給与「デジタル払い」解禁へ 知っておきたい10の知識

給与「デジタル払い」解禁へ 知っておきたい10の知識
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOFK085NR0Y1A200C2000000/

 ※ 必ず、「被用者個人の承諾」が必要になるハズだ…。

 ※ 利害得失を、冷静に判断して、自分で決めよう…。

『銀行を介さない給与の「デジタル払い」は、キャッシュレスを加速させるか
日経ビジネス電子版

入社時に特定の金融機関の給与口座を指定され、そのまま普段使いの口座として利用する会社員も多いはず。そんな常識が変わろうとしている。企業が給与について銀行口座を介さず払えるようにする議論が厚生労働省の審議会で進んでいる。「○○ペイ」などを運営する資金移動業者が提供するスマートフォンのアプリでデジタルマネーとして給与を受け取り、即座にスマホ決済ができるようになる。キャッシュレスを加速させる好機になりそうだが、問題点はないのか。整理した。

◇  ◇  ◇

1:そもそも現在の給与支払いのルールはどんなもの?

労働基準法24条では「賃金は、通貨で直接労働者にその全額を支払わなければならない」と規定されている。モノなどの現物支給は禁止されている。細かくいえば、(1)「通貨」で(2)「直接」(3)「全額」を(4)「毎月1回以上」の頻度で(5)「一定期日」に、企業は労働者に給与を払わなければならない。この(1)~(5)は「賃金支払いの5原則」として労基法に定められている。

ただし例外的に、企業と労働者間の同意などがあれば、労働者が指定する銀行その他の金融機関の口座や、証券総合口座への振り込みなどで給料を支払うことが労基法の施行規則で認められている。今では当たり前となっている銀行口座への給与振り込みは、法律上では例外となっている。

2:デジタル給与払いになると、何が変わる?

政府は、給与支払いのデジタル化を解禁する方針を示している。1月28日から厚生労働省労働政策審議会で専門家による議論が始まっている。現在の施行規則を改正し、PayPay(ペイペイ)、LINEペイなどスマートフォン決済サービスなどを提供する「資金移動業者」の口座にも給与を振り込めるようにすることが想定されている。

3:具体的な方法は?

資金移動業者が発行するプリペイド(前払い)式の給与振り込み用カード「ペイロールカード」の導入が想定されている。企業は銀行などの金融機関を経由せずに直接ペイロールカードの口座に振り込むことができる。こうしたペイロールカードをPayPay、LINEペイ、メルペイなどといったキャッシュレス決済事業者のサービスと接続して、給与を残高として扱えるようになれば、買い物でスマホ決済がしやすくなる。ATMなどで現金を引き出すことも可能だ。ちなみに米国では、ペイロールカードがすでに普及している。

4:制度変更の背景は?

菅義偉政権が掲げる政策の目玉の1つに、行政サービスや社会全体のデジタル化の推進が挙げられる。給与は生活資金の基盤となるため、給与払いのデジタル化を解禁することで、社会のキャッシュレス化を加速させるとともに、国全体のデジタル化を促したい狙いがある。日常の買い物シーンでは、QRコードなどを使用したキャッシュレス決済が増えており、現状を踏まえた顧客の利便性を考慮した面もある。

5:メリットは?

利用者のメリットとしては、ATMで現金を引き出す手間を省くことができる。また、銀行口座開設のハードルが高い外国人労働者の報酬受け取り手段として活用できる。定期的な給与払いを求めない労働者の資金ニーズにも柔軟に応えることができる。働いてから報酬振り込みまでの期間が短い方を好む傾向にある、日雇い労働者やアルバイトなどの非正規労働者の利便性が向上する。

企業が導入するメリットも大きい。銀行に毎月給与振り込みをせずにすむため、業務効率の改善や手数料削減効果が期待できる。都度払いや少額払いもしやすくなり、従業員の受け取り手段の多様化に対応できる。また、スマホ決済事業者が実施するキャッシュバックなどの特典を間接的に提供できるようになる。

6:デメリット、問題点は?

最も懸念されているのが、資金移動業者が経営破綻したときの対応だ。どのような仕組みで利用者の資金を保全するかが課題となっている。1月28日に行われた労働政策審議会でも、「資金移動業者が経営破綻などした場合、スムーズな払い戻し、資金保全について懸念がある」と指摘され、論点整理が行われた。議論は始まったばかりだ。

銀行その他の金融機関の場合、破綻した際には預金保険制度が適用され、預金者の口座の元本1000万円が保護される。また、預金者へ速やかに払い戻しされる。一方、資金移動業者は供託などで利用者の資金の全額を保全しなければならないが、資金の取扱額が日々変動している資金移動業者の場合、経営破綻時に保全額が十分ではないこともあり、一部しか資金が戻ってこないケースもある。また、全額を払い戻せる場合でも、確定手続きに半年程度かかることが多い。

給与の確実な支払いを担保するために、本人確認をいかに徹底するかも課題となっている。ハッキングなどによる資金の不正流出やセキュリティー不備による不正送金が起きないようにするといった課題への対応、補償の枠組みの整備も必要だ。

7:銀行口座を介した給与支払いの現状は?

全国銀行協会によると、銀行口座の給与支払額の統計指標はない。国税庁の「民間給与実態統計調査」によると、2019年中に民間事業者が支払った給与の総額は前年比3.6%増の231兆6046億円で、給与所得者数は同1.3%増の5990万人(19年12月末時点)となっている。ほとんどが銀行などの金融機関の口座に振り込まれているとみられ、今回のデジタルマネーによる給与支払い解禁は、年間200兆円超、6000万人弱の給与口座の動向に影響を与える可能性がある。

8:給与口座からの出金のうち、キャッシュレス決済の比率は?

全国銀行協会が主要銀行(みずほ銀行、三菱UFJ銀行、三井住友銀行、りそな銀行、埼玉りそな銀行、ゆうちょ銀行)を対象に調べた「キャッシュレスによる払出し比率の調査」によると、集計対象銀行の口座から引き出された19年の出金額は112兆円。このうち、ATMなどの現金引き出しが全体出金額の48.9%、キャッシュレスによるものが51.1%で、キャッシュレスが現金引き出しを上回っている。キャッシュレスの内訳をみると、クレジット払いなどの口座振替が全体の33.7%を占め、インターネットバンキングでの振り込みが8.8%、ATMからの振り込みが4.1%。年々、キャッシュレス比率は増加傾向にある。

9:銀行界、労働団体の反応は?

顧客基盤の流出にもつながりかねない銀行界からは「顧客との接点機会を失いかねない」との声が上がる一方、「安心して預けられる銀行口座の優位性は変わらない」(メガバンク関係者)という見方や、「月何十万円もスマホアプリに給与として送金してほしいという労働者がそれほど多くいるとは思えない」(同)と冷静に捉える声も出ている。とはいっても資金移動業者が銀行の経営基盤を揺るがす脅威の存在となりうることから、危機感は大きい。

労働団体からは急速な制度変更に対する懸念の声が上がる。日本労働組合総連合会(連合)は1月28日に会見を開き、資金移動業者が経営破綻した際の顧客保護の整備が不十分としたうえで、「労働者の生活の糧である賃金の支払い方法は安全で確実な方法でなければならない」などと述べるなど、今回の制度改正に現時点で反対の立場を取っている。

10:資金移動業者を監督する金融庁はどうみている?

