米軍協力者の「生体情報」を手にするタリバン

米軍協力者の「生体情報」を手にするタリバン――懸念されるアフガン撤退に伴う情報保全
https://www.dailyshincho.jp/article/2021/09011130/?all=1

 ※ この話しは、兵頭氏のサイトでも、紹介されてたな…。

 ※ スマホの「生体認証」は、全部ヤバヤバだ…。

 ※ 「指紋認証」「顔認証」「虹彩認証」、「静脈認証」…。

 ※ 全部アウトだろう…。

 ※ ヤバい組織が手に入れた場合、ヒットマンがやって来る…。

『米国防総省が注意喚起文書を発出

 米国防総省監察総監は、8月11日に「アフガニスタン撤退に伴う機密データの入った装備品の扱い及び情報の保存に関する要件」と題した注意喚起文書を発出。医療機器やノート型パソコン、携帯電話などの機器から個人情報や医療情報を適切に削除し、情報漏洩のリスクを防ぐよう促した。

 それぞれの機器の種類に応じた手順で処分しなければ、中の残存データを後から復元できてしまうからである。

 同文書は、国防総省監察総監室が2014年に行った監査で見つかった事例について紹介している。

 当時、カンダハルに展開していた陸軍旅団の関係者が、ハードドライブ付きの米軍所有の機器から、決められた手順に従ってデータを消去処分していなかった。しかも、この機器はあろうことか、外国人を含む業者がアクセスできる状態で放置されていた。

 監察総監は、機密情報が含まれた機器は、完全にデータ消去した上で指定された担当部署に返却しなければ、機密情報が盗まれてしまうリスクがある、とアフガニスタンから撤退する米軍関係者を戒めている。

 米軍が今回の撤退で処分しなければならないコンピュータだけでも、相当数に上ったことだろう。例えば、アフガニスタン南部ヘルマンド州の米海兵隊基地キャンプ・レザーネックから米海兵隊が2014年10月に撤収した時だけでも、破壊または撤去したコンピュータは7500台以上もあった。

大量に廃棄されたパソコンと周辺機器

 問題は、タリバンに降伏した時にアフガニスタン政府軍が持っていた装備品や電子機器と、その中の情報だ。少なくとも報道によると、米軍がアフガニスタン政府軍に提供してきた軍用車ハンビーやドローン、ヘリコプター、銃器、弾薬などの装備品をタリバンは8月17日時点で大量に手に入れている。

 しかも、人数は不明であるが、アフガニスタン政府軍の一部は隣国のイランに逃げ込んでおり、こちらの米軍装備品や機密情報の流出も地域安全保障にとって不安材料だ。

 米ニューヨーク・ポスト紙オンライン版の8月17日付の記事は、NATO(北大西洋条約機構)の「確固たる支援任務」に就く部隊が使用していた建物の周りで米国人業者が撮影した2分あまりの動画を紹介した。

 NATO加盟国らによる連合軍は、慌てて電子機器類の処分を進めたらしい。その動画には、カブール市内の本部の後ろにあるゴミ集積場には、パソコンや周辺機器が大量かつ乱雑に廃棄されており、緑色の大型ゴミ箱に入りきらなくなって、道路上にもディスプレイなどが散乱している様子が映っていた。

米軍の生体認証機器をタリバンが入手

 米軍や連合軍に協力した通訳や運転手などのアフガニスタン人へタリバンが報復することが懸念されている中、彼らの身の安全を守るためには、協力者の身元や活動に関する情報のセキュリティ確保が重要となる。

 ところが、国防総省が文書を出したのと同じ8月17日、米オンラインメディア「インターセプト」が報じたのは、米軍の使っていたポータブル型の生体認証機器をタリバンが押収したとの衝撃的なニュースだった。この機器を使うと、虹彩スキャンや指紋などの生体情報や経歴などを確認するためのデータベースにアクセスできる。

 米軍は、テロリストの追跡や協力者の確認にもこの機器を利用していた。2011年のオサマ・ビン・ラディンの殺害時にも身元の確認に使っている。

 米国防総省は当初、この生体認証機器でアフガン人の人口の80%に当たる2500万人の情報を集めようとしていたが、実際に収集できた数はもっと少ないと見られる。

 ロイターは8月17日、カブールの住民の話として、「生体認証の機械」を使ってタリバンが戸別訪問していると報じた。タリバンは5年前にも、アフガニスタン政府の生体認証の機器を用いて、住民がアフガニスタン軍関係者かどうか指紋をチェックしていた。

 タリバンが、現時点で、米軍の生体認証データベースにどれだけアクセスできているのかは不明だ。だが、「インターセプト」がインタビューした米陸軍特殊部隊の退役軍人は、タリバンにデータを使うための装置がなくても、タリバンと協力してきたパキスタン軍統合情報局には装置がある、と指摘している。

協力者のリストをタリバンに渡していた
 そんな矢先に飛び込んできたのが、米ポリティコ誌による8月26日の驚愕のスクープだ。

 カブールにいる米国政府関係者が、カブール空港に入ろうとしている米国市民、グリーンカード保持者やアフガン人協力者の名前のリストをタリバンに渡していたという。待避を迅速に進めるための措置だったとされるが、アフガン人協力者に危険が及ぶとして、議員や軍関係者が怒りを露わにしている。

 ウォール・ストリート・ジャーナル紙によると、アフガン人の通訳たちの米ビザ取得が間に合わないまま、カブールが陥落。タリバンが米軍協力者をしらみつぶしに探し回り始めたため、ビザ申請書類を焼却処分するよう通訳に伝えた米軍関係者もいる。

 元海兵隊員ピ―ター・ジェームズ・キエナンは、寝食を共にし、命を救ってくれた通訳の米国ビザ取得を、6年前から手伝ってきた。通訳が米国政府に協力していた事実を証明すべく、書類を苦労して集めてもらっていたにもかかわらず、このような依頼をする事態となり、断腸の思いだっただろう。

英大使館に残されていたアフガニスタン人の履歴書

 もう一つの問題は、米国やヨーロッパ諸国の大使館で保管していた機密文書や、各国政府がアフガニスタン政府や警察、軍などに提供していた機密文書をいかに守るかである。 
 ただ、米国大使館が職員に対し、機密文書や電子データの廃棄処分を始めるようメールで指示を出したのは、8月13日だった。ちょうど、タリバンがアフガニスタン第2の都市カンダハルと第3の都市ヘラートを制圧し、半数の州都を掌握、首都カブールに迫っていた時期である。

 米国大使館は、書類については焼却処分かシュレッダーにかけること、コンピュータなど電子媒体は破壊するよう職員に求めた。タリバンのプロパガンダで悪用されかねない米国のロゴや星条旗がついているものも、全て破壊するよう求めている。8月15日に英インデペンデント紙が公開したYouTube動画を見ると、機密書類焼却で出たと思われる煙がモクモクと米国大使館の屋上から立ち昇っている。

 しかし、慌てて何かを処理しようとすれば、当然、見落としの危険性が高まる。

 カブールの英国大使館は8月15日に退避した際、アフガン人スタッフの連絡先や、大使館の仕事に応募してきたアフガン人の履歴書を大使館内に残してきてしまっていた。8月24日、大使館内をパトロールするタリバンの戦闘員に同行していた英タイムズ紙の記者が、この書類を見つけた。泥まみれになっていたものの、書類は誰でも見られる状態で残されていたという。

 数週間前に英国大使館の仕事に応募したばかりのアフガン人の若者は、以前、アフガニスタン南部のヘルマンドにある米軍基地で働いており、その勤務経験が履歴書に記されていた。履歴書には、名前と電話番号、住所も記載されている。

 タイムズ紙が書類にあった7人のアフガン人の連絡先に電話してみたところ、一部の人は英国に退避済みだった。英国政府は、8月26日時点で、3人のアフガン人スタッフとその家族を救出したと発表している。

 また8月23日現在、アフガニスタン政府の機密文書が、ダークウェブ上で1ビットコイン(8月27日現在、約519万円)と引き換えに売りに出されているとの情報もある。スイスのセキュリティ企業「SCIP」のリサーチ部門のトップであるマーク・ルーフが、8月23日にツイートした。但し、文書のサンプルがついていないため、どのような情報が実際に漏洩したかは不明であるが、混乱に乗じて情報を売って儲けようとする人々も出てきて不思議ではないとしている。

2011年の「オマル死亡情報」は米軍サイバー攻撃?

