金融政策は死んだのか 「大いなる不安定」に向かう世界

金融政策は死んだのか 「大いなる不安定」に向かう世界
金融PLUS 金融部長 河浪武史
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB1817S0Y2A910C2000000/

 ※ 「金融政策」とは、「金利を操作して」「国内景気をコントロールする」策のことだろう…。

 ※ そういう「策」が、「世界的なパンデミック」による「経済停滞」、「戦争勃発によるエネルギー資源流通の停滞、食料資源流通の停滞による経済停滞」に、効果があろうハズも無い…。
 ※ 別に、「死んだ」わけじゃない…。

 ※ そもそも、構造的に「効果を発揮しようもない」事がら、というだけの話しだ…。

『日米欧で金融政策への信頼が揺らいでいる。日本は9年半の「異次元緩和」が思うように機能せず、米国も当局の誤算で40年ぶりの高インフレに陥った。根本原因である人口減少や地政学リスク、資源高には中央銀行だけで対処できない。1990年代以降の大安定時代(グレートモデレーション)から大不安定時代に変化したことが、金融政策の機能をますます弱めている。

FRBも日銀も物価を制御できず

「新型コロナウイルスやロシアのウクライナ侵攻が、マクロ経済の安定の転機になるのか。つまり、大いなる安定(Great Moderation)から大いなる不安定(Great Volatility)に移行するのか」。中銀関係者が今、最も話題にするのは、欧州中央銀行(ECB)のシュナーベル専務理事による「金融政策と大いなる不安定」と題したジャクソンホール(米ワイオミング州)での講演だ。

息の長い景気拡張となった90年代以降の「大いなる安定」は、80年代の高インフレの抑え込みがその理由と信じられている。大安定期は経済の先行きが読みやすく、中銀にとっては金融政策で市場と景気を自在に調整できた「黄金の時代」でもあった。その中銀関係者がこぞって「大不安定」を口にするのは、米欧で高インフレの発生を許し、日本では逆に大規模緩和が効果を上げないもどかしさがあるからだろう。

確かに経済・市場は「大いなる不安定期」にある。例えば米国では、コロナ危機で2020年春に失業率が14%台と戦後最悪の水準に悪化。その後の経済再開で今度は国内総生産(GDP)が戦後最大の伸び率となり、21年以降は資源高でインフレが止まらなくなった。日本も24年ぶりの円安となり、消費が弱含むなかで30年ぶりのインフレ水準にある。シュナーベル氏は「ユーロ圏もこの2年の生産量の変動率が09年の大不況期の5倍」と指摘する。

ジャクソンホール会議では、マクロ経済政策としての金融政策の限界論も議題となった(米ワイオミング州)=ロイター

「大いなる不安定」に移りつつある理由は3つ考えられる。まずはグローバル化の反転だ。1990年代以降の「大いなる安定」は、東西冷戦の終結で市場経済が世界大に広がった影響が大きい。足元はウクライナ危機や米中貿易戦争などで逆に世界経済が分断し、物価と景気を左右する資源と労働の供給も世界的に大混乱している。

もう一つは気候変動だろう。欧州が過去500年で最悪の干ばつに見舞われるなど、気候の変化は一段と予見しにくくなっている。短期的にみても、脱炭素社会への移行は石油価格の変動を大きくし、電気自動車などに使うレアアースの価格をさらに高騰させる。

大不安定を招く3つ目の要因は、金融政策そのものだといえる。米連邦準備理事会(FRB)やECBは、1回で0.5~0.75%という通常の2倍、3倍のペースでの利上げを進めている。緩和縮小の出遅れが最大の理由だが、急激な金融引き締めを断行せざるをえないのは、小幅な利上げでは政策効果を発揮できなくなっていることもある。

例えば巨大IT企業の設備投資はその巨体ほどは大きくない。製造業からサービス業、知識産業へと経済構造が変化するにつれ、産業全体の借入ニーズは小さくなり、金利で総需要をコントロールする金融政策の効果もしぼむ。効き目を持たせようと利上げや利下げの幅を大きくすれば、実体経済よりも金融市場での振幅が一段と大きくなる。日銀の異次元緩和も同じ文脈で、日本経済は円安という副作用ばかりが目立つ。

大いなる安定を支えた金融政策は、長くマクロ経済政策の王道だった。次なる「大いなる不安定」を避けるには、サプライチェーン(供給網)の安定など個別政策の組み合わせが重要になる。単純な金融政策頼みでは立ちゆかない。

「大いなる安定」は幸運が生んだ

「大いなる安定」は単なる幸運だったとみることもできる。内閣府の分析によると、80~90年代の世界的な物価低下の最大の要因は、省エネルギーと原油増産による1次産品の価格下落にあったという。当時の商品価格相場は70年代のピークから3割強も下落。とりわけ米国では物価低下の要因の8割が原油価格の下落にあり、マネー収縮の効果は1割程度にすぎなかった。

中央銀行は景気と市場の「最後の砦(とりで)」でもある。2008年のリーマン・ショックや20年のコロナ危機下では、大量の資金供給で市場の崩壊を食い止めた。足元のインフレを金融政策だけで制御するのは難しいとはいえ、中銀への信認が崩れれば市場の不安はさらに増す。静かに進む「金融政策の死」を食い止めるには、地政学リスクや公衆衛生リスクが早期に収まる強運も期待しなくてはならない。

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ニューズレター https://regist.nikkei.com/ds/setup/briefing.do?n_cid=DSREA_newslettertop 

金融PLUS https://www.nikkei.com/theme/?dw=21050703 』

米国務長官「ロシアに侵攻停止圧力」 インドの苦言巡り

米国務長官「ロシアに侵攻停止圧力」 インドの苦言巡り
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN1709H0X10C22A9000000/

『【ワシントン=中村亮】ブリンケン米国務長官は16日の記者会見でロシアによるウクライナ侵攻について「攻撃停止に向けた圧力が増している」と述べた。インドがロシアに苦言を呈したほか、中国も懸念を伝えたとみられることを念頭に置いた発言だ。

ブリンケン氏は「中国やインドから聞こえてくることは、ウクライナに対するロシアの攻撃の影響についての懸念を反映している」と語った。食料価格の高騰に触れて「世界中の国の指導者が(負の影響を)感じている」と言及した。

インドのモディ首相は16日、訪問先のウズベキスタンでロシアのプーチン大統領と会談し「いまは戦争の時ではない」と伝えた。プーチン氏は15日、中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席との会談で「ウクライナ危機に関する中国の懸念を理解している」と話していた。 』

[FT]アフリカの数百万人、貧困層に 世界規模の物価高で

[FT]アフリカの数百万人、貧困層に 世界規模の物価高で
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB142Q60U2A910C2000000/

『アフリカ南部マラウイ最大の都市ブランタイアに住むジャドソン・マンクワラさん(39)は、価格高騰でビニール袋入りの木炭を買えなくなり、薪にする小枝を拾い集めるようになった。
ナイジェリア最大の都市ラゴスの生鮮食品市場。物価バスケットに占める食料品の割合が大きいアフリカ各国は、世界的なインフレにより深刻な打撃を受けている=ロイター

失業中のマンクワラさんは小枝の束を脇に抱えながら、「炊事用の燃料を買えないので薪を拾っている」と話した。

ウクライナ戦争や米国の利上げによる通貨下落、長年の経済失政が重なり、マラウイのインフレ率は25%に達した。同国では消費者物価バスケット(物価指数の基準品目)に占めるトウモロコシなど主要食料品の割合が50%近くに上るため、食品価格が急騰すれば、1袋30セント(約43円)程度の木炭さえ買えなくなるのだ。

ロシアのウクライナ侵攻によって食料品や燃料、肥料といった生活必需品が世界的に値上がりし、マラウイなど経済が脆弱なアフリカ各国はとりわけ大きな犠牲を強いられている。
「もはや限界に近い状況」

「もはや限界に近い状況だ」。マラウイのチャクウェラ大統領はフィナンシャル・タイムズ(FT)にこう語った。

国際エネルギー機関(IEA)によると、アフリカでは年末までに3000万人が炊事用の液化石油(LP)ガスを買えなくなる恐れがある。経済の後退リスクも高まり、世界銀行の推計では極度の貧困状態とされるアフリカの人口が新型コロナウイルス感染拡大前だった2019年の4億2400万人から、年内には4億6300万人に膨らむ見込みだ。

調査会社オックスフォード・エコノミクス・アフリカのマクロ経済担当責任者ジャック・ネル氏は、「貧困の判定が難しいケースも多いが、急増しているのは間違いない」と話す。

物価バスケットに占める食料品の割合が先進国より大きいアフリカ経済は、世界的な物価高による打撃を特に大きく受けているという。

例えば、ナイジェリアでは食料品が物価バスケットの約半分を占める。「収入の50%以上を費やす食料品がさらに値上がりすれば、他の物品に余計手を出しづらくなり、経済全体に悪影響が広がっていく」と同氏は懸念する。

LPガス価格が1年で2倍に

マラウイと同様の状況がアフリカの経済大国でも起きている。

ナイジェリアでは通貨ナイラの対ドル相場が実勢レートで年初来25%下落した。5キログラム入りLPガスボンベの価格はこの1年で2倍に跳ね上がり、安価だが環境への悪影響が大きい灯油や木炭を使わざるを得ない人が増えている。食料品も22%値上がりし、消費者は肉や魚を買い控えるようになった。

長年のインフラ投資不足や多額の石油補助金、原油泥棒の横行により、アフリカの大手石油会社は原油価格高騰の恩恵にあずかっていない。外貨が不足する中、多くの企業が輸入価格の上昇を製品価格に転嫁している。

ナイジェリアの自動車ローン会社ムーブの共同創業者、ラディ・デラノ氏は現状を「最悪の事態」と表現する。

「生活費が不足し、ますます貯蓄しにくくなっている」ため、自動車を購入する際の頭金を不要にしたという。

苦境に陥っているのはエチオピアも同様だ。インフレ圧力に深刻な外貨不足、北部ティグレでの内戦も加わり、経済担当の政府高官に言わせると「複合的危機」の状態だという。さらに医薬品や粉ミルクなどの輸入品も不足している。