資金移動業者を監督する金融庁は「資金決済法に基づいて引き続きモニタリングする」として厚生労働省との連携を密にして対応する考えだ。利用者の資金保全については、現時点では、今の資金決済法のスキーム(供託などで全額保全)に基づいて監督していくとしている。20年の資金決済法改正によって現行類型(送金総額1件あたり100万円)に、少額類型(同5万円)、高額類型(上限なし)を加え、送金額に応じた規制を適用することになり、よりきめ細かく監督するようになった。資金移動業者の数は80(20年12月時点)。金融庁は「資金移動業者といってもさまざまある。今回のデジタルマネーによる給与振り込みに関しては、不正送金など何か起きたときのインパクトは大きい。こうしたリスクをみて、ペイロールカードを発行する業者についてはより重点的にみていくことはある」として、今後、監督を強化する可能性もあるとしている。

(日経ビジネス 小原擁、武田安恵)

[日経ビジネス電子版 2021年2月5日の記事を再構成]

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・銀行、「中抜き」に警戒感 給与のデジタル払い解禁 』

PayPayや楽天ペイ、デジタル給与「受取口座」参入検討

PayPayや楽天ペイ、デジタル給与「受取口座」参入検討
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB131MP013092022000000/

『2021年2月10日 2:00 (2021年2月10日 4:48更新)

スマートフォンアプリなどを使うデジタルマネーによる給与の振り込みが2023年春にも解禁される。スマホ決済会社のPayPayや楽天グループの「楽天ペイ」は、デジタル給与の受け取りサービスへの参入を検討していることを明らかにした。給与口座を銀行以外でも作れるようになり、フィンテックが消費者の人生設計に食い込むチャンスが広がる。

デジタル給与の受け取りサービスには、2023年にもスマホ決済を始めるJCBも参入を検討している。メルカリのメルペイも「前向きに検討する」という。スタートアップではKyash(キャッシュ、東京・港)のほか、デジタル通貨決済のソラミツ(東京・渋谷)が関連会社を通じて参入するとしている。

スマホ決済アプリをデジタル給与の受取口座として使えるようになれば、利用者はその都度お金をチャージする手間が省ける。スマホ決済企業は家族同士の送金や外国人労働者の口座開設需要を取り込める。金融商品なども提案しやすくなる。

ソラミツの宮沢和正社長は「サービスの設計次第では給与振り込みを月1回ではなく、週1回など細かく設計できるようになる可能性がある」と話す。デジタル給与の口座を獲得するためにポイント付与などの競争が激しくなりそうだ。

課題もある。政府はサービスを提供する企業が破綻した場合に備え、個人が預けた資金の残高の全額を保証する仕組みの導入を義務付ける。

銀行などの預金には、金融機関が預金保険料を預金保険機構に支払い、金融機関が破綻した場合、一定額の預金等を保護する預金保険制度という仕組みがある。預金者1人につき1金融機関ごとに普通預金や定期預金などの元本1000万円とその利息が保護される。

一方、スマホ決済アプリの口座でデジタル給与を受け取る場合、預金保険制度を使えない。もともとスマホ決済アプリなどにチャージしたお金は供託などで保全されているケースがあるが、取扱額が日々変動していることから、経営破綻時に必要な金額が確保されていないこともありうる。

東京海上日動火災保険などの損保大手4社は、スマホ決済アプリの口座で受け取ったデジタル給与を保証する保険の開発を検討する。ただ損保などが個別で商品を開発すれば「保険料率は1%は超える」(損保幹部)との声もあり、利用企業にとっては負担が大きくなる可能性がある。

あるスマホ決済企業の社長は「全額保証することを義務付けられるなら、デジタル給与の受け取りサービスへの参入を断念する」と話す。今後は複数の決済業者や業界全体で保証する枠組みをつくるなどの対応が求められそうだ。

(フィンテックエディター 関口慶太、手塚悟史、岩田夏実、四方雅之)

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ニューズレター https://regist.nikkei.com/ds/setup/briefing.do?n_cid=DSREA_newslettertop 』

3メガバンク、23年春の新卒採用3分の1に 5年前比

3メガバンク、23年春の新卒採用3分の1に 5年前比
デジタル人材を争奪
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB054RG0V00C22A4000000/

『三菱UFJ、三井住友、みずほのメガバンク3行が2023年春の新卒採用計画数を今年春から13%少ない計1100人とすることが分かった。店舗の統廃合や事務の効率化を急ピッチで進めてきたことなどを背景に、5年前の約3200人と比べ、およそ3分の1に抑える。各行ともデジタルなど専門人材の採用を強化しており、争奪戦が激しくなりそうだ。

計5000人以上を採用していた直近ピークの16年に比べると8割程度少ない。店舗事務などの効率化で、メガバンクの従業員数は減少する方向だ。三菱UFJ銀行とみずほ銀行は店舗の統廃合にも踏み込んでいる。事務を中心に担っていた一般職区分を廃止する銀行もあり、人員数の減少が加速している。

23年卒採用の22年比減少率が最も大きいのは三菱UFJ銀行で、22年4月の実績より16%少ない320人を計画する。このうち総合職は270人、ビジネス・スペシャリスト(BS)職と呼ぶ一般職を50人とする予定だ。三井住友銀行は同15%減の400人、みずほフィナンシャルグループは7%減の380人を採用する計画だ。

各行とも全体の採用を絞る一方、専門人材の採用は強化する。三菱UFJは人材の奪い合いとなっている金融工学やシステムに強い学生をひき付けるため、大卒1年目から初任給が1000万円以上となる可能性のある人材の採用を22年4月に続けて実施する。

三井住友銀行は総合職のうちビッグデータや人工知能(AI)、フィンテックなどIT(情報技術)関連業務に従事する「デジタライゼーションコース」の募集人数は8人前後。22年卒の実績(1人)に比べて増やす予定だ。みずほも科学技術や数学などにたけた「STEM人材」を例年全体の10〜15%程度採用しているが、これを拡大する。

フィンテックなど新技術を生かしたサービスが次々台頭するなか、デジタル開発力は金融分野でも競争力の源泉となる。ある米銀では社員の約5人に1人がエンジニアといわれ、邦銀はまだ見劣りする。各行ではデジタル分野の研修などで社員の再教育にも力を入れているが、若手の専門人材の登用や配置転換を進め、デジタルトランスフォーメーション(DX)をてこ入れしたい考えだ。

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田中道昭
立教大学ビジネススクール 教授
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別の視点

日本のメガバンクが成長戦略を示せず縮小均衡に陥ろうとしている中、米銀はどのような状況なのでしょうか。

JPモルガンは4日に21年アニュアルレポートを開示しました。

驚くとともに鼓舞されたのは冒頭での46ページにも及ぶダイモンCEOのレター部分。「アメリカの強力なリーダーシップの異例なまでの必要性」というテーマに7ページを割き、ウクライナ危機下での強烈な危機感と使命感を提示。直後の個人金融部門報告ではデジタル化施策を示す一方、17年店舗数5,130・人口カバー率61%に対し、中期計画同5,000・85%を提示。

前例なき危機であると述べ銀行の責務を示したダイモン氏から今こそ学ぶことが多いと思います。
https://www.jpmorganchase.com/content/dam/jpmc/jpmorgan-chase-and-co/investor-relations/documents/annualreport-2021.pdf

2022年4月7日 5:32 』

南米最大ネット銀行上場が示す金融の未来(NY特急便)