 サイバー攻撃を含む情報戦の能力を示すものも情報保全の対象となる。そうしたデータが漏洩すれば、相手に攻撃の被害回避のチャンスを与えてしまうためだ。

 情報戦は、この20年近いアフガニスタンでの戦いにおいて、重要な役割を果たしてきた。敵の情報を収集し、偽情報で混乱させ、戦闘能力を削ぎつつ、自分の情報やそのインフラを守るということの重要性を一番認識しているのは、アフガニスタンに展開していた米軍や連合軍だったはずだ。アフガニスタンからの撤退の混乱に伴う情報保全の危機を目の当たりにし、忸怩たる思いだろう。

 実は、米軍が初めて自らのサイバー攻撃能力について言及したのは、アフガニスタンでの戦いに関することだった。

 リチャード・P・ミルズ海兵隊中将は、2012年8月に米東海岸メリーランド州ボルチモアで開かれた米軍系のサイバーセキュリティ会議に登壇し、「2010年にアフガニスタン南西部で連合軍司令官を務めていた当時、サイバー作戦で敵にかなりの打撃を与えられた」と語った。

 2012年当時、ミルズ中将は米海兵隊サイバー空間コマンドの司令官を務めていた。

「奴らのネットワーク内に入り込み、指揮統制システムを感染させ、こちらのネットワークへ侵入して作戦にダメージを与えようと絶えず攻撃してくる奴らから身を守れた」

 このミルズ中将の発言が、会議主催者である米軍系の国際非営利団体「Armed Forces Communications and Electronics Association (AFCEA、アフシア)」のウェブサイトに掲載されるやいなや、かなり注目を集めた。米国がサイバー攻撃能力を有しているのは公然の秘密とされていたものの、米軍や米情報機関が自らのサイバー攻撃能力について公の場で語ったのは、初めてだったからだ。

 ミルズ中将は、連合軍の仕掛けたサイバー攻撃の性質や規模については言及していないが、当時の報道によると、米国はタリバン報道官の携帯電話やメールをハッキングし、偽情報を拡散することも行なっていたらしい。タリバンに混乱をもたらすと共に、タリバンの出す情報の信憑性を失わせようとしたのであろう。

 2011年7月、当時のタリバンの最高指導者ムハンマド・オマルが心臓病で死亡したとの一報が、タリバンのウェブサイトと報道担当のザビフラ・ムジャヒドの携帯電話のショートメッセージとメールで世界中に伝えられた。しかし、米ロサンゼルス・タイムズ紙がムジャヒドに電話したところ、オマルは生きて作戦の指揮を取っており、偽情報であるとの回答であった。

 オマル死亡のニュースが世界を駆け巡る中、タリバン報道官のムジャヒドとクアリ・ユセフ・アーマディは、怒りが収まらない様子で直ちに声明を出した。米情報機関が狡猾にもタリバンのウェブサイトと報道担当者たちの電話とメールをハッキングし、報道担当者の名前を騙って死亡の偽ニュースを送った、とタリバンは非難している。

 なお、NATO駐留軍の報道担当は取材に対し、本件について何ら情報を持っていないと回答している。

タリバンがサイバー攻撃能力を獲得する可能性

 タリバンはサイバーセキュリティにかなり注意を配っており、その数年前の段階で、イスラム過激派のためのオンライン版「セキュリティ百科事典」に留意点を記載していた。
 ムハンマド・オマルの携帯電話から出ていた信号で居場所が敵側にわかってしまい、もう少しで暗殺されそうになったことがあるため、携帯電話を使う際には十分用心するよう促している。

 イスラエルの情報部隊「8200部隊」の出身者で作った米セキュリティ企業「サイバーリーズン」の共同創業者兼CEO(最高経営責任者)のリオ・ディヴは、タリバンにサイバー攻撃やサイバースパイ活動を行う能力が現時点であるとは思わない、と8月26日付のブログで指摘した。

 但し、今回かなりの量の情報と機器類を手に入れているため、将来的にタリバンがサイバー攻撃能力を持つ可能性はあるだろう。より切迫した懸念は、タリバンが手に入れた情報をサイバー攻撃能力の高いロシアや中国に売却しないかどうかだと分析する。

 タリバンは、今回のアフガニスタン撤退に伴う混乱や情報保全の隙から入手した情報を徹底的に研究するだろう。装備品や電子機器、書類を調べ、米軍や連合軍の攻撃能力、外国政府の思惑や連絡窓口、協力者、そしてサイバーセキュリティ能力についても情報を洗い出し、リアル世界とサイバー空間で一層手強くなっていくはずだ。

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松原実穂子

NTT チーフ・サイバーセキュリティ・ストラテジスト。早稲田大学卒業後、防衛省勤務。米ジョンズ・ホプキンス大学高等国際問題研究大学院で修士号取得。NTTでサイバーセキュリティに関する対外発信を担当。著書に『サイバーセキュリティ 組織を脅威から守る戦略・人材・インテリジェンス』(新潮社、大川出版賞受賞)。』

「This is the real story of the Afghan biometric databases abandoned to the Taliban」

Eileen Guo & Hikmat Noori 記者による2021-8-30記事「This is the real story of the Afghan biometric databases abandoned to the Taliban」
https://st2019.site/?p=17386

『タリバンが押収したデバイスの中にHIIDE、すなわちバイオメトリック端末があった場合、どうなるのか?
 そのシステムは、米兵が調べたアフガン人1人について、指紋、彩虹、顔面イメージなど40項目もの個人情報と紐付けていた。DNAによって親類や先祖まで分かってしまうのである。

 ただし端末を拾っても、その中にはデータは入っていない。端末は、入力や照合の道具なのである。データが入っているサーバーは、どこか別な場所にある。それが米国内であれば、DoDの専門部署が外部からの不正アクセスを防護しているはず。

 それよりも懸念されているのは、アフガニスタン政府が抱えていたデータベースの方だ。そこには百万人単位で自国民の個人情報が登録されているのだ。

 米国政府が、アフガン政府に資金を提供して、APPSというデータベースを構築してやった。「アフガン・パーソナル & ペイ・システム」の略。

 このAPPSを使って、アフガン政府は、軍人と警察官に給与を支払っていたのである。
 公安系の人物が誰なのか、ぜんぶタリバンにバレてしまうだろう。

 APPSは2016年から構築されはじめた。背景には「ゴースト・アーミー」、すなわち腐敗したアフガン政府官僚が、存在しない兵隊や警察官をリストに書き加えて、その給与〔ほとんど米国や日本が出していた〕を中抜きする悪事の横行があった。
 APPSにあらためて登録された軍人と警察官の数だけでも、50万人以上。

 新兵がひとり採用されると、ただちに、APPSのデータベースに登記された。
 そうした個人情報は、当人が軍隊や警察を退職したり、死亡したあとも、ぜんぶ、残るようになっている。

 この膨大なデータを、今回のような非常事態時に消去破棄する方法は、システム構築を請け負った米国民間企業のエンジニアたちは、まったく考えてもいなかった。

 そしてこのAPPSのデータフィールドの中には、アフガン政府内務省が保管しているバイオメトリック・データに照会アクセスするための各人のID番号が含まれている。これがヤバいかもしれない。

 各将兵が受けた専門教育の分野も、わかってしまう。

 アフガンでは新兵が入隊するには、部族長級の2名による身元保証が要る。その部族長の名前も、このデータベースを見れば、バレバレだ。

 どういうわけか、この軍人データベースには「好きな果物」「好きな野菜」を書き込むフィールドまである。そんなことまで、タリバンに把握されてしまうのだ!

