「食糧を武器に利用」 米国務長官、安保理で対ロ非難

「食糧を武器に利用」 米国務長官、安保理で対ロ非難
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN19E4F0Z10C22A5000000/

『【ニューヨーク=白岩ひおな】国連安全保障理事会は19日、紛争と食糧安全保障をめぐる公開会合を開いた。演説したブリンケン米国務長官はウクライナ侵攻で同国からの穀物輸出が滞っていることに触れ「ロシアは食糧を武器として利用することで、ウクライナ人の鋭気をくじけると考えているようだ」と非難した。

ウクライナの穀物輸出再開に向け、港湾の解放と安全な運搬ルートの確保を求めた。ロシア軍が「数百万人のウクライナ人と、ウクライナの輸出に依存する世界の何百万人もの人々への食糧供給を人質に取っている」と指摘した。ロシアとウクライナは世界の小麦供給の3分の1近くを占め、侵攻に伴い穀物や肥料の価格が高騰している。

グテレス国連事務総長は「ウクライナが黒海を通じて食糧を輸出し、ロシアの食糧と肥料を制限なく市場に供給するための包括交渉を探っている」と述べた。「ウクライナとロシアの食糧や肥料を世界の食糧安全保障に再統合する必要がある」と訴えた。

一方、ロシアのネベンジャ国連大使は世界的な食糧危機の原因がロシアにあるとの指摘について「全くの誤りだ」と反論した。ロシア軍は船舶のための安全な航路を開こうとしたと主張した上で「西側の制裁がロシアの食糧と肥料輸出を冷え込ませている」とも述べた。

小麦生産で世界2位のインドは国内価格の上昇で輸出の一時停止を決めた。同国のムラリーダラン外務担当閣外相は会合で「食糧価格が不当に上昇している。買い占めや投機は明らかで、放置するわけにはいかない」と述べ、輸出停止の判断を擁護した。「世界市場の突然の変化に脆弱な発展途上国には、十分な緩和策を保証する」とも述べた。

一方、パキスタンのブット外相は19日に国連本部で開いた記者会見で「こうした(食糧輸出の)制限措置は、多国間枠組みを通じて思いとどまらせていくことができる」との考えを示した。』

米、途上国に食糧追加支援 国務長官「侵攻で危機悪化」

米、途上国に食糧追加支援 国務長官「侵攻で危機悪化」
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN190070Z10C22A5000000/

『【ニューヨーク=白岩ひおな】ブリンケン米国務長官は18日にニューヨークの国連本部で開いた食糧安全保障に関する会合で、新興・途上国への食糧支援に追加で2億1500万ドル(約275億円)を投じると表明した。「プーチン大統領の選んだ戦争が危機を悪化させた」と述べ、ウクライナ侵攻に伴う穀物価格高騰に対する協力を各国に求めた。

ロシアによるウクライナ侵攻以降、米国は穀物価格高騰の影響を受ける各国への食糧支援にこれまで23億ドル超を投じている。ブリンケン氏は「米議会が人道支援と食糧安全保障に向けた約55億ドルの追加支出をまもなく承認すると期待している」とも述べた。米国の肥料生産の強化へ5億ドルの拠出も予定する。

「穀物や肥料を大量に備蓄する国や資金力のある国は迅速に手を打つべきだ」と呼びかけた。有数の小麦生産国であるウクライナには「推定2200万トンの穀物が眠っている」と指摘した上で「陸路や海路で出荷できるよう、各国政府と国際機関が回廊の設置をロシアに強制すべきだ」とも述べた。

ロシアとウクライナは世界の小麦供給の3分の1を担っており、ウクライナ侵攻に伴い穀物価格や肥料価格が高騰している。小麦生産で世界2位のインドが国内価格の上昇で輸出の一時停止を決めたことで、価格高騰に拍車がかかる恐れもある。

グテレス国連事務総長は「輸出を制限してはならず、余剰分は最も必要とする人々に提供すべきだ」とクギを刺した。「ウクライナでの戦争で数千万人が食糧難に陥り、飢饉(ききん)など何年も続く危機に陥る可能性がある」と警告した。価格高騰がコメなど他の食品にも及び「何十億人もの人々に影響を与えうる」とも述べた。

19日には米国が5月の議長を務める安全保障理事会の会合を開き、食糧安全保障への影響と対応を議論する。ブリンケン氏は会合後にグテレス氏と会談し、ウクライナや周辺地域での人道支援などについて協議する。』

小麦価格急騰 専門家「インド、輸入国に転じる可能性」

小麦価格急騰 専門家「インド、輸入国に転じる可能性」
専門家の見方
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN16D2V0W2A510C2000000/

『週明け16日のシカゴ市場で小麦の国際価格は急伸し、今年3月につけた過去最高値に迫った。ロシアのウクライナ侵攻により両国の輸出が大きく減るなか、インド政府が14日に国内供給を優先する輸出停止を発表し、供給不足の深刻化が警戒された。米農務省によると世界の期末在庫は6年ぶりの低水準にある。シカゴの穀物調査会社アグリソースのダン・バッシ社長に今後の見通しを聞いた。

シカゴの穀物調査会社アグリソースのダン・バッシ社長

――インドの輸出停止は世界的な品薄に拍車をかけるとみられます。

インドの輸出停止の影響は甚大だ。ロシアのウクライナ侵攻により世界輸出の3割を占めた両国からの供給が滞るなか、インドは不足分を補う「つなぎ」の役割を果たす。輸出停止は我々を食料危機の入り口へと追い込む。

今回の輸出停止については食料安全保障を考慮し必要と認めた場合の輸出は許可するとしているが、世界の需給の現状は逼迫した状況にある。インドは熱波に見舞われており、減産が深刻化すれば年間800万トンの輸出国から300万~500万トンの輸入国に転じる可能性もある。

――米国や欧州産地の干ばつも警戒されています。

注目しているのはフランスなど欧州だ。向こう3~4週間に生産を左右する重要な生育時期を迎えるが、産地では乾燥した状態が続いている。雨が降らなければ減産に見舞われ、供給不足に拍車をかける。

一方で需要の低下は見込めない。考えてみてほしい。例えば、パン1個に含まれる小麦の原料費は8セントにすぎない。小麦価格の上昇がパンの買い渋りにつながるとは思えない。食品会社の購入担当者も原料の手当てが先決であり、価格はどうあれ買うしかないだろう。

――今後の価格見通しはどうでしょう。

小麦価格は未踏の領域にある。現物価格はすでに過去最高値をつけており、先物も時間の問題だ。どこまで上がるか予想はつかないが、ウクライナ情勢が長引いており、供給不足の解消には数年かかる。高値は数年続くだろう。

(聞き手はシカゴ=野毛洋子)

多様な観点からニュースを考える

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永浜利広のアバター
永浜利広
第一生命経済研究所 首席エコノミスト
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別の視点

日本の小麦輸入は政府によって一元的に行われ、政府が決めた売り渡し価格で国内メーカーに売り渡されます。

規定に基づいて、2022年4月の小麦売り渡し価格は17%程度の上昇となりましたが、仮に足元の小麦先物価格とドル円レートが横ばいで推移すると想定すれば、今年10月の価格改定時にはさらに4割以上の価格上昇となる可能性があります。

これは、直近ボトムの2020年度後半対比2倍以上の売渡価格になることを意味します。
このため、10月の価格改定時にどの程度政府が負担軽減に介入するかに注目でしょう。

2022年5月17日 8:16 』

小麦生産大国インドが輸出停止 国内供給優先で

小麦生産大国インドが輸出停止 国内供給優先で
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB152PM0V10C22A5000000/

『【ニューデリー=馬場燃】世界有数の小麦生産大国のインドが輸出の一時停止を決めた。インド政府は14日、小麦輸出停止について「国内の食料価格を抑制し、インドの食料安全保障を強める措置にあたる」との声明を出した。ロシアのウクライナ侵攻によって最高値圏で推移している小麦の国際価格への影響が懸念される。