インフレ率は32%に達し、通貨ブルは非公式為替レートで6月初旬の1ドル=60ブルから約82ブルへと下落した。

首都アディスアベバに住むシングルマザーのラヘル・アトナフさん(46)は、アパートや美容室の清掃員として生計を立てている。月収5000ブル(約1万3400円)のうち、1500ブルを家賃に充てている。「雇い主がいつもお総菜やインジェラ(エチオピアの主食)を持たせてくれるけど、それでも生きていくので精いっぱい」と肩を落とした。タマネギだけみてもこの2カ月間で2倍に値上がりした。「私のような貧しい人々は物価上昇をどう切り抜ければいいのか」

サブサハラ(サハラ砂漠以南)の国々では政府に適切な経済運営能力がないため、中央銀行が経済安定の重責を担わざるを得なくなっている。

ハイペースの利上げも追いつかず

ガーナの首都アクラでは6月、経済的苦境に抗議するデモが繰り広げられた=ロイター

「各国の金融政策当局は問題解決に向けて打てる手は全て打っている」と英経済調査会社キャピタル・エコノミクスのアフリカ担当エコノミスト、ビラーグ・フォリス氏は言う。
インフレ率が31%に上り通貨が急落したガーナはこの数カ月、20年ぶりのハイペースで利上げしている。ナイジェリア中銀も5月以降、金利を2.5%引き上げた。

だが、市場が米連邦準備理事会(FRB)のさらなる利上げを見越す中でドルの上昇は続き、食料品価格も高止まりしているため、エコノミストは早期のインフレ終息に懐疑的だ。

「南アフリカは別にして、例えばガーナやナイジェリアでインフレがピークを迎えたとは思えない」とフォリス氏は話す。「両国とも物価バスケットに占める食料品の割合が非常に大きいので、食料インフレはすぐに収まらないだろう」

内陸国で輸入依存型のマラウイを見れば、危機に陥った多くのアフリカ諸国の構造的な弱点が分かる。21年には輸入額が30億ドルと輸出額の2倍になり、輸入の大部分を燃料と肥料が占めた。チャクウェラ大統領は小規模農家への現金給付や低利融資によって苦境を「乗り切れる」とみているが、国際通貨基金(IMF)による7億5000万ドルの融資など国際援助に頼っているのが現状だ。

食費が国民の支出の大部分を占める中で、多くの人が生活に行き詰まっている。「気付いたらこんなありさまになっていたという人たちばかりだ」と薪を拾い集めていたマンクワラさんはぼやいた。

By Joseph Cotterill, Andres Schipani & Aanu Adeoye

(2022年9月13日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版 https://www.ft.com/)

(c) The Financial Times Limited 2022. All Rights Reserved. The Nikkei Inc. is solely responsible for providing this translated content and The Financial Times Limited does not accept any liability for the accuracy or quality of the translation.』

「Achema」は、リトアニア最大の肥料工場である。

「Achema」は、リトアニア最大の肥料工場である。
https://st2019.site/?p=20162

『2022-8-24記事「Lithuania’s biggest fertiliser maker suspends production over soaring gas prices」。

    「Achema」は、リトアニア最大の肥料工場である。このほど、天然ガスの値段が爆上がりしているため、9-1から操業を一時中断する。
 工場は Jonava 市にある。
 当面、樹脂など、肥料以外の製品を製造し続けるであろう。

 肥料市場は、ロシア製や米国製との競争である。天然ガスが異常な高値であるうちは、とてもそれらの製品とは競争にならない。
 窒素系肥料の価格の7割は、原料たる天然ガスのコストなのである。

 同社はリトアニアの肥料市場のシェア3割を占めていたが、すでに今年の春から、まったく売れなくなっていた。値上がりしたので。』

ウクライナから穀物船出航 輸出再開第1号、レバノンへ

ウクライナから穀物船出航 輸出再開第1号、レバノンへ
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR014JL0R00C22A8000000/

『【イスタンブール=木寺もも子】ウクライナ産穀物を積んだ貨物船が1日、南部オデッサの港から出航した。ウクライナとトルコがそれぞれ明らかにした。ロシアによる侵攻で輸送が止まった黒海への回廊設置で関係国が合意してから初めての輸出再開となる。

【関連記事】米国、ウクライナに720億円追加支援 ロケット弾など

第1号の船はシエラレオネ船籍の貨物船で、トウモロコシ2万6千トンを積みレバノンのトリポリ港に向かうという。2日に黒海の出入り口にあたるトルコのイスタンブールに到着後、新たに設置した共同管理センターが積み荷などを検査する。

ウクライナのクブラコフ・インフラ相はフェイスブックへの投稿で、さらに16隻が出航待機中だと明らかにした。輸出再開で少なくとも10億ドル(約1300億円)の外貨収入が見込めるという。

国連のグテレス事務総長は声明を出し「合意に基づき多くの商船が動き出す最初(の事例)となり、世界の食糧安全保障に求められていた安定と救済をもたらすことを希望する」などと述べた。
穀物輸出再開に向けて準備が進む港を訪れたゼレンスキー大統領(左から3人目。7月29日、ウクライナ南部オデッサ)=ロイター

ロシアのウクライナ侵攻で世界的に穀物価格が上昇したが、国際指標となる米シカゴ商品取引所の小麦先物はこのところ軟調な展開が目立つ。侵攻前比で1割弱安い。小麦の世界輸出量の1割程度を占めるウクライナから、供給が本格的に再開するとの観測が上値を抑えている。

ウクライナ国内に滞留する穀物は2000万トン超にのぼる。ただロシアは回廊設置の合意翌日の7月23日にオデッサ港を攻撃した。船会社などが輸送を引き受けるかや保険料が高騰しないかといった懸念はくすぶり、本格再開の時期は不透明だ。

【関連記事】

・[FT]「作付けのお金がない」 困窮するウクライナの農家
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オデーサから穀物輸出の船が出たというのは何よりの朗報。もちろん、ロシアが今後態度を変える可能性もあり、リスクがないわけではないが、まずはこの状態が維持されることを期待したい。最初の輸出先がレバノンと言うことの意味も大きい。レバノンは数年前の穀物サイロの爆発があり、穀物の備蓄が出来ない状況で、コロナ禍での経済混乱による貧困の問題が深刻。こんな中で穀物価格が上昇するのは危険な状況だっただけに、ウクライナの穀物がレバノンに届けば、あらゆる面で危機が緩和する。
2022年8月2日 1:32 』

ウクライナ産穀物の輸送船監視、共同調整センター開所へ

ウクライナ産穀物の輸送船監視、共同調整センター開所へ
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR265MW0W2A720C2000000/

『【ドバイ=福冨隼太郎】ウクライナ産穀物の輸出再開を巡りトルコ国防省は26日、船舶の「共同調整センター」が27日に同国イスタンブールで開所すると発表した。ウクライナが目指す週内の輸出再開に向けて一歩前進したかたちだ。一方でロシアは港湾への再攻撃の可能性を示唆しており、輸出が実現できるか不透明感は残る。

ロシアのタス通信も26日、同国国防省が同センターが活動を始めたと明らかにしたと報じた。

共同調整センターの設置は、22日にロシアとウクライナの間で結ばれた穀物の輸出再開に関する合意項目の一つだ。黒海の出入り口に位置するイスタンブールに置かれる。ウクライナの港から穀物などを運ぶ船舶を監視する役割を担う。船舶はセンターに事前登録し、武器を積んでいないかなどの検査を受けたうえで特定の航路を通る。

ウクライナ政府高官は25日、週内にも穀物輸出を始める方針を明らかにしていた。南部チョルノモルシク港からの週内の出航を期待しているという。国連高官は、本格的な輸出の再開は数週間以内で、それ以前にいくつかの船が試験的に航行するとの見通しを示した。
合意の履行にはなお不透明感が漂う。ロシアは合意直後の23日に、輸出拠点の1つとなるウクライナ南部オデッサ港をミサイルで攻撃した。ロシア側はウクライナの軍艦などが標的だったと主張した。だが英国防省は26日、軍事標的が「ミサイルが命中した場所にあった兆候はない」との分析を示した。

ロイター通信などによるとロシアのラブロフ外相は25日、「合意はロシアによるウクライナの軍事インフラへの攻撃を継続することを妨げない」と指摘した。ラブロフ氏の発言は港湾への攻撃が今後も起きうることを示唆したものだ。

ロシアの強硬姿勢は合意履行の見返りとして、欧米による制裁の緩和を引き出すのが狙いとみられる。ラブロフ氏は24日に、ロシア産穀物の輸出に対する欧米制裁の緩和を求める発言をした。

ウクライナ大統領府によると同国のゼレンスキー大統領は25日、記者団に「輸出のために必要な全てを行う予定だ」と語った。仲介役の国連とトルコがロシアをどれだけコントロールできるかが問題とも指摘した。

合意を仲介したトルコのエルドアン大統領は25日、同国国営放送のインタビューで「ロシアとウクライナ両国が合意に基づく責任を果たすことを求める」と述べた。仲介国として合意の実行を進めると強調した。

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・ウクライナ大統領「穀物輸出、必ず始める」
・ロシア・ウクライナ、穀物輸出再開で合意 黒海に「回廊」』

ロシア、オデッサ港攻撃認める「軍事インフラを破壊」

ロシア、オデッサ港攻撃認める「軍事インフラを破壊」
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR243PM0U2A720C2000000/

『【イスタンブール=木寺もも子】ロシア外務省のザハロワ報道官は24日、ロシア軍が23日にウクライナ南部のオデッサ港を攻撃したことを認めた。高精度のミサイルで軍事インフラを破壊したとしている。穀物輸出に関連する施設ではなく、輸出再開の合意違反にはあたらないと主張するつもりだとみられる。

ザハロワ氏はSNS(交流サイト)に投稿し、ウクライナのゼレンスキー大統領が攻撃を合意違反だと非難したのに反論した。タス通信によると、ロシア国防省も24日、オデッサ港への攻撃で、ウクライナの軍艦と米国から提供された対艦ミサイル「ハープーン」の倉庫を破壊したと明らかにした。

【関連記事】

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・米国務長官、オデッサ港攻撃のロシアを「強く非難」
・ウクライナ侵攻5カ月、膨らむ武器供与 支援疲れも

