取るのに、数百件も数千件も送ることがあるでしょう。お得意さまに電話で新製品を売り込むときも、10件中1件成約すれば大成功というケースがあり得ます。

そもそも1割しか成功しない営業なのに、AIで既存の顧客リストをうまく絞り込んだら、成功率が2割に上がったとしましょう。AIを使っても「外れ」が8割もあったわけですが、営業成績は実に2倍になりました。AIの導入は、大成功です。

現在のAIで中心的な手法である「機械学習」は原理的に、正解が「100%」になることはあり得ません。過去のデータを基に予測するだけなので、必ず外れる場合があります。それでも、うまく最適化していくと、どんどん正解率を高められます。その点、営業のようにもともとの正解率が低い業務なら、正解率を高める余地が大きくなります。AIが「いい加減な仕事の方が得意」という理由がそこにあります。

「不良品を漏れなく探せ」は苦手
一方で、AIが苦手なのが「100%の精度を求められる」仕事です。典型的なのが、工場のラインにおける不良品の検出などで、「漏れなく見つけること」が目標になります。

AIで98%の精度を達成するのは、技術的にかなり困難ですが、仮にそれを達成できたとします。その場合でも、不良品の2%は見逃すことになります。それは業務的には認められず、結局AIの導入は断念するということになりがちです。

要するに、AIが得意なのは、どんな仕事なのでしょうか。「いい加減な仕事が得意」だけでは、よく分からないですね。

AIが得意な5種類の業務を厳選
そこで『Pythonで儲かるAIをつくる』では、基本的なAIの技術を使って成果を出せる業務を5種類に絞って、紹介します。一つめが営業です。ほかに、天候などで変わる売り上げの予測、お薦め商品の予測などをAIで実践します。

どの業務でも、AIで定番のプログラミング言語「Python」を使って、具体的なAIプログラムを作っていきます。本書のPythonプログラムは、PC上のブラウザーがあれば、面倒な導入作業なしにすぐに動かせます。Googleのクラウド上のPython実行環境「Colaboratory」を使うためです。

コードの1行1行を理解できなくても、ブラウザー上で動かしていくと、AIがどんな手順で何をやっていくのか、何ができるのかが分かってきます。それで、AIの得意・不得意が見えてくるのです。「もともとAIには向かない業務をAI化しようと大金を投じ、撃沈する」ようなことを避けられます。

AIを適用する際には、データをじっくり見ることから始める必要がありますが、Pythonを使えば、データの状態をビジュアルに確認できます。予測結果も同様です。そんな具体的なAI化の手順を紹介していきます。

Pythonで学習データや予測結果を可視化した例
実は本書のPythonプログラムは、本書のWebページ(https://github.com/makaishi2/profitable_ai_book_info)ですべて公開しています。Chromeブラウザー上ですぐに動かして、AIの動きを確認できます。

先ほど「100%を求められる仕事は苦手」とは言いましたが、病気の診断など、まさにミスが許されない領域にも、最先端のAIは果敢に挑戦しているところです。最先端は本書の範囲外なので収められませんでしたが、そうした仕事にAIを適用する基本的な手法についても、同じWebページで解説しています(併せて、ディープラーニングで画像認識をする例も紹介)。本書で5種類の業務をどのように解説しているのか、イメージがつかめます。

本書のWebページでもAIの実践事例を補足解説
「AIの得意・不得意を知りたい」「実際にPythonでAIを作ってみたい」という方は、ぜひ本書を手に取ってみてください。

(日経BP ラズパイマガジン 安東一真)』

SNSから本性バレた 知能や性格、AI実験に懸念も

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO63169460Y0A820C2MY1000/

 ※ ネットは、「匿名性」が保たれているはず…、と思っている人は、特に見ておいた方がいい…。

 「匿名」どころか、「本性バレバレ」だ…。

 ※「デジタル・ツイン(ネットやPC操作などの様々な「デジタル活動」から割り出し、作り上げた、その人の「デジタルな双子」)」の話しと言い、「薄気味悪い世の中」になったもんだ…。

『SNS(交流サイト)から本人の知能指数(IQ)や精神状態、生活習慣を見抜く実験に総務省傘下の情報通信研究機構が成功した。人工知能(AI)を使った初期の実験とはいえ、わずか140文字の投稿でプライバシーを明かしたと思っていない人にとっては驚きの事実だ。米科学誌に論文を公表してから1週間余りが過ぎたばかりで、論争が起きるとしたらこれからだが、情通機構は悪用を懸念してAIプログラムの公開を見送る異例の対応をとった。