米農務省の2022~23年度の推計によるとインドの小麦生産量は1億959万トン。中国の1億3695万トンに次ぐ水準で、世界全体の14%を占める。輸出量も815万トンと世界の輸出総量の4%に及び、ロシア(17%)、ウクライナ(10%)などに続く輸出大国の一角だ。

これまでインドの小麦はインド国内やスリランカなどの近隣国向けの需要が大半を占めていた。ロシアのウクライナ侵攻による供給不安を踏まえ、3月以降にアフリカ諸国やトルコなどへの輸出拡大も検討していた。

小麦相場の国際指標となる米シカゴ商品取引所の先物価格(中心限月)は12日に一時1ブッシェル11.83ドルと前日比で6%上昇、3月につけた最高値に接近した。インド政府によると、インドの小麦など穀物関連価格は4月に前年同月比で約6%跳ね上がった。

インドは3月以降に熱波が到来しており、足元で記録的な暑さに見舞われている。インドメディアによると、4月の平均最高気温はセ氏35.3度で歴史的な高さだった。5月に入ってもインド各地で気温は40度を超える日が多く、小麦生産への悪影響が懸念されている。

主要7カ国(G7)は14日までドイツ・シュツットガルトで開いた農相会合で、インドの小麦輸出停止に関して「各国が輸出制限や市場を閉鎖すると、危機をさらに悪化させる」と非難した。

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世界の小麦減産、ウクライナ情勢響く 米農務省見通し

世界の小麦減産、ウクライナ情勢響く 米農務省見通し
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN12EL80S2A510C2000000/

『【シカゴ=野毛洋子】米農務省は12日、5月の穀物需給見通しで、2022~23年度の小麦の世界の生産量は前年度比450万トン減の7億7480万トンになるとの見通しを示した。ロシア侵攻による主産地ウクライナの減産が響き、戦禍にある同国の生産量は2150万トンと前年度から35%減ると予想した。

同省が22~23年度の予想値を発表するのは今回が初めて。

小麦の世界輸出はウクライナの輸出減をロシアとカナダの増加が補い、前年度比500万トン増の2億490万トンを見通した。期末在庫は5%減の2億6700万トンと6年ぶりの低水準を見込み、ロイター通信が集計したアナリスト予想平均の2億7200万トンを下回った。インドの国内在庫は切り崩しが進み、5年ぶりの低水準に落ち込むと見込む。

トウモロコシも減産の見通しだ。ウクライナと米国の減産が響き、生産量は過去最高だった前年度を下回る11億8070万トンを見込んだ。期末在庫は中国と米国の減少により1.4%減の3億510万トンを推定した。

市場関係者が注目していた米国のトウモロコシ生産量は、長雨による大幅な作付け遅れを考慮し、4.3%減の3億6730万トンと減産を見通した。

大豆は増産を見込んだ。ブラジルの増産が貢献し世界の生産量は3億9470万トン(4530万トン増)を見込んだ。期末在庫は北南米産地の在庫が増え、9960万トン(1440万トン増)を予想した。』

[FT]加速する食料保護主義

[FT]加速する食料保護主義、価格高騰と需給逼迫に拍車
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB1211H0S2A510C2000000/

『世界の食料市場でウクライナ紛争に起因する混乱が続くなか、穀物、食用油や豆類など主要産品の輸出を制限する国が増えており、そうした保護主義の高まりが市場の混乱に拍車をかけている。

インドネシアのパーム油の輸出禁止措置は食用油の価格高騰に悩む消費者にさらなる打撃を与えた=ロイター

食料価格の高騰や社会不安の恐れを理由に、輸出を禁止したり輸出関税の引き上げや輸出上限の設定などの措置に踏み切ったりする国が増えている。こうした輸出国の保護主義的な政策により、重要な食料品を外国に依存している国では輸入額の負担がさらに増えており、世界で最も貧しい国々に影響が出始めている。

欧州復興開発銀行(EBRD)のチーフエコノミスト、ベアタ・ヤボルシク氏は保護主義について、すでに記録的なレベルに高騰している食料価格を人為的に上昇させ、世界の食料不安を加速させることにしかならないと警告した。「世界の貧困率が上がるだろう。極端な場合、権威主義体制の国はさらに抑圧を強めかねない」

ロシアのウクライナ侵攻が引き金に

ウクライナ侵攻以前から、干ばつや新型コロナウイルスの感染拡大に伴う労働力不足によって食料の国際価格は上昇していた。米シンクタンクの国際食糧政策研究所(IFPRI)にると、ウクライナ紛争を受けて23カ国が食料保護主義に転じた。

IFPRIによれば、世界の食料取引量のうち輸出規制がかけられている生産物の割合はカロリーベースで17%に上る。これは2007〜08年の食料・エネルギー危機の際に見られた水準だ。

インドネシアは4月、パーム油の輸出禁止を発表した。パーム油はケーキから化粧品まで様々な用途に使われており、植物油では世界で最も多く取引されている。

インドネシア政府の決定は、すでに食用油の価格高騰に苦しんでいた消費者に追い打ちをかけた。価格の上昇は、ヒマワリ油の生産大国であるウクライナが侵攻を受けたことに起因する。欧州や英国では食用油の買い占めが起きたため、スーパーは買い物客の購入数を制限している。

パーム油の輸出大国であるインドネシアが禁輸に踏み切ったことで、ウクライナ産とロシア産のヒマワリ油も合わせると、世界に供給される植物油の4割以上が入手困難になった。
パーム油禁輸には政治的な意図も

インドネシア政府による前例のないパーム油の全面禁輸は、イスラム教の断食月(ラマダン)明けを前に実施され、政治的に成功を収めたようだ。インドネシアの世論調査会社インディカトルによる最新の調査によると、急落していたジョコ大統領の支持率は4ポイント上昇して64%まで回復した。

輸出禁止はインドネシア国民の不満を鎮めた一方で、海外では混乱を加速させた。パキスタンの新政権はインフレ危機への対応に加え、パーム油不足に取り組むタスクフォースを立ち上げた。パキスタン商務省のウスマン・クレシ次官補によれば、同国政府は国民を安心させるため、インドネシア政府関係者に5月中の輸出再開について確約を求めたという。

農産物を扱う貿易業者は輸出禁止が長くは続かないと予測している。一方で、インドネシアの予期せぬ動きはビジネス相手としての同国の評判を傷つけたと批判する向きもある。パーム油を取引するシンガポールの貿易業者は、「取引先をもう少し(インドネシア以外に)多様化するつもりだ」と話した。

IFPRIのシニアリサーチフェロー、ダビド・ラボルド氏は、輸出規制はドミノ効果をもたらし、世界的に必要とする人々への供給量を減らしていると指摘した。「世界の貿易制度をむしばむことになる」だけでなく、国際市場へのアクセスを制限することによって、農家が作物を育てるインセンティブを減らすことにもつながり、「自国の農業体制や食料供給さえも傷つけている」という。

注目集まる小麦大国インドの動向

貿易業者の間では今、インドが食料の輸出禁止を発表するかどうかに注目が集まっている。

インドは小麦の生産大国だ。3月末までの小麦の年間輸出量は700万トンを超えて過去最大となり、ウクライナ紛争による供給不足の埋め合わせに貢献した。だが3、4月に気温が最高45度に達する熱波が小麦の生産地帯の大部分を襲い、国内供給への懸念が高まった。今後も6月にモンスーン(雨期)が始まるまでの数週間は高温が続くとみられるため、インド政府は今週、6月末までの21~22年期の小麦の収穫量予測を5%引き下げ、1億500万トンに下方修正した。

インド政府がさらなる不足から国内備蓄を守るために輸出規制を検討しているという報道を受け、ここ数日、小麦価格が世界各地で上昇している。

しかし、インド消費者問題・食料・公共配給省のスダンシュ・パンディ事務次官は、国内需要は十分に賄えると反論し、輸出規制に否定的な考えを示した。4日の記者会見で「小麦の輸出は続いている」と述べ、6月以降にアルゼンチン産小麦の輸出が始まればインド国内および世界の需給逼迫が緩和されるはずだとの見通しを示した。