ウクライナ側の主張によると、ロシア軍のミサイル攻撃では荷さばきに必要な施設などが破壊された。22日にロシア、ウクライナがそれぞれ国連、トルコと結んだ合意ではウクライナ産穀物の輸出を再開するため、「関連する全ての商船や民間船、港湾施設を攻撃しない」としていた。

トルコのアカル国防相は23日、ロシアから「オデッサ港への攻撃には一切関与していない」という趣旨の説明を受けたと明らかにしていた。事実ならロシアの説明には矛盾がある。

ウクライナは穀物輸出の再開に向けた準備を続けるとしているが、貨物船が航行する「回廊」の安全性に不安が生じ、本格的な輸出再開には速くも暗雲が垂れこめる。国連、米国などは相次いでロシアを非難した。

一方、24日にロシア、ウクライナ産穀物の輸入国であるエジプトを訪れたロシアのラブロフ外相は「ロシアの穀物輸出業者が(輸出の)約束を全て果たすことを再確認した」と述べた。

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穀物輸出再開、価格安定には時間も 合意の履行が焦点に

穀物輸出再開、価格安定には時間も 合意の履行が焦点に
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR223Y60S2A720C2000000/

『ロシアによる侵攻で滞っていたウクライナ産の穀物輸出が再開する見通しとなった。22日、両国がそれぞれ国連、トルコと合意文書に署名した。2000万トン超の在庫放出への期待から、小麦価格は侵攻前の水準まで下落した。だが、黒海に「回廊」を設ける合意の履行は予断を許さず、ウクライナの生産減少も懸念される。供給と価格の安定には時間がかかりそうだ。

米シカゴ商品取引所の小麦先物は日本時間22日夜の取引で1ブッシェル8ドルを下回った。侵攻前の水準を下回るが、1年前と比べるとまだ1割強高い。

穀物コンサル会社、グリーン・カウンティの大本尚之代表は「今まで出てこなかった穀物が市場に出回るとなれば相場の下押し圧力が強まる」と指摘する。先物価格は6ドル台に下がる可能性もあるという。

ただ、中長期の供給の安定には慎重な見方も多い。日本国内の海運仲介会社の担当者は「安全な航行が保証されなければ、穀物船が(ウクライナ南部の主要積み出し港)オデッサに向かうのは厳しい」と指摘する。

例年、ウクライナを含む北半球からの輸出が本格的に増える秋までに黒海ルートが正常化しなければ需給の逼迫感は緩和しないとの見方もある。

24日で侵攻開始から5カ月となるが、戦闘やロシアによる民間施設への攻撃は続いている。

22日の署名式で、両国は同席を避けるなど不信感は根深く、合意の履行が順調に進まないとの懸念は拭えない。

米国のトーマスグリーンフィールド国連大使は22日、「ロシアに合意の履行責任を果たさせる必要がある」と強調した。

作付けができなかったといった理由で、ウクライナの穀物生産は減少している。ウクライナ穀物協会(UGA)は6月、2022年の小麦収穫量は前年の3300万トンから42%減少し、1920万トンになるとの見通しを示した。

戦争が長引くほど、世界の穀物需要とウクライナの供給能力のギャップが広がり、食料価格を再び押し上げる可能性がある。

ロシアは貧しい国々で飢餓のリスクを高めているとの批判を意識し、ウクライナの輸出再開を認めた格好だが、今回の交渉と並行し、自国産の穀物や肥料輸出を認めさせる実利も得つつある。米国は14日、ロシアへの金融制裁に農産物取引は含まれないとの見解を示した。

欧州連合(EU)はロシア制裁に農産物は含まれないとかねて説明してきた。21日には従来の制裁内容を微修正し、第三国とロシアの間の農産物の取引を対象としていないことを明確にした。

(山本裕二、イスタンブール=木寺もも子)』

穀物1.3兆円分輸出へ ロシア「約束履行」表明

穀物1.3兆円分輸出へ ロシア「約束履行」表明
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN2307M0T20C22A7000000/

『【キーウ=共同】ウクライナのゼレンスキー大統領は22日夜のオンライン演説で、ウクライナ産穀物の輸出再開でロシアと合意したことに関し、ウクライナは約100億ドル(約1兆3600億円)相当の穀物を輸出できると述べた。合意の実効性が課題となる中、タス通信によると、ロシアのショイグ国防相は「ロシアは約束を履行する」と表明した。

ゼレンスキー氏は昨年収穫した2千万トンに加え、収穫が始まっている今年分が輸出可能だとした。米国家安全保障会議(NSC)のカービー戦略広報調整官は、輸出再開の成否は「ロシアが取り決めを守るかどうかにかかっている」と述べ、合意履行を求めた。

ショイグ氏とウクライナのクブラコフ・インフラ相が22日にトルコのイスタンブールで、輸出再開と航路の共同監視を柱とする合意文書にそれぞれ署名した。

ゼレンスキー氏は「ウクライナが戦争に耐えられることを示す証拠だ」として合意を歓迎。一方、ロシアが2月の侵攻後に海上を封鎖し、港湾や鉄道、倉庫、サイロを攻撃して輸出を妨害したと非難した。』

ロシア・ウクライナ、穀物輸出再開で合意 黒海に「回廊」

ロシア・ウクライナ、穀物輸出再開で合意 黒海に「回廊」
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR21DKT0R20C22A7000000/

『【イスタンブール=木寺もも子】ロシアのウクライナ侵攻で同国からの穀物輸出が滞っている問題で、両国は22日、それぞれ仲介役の国連、トルコと輸出再開に向けた合意文書に署名した。価格高騰を抑え食料危機の回避につなげることができるか、注目される。

イスタンブールでの署名式に出席したグテレス国連事務総長は「合意は経済破綻の間際にあった途上国、飢饉(ききん)が迫っていた人々に恩恵となる」と強調した。トルコのエルドアン大統領は「数十億に及ぶ人々が飢えに陥るのを防ぐだろう」と述べた。

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ロシアのショイグ国防相、ウクライナのクブラコフ・インフラ相は時間差で壇上に上がった。同席せず、同じ文書への署名も避けたもようだ。

国連によると、黒海沿岸のウクライナの港からの穀物などを運ぶ貨物船の運航を可能にする「回廊」の設置が合意の柱。23日にも黒海の出入り口に位置するイスタンブールに共同調整センターを設け、船舶の運航状況を監視し、武器を積んでいないかなどを確認する。

交渉に携わった国連の高官は、数週間以内にも本格的な貨物船の出入りが始まるとの見通しを示した。

ウクライナは南部オデッサなど港の防衛のために機雷を敷いている。ロシアは撤去が必要と主張していたが、ウクライナ側が安全な航路を先導する。ウクライナ高官は、港にロシア船は出入りしないと述べた。

4者は13日の対面協議で大筋合意し、詰めの調整を行っていた。

ウクライナは小麦輸出で世界5位。南部の主要港オデッサなどに滞留している穀物は2000万トン超に達し、世界の年間輸出量の5%を占める。

国連食糧農業機関(FAO)によると、人口2億7000万人のインドネシアは小麦輸入の3割をウクライナに依存する。

割安感や地理的な近さから特に中東やアフリカの途上国の輸入が多く、ウクライナ産小麦への依存度はソマリア(人口1600万人)で5割、レバノン(同500万人)では6割に達する。

ロシアは国際世論の批判を意識し、ウクライナの輸出再開を認めたもようだ。自国産の食料や肥料などの輸出を認めさせたい狙いもあったとみられる。

ただ、両国の相互不信は根強く、合意を円滑に履行できるかは予断を許さない。ウクライナ外務省は21日夜の声明で「ウクライナ南部の安全、黒海におけるウクライナ軍の強固な立場」などが保証されなければ支持できないとくぎを刺した。
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分析・考察

ウクライナが機雷を敷設しているという問題だが、ウクライナ軍がまともな軍であれば、必ず安全航行できるルートを確保しているはずであり、それがあれば、機雷除去せずとも輸送は開始できる。それよりも問題となるのは、ロシアがどこまでこの合意にコミットするか、だろう。このまま穀物輸出を止めていれば、味方となるべき中東やアフリカ諸国に圧力をかけることになるからだろう。しかし、ロシアはいつでも黒海を封鎖してウクライナを苦しめることが出来るということを学習しているので、また繰り返す可能性はある。もしこの合意で穀物価格が下がれば、ロシアの主張する制裁による穀物高ではなく、黒海封鎖が原因であることが証明される。
2022年7月23日 1:08 』

ウクライナ穀物輸出トルコ高官 “再開に向けた署名式 22日に”

ウクライナ穀物輸出トルコ高官 “再開に向けた署名式 22日に”
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220722/k10013730711000.html

『ロシア軍による封鎖でウクライナの港から小麦などの輸出が滞っている問題をめぐり、トルコの高官は、ロシア、ウクライナの代表団と国連が参加して、輸出再開に向けた署名式が22日にイスタンブールで行われることを明らかにし、世界的に食料価格が高騰するなか事態の打開につながるのか注目されます。
ロシア軍による封鎖でウクライナの港から小麦などの輸出が滞っている問題をめぐって、両国がトルコと国連を交えて行っている協議は、大詰めを迎えているとみられ、トルコのカルン大統領首席顧問は「穀物輸出の署名式は22日、イスタンブールで開催される」とツイッターで明らかにしました。

これについてウクライナのゼレンスキー大統領は、21日に公開したビデオメッセージで「あす、海上封鎖についてトルコからのよいニュースを期待する」と述べ、協議の成果に期待を示しました。

ただ、国連の副報道官は会見で「状況はやや流動的なため、いつ、どのような署名が行われるのかは現段階では言えない」と述べるにとどめているほか、ロシア外務省のルデンコ次官はロシア産の農産物の輸出制限の解除が必要だと主張していて世界的に食料価格が高騰する中、事態の打開につながるのか、注目されます。

こうした中、ロシア軍は、掌握を目指す東部ドネツク州やハルキウ州で攻撃を続けています。

ウクライナの非常事態庁によりますと、21日、ドネツク州のクラマトルシクで現地の学校が砲撃を受け1人が死亡、2人ががれきの下に取り残されているということです。

一方、アメリカのシンクタンク「戦争研究所」は21日、「ロシア軍は地上攻撃に成功しておらず、スロビャンシクなどを掌握することなく失速を迎える」という分析を発表し、ロシア軍の進軍が鈍っているという見方も出ています。