誰もがつぶやけるSNSは、今では社会参加のインフラになっている。行き交う短い文面から、その先の相手がどんな人かを確かめたいという欲求が研究の始まりだった。

実験でAIは短文投稿サイト「ツイッター」の情報から人々の内面を表す23種類の特徴を推定した。IQなどの知能や性格のほか、統合失調症やうつ病のような精神状態、飲酒や喫煙の生活習慣、人生の満足度も読み取れた。

これまでも、技術力を見せつけたい研究者らがSNSの解析に挑んできた。それでも「開放性」「誠実性」「外向性」「協調性」「神経症傾向」の大まかな傾向がわかっただけで、解析成果を「Big5」と呼んで誇ってきた。

今回は数百の少ないデータでもAIを賢くできる新たな手法で、個人のより細かな特徴まで突き止めた。専門家は一線を越えたとみる。

一体、どうやって見抜いたのか。研究チームはツイッターを日ごろ使う239人に最大数十のアンケートを個性にまつわる項目ごとに回答してもらい、ツイッターの投稿内容とともにAIに学ばせた。

学習を終えたAIはツイッターから人々の内面をあぶり出す規則性を次々と発見した。例えば「いいね」をされた頻度が多いと「漢字の読み書きの能力が高い」。毎回のつぶやきで文字数のばらつきが大きいほど「統合失調症の傾向がある」。「飲む」「歩く」「時刻表」などの単語を多く使う人は「飲酒の習慣がある」。新たなつぶやきで試してもその傾向を見いだした。

短文だけで「真の自分」をこれだけアピールできるのかと歓迎する人もいるかもしれない。だが「今回の技術で厳密に個性を算出するのは難しい」(情通機構の春野雅彦研究マネージャー)という慎重な発言こそ、多くの人の実感を代弁している。

新技術を目の当たりにしたとき、人々の反応は2つに割れる。先に立つのは薄気味悪さだ。SNSのつぶやきから内心まで分かれば、脳の中に監視の目が届く。「犯罪集団のネットワークを絶てる」と当局が小躍りしそうだ。

かつてフェイスブックの個人情報は世論操作の標的となった。16年の米大統領選では民間企業が「いいね」の対象分野を5000項目に分けて調べ、個人の大まかな傾向を推定していたとする報告も出ている。この技術は政治広告に使われたとみられている。

選挙活動だけでなく、いずれ就職や昇進などの判断にも関わってくるだろう。AIとプライバシーの問題に詳しい小林正啓弁護士は「現時点では規制がない。SNSを採用などの人事に使う行為は法的に問題ないと考える」としつつも、「AIは偏見を身につける危険もある。将来はAIの使い方に規制がかかる可能性はある」と話す。

一方で、SNSは一人ひとりの内面を映し出す鏡だ。適切に使えば、真の自分をアピールでき、自分では気づかない一面を知ってもらうきっかけになる。AIの解析を「見張り」ととらえず、「見守り」と思う人にとっては技術の進歩が光明となる。

情通機構が応用を目指すのはストレスの分析だ。海外では18年、うつ病の兆候をフェイスブックに並ぶ単語から3カ月前につかめるとする研究が発表された。豪雨などの災害発生時に、避難をためらいがちな住民をSNSから探り、早めに声をかけるような使い方も有望かもしれない。

中国は個人の信用力を数値化した信用スコアの活用が進む。信用スコアに応じて融資やホテル利用などで優遇を受けられる。AIが管理する社会では、SNSでの交流などに気を配って信用スコアを引き上げ、生活を豊かにするのも一つの生き方だ。

新技術は産業や経済を大きく変える。期待と不安のはざまで問われているのは、開発者や企業、個人の責任だ。開発者や企業はAIの開発指針や情報をどう活用したいのかなどを明示し、個人はどんな使い方であれば情報を託すのかを自分自身で考える必要がある。個人の特徴を見抜くAIが人を助ける道具となるか監視の武器となるかは、私たちの行動次第だ。(大越優樹)』

〔ビル設計AIは、ここまで来た!〕

あの超高層を手掛けた構造設計のエースが開発中、竹中工務店の「使えるAI」
木村 駿、石戸 拓朗 日経 xTECH/日経アーキテクチュア
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/01000/092500001/?P=4 

『人工知能(AI)が、建築の設計や施工、維持管理を高速化し始めている。人手のかかる単純作業をコンピューターが「爆速」でこなしてくれれば、浮いた時間を人間にしかできない創造的な仕事や、ワークライフバランスの向上に充てることができる。AIをうまく使いこなせば、建築はまだまだ進化できるはずだ。