 タリバンの側でもじつは「IT」はとっくに駆使されている。すでに2016年に、タリバンがクンドゥスでバスの乗客多数をつかまえて、指紋照合スキャナーによって、処刑すべき人物を選り分けていた、という証言があるのだ。

 米軍が無人機による爆殺ミッションを決行するときに参照しているのはABIS=自動バイオメトリック・アイデンティフィケイション・システム という。このデータベースはDoDが管理している。
 それによく似たシステム「AABIS」を、アフガニスタン政府の内務省が、持っていた。もちろんABISに準拠して構築したのである。

 詳しい人によると、AABISは2012年時点においてアフガニスタン国民の80%の個人情報をカバーしていたという。人数にして2500万人となろう。

 AABISとは別に「e-tazkira」というシステムも構築の途中にあった。これはアフガンの全国民に電子IDカードを持たせようという計画であったが、620万人くらい登録されたところで、政府が消滅した。

 アフガン政府は、選挙の不正投票行為を防ぐために、バイオメトリック・スキャナーを使うつもりであった。2019年の選挙が、インチキだらけだった。

 現代では、端末などリスクではなく、むしろ、データベースそのものが、社会の巨大リスクたり得る。

 ※この記事を読んでいて、日本の「デジタル庁」とやらが将来やらかしそうな失敗が心配になってくるのは、俺だけかい?』

個人情報漏洩の企業責任、甘さ目立つ日本

個人情報漏洩の企業責任、甘さ目立つ日本 対策遅れも
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC04AML0U1A800C2000000/

 ※ オレも、今般の身内の不幸に際して、提出書類の収集のために、随分と役所の窓口を訪れた…。

 ※ その時感じた感想は、「随分、”個人情報”の管理は、厳重なものなんだな…。」と言うことだ…。

 ※ 特に、”マイナンバー”については、凄かった…。まず、殆んど”本人”以外は申請できないくらいに、ガチガチに固めている…。

 ※ ある場面では、「家族全員の”承諾書”の提出が、必要です。」と言われた…。

 ※ 「個人情報」と言っても、住所、氏名、年齢、性別くらいのものだ…。書類提出目的も、年金関係とか、保険関係とか、半ば”公的”なものだ…。

 ※ そういう提出関係で、なんでそんなに厳重にする必要があるんだ…、と思った…。
 ※ それに反して、企業関係(民間)の管理に関しては、記事にある通りユルユルだ…。
 ※ このチグハグさは、解せん話しだな…。

『個人情報の漏洩問題に関し、日本と欧米で企業への罰則の格差が目立っている。欧米当局はセキュリティー対策が手薄な企業に巨額の制裁金など厳しい姿勢で臨むが、日本では企業の責任が問われる例が少ない。データ漏洩の被害者の不満が募るうえ、一部の専門家は「日本企業の対策の甘さを招き、結果的に国際的な競争力も低下させかねない」と懸念している。

個人情報保護委員会、取り合わず
「本当にこれで対応は終わり?」。婚活マッチングアプリ「Omiai」を利用していた会社員の20代女性は驚いた。同サービスを運営するネットマーケティングは5月、外部からの不正アクセスを受け最大で約171万アカウント分の運転免許証やパスポートなどの画像データが漏れた可能性があると公表した。

同社からデータ流出の恐れがあると知らされた女性は、すぐに個人情報の削除を要請。だが8月にやっと届いた返信は「調査のため削除できない」との内容で、不安が消えなかった。「個人情報保護委員会にも問い合わせたが、取り合ってもらえなかった」という。

ネットマーケティングはこの件に関し「被害者のデータは、ネットから遮断したサーバーに保存している」と説明。「非常に申し訳なく思っている。対象者が非常に多く、非常に多くの問い合わせを頂いたことなどから一部で対応が遅れてしまった」などと話す。

日本の個人情報保護法では、個人情報を漏洩した企業の責任を問うハードルが高い。同法は企業に適切な情報管理を行うよう義務付けるが、一部の例外を除きデータ漏洩自体を直接罰する規定はない。法令違反が明らかなら個人情報保護委員会が改善を求める勧告や措置命令などを出し、その命令に違反すると罰金などが科せられる仕組みだ。

違反が疑われる場合に、個人情報保護委員会が指導や助言などの行政処分を下すこともできる。だが現在と同じ手続きになった2017年から21年3月までに、最も重い「命令」が出されたのは2件で、勧告は5件のみ。指導や助言は800件以上あるが「ほとんどの場合、企業名は非公表」(影島広泰弁護士)だ。

被害者が自力で民事裁判を起こし、情報漏洩による精神的苦痛やプライバシーの侵害を主張して損害賠償を求めることは可能だ。ただ弁護士費用や裁判の準備で少なくとも数十万円以上のコストが見込まれ「実際に裁判に踏み切る人は少ない」(金田万作弁護士)。

勝訴しても、過去に裁判で認められた賠償額は1件あたり数千円が相場で、割に合うとは言い難い。04年にブロードバンド「ヤフーBB」の約450万件の顧客情報が流出した際、損害賠償訴訟を起こしたのは、たった5人だった。

欧米では高額制裁相次ぐ
欧米では対照的に、データ漏洩を起こした企業に当局が高額の制裁金を命じる例が相次ぐ。代表的なのが欧州の一般データ保護規則(GDPR)だ。

GDPRは18年5月の施行以来、欧州各国の当局が企業などに制裁金の支払いを命じた例は計約700件に及ぶ。例えば英国当局は19年、英航空大手ブリティッシュ・エアウェイズ(BA)が大量の顧客情報を流出させた問題で、約1億8千万ポンド(約270億円)の制裁金を科すと発表。その後、新型コロナウイルス禍による業績低迷を受けて2千万ポンド(約30億円)に減額されたが、セキュリティーの甘さが巨額な制裁につながると示された。

米国でも、企業の責任を問う動きが厳しさを増す。20年施行のカリフォルニア州消費者プライバシー法(CCPA)では不適切な管理によって個人情報が漏洩した場合、当局による執行対象となるだけでなく消費者は1人あたり100~750ドルの損害賠償を企業に請求できると定めた。「同様の規定は他の州や連邦レベルでも検討されている」(ディパロ真紀・米国弁護士)という。

消費者の信用評価を手掛ける米エクイファクスが17年にサイバー攻撃により約1億4千万人の個人情報を流出させた問題では、同社が19年、米連邦取引委員会(FTC)などに7億ドル(約770億円)の制裁金を支払うことで合意した。うち最大4億2500万ドルが、消費者への補償に充てられる。

情報漏洩の責任を巡る日本と欧米の差は、企業の対応力の違いにも反映している。

日本IBMによると、データ漏洩が起きてから会社がそれに気づき、被害拡大防止の対策を完了するまでに、日本企業は平均で288日かかっていた。ドイツ企業(160日)の約1.8倍に及び、対応が遅さが目立つ。日本IBMの小川真毅・セキュリティー事業本部長は「(日本は)規制が緩いため、経営層が重要課題と認識しないこともある」と話す。

各国の個人情報保護法制度に詳しい杉本武重弁護士は「日本の漏洩事案は、欧州などの基準から考えれば巨額制裁の対象になりうる場合も少なくない」と指摘する。日本法だけの対応に慣れてしまうと、海外向けのビジネスで当局からの制裁対象となるリスクが高まる可能性もある。

個人情報の取り扱いを巡っては、経済界などに「規制や罰則が厳しすぎると事業活動を萎縮させかねない」との懸念もある。だが消費者のプライバシー意識が高まり、”世界基準”の対策が求められる場面は増えている。顧客層などを勘案しつつ、日本法にとどまらない対応も必要とされる。

(渋谷江里子)

22年施行の改正保護法 実効性が課題

欧米に比べ個人情報保護ルールが緩いと指摘されることもある日本だが、徐々に変わりつつある。2022年4月に全面施行する予定の改正個人情報保護法では、企業の情報漏洩への対応が強化される見込みだ。

不正アクセスで個人情報漏洩が起きた際、個人情報保護委員会への報告や個人への通知が義務付けられる。現行法では委員会への報告は「努力義務」、個人への通知は「望ましい」とされるにとどまっていた。

企業への罰則も強化された。最大50万円だった罰金が1億円まで引き上げられ、20年12月から先行施行されている。

ただ改正法の運用には課題も残りそうだ。企業への罰金が適用されるのは、委員会からの命令に違反した場合や個人情報を不正な目的で第三者に提供した場合など、限定的な運用になる可能性がある。現行法でも企業が罰金を命じられたケースは公表されていない。法改正がどこまで実効性を伴うかが問われる。』