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エジプト パンの値上げは政治的なタブー

エジプト パンの値上げは政治的なタブー ウクライナ穀物輸出再開に向けた4者協議は週内に合意署名か – 孤帆の遠影碧空に尽き
https://blog.goo.ne.jp/azianokaze/e/a8fd9c13a3fc9a43316956ba18aa3a93

『【すでに上昇していた小麦価格はウクライナ侵攻で更に高騰、「小麦戦争」へ】
周知のように食料輸出大国ウクライナとロシアの戦争状態によって世界の食料需給は大きな影響を受けています。
特に影響が大きいのが多くの国でパンなどの主食に使われる小麦価格の高騰です。

食料品価格はウクライナ侵攻以前から上昇傾向にあって国際的問題となっていましたが、ウクライナ侵攻を受けた更なる高騰で一部の国では飢餓の危機や政情不安を惹起する状況にもなっています。

****ウクライナ侵攻で世界は「小麦戦争」へ****
農業大国ウクライナに対するロシアの侵攻は、世界の小麦市場に深刻な混乱をもたらしており、一部の国では飢餓を引き起こしかねないと懸念されている。

■世界の主食
「Feeding Humanity(人類への食料供給の意)」と題する著書がある経済学者のブルーノ・パルマンティエ氏は、「小麦は世界中で食べられているが、どこでも生産できるわけではない」と指摘する。

 輸出できるだけの小麦を生産している国も、十数か国しかない。中国は世界一の生産国だが、14億の人口を養うために小麦を輸入している。

 小麦の輸出大国は、ロシア、米国、オーストラリア、カナダ、ウクライナ。輸入国の上位は、エジプト、インドネシア、ナイジェリア、トルコなどだ。

■価格高騰の理由
穀物価格は、2月にロシアがウクライナ侵攻を開始する前からすでに高騰していた。背景にはいくつかの要因がある。

まず、新型コロナウイルス流行による打撃から経済が立ち直るにつれ、燃料価格が上昇し、窒素ベースの肥料の価格も高騰した。またコロナ関連規制の解除に伴い、あらゆる製品の需要が急増し、世界のサプライチェーンに大きな混乱を来した。さらに昨年の熱波で、カナダでは農作物が壊滅的な被害を受けた。

■ウクライナ侵攻が事態を悪化させた訳
ロシアのウクライナ侵攻開始後、小麦価格はさらに高騰。5月の欧州市場では1トン当たり400ユーロ(約5万5000円)超と昨夏の2倍となった。開発途上国にとってはあまりにも大きな変化だ。

侵攻開始前、欧州の穀倉地帯と言われるロシアとウクライナは、世界の穀物輸出の30%を占めていた。また国連食糧農業機関によると、30か国以上が小麦の輸入需要の30%を両国に依存している。

■ウクライナへの影響
ロシアの海上封鎖によって、ウクライナでは2500万トン相当の穀物が輸出できず、農場や港のサイロに足止めされ、鉄道や車両で出荷された分は、海上輸送の6分の1にとどまっている。

また侵攻が続く中、小麦の種まきをする時期を迎えた農家は、防弾チョッキを着て作業したり、地雷などの除去を専門家に依頼したりする必要に迫られた。ウクライナの穀物協会UGAによると、今年の小麦の収穫高は前年比40%減と予想されている。

米国のアントニー・ブリンケン国務長官は、ロシアによる封鎖は「武力による脅しだ」と非難。世界の国々を「屈服」させ、対ロシア制裁の解除を狙うウラジーミル・プーチン大統領の意図的な戦略だと述べた。
経済学者のパルマンティエ氏は「戦時下において、生産大国は文字通り他国の運命を握る」と言う。

■今後の見通し
他の小麦生産大国に目を向けても、中国は在庫を放出する見込みがなく、熱波で不作のインドは輸出を一時禁止している。

2022〜23年度の世界の小麦生産高は約7億7500万トンで、前年度より450万トン減ると、米農務省は予測している。同省は、ウクライナなどでの減産分は、カナダ、ロシア、米国での増産によって「一部」相殺されるとみている。

だが専門家は、収穫が始まったここ数週間で価格は下落しているものの、市場がウクライナ侵攻の影響を織り込み、不況の懸念が高まっていると指摘している。

ロシアの黒海封鎖によるウクライナからの穀物輸出停止をめぐり、両国は今週、仲介国トルコで国連関係者を交えて3月以来となる対面協議を実施した。トルコのフルシ・アカル国防相は、一定の進展があったとし、来週の再協議で最終合意に至る可能性を示唆している。 【7月16日 AFP】
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【世界最大の小麦輸入国エジプトの苦境 問題は統治の在り様にも】
小麦など食料品価格の高騰は地域的には、ウクライナ・ロシアからの輸入に頼る割合が高い中東・アフリカで大きくなっており、また、紛争地域の国際支援も打撃を受け飢餓に直結する事態にもなっています。

パンの価格の値上がりは、中東各地で政治問題になっており、イランでは5月、小麦関連の政府補助金の削減をきっかけに、小麦を原料としたパスタやパンの価格が3倍になって各地でデモが起きました。イラクやレバノン、スーダンなどでも、小麦やガソリンの価格高騰に怒った市民のデモが伝えられています。

小麦の世界最大輸入国でもあるエジプトも小麦調達・価格高騰に苦しんでいます。

****エジプト、庶民にパン供給の重圧 小麦の増産に躍起****
世界最大の小麦輸入国エジプトが国産小麦の増産を急いでいる。ロシアのウクライナ侵攻で両国に8割を頼っていた輸入小麦の調達がにわかに難しくなり、自給率の向上を迫られている。

小麦の確保は、手厚い補助金で庶民にパンを安く届ける仕組みの大前提。主食を割安に供給する重圧が政権を突き動かしている。

6月初め、首都カイロ近郊のギザにある集荷所に、周辺の農家が収穫したての小麦の袋を続々と運び込んでいた。「小麦は畑の3割だったが、次の作付けは9割に増やそうと思っている」と農家のアリ・タンタウィさん(69)は話した。「国の安定のため、協力するのは当然だ」

エジプト政府は3月、小麦農家に増産奨励策を打ち出した。小麦1アルデブ(150キログラム)につき65エジプトポンド(約460円)を上乗せ支給すると決めた。買い取り価格が1割弱高くなる。小麦農家には肥料の調達も優遇し、高騰している市場価格より大幅に安く売り渡す。

エジプトの2021年の小麦の輸入量は国内需要の半分強に当たる約1200万トン。このうちロシア産が6割、ウクライナ産が2割を占めた。2月にロシアがウクライナに侵攻すると黒海からの出荷が滞り、ルーマニアなどからの代替調達に追われた。遠くインドからも小麦をかき集める事態に追い込まれた。

収穫量の6割は政府に売り渡すよう義務化
政府は「小麦の在庫は4カ月分ある」と民心の安定に躍起だが、輸入依存度を下げようという機運は今回の危機で高まった。

シシ大統領は5月、「国民のニーズに応えるという難題に直面している」と認め、増産に向けた「未来プロジェクト」を打ち出した。1990年代に当時のムバラク政権が着手し、その後停滞していた南部トシュカの農場開発計画の推進にも意欲を示した。ムサイラヒ供給・国内通商相は「24年までに国内需要の65%を賄えるようにする」との目標を掲げる。

小麦農家には優遇策の「アメ」を強調する一方で「ムチ」もある。今年の収穫量の6割を政府に売り渡すよう義務付け、違反者を逮捕した。許可なく民間に売るのも禁じた。

政府の買い取り価格は一律だ。交渉次第で高値になる民間業者向けより、どうしても割安だという。カイロ近郊の農家アブドラさん(65)は「政府への出荷は強制されるべきではない」と声を潜めた。小麦より果物や葉物野菜を大消費地のカイロに新鮮なまま出荷する方が稼げる、というのが近郊農家の本音だ。

政府が小麦の調達に腐心するのは、安価にパンを提供する現行制度に不可欠だからにほかならない。低所得者向けに政府が補助金で価格を抑えた平たいパンは、1枚当たり0.05エジプトポンド。10枚買っても約4円という安さで、製造コストの10分の1にも満たないとされる。人口の約7割が恩恵を受けている。

「アエーシ」と呼ぶ平たいパンは「生活」を意味するアラビア語の語源通り、エジプトの食卓に欠かせない。人口の3割が貧困層で、小麦の国際価格がウクライナ危機で高騰しても、政府はこのパンの価格を維持する姿勢を変えていない。低所得者とは違い、専用のカードを持たない高所得者らはこの安値では買えないが、政府は補助金なしのパンも3月に小売価格を固定した。

名古屋市並みの都市が毎年生まれるのと同じ
ウクライナ危機の長期化で小麦価格が高止まりするほど、政府は財政負担が膨らみ「逆ざや」問題に苦しむ。政府は2021年度予算でパンの補助金に約450億エジプトポンドを割り当てた。22年度は大幅な増加が避けられない。

中東で最大の人口を抱えるエジプトは20年に1億人を突破し、年2%のペースで増え続けると国連は推計している。1年で200万人も増え、名古屋市に迫る規模の都市が毎年出現する計算になる。食糧調達の切迫感は強い。

11年前にエジプトでムバラク政権を倒した民主化運動「アラブの春」は、食糧高への庶民の不満が一因だった。中東には未整備の社会保障制度を補うかのように、食糧価格を補助金で安く抑える国が多い。この暗黙の社会契約が破綻すれば、市民の不満の矛先は為政者に向かいかねない。

既に野菜など価格統制の対象外の食品は大きく値上がりし、エジプトの5月のインフレ率は前年同月比15%を上回った。「どうしてキュウリがこんなに高いの?」「シシに聞いてくれよ」。露天の市場で大統領を名指しして不満を垂れる人も珍しくなくなった。強権的な体制の国では異例のことといえる。物価高の波が主食にまで及べばどうなるか。シシ政権が小麦の調達に奔走するのは、危機感の高まりの裏返しだ。【6月20日 日経】
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上記記事にある11年前にムバラク政権を倒した民主化運動「アラブの春」だけでなく、1977年、サダト大統領(当時)がパンの価格を引き上げ、激しい暴動が起きています。その教訓から、パンの値上げは歴代政権にとって政治的なタブーだとなっています。