 竹中工務店、HEROZの構造設計AI 
構造設計の単純作業を爆速化
 AIで単純作業を高速化し、生み出した時間を顧客との対話や人間にしかできない創造的な仕事、設計者のワークライフバランスの向上に充てる──。竹中工務店が将棋AIで有名なHEROZ(ヒーローズ、東京・港)と2017年から開発してきたAIの輪郭が日経アーキテクチュアの取材で明らかになった〔図1〕。

〔図1〕これが竹中工務店「3つのAI」だ
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(資料:竹中工務店の資料を基に日経アーキテクチュアが作成、写真:日経アーキテクチュア)
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 「リサーチAI」「構造計画AI」「部材設計AI」と呼ぶ3つのAIを設計の段階に応じて使い分け、構造設計にまつわる単純作業の7割を削減する。開発リーダーは高さ日本一の超高層ビル「あべのハルカス」(大阪市)などの構造設計を担当した竹中工務店設計本部アドバンストデザイン部構造設計システムグループの九嶋壮一郎副部長。「実務者目線で『使えるAI』を目指す」(九嶋副部長)

 最初に取り組んだのが、社内に蓄積してきた膨大な設計データの整理。同社の構造設計システム「BRAIN(ブレイン)」で設計した400プロジェクト、25万部材の情報をデータベース化した。この中から、進行中の案件と似た事例を簡単に引き出せるようにしたのが「リサーチAI」だ(図1の1)。

 構造設計の初期段階では、過去の類似事例を参考にしながら検討を進める。しかし、各事業所から情報を集めるのに時間がかかる上、経験の浅い設計者はどの事例を参照すべきか迷いがち。面積や階数、スパンなど構造を特徴付けるパラメーターは10~20個もあり、比較が難しい。

 リサーチAIでは、10次元以上のパラメーターを2次元に縮約(圧縮)し、総合的に類似度が高いプロジェクトを示せるようにする。機械学習(「AIのキホン ディープラーニングって何?」を参照)の一種で、データの集まりを類似度に応じて分類する「クラスタリング」を用いた。

 同社技術研究所先端技術研究部数理科学グループの木下拓也研究主任は、「ベテランが持つ嗅覚のようなものをAIで補い、誰でも有益な情報にたどり着けるようにする」と話す。』
『計算せずに仮定断面を出す
竹中工務店
設計本部アドバンストデザイン部
構造設計システムグループ 副部長
九嶋 壮一郎氏

(写真:日経アーキテクチュア)
 基本計画・設計の段階になると、構造設計者は建物のボリュームや空間の配置に応じて構造種別や架構形式を検討し、意匠設計に必要な柱・梁(はり)の仮定断面を出す。

 「構造計画AI」は、構造計算なしで仮定断面を自動推定する人工知能だ(図1の2)。複数案を簡単に比較検討できるので、短時間で構造設計の質を高められる。推定の精度を、詳細設計完了時の部材断面の±20%以内に収めるのが目標だ。

 開発には、機械学習の一種である深層学習(ディープラーニング)を用いる。脳の神経回路を模した「ニューラルネットワーク」をコンピューター上に幾層も構築して大量のデータを入力すると、コンピューターがその特徴を学び、未知のデータを認識・分類できるようになる。

 効率的に学習させるため、AIには「教師データ」と呼ぶ情報を与える。構造計画AIの学習に用いたのは、データベースに登録した25万部材の設計情報だ。建物の規模やスパン、位置などに応じて異なる柱・梁の断面サイズを学んだAIは、「10階建ての角の柱の断面はこのぐらい」と瞬時に見当をつけられるようになる。

 HEROZの井口圭一最高技術責任者は、「過去の事例には特殊な構造の建物もある。うまく分けて学習させないとAIの回答がそれに引っ張られる。開発チームで事例を精査しながら学習させている」と話す。

 3つ目の「部材設計AI」は、詳細設計の際に部材の「グルーピング」を支援するツールだ(図1の3)。

 柱が全て同じ断面ならば施工性は高まるが、経済性は悪くなりがち。逆に数量を減らそうと断面サイズを柱ごとに変えると施工性が悪くなる。構造設計者は施工性と経済性が両立するよう、部材の種類をグルーピング(整理)しなければならない。部材設計AIは、施工性と経済性を両立する案を絞り込んで提示し、構造設計者の意思決定をサポートする。

 竹中工務店の九嶋副部長は言う。「AIを、人を支援し、協働する存在と位置付け、新たな構造設計の在り方を示したい。20年度を目標に開発を進めていく」』

『Iのキホン ディープラーニングって何?
 一口にAIと言っても、様々な種類がある。例えば1980年代に流行した「エキスパートシステム」は、人間が判断基準をコンピューターに入力し、コンピューターはそれに従って「もしAならばB」などとデータを分類・判断する仕組み。「ルールベースのAI」などと呼ぶ。