貿易業者は、もしインドが輸出を規制すれば国際市場の動揺は避けられないと口をそろえる。「これまで世界的に需給が逼迫し、黒海周辺からの供給も非常に厳しい状態のときの代替的な供給元としてはインドが頼みの綱だった」と英穀物商社ED&Fマンのリサーチ責任者、コナ・ハク氏は解説した。インドが輸出禁止に踏み切る兆しが現れれば、確実に「世界の小麦市場はパニックに陥り、価格は上昇する」と同氏は警告した。

By Oliver Telling, Benjamin Parkin and Emiko Terazono

(2022年5月10日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版 https://www.ft.com/)

(c) The Financial Times Limited 2022. All Rights Reserved. The Nikkei Inc. is solely responsible for providing this translated content and The Financial Times Limited does not accept any liability for the accuracy or quality of the translation. 』

[FT]干上がる「アフリカの角」 2000万人が飢餓の危機

[FT]干上がる「アフリカの角」 2000万人が飢餓の危機
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB060LE0W2A500C2000000/

 ※ 全く、世の中うまく行かないことだらけだ…。

 ※ こういう状況下で、世界最大級の小麦産地・輸出国のウクライナが、あの体たらくと来ている…。

 ※ 「餓死者」も出そうな深刻な状況のようだ…。「ラクダ」も生き残れない旱魃とか、想像を絶するな…。

 ※ 「気候変動」も、影響しているんだろうか…。

『250頭いたヤギの最後の1頭が死んだ時、牧畜民のアフドゥライ・アブディ・ワリさんは悟った。99年生きてきた中で「最悪」の、この干ばつから逃げ出さねばならない、と。
干ばつに見舞われているエチオピアの平原(世界食糧計画提供)=ロイター

「干ばつで土地を離れなければならなくなったのは初めてだ」。東アフリカのエチオピア南東部でのほぼ1世紀を振り返って、ワリさんは話した。

家畜が死んでしまった後、ワリさんは灼熱(しゃくねつ)の太陽の下で5日間歩き、ゴーデ郊外の仮設キャンプにたどり着いた。エチオピアの牧畜民1万人を収容して食料と水を提供している場所だ。

ケニア北部からソマリア、エチオピアの一部地域にまたがる「アフリカの角」では、すでに過去40年間で最悪となっていた干ばつが雨期の到来の遅れでさらに悪化し、2022年に最大2000万人が飢餓に陥る恐れが生じている。

直近の3つの雨期が小雨で4期目も同じになりそうな状況にある。作物は消えうせ、エチオピア南東部のソマリ州だけで100万頭以上の家畜が死んでいる。

ウクライナ戦争の余波

すでに壊滅的な状況であるのに、また雨期に雨が降らなければ過去1世紀で最悪の干ばつになると住民は危惧している。しかもウクライナでの戦争で、この地域も大きな影響を被る恐れがある。ウクライナ紛争で食料価格ばかりか肥料も数百万人の農民が買えない水準まで値上がりする恐れがあり、23年の収穫が危ぶまれる。

「世界的に、前例のないニーズの1年に直面している。紛争、気候ショック、食料・燃料価格の高騰で、何百万もの人たちが人道支援を必要としている」と国連世界食糧計画(WFP)のマイケル・ダンフォード東アフリカ地域局長は言う。

地球の気温が上昇する中で、アフリカの角の乾燥・半乾燥地帯での食料確保は一層危うくなっていると専門家は指摘する。干ばつは今に始まったことではないが、頻度と強度を増している。08年以降、この地域はほぼ毎年、干ばつに見舞われている。11年にはソマリアの飢饉(ききん)で25万人が死亡したとされる。

アフリカの角では各地で史上最高気温が観測されている。この40年間、雨期はますます短くなり、平均降水量は減少の一途をたどっている。

4月、エチオピアのゴーデで世界食糧計画が支援した小麦の袋を運ぶ男性=ロイター

そして今、エチオピアのソマリ州の村々では長老たちが、飢えかけたハイエナやサル、イボイノシシが食べ物を求めて栄養失調の子どもたちに襲いかかるほど深刻な状況だと話す。ゴーデからほぼ30キロメートル離れたガビア村の長老、モハメド・ダガネ・ディガベさんは「子どもたちを守るために町(ゴーデ)へ移さなければならなかった」と話した。

だが、逃げる先がない人も多い。

「地域全体のことなので、近隣の地区へ移るという選択肢はない」とソマリ州のムスタファ・モハメド・オマル知事はフィナンシャル・タイムズ(FT)紙に語った。「ソマリアもケニアも、エチオピアのオロミア州も影響を受けている。この50年近くなかったほどの干ばつであることは確かだ。この100年なかったことだとも人々は言っている」

WFPはソマリアでひどい飢饉が発生する危険があると警告している。イスラム過激派による暴力が吹き荒れる同国で、総人口の4割にあたる約600万人が深刻な食糧難に直面している。一部の専門家によると、暴力より飢餓を逃れようとして国外に脱出する人のほうが多いという。

北部ティグレ州での激しい内戦に揺れるエチオピアでは、紛争の影響により同州と近隣のアムハラ、アファール両州ですでに900万人が食糧難に陥っていたが、WFPによると、ソマリ州など南部と南東部でさらに700万人が飢餓に苦しんでいる。

経済繁栄と安定度が上回るケニアでも、干ばつで300万人以上が深刻な食料難に陥り、支援を必要とする人が2年足らずで4倍以上増えた。「雨が予測できず、ケニア北部の大部分の人々を支える半遊牧の牧畜はますます持続困難になっている」と警鐘を鳴らすのは、同国の首都ナイロビでシンクタンク、国際危機グループ(ICG)のアフリカプログラムを統括するムリティ・ムティガ氏だ。「これは非常に大きな不安定化の要因となる」
4月、栄養失調でエチオピアのゴーデの病院に運び込まれた子供=ロイター

ゴーデの総合病院にある栄養失調の子どもの病棟では、体重が標準の半分しかない2歳児たちを医師が手当てしている。モハメド・アブディ・カッサ医長は「干ばつが終わらないので、栄養失調の患者の増加を見込んでいる」という。

WFPのダンフォード氏は、「干ばつに見舞われているアフリカの角の各地域において、私たちの目の前で広がっている紛れもない危機がある。ソマリアでは、雨が降らなければ数カ月内に飢饉が発生しうる非常に現実的な危険がある」と話す。十分な資金が拠出されないと、危機が広がっても人道支援機関は対応できないという。「人々が死ぬことになる。ごく単純な話だ」

WFPだけでも、当該3カ国での支援拡大に今後6カ月間で4億7000万ドル(約614億円)以上が必要と推計している。だが、資金拠出国側はコロナ下での財政出動に加えてウクライナ紛争にも気を取られ、十分な資金が集まる見込みは薄いと専門家はみている。ある外交官は「どこももうお金がない」と話す。

援助機関が持つ極めて重要な小麦は、(ともに主産地の)ウクライナ産とロシア産の備蓄が乏しくなっている。エチオピアでWFPと同国政府は、配給する小麦の約75%を2国から調達している。黒海沿岸地域産の小麦価格は21年以降、ロシアのウクライナ侵攻を主因に67%も跳ね上がっている。

「より大規模なウクライナでの非常事態やエチオピア北部での紛争に関心が集中していることが大きな原因となって、状況はさらに悪くなるだろう。物資などもそちらのほうへ振り向けられ、食料価格も世界的に高騰している」とソマリ州のオマル知事は語った。
ラクダも生き残れない

8人の子を持つ母親で、ゴーデ郊外の別のキャンプに最近移ったハリマ・モハメド・アブディさんは、先行きに不安を感じている。「これまでの干ばつでは、羊やヤギ、牛を失ってもラクダは生き残った」。それが今は、一般的に干ばつに耐えられるラクダも死んでいる。

「たとえ雨が降ったとしても、私たちにはもう何も残っていないので、政府や援助機関の支援を期待している」とアブディさんは話した。「助けがなければ、私たちも乾きと飢えで死んでしまう」

By Andres Schipani & David Pilling

(2022年5月3日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版 https://www.ft.com/)

