快著のご紹介。

快著のご紹介。
https://st2019.site/?p=17689

 ※ 「解」とは、常に、「現実解」のことだ…。

 ※ 「言説」で、「現実をくるむこと」は、できない…。

『2021-11-10発行と奥付にあるワニブックスの『EV推進の罠』という新刊をある方から頂戴し、さっそく第1章に目を通したが、すばらしい内容だ。

 ポイントを摘記すれば以下の如し。

 日本のGDPをいちばんたくさん稼ぎ出しているのは製造業である(20%)。
 全部の製造業のなかでも、自動車が18.8%と最大である。

 ディーゼルエンジンは、二酸化炭素の排出量が、普通のガソリン車の四分の三。

 脱炭素のオプションとして、合成燃料「e-fuel」あり。二酸化炭素と水素を結合させて作る。既存の燃料に任意の比率で混ぜても使える。ひょっとすると、これが最も有望。

 にもかかわらず単純頭の政治家は「EV」しか言わない。

 トヨタの豊田章男会長は、「ヤリス」の製造工場を意図的に宮城県大和[たいわ]町に建設させた。

 大和町の人工は28万人。熱海市の人口は37万人。にもかかわらず、大和町の総生産は2815億円で、熱海市の1427億円の2倍。2017年の統計。

 つまりそれほどに、製造業が失業をなくしてくれる。

 トヨタは、為替その他のコスト的に1000億円の損になるのは承知のうえで、敢えて、日本国内で年間300万台を製造させ続ける方針。なぜかというと、そのレベルを維持していかないと日本国内では生産の技術が継承されなくなってしまうから。

 ちなみに日本国内ではすべてのメーカーを合計しても自動車は年に140万台しか売れない。

 また2017年の統計。
 那覇市は人口32万人だが、総生産は1兆4092億円。これに対して太田市は人口22万人なのに、スバル工場があるおかげで、総生産は1兆4849億円。

 すなわち、製造業がうみだす雇用は、観光業・飲食業などとは同日の談ではないのである。

 豊田会長は2021年の年始の挨拶で、自動車産業で働く550万人の人々を鼓舞した。550万人は、日本の雇用者数の10%である。

 豊田会長の2020-12-17オンライン記者会見での発言趣意。

 電動化率は日本はすでに世界第二位だ。
 一位はノルウェーだが、車両数の桁が違う。ノルウェーは10万台、日本は150万台である。
 したがって総量では日本が一位である。

 日本国内の乗用車400万台をもしすべてEV化すると、夏の電力使用のピーク時に停電が発生してしまう。そうさせないようにしたければ、国内の発電能力を10%から15%増やす必要がある。

 これは原発ならば10基、火発ならば20基の新設に相当する。それを太陽電池や風力で満たすことは非現実的で、夢物語にすぎない。

 総EV化したら、戸建住宅が充電端末を設置するのに、費用が10~20万円必要。

 集合住宅だと、50~100万円必要。

 急速充電器の場合、1台は600万円もする。

 したがって、「充電インフラ」を整えるだけでも、14兆円から37兆円のあらたな負担を国民は強いられてしまう。

 電池を国内で製造する場合、完成検査のために充放電をしてみないわけにはいかぬ。ところが、1台のEVの蓄電量は、家1軒の7日分の消費電力に相当するのだ。それを年50万台生産する自動車工場でやりだしたらどうなるか。1日あたり5000軒分の電気を1工場で毎日、充放電し続けることになる。

 この電力を供給するために発電所で余計に二酸化炭素がつくられるのは不可避である。

 したがって、カーボンニュートラル達成をもし政治家が安易に対外公約にしてしまうと、日本国内では電動自動車すら製造できないということになるしかないのだ。日本の雇用は壊滅するはずだ。

  ――――第1章だけでもこの面白さ。まさに《EV災害》がやって来ようとしているわけか……。続きを読むのが楽しみです。』

仏大統領、クリスマス前に原子炉6基新設表明の意向

仏大統領、クリスマス前に原子炉6基新設表明の意向=フィガロ紙
https://www.epochtimes.jp/p/2021/10/80669.html

『[パリ 18日 ロイター] – フランスのマクロン大統領は、クリスマス前に次世代の欧州加圧水型原子炉(EPR)6基の国内建設を表明したい考え。

フィガロ紙が18日に伝えた。天然ガス価格の高騰が欧州全土の消費者に打撃を与える中、次期大統領選を半年後に控え、EPR技術への傾斜につながったと同紙は報じている。

大統領は就任当初、2035年までにフランスのエネルギーミックス(電源構成)に原子力が占める割合を75%から50%に低下させると宣言。政府も先に、北西部フラマンビルで建設中のフランス電力公社(EDF)のEPRが完成するまで新たな原子炉を建設しない方針を示していたが、エネルギー危機で風向きが変わってきたもよう。

