アングル:メコン川上流に中国ダム、追いつめられるタイの漁村

アングル:メコン川上流に中国ダム、追いつめられるタイの漁村
https://jp.reuters.com/article/idJPKBN2VU09R

『Rina Chandran

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[チェンコーン(タイ) 21日 トムソン・ロイター財団] – タイ北部の村に住むカム・トーンさん(48)は、毎年2月から4月になると近くを流れるメコン川に膝までつかりながら、川藻を集めている。売り物にしたり、家庭で料理に使ったりするためだ。
 毎年2月から4月になると、タイ北部の村に住むカム・トーンさん(48・写真)は、近くを流れるメコン川に膝までつかりながら、川藻を集めている。写真は2月撮影(2023年 トムソン・ロイター財団/Rina Chandran)

トーンさんをはじめ、メコン川沿いで暮らす女性の多くは、何十年間も「カイ(シオグサ)」と呼ばれる川藻を収穫してきた。だが、中国がメコン川の上流に十数カ所のダムを設置してからというもの、収穫量は激減した。

複数の研究者は、ダムによって水流が変化し、カイやコメ栽培に欠かせない川底の沈殿物もせき止められていると指摘する。

「乾期は普通は、水が澄んでいて水位が低く、川に入ってカイを採ることが簡単にできた。でも今は、乾期でも水位が高くなり、収穫が難しくなってきている」

地元の市場にカイを売って生計を立てているトーンさんは、両手いっぱいに持った糸状の緑藻を丸め、肩にかけたナイロン製の袋に入れながら、こうこぼした。

「以前よりもカイの収穫に時間がかかるようになってしまった。カイの量も減り、収入に影響するようになった」

タイ・ラオス国境にほど近いチェンコーンで暮らすトーンさんの収入は、乾期にメコン川の水位が下がり、カイも豊富に生息していた頃に比べ、3分の1にまで減少した。

トーンさんによれば、漁師である夫の漁獲量も減少しているという。

チベット高原から南シナ海へ約4350キロを流れるメコン川は、流域の中国、ラオス、ミャンマー、タイ、カンボジア、ベトナムに住む数千万人の農業や漁業を支えている。

しかし、中国が水力発電のためのダム建設を拡大し、季節外れの洪水や干ばつを引き起こす懸念が強まっている。また、強力な国家を後ろ盾に持つ複数企業の手に東南アジア最長の河川の未来が握られるようになったことにも、不安の声が出ている。

地元の集落や活動家からは、クリーンエネルギー推進の機運の高まりを前に、地元の懸念や不安が無視されているとの声が上がる。

「上流に建設されたダムが、漁業やコメ栽培のほか、女性や高齢者の収入源となっている川藻の収穫に影響を及ぼしている」

活動団体「リバーズ・インターナショナル」のタイ・ミャンマー支部で代表を務めるピアンポーン・ディーツ氏はこう指摘した。

「川が水力発電の動力源のためだけに使われてしまえば、大勢の命や生活に影響する。食料や伝統、習慣、生き方に関わる問題だ」

<ゴーストタウン>

石炭への依存を減らし、再生可能エネルギーを増やす方針の中国では1995年以降、「ランカン川」の名で知られるメコン川で10数基のダムが建設された。うち5つは、それぞれ100メートル以上の高さがある「巨大ダム」だ。

中国はメコン川に流れ込む支流にも、少なくとも95基の水力発電用ダムを建設済みで、今後も数十基の建設を予定している。また、メコン川下流にある他国でのダム建設事業への資金援助も行っている。

下流域のタイ、カンボジア、ラオス、ベトナムからなる政府間機関「メコン川委員会(MRC)」の推定では、チベット高原や上流の中国・ミャンマーの「ランカン川(メコン川上流)」流域にある水力発電ダムで得られる電力は、年間約40億ドル(約5237億円)相当に上る。 ただ、メコン川流域で計画されているダムが全て建設された場合、川の堆積物が上流で閉じ込められるため、同地域の主食であるコメの栽培に影響を及ぼしかねないと複数の研究で予測されている。

さらに、ダムが魚の回遊を止めたり水流を変えたりすることで生じる漁獲量低下の損失額は、MRCによると2040年までに230億ドル近くになると見込まれている。さらに、森林や湿地、マングローブの破壊による損害は1450億ドルにまで上る可能性もあるという。