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ウクライナ産穀物数千万トン失われる恐れ、ロシア封鎖で

ウクライナ産穀物数千万トン失われる恐れ、ロシア封鎖で=大統領
https://jp.reuters.com/article/ukraine-crisis-zelenskiy-idJPKCN2MO0C0

『[キーウ 2日 ロイター] – ウクライナのゼレンスキー大統領は2日、ロシアが黒海の港を封鎖しているため数千万トンの穀物が失われ、欧州・アジア・アフリカで食糧危機が起きる恐れがあると警告した。

オーストラリアのニュース番組で「ロシアは黒海を支配し船の出入りを認めていない。ウクライナ経済を完全に封鎖しようとしている」と非難した。』

[FT]インドネシアがパーム油禁輸、消費国襲う価格高騰

[FT]インドネシアがパーム油禁輸、消費国襲う価格高騰
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB261AZ0W2A420C2000000/

『ウクライナ戦争に起因する食料価格の高騰を抑え込む方策として、インドネシア政府がパーム油輸出の全面禁止を発表したことを受けて25日、パーム油価格は上昇し、インドネシアの通貨ルピアは下落した。

インドネシアのスーパーに並ぶパーム油原料の食用油(3月、ジャカルタ)=ロイター

世界ではこのところ、食料価格の高騰に苦しむ国々が食品の輸出を禁止する動きが広がっており、揚げ油やマーガリンなどに使うパーム油の世界最大の輸出国であるインドネシアが新たに加わった形だ。

「すでに歴史的な需給逼迫が生じている上にウクライナの輸出が止まったまま見通しが立たず、生産コストも歴史的な高さに達している中で、農業のサプライチェーン(供給網)全体がもろさを抱えていることを思い知らせるさらなる事態だ」。米金融大手JPモルガン・チェースのロンドン在勤アナリスト、トレイシー・アレン氏はこう説明する。

穀物とヒマワリ油の生産大国ウクライナからの輸出が紛争で止まった後、農産物価格は急騰している。

指標となる米シカゴ商品取引所の価格で小麦は21%、トウモロコシは15%値上がりし、外国産の穀物に頼る国々の食料輸入代金が膨らんでいる。

植物油も価格が急騰し、多くの国で小売業者が供給制限を始めている。国連食糧農業機関(FAO)の植物油価格指数は年初以降、40%上昇している。

植物油、販売個数制限も

植物油の需給逼迫で小売業者は食用油の販売制限を余儀なくされている。一部の欧州諸国では3月、スーパーが食用油の販売個数を制限し始め、英国でもテスコやウェイトローズなどの小売り大手が数日前から追随している。

インドネシアのジョコ大統領は22日、パーム油輸出の全面禁止を発表した。週末を挟んで市場が再開した25日、マレーシアのパーム油価格は一時1トン6800リンギ(約19万9000円)と7%も上昇し、6217リンギで取引を終えた。

年明け以降、米国の利上げ見通しで新興国に圧力がかかる中にあってもおおむね堅調だったルピアの対ドル相場も、1日の下落幅で半年ぶりの大きさとなる0.7%安の1ドル=1万4455ルピアに下がった。

禁輸によりインドネシアではパーム油の値下がりが見込まれるが、インドや中国を含む輸入国では値上がりすることになると指摘するアナリストは、「明らかにこれは世界の消費者にとってマイナスだ」と話す。

禁輸の発表を受けてインドネシアのパーム油生産会社の株も売られ、インドネシア証券取引所上場のトリプトラ・アグロ・ペルサダは7%、競合のアストラ・アグロ・レスタリは4%超、それぞれ下落した。

ウクライナ侵攻前の時点ですでにインドネシア国内ではパーム油の不足が生じ、現地でレバランと呼ばれるイスラム教の断食明け大祭(イード・アル・フィトル)が近づく中で、世界最大のイスラム人口を抱える同国政府は行動を迫られる状況となっていた。

4月に入ってからは物価高と、うわさされるジョコウィ(ジョコ氏の通称)の3期目続投への動きに抗議する学生が街頭デモに繰り出した。

28日からの禁輸措置は、ジョコ政権の最新の保護主義政策だ。すでに政権は生産量の一部を国内市場に供給することを生産者に義務付け、さらに最近、パーム油の輸出関税を引き上げていた。

アナリストは、新たな制限は5月初めのレバランに向けて導入されたと指摘する。「レバランの祝祭期間が終われば消費量は平常の水準に戻るので、輸出停止は早々に解除されると私たちはみている」と米金融大手シティグループのアナリスト、レスター・シェウ氏は話す。

By Hudson Lockett, Oliver Telling and Emiko Terazono

(2022年4月25日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版 https://www.ft.com/)

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ウクライナ緊迫、穀物相場に火種小麦・トウモロコシ高値圏、急騰なら中東不安定化も

ウクライナ緊迫、穀物相場に火種
小麦・トウモロコシ高値圏、急騰なら中東不安定化も
2022年2月12日 2:00
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO80089900R10C22A2EA3000/

『緊迫するウクライナ情勢が農産物相場高騰の火種となっている。ロシアは世界最大の小麦輸出国、ウクライナは小麦やトウモロコシなどの幅広い農産物を供給する。有事となれば、両国からの農作物の供給が減る懸念がある。相場が跳ね上がれば、両国産の穀物に依存する中東の政情不安や、一段のインフレ圧力に見舞われる恐れがある。(1面参照)

国際指標の米シカゴ商品取引所のトウモロコシ先物(期近)は1ブッシェル6.2ドル前後と前年比で1割強ほどの高値圏にある。小麦先物(同)は1ブッシェル7.6ドル前後と前年比2割高い。1月下旬に一時8.3ドル台まで急騰、2021年11月につけた9年ぶり高値の8.6ドル台に迫るなど、穀物相場は神経質な動きが続く。

市場関係者が注視するのは、穀倉地帯を揺るがしかねないウクライナ情勢だ。約10万人のロシア軍がウクライナと国境付近に展開中とされ、侵攻を防ぎたい米欧とロシアのけん制が続いている。

世界の小麦生産シェアをみるとロシアは1割、輸出シェアは2割を持つ最大輸出国だ。ウクライナは小麦で1割と世界5位。トウモロコシでも1割強を占める。食用に使われるひまわり油や、主に飼料用に使われる大麦でも高いシェアを誇る。

世界最大の小麦輸入国であるエジプトはロシアから6割、ウクライナから3割弱を調達。中東・北アフリカは小麦の世界最大の需要地域だ。水資源に乏しいため、穀物は輸入に頼る。ウクライナのトウモロコシの輸出先は中国が3割を占める。両国は世界の食糧安全保障に重要な役割を担う。

ロシアの産地は、ウクライナとの国境に近い南西部に集中している。ウクライナは全土に肥沃な黒土が広がり、中央部や南部で小麦やトウモロコシなどを生産している。

有事となれば、農作物の産地への被害や黒海沿岸の港から世界への穀物輸送にも影響が及ぶ恐れがある。米欧の制裁はロシアからの穀物輸出を制限しかねない。

世界の小麦市場は人口増加や所得向上による生活水準の上昇から、需要拡大が続く。主要生産国のカナダや米国は高温乾燥で21~22年度の生産量が前年度に比べて減る見込みだ。世界の小麦の同年度の期末在庫は3年ぶりの低水準になる見通し。ウクライナ情勢の悪化が重なれば、一段と需給が逼迫する事態となる。

トウモロコシも需給が引き締まりやすい。世界2位の輸出国ブラジルは高温乾燥に見舞われ、21~22年度の生産量見通しの下方修正が続く。ウクライナ情勢は市場関係者にとって「不安要因」(グリーン・カウンティの大本尚之代表)という。

世界最大の養豚国の中国は、最大のトウモロコシ輸入国だ。主に家畜の餌として使っている。輸入量の約3割をウクライナに依存。農林中金総合研究所の阮蔚理事研究員は「ウクライナ産は遺伝子非組み換えで、比較的価格が安い」という。

ウクライナからの供給が急減すれば、中国は最大の輸入先の米国から調達を増やすとみられる。中国が家畜伝染病のアフリカ豚熱(ASF)で減った豚の増産を目指して米国産の輸入を増やした20年から、トウモロコシの国際相場は上昇した。