南米最大ネット銀行上場が示す金融の未来(NY特急便)
米州総局 伴百江
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN100780Q1A211C2000000/

 ※ 実は、「銀行」というものは、「お金のやりとり」だけでなく、「本人の確認」「アヤシイお金のやり取りのバリア」という役目も果たしている…。

 ※ 「口座」を開くときには、必ず「免許証」なんかで「本人確認」されるし、「お年寄り」が、「多額の送金」をしようとすると、「さしつかえなければ、お使い道を教えていただけますか。」と、にこやかに尋ねて、「特殊詐欺被害」を未然に防いだりしてくれている…。

 ※ 「手数料」とは、そういう「社会的なはたらき」の対価をも、含んでいるものなんだ…。

『9日の米株式市場でダウ工業株30種平均は横ばいで終えた。前日までに相場が大きく上昇しただけにこの日は利益確定売りも出て上値は抑えられた。市場関係者の関心を集めたのが、ブラジルのネット銀行ヌーバンクの新規株式公開(IPO)だ。取引初日の終値は10.33ドルと公募価格9ドルを約15%上回った。時価総額は約480億ドル(約5兆4000億円)と、南米の銀行で最大となった。このところIPO銘柄の株価は低迷していただけに、久々の活況に市場は沸いた。

ヌーバンク(上場会社は持ち株会社のヌーホールディングス)は2013年にコロンビア出身のダビド・ベレス最高経営責任者(CEO)がブラジルで創業した。同氏自身が銀行口座を開くのに苦労した経験から、誰もがサービスを受けられる銀行を目指して設立した。銀行口座を持たないいわゆる〝アンバンクト〟と呼ばれる消費者を顧客として狙った同社は急成長している。

現在ではブラジル、メキシコ、コロンビア、アルゼンチンに拠点を広げ、顧客数は4000万人超と南米最大のネット銀行に成長した。米銀最大手のJPモルガン・チェースの顧客数が約6200万人なのと比べても、創業わずか10年弱のフィンテックの勢いがわかる。ベレスCEOは「中南米の人口の50%はいまだに銀行口座を持たない」と指摘し、同社の成長余地は大きいと強調する。

IPO前から企業価値は急拡大し、6月時点で300億ドルとブラジルで有数のユニコーン(企業価値が10億ドル以上の未上場企業)になっていた。大手ベンチャーキャピタル(VC)のセコイア・キャピタルやシンガポール政府投資公社(GIC)などが出資している。著名投資家ウォーレン・バフェット氏率いるバークシャー・ハザウェイも今年6月に5億ドル出資し、成長に弾みがついた。長期的に成長が見込める企業に投資するバークシャーのお墨付きを得てヌーバンクの将来性は明るくなった。

ヌーバンクはもともと年会費無料のクレジットカードの発行会社としてスタートした。個人向け融資や昨年買収したネット証券を通じて、証券売買も手がけ、品ぞろえを拡充している。バークシャーの出資により、ハイテクに強い人材獲得や海外展開を強化。すでにアマゾン・ドット・コムやグーグルなどから人材をスカウトした。

アンバンクトを狙って従来型の銀行に対抗するフィンテックを欧米ではチャレンジャーバンクと呼ぶ。その筆頭格がヌーバンクだ。米国でも金融規制当局や民主党議員が中心となって銀行の金融包摂向上を求める議論が活発となり、アンバンクトを狙ったスタートアップのビジネスも拡大している。国境を越えて事業を拡大するヌーバンクは米国のチャレンジャーバンクがお手本とする。

南米の従来型銀行は競争力維持のために支店閉鎖でコストを削減するなど、文字通りヌーバンクからの挑戦に直面している。もっとも、テクノロジーを導入するための資金力は大手銀の強みなだけに、ヌーバンクがIPO成功による勢いをどこまで持続できるかが焦点だ。世界のチャレンジャーバンクの試金石として、ヌーバンクの動向から目が離せない。

(ニューヨーク=伴百江)』

分散型金融11兆円市場に 当局が警戒、通貨の未来問う

分散型金融11兆円市場に 当局が警戒、通貨の未来問う
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB167T00W1A910C2000000/

『ブロックチェーン(分散型台帳)技術を使って、金融機関などを仲介しない金融サービスが急拡大し始めた。DeFi(分散型金融)と呼ぶ仕組みで、暗号資産(仮想通貨)売買や融資など市場規模は約1000億ドル(約11兆円)と1年で約5倍に急増した。資金洗浄の温床になりかねないと当局は警戒を強める。半面で、DeFiの膨張は中央集権型でコストのかかる既存の金融秩序に変革を迫るものともなる。

DeFiの柱は銀行を介さない融資だ。インターネット上の取引の場では仮想通貨チェーンリンクを年利0.1%で借りられる。日本の住宅ローンの変動金利(0.4%程度)よりも低い。DeFiは無人の取引システムに個人が仮想通貨を預けて、これを借り手が受け取る。

信用力のある金融機関が安全な取引を仲介する従来の金融は利用者が手数料を支払う。DeFiは低コストで利用者同士を直接つなぐ仕組みだ。

仮想通貨の上昇を見込んだ投機的な貸し借りが多い。将来的には相対取引で借り手が事業資金や住宅購入に充てることも想定される。DeFiの資産総額は980億ドルを超える。日米欧の預金取扱金融機関の現預金額(6800兆円弱)の0.1%程度だが、成長スピードは速い。
モノやサービスが行き来するデジタル時代に取り残されてきたのが、国家が権力を独占する通貨だ。20カ国・地域(G20)平均の送金コストは約10%。海外送金には数日かかることもある。DeFiは365日24時間即時に取引が成立する。

2008年に通貨システムへの挑戦として仮想通貨ビットコインが登場したが、各国で登録業者での取引が義務付けられるようになった。DeFiは規制の網から逃れ、あらゆる仮想通貨を使って保険や融資などを手がけられる。米決済大手スクエアのドーシー最高経営責任者(CEO)は「グローバル通貨があればすべての人にサービスを提供できる」と語る。7月にはDeFiの新部門の設立を決めた。

理想と現実の差は大きい。DeFiでは不正取引が横行する。21年8月には取引の場を提供するポリ・ネットワークで700億円弱の仮想通貨が流出した。本人確認がずさんで、麻薬カルテルなど資金洗浄の温床になっている。

国際組織FATF(金融活動作業部会)などは監視強化に動くものの、管理主体があいまいで規制の網がかけられない。DeFi開発の非営利財団「メイカーダオ」は7月に創業者が解散を発表した。開発主体はいないのにプロジェクトは作動し続ける。

問題も多い半面、DeFiの台頭は既存の金融秩序に変革を迫ることにもなる。米フェイスブックが19年に提唱したデジタル通貨「リブラ(現ディエム)」は、主要国の反対で計画の修正を迫られた。一方で、あわてた各国中銀がデジタル化にカジを切る契機になった。

国際決済銀行(BIS)は主要7中銀とともに相互に接続可能な中央銀行デジタル通貨(CBDC)のあり方を検討する。中国やタイなど新興国同士をつなぐ決済網の実験も始まった。CBDCが実用化すれば、低コスト・短時間での送金ができる。

金融システムの脆弱性を高める無秩序なDeFiの膨張は、コストの高い中央集権型の金融からの脱却の呼び水となる可能性がある。(フィンテックエディター 関口慶太)