メコンダムの監視を行う米シンクタンク、スティムソン・センターで「エネルギー・水・再生可能プログラム」を主宰するブライアン・アイラー氏は、チェンコーンのようにダムに近い集落での被害は甚大だと指摘する。

乾期にも発電のため貯水池から放水することで「通常の2─3倍の水量」が流れる一方、雨期は放水制限によって流量が半分以上減る可能性もあるとアイラ―氏は分析する。

「これにより、タイ・ラオス国境の漁村でのゴーストタウン化が進んでいる」と同氏は続けた。

「こうした集落では環境の変化に適応する選択肢が少ない。高齢者が選べる生業は限られる。若い世代は移住したり、別の仕事で生計を立てたりするかもしれないが、順応するまでには様々なリスクを伴う」

MRC事務局はこうした懸念について、社会的影響を評価し、気温上昇や人口増加による影響も加味しながら、農業や集落に影響を与え得る流量や水質をの変化を監視していると述べた。

また、MRC事務局は取材にメールで回答し、水力発電事業によるリスクを管理して悪影響を軽減すべく、「ダムの設計、建設、運営に関する科学的かつ技術的な指標」を策定しているとした。

ただ、活動グループはMRCについて、地元集落と協議していないと指摘。中国がダム建設に本腰を入れて以降、より頻繁に、より激しくなっている洪水や干ばつについても、中国に対する責任追及ができていないとしている。

2019年から21年にかけての干ばつでは、中国のダムが多大な水量をせき止めたことが原因でメコン川の水位が記録的に低下し、干ばつが悪化したことが、スティムソン・センターと環境調査会社「アイズ・オン・アース」の衛星監視による調査で判明した。

中国は降雨量が少なかったためだとして調査結果に反論。2020年には、年間を通じて自国内の流量データを共有することでMRCと協定を結んでいるとしている。

<エネルギー需要>

国際エネルギー機関(IEA)の2021年の報告書では、新興国や発展途上国における潜在的な可能性がとりわけ高いことから、水力発電は「低炭素エネルギー生成の主役」だと評価している。

中国は世界最大の水力発電市場だ。IEAによると、中国企業は2030年までにサブサハラ・アフリカ、東南アジア、ラテンアメリカ地域における新規の水力発電のうち半数以上を担うという。

メコン川下流域のエネルギー需要は年間6─7%上昇すると予想され、「完全な水力発電開発」によって2040年までに1600億ドル以上の経済効果が見込めるとMRCは推測する。

ただ、住民が移住を強いられるなど、水力発電プロジェクトによる影響を懸念する声も世界中で高まりつつある。

ラオスでは2018年、建設途中のダムが決壊し、突発的な洪水で家が流され、数十人が死亡。「アジアのバッテリー」になることを目指していた同国で、水力発電のイメージに影を落とした。

<「予想不可能な川」>

ラクチェンコーン保護団体の二ワット・ロイケウ代表(63)は、何世代にもわたってメコン川に頼った生活を送って来た流域の集落の人々も、もはや川の側で暮らす術が分からなくなっていると指摘する。 

「ダムがあっては、川の動きが予測不可能になり、これまで積み重ねてきた知識も無意味だ」とロイケウ氏は嘆く。同氏は2022年、ゴールドマン環境賞を受賞している。

  スティムソンセンターとアイズ・オン・アースによるメコンダムの監視は、衛星画像とリモートセンシング技術を用いて、24時間以内に水位が0.5メートル増減した場合に、周辺のタイ・ラオス国境の集落に対して警告を行っている。

だが、こうした監視も他の選択肢を持たない集落にとってはほとんど意味が無い、とロイケウ氏は言う。同氏は地元の子供たちに川について教える「メコン学校」をチェンコーンで開催しているほか、研究者にも情報を提供している。

「人々が望んでいること、それは当然のことながら、包括的に協議をして川の共同管理を行うことだ」

4月まで続く現在の乾期でトーンさんはカイの収穫に注力している。運が良く数キロ採ることができた日には、一部を薄く延ばして日干しして乾燥させる。間食用として、市場でも高値がつく。