台湾LINE、政治家・軍など100人以上の要人情報流出

台湾LINE、政治家・軍など100人以上の要人情報流出
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM287IA0Y1A720C2000000/

『【台北=中村裕】台湾当局や政党、軍の要人など100人以上が、対話アプリのLINEを通じてハッキングされていたことが28日、分かった。台湾ではスマートフォンでLINEを利用する人が非常に多く、危機感が強まっている。当局も事実関係を認め、原因の調査を進めている。

要人らのスマホ内にあるプライバシー設定「Letter Sealing」機能が最近、何者かによって無効にされたことが判明した。多くの個人情報が流出した可能性がある。

LINEの台湾法人は28日、「今回の事件を受け、LINEのシステムが異常を検知した。直ちにユーザーを保護するための必要な措置を取った。当局にも既に報告し、今後も継続して必要措置を講じていく」との声明を発表した。

ハッカーは、イスラエル企業のNSOグループが開発した犯罪監視用のスパイウエア「ペガサス」を使って、ハッキングした可能性があるという。

【関連記事】
・[FT]ベールを脱いだスパイウエア企業NSO
・[FT]モロッコ、仏大統領ら盗聴か 西サハラ巡り疑心暗鬼

ペガサスは、スマホの利用者が何かのサイトをクリックをしなくても、メッセージを受信するだけでスマホを乗っ取られ、多くの個人情報が流出することで知られる。通話の盗聴やスマホ所有者の行動なども24時間、監視可能とされる。

18日には、国際的にも、要人を対象とした大量のハッキング行為が明るみになった。ペガサスを使って監視されていた人の5万件以上の電話番号リストが流出した。それを国際的なメディアが連携して調査をしたところ、フランスのマクロン大統領など各国の要人や政治家、ジャーナリストの名前が次々と判明し、国際的な問題となっている。

台湾で見つかったハッキングとの関係性は、今のところ明らかになってはいない。

この記事の英文をNikkei Asiaで読む 』

いつか起こる問題だった LINE、データ管理に甘さ

いつか起こる問題だった LINE、データ管理に甘さ
苦悩のLINE(1)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC14ACN0U1A710C2000000/

『「なぜ事実と異なる説明をしていたのか」。7月19日、LINEを傘下に持つZホールディングス(HD)の本社(東京・千代田)の一室。東京大学教授の宍戸常寿らは社長の出沢剛らLINE幹部を問い詰めた。

宍戸はLINEの個人データ管理問題を調べるため、「ヤフー」も運営するZHDが立ち上げた特別委員会の座長だ。この日求めたのは、日本の利用者の画像・動画データを韓国で保管しながら、官公庁には「データは日本に閉じている」と説明してきた経緯だった。LINE側は「渉外が国内にあると信じて説明してしまった」と答えた。

LINEは3月、韓国でのデータ保管に加え、中国の業務委託先企業で日本の利用者データを閲覧できたことがわかり、消費者への説明不足を糾弾された。だがそもそも、開発担当を除けば、社内の多くが詳細を知らなかった可能性がある。

「主なデータは日本で保管していると開発陣から聞いていた」と役員級の幹部は証言する。宍戸は周囲に話す。「信じがたいが、今分かっている範囲では、社内で一部しか詳細を知らずデータガバナンスが不在だった」

データ管理という重要事項を一部しか把握していない事態があり得るのか。背景にはLINEの特異な歴史がある。

サービス開始は2011年。母体は韓国の検索大手であるネイバーの日本法人だ。韓国企業が日本進出を目指して始めたサービスが、日本中に普及することになるSNS(交流サイト)だった。

システム構築はネイバー出身の技術者が主導した。日本側はサービスの設計と普及に専念した。

「分業」は成功した。喜怒哀楽をボタン1つで伝える「スタンプ」、無料通話といった新サービスを生み出し、SNSは国内最大に成長した。急増したデータの処理・管理で日本側はますますノウハウを持つ韓国の技術者に頼った。その後も体制は変わらなかった。

問題発覚後の3月下旬、出沢は「見落としていたものが多かった」と謝罪した。だが、ある関係者はいう。「韓国側に遠慮し、口を出せなかったのかもしれない」

出沢は上場廃止前の19年12月末時点でLINE株の所有が4万株にとどまる。ネイバー出身の代表取締役シン・ジュンホは約476万株で、ネイバー創業者のイ・ヘジンは同459万株と100倍以上だ。LINEの経営を巡り、ネイバーの存在感は大きい。

LINEのデータ管理のリスクに警鐘を鳴らしたのは、3月1日に経営統合したZHDだった。

両社が統合準備を進めていた1月下旬。ZHD幹部に外部の情報提供があった。「中国企業がLINEの開発を担っている。知っていますか」。ZHDにとっては「寝耳に水だった」(幹部)。

中国の法令では政府が必要と判断すれば企業からデータを集められる。リスクはないのか。ZHDはLINEに問い合わせ、LINEも詳細把握にようやく動き出した。

「日本のデータにアクセスできる」。ZHD社長の川辺健太郎がLINEの報告を受けたのは1カ月以上もたった3月2日。統合の翌日だった。川辺らZHD幹部が官庁などへ謝罪に回った。

LINEは「6月までに、韓国から日本に主要データの管理を移す」と3月に表明しながら「一部は24年までかかる」と後に修正する一幕もあった。調査委のあるメンバーは打ち明ける。「いつか起こる問題だった。重大な法令違反の前に発覚し、むしろ良かった」

一連の問題は違法ではないとされた。個人データを扱う業務の委託先企業に対する監督体制の不備などを問われ、行政指導を受けるにとどまった。出沢とシンは一部報酬を返納した。

ただし、LINEの社会的責任は重くなる一方だ。利用者は8800万人に上る。業務にサービスを利用する地方自治体も全体の6割を超えた。

3月以降、データ流出の懸念から、LINEを使うサービスを止める自治体が続出した。愛知県は心の悩み相談を月平均400件受けていたが、7月7日まで止めた。「命に関わる情報を扱う。対策を徹底してほしい」。同県幹部は訴える。(敬称略)

創業10年を迎えたLINEでデータ管理の甘さが問題になった。国民的サービスの将来を探る。

【関連記事】
・ZHD株主総会、川辺社長「親会社として責任」 LINE問題
・LINE、実態と異なる説明 国内データの韓国保管で
・個人情報、海外企業提供にリスク 改正法で責任重く
・LINEの情報管理、安保上の懸念も 国際分業に潜むリスク
・LINE、役員報酬の一部返上 出沢社長ら、情報管理問題で 』

Facebook流出データ再拡散 保存・複製に中長期リスク

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC051X50V00C21A4000000/

『米フェイスブックの利用者5億人以上の個人情報がインターネット上で閲覧可能となっていたことが5日までに分かった。同社は2019年に大規模な情報流出を起こしており、これらデータが再拡散したとみられる。新規の情報流出ではないため、専門家の多くは「フェイスブックの法的責任を問うのは難しい」と見る。保存や複製が容易なデータが中長期で悪用されるリスクがあらわになっている。

フェイスブックは「(今回ネット上で閲…

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フェイスブックは「(今回ネット上で閲覧可能になった)当該データは19年に報道された古いものであり、19年8月に既に問題は修復済みだ」と説明している。フェイスブックとしては情報が漏れないよう穴は塞いだとの立場。米連邦取引委員会(FTC)にも個人情報の管理不備で50億㌦(約5400億円)の制裁金を支払った。今回は漏れたあとのデータを同社の関与が及ばないハッカーがネットに上げたとの主張だ。

とはいえデータ再拡散により、メールアドレスなどがサイバー犯罪に悪用されるなど被害が広がる可能性がある。セキュリティー対策に詳しいS&J(東京・港)の三輪信雄社長によると、日本のユーザーと見られるデータは約43万件が流出しているもようだ。利用者のIDや氏名、所属先のほか、一部には住所情報も含まれているという。