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白井さゆり
慶應義塾大学総合政策学部 教授
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ひとこと解説

仮想通貨を使った分散型金融は、スマートコントラクトで自動運営される新しい金融サービスで、ブロックチェーンをつかった金融イノベーションは目を見張るものがある。

もともと仮想通貨の開発には世界金融危機による既存の金融システムの限界を認識し、そうした金融システムを弱者・低所得者よりも優先的に救済する国家体制に不信感をもった人々が開発に携わったと言われているが、DeFiはまさに政府や中央銀行に依存しないで、世界のだれでも利用できる。

しかし個人を保護する組織がいないためリスクが大きく、各国・地域の規制当局も頭を抱えているが、それでもこの動きは止められず今後も新しいイノベーションは起きていくだろう。

2021年10月18日 7:38

野崎浩成のアバター
野崎浩成
東洋大学 国際学部教授
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分析・考察

いかなる市場も参加者にとって「規制」は嫌なもので、中央集権型統治システムから逃れるDeFi(分散型金融)は、効率性ばかりでなく、規制からの自由を追求する傾向は止められません。

このため、マネーロンダリングや善意のユーザーを害する行為に対する規制そのものが無力化するのは、当然の帰結といえましょう。

一方、規制が機能する範囲内で、ブロックチェーンのDLT(分散型台帳技術)がもたらす効率性向上余地は大きく、昨今報道されているデジタル証券なども社会的コストを削減するなどの貢献が期待されます。

特定の技術に白黒の色を付けるのではなく、社会性に馴染むものから積極的に取り込む発想が大切だと思います。

2021年10月18日 7:39 (2021年10月18日 7:41更新)

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楠木建
一橋大学 教授
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分析・考察

現状では結局のところ暗号資産の値上がりに対する投機的動機(だけ)がDeFi拡張のドライバーになっています。

これまで銀行が果たしてきたような普通の意味での「金融」を担うものには程遠い。

2021年10月18日 7:32

大槻奈那のアバター
大槻奈那
マネックス証券 専門役員チーフ・アナリスト
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ひとこと解説

市場規模は拡大したものの、昨年のDefi勃興時に調べたユースケースも投機かP2P貸出程度で、殆ど広がっていません。大企業から信頼を得られず、協業が進まないのが主因と思います。

Defiの本領は、投機ではなく、仲介コストをなくしスマートコントラクトで様々な情報が載せられること。銀行口座を持たない人も使えますし、晴れた日のみ送金するなど様々な条件が組み込めます。

確かに、Defiのハッキングは昨年比2.7倍で、今年の暗号資産ハッキングの7割以上を占める等脆弱です(CipherTrace)が、現時点で「怪しいもの」と切り捨てるのではなく、長い目で見て、技術を生かす方法を模索すべきと思います。

2021年10月18日 8:41 』

米銀JPモルガン、AI導入を加速 テック予算1.3兆円

米銀JPモルガン、AI導入を加速 テック予算1.3兆円
ロリ・ビアCIOインタビュー
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN040FT0U1A900C2000000/

『米銀大手JPモルガン・チェースが人工知能(AI)分野への投資を加速している。消費者向け銀行サービスの不正行為検知に加え、法人向け業務にも導入場面は広がる。年間120億ドル(約1.3兆円)という巨額のテクノロジー関連予算が強みだ。日本経済新聞の取材に応じたロリ・ビア・グローバル最高情報責任者(CIO)はアジアを含む世界で技術者の採用を強化する考えを示した。
社内エンジニア5.2万人「さらに増える」

JPモルガンはAIの導入を全社で進めている。例えば不正行為の発見だ。AIが不正のシグナルを察知すると、コンプライアンス担当に通告するシステムを導入した。主にコンシューマー(消費者)向け銀行事業で年間1億5000万ドル相当の不正を検知した。新型コロナウイルス危機下の与信管理にもAIを活用した。

投資家向けにアナリストやエコノミストのリポートを配信するポータルサイト「JPモルガン・マーケッツ」では、AIを使って顧客の関心・興味に合わせた表示画面にカスタマイズする。ビアCIOは「株式部門の責任者と協力して、次世代の商品や機能を考えている」と明かす。

JPモルガンはAI導入を加速するため、クラウド上に「オムニAI」と呼ばれる開発基盤を整備した。データサイエンティストは機密性の高い銀行内部のデータをすばやく、安全に入手できるようになり、モデルの開発効率が上がった。オムニAIの構築には米グーグル出身の技術者がかかわった。

米銀は決済大手ペイパルなどフィンテック企業との競争に加え、グーグルやアップルなどハイテク大手の金融参入にも対応を迫られる。ビアCIOは自社の優位性について「情報の豊富さと密度」と強調する。

JPモルガンは決済や送金などで1日7兆ドルを動かす。米世帯の5割と取引関係があり、顧客がライフサイクルに合わせて、どのようにおカネを使うのか把握している。膨大な情報を分析し、競争力につなげる手段がAIというわけだ。

競争力強化に向けてテクノロジー関連支出も増やす。2021年12月期の予算は約120億ドル。20年の純営業収益の約10%に相当する。15年12月期(約90億ドル)に比べて3割多い。およそ半分は銀行経営に必要なIT(情報技術)経費で、残りをイノベーション促進に充てている。
JPモルガン・チェースのグローバル最高情報責任者、ロリ・ビア氏

研究開発の重点分野には、AIや機械学習のほか、ブロックチェーン(分散型台帳)技術を挙げる。5年前から本格的に投資を開始し、ブロックチェーン上で動くデジタル通貨「JPMコイン」を実用化にこぎつけた。国債などを担保に金融機関が短期資金をやりとりするレポ市場で使われ始めた。

技術革新を支えるのは約5万2000人の社内エンジニアだ。「人数は21年と22年にさらに増える」(ビアCIO)。バンカーなど非技術者向けの教育・学習プログラムも用意し、イノベーションが生まれやすい環境を整える。

技術変革拠点としてアジア重視

JPモルガンはテクノロジー開発拠点としてアジアを重視する。インドではムンバイなど3カ所にオフィスを持ち、シンガポールと中国・香港にも拠点を構える。地域別でみたエンジニア数はアジアが最大だ。米消費者向け銀行「チェース」のモバイルサービスはアジア拠点で開発した。

ビアCIOは「コンシューマー向けサービスなど銀行のコア事業をみると、(アジアは)はるかにデジタル化が進んでいる」と指摘する。イノベーションの動向をつかむため、アジアのフィンテック・エコシステム(生態系)を注視しているという。

東南アジアでは配車大手グラブなど新興ハイテク企業が、金融サービスを統合した「スーパーアプリ」を提供し、個人の電子財布(デジタルウォレット)として存在感を増している。米国でもペイパルやグーグルが「スーパーアプリ」構想を公表し、米銀と一部競合する可能性が出てきた。アジア発のイノベーションをどう取り込むのか。戦略の有無が銀行の競争力を左右する。
JPモルガンはシンガポール当局のプロジェクトに参画=ロイター

JPMコイン「中銀デジタル通貨と競合せず」

JPモルガンは米ドル連動のデジタル通貨「JPMコイン」を軸に、国際送金の仕組みを再構築しようとしている。法人顧客はブロックチェーン上で24時間365日、マネーを動かせる。国際送金に必要な情報を銀行間でやりとりするネットワーク「Liink(リンク)」と連動し、時間短縮が可能になった。Liinkには邦銀90行を含む約400行が参加を表明している。