「毎日、収穫を終えて川を引き上げるタイミングも、一日にどれだけ収穫できるかもわからない。収穫できるときに可能な限り採っておかなくては」』

【パレスチナ発】水は国防である 水道民営化という自殺行為

【パレスチナ発】水は国防である 水道民営化という自殺行為
https://tanakaryusaku.jp/2023/02/00028322

『ヨルダン渓谷まで足を延ばした。フェンスの外側にあたるパレスチナの領土を農業用水がサラサラと流れていた。

 水路の川幅は1メートル足らず。水量はお世辞にも豊かとは言えない。それでも土漠と砂漠に強烈な日差しが照り付ける中東にあって水はこのうえなく貴重な天然資源である。

 映画『アラビアのロレンス』で他民族の井戸の水を飲んだ男が撃ち殺される場面があるが、水は命なのだ。

 話を農業用水に戻そう。用水路はオスマントルコの時代に建設された。水源は渓谷の山である。

 水をコントロールしているのは、イスラエルだ。パレスチナ農家も使うことが可能だが、あくまでもイスラエル本位である。

 冬場はご覧のように水は滔々と流れているが、夏はほとんど流れなくなる。イスラエルが上流で水を止めるからだ。

 車を走らせていると、白茶けた土漠に突如として緑の森が出現する。イスラエルのナツメ椰子畑である。農業用水をふんだんに使える御蔭だ。木一本で年収100万円にもなるという。

青々と茂った森が土漠に出現する。イスラエル側のナツメヤシ畑。=1月、ジェリコ付近 撮影:田中龍作=

 第3次中東戦争(1967年)勃発の遠因にヨルダン川の水利用の問題があった。イスラエルが水を独占しようとしているのではないか、とヨルダン川沿いのシリア、ヨルダンが疑念を募らせ反発したのである。

 だが第3中東戦争はイスラエルが圧勝。ヨルダン川西岸を軍事占領した。パレスチナ住民はヨルダン川にアクセスできないようになってしまったのである。

 パレスチナ住民がヨルダン川にアクセスするには、ヨルダンまで出る他ない。

 ジェリコ(パレスチナ)で出国手続き→イスラエルの許可を得て→ヨルダン川の橋を渡り→ヨルダンで入国手続き。片道2日の旅である。

 水は国防に密接に関わってくる。東アジアの某国で進む水道民営化は国を危うくする。海外資本に運営を任せるなどという計画もあるようだが、自殺行為に等しい。

 イスラエルとパレスチナのどちらの民が聞いても「日本という国はまったく危機感がない」と呆れるだろう。

イスラエルの強力なポンプ。地下水もイスラエルが事実上支配する。=1月、ジェリコ付近 撮影:田中龍作=

     ~終わり~

田中龍作の取材活動支援基金 』

イラン ザーヤンデルード川をめぐる水危機と人びとの暮らし

イラン ザーヤンデルード川をめぐる水危機と人びとの暮らし
西川優花
http://www.law.osaka-u.ac.jp/~c-forum/box5/vol6/nishikawa.pdf

 ※ 良い資料に当たった…。大阪大の西川優花という人のリポートだ…。

 ※ 日本学術振興会というところから、研究助成費をもらって行った研究成果らしい…。特別研究員ということで、教授とか准教授とかでは無いようだ…。現地に在住して、実地調査をやっているという感じか…。

 ※ 画像で出て来るが、ここは国内が「乾燥地域」と「湿潤地域」に分かれているらしい…。

 ※ まあ、水争いや紛争のタネになりやすいわけだ…。

※ こういう風に、年間降水量が、地域によってハッキリ違っている…。

※ 山岳国家で風向きの関係で、湿った空気が「高山地帯」に当たって「降水」となって落ちる地域と、「落ちた後の、乾燥した大気が流れて行く地域」に、分かれてしまうんだろう…。

※ ちょっと分かりにくいが、「緑の部分」が標高2000メートル地帯だ…。黄色の部分が、1500メートルから1000メートルの「それよりは低い部分」…。

エジプト、ナイルダム発言でエチオピア外交官を召喚

https://www.aljazeera.com/news/2021/1/1/egypt-summons-ethiopian-diplomat-over-dam-comments

『カイロは「エジプト国家への攻撃」と呼ぶものを非難し、アディスアベバが「攻撃的な口調」を使用していると非難している。

2021年1月1日
エジプト外務省は、ナイル川の論争を巻き起こしているダムに関するアディスアベバ当局者のコメントをめぐって、カイロでエチオピアのトップ外交官を召喚したと述べた。