エジプト・シシ政権が小麦価格高騰に苦しむのは単に小麦需給動向という外的要因によるだけでなく、そもそもエジプトの、軍部や権力周辺だけが甘い汁を吸い、国民全体の利益がないがしろにされてきた統治にも大きな問題があるとも指摘されています。(このあたりはエジプトだけの話ではなく、食料問題で悩む国の多くは、基本的に統治に問題があることが多いと思われます。)

****食料危機でも腐敗は横行 政情不安のエジプトとレバノン****
ウクライナ戦争による小麦の輸入難で中東、アフリカ諸国は食料危機に直面しているが、中でも小麦の輸入世界一のエジプトと破綻国家レバノンは窮地に陥っている。だが、その背景には「両国の支配勢力が国民そっちのけで私腹を肥やす〝腐敗の構造〟がある」(中東アナリスト)ようだ。

パンの値上げが暴動に直結
(中略)政府がパンの価格へ特別に注意を払っているのは、これが政情不安に直結する問題だからだ。エジプトでは70年代からパンの値上げがあるたびに反政府暴動が繰り返されてきた。  

30年の長期にわたって支配してきたムバラク元政権が「アラブの春」で打倒された要因の一端はパンの価格に対する国民の不満があった。このためクーデターで政権を奪取したシシ大統領は30億ドル(約4000億円)もの補助金でパンの価格を維持、生活苦に対する国民の怒りを抑えてきた。  

だが、ウクライナ戦争後のパンの価格の高騰に政府批判も高まり、ネット上では、〝飢えの革命〟〝シシよ、去れ〟など政権にとっては危険なハッシュタグまで現れた。政府はこうしたネット上の投稿を即刻削除し、批判の取り締まりを強化。同時に富裕層ら50万人からパンの配給を受ける権利などをはく奪、対策に躍起になっている。
 
シシ政権誕生直後は同氏がエジプトの英雄ナセル元大統領に雰囲気が似ていることもあって支持が高かったが、軍指導部や大統領の取り巻きなど一部だけが利権を享受している現実に失望感が広まった。今回の食料危機の対応を誤れば、人口2200万のカイロなどでいつ暴動が起きてもおかしくないだけに、政権の懸念は強い。

甘い汁を吸う軍部
食料危機が深まったのはシシ政権が国民の生活改善や政治・経済改革を怠ってきたことが大きな要因だ。2016年にはIMFから改革を約束して120億ドルの支援を受けたが、国民の生活向上にはつながらなかった。それどころか、国家の借金は10年以降膨らみ、それまでの4倍である3700億ドルにまで増えた。  

「エジプトは近年、支配層の2%が甘い汁を吸い、残りの98%が苦しい生活を余儀なくされてきた。この構図はシシ政権でも全く変わっていない」(中東アナリスト)。特にシシ大統領の出身元である軍部は支配勢力の中核的な存在で、さまざまな企業を経営するコングロマリットでもある。  

その軍部とシシ政権がエジプト復興の起爆剤として一体となって取り組んでいるのが新首都の建設だ。カイロの人口は50年までには2倍の4000万人に急増するとの予測があり、建設事業で経済を活性化し、人口密集問題も解決しようという試みだ。  

新首都の建設地はカイロ東方45キロメートルにある砂漠地帯のど真ん中だ。政府の30に上る省庁や各国の大使館などが移転し、完成すれば650万人が住む都市となるというのが青写真だ。建設費用は約400億ドル(5兆円)。だが、「問題はこの新首都建設で得をするのは誰か、ということだ」(同)。  

メディアなどによると、建設を推進する都市開発公社の株式の51%は軍が保有、新首都圏の土地や不動産の売却などを取り仕切っている。しかも省庁が移転したカイロの跡地はみな一等地にあるが、この跡地の売却も事実上、同公社が独占しており、大きな利益が軍部に転がり込む勘定だ。軍に対する監査は一切ない。(後略)【6月18日 WEDGE】
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【トルコ・イスタンブールでの4者協議、週内にも合意署名か】
トルコ・イスタンブールでのロシアとウクライナの軍事代表と、仲介するトルコ、国連の4者で行われている穀物輸出再開を目指す協議では輸出航路の安全確保などで合意したと報じられています。

ウクライナからの小麦などの輸出がストップしているのはロシアが海上封鎖する黒海沿岸の港湾からの輸出ができなくなっているためですが、ロシア側は「我が国は最高レベル(プーチン大統領)で、輸出に何の支障も無いことを表明していた」「機雷は敷設した側が除去する必要がある。ウクライナ側が港に仕掛けた」(ロシアのベルシニン外務次官)と、責任は機雷を敷設したウクライナ側にあるとしています。

ウクライナ側には機雷を取り除けばロシアがそれを利用して港などへの攻撃を仕掛けてくるとの懸念があります。

ウクライナからの輸出再開のためには、この問題の解決が必要ですが、協議でこの問題がどのように扱われているかは定かではありません。

****穀物輸出巡る4者協議、週内に合意書署名も ロ・トルコ首脳19日会談****
トルコのアカル国防相は18日、ウクライナに滞留している穀物の輸出再開を巡るロシア、ウクライナ、トルコ、国連の各代表団による協議が週内に再び開かれる公算が大きいという認識を示した。

各代表団は先週イスタンブールで開催した会合で、輸出航路の安全確保などで合意した。ただ、国連のグテレス事務総長は、戦争終結に向けた和平交渉の実現には「長い道のり」があると述べていた。

国連報道官によると、グテレス氏は18日、ウクライナのゼレンスキー大統領と現在進められている穀物輸出再開に向けた協議について話した。

アカル国防相は「穀物や食料の輸送に関する計画や原則を巡り合意に達した。これを受けた会合が今週中にも開かれる見通し」と述べた。

別のトルコ政府高官は「複数の小さな問題点を巡り交渉は続ている」としつつも、「今週中に合意書に署名されることが期待されており、私も楽観視している。最終的な合意に至るまで、さほど時間はかからないだろう」と述べた。

また、ロシアのウシャコフ大統領補佐官は、プーチン大統領が19日にイランのテヘランでトルコのエルドアン大統領と会談し、ウクライナの穀物輸出を巡り協議すると明らかにした。

会談にはイランのライシ大統領も同席し、シリア情勢に関する協議も行われるという。【7月18日 ロイター】
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“週内に合意書署名も”ということはあと数日ですが、仮に穀物輸出で合意できても、ウクライナの停戦交渉とはまた別ものとも。

****ウクライナ穀物輸出巡る合意、停戦交渉再開につながらず=ロシア交渉担当者****
ウクライナとの停戦交渉に参加したロシアののレオニード・スルツキー議員は15日、ウクライナの穀物輸出を巡る合意が得られたものの、これがロシアとウクライナの交渉再開につながることはないと述べた。ロシアのタス通信が報じた。

ウクライナとロシア、国連、トルコは13日、ウクライナの穀物輸出の再開に向けた協議をトルコのイスタンブールで開き、輸出航路の安全確保などで合意した。【7月16日 ロイター】
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[FT・Lex]世界的な農地争奪戦が激化 食料安保狙い

[FT・Lex]世界的な農地争奪戦が激化 食料安保狙い
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB191200Z10C22A7000000/

『トランプ前米大統領は在任中、グリーンランド買収に関心を持っていると伝えられ、注目を集めた。デンマーク自治領のグリーンランドはこれに反発し、自らを売り物ではないと宣言した。だが、国境を越えた土地取引は例外的なものではない。

トランプ前米大統領は在任中にデンマーク領グリーンランドの買収に意欲を示し、反発を招いた=ロイター

食料不安がこの動きを加速している。トルコは、人口を養うために新しい牧草地を探している国のひとつだ。インフレが高騰する中、トルコは実現が危ぶまれているスーダンの土地80万ヘクタールの99年間のリース契約を復活させたいと考えている。

「農地収奪に関する情報サイト」プロジェクトのデータを利用して農地のリースを追跡している非政府組織(NGO)のグレーンによると、2016年までの10年間にこのような取引が500件近く行われた。78カ国の3000万ヘクタール以上の土地が取引対象となり、その多くはアフリカにある。このため、水などの枯渇しつつある資源への圧力が強まる。それでも、難民危機や気候変動、戦争によって悪化した食料の奪い合いは、今後さらに激しさを増すと予想される。

民間企業も土地の争奪戦に参加している。08年に韓国の物流企業、大宇ロジスティクスは、マダガスカルの土地130万ヘクタール(ベルギーの面積のおよそ半分に相当)を99年間、無償で貸与される契約を結んだ。当時同社の幹部は、フィナンシャル・タイムズ(FT)に対し、「食料安全保障のためにトウモロコシを植えたい。食料はこの世界で武器になり得る」と語った。

国境を越えた土地投資への流れ止まらず

この取引は、特に当時のラバルマナナ大統領の失脚の一因になったこともあり、強い反発を受け、いくつかの将来の計画が縮小された。中南米など他の国々との取引は、土地そのものではなく、農地の生産高の確保に基づくものなど、より受け入れられやすい形に再構築された。

だが、物議を醸す取引はまだ続いている。セルビアに大規模な土地を所有するアラブ首長国連邦(UAE)のアブダビ首長国を拠点とするエリート・アグロは、マダガスカルと農地取引の契約を結んだ。米国に拠点があるアフリカン・アグリカルチャー(AAGR)は、セネガルでアルファルファを栽培する壮大な計画を立てており、昨年末にはニジェールの土地を巡る契約を結んだ。

ルーマニア系オーストラリア人の鉱山王フランク・ティミシュ氏が所有するAAGRは、6月末にナスダック上場を申請した。AAGRは、セネガルで学校と食料を提供しており、良いことをしているとみなされているとの立場を強調する。しかし、セネガルの一部の地域社会は反発して土地は自分たちのものだと主張し、返還を要求している。

今後も、地元の住民と新たなグローバル地主との間でさまざまな争いが起こると予想される。それにもかかわらず、土地への投資の流れは止まりそうにない。

(2022年7月17日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版 https://www.ft.com/)

(c) The Financial Times Limited 2022. All Rights Reserved. The Nikkei Inc. is solely responsible for providing this translated content and The Financial Times Limited does not accept any liability for the accuracy or quality of the translation. 』

バイデン氏、サウジ原油増産「期待」 食料支援1400億円

バイデン氏、サウジ原油増産「期待」 食料支援1400億円
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN1623U0W2A710C2000000/