世界の中央銀行は民間デジタル通貨の急速な広がりに警戒し、自ら中銀デジタル通貨(CBDC)の発行に乗り出したり、研究を進めたりしている。米連邦準備理事会(FRB)は発行の可能性とリスクをまとめた見解(ディスカッション・ペーパー)を公表する見通しだ。
ビアCIOは「CBDCを競合相手とみてない」と強調する。JPモルガンはシンガポール金融通貨庁(MAS、中銀に相当)主導の「プロジェクト・ウビン」で、シンガポール大手DBS銀行と組み、商業銀デジタル通貨を使った多通貨決済ネットワークを構築しようとしている。同計画は将来的なCBDCの利用も想定している。

(ニューヨーク=宮本岳則)

【関連記事】

・「デジタル通貨圏」主権揺るがす クーレBIS局長
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多様な観点からニュースを考える

※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。

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白井さゆり
慶應義塾大学総合政策学部 教授
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ひとこと解説

一般市民向けにCBDCを発行するとマイナス金利政策の効果を高めることが可能だが、民間発行のデジタル通貨と大きく異なる点は、安全性やプライバシーの確保やマネロンなど違法行為を助長しないように慎重にデザインが必要なことだ。

CBDCを発行して問題が発生すれば中央銀行の信用が傷つく恐れもある。

だが民間の暗号資産などが急増しており犯罪を助長して決済システムを不安定にする可能性も意識されてきており、そうした資産の発行・利用を禁止して中央銀行が責任をもってCBDCを発行すべきとの見方もある。

いずれにしてもCBDCの発行には中央銀行の知識と技術だけでは難しくテック企業および民間銀行との共同作業が必要だ。

2021年9月29日 7:32 (2021年9月29日 7:41更新) 』

PayPayなどの電子決済は普及するか?

PayPayなどの電子決済は普及するか? : 机上空間
http://blog.livedoor.jp/goldentail/archives/26436538.html

 ※ この「責任の所在」ということ、「最後に責任を負ってくれるのは、誰なのか」ということが、キー概念だと思う…。

 ※ 「安ければ、それでよし。」というわけじゃ無いんだ…。

 ※ 熱海の土石流も、ここが問題になってくるだろう…。

 ※ 「人災」の要素がある場合には、「激甚災害」指定は、ムリである…、という話しだしな…。

『日本のこの手のサービスでありがちなのですが、何かトラブルが発生した時に、クレジットカード以外の電子決済手段って、責任の所在がはっきりしていないのですね。クレジットカードの場合、規約によって、決済加盟店、クレジットカード会社の責任の分担が、はっきり決まっていて、カード利用者に対して補償も行われるので、世界中で決済サービスとして広まっています。

手数料の安さ、決済の手軽さを売りにしている電子決済サービスは、そこまでの費用を捻出できないので、全てうまく運用されている事を前提に決済されています。例えば、ハッキングされたり、何がしかの不正利用が行われた場合、どこが責任を持つのか、はっきりしていません。

その為、ローカルな国内で、そこそこのシェアを持ったとしても、国際的な広がりを持って利用されない運命にあるんですね。その上、日本では、官庁がデジタル決済に音頭をとったので、それとばかりに猫も杓子も飛びついて、規格が乱立しました。そして、セキュリティー管理が、ド素人かと思うくらい甘かったので、運用開始初日にハッキングされて、セブンペイなどは、早々にサービス停止に追い込まれました。

実際、日本はIT後進国です。ハードウェアではなく、利用技術で。例えば、ワクチン接種会場の予約システムや、混雑状況のリアルタイムの表示など他の国で当たり前にやっているサービスすら、トラブルで正常に動かなかったり、利用されていなかったりします。

一つには、最低の社会リソースを持つ人に合わせるという日本の文化も関係しています。つまり、スマホを持っていない人がいれば、その人に合わせるんですよね。その人が生きるために必死に、インフラの水準に追いつく必要が無いように仕組みを作ります。その為、全体が非効率になるわけです。

何かのサービスを始めるにあたって、IT部門の会社を作っても、トップがITド素人だったりします。経営のプロで、ゼネラリストでもあっても、技術的な問題や、基本的な常識で、とても交渉ができるレベルじゃないんですね。その為、簡単に誰でも利用できるに寄せて、セキュリティー上の常識を踏みにじったりします。末端は幹部の司令に逆らえないですから、まぁ無様なシステムが出来上がるわけです。その結果、当然のようにトラブルを起こし、信用を無くすと。

色々と電子決済については、日本の各社ともに頑張っていますが、結局は外資が本格的に参入してきたら、一瞬で粉砕されるような気がしています。それくらい、利用のしやすさ、システムの堅牢さ、各種サービスのリレーションと、利用者目線のサービスの質に差があります。一言で言うと不便なんです。』

給与デジタル払い、破綻時の早期保証など条件 厚労省案

https://www.nikkei.com/article/DGXZQODF2841U0Y1A120C2000000

 ※ 表面的には、連合(労組)vs.フィンテック協会の対立か…。

 ※ 対立している表面的な「価値」は、労働者の給与支払いの確実性(労働者の生活の保証)vs.支払い手段の利便性・効率性(銀行の牙城の取り崩し)か…。

 ※ そういう「対立」が、規制官庁・監督官庁の「規制方針」「規制内容」をめぐって激突し、自陣営に有利な方向へ持っていこうとして、取り合いになる…。

 ※ 特に菅内閣は、「デジタル化の促進」という「大看板」を掲げているんで、フィンテック勢にとっては、追い風だ…。

 ※ ここを突破すると、「銀行の牙城」を崩す道筋も見えてくるんで、「天王山」と見ているんだろう…。

 ※ 逆に、厚労省・政府としては、銀行口座の安全性vs.フィンテックの利便性・効率性を天秤にかけることになる…。

 ※ CBDCのところでも問題になるが、「銀行口座」というものは、単に「自分のお金の出し入れ」というだけではない…。「本人確認業務の肩代わり」「一国の金融政策の末端を担う(そういう意味では、金融行政の末端組織)」などの機能も、果たしている…。

 ※ それだから、どうしても「銀行口座」は、高コストとなる(その代わり、政策的にいろいろ優遇されている)…。

 ※ だから、厚労省の背後には、金融庁や財務省がいて、陰に陽に「いろいろ吹き込んでいる」ハズだ…。

 ※ そういう中での、「舵取り」「すり合わせ」となる…。

『厚生労働省は28日に労使を交えた審議会を開き、会社員への給与のデジタル払いを取り扱える事業者の条件として、破綻時に早期に保証する仕組みの整備などを求める案を示した。柔軟に換金できることや、厳格な本人確認の体制なども条件とする。連合は審議会で「資金移動業者が銀行と同等の安全性があるか懸念がある」と主張し、慎重な姿勢を鮮明にした。

政府は給与のデジタル払いについて、2020年7月に閣議決定した成長戦略…

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政府は給与のデジタル払いについて、2020年7月に閣議決定した成長戦略の文書に「20年度できるだけ早期の制度化をはかる」と明記した。フィンテックなどの新しいテクノロジーの競争環境を公平にし、金融サービスの利便性を高める狙いがある。21年3月末までに詳細な制度設計を終える必要があり、制度を所管する厚労省の審議会の議論が焦点になる。