市場では「ロシア、ウクライナの穀物の輸出量は膨大で、紛争となれば価格が急騰する可能性がある」との声も出ている。ロシアのプーチン大統領が14年3月にウクライナのクリミア半島を併合すると表明するまでの2カ月ほどで、小麦の国際相場は20%強上昇した。

食料インフレは家計を直撃する。特に途上国には打撃だ。国連食糧農業機関(FAO)が3日発表した1月の世界の食料価格指数(14~16年=100)は135.7と21年12月に比べ約1%上昇。パン高騰などに怒った民衆が独裁政権を打倒した「アラブの春」が起きていた11年2月の最高値137.6に迫る。穀物高は中東地域を不安定化させかねない。

足元の原油価格の高止まりに食料高が加われば、インフレ圧力は一段と強まる。世界の主要中央銀行が金融引き締めを強めれば、新型コロナウイルス禍からの回復途上にある脆弱な世界景気を腰折れさせる恐れがある。

(皆上晃一、黒瀬幸葉)』

[FT]ウクライナ侵攻で小麦減産へ 穴埋め狙う南米の農家

[FT]ウクライナ侵攻で小麦減産へ 穴埋め狙う南米の農家
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB192YF0Z10C22A4000000/

『ブラジル・サンパウロ州内陸部リベイラン・プレート近郊でサトウキビと大豆を栽培するホセ・オディロン・デ・リマ・ネトさんは、2022年は別の作物を初めて栽培しようと考えている。
ブラジルは小麦の「純輸出国」に転じる可能性を秘める=ロイター

「ウクライナとロシアで夏の作付けが難しくなるため、小麦を作ってみるチャンスかもしれない」

ロシアのウクライナ侵攻以降、小麦の国際価格は高騰している。世界で取引される小麦の約30%を占める両国からの輸入に依存する多くの国への供給が滞るとの懸念が生じているためだ。

国連の食料価格指数は記録的な高さに達しており、軍事侵攻で国連食糧農業機関(FAO)が「破滅的な飢餓」と呼ぶ状況がさらに悪化している。
ロシアのウクライナ侵攻が広げた波紋

(ウクライナから)数千マイル離れた南米に位置し、大豆、牛肉、トウモロコシからオレンジまであらゆる農畜産物を生産する主要農業地帯のブラジルやアルゼンチンでは、食糧危機の兆しが波紋を広げている。

南米の農業関連企業は食料価格高騰によって収入を増やそうとしており、デ・リマ・ネトさんのように増産したり新たな分野に移行したりする動きもある。

だが同時にコストの上昇や燃料、肥料や家畜の飼料など農業に不可欠な物資の不足が懸念されており、世界の食糧安全保障に十分な役割を果たせない可能性もある。

ロシアのウクライナ侵攻は、ラテンアメリカの夏の作付けやブラジルのトウモロコシの二期作の計画が決まった後で始まった。そのため生産者は即座に対応することが難しかったと、コンサルティング会社ストーンXのアナリスト、ビトール・アンドリオリ氏は話す。

「紛争が長期化し商品価格が高止まりするならば、南米大陸で穀物や油糧種子の増産を後押しするだろう」と同氏は述べた。

国土の多くが熱帯気候であるブラジルでは小麦の生産は限られるが、22年に入ってからの小麦の輸出は21年通年の輸出を超えた。栽培技術の進歩で、伝統的に小麦の純輸入国だったブラジルが将来は小麦を自給可能できるようになるだけではなく、純輸出国に転じる可能性すらあると専門家は見ている。
増産しても輸出先はどこに

ブラジル・アグリビジネス協会(ABAG)のカイオ・カルバリョ会長は、短期的には農業セクター全体で生産を大幅に増やす可能性は低いと話す。ウクライナ侵攻がいつまで続くのか、また増産した農産物をどこに輸出するのかはっきりしないためだという。

「商品を販売する市場という保証がなければ、生産者は冒険をしてまで供給を増やすことはできない」と同氏は指摘した。ブラジルは中国、中東やロシアに農産物を輸出しているが、多くの先進国市場への門戸は閉ざされたままだという。

南米最大の経済大国であるブラジルは、当面トウモロコシの供給減を補う役割を果たせる。米農務省の最近の報告では、ロシアの侵攻前にウクライナはトウモロコシの輸出でブラジルをわずかに上回り世界3位になると予想されていた。

大豆と同様、トウモロコシは大半が家畜の飼料となる。ブラジルは米国と中国に続いて世界3位の生産国で、ブラジル国家食糧供給公社(CONAB)は22年のトウモロコシの輸出が前年比75%増加すると予測している。

「大きな商機だ」とトウモロコシ生産者協会のセザリオ・ラマーリョ会長は話す。「ブラジルでの生産拡大のために、非常に魅力的な価格になっている」

一方、アルゼンチンの肥沃なパンパ地域の農家は、ひまわり油の供給の混乱を受けて栽培量を増やしている。ひまわりは乾燥した土地でも育ち、肥料も少なくてすむ。化成肥料の価格が上昇しており、今年は雨が少ないとの予報も農家にとっては追加のインセンティブ(誘因)となっている。
アルゼンチンでの増産には多くの課題も

だが、アルゼンチン政府に批判的な人々は、国家の介入や50%を超えるインフレが農業セクターでの新たな動きを妨げていると指摘する。

また、輸出品への最大33%の関税やパンなど一部品目への価格統制といった厳しい保護主義的政策や外国為替相場の混乱で、農家が国内の状況が落ち着くまで様子を見る可能性もあると主張している。

「増産の合図が生産者に届かないリスクがある。これはアルゼンチンだけでなく誰にとっても良いことではない」と国内最大の農業経営グループ、ロス・グロボを率いるグスタボ・グロボコパテル氏は話した。「アルゼンチンの農業生産は現在の水準より40%高くあるべきだ」

さらにアルゼンチンではディーゼル燃料不足でトラック運転手がストを決行した。収穫作業や輸送への影響も懸念されている。

南米は世界有数の肥沃な地帯だが、農業生産の伸びの鈍化や経済的打撃をもたらした深刻な干ばつからの回復途上にある。

ブラジルではウクライナ侵攻開始前から価格が上昇していた肥料が特に懸念材料となっている。国内で消費する肥料の85%を輸入に頼っており、その約4分の1はロシアから購入している。

「9月の作付け時期に肥料が手に入るかが大きな問題となる。不足すれば生産性の低下につながりかねない」。ABAGのカルバリョ氏は「深く懸念している」と言う。
畜産業者は国内消費の落ち込みで苦境に

耕作農家を潤す商品価格の高騰は、一方で穀物を飼料として使う畜産業者を厳しい状況に置く。

世界最大の牛肉と鶏肉の輸出国であるブラジルは、ウクライナ侵攻で失われた供給を補完できるとアナリストは指摘した。

だが、食肉の一部では、海外需要が増えても、生産コストの上昇と国内の購買力低下を相殺できないのが現状だ。インフレ率が2桁に達するなか、低所得層は生活必需品を買い控えている。

ブラジル中西部のゴイアス州で養豚業を営むエウクリデス・コステナロさんは供給過剰と売却価格の低下に苦しんでいる。同業者と同様、飼育頭数を5000頭から3800頭に削減した。

「どの生産者も1頭転売するたびに200〜350レアル(約5500円〜9600円)の損失を出している。これほど深刻な影響はこれまで経験したことがない」

エスピリトサント州で3000頭の牛を飼育するナビ・アミン・エル・アワールさんのような牧場経営者も困難に直面している。

「輸出は増えたが、国内消費の落ち込みを完全に補うほどではない」

By Michael Pooler, Bryan Harris and Lucinda Elliott

(2022年4月18日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版 https://www.ft.com/)

(c) The Financial Times Limited 2022. All Rights Reserved. The Nikkei Inc. is solely responsible for providing this translated content and The Financial Times Limited does not accept any liability for the accuracy or quality of the translation. 』