一方で今回の問題でフェイスブックの責任を問うのは容易ではない。個人データに詳しい弁護士は「一度漏れてしまったものについて、食い止めるのは現実的に難しい。再拡散を理由に(フェイスブック)の責任を問うのは困難だ」と話す。

15年に発覚した利用者の同意がないまま顔写真などの生体データを利用した問題では、米国で約160万人の利用者を対象とした集団訴訟に発展した。21年2月に、約6億5千万㌦を支払うことで和解が成立した。ユーザー1人あたり345ドルを受け取ることになる計算だ。

ただ今回について海外の個人情報保護ルールに詳しい杉本武重弁護士は「生体データのような重要な個人情報を含んでいないため、同様の高額賠償を伴う集団訴訟になる可能性は低い」とみる。訴えが起こされた場合も、「データ流出によって具体的にいくらの損害が発生したか」という因果関係の証明が難しい。米国はカリフォルニア州などで厳しい個人情報保護ルールはあるものの、連邦法で個人情報保護を包括的に定める法令がなく、データ漏洩そのものの責任を問うハードルが高い。

裁判などで賠償を求める道が険しい以上、利用者はデータ漏洩の被害を最小限に防ぐ自衛を余儀なくされる。

フェイスブックは過去のデータ流出の度に、利用者にパスワードの変更などを呼びかけてきた。万が一、本人が変更しなかったために自分のパソコンなどに侵入され、サイバー犯罪の被害に遭った場合について、大井哲也弁護士は「全てが利用者の自己責任になるわけではなく、フェイスブックの損害賠償責任と利用者の過失が相殺されるのが法律上の考え方だ」と話す。ただ、そもそもフェイスブックの損害賠償責任が裁判所などで認められなければ、利用者は被害にあっても泣き寝入りしなければならないのが実情だ。

一方で当局が動いた場合はフェイスブックが再び責任を問われるとの見方もある。杉本弁護士は「(今回の再拡散で)被害が拡大したとしてFTCの追加調査が始まれば、19年よりも高額の制裁金が命じられる可能性がある」と指摘する。

日本の場合、個人情報保護法で個人情報を扱う事業者に安全管理の義務を定めている。今回の問題でフェイスブックが義務違反に問われる可能性があるが、罰金は軽微だ。日本の被害者が、自分のデータ流出に伴う損害賠償を求めて同社を訴えることもできるが、米国での裁判同様、因果関係の立証が大きな壁となる。「必要な資料を集めるなどの作業を、利用者ひとりひとりの力で行うのは相当難しい」(杉本弁護士)。

今回の問題は、容易に複製可能でいったん流出したら被害が終わらないデータ流出特有の問題を改めて印象づけた。日本プルーフポイントの増田幸美氏は「一度やられると何度でもやられる。 IDやパスワードは使いまわされることが多いため、こういったデータのリークが他の情報窃取事件へとつながることがある」と指摘する。「パスワード管理ツールを使うなどして使い回しを避け、セキュリティを維持しながらネットサービスを使うことが重要だ」と強調している。

(渋谷江里子)

【関連記事】

Facebook、流出の5億人情報が再び閲覧可能に 米報道

LINE立ち入り、業務超えた閲覧の有無焦点 実態解明へ

https://www.nikkei.com/article/DGXZQODG3142O0R30C21A3000000/

※ 大体、サーバーを韓国に置いている段階で、「お察し」というヤツだろう…。

※ しかも、ネットでは、ずっと「話題になっていたこと」だ…。

『LINE(ライン)の利用者の個人情報が中国の関連会社から閲覧できた問題で、個人情報保護委員会は31日、個人情報保護法に基づき、LINEや親会社のZホールディングスなど関係先の立ち入り検査を実施した。従業員らが業務の範囲を超えて閲覧していなかったかなどを焦点に、同社の情報管理体制の実態解明を進める。

同社などによると、中国・上海の関連会社の従業員が2018年8月から21年2月までの間、日本のサーバー…

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同社などによると、中国・上海の関連会社の従業員が2018年8月から21年2月までの間、日本のサーバーに保管されている氏名や電話番号などの個人情報にアクセスできる状態だった。これまでに少なくとも計32回のアクセスがあったことが確認されている。

また利用者から「不適切だ」などと通報があったメッセージに対し、中国・大連の業務委託先からアクセスしていた。

同社はこれまで中国の従業員が閲覧した情報は「業務上必要な範囲だった」などと説明する。ただ、委託先の従業員がどんな種類の個人情報にアクセスできるのか、必要な業務範囲とは何かーーといった運用ルールなど詳細を明らかにしていない。

個人情報に関する業務を委託する場合、企業などには委託先を監督する義務がある。個人情報に詳しい弁護士は「LINEの体制に不備があり、委託先を十分に監督できていなかった可能性がある」と話す。

そもそも個人情報に関する業務を、中国にある企業に委託していた点を疑問視する声も多い。背景にあるのは17年施行の国家情報法だ。中国では国が民間企業や個人に対し、情報提供を強要することができる。「一般データ保護規則(GDPR)」を定めプライバシー保護を強化した欧州連合(EU)などとは大きくルールが異なる。

海外に業務を委託すること自体は違法ではないが、「中国では情報漏洩など安全保障上のリスクは否定できない」(同弁護士)という。

同委員会は問題発覚後、LINEの委託先の業務内容や個人情報へのアクセス状況、個人データの扱いに関する社内ルールの順守状況などの調査を進めている。同社が中国からのアクセスを遮断したとする対応策についても、適切に遮断されているのか検証するという。

LINEの利用者は約8600万人に上る。プライバシー保護や危機管理を専門とする日置巴美弁護士は「個人データの厳格管理が求められる時代に、LINEは委託先をチェックする体制が整備されていたか疑問だ。個人情報を扱う企業として、安全や危機管理の意識が低かったと言わざるを得ない」と指摘する。委員会は立ち入り検査で同社の管理体制に不備が無かったかどうかなど実態解明を急ぐ。

データ移転ルール厳格に 自民・甘利氏、LINE問題踏まえ「保護不十分な国認めず」

https://www.nikkei.com/article/DGXZQODE249AB0U1A320C2000000/

『自民党ルール形成戦略議員連盟の甘利明会長はLINE利用者の個人情報が中国から閲覧可能だった問題を受け、日本のデータ移転ルールを厳格にするよう提起した。移転先について「データ保護のレベルが日本と同等の国や地域に限るべきだ」と述べた。

違反した場合、企業名を公表する仕組みの導入も促した。

2022年春に施行する予定の改正個人情報保護法は移転先の国名を特定し、本人の同意をとることなどを盛り込んだ。甘利氏…

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甘利氏は「日本が間に立ってつなぐ役割を果たすべきだ」と説いた。

日米欧で共通の基準ができれば「国際標準をクリアした国同士でしかデータを出せなくなる」と話した。経済安全保障の観点で、データ移転先から中国を事実上外すことなどを想定する。

LINEは今回の問題を踏まえ、中国で日本で利用する人の情報を扱うサービス開発やデータの運用をしない方針に切り替える。

中国は17年に国家情報法を施行し、民間企業や個人にも情報活動への協力を義務づけた。LINE利用者のデータも中国の委託先を経由して中国当局にわたるおそれがある。

甘利氏は「これはLINE1社の問題ではない」と強調した。「データ処理やアプリ開発で中国に委託し、もっと深刻な問題を抱える企業もあるようだ」とも指摘した。

各省庁にそれぞれが所管する業界を通じ、中国の委託先企業の実態を調査するよう指示したと明らかにした。

現行の個人情報保護法は利用者が同意すれば個人情報を国外に移したり、日本にある情報を海外から見られるようにしたりするのを認める。

LINE側は利用者向けの指針で「パーソナルデータを第三国に移転することがある」と明記しており、法的な問題はないと主張している。甘利氏は「個人情報にかかわる重要な項目は真っ先に読まれるように改善を指導すべきだ」と訴えた。

日本は20年に個人情報保護法を改正した際、EUの「一般データ保護規則(GDPR)」を参考にした。GDPRはイラストなどを使って利用者に理解されないと同意を得たことにならないと定める。