フィガロ紙は「エネルギー危機は、グリーンエネルギーへの移行においてわれわれが原子力を選択したことの正しさを示している」とする匿名の政府高官の発言を伝えた。

10月1日にはパニエリュナシェ産業担当相が、フラマンビルの原子炉が完全に稼働する前に新たに6基の原子炉建設を決定する可能性があると述べた。

フラマンビルの原子炉は建設工事が10年余り遅れているほか、建設費が予定を大幅に上回っており、閣僚らは稼働時期について明言を避け続けている。』

フランスのウラン鉱山
https://atomica.jaea.go.jp/data/detail/dat_detail_04-03-01-08.html

『<概要>
 フランスでは1997年にLodeve鉱山が、2001年にBernardan鉱山が閉鎖し、近い将来フランス国内で新たなウラン生産センターの開設計画はなく、ウラン生産は終了している。2001年に閉鎖されたBernardan鉱山に関する資源量について、2009年に再評価を行い、確認資源量11,451tU、推定資源量139tUと算定し、このうち9,000tUは露天採掘で回収可能とされたが、生産コストがUSD130/kgUを上回ると見られることから、現在、手付かずの状態にある。

 一方、2000年以降、フランス国外におけるウランの探鉱または開発活動が活発である。
原子力事業全般を手がけているAREVA(アレバ)の鉱山部門を担当するAREVA NC(旧、COGEMA)社は、カナダ、ナミビア、南アフリカ、中央アフリカ、ニジェール、カザフスタンにおいて、ウランの採掘やプロジェクト活動に関与している。』

〔世界の電力事情…日本への教訓〕

世界の電力事情…日本への教訓 【北欧編】
https://criepi.denken.or.jp/koho/journal/eneco/2013/007.pdf

『結語

日本の電力システム改革でも、発電部門の競争促進や新電力の電源調
達の円滑化などを目指し、卸電力市場を活性化させるためのモニタリン
グの実施、電力先物市場の創設などの改革が検討されている。

2014年には、2016年の小売全面自由化を盛り込んだ電気事業法の改正も行われ
た。

北欧4カ国の自由化の経験は、日本にとっても参考になる点が多いと
期待される。

その際、北欧4カ国全体の電源構成や電力消費量、輸出入の
違いなどを念頭に置くことが必要だろう。

いずれにせよ、一気に改革を実現するのではなく、さまざまな問題を徐々に克服し、制度改正や改善を重ねながら現在に至っていることだけは忘れないようにしたい。』

ノルウェーの国情および原子力事情 (14-05-06-01)
https://atomica.jaea.go.jp/data/detail/dat_detail_14-05-06-01.html

(※ JAEA発の資料のようだ…。)

『<概要>
 ノルウェーは人口からみると512.4万人の小国であるが、IT産業、アルミ産業など電力集約型産業が主要産業で、1人当たりの電力消費量は23,660kWh、世界有数の電力多消費国である。

 この国は、欧州最大の水力発電国であるほか、欧州の石油埋蔵量の60%、ガス埋蔵量の50%を有する資源大国である。

しかし、石油生産は2000年にはピークに達し、天然ガスは増産が見込まれているものの、石油減少分を補填できる見込みはない。

また、石油・天然ガスの資源量は既に約44%が開発済であり、資源探査は行われているものの、全体的に大規模な鉱区が見つかりにくく、2020年頃から減少することが予想されている。

 なお、ノルウェーでは、石油・天然ガスエネルギー資源は主に輸出用であり、自国の電力は水力発電によって賄われる。

渇水時等で電力不足が発生した場合は、スウェーデンなどの隣国またはロシアからの輸入電力によって不足分を補う。

ノルウェーには原子力発電所はないが、1950年代から原子力の基礎研究を行っている。』

いかりでパイプ損傷か

いかりでパイプ損傷か 大型船停泊ミスの可能性―米原油流出
https://www.jiji.com/jc/article?k=2021100500692&g=int

『【ロサンゼルス時事】米西部カリフォルニア州ロサンゼルス近郊のハンティントンビーチ市沖合で起きた原油流出事故をめぐり、大型商業船のいかりが接触しパイプラインが損傷した可能性が浮上している。沿岸警備隊は、商業船が誤った場所に停泊していたとみて、調査を進めている。
 4日の地元紙ロサンゼルス・タイムズなどによると、パイプラインはいかりで50メートル近く引きずられた。事故では48万リットルの原油が流れ出し、約34平方キロメートルの油膜が形成されたという。』