食料不足、世界が懸念 ロシア侵攻で価格高騰

食料不足、世界が懸念 ロシア侵攻で価格高騰
https://www.jiji.com/jc/article?k=2022041600223&g=int

『【ワシントン時事】ロシアのウクライナ侵攻で、世界的な食料不足への懸念が強まっている。両国は主要な穀物輸出国で、戦闘激化に伴い供給が滞るとの見方から、小麦相場は過去最高値に急騰。低所得国では社会不安を招きかねない状況だ。来週ワシントンで開かれる20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議などでも、食料問題が主要議題となる。

低所得国へ食料供給を ウクライナ危機で不足―IMFや世銀トップ

 「人々が食べ物を買えなければ、多くの社会的混乱が引き起こされる」。アフリカ開発銀行のアデシナ総裁(元ナイジェリア農相)は中東メディアとのインタビューで、食料高がアフリカ諸国に及ぼす影響に懸念を示した。

 ロシアとウクライナで世界の小麦輸出の約3割を担っていた。両国の主要な小麦輸出港は戦闘が続く黒海沿岸に集中していることもあり、国際指標のシカゴ小麦相場は14年ぶりに過去最高値を更新。戦争でウクライナの農繁期の作業に支障が出れば、供給不安はさらに続きそうだ。

 食料品の急激な値上がりで最も打撃を受けるのは、低所得層だ。世界銀行のマルパス総裁は12日の講演で「食料価格が1%上昇するごとに、1000万人が極度な貧困に陥る」と訴えた。

 食料安全保障の強化を目指す動きも世界で強まりそうだ。国際通貨基金(IMF)や世銀などは13日公表した共同声明で、低所得国に緊急の食料供給や金融支援だけでなく、農業生産拡大に向けた措置で協調するよう国際社会に呼び掛けた。

 サブサハラ(サハラ砂漠以南のアフリカ)諸国は小麦供給の約85%を輸入に頼り、うち3分の1をロシア、ウクライナ産が占める。アデシナ氏は「今こそ食料生産でアフリカを支援しなければ、容易に危機に陥る」と警鐘を鳴らした。 』

中東アフリカ、対ロ制裁に冷ややか 食糧や兵器で依存

中東アフリカ、対ロ制裁に冷ややか 食糧や兵器で依存
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR213RO0R20C22A3000000/

『【カイロ=久門武史】ウクライナに侵攻したロシアへの米欧主導の制裁に、中東アフリカ諸国が冷ややかだ。食糧や兵器をロシアに頼る国が多く、産油国の連帯もある。人権を理由にした対ロ圧力にはいっそう消極的だ。ロシアが孤立を深めるばかりと言い切れない一因になっている。

国連総会で7日採択されたロシアの人権理事会の理事国資格を停止する決議は、過去の決議より態度を後退させる国が急増した。人道状況の改善を求めた3月24日の決議で棄権したが今回は反対に回った18カ国のうち、中東アフリカからは8カ国だった。賛成から棄権に転じた39カ国をみると過半を占めた。

ロシアによる切り崩し工作に加え、自らも強権的な体制で、かねて人権重視を掲げるバイデン米政権を煙たく思ってきた国は多い。決議を主導した米国との隙間風がささやかれるケースもある。それ以上に、ロシアとの実利的な関係を無視できない。

まず主要産油国の協力は揺らぎそうにない。ウクライナに侵攻直後の3月上旬、ロシアのプーチン大統領はサウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)の指導者と相次いで電話協議した。ロシア大統領府によると原油生産を巡り「協調を続ける」ことで一致した。

アラブ産油国は伝統的に親米だが、今回ロシアへの制裁にはそろって背を向けた。サウジ主導の石油輸出国機構(OPEC)は非加盟のロシアを巻き込んだ「OPECプラス」として協調して産油量を増減させ、発言力を強めてきた。ロシアとの関係を損ね、この枠組みを危うくする理由はない。

サウジやUAEはイエメンの親イラン勢力との戦いで米国の支援が弱いと感じ、バイデン政権がイラン核合意の再建を目指していることも気に入らない。サウジには2018年の著名記者殺害を巡る疑惑で米欧から白眼視された苦い記憶もつきまとう。

穀物を輸入に頼る国が多く、一大産地のロシアを敵に回せない事情もある。人口が1億人と中東で最も多いエジプトは世界最大の小麦輸入国で、大半がロシアからだ。既に小麦価格の高騰に苦慮し、パンの価格統制に追われている。エジプトのスエズ運河庁は、ロシア艦船の通航禁止を米国が求めたとの臆測が浮上すると「運河は中立だ」と明確に否定した。

トルコもロシアの小麦を大量に輸入しているが、食糧安全保障に加え外交上の得点を狙っている。ロシアとウクライナの仲介役を演じ、国際的地位を高める思惑ものぞく。3月、両国外相の対面での停戦協議をお膳立てした。

アフリカを見渡せば、兵器や雇い兵の供給でロシアの影響力が強まっている。マリは旧宗主国フランスの部隊が撤退する空白を埋めるように、ロシアの民間軍事会社ワグネルと契約したとみられている。

中央アフリカやモザンビーク、スーダンにもロシアの軍事支援は浸透し、兵器輸出ではアルジェリア、アンゴラなどでロシアが特に高いシェアを握る。ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)によると、ロシアはサハラ砂漠以南のアフリカに対する最大の輸出国になった。ロシアがそっぽを向けば自国の安全保障が揺らぎかねない。

米ブルッキングス研究所のダニエル・レズニク研究員は「アフリカ諸国は貿易や投資、支援の多様化へ東西両勢力のいずれとも関係を築こうとしている」と指摘する。ロシアや中国が急速にアフリカに浸透するなか、中ロと対立する米欧に肩入れするリスクも計算しているもようだ。

多様な観点からニュースを考える
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渡部恒雄のアバター
渡部恒雄
笹川平和財団 上席研究員

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分析・考察ロシアの資源輸出国としての中東との連帯と、軍事支援を通じてのアフリカ諸国への影響はかねてから認識されてきました。

だからこそ3月2日の国連総会緊急特別会合でのロシアによるウクライナ侵攻を非難する決議に、141カ国の賛成票の中にサウジやUAEなどの産油国が入っていたことに意義があったと思います。

マリや中央アフリカなどのアフリカ諸国は棄権しました。サウジやUAEはバイデン政権に不満もありますが、米国からの軍事支援が自国の生き残りに重要なことに変わりはありません。

また今後、厳しい経済制裁が効力を発揮していくなかで、ロシアがアフリカ諸国に軍事支援をしていくような余力はなくなっていく可能性もあります。

2022年4月15日 9:48いいね
3

白井さゆりのアバター
白井さゆり
慶應義塾大学総合政策学部 教授

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ひとこと解説 国連人権理事会のロシアの理事国資格停止をめぐる採決結果は、賛成93票、反対・棄権が82票とかなり僅差であった。

3月の人道決議に関する決議とは雲泥の差だ。

世界ではマイノリティの権利を重視する民主主義の国は非常に少なく40ヵ国に満たないと聞く。

このためそもそも人権や民主主義を強く推し進めることに違和感をもつ国も多いのだろう。

しかもアフリカや中東では国によっては食料危機にも直面する。

またロシアの働きかけだけでこうした結果になったのではない可能性もある。

ウクライナ問題が、世界の分断を促さないためにはどうしたらよいのか戦略を考えていく必要があり、日本はその一役を担うことができると思います。

2022年4月15日 9:31 (2022年4月15日 9:36更新)』

習氏、食料安保確保を強調 大豆や油を増産へ

習氏、食料安保確保を強調 大豆や油を増産へ
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB270B50X21C21A2000000/

『【北京=共同】26日の新華社電によると、中国の習近平国家主席(共産党総書記)はこのほど開いた共産党政治局常務委員会の会議で、農業政策を巡り「いかなる時も食べ物は自分たちの手中になければならない」と食料確保の重要性を強調した。中国は米中対立の長期化を視野に食料安全保障を強化している。

これを受けて25、26日に北京で開かれた農業政策に関する党と政府の重要会議では、輸入依存度が高い大豆や植物油などの大幅増産を指示。2022年の主食系作物の生産量を6億5千万トン以上とすることを確認した。』