エジプト省は「国内エジプト問題に関するエチオピア外務省の報道官のコメントを説明するために、カイロのエチオピア担当事務を召喚した」と水曜日遅くに述べた。

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エジプト、エチオピア、スーダン間のナイルダム協議は再び失敗する
古代エジプト:働いたピラミッドスキーム
「私の国が困っている」:エチオピアのティグレイ紛争に関するWHOチーフ
スーダン、エチオピアとの国境の完全な支配権を取り戻す:省
声明は具体的なコメントを引用しなかったが、エジプトとスーダンの下流の重要な水供給に対する懸念を高めているアフリカ最大の水力発電プロジェクトであるグランドエチオピアルネッサンスダム(GERD)に関するエチオピア当局者の声明に続いた。

「彼らはGERDが彼らに害を与えないことを知っている、それは内部問題からの転用です」と、エチオピア省のスポークスマンで元駐エジプト大使のディナ・ムフティは火曜日に言いました。

ムフティは、この「気晴らし」がなければ、エジプトとスーダンは「爆発を待っている多くの地域の問題、特に(エジプト)で)対処しなければならない」と主張した。

木曜日の新しい声明の中で、エジプト省はいわゆる「エジプト国家への攻撃」を非難し、アディスアベバが「攻撃的なトーン」を使用していると非難した。エチオピアの複数の失敗を国内外に隠すために」。

「数百人が死亡し、数万人の罪のない民間人を避難させた複数の紛争と人道危機を目撃している彼の国の悪化する状況に、スポークスマンが注意を払う方が良かっただろう」と述べた。

エチオピアのアビイ・アーメド首相は11月4日、戦闘が数千人の死者を出したと恐れられている反体制派北部ティグレイ地域の与党に立ち向かうよう軍に命じた。

エジプト、エチオピア、スーダンは2011年から協議を続けているが、ダムの埋め込みに関する合意に至っていない。交渉は8月から停滞している。

ナイル川は6,000km(3,700マイル)で世界最長の川で、10カ国に水と電気を供給する生命線です。

エチオピアは、ダムの電力ニーズの増大に不可欠であると考えており、下流の水の流れは影響を受けないと主張している。

ダムは、アフリカ最大の電力輸出国になるためのエチオピアの入札の中心にあります。

この構造は、エチオピアとブルーナイルのスーダン国境から約15km(9マイル)離れたところにあり、ナイル川の支流であり、エジプトの1億人の淡水の約90%を提供しています。

エジプトはエチオピアによる一方的な動きに反対し、スーダンと共に紛争に対する法的拘束力のある政治的解決を求めている。』

エチオピアのダム貯水、協議継続で合意

※ 画像を貼るので、疲れた…。今日は、こんなところで…。

エチオピアのダム貯水、協議継続で合意 エジプトなど
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO61809680S0A720C2EAF000/

ナイル川の巨大ダム 建設国エチオピアと下流国エジプトの国運を賭けた対立
https://ameblo.jp/azianokaze/entry-12606166140.html

中東・アフリカ諸国 水利権が紛争の種に 人口増・工業化で需要急増
https://ameblo.jp/23763794/entry-11254946956.html

経済地理Ⅱ
http://www.akibargotou.com/pdf/keizai-chiri-water.pdf

※ スゲー資料を、見つけたぞ…。世界の水資源の状況、それを争う紛争なんかをまとめた.pdfだ…。

※ ただ、ホームページから.pdfへは、リンクを貼っていなかったんで、実は本当のところは、不明だ…。たぶん、この人が作成したんだと思うが…。

※ ある意味、相当に「ヤバイ」内容を含むので、あえてリンクを貼らなかったんだ、と思う…。

後藤晃~Akira Gotou~Webサイト
http://www.akibargotou.com/index.html

※ 穀物や、肉類を輸入するということは、他国の「水資源」を輸入しているということだ…、という視点を、提示している…。

ダム
https://www.wikiwand.com/ja/%E3%83%80%E3%83%A0

※ これを見ると、原理は、中学の時に学習した「電磁誘導」そのものだな…。タービンを、水の「位置エネルギー」で回転させている…、という話しだ…。

※ それを、石炭や重油・LNGを燃やして発生させた水蒸気で行えば「火力発電」、原子力における「核分裂反応」から生じるエネルギーで行えば「原子力発電」ということだ…。

※ 風力、地熱発電も原理は、同じだ…。

※ その点では、「太陽光発電」は、系統が違うんだな…。確かに、これだけは、起こした電流の性質が「直流」で、「交流」じゃ無い…。