〔「逆説の地政学」〕

 ※ 残念ながら、紙の本しか無いようだが、目次だけでも参考になるようなんで、紹介しておく…。

逆説の地政学 単行本(ソフトカバー) – 2018/3/30
上久保 誠人 (著)
https://www.amazon.co.jp/o/ASIN/4771030243/diamondonline-22

『21の逆説で混迷の国際情勢を読み解く

日本人の常識を覆す視点から、国際社会における日本の戦略を再考。独自の「4D地政学」で21世紀の問題郡への新たな視点を提供する。

これまでの地政学による地理上の国家間関係・安全保障だけではなく、石油・天然ガス・原子力など資源エネルギーを独占する多国籍企業ネットワークや金融など、今日の複雑化する国際情勢を独自の「4D地政学」を提唱することで読み解く。

日本人の常識を覆す「英国が中心の世界地図」の視点を用い、国際社会における日本の戦略を再考する。

21の逆説で混迷の国際情勢を読み解き、「4D地政学」を用いて21世紀の問題郡への新たな視点を提供する。』

『目 次

序 章

第1章 地政学とは
1.1. 海洋国家の視点に立つ「英米系地政学」とは
1.2. 英米系地政学は「平和のための勢力均衡」
1.3. 地政学で見る、国家間紛争の歴史

第I部 アメリカ・ファーストと新しい国際秩序

第2章 米国が築いてきた第二次世界大戦後の国際社会体制

第3章 石油を巡る国際関係の歴史

3.1. 石油の時代の始まり
3.2. 第二次世界大戦まで――石油の戦略物質化とセブン・シスターズによる支配の完成
3.3. 第二次大戦後、産油国の「資源ナショナリズム」と覇権国・米国の戦略
3.4. 冷戦終結後の新石油秩序の形成

第4章 天然ガスの地政学

4.1. 天然ガス――知られざる実力者
4.2. 天然ガス・パイプラインを巡る国際政治

第5章 原子力の歴史

5.1. 第二次世界大戦後の原子力の平和利用の始まり
5.2. 原発事故と核兵器削減の動き

第6章 原子力の地政学

6.1. 「原子力産業の衰退」から「環境にやさしい原子力」へ
6.2. 原発輸出と地政学

第7章 シェール革命とアメリカ・ファースト

7.1. シェール石油・シェールガスとは
7.2. 「シェール革命」と米国
7.3. 「シェール革命」の国際社会への影響
7.4「.アメリカ・ファースト」と「生存圏」を争う国際社会へ――「アメリカ・ファースト」による、世界の新しい潮流

第8章 「EU離脱後」の英国を考える

8.1. 英国の「EU離脱」
8.2. 英国が持つ巨大なリソース
8.3. まとめ――EU離脱は英国に不利にならない可能性がある

第9章 ドイツの「生存圏」確保のために存在するEU

9.1. そもそもEUが創設された理由は「ドイツ問題」だった
9.2. 「ドイツを封じ込めるため」から「ドイツ独り勝ち」へ
9.3. EUは、ランドパワー化したドイツの「生存圏」確保のためにある
9.4. 「ドイツ独り勝ち」に対する不満が爆発する
9.5. ドイツ経済が抱えるリスク
9.6. EUは「エネルギー自給」に問題があり、「生存圏」を築けない

第10章 ロシア――停滞と復活の間で

10.1. 英米系地政学で考えるランドパワー・ロシアの戦略的敗北
10.2. プーチン大統領が掲げる「大国ロシア」は虚構に過ぎない
10.3. 「生存圏」確保のためにロシアとドイツは接近する

第11章 急拡大する中国とどう対峙するか

11.1. 中国の軍事的拡大、経済発展と民主化を考える
11.2. 将来の民主化につながる学生という名の「政治アクター」
11.3. 第I部のまとめ――アメリカ・ファーストの時代を生き抜くために

第II部 地理で考える政策科学

第12章 国際通貨政策の地政学

12.1. 経済学における「円の国際化」「人民元の国際化」の先行研究
12.2. 日本の「円の国際化」の取り組み
12.3. 中国の「人民元の国際化」の取り組み
12.4. 2008年の世界的金融危機以降、中国の影響力が拡大している
12.5. 分析――日中国際金融政策過程の比較

第13章 成長戦略と地政学

13.1. 日本の成長戦略は、日本企業の成長とイコールではないはず
13.2. 革新機構による産業再編は「国家による斜陽産業の延命」の再現だ
13.3. 日本は外資導入が経済成長につながる好条件を備えている
13.4. 外国製造業の「アジア地域向け研究開発拠点」や「高品質部品の製造拠点」を日本に誘致せよ
13.5. 経営学を専門的に学んだアジアの若い経営者が日本企業を経営することの利点
13.6. 例えば、トランプ政権とシリコンバレーの摩擦解消に一役買う