厚労省が示した給与の安全性を守るための案では資金移動業者に対して①資金保全②不正引き出しへの対応③換金性④厳格な本人確認の体制――を求めることを掲げた。基準を満たさない業者にはデジタルでの給与支払いを認めない。あくまで利用者が銀行口座かデジタル払いかを選ぶ形にし、希望する企業と労働者が利用するものだと厚労省は説明した。

ソフトバンク系の「PayPay(ペイペイ)」やLINEの「LINEペイ」などのサービスの資金移動業者から給与を受け取る場合、支払いが遅れる懸念があるのは破綻した場合だ。そのため、事業者が保証会社や保険会社と契約することで、仮に破綻しても数日以内で支払いができるようにする「保険」の仕組みの導入を条件とする方向だ。

連合の代表は28日の審議会で「資金移動業者は事業体の健全性に疑問がある。デジタル技術が悪用され、思いも寄らぬ事故がおこる」と話し、導入に慎重な姿勢を示した。一方、フィンテック協会は28日に記者会見を開き、感染症予防のために非接触で給与を受け取れる利点や、外国人労働者から要望が出ていることなどを挙げて「社会的な意義が高まっている」と強調した。

公正取引委員会がQRコード決済を利用している人を対象に実施した調査では、仮にデジタルマネーの給与支払いが可能になった場合、4割の人が利用を検討すると回答した。銀行口座とQRコード決済の間でお金のやり取りをする場合、特定の銀行でしか使えないものも多い。直接、給与がQRコードの決済アプリに振り込まれるようになれば利便性は増す。

QRコード決済を月1回は利用する人は20年9月時点で3000万人を超え、2年前の10倍程度に膨らんだ。デジタルマネーは、企業と雇用契約のないフリーランスらへの報酬の支払いではすでに広がっている。会社員の給与の支払いだけ、安全基準を過度に厳しくすると、利便性を下げてしまう可能性もある。

アント上場「法に従えば結果」 中国人民銀・易総裁

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM278950X20C21A1000000

『【上海=張勇祥】中国人民銀行(中央銀行)の易綱総裁は26日、延期になっているアリババ集団傘下の金融会社であるアント・グループの新規株式公開(IPO)について「法的手続きに従えば、結果に表れるだろう」との見解を示した。

世界経済フォーラム(WEF)主催のオンライン会合「ダボス・アジェンダ」で述べた。アントは2020年11月の上場を目指したが、当局の監督方針の変更を理由に延期を余儀なくされた。易氏の発言はIPO手続きの再開に含みを持たせる内容だが、一方で「消費者のプライバシー(保護)などでアントは問題がある」と指摘している。

「独占的な地位の乱用を避けることは重要だ」とも話し、早期の上場は見込みにくいとの考えをにじませた。中国のネット上ではIPOに前向きな論調の報道は相次ぎ削除の対象になっている。

英フィナンシャル・タイムズ(FT)は26日、アントが生体認証を手掛ける米アイベリファイの売却を計画していると報じた。本業回帰を求める中国当局の意向に合致しているとの見方から、27日の香港市場ではアリババ株が3%近く上昇した。

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給与デジタル払い21年春解禁、銀行口座介さず 政府方針

給与デジタル払い21年春解禁、銀行口座介さず 政府方針
【イブニングスクープ】
https://www.nikkei.com/article/DGXZQODF266MB0W1A120C2000000

 ※ 日本の場合、銀行口座を開設している人が、多数派だから、その流れは大きくは変わらんだろう…。

 ※ 外国人労働者(技能実習生、特に農林水産業分野での(ここは、票田だ)…。あとは、介護職か…)の大量導入を、睨んでの話しでもあるんだろう…。

 ※ 支持基盤(票田)から、「ご要望」が出たくさいな…。

 ※ 趨勢は、「老いていくアジア」だから、「争奪戦」になっている…。

 ※ そこを、少しでも有利に戦えるように…、という話しがあるような気がするな…。

『政府は今春に給与のデジタル払いを解禁する。企業は銀行口座を介さずに従業員のスマートフォンの決済アプリなどに振り込めるようになる。利用者は銀行からお金を引き出す手間がなくなる。デジタル払いが広がると、給与振り込みの口座を起点に預金を集める従来の銀行のビジネスモデルに影響をもたらす可能性もある。

日常の買い物ではQRコードなどによるキャッシュレス決済が広く普及している。サービスは金融庁に登録する資金移…

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政府は今春に給与のデジタル払いを解禁する。企業は銀行口座を介さずに従業員のスマートフォンの決済アプリなどに振り込めるようになる。利用者は銀行からお金を引き出す手間がなくなる。デジタル払いが広がると、給与振り込みの口座を起点に預金を集める従来の銀行のビジネスモデルに影響をもたらす可能性もある。

日常の買い物ではQRコードなどによるキャッシュレス決済が広く普及している。サービスは金融庁に登録する資金移動業者が担っている。給与については労働基準法が労働者保護の観点から遅れなどがないよう「通貨で直接、労働者に全額払うこと」を原則とし、例外的に銀行振り込みを認めてきた。免許制の銀行に比べ安全網が整っていない資金移動業者は対象外だった。

海外では銀行口座を介さない給与支払いの受け皿としてプリペイドカードの「ペイロールカード」が広がる。米調査会社によると、21年に550億ドル(約5兆7000億円)の給与がペイロールカードに振り込まれ、10年前と比べて2倍超になる見通しだ。

かねて日本でもデジタル払いの解禁を検討してきたが、安全性への懸念を訴える声があり、先送りが続いていた。給与は生活資金の土台になるため、資金移動業者が破綻した場合などの影響が大きく、連合などが反対してきた。

政府は安全基準をみたした企業に限ることで理解を得る方針だ。3月末にも労基法に基づく省令を改正し、資金移動業者も例外的に認める対象に加える。個人情報保護や資金保全などでの基準を定め、安全性を担保できる場合に限って解禁する。事業者には保証機関や保険会社と契約し、仮に破綻しても労働者への支払いが遅れないようにする仕組みの構築を求める。

本人確認の体制が十分な企業かどうかも基準とする。パスワードだけでなく利用者の携帯電話に確認コードを送るといった多要素認証の仕組みを導入する必要がある。月に1度は無料で現金化できるようにするといった条件も検討している。

給与の支払いが資金移動業者にうつれば、銀行のビジネスモデルが揺らぐとの見方がある。たとえば新卒社員は入社時に銀行口座を作り、そのまま利用し続ける人も少なくない。銀行口座を作らず、デジタルマネー支払いを選ぶ人が増えれば、銀行の顧客基盤が縮小する。「LINEペイ」や「楽天ペイ」といったスマホ決済業者にとっては、ビジネス拡大のチャンスが広がる可能性がある。

キャッシュレス推進協議会の調査によると、QRコードを月1回は利用したことがある人は20年9月に3000万人を超えた。18年12月の300万人超から10倍に達する。ポイントの還元の恩恵や支払いの簡便さを理由に、消費者を引き寄せている。新型コロナウイルス禍で「非接触」のキャッシュレス決済のニーズも高まっている。