9月の米穀物需給 トウモロコシの生産増見通し

9月の米穀物需給 トウモロコシの生産増見通し
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN09ERT0Z00C21A9000000/

『【シカゴ=野毛洋子】米農務省は10日発表の9月の穀物需給で、2021~22年度の米国のトウモロコシの生産見通しを引き上げた。前月比625万トン増の3億8093万トンとなる見通しだ。期末在庫は前月比421万トン増の3577万トンを見込んだ。いずれもロイター通信が集計したアナリスト予想を上回った。

大豆は生産量を前月比96万トン増の1億1904万トンに引き上げた。期末在庫は504万トンと前月比83万トン増を見込んだ。いずれもロイター通信が集計したアナリスト予想を小幅に下回った。小麦の生産見通しは4618万トンに据え置いた。

10日のシカゴ穀物市場で発表直後にトウモロコシ相場は下げたが、その後は上昇に転じた。「事前にトウモロコシのより大幅な増産を見込んだ市場関係者も多く、増産は限定的との見方から買い材料になった」(穀物アナリスト)との声が聞かれた。』

〔チェルノーゼム〕

チェルノーゼム
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%81%E3%82%A7%E3%83%AB%E3%83%8E%E3%83%BC%E3%82%BC%E3%83%A0

『黒土(こくど、くろつち、英語: Black soil)は東ヨーロッパ、北アメリカ、中国東北部など世界の各地にあり、非常に肥沃な黒色の土壌(成帯土壌)で、農業に適している。
特にウクライナからシベリア南部にかけてのポントス・カスピ海草原に分布する黒土がチェルノゼム(ロシア語: чернозём[tɕɪrnɐˈzʲɵm]、英文でchernozem)と呼ばれ、小麦の栽培地として有名で、他の地域の黒土も地質学者によりそう呼ばれるようになった。

「チェルノ」と「ゼム」は、それぞれロシア語で「黒い」を意味する語と「地、土地」などを意味する語に由来する。この用語のロシア語での発音は「チルナズィヨーム」に近く、最後の音節に強勢があるが、日本語では慣用的に「チェルノゼム」、しばしば「チェルノーゼム」と表記される。また、その肥沃さから、「土の皇帝」とも呼ばれる。

チェルノゼムは、草本などの遺骸からつくられる腐植層が降水量の低い地域(ステップ気候)のために流出を免れ、ぶ厚く蓄積している。

仮に降水がより少なく乾燥すると植物の生育ができず腐植層・窒素分の少ない栗色土となり、逆に降水が多ければ樹木が生育するが、流出のため表層の薄い腐植層と下層の酸化鉄を含む層の褐色森林土となり、冷涼ならば植物体の分解が進まず酸性化し灰白色のポドソル層や排水が悪ければ泥炭層になるが、いずれも生産性が低い土壌となる。

そしてロシア南部では下層に石灰分を含む層がある。これら降水・気温・土地条件が重なり、穀物栽培の下限に近い降水量ではあるが、土地は肥沃で施肥なく農業が行われている[1]。 』

歴史的な寒波によりヨーロッパ各地で農産物に回復不能のカタストロフ的被害

歴史的な寒波によりヨーロッパ各地で農産物に回復不能のカタストロフ的被害。フランスではワイン用の作物のほとんどが失われ、スロベニアでは過去100年で4月として最低の気温を記録
投稿日:2021年4月14日
https://indeep.jp/catastrophic-damage-to-agricultural-products-across-europe-due-to-historic-cold/

『21世紀にも20世紀にも経験したことのない欧州の被害
先週書きました記事「4月に入り過去最大の感染確認数を記録する国が続出…」の冒頭で、ヨーロッパが「過去の歴史にないような 4月の寒波に見舞われる可能性がある」ことにふれました。

通常なら北極の上空を循環している極めて冷たい大気が、気圧の異常な配置により一気にヨーロッパに流れることによるものです。

その後、予測されていた寒波がヨーロッパにやってきたのですけれど、その気温の低さは桁外れであり、ヨーロッパ各地で、農産品や果樹などが徹底的に破壊されたことが報じられていました。

4月8日 イタリア・パラゼッタで凍結したリンゴの木を見つめる生産者

Piero Cruciatti AFP

国や地域によっては、過去数十年、あるいは過去 100年などで経験したことのない春の寒波であり、しかも「第二弾がこれから来る」のです。

これらの寒波は、今年のヨーロッパの食糧生産の状況に大きく関わるものとなりそうで、この数年少しずつ破壊され続けている世界の食糧の問題とも直結する話にもなりそうです。

今回はそのヨーロッパの寒波について取り上げます。

いろいろな国が被害を受けていると思われますが、フランスは特に大きな被害を受けたようです。ワイン用のブドウが地域的に「最大 90%が霜により破壊された」ことが報じられています。

以下は、4月11日のユーロニュースの報道です。

「歴史的な」厳寒の攻撃がフランスのワインメーカーの収穫を破壊した
‘Historic’ bout of frost decimates French winemakers’ harvest
euronews.com 2021/04/11

凍結からブドウ畑を守るためにワラに火をつける生産者。4月7日 フランス・トゥレーヌ

フランスの果物生産者たちとワインメーカーは、今年の収穫の大部分が今週の凍結で失われたと警告している。

フランス農業組合連盟(FNSEA)は以下のように強調した。

「今回の凍結で、ビート、アブラナ、オオムギ、ブドウの木、果樹などの被害を免れた地域はフランスにはありません。生産者たちに対してのあらゆる種類の支援を緊急に活性化する必要があります」

この週を通して、フランス中の生産者たちはたいまつとロウソクで畑で火を燃やすことによって、凍結から収穫を救おうとしたが、その努力は報われなかった。

ドロームとアルデーシュの南東部では、4月7日の夜に気温が -8°Cまで下がった。その前の週は、ヨーロッパは温暖な気温に恵まれていたため、たった 10日間で、この地域の気温は 33℃低下した。

地元のワインメーカーと果物生産者たちは、収穫量の約 90%を失ったとフランス農業組合連盟に報告した。

ローヌワインで知られるフランス南部のローヌのワイン生産者協会の会長であるフィリップ・ペラトン氏は、「今年は、過去 40年間で最低の収穫になるはずだ」と述べる。

ペラトン氏は、この地域の約 68,000ヘクタールのブドウ畑のうちの約「 80パーセントから 90パーセント」が凍結で失われたと推定している。

ペラトン氏は、昨年以来の、ブレグジット、アメリカの関税の問題、COVID-19 パンデミックなど、最近フランスのブドウとワインの生産者たちが対処しなければならなかった複数の問題を強調し、そのすべてが販売と輸出に圧力をかけていた。

ワインで著名な地域のひとつであるブルゴーニュには、28,841ヘクタールのブドウ畑があるが、「少なくとも 50パーセント以上の被害を受けた」と、地域の代表者は述べる。

この地域の権威あるシャブリの原産地も荒廃した。シャブリの原産地防衛連盟事務所のフレデリック・ゲグエン氏は、「 80から 90パーセント被害を受けた」と推定している。そして、ゲグエン氏は以下のように懸念している。

「今後回復する見込みのない農場があるのではないかと心配しています」

ブルゴーニュの南部も -8°Cの気温を記録した。

フランス南西部のボルドー地域のワインメーカーも警鐘を鳴らしている。

ボルドーワイン貿易評議会によると、凍結はボルドーのブドウ園の広大な地域を「激しく襲い」、気温が -5°Cを下回ることもあり、111,000ヘクタールのブドウ畑すべてに影響を及ぼした。これは、フランスのブドウ園の 15%に相当する。

ドルドーニュでは、有名なモンバジャックを含むベルジュラックとデュラスのブドウ園があるが、「被害を免れた生産者は一人もいない」と、地元のワイン連盟の会長であるエリック・チャドゥーン氏は述べる。「被害の程度はさまざまだが、芽の 5%から 100%が被害を受けている」と付け加えた。

フランスでは、他の果実も影響を受けており、リンゴとナシのフランス全国協会の会長は、寒波により「今年は桃、ネクタリン、アプリコットが店舗の棚に並ぶことはほとんどないだろう」と述べた。