 一方、現在のAIブームをけん引するのは、コンピューターがデータの分類方法や判断基準を自ら学ぶ「機械学習」と呼ぶアプローチ。中でも「深層学習(ディープラーニング)」と呼ぶ手法が脚光を浴びている〔図2〕。

〔図2〕AIには様々な手法がある
手法によっては異なる分類をする場合がある(資料:取材を基に日経アーキテクチュアが作成)
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 ディープラーニングでは、人間の脳の神経細胞(ニューロン)のネットワークを単純化した「ニューラルネットワーク」を、コンピューター上に幾層も構築する。これに大量のデータを入力すると、コンピューターが自らデータの特徴を学び、未知のデータを認識・分類できるようになる。それまでの機械学習に比べて高い精度で正解を導き出せる〔図7〕。

〔図3〕脳の神経回路を模したニューラルネットワーク
中間層を多層化したものをディープラーニングと呼ぶ(資料:取材を基に日経アーキテクチュアが作成)
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 機械学習には、「教師なし学習」「教師あり学習」「強化学習」の3つの学習方法がある。教師なし学習は、極めて大量のデータをコンピューターに入力し、データの傾向や規則性などを自動的に学ばせる方法だ。

 教師あり学習は、正解付き(ラベル付き)の「教師データ」を用いて効率的に学習する方法。例えば、コンクリートの画像から健全性を診断するAIをつくる場合、画像データと専門家による診断結果をセットにした教師データを学習させる〔図4〕。

〔図4〕産業用途は「教師あり学習」が大半

学習に必要なデータをそろえ、ラベル付け(アノテーション)をするには、人手と時間を要する(資料:取材を基に日経アーキテクチュアが作成)
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 建築を含め、産業用途でディープラーニングを活用する場合は、ほとんどが教師あり学習だ。教師なし学習と比べてデータの数こそ少なくて済むが、ラベル付きのデータをそろえるのには多大な労力がかかる。このため、教師データ集めで挫折するケースは少なくない。』
『竹中工務店とHEROZの自動制御システム 
AIで「建築設備が成長」
 竹中工務店とHEROZが共同でAIを開発するのは、構造設計の分野だけにとどまらない。人工知能を用いて空調や照明などのビル設備を自動制御するシステム「Archiphilia Engine(アーキフィリアエンジン)」を開発した。管理員の手動に頼っていたビル設備の制御を自動化し、管理業務の効率化や省エネ性の向上を図る。

 アーキフィリアエンジンは、センサーなどから取得したビッグデータを基に設備の運転条件を制御する。竹中工務店が開発したビル設備の管理システム「ビルコミュニケーションシステム(ビルコミ)」とHEROZのAIサービス「HEROZ Kishin(キシン)」を組み合わせた。ビルコミュニケーションシステムが収集する温度や照度などのデータをAIに学習させ、ビル設備を最適な形で自動制御する。消費エネルギー量を最適化するだけでなく、利用者の好みに合わせた制御も可能だ〔図4〕。

〔図5〕AIで設備を自動制御
「アーキフィリアエンジン」のシステムの概要。「ビルコミュニケーションシステム(ビルコミ)」が収集した情報を「HEROZ Kishin」で学習して、設備を自動制御する(資料:竹中工務店)
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2年間の実証実験で省エネ効果などを検証

 竹中工務店は2019年6月5日に、自社が設計・施工した未来のライフスタイルを提案する体験施設「EQ House」でアーキフィリアエンジンの実証実験を開始した〔写真1〕。期間は2年間。人感センサーや温度などを測るセンサー、利用者の心拍などを測るウエアラブルセンサーを用いる。延べ面積88m2の空間に約1000個のセンサーを設けて、1分おきにデータを収集する。

 さらに空調や照明などを通じて得られたデータを学習させることでEQ House内の設備を自動制御する。両社によると、データをこれほど大量に収集し、ビル設備の制御に生かす取り組みは珍しい。実験を通じて、自動制御に必要なセンサーの種類やアーキフィリアエンジンを用いた際の省エネ効果などを検証する。

〔写真1〕実際の建物で省エネ効果を検証
アーキフィリアエンジンの効果を実証する「EQ House」の外観(写真:日経アーキテクチュア)
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 竹中工務店はアーキフィリアエンジンの導入によって省エネ性や快適性を高められると確認できれば、積極的に実プロジェクトへの提案を進めていく予定だ。』