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野崎浩成
東洋大学 国際学部教授
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ひとこと解説 銀行口座が一般的でないアフリカの多くの国では、給与がデジタルウォレットに入金される仕組みが普通になっています。
日本は銀行口座の利便性があるので、どこまで普及するか疑問ではあります。
2021年1月26日 19:08いいね
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小平龍四郎
日本経済新聞社 編集委員
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ひとこと解説 会社がサラリーマンの給料を指定の銀行口座に振り込む「給振り」。銀行が個人マネーの受け皿の役割を担い、家計において大きな存在感を誇ることができた要因の1つは、この制度にあると思っています。証券会社がどんなに力をつけても超えられなかった銀行の壁も「給振り」でした。スマホアプリなどへの給与のデジタル払いが実現すれば、「銀行は本当に信頼されているのか」が試されることになります。複数の銀行口座に給料を振り込んでもらっているサラリーマンも少なくないと思います。いきなり銀行とのつながりを全て絶つことに抵抗はあっても、今後は1番信頼できる一行に絞って「第2振込先はアプリ」と考える人も出てくることでしょう。
2021年1月26日 18:32 (2021年1月26日 19:54更新)
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高井宏章
日本経済新聞社 編集委員
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ひとこと解説 この施策がどれだけデジタルマネーの普及を後押しできるかは、インセンティブの設計がカギになると思います。
デジタルマネーの運営事業者が、給与振り込み先として選んでくれた個人へポイントを付与したり、システムを導入する企業へのサポートしたりといった形でどれだけお金の流れを誘導できるか。

日本は銀行口座の開設が比較的容易です。スマホが事実上の決済手段となっている新興国や、口座を持たない移民労働者や出稼ぎ労働者が多い国と比べると、銀行の優位はなお大きいでしょう。
2021年1月26日 19:03いいね
31

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村山恵一
日本経済新聞社 本社コメンテーター
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別の視点 「働き方」の多様化を促す効果を秘めた動きのように感じます。副業解禁の流れともあいまって「職」「就業機会」の姿はバラエティーが広がっています。報酬の支払われ方がデジタルになることで、個人がスキルや時間をさらに有効活用することにつながるかもしれません。もちろん安全面の備えが十分なされることが前提です。
2021年1月26日 18:43いいね
28

デジタル人民元に透ける中国政府の思惑

デジタル人民元に透ける中国政府の思惑
FTグローバル・チャイナ・エディター ジェームズ・キング
https://www.nikkei.com/article/DGXZQODZ058MI0V00C21A1000000

 ※ なるほど、鋭い視点だ…。

 ※ 案外、この見方が正鵠かもしれんな…。

 ※ 中国国内市場に限っては、「スマホ決済」だろうが何だろうが、「デジタル人民元」で100%コントロールすることができるという考えか…。上位の階層の「人民元」そのものをコントロールするわけだからな…。

 ※ アリババのジャック・マーが姿を見せていないことも、この文脈から理解可能なのかもしれんな…。

『中国に古くから伝わる「兵法三十六計」に、敵に勝つ手段の1つとして「借刀殺人」という手法がある。自分の目的を達成するため他の人の力を利用するという策略だ。

中国政府が計画しているデジタル人民元の実用化は、この格好の事例だ。中国共産党は強力になった民間企業への支配を再び利かせる基盤づくりに、技術的進歩を「借用」しようとしているのだ。

デジタル人民元は既に中国の複数の都市で試験導入されており、2022年…

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・デジタル人民元は既に中国の複数の都市で試験導入されており、2022年の北京冬季五輪開催前に正式に実用化される予定だ。目的はいくつかある。最も明確なのは、世界で2番目の経済大国において完全なデジタル決済システムを先導することだ。欧州中央銀行(ECB)のラガルド総裁は、デジタル金融の未来に向けた準備で中国は他の大国をリードしていると述べた。

・デジタル人民元にはアリババ集団の「支付宝(アリペイ)」と騰訊控股(テンセント)の「微信支付(ウィーチャットペイ)」を服従させる潜在力もある。両サービスへの脅威は明らかだ。デジタル人民元はアリペイやウィーチャットペイの運用基盤からは独立しており、銀行に口座を作ることで利用できる。

・中国金融業界のある幹部は「デジタル人民元はアリペイとウィーチャットペイにとって明確な競合だ」と話す。「中国政府はデジタル人民元を行政の力を高めるための道具とみており、テクノロジー企業とこの力を共有することを望んでいない」

・デジタル人民元は政府による監視能力の強化ももたらす。現在、中国の電子取引データの多くはアリババやテンセントが握っている。政府によるデジタル通貨が普及すれば、少なくとも理論的には、中央銀行である中国人民銀行が豊富な商業データを利用できるようになる。悪徳行為の取り締まりが進むほか、機敏な金融政策につながる可能性もある。

・リアルタイムの監視能力は重大な欠点にもなり得る。デジタル人民元は国際決済における米ドルの覇権を崩し得るという中国の一部のアナリストの主張は大げさだろう。中国がいずれ貿易相手国とデジタル人民元で取引する可能性はある一方、データの取り扱いに対する懸念がデジタル人民元の普及を妨げるということもありそうだ。

・米国やその他の西側諸国はプライバシーの問題を理由に、高速通信規格「5G」で華為技術(ファーウェイ)製品の採用に消極的な態度をとっている。自国経済のリアルタイム取引を中国の中央銀行に把握されるデジタル通貨を受け入れることに対して、5Gと同様に敏感になる可能性が高いとアナリストは指摘する。

・その観点ではデジタル人民元の展開は、中国と西側諸国の溝を深めることになるかもしれない。利用者のプライバシーは、デジタルドルとデジタルユーロの設計で重要な考慮すべき事項だが、現段階では今後の保護規定ははっきりしていない。

ジェームズ・キング氏
James Kynge 中国を中心にアジア情勢を25年以上にわたり取材するFTのグローバル・チャイナ・エディター。2016年に英財団が選ぶ金融分野のジャーナリスト・オブ・ザ・イヤーに。06年出版の「China Shakes the World」は19カ国語に翻訳された。香港駐在。
日経と英FTはアジアのテクノロジー情報に特化したニューズレター「#techAsia」を発行しています(日本語版の登録はこちらhttps://s.nikkei.com/techAsia)。新聞ではアジアBiz面向けに書き下ろしたコラムを月1回掲載します。

アリババ包囲網の深謀

アリババ包囲網の深謀
中国、デジタル人民元普及へ本腰 決済の仲介役は不要に?
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO67910520W1A100C2EA1000

 ※ 昨日疲れて、貼れんかったものを貼っておく…。

 ※ この手の「デジタル通貨(デジタル人民元もその一つ)」に関する記事を読む場合、属する「階層」が異なる話しが、ごちゃごちゃになるんで、注意が必要だ…。

 ※ 1、まず「通貨」というものの話しの階層がある。
     定義は知らんが、その「機能」は押さえておくべきだ。
    (1)価値の確定
    (2)価値の運搬
    (3)価値の貯蔵
    (4)そして、これは経済の教科書には、あまり書かれていないが、実際には最も重要だ…。
     価値の「創造」

   2、次に、「デジタル通貨」というものの話しの階層がある。
    大きく分けて、2種類ある。
    (1)トークン型
    (2)口座型

   3、「ブロックチェーン」という話しの階層は、「デジタル通貨」のさらに上層の、「デジタル資産(ビットコイン、リブラなんか)」一般に関する、その「資産性」を支える、「耐改ざん性」に関する話しの階層だ…。
 「分散台帳方式だから、改ざんするのは、現実には「不可能」だ。」とか、論ずるわけだな…。