『【ジッダ(サウジアラビア西部)=中村亮】バイデン米大統領は16日、サウジアラビアで開く湾岸協力会議(GCC)の関連会合に出席した。15日にサウジへ原油増産を個別に求めたことに続き、会合でも産油国に増産を働きかけた。中東の食料危機に10億㌦(約1400億円)の支援を表明した。

【関連記事】

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・サウジ皇太子、親密アピール バイデン氏は距離感に苦慮

サウジ西部のジッダで開く会合にはGCCに参加する6カ国とエジプト、イラク、ヨルダン、米国の首脳らが参加した。

バイデン氏は会合で原油市場について「エネルギー生産国はすでに生産を増やしており、今後数カ月にも期待している」と話した。石油輸出国機構(OPEC)にロシアなどを加えたOPECプラスは8月上旬に会合を予定している。バイデン氏の発言は増産を決めるよう促したものとみられる。

バイデン氏は15日、サウジのサルマン国王やムハンマド皇太子と会談した。会談後に記者団に対し「私は米国への原油供給を増やすために全てのことをする。サウジとはその緊急性を共有した」と説明した。「数週間で追加措置があると期待する」とも言及し、サウジに増産を強く促した。

米国とサウジは15日に公表した共同声明で「安定した世界のエネルギー市場を目指す方針を再確認した」と明記したが、増産の有無や規模には触れなかった。

バイデン氏はロシアによるウクライナ侵攻で食料価格が高騰していることを踏まえ、中東への食料支援を講じると説明した。価格高騰が政情不安につながるリスクがあり、新興国ほど食料危機に懸念が根強い。

バイデン氏は米大統領が中東を訪れるタイミングで、米軍が中東で戦闘任務を実施していないのは約20年ぶりだと指摘した。中東政策をめぐり「我々の資源をパートナー国の支援や同盟の強化、地域が直面する問題の解決に向けた有志連合の創出に振り向ける」と強調した。

米国は2000年代にアフガニスタン戦争やイラク戦争を始め、中東の民主化を進めようとしたが失敗した。バイデン氏はこの教訓を生かし、中東安定を中東各国に委ねて米国はサポート役に徹する構えだ。「唯一の競争相手」とみなす中国に対抗するため、米軍の戦力や予算をインド太平洋に回す狙いがある。

バイデン氏は「我々は中東を離れて中国やロシア、イランにつけ込む隙を与えるつもりはない」とも強調した。米国が安全保障や経済分野でのイスラエルとアラブ諸国の協力を後押しし、中東情勢を安定させていく方針だ。

米政府高官によると、GCC参加国は米国と連携したインフラ投資に総額30億ドルを使う方針を示す。米国は主要7カ国(G7)が掲げる「質の高いインフラ」の理念を中東各国と共有し、インフラ分野でも協力を強める。
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前嶋和弘
上智大学総合グローバル学部 教授
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ひとこと解説

アメリカ国内政治的にはプラスになりにくいのが今回の中東訪問。皇太子との手打ちで、リベラル派は猛反発。パレスチナ和平もそもそも動かすのが困難。共和党支持者は何をやってもバイデンを支持せず。今回も「トランプの中東政策が素晴らしかったのでその継続だけ」とみるはず。

さらに小売りのガソリン価格はガロン5ドルから4ドル台にピークアウトにみえますが、高い水準は変わらず。たとえサウジが原油増産をある程度行っても、需要とともに投機筋が価格を上げている分、価格がどうなるかは何ともいえないところ。
2022年7月18日 1:42 (2022年7月18日 6:34更新)

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田中道昭
立教大学ビジネススクール 教授
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ひとこと解説

バイデン氏のサウジアラビア訪問に時を合わせるかのように、ロイター通信は英文の独占記事として15日付で、“ロシアへの経済制裁の抜け穴構造”や“サウジとロシアの錬金術の手法“を明らかにしました。ロシアは割引価格で燃料油をサウジに輸出、サウジはそれを国内用に消費し自国の原油は輸出に回すという裁定取引をしており、第二四半期は同燃料油取引が倍増したとのこと。同様に中国、インド、アフリカ、中東諸国がロシアからの原油や燃料油の輸入を増やしているとも伝えています。米Politicoはサウジ国王と皇太子がバイデン氏を空港で出迎えなかったことを皮肉りましたが、そこに様々なことが投影されており憂慮されるところです。https://www.reuters.com/business/energy/exclusive-saudi-arabia-doubles-q2-russian-fuel-oil-imports-power-generation-2022-07-14/
2022年7月17日 5:50

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松尾博文
日本経済新聞社 上級論説委員/編集委員
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分析・考察

バイデン米大統領のサウジアラビア訪問は、実力者ムハンマド皇太子の存在を際立たせる結果になりました。宮殿に大統領を迎えるところから、湾岸協力会議(GCC)首脳会議でのホストとしての姿まで、皇太子の名誉回復をアピールする機会になったのではないでしょうか。加えて首脳会談後に公表された共同宣言(ホワイトハウス版)を読むと、18年に暗殺されたサウジ人ジャーナリストの名前を明記して人権問題に一項目を割いていますが、イランを念頭に置く安保協力や次世代通信規格、原発、グリーン水素、サイバーセキュリティなどでの協力合意が並びます。サウジが得たものの大きさに対して米国は何を得たのか。訪問がもたらす余波に注目です。
2022年7月17日 11:11 (2022年7月17日 11:42更新)』

ウクライナ穀物輸出、黒海に「回廊」 共同監視で合意

ウクライナ穀物輸出、黒海に「回廊」 共同監視で合意
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR1467A0U2A710C2000000/

『トルコのアカル国防相は13日、黒海にウクライナ産の穀物を輸送する「回廊」を設置する方向で合意したと発表した。同日イスタンブールでウクライナ、ロシア、国連との4者協議を開き、回廊を共同管理することなどで一致した。世界的な穀物価格上昇や供給不足の緩和につなげる。

アカル氏の声明によると、黒海の出入り口にあたるイスタンブールに共同管理センターを設け、仲介役の国連、トルコを含む4者で貨物船の出入りなどを監視する。来週にも再度イスタンブールで会合を開き、詳細を詰めたうえで合意文書への署名を目指す。

国連のグテレス事務総長は、最終合意に向けてはなお努力が必要だとしたうえで「世界の飢餓を緩和する希望の光だ」と期待を示した。

グテレス氏によると、4者協議ではウクライナが沿岸防衛のために敷設した黒海の機雷撤去を巡っても進展があった。ウクライナは機雷を撤去すれば、ロシアがその隙から南部オデッサなどの重要拠点を狙う可能性があると懸念していた。詳細は明らかになっていないが、回廊の共同監視で懸念を払拭する仕組みが議論されたとみられる。

ウクライナのゼレンスキー大統領は13日夜のビデオ演説で、協議では一定の進展があったとして「黒海の航行でロシアの脅威が取り除けたら、深刻な世界の食糧危機を軽減できる」と指摘。数日中に詳細について合意できるとの見通しを示した。

ロシア国防省は13日の協議前の声明で「迅速で実効的な解決に向けた提案パッケージを提案した」と述べていた。

ウクライナは小麦輸出で世界5位の穀倉地帯で、2月下旬に始まったロシアの侵攻は世界的な穀物価格の上昇を招いた。米シカゴ商品取引所の小麦先物は3月、一時1ブッシェル13ドル台後半の過去最高値を付けた。足元でも1年前と比べて3割高い。

黒海の出入り口にあたるイスタンブールを航行する貨物船(13日)=AP

ウクライナは陸路に加え、ルーマニア国境のドナウ川河口から黒海南部に抜ける航路を今月に入って稼働させるなど、ロシアに制圧された黒海北岸以外の輸送路拡大を進めていた。ただ主要な輸出拠点だった南部オデッサやミコライウの取扱量には及ばず、2000万トン以上の穀物がオデッサなどで滞留している。

4者協議に注目が集まった13日の小麦相場は、3月の高値から4割安い1ブッシェル8ドル台前半で推移したが、日本時間14日夕時点では反発している。「輸出再開への不信感や侵攻前の水準で推移している値ごろ感」(マーケットエッジの小菅努代表)があるという。

農林中金総合研究所の阮蔚理事研究員は「今回の基本合意は、実際に輸出が進めば小麦価格の下落につながるので喜ばしいニュースだ」と評価する。一方、ウクライナ側はロシア軍による農地への放火も主張している。「黒海ルートが元に戻ってもウクライナ産の輸出量が完全に戻るには数年かかる」(阮蔚氏)

13日に実現したウクライナとロシアの対面協議が中長期的な停戦につながるかどうかは見通せない。記者会見で停戦の可能性について問われたグテレス氏は「現時点で和平合意の展望は見えない」と述べた。

(イスタンブール=木寺もも子、山本裕二)』

[FT]オデッサ港に不気味な静けさ 黒海封鎖解けず

[FT]オデッサ港に不気味な静けさ 黒海封鎖解けず
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB101170Q2A710C2000000/

『黒海に面したウクライナ南部オデッサ港では、そびえるクレーンは立ち尽くすばかりで、海岸沿いのカフェやレストランに客の姿はほとんどなく、日が暮れると船影も全く見えない。

ロシアのミサイル攻撃で破壊されたオデッサ地域の集合住宅=ロイター

プーチン・ロシア大統領による侵攻はウクライナ全土に殺りくをもたらしているが、にぎやかな海上ターミナルや観光客の往来で知られる港湾都市オデッサには不気味な静けさが漂っている。

ロシアが2月に侵攻を開始して以来、オデッサ地域は度重なるミサイル攻撃の標的となっており、1日には娯楽施設と集合住宅が攻撃を受け、21人が死亡した。

ロシアはオデッサをはじめとする黒海の港湾封鎖を柱に、ウクライナの経済インフラをまひさせる戦略を強化しており、7月に入って穀物貯蔵施設もミサイル攻撃で破壊された。

近郊のピブデンニ港でターミナルを運営するトランスインベストサービスのアンドレイ・スタブニツァー最高経営責任者(CEO)によると「オデッサには、港湾運営、入港する商品を売る卸売市場、観光客という3つの収入源がある」が、「この3つは完全に途絶えている」という。