フランス農業相は、この遅い時期の凍結の例外的な影響を受けた生産者たちに政府は「必要な支援を提供するために完全に動員されている」と述べている。

ここまでです。

「 2021年産のフランス産ワインというものは、ほぼ存在しない」ことが確定的になったようです。

被害を受けた生産者に対して、フランス政府からの補償はなされるようですが、補償はともかく「生産品自体がない」ということになり、ブドウをはじめとするフランス産の果樹全般が今年は流通する見込みはなさそうです。

フランスは、ワインの著名な生産国であるので、このような報道がなされていましたが、実際には「このような凍結と寒波がヨーロッパの広範囲を襲った」ということが問題であり、4月はさまざまな農作物の植え付けなども始まった時期であり、その被害はヨーロッパ全体に広がっているとみられます。

たとえば、他のヨーロッパでも以下のような状態となっていました。

ベルギーでは、ブリュッセルを含む多くの都市の住民が本物の猛吹雪を目撃した。ベルギーの一部の地域では、20cm以上の雪が振った。

バルカン半島もまた 「4月の真冬」を経験した。西ヨーロッパを襲った北極圏の大気は、さらに南東に広がり、ブルガリアとルーマニアの山々での 4月9日の夜、気温は -17°Cにまで下がった。 (iceagenow.info)

スロベニアでは、4月として、過去 100年で最も低い気温が記録されました。

4月7日、スロベニアの多くの地域は、過去 100年で最も寒い 4月の朝を向かえた。公式の気象観測所の記録で、最低気温は -20.6°Cに達し、観測史上で 4月で最も低い気温記録を樹立した。中央および西ヨーロッパの他の地域でも多数の極寒の記録があり、深い凍結と朝の霜は破壊的なものだった。

スロベニアでは、同日、レッジェ市にある気象観測所で -26.1°Cの気温が記録されたが、この観測所は非公式の気象観測であるため、公式な記録にはならない。

過去のスロベニアの公式の最低気温の記録は、1956年4月9日に標高約1350 m にあるポクルジュカで記録された -20.4°Cだった。 (severe-weather.eu)

以下は、そのスロベニアのノバ・バスという場所で -20.6℃が記録された時の、ヨーロッパの気温分布ですが、スペイン、ポルトガルやギリシャなどを除けば、ヨーロッパの全域とも言える地域が、極大の寒波にさらされていたことがわかります。

2021年4月7日のヨーロッパの最低気温の分布

severe-weather.eu

フランスの壊滅的な農産物の被害からですと、他のヨーロッパ諸国も、地域的には壊滅的な被害となっている場所もあると見られます。

しかも、「次の同じような寒波が今、ヨーロッパにやってきている」のです。

ヨーロッパの主要な気象メディア「シビア・ウェザー・ヨーロッパ」は、4月12日の記事で、またも前回の同じような地域に同じような凍結と寒波が襲う事を報じています。

長い記事ですので、その一部をご紹介します。

原文タイトルの最初に「 Oh no (オーノー)」という文字が含まれる記事でした。』

中国農業政策、安保に重点 食糧生産年6500億トン堅持

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM227IU0S1A220C2000000/

『【北京=川手伊織】中国の農業農村省は22日、2025年までの農業政策として食糧安全保障を重視する方針を示した。過去6年連続で達成した年6500億トン以上の生産量を数値目標として掲げた。対米摩擦を念頭に海外調達の不確実性が高まると懸念を示した。

唐仁健農業農村相が記者会見で明らかにした。20年の生産量は約6700億トンと最高を記録した。今後は就農人口の減少が生産規模を保つうえでの足かせとなる。農業の現代化を進めて、大豆やトウモロコシで米国の6割に満たない単位面積当たりの収穫量を増やす。

食糧安全への懸念を拭えないのは「外部の情勢を巡る不確実性や不安定さが明らかに増える」(唐氏)ためだ。大豆やトウモロコシを大量に海外から仕入れている。米国との覇権争いをはじめ外国との摩擦が続けば、食糧の安定輸入という問題は中長期的に中国にのしかかる。

習近平(シー・ジンピン)国家主席(総書記)も昨年12月、中国共産党の農業政策における重要会議で「食糧安全は国家の重要事項だ」と強調した。中国が長期目標で掲げるように中間所得層が拡大すれば、食糧需要も膨らむ。

食糧安保を巡っては、中国の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)常務委員会がすでに食品の浪費を禁じる法案の審議に入った。飲食店が顧客に過剰な注文をさせたり、「大食い」を売りにしたテレビ番組や動画を流したりすることを禁じる。21年には「食糧安全保障法案」も審議する方針だ。

唐氏は中国人の食卓に欠かせない豚肉について「供給量は21年後半に正常な水準に戻る」と語った。豚肉はアフリカ豚熱(ASF)の流行や20年の長江流域の洪水被害で供給量が落ち込んだ。

消費者物価指数(CPI)でみた豚肉価格は19年末から20年初めにかけて、前年同期の2倍超と高騰していた。必需品の値上がりをうけ、家計が節約意識を高める一因となった。

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既に1年分の穀物を輸入してしまった中国 : 机上空間

 ※ 机上空間さんのサイトからの情報だ…。

『中国では、400以上の河川が氾濫する大雨が降っていますが、耕作地の20%が水没していると言われている状態でも、メディアは「今年は農作物が大豊作」と強弁しているようです。水害だけではありません。とうとうアフリカから大陸横断してきたバッタが、中国の辺境に侵入をし始めました。そして、この長雨は、中国に土着のイナゴの異常発生も誘発させています。さらに、ツマジロクサヨトウという、蛾の幼虫も大発生しています。更に、地域によっては、干魃が起きているとこもあるんです。

これで、大豊作と言い切るところが、中国共産党です。この長雨は、土中のウィルスの繁殖も促して、沈静化を見せていた豚コレラも、再発生しています。去年、1億8000万匹を殺処分しなければならなかった家畜のブタが、ここにきて感染症の脅威にさらされています。

この農業と畜産の危機的状況に、中国は現時点で、1年分のアメリカからの輸入枠である329億ドル(3兆4715億円)の農作物を輸入し終わってしまいました。米中貿易交渉の過程で、今年の1月に合意に達していた額ですが、中国は5月くらいまでは、トランプ政権を揺さぶるカードとして、この農作物の輸入枠を使っていました。

トランプ政権の主な支持層は、ホワイト・トラッシュと言われる農家です。ここへは、助成金と国を上げて他国に圧力をかけながら、輸出量を増やし続ける事で、鉄板の支持層を築いています。なので、脅しに使えると踏んだ中国は、5月の時点で約束の1/3の額しか輸入していませんでした。まぁ、この頃までは、報復関税合戦なんて事もしていたので、貿易がスムーズに進まなかったという事もあるでしょう。

ところが、6月から中国で歴史的な大雨で洪水が起こり始め、農地が水没したり、雹で農作物が打ち倒されたりして収穫が望めなくなり、逆に輸入しないと食糧不足になる事が確実になりました。中国が必要とする量を供給できるのは、アメリカだけなので、農作物の輸入量は、爆増しています。特にダイズとトウモロコシの伸びが尋常じゃありません。

7月10日だけのトウモロコシのアメリカからの輸入量は、13億6500万トンに達しています。7月14日には、たった1日で17億6200万トンの輸入をして、記録を更新しています。豚肉、綿花、大豆の輸入も増加していて、このペースで増えると、年間の輸入高は500億ドルに達する可能性があります。

つまり、農作物の輸入制限は、まったく中国側のカードに使えなくなり、この特需はアメリカの生産農家にとっては、福音でしょう。中国側としては、まったく不本意でしょうが、トランプ大統領の支持基盤の票を固めた可能性すらあります。

秋に収穫が確定した時点で、食料の絶対量が足りなければ、中国は更に輸入する必要すらあります。中国料理における米である豚肉が不足して、高騰しているのが問題で、これは社会不満に繋がりやすい。しかも、中央の執行部は内紛で、効果的な対策を打ててません。

なかなか、やばい状況です。』