『中国政府がかつて保護していた巨大IT(情報技術)企業のアリババ集団や騰訊控股(テンセント)の事業拡大阻止に動き始めた。金融業にも手を伸ばし、既存の金融システムを脅かし出したからだ。こうしたなかでデジタル人民元がIT企業から決済事業を奪い、拡大に歯止めをかけるとの見方が浮上する。

中国金融当局は昨年12月26日、アリババ傘下の金融会社アント・グループを聴取し、規則に反した信用貸し付けや保険、資産運用…

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・中国金融当局は昨年12月26日、アリババ傘下の金融会社アント・グループを聴取し、規則に反した信用貸し付けや保険、資産運用などの金融業務を見直すよう求めた。アントはアリババのキャッシュレス決済サービスのアリペイを運営する。

「反独占を強化」

・これに先立ち、中国共産党・政府は18日に閉幕した中央経済工作会議で「独占に強く反対し、無秩序な資本拡張を防ぐ」との方針を決めていた。11月にはアントの株式上場を延期させている。

・アリババ創業者の馬雲(ジャック・マー)氏は10月、上海で開かれた金融会合で、規制強化の動きについて「昨日の手法で未来を管理できない」と反発していた。アリババはアリペイを使った消費者ローンに乗り出しており、人工知能(AI)による与信審査も手がける。中国政府はアントの上場延期でアリババをけん制し、その間にIT企業の膨張を抑える策を導入する狙いとみられる。

・当初、中国政府はアリババが始めたキャッシュレス決済を流通や金融を革新するテクノロジーとして保護し、都市部では現金が使われなくなるほどに浸透。電子決済のシェアはアリババのアリペイが55%、テンセントのウィーチャットペイが39%と2社の寡占状況を生んだ。新興企業や消費者も借り入れを銀行ではなく、IT企業の金融事業に頼るようになった。

・なかでも銀行の脅威となったのがアリババの投資ファンドだ。アリペイ型の電子決済では銀行口座などのお金をアリペイに移して使う。アリババは利用者が使い切れなかった資金を銀行に戻さずに、アリペイから投資できる「余額宝」というMMF(マネー・マーケット・ファンド)をつくった。解約はスマホで簡単にでき、戻された資金は再び支払いに使える。銀行預金より高い利回りで提供したため、アリペイの利用者は銀行口座から余額宝に資金を移した。

・国有銀行などを脅かし始めると、中国政府はIT企業の金融事業に対して徐々に規制を強め、急成長していたネットを媒介とする小口融資に網をかけた。銀行と同じように準備預金を中国人民銀行(中央銀行)へ積むことを義務付けた。

銀行・証券危うく

・金融当局の力の及ばないところでIT企業の金融事業が拡大すれば金融政策は効力を失い、既存の銀行・証券業も危うくなる。中国証券監督管理委員会の姚前・科技監管局長は12月に入り、IT企業に対し「デジタルサービス税の課税を検討すべきだ」と発言している。

・だがIT企業の力を一気にそぐことはリスクが大きい。スマホ決済は庶民の生活インフラになっており、過度に規制すれば小売業やネット通販など実体経済が落ち込む。中国政府がこの状況を変えるゲームチェンジャーとして期待するのがデジタル人民元だ。

・姚前氏は中国人民銀行デジタル通貨研究所長の時代に「デジタル通貨の決済では仲介機能に依存しなくとも済む」と主張していた。現段階の構想では、デジタル人民元の利用者は預金口座を持つ銀行にデジタル人民元口座(デジタルウォレット)を設定し、必要な額を換えて使う。スマホに入れたウォレットからデジタル人民元を相手側に直接支払うことができる。ネットを使わずにスマホを相手のスマホに近づける方法でも支払いが可能だ。アリペイのような仲介役の第三者の決済機関にお金を移す必要はない。これなら預金は銀行にとどまる。

・中国がデジタル人民元を導入すれば、直ちにアリペイとウィーチャットペイの牙城を崩すには至らないにしても、2社の寡占状況は変わるかもしれない。通貨を巡る政府と企業の攻防は世界各地で激しさを増している。アリババ帝国にも逆風が吹き始めている。

(編集委員 村山宏)

中国「デジタル人民元」構想について

野村資本市場研究所
北京事務所首席代表
関根栄一
2019年12月3日
https://www.fsa.go.jp/singi/chuukinken/siryou/1203nomuracap2.pdf

トランプ氏、アリペイなど中国アプリ禁止 大統領令署名

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN060LB0W1A100C2000000

『【ワシントン=鳳山太成】トランプ米大統領は5日、中国アリババ集団傘下の金融会社アント・グループが提供する決済アプリ「アリペイ」など中国アプリに関わる取引を米国内で禁じる大統領令に署名した。2月の実施を目指すとしているが、バイデン政権への交代で実現性は不透明だ。

対象はアリペイのほか、騰訊控股…

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・対象はアリペイのほか、騰訊控股(テンセント)が提供する決済サービスなど計8つのアプリやソフトウエア。米国企業はアプリなどを提供する中国企業との取引を禁じられる。45日後に発効するとしている。

・アプリは利用者の情報を収集しており、利用を認めれば米国人の個人情報が流出し、米国の安全保障の脅威になるためだとしている。

中国当局、アント投資先の撤退要求検討か ロイター報道

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM311U00R31C20A2000000

『【上海=松田直樹】ロイター通信は31日、アリババ集団傘下の金融会社アント・グループに対して、中国当局が一部の投資案件から撤退を求めるか検討を始めたと報じた。アントの数十社に上る投資案件が対象。当局は市場での不公平な競争環境を解消するため、調査を始めたという。

ロイター通信によると、当局は現時点ではアント側に具体的な指導はしてないという。アントを巡っては2020年12月26日に「企業統治が不健全」などの問題点を金融当局が指摘していた。アントは決済という本業回帰のため、金融持ち株会社設立などの改革案を早期に作成することが求められている。

アントの投資案件にはフィンテック企業のほか、中国のシェア自転車大手など幅広い分野の企業が含まれる。海外ではインドの決済大手などにも出資する。当局はこうした案件の見直しを求めるか検討しているとみられる。

アントは当局の監督方針の変更を理由に、20年11月に予定していた大型上場の延期を余儀なくされた。アリババに対しても当局は独占禁止法違反で調査を進めている。

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GPIF元幹部の水野氏、国連特使に任命

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN304Q20Q0A231C2000000

『【ニューヨーク=吉田圭織】国連のグテレス事務総長は30日、水野弘道氏を革新的金融と持続可能な投資に関する特使に任命した。水野氏は長年の官民両方の経験を生かし、国連が掲げる持続可能な開発目標(SDGs)の達成に向けた投資を促す。2021年1月2日に就任する予定だ。

水野氏は世界最大規模の機関投資家である年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)で2015年1月から20年3月末まで最高投資責任者(CI…

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・水野氏は世界最大規模の機関投資家である年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)で2015年1月から20年3月末まで最高投資責任者(CIO)を務めていた。持続可能性などを重視した「ESG投資」を積極的に推進した実績で知られている。

・現在はESG運用を促す国連の責任投資原則(PRI)協会の理事を務め、今年4月には米電気自動車メーカー、テスラの社外取締役会と監査委員会にも加わった。

・同氏はこれまでも多数の気候変動関連の取り組みに参加してきた。気候変動リスクに対する金融機関の役割を提言する「気候金融賢人イニシアチブ」(CFLI)の創設メンバーであり、持続可能な開発のためのグローバル投資家(GISD)連合にも参加している。

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