今回の戦争前、ウクライナは世界の穀物輸出の約15%を占める農業大国となり、オデッサは輸出拠点として重要な役割を担っていた。港は月500万トンの農産物の取り扱いが可能だった。

ロシア人富裕層好みの観光地

戦争前の人口が100万人を超えていたウクライナ第3の都市オデッサは、とりわけロシア人富裕層の間で主要な観光地の1つでもあった。宿泊施設のテレビには今でもロシアの番組が流れており、ロシア語は依然としてウクライナ語よりも一般的だ。

戦闘が勃発する以前、この地域では国内観光客も含めて年間400万人の訪問者を当てにできた。2014年にクリミア半島がロシアに併合され、立ち入りがほぼ不可能になると、国内からオデッサを訪れる人の数は増加した。

かつて人気を博したデリバシフスカ通りのバーは現在、地元民を呼び込もうと全力を挙げているが、客足は少ない。有名な「ポチョムキンの階段」をはじめ、オデッサの風光明媚(めいび)な観光名所の多くは、厳重な警備が敷かれた立ち入り禁止区域となっている。
観光客が不在であるばかりか、多数のオデッサ住民が逃げ出し、入れ替わりにウクライナ東部の猛烈な砲撃戦を逃れてきた避難民が流入。この地域では7万人以上が難民として正式登録されているが、当局によると実際の数は40万人にのぼる可能性がある。

オデッサにとって今回の戦争は大きな衝撃となっている。この都市はロシアと文化的に深いつながりがあり、当初は侵攻を支持する住民が無視できないほどいたと当局が認めている。だが「壊滅的な」戦争がそうした幻想を打ち砕いたと語るのは、地元の行政当局で対内投資・観光担当の責任者を務めるロマン・グリゴリシン氏だ。

同氏はかつてビジネス界のリーダーとのオンライン会議を取り仕切る日々を送り、30年開催の国際博覧会(万博)をオデッサに誘致する構想を描いていた。いまでは防弾チョッキの確保という任務が課され、戦争が招いた大きな変化に対処する方法を他の地元住民とともに学んでいる。「私たちの姿勢はこれまでとはまったく異なっている」と同氏は話す。
6月、収穫中のオデッサ地域の大麦畑=ロイター

スイス南部ルガノで最近開かれたウクライナ復興国際会議において、ウクライナは自国経済の再建にかかる費用を少なくとも7500億ドル(約100兆円)とする試算を公表した。だが、戦争もその影響分析もまだまったく終わっていない。

ピブデンニ港のスタブニツァー氏によると、穀物やヒマワリ油、鉄鉱石などの原料を含む1000億ドル相当の物資が、黒海封鎖によって足止めされているという。オデッサとその周辺の港では、数十隻の船舶がウクライナの海域から出られない状態だ。ウクライナの農家が作物を収穫しても、世界市場に簡単に届けられる代替ルートはないため、この数は増えるとみられる。

地場の物流サービス会社タリー・ロジスティクスのパートナー、アンドレイ・ソコロフ氏は「大混乱をきたしている」と話す。同社はルーマニアとの国境に近いレニ港などドナウ川の港で輸出業者の船腹予約を支援している。

ドナウ川にあるウクライナの小さな港は取り扱い能力を増強しているが、規模の大きい海上ターミナルを通っていた貿易量には及ばない。オデッサの南に位置するこうした港につながる鉄道は、ロシアのミサイル攻撃ですでに運行を停止しており、今や道路も攻撃の標的になっている。

ウクライナ議会で社会政策委員会のトップを務める地元当局者のスタニスラフ・ノビコフ氏は、外国の原材料や卸売品に依存する産業も黒海封鎖で機能不全に陥っていると指摘する。

同氏によると。地元企業の40%程度が部分的ないし全面的に稼働を停止している。東欧有数の鋼索・鋼線メーカーであるスタルカナトのオデッサ工場は、生産能力のわずか4分の1で稼働しているという。

「誰もが商品を売ったり原材料を仕入れたりする自信をなくしている。人材も不足している。多くの人が国を守ろうと戦闘の前線に向かったからだ」

オデッサは依然として、プーチン氏のミサイルやロシアの征服の標的になっている。軍事アナリストによると、ロシアが南部ミコライウ州の沿岸に執拗に砲撃を加えているのは、東部ドンバス地方と、隣国モルドバで親ロ勢力が実効支配する沿ドニエストル地方を結ぶ陸橋を築くため、ロシア軍を西に進軍させる作戦の一環かもしれないという。オデッサはその邪魔になる。

島奪還で封鎖解除の希望も

オデッサでは、少なくとも港湾については最悪期が過ぎ去ると希望を持ち続ける向きもある。ウクライナ軍が黒海西部の重要拠点ズメイヌイ(スネーク)島を先ごろ奪還したことで、黒海封鎖は解かれるとの期待が膨らんでいる。輸出業者の間では、トルコと国連が仲介する協議によって、ロシアに封鎖解除を迫れるのではないかと期待する声もある。

スタブニツァー氏は、沿岸防衛用に敷設された機雷が撤去される前であっても、ほとんどの港湾は封鎖が解除されれば数週間以内に操業を再開できるとみている。「私たちは機雷の敷設場所も、それを避けて通る方法も分かっている。みんな働きたくてたまらないので、操業再開は容易だろう」

だが、懐疑的な見方もある。ロシアがここ数カ月間と同様、商船を砲撃しないことに同意したと仮定しても、海軍の艦船が周辺海域を脅かし続ければ、商業輸送の保険料は法外に高くなる可能性がある。

港湾当局の元関係者、オレクサンドル・シチェンコ氏は「港湾封鎖を解除する方法を知りたいか」と問いかけた。「ロシアの艦隊を壊滅させればいい。それ以外の方法は彼らに理解されないだろう」

By Derek Brower

(2022年7月8日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版 https://www.ft.com/)

(c) The Financial Times Limited 2022. All Rights Reserved. The Nikkei Inc. is solely responsible for providing this translated content and The Financial Times Limited does not accept any liability for the accuracy or quality of the translation.

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食料危機、アフリカはなぜ深刻に 自立阻む「負の遺産」

食料危機、アフリカはなぜ深刻に 自立阻む「負の遺産」
編集委員 下田敏
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCD247GJ0U2A620C2000000/

『ロシアによるウクライナ侵攻で両国産の安価な小麦の輸送が滞り、貧困層を多く抱えるアフリカが深刻な食料危機に直面している。半数近くの国が小麦の3分の1以上を輸入に頼るという自給体制の脆弱さがあらわになった形だが、農業従事者が多いアフリカでなぜ飢餓が起きるのだろうか。

食料不安の上位国、7割がアフリカ

「アフリカが事実上の人質になっている」。ウクライナのゼレンスキー大統領はアフリカ連合(AU)の演説でこう語り、黒海からの穀物輸送を遮断するロシアを非難した。ウクライナ産の小麦や大麦、トウモロコシは7月以降に順次収穫期を迎える。輸送再開のメドはいまだ立っていない。
ロシアによるウクライナ侵攻で小麦の輸出が滞っている(ウクライナの農家)=AP

国連のグテレス事務総長によると、深刻な食料不安に陥る人々の数は1億3500万人から2億7600万人へとわずか2年間で倍増した。世界食糧計画(WFP)と国連食糧農業機関(FAO)は「広範な食料危機が迫っており、飢餓が十数カ国の安定を脅かしている」と警告した。ウクライナ問題の余波に加え、地域紛争や気候変動によって食料価格が高騰し、とくに途上国を直撃する。急性の食料不安に見舞われる人々が多い20の「ホットスポット」のうち、実に13カ国・地域がアフリカとなる。

特定農産物に頼る経済構造

アフリカ開発銀行によると、アフリカでは農業従事者が人口の60%以上を占める。零細農家が多く、農業の生産性が低いのは確かだが、なぜこんなにも食料が不足するのか。気になるのは植民地時代からの、単一商品に頼ったモノカルチャーな経済構造だ。
アフリカでは人口の60%が農業に従事している(ナイジェリア・ナサラワ州)

東アフリカのケニアは知られざる紅茶の名産地だ。FAOによると、2020年のお茶の生産量は約57万トンで中国とインドに次いで世界3位。日本の緑茶の年間生産量が約7万トンなので、その規模の大きさがわかる。お茶の輸出量でみると、ケニアは中国やスリランカ、インドを上回って世界首位。インドや中国では生産量の多くが国内で消費されるが、ケニア国内での消費は生産量の7%以下だからだ。

アフリカの生産品、第三国が加工

ケニアが紅茶の産地としてほぼ無名なのは、異なる産地の茶葉と混ぜられてしまうことが多いため。ブレンドやパッケージなど付加価値の高い工程は輸出先で行われる。ケニアで紅茶の生産が始まったのは英国の保護領だった1900年代初め。インドやスリランカで茶葉生産に関わっていた英国人が栽培を始めたとされる。それから100年以上がたったが、海外にニーズがある特定農作物を生産して、原料のまま輸出する立場はあまり変わっていない。
カカオ豆はアフリカの主要輸出品の一つ(ナイジェリア・オンド州)

コートジボワールやガーナなどで生産されるカカオ豆も未加工のまま輸出されることが多い。付加価値が高い加工やチョコレートの製造は米欧企業が担う構図となっている。
モノカルチャー経済、穀物生産に影響

特定農作物への偏りは穀物生産の弱さに表れる。FAOによると、20年の穀物生産量はアジアの12億2900万トン、北米の4億9500万トンに対して、アフリカはわずか2億トン。これを人口1人当たりに換算すると、アフリカは年149キログラムとなり、北米の9分の1、アジアの半分しかない。イモ類や豆類で補うにしても、小麦などの穀物の多くは輸入に頼らざるを得ず、食料危機に陥りやすい。

原材料の供給基地・製品の販売先として先進国経済に組み込まれているのは農作物ばかりではない。

石油大国もガソリンを輸入

西アフリカのナイジェリアでは3月以降、ガソリンスタンド前に給油待ちの行列が絶えない。燃料価格が高騰するなか、政府による販売価格の統制の影響もあって、十分なガソリンが供給されていない。
産油国だがガソリン不足のナイジェリアでは給油待ちの行列ができている(首都アブジャ)