LINEは日本発のプラットフォーマーとして期待されるIT(情報技術)大手だ。甘利氏は「プラットフォームは公的インフラであり、国益を意識してもらいたい」と呼びかけた。

グーグルやアマゾンなどGAFAにマイクロソフトを加えた米IT大手5社を意識したプラットフォーマーをめざすうえで「いい試練になったと捉えるべきだ」と言及した。LINE問題をきっかけに「日本全体で危機感が共有できる機会になった」と発言した。

データ流通のルールづくりを巡っては、安倍晋三前首相が19年の20カ国・地域首脳会議(G20大阪サミット)で、データ活用の分野で「大阪トラック」を提唱した。

プライバシーを尊重し信頼あるデータの自由な流通をめざす内容で、国家主導でデータを管理する中国に改善を求めた。

自民党のルール形成議連は経済と安全保障が密接に絡む経済安保のあり方を議論してきた。軍事転用可能な技術の流出防止や輸出管理などの強化策を考える狙いは中国への対応にある。

米国も先端技術が中国に流出するのを警戒し、企業や研究分野での中国政府の活動への監視を強めている。

多様な観点からニュースを考える
※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。

今村卓のアバター
今村卓
丸紅 執行役員 経済研究所長
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ひとこと解説 日本企業は業種を超えて、ビジネスが米中対立の影響を受けていないか、経済安全保障リスクに直面していないか、今後の恐れはないかの点検が必要です。グローバルに国を意識せずに、コストや機能の優劣だけを基準にパートナー、生産拠点、委託先などを選べた時代は終わりました。経済安全保障も重要な基準として選ぶ必要があります。

コンプライアンスだけでは企業を守れないという危機感も必要です。経済安全保障のルールは形成途上であり、ただ法整備を待つことはリスクの放置と同じです。日本企業も政府渉外活動を強化し、自社に影響するルールを予測し、自らルール形成に積極的に参加することが求められていると思います。

2021年3月25日 14:02いいね
0

滝田洋一のアバター
滝田洋一
日本経済新聞社 編集委員
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分析・考察 LINE問題は個人情報保護と同時に情報安全保障の問題です。中国が2017年に施行した国家情報法では、民間企業や個人にも情報活動への協力を義務づけている。LINEについても実際にデータが流出したかしないかの前に、法制度上、中国の委託先を経由して中国当局にわたるおそれがある。そこに問題があるのです。

甘利氏がデータの移転先について「データ保護のレベルが日本と同等の国や地域に限るべきだ」と述べているのは重要です。中国はいわずもがなとして、政治的に中国への傾斜を深めている韓国などはどうなのか。事業者からの徹底的な聞き取りと早急な法制整備が望まれます。

2021年3月25日 12:46いいね
12

村山恵一のアバター
村山恵一
日本経済新聞社 本社コメンテーター
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ひとこと解説 個人データの取り扱いについてLINEは日本で「優等生」とみられてきました。そういう会社がこのような状況に陥ったことは重く、改めて日本全体でデータに対する意識を高める必要があります。社会、経済のためにデータを活用する流れは不可逆的です。これを機にデータ保護の体制をしっかり整え世界に発信できるくらいにならないと、国としての存在感、競争力が失われてしまいます。

2021年3月25日 12:16いいね
7

LINE「利用者へ配慮なかった」 会話データ、国内移管へ

https://www.nikkei.com/article/DGXZQODZ239TW0T20C21A3000000/

 ※ ネットでは、ずっと言われ続けてきた話しだろ?

 ※ なんで、今さら大騒ぎしているんだ?

 ※ LINE使うヤツは、個人情報抜かれてもヘーキな、「情弱」と言われ続けてきただろ?

 ※ 使っているヤツは、それを承知で使っていたんじゃ、ないのか?

 LINE (企業)
https://ja.wikipedia.org/wiki/LINE_(%E4%BC%81%E6%A5%AD)

『概要

法人としては韓国最大のインターネットサービス会社であるネイバー(NAVER、1999年設立)が2000年にオンラインゲームサイト「ハンゲーム」の日本運営法人「ハンゲームジャパン」として設立したのが最初である[5]。2011年6月にハンゲームジャパン改め NHN Japan が始めた「LINE」の爆発的普及により業績を伸ばし、2013年には法人名自体を「LINE株式会社」に改め、2018年時点で子会社であるLINEはNAVERグループ全体の総資産の40.1%、売り上げ高の37.4%を占めた[6]。

2019年にソフトバンクグループでYahoo! JAPANを運営するヤフー(2020年に持株会社化しZホールディングスに商号変更)との経営統合を発表し、複数回の株式移転を経て2021年3月1日にZホールディングスと経営統合[7]。旧LINE株式会社はZホールディングスとの合弁会社とした上で「Aホールディングス株式会社」に法人名を改めた。現在のLINE株式会社は2019年の経営統合発表後に設立された分割準備会社を元としており、2021年に事業譲受後にZホールディングスの完全子会社となっている。』