アフリカ最大の産油国であるナイジェリアでなぜガソリンが足りないのか。それは原油を輸出し、海外で精製しているために大半のガソリンを輸入せざるを得ないためだ。石油大国のナイジェリアには石油精製能力はほとんどなく、国内の製油所も老朽化などで操業を停止している。農業従事者が人口の過半を占めるのに穀物を自給できないのと同じ経済構造がここにもある。植民地時代からの負の遺産がアフリカの自立を阻んでいるかのようにみえる。

先端技術の導入、日本に期待

世界の未開発の耕作適地の約60%はアフリカにあるといわれる。穀物生産のための農業開発を進め、先端技術の導入で生産性を高め、農作物の廃棄を減らすための効率的な物流や保管体制を整えれば、アフリカが頻繁に食料危機にさらされることは減るように思える。
日本ならではの支援が求められている(干ばつが続くソマリア)=ロイター

アフリカでは、インフラ開発と引き換えに多額の資金を貸し付け、政府が返済に行き詰まると鉱物資源の開発権などを取得する中国の「債務のワナ」が問題化している。原材料や資源の供給基地として利用するのではなく、アフリカの自立を促すような日本ならではの支援が求められている。

Nikkei Views
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Nikkei Views https://www.nikkei.com/opinion/nikkei-views/?n_cid=DSREA_nikkeiviews 』

安保理、ロシアと対話に転換か新議長国、食料危機に重点

安保理、ロシアと対話に転換か
新議長国、食料危機に重点
https://nordot.app/915854682750418944?c=39546741839462401

 ※ ここでも、BRICSの枠組みが、効いてくるわけだ…。

『【ニューヨーク共同】国連安全保障理事会で7月の議長国を務めるブラジルのコスタ国連大使が1日記者会見し、ウクライナ情勢では食料危機への対応に重点を置くと表明した。「責任を追及するのは有益ではない。議論の場に着くのが唯一の解決策だ」と述べ、欧米とロシアに対話を求める方針に転換すると強調した。

 安保理は6月、ウクライナ関連の公開会合を3回開催した。議長国アルバニアは商業施設へのミサイル攻撃などでロシアを批判し、28日にはウクライナのゼレンスキー大統領のオンライン参加を認めた。だが欧米とロシアの主張は平行線をたどり、具体的な成果はなかった。』

日米欧にとって食糧危機は戦乱と並ぶ重要な戦術

日米欧にとって食糧危機は戦乱と並ぶ重要な戦術 – 《櫻井ジャーナル》:楽天ブログ
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/202207010000/

『このところ「食糧不足」や「食糧危機」が喧伝されている。WHO(世界保健機関)が2020年3月11日にパンデミックを宣言して以来、世界の物流が滞っていたが、今年2月24日にロシア軍がウクライナを攻撃し始めるとアメリカ政府はロシアに対する「制裁」と称して経済戦争を強化させた。アメリカは通貨、エネルギー資源、そして食糧の分野で経済戦争を仕掛けてくる。

 基軸通貨であるドルを発行する特権を彼らは利用して各国を脅し、操ってきた。そのドル体制から離脱しようとしたイラク、アフリカ全体を離脱させようとしたリビアは軍事的に破壊されているが、今、ロシアや中国はアメリカに対向できる軍事力と経済力を保有している。

 ネオコンは2014年、ロシアと中国を屈服させるために動いた。ウクライナでクーデターを実行、香港で反中国運動を仕掛けたのだが、これは裏目に出てロシアと中国を接近させてしまう。この両国は現在、戦略的同盟関係にある。

 1991年12月にソ連が消滅するとネオコンはアメリカが唯一の超大国になったと思い込み、他国に配慮することなく好き勝手に行動できると考えたようだ。そして1992年2月にアメリカ国防総省のDPG(国防計画指針)草案として世界制覇プランが作成された。いわゆる「ウォルフォウィッツ・ドクトリン」だ。

 唯一の超大国という立場を維持するため、新たなライバルが出現しないように手を打とうとする。そのターゲットは旧ソ連圏だけでなく、西ヨーロッパ、東アジア、南西アジアなども含まれる。また権力の源泉であるエネルギー資源の支配も打ち出した。つまり中東をはじめとする産油国支配だ。勿論、アメリカは日本も潜在的ライバルと考えた。

 ソ連が消滅する前から中国を属国にしたとネオコンは信じていた。彼らが信奉する新自由主義経済、つまりレッセフェール流資本主義の教祖的な存在だったシカゴ大学のミルトン・フリードマンが1980年に中国を訪問、それ以降、その教義を中国全域へ拡げることに成功していたからだろう。中国の代表的な信徒は趙紫陽や江沢民だった。

 フリードマンは会社経営者に対し、社会的責務を無視して株主の利益だけを追い求めるように要求(Milton Friedman, “A Friedman Doctrine,” The New York Times Magazine, September 13, 1970)、彼の代表的な著作『資本主義と自由』の中で企業の利益追求を制限する試みは「全体主義」に通じているとされている。(Milton Friedman, “Capitalism and Freedom,” University of Chicago Press, 1962)

 この教義を世界のルールにするため、新自由主義の信奉者はISDS(投資家対国家紛争解決)条項を含むTPP(環太平洋連携協定)、TTIP(環大西洋貿易投資協定)、TiSA(新サービス貿易協定)を成立させようとした。これらが成立すれば、巨大企業のカネ儲けを阻むような法律や規制は賠償の対象になり、国は健康、労働、環境など人びとの健康や生活を守ることができなくなるはずだった。

 これは実現できなかったものの、形を変えて彼らは持ち出してきた。「パンデミック条約」だ。これが締結されれば、WHOが全ての加盟国にロックダウンなどの政策を強制できるようになる。WHOを私的権力が動かしていることは本ブログでも繰り返し書いてきた。

 中国はアメリカと国交を回復させてから新自由主義を導入したが、金融、通貨発行権、教育、健康など社会基盤を構成する分野を私的権力へ渡さなかった。中国が急速に経済発展できた理由はここにあると言われている。逆のことをした日本は衰退した。アメリカが中国とロシアを屈服させようと必死な理由のひとつは両国がドル体制、あるいは新ドル体制の脅威になるからだ。

 ロシアは石油や天然ガスといったエネルギー資源を算出、そのほかの資源や食糧の重要な供給源であり、中国は経済活動が発展しただけでなく重要な資源の産出国でもある。アメリカにとっては嫌な相手だ。

 アメリカにとって食糧がエネルギーと並ぶ戦略的に重要な商品だということは広く知られている。人間は生物である以上、食糧や飲料水は絶対に必要である。食糧生産を蔑ろにし、水脈を断ち切るような政策を進める政府は愚かなのか、国や国民を何者かに売り飛ばそうとしているのだと言わざるをえない。食糧が足りなくなれば飢餓になる。食糧が足りれば人口が増える。この問題でもロシアは欧米にとって目障りな存在だろう。

 アメリカのNSC(国家安全保障会議)は1974年、ヘンリー・キッシンジャーの下で「​NSSM(国家安全保障研究覚書)200​」という報告書を作成、人口増加の地政学的な意味が指摘されている。発展途上国の人口増加がアメリカの利益、つまりアメリカを支配する私的権力の利益にとって良くないという分析だ。同じことをイギリスの王立人口委員会も1944年に指摘している。

 それまでアメリカを含む欧米諸国は発展途上国が自立し、経済を発展させることができないように努力してきた。欧米に依存せざるをえない経済構造を押し付けてきたのだが、人口の増加や中露との連携がそうした枷を壊してしまう可能性がある。日米欧にとって飢餓は戦乱と並ぶ重要な戦術のひとつだ。』

BBCは、ロシアに農場を占拠されたウクライナ人農場主200人に取材し、露軍がどのように収穫物を盗んでいるのかを調べ上げた。

BBCは、ロシアに農場を占拠されたウクライナ人農場主200人に取材し、露軍がどのように収穫物を盗んでいるのかを調べ上げた。
https://st2019.site/?p=19849

『Nick Beake, Maria Korenyuk and Reality Check team による2022-6-27記事「Tracking where Russia is taking Ukraine’s stolen grain」。

    BBCは、ロシアに農場を占拠されたウクライナ人農場主200人に取材し、露軍がどのように収穫物を盗んでいるのかを調べ上げた。

 農家のトラックの何割かには、盗難対策としてGPS発信機がついている。それで収奪した穀物の流れが分かる。

 クリミア半島中央部、鉄道分岐点にあるオクティヤブルスケ市が、穀物の枢要な中間貯蔵拠点になっていることが可視化された。そこにはサイロがある。
 そこに寄らずにトラックでケルチ海峡を渡ってクラスノダール方向へ向うトラックもある。

 港からロシア船へ積み込まれた収奪穀物類は、ケルチ海峡において、こんどは小型のバラ積み船に、小分けされる。そのさい、ロシア本土から積み込んできた穀物と混載するようにする。そしてトルコまたはシリアの港へ向う。

 この「混載」がトルコの港湾管理者にエクスキューズを与える。「ロシア産穀物をロシアの港で積み込んだ」という書類がちゃんと揃っているから、荷揚げを拒絶する理由は無い、というわけだ。

 黒海へ出る前後で密輸船はAISのスイッチを切る。この密輸船×9隻の船名は米国によって把握され、ウクライナ政府によって公表されている。
 商船のAIS情報は、ロイドのデータセンターにぜんぶ集められているので、BBCとしては取材しやすい。
 そのAISは黒海に少し乗り出したところから再びスイッチが入れられるのだが、そのさい、貨物船の吃水が増していることが分かる。つまりは、スイッチを切っている間に、瀬取りが行なわれたわけだ。

 国連のSOLASという海上安全規定では、海外貿易に従事する商船は、海賊に襲われたとき以外は常時、AISを切ってはならない。ロシア商船とシリア商船はラタキア港内でもAISを切っており、明白に国連条約に違反している。

 ロシアはなかなか巧妙で、穀物をタダ取りすれば、来年から農民たちは作付けしなくなると分かっている。だから、ギリギリ最低価格での売り渡しを迫る。そのさい「合法的に売り渡しました」という文書に署名させる。百姓は、生かさず殺さず、油を絞りきるようにする方法を熟知しているといえる。

 もちろんこうした占領者の行為は、ジュネーヴ国際条約違反であり、国際刑事法廷ICCの訴追対象である。』