『沿革
2000年(平成12年)
10月 – ハンゲームジャパン株式会社として設立。
12月 – ハンゲーム日本版の正式サービスを開始。
2003年(平成15年)
8月 – NHN Japan 株式会社に商号変更。
2004年(平成16年)
7月 – NAVERブログのサービスを開始(現在は終了)。
2005年(平成17年)
6月 – CURURUのサービスを開始(現在は終了)。
2006年(平成18年)
5月 – アソブログのサービスを開始(後にサービス終了)。
12月 – マルチタームを完全子会社化。
2007年(平成19年)
1月 – ISMS認証(ISO/JISQ27001規格準拠)を取得[8]。
6月 – 日本オンラインゲーム協会に入会。
10月9日 – 代表取締役社長が千良鉉から森川亮へ異動[9]。
11月 – 検索関連事業を行う子会社ネイバージャパン株式会社を設立。
2008年(平成20年)
2月 – 韓国メディアウェブ社との共同出資で株式会社メディエーターを設立。
3月 – ケータイハンゲームのサービスを終了。同月にハンゲ.jpのサービスを開始(現在は終了)。
2009年(平成21年)
12月 – モバイルコンテンツ審査・運用監視機構のコミュニティサイト運用管理体制認定制度の審査に合格[10]。
2010年(平成22年)
1月 – ハイチ地震で被害を受けたハイチ共和国に義援金100万円を贈呈[11]。
5月 – ポータルサイト運営の株式会社ライブドアを完全子会社化[12]。
2011年(平成23年)
1月 – オリックス・バファローズのユニフォームスポンサーとなり、ヘルメット・パンツ左にハンゲームのロゴマークを掲出。
2012年(平成24年)
1月 – NHN Japan株式会社、ネイバージャパン株式会社、株式会社ライブドアが経営統合。株式会社ライブドアのメディア事業[13]とネイバージャパン株式会社を吸収合併[14]、データセンター事業および通信関連事業の残った株式会社ライブドアは株式会社データホテル(現・NHNテコラス株式会社)に商号変更(吸収せず子会社のまま存続)。
7月3日 – KDDI株式会社との業務提携に合意[15]。
10月1日 – 本社を渋谷ヒカリエに移転[16]。
11月8日 – グリー株式会社、株式会社サイバーエージェント、株式会社ディー・エヌ・エー、株式会社ドワンゴ、株式会社ミクシィなどと共に一般社団法人ソーシャルゲーム協会を設立[17]。
2013年(平成25年)
2月26日 – ノキア・コーポレーションと戦略的業務提携を締結[18]。
3月28日 – ヤフー株式会社(現・Zホールディングス株式会社)との業務提携に基本合意[19]。
4月1日
LINE株式会社に商号を変更[20]。
ゲームに関する事業を新設分割によりNHN Japan株式会社(現・NHN JAPAN株式会社)に承継[20]。
子会社のジェイ・リスティング株式会社がLINE Business Partners株式会社に商号を変更[20]。
11月7日 – ブイグテレコムとパートナー契約を締結[21]。
11月14日 – クレオンモバイルと戦略的提携を締結[22]。
12月2日
結婚支援サイト「youbride」等の事業を、新設分割により株式会社Diverseに承継[23]。
株式会社Diverseの全株式を株式会社ミクシィに売却[23]。
2014年(平成26年)
2月5日 – テレフォニカS.A.とパートナーシップを締結[24]。
4月1日
出澤剛が代表取締役COOに就任[25]。
静岡大学と小中学生向け情報モラル教材開発の共同研究を開始[26]。
6月10日 – セールスフォース・ドットコム・インクとパートナーシップを締結[27]。
8月7日 – 株式会社gumiとの資本業務提携に基本合意[28]。
9月9日 – 投資ファンドとしてLINE Game Global Gateway投資事業有限責任組合を設立[29]。
9月30日 – 株式会社データホテル(現・NHNテコラス株式会社)の全株式をNHN PlayArt株式会社(現・NHN JAPAN株式会社)に譲渡[30]。
10月8日 – 株式会社講談社、株式会社小学館、株式会社メディアドゥとの合弁会社としてLINE Book Distribution株式会社を設立[31]。
10月31日 – グリー株式会社との共同出資会社としてEpic Voyage株式会社を設立[32]。
12月11日 – エイベックス・デジタル株式会社、株式会社ソニー・ミュージックエンタテインメントとの共同出資会社としてLINE MUSIC株式会社を設立[33]。
2015年(平成27年)
2月2日 – 株式会社インテリジェンスホールディングスとの共同出資会社として株式会社AUBEを設立[34]。
2月4日 – 投資ファンドとしてLINE Life Global Gateway投資事業有限責任組合を設立[35]。
2月13日 – 国際連合児童基金(UNICEF)とグローバルパートナーシップ契約を締結[36]。
2月23日 – 株式会社イーコンテクスト、ベリトランス株式会社との業務提携に基本合意[37]。
3月3日 – サイバーソース・コーポレーション(英語版)と戦略的提携に基本合意[38]。
4月1日 – 代表取締役社長CEOの森川亮が退任し、出澤剛が代表取締役社長CEOに就任[39]。
6月30日 – LINE MUSIC株式会社の株式の一部を、株式会社ソニー・ミュージックエンタテインメントと共同でユニバーサル ミュージック合同会社に譲渡[40]。
8月中旬 – LongTu Koreaとの共同出資会社としてLantu Games Limitedを設立[41]。
10月2日 – インテル株式会社との提携に合意[42]。
11月11日 – 株式会社スタートトゥデイ(現、株式会社ZOZO)との業務提携を締結[43]。
2016年(平成28年)
1月 – 株式会社フリークアウト(現・株式会社フリークアウト・ホールディングス)の連結子会社のM.T.Burn株式会社と資本業務提携し連結子会社化[44]。
2月26日 – 子会社としてLINEモバイル株式会社を設立。
4月1日 – LINE公式キャラクターのライセンス管理業務を委託先の株式会社小学館集英社プロダクションから自社に移管[45]。
7月14日 – ニューヨーク証券取引所(ティッカーシンボル:LN)に上場[46]。
7月15日 – 東京証券取引所市場第一部(証券コード:3938)に上場[46]。
8月3日 – 渋谷区とシブヤ・ソーシャル・アクション・パートナー協定を締結[47]。
10月12日 – ワークスモバイルジャパン株式会社と事業提携契約を締結[48]。
10月下旬 – Snow Corporationへの出資に参加し、同社を持分法適用会社化[49][50]。
2017年(平成29年)
4月1日 – 本社を東京都新宿区新宿4丁目のJR新宿ミライナタワーに移転[51]。
4月19日 – 富士ゼロックス株式会社と協業提携契約を締結[52]。
5月1日 – 連結子会社のLINE Plus株式会社が、カメラアプリケーション事業を吸収分割によりSnow Corporationに承継[53]。
6月14日 – 連結子会社としてLINE GAMES株式会社を設立[54]。
6月15日
トヨタ自動車株式会社と協業で基本合意[55]。
伊藤忠商事株式会社、株式会社ファミリーマートとの業務提携に基本合意[56]。
9月1日 – LINE Friends Store事業を、簡易新設分割によりLINE Friends Japan株式会社に承継[57]。
11月8日 – NAVERまとめ事業を、簡易新設分割によりネクストライブラリ株式会社に承継[58]。
12月11日 – 連結子会社のLINE Pay株式会社がLINE Business Partners株式会社を吸収合併[59]。
12月中旬 – ファイブ株式会社の全株式を取得し完全子会社化[60]。
2018年(平成30年)
1月5日 – 資本業務提携により、モバイク・ジャパン株式会社の株式を一部取得[61]。
1月10日 – 完全子会社としてLINE Financial株式会社を設立[62]。
1月15日 – 大阪府大阪市北区梅田2丁目の桜橋御幸ビルに大阪オフィスを開設[63]。
4月1日 – パーソルキャリア株式会社との合弁会社の株式会社AUBEの出資比率を変更し、連結子会社とする[64]。
4月2日 – LINEモバイル株式会社が、ソフトバンク株式会社への第三者割当増資を行い連結子会社から持分法適用会社へ異動[65]。
4月16日 – エン・ジャパン株式会社との合弁会社としてLENSA株式会社を設立[66]。
6月1日
LINE Financial株式会社の完全子会社としてLINE証券設立準備会社を設立。
完全子会社としてLINE Growth Technology株式会社を設立[67]。
7月2日 – LINEマンガ事業及びLINEコミックス事業を、簡易新設分割によりLINE Digital Frontier株式会社に承継[68]。
8月1日 – 資本業務提携により、株式会社ベンチャーリパブリックの株式を一部取得[69]。
12月5日 – スターバックスコーヒージャパン株式会社と包括的業務提携を締結[70]。
12月10日 – 京都市と包括連携協定を締結[71]。
12月12日 – 東京都渋谷区にある区立コンサートホール「渋谷公会堂」の命名権を取得[72]。
12月18日 – 株式会社CyberACE、GMOアドパートナーズ株式会社、ソウルドアウト株式会社との戦略的パートナーシップ契約を締結[73]。
2019年(平成31年・令和元年)
1月4日 – エムスリー株式会社との共同出資会社としてLINEヘルスケア株式会社を設立[74]。
1月10日 – LINE Pay株式会社と株式会社デイリー・インフォメーション北海道との合弁会社としてLINE Pay北海道株式会社を設立[75]。
1月16日 – LINE証券設立準備会社が、LINE Financial株式会社及び野村ホールディングス株式会社への第三者割当増資を行い両社の共同出資会社とする[76]。
4月1日 – 慎重扈が代表取締役CWO (Chief WOW Officer)に就任[77]。
4月15日 – Global Network Initiative(英語版)にオブザーバーとして加盟[78]。
5月27日 – LINE Financial株式会社と株式会社みずほ銀行との共同出資会社としてLINE Bank設立準備株式会社を設立[79]。
6月24日
連結子会社のLINE証券設立準備会社が、関東財務局による第一種金融商品取引業の登録を完了[80]。
LINE証券設立準備会社がLINE証券株式会社に商号を変更[80]。
6月27日
スカパーJSAT株式会社、伊藤忠商事株式会社との協業に基本合意[81]。
弁護士ドットコム株式会社と業務提携を締結[82]。
7月16日 – 障害者雇用に関する事業を、簡易新設分割によりLINEビジネスサポート株式会社に承継[83]。
7月30日 – 台湾におけるインターネット専業銀行業の認可を金融監督管理委員会より取得[84]。
9月6日 – 連結子会社のLVC株式会社が、資金決済に関する法律に基づく仮想通貨交換業者として関東財務局への登録を完了[85]。
11月18日 – Zホールディングス株式会社と経営統合で基本合意[86]。
11月25日 – LINEバイト株式会社を吸収合併[87]。
12月13日 – 完全子会社としてLINE分割準備株式会社を設立[88]。
12月20日 – 一般財団法人LINEみらい財団を設立[89]。
12月23日 – Zホールディングス株式会社との経営統合に関して、ソフトバンク株式会社、ネイバー株式会社を含む4社間で経営統合の最終合意を締結[88]。
2020年(令和2年)
1月9日 – UUUM株式会社と業務提携を締結[90]。
9月24日 – 株式公開買付けにより、ソフトバンク株式会社及びNAVER J.Hub株式会社が議決権所有割合ベースで各6.41%の株式を取得[91]。
12月28日 – ニューヨーク証券取引所上場廃止[92]。
12月29日 – 東京証券取引所市場第一部上場廃止[92]。
2021年(令和3年)
1月4日 – 株式併合により、株主がNAVER Corporationのみとなる[91]。
2月26日 – 株式公開買付けなどにより汐留Zホールディングス合同会社が保有するZホールディングス株式会社の株式を取得するとともに、汐留Zホールディングス合同会社を吸収合併。ソフトバンクとネイバーの折半出資となる[93]。
2月28日 – LINE分割準備株式会社に事業を承継させ、Aホールディングス株式会社に商号変更[94]。
3月1日 – LINE株式会社(2代、旧LINE分割準備株式会社)が、株式交換によりZホールディングス株式会社の完全子会社化。』

『LINEは23日、海外への業務委託やデータ管理をめぐり個人情報の保護を強めるための対策を発表した。個人データについて中国からのアクセスを遮断するほか韓国で保管するデータも国内に移す。サービスのグローバル展開を進めるなかで、プライバシー保護がこれまで以上に重要になっており欧米などが先行する個人データの徹底管理に歩調を合わせる。

記者会見で頭を下げるLINEの出沢剛社長(23日、東京都港区)
今回、LINEが見直しを表明した事業のひとつが中国への業務委託だ。

大手のIT(情報技術)企業は業務を海外に委託することは珍しくなく、楽天もシンガポールに委託先がある。ただ、中国の場合は国家情報法により民間企業を通じて利用者のデータが当局に渡るリスクがある。業務委託そのものは個人情報保護法に抵触しないが、記者会見したLINEの出沢剛社長は「信頼回復が第一なので、明確な対応をする必要がある」と発言。「法的にどうこうではなく、ユーザーへの配慮がなかった」と述べた。

韓国でのデータ管理も取りやめる。LINEは対話アプリ上で投稿した画像・動画やキャッシュレス決済「LINEペイ」の決済情報などのデータを韓国のサーバーで保管してきた。これらについても2021年9月までに順次国内のサーバーに移転する。利用者には海外へのデータ移転については説明していたが「具体的にどの国でデータ保管をしているのかは説明してこなかった」として国内管理に切り替える。

中韓での業務をめぐり不正アクセスや個人情報の漏洩は「現時点で確認していない」(LINE)。それでもビジネスのあり方を見直すのは同社を含めたデータ企業に対する当局の厳しい目線がある。

22年施行の改正個人情報保護法では、移転先の国名を特定した上で本人同意をとることなどが盛り込まれる予定だ。欧州連合(EU)は利用者による完全な理解を前提とするなど同意取得に高いハードルを課す。改正個人情報保護法は厳格なプライバシー保護ルールを定めた欧州の一般データ保護規則(GDPR)を参考にしている。

出沢社長は「説明がミスリーディングだった」と認めたうえで、急成長が続くなかで「データについては利用者に明確なコミュニケーションをしてこなかった」と述べた。LINEは海外展開を重要戦略に掲げており今後はデータ管理を国際水準並みに厳しくする。

LINEは11年6月にサービスを始め、無料で使える対話アプリとして広く普及した。利用者は約8600万人。SNS(交流サイト)に加え決済や広告など多様なサービスを提供しており、国や自治体の情報発信や行政手続きの申請でも利用されている。

対話アプリでは圧倒的な国内シェアを持つなど「社会インフラになりつつある」(東京大学の宍戸常寿教授)。同社は3月にZホールディングス(HD)と統合し、プラットフォーマー戦略をさらに強めている。ネットサービスのなかでの存在感が高まるなかで利用者への説明責任の重みも増している。

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石川温
スマホジャーナリスト
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ひとこと解説 なぜ、画像や動画データを韓国に置いていたのか。記者会見で質問したところ、LINEの舛田淳CSMOは「日本だけではなく、アジア圏、中東、ロシアに向けて、データの遅延が少なくなる場所を探した。セキュリティが担保され、人材がいる。コスト面も条件だった」という。LINEが韓国NAVER社の子会社だったことから韓国のデータセンターが選ばれた。立地、技術、コスト面で韓国が選ばれたということは、LINE以外で個人情報を扱う企業も韓国のデータセンターを使っている可能性が高い。アメリカのSNSがアメリカにデータを置いているとは限らない。今回はLINEが問題視されたが、他のSNSも情報開示が求められそうだ。

2021年3月24日 8:22いいね
45

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今村卓
丸紅 執行役員 経済研究所長
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別の視点 LINEの米国でのユーザーが多ければ、問題はもっと早く発覚して深刻になっていたと思います。米国政府は中国政府が米国人の個人データにアクセスするリスクを非常に警戒しています。LINEを通じて多くの米国人のデータを中国政府が入手する恐れがあると米国政府が認識したなら、安全保障上の大問題として経路の遮断に動いていたでしょう。

LINEは個人情報保護を厳格化する対策を発表しましたが、「ユーザーへの配慮」に、グローバルに事業を展開する企業として、米中対立の先鋭化や安全保障の観点からの事業の検証も含まれていることを強く期待します。

2021年3月24日 11:36いいね
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竹内薫
サイエンスライター
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貴重な体験談 個人的な感想です。数年前、LINEの経営母体である某企業と支払いトラブルが生じ、弁護士に解決してもらうまで半年を要した苦い経験があります。企業間の吸収合併のせいで、顧客情報・請求業務が、システム的にうまく引き継げなかったのが原因だと私は考えていますが、いまだに原因は判明していません。企業が急成長するにつれ、現場が混乱し、以前は守られていた内規が崩れ、情報の扱いがずさんになる恐れは大きいと思います。今回は表沙汰となりましたが、氷山の一角ではないかと感じています。第三者委員会による徹底した調査を望みます。

2021年3月24日 10:17いいね
30

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杉本貴司
日本経済新聞社 編集委員
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別の視点 LINEは東日本大震災を機に誕生した。検索のネイバージャパンが進めていた新規事業のひとつでしかなかったチャットツール。震災を目の当たりにして「大切な人とつながれる」ことの大切さを重く受け止め、社会を支えるこの機能に集中した結果の大ヒットでした。

それから10年。LINEはこの国の社会インフラになりました。
今回の問題をLINEは説明不足としていた。確かに法的に問題はない。ただ、いまやLINEは社会インフラです。法律の枠内に留まらない責任を背負うはず。その点、出沢社長も反省の弁を繰り返していました。今回の問題を重く受け止め、真に信頼される存在になってもらいたい。10年前、そう志したように。

2021年3月24日 4:37いいね
28 』

自民・甘利氏「中国委託の企業リスク洗い出しを」 LINE問題で

https://www.nikkei.com/article/DGXZQODE1731W0X10C21A3000000/

※ 「謎の種子(タネ)」送り付けられ事件の記憶も新しい…。

『自民党ルール形成戦略議員連盟の甘利明会長は17日、LINEの個人データ管理に不備があった問題について「これを機に政府は中国企業に業務委託している全ての企業のリスクを洗い出すべきだ」と提起した。日本経済新聞の取材に答えた。

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LINE、個人データ管理に不備 中国委託先で閲覧可能に

「外国企業との取引を法律で禁止するのは難しいが、中国に機微データを抜かれることで米欧のサプライチェーン(供給網)から外される可能性があるとの危機感が足りない」と指摘した。

「国…

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「国も企業もそうしたデカップリング(分断)のリスクにどう向き合うか真剣に検討すべきだ」と述べた。外国企業と取引するルールを定めるガイドライン(指針)が必要との認識も示した。

LINEの問題に関しては「心配していた事態が現実になり衝撃を受けている。これは氷山の一角だろう。無防備に人材・コスト面から中国企業に委託している日本企業は多く存在する」と話した。近くルール議連や新国際秩序創造戦略本部を開いて党としての対応策を議論する方針だ。

LINEの個人データ管理を巡っては、システム開発を委託する中国の関連会社で、現地の技術者が国内利用者の個人情報にアクセスできる状態になっていたことが17日に明らかになった。