第14章 エネルギーから福祉の循環型ネットワーク形成と紛争回避

――ロシア・サハリン州を事例として――

14.1. 「紛争」に焦点を当てた、従来の石油天然ガスを巡る国際政治学
14.2. 「エネルギーから福祉の循環型地域ネットワーク」の構想
14.3. 「エネルギーから福祉への循環型地域ネットワーク」建設の事例――ノルウェー
14.4. ロシア・サハリン州
14.5. サハリン州「発展戦略2025」
14.6. サハリン州の福祉政策・教育政策
14.7. サハリン州の様々な建設プロジェクト
14.8. サハリン州を巡るロシア、中国、韓国の動き
14.9. 日本はどう動くべきか
14.10. まとめ

第15章 民主主義を考える

15.1. 日本のテロ対策は英国流・フランス流のどちらにすべきか
15.2. メディアは国益に反する報道を控えるべきか――?英BBC・ガーディアン紙の矜恃に学ぶ
15.3. ロシアとの共同研究で改めて知る、日本の「学問の自由・独立」の価値

第16章 未来の地政学

16.1. 「空間」における国家間の「動的」な距離感を説明する「4D地政学」
16.2. 人工知能と地政学

終 章

あとがき
人名索引
事項索引』

アフリカ、「グリーン水素」事業相次ぐ

アフリカ、「グリーン水素」事業相次ぐ 欧州市場目指す
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR1230C0S1A910C2000000/

『【カイロ=久門武史】アフリカで再生可能エネルギーを使って製造する「グリーン水素」の事業化を目指す動きが相次いでいる。風力や太陽光が豊富で、再生エネのコストが比較的安く、脱炭素に熱心な欧州に近い利点がある。グリーン水素は次世代エネの一つとして国連も普及を後押しするが、輸送網の整備を含め課題が山積している。

燃焼後に水が発生するだけの水素は、将来のクリーンエネルギーとして世界で研究が進む。水を電気分解してできる水素は、化石燃料から得られる水素と区別し、グリーン水素と呼ばれている。

「再生エネのコスト低下はグリーン水素の新たな可能性を示した」。国際再生可能エネルギー機関(IRENA)の事務局長は16日、国連関連のイベントで主張した。脱炭素に熱心なドイツ政府は22日の閣議後、水素の活用拡大に向けた声明を出した。念頭にあるのはグリーン水素だ。

欧州連合(EU)の執行機関、欧州委員会は2020年の「水素戦略」で、アフリカ北部を「コスト競争力のある潜在的供給元」と位置づけた。

北部ではモロッコがいち早く動き出した。7月、グリーン水素とアンモニアを製造する総投資額75億ディルハム(約1000億円)の事業計画を明らかにした。アイルランド企業などが手がけ、22年の着工を目指す。モロッコは省庁横断の「水素委員会」を19年に立ち上げ、ドイツやポルトガルの協力を得ることで合意済みだ。

エジプトも8月、電力公社が独シーメンス・エナジーとグリーン水素の開発に向けた覚書に署名した。100~200メガワットの水電解装置を使った試験事業に着手する。同公社は7月、イタリア炭化水素公社とも事業化調査の実施で合意した。

エジプトの新・再生エネルギー庁のムハンマド・ハヤト長官は取材に「(同国が)地中海と紅海に面し、地域と世界の水素を供給する要衝にある」と述べ、グリーン水素開発に40億ドル(約4400億円)を投資する方針を示した。

地中海に臨むチュニジアも市場開拓に向けドイツと覚書を交わした。

国際エネルギー機関(IEA)は地球温暖化防止の国際枠組み「パリ協定」を順守した場合、世界の水素全体の需要は70年に約5億2000万トンと、運輸部門をはじめ最終エネルギー消費の13%を占めると予測する。19年の7100万トンから急増する。

IEAは太陽光と陸上風力発電を使ったグリーン水素の製造コストが将来、アフリカの北部と南部、中東や中国の一部で1キログラムあたり2ドル以下に低下すると予測する。ほかの地域に比べ競争力が高い。英米系法律事務所DLAパイパーは、モロッコで同1ユーロ(約130円)まで下がる可能性があると指摘する。

南部の砂漠地帯にあるナミビアは8月、グリーン水素製造の事業化調査の開始でドイツと合意した。同国から4000万ユーロの支援を受ける。太陽光、風力に恵まれ、国土面積は日本の2倍以上でも人口は250万人強にすぎない。再エネ投資の余地が大きい。

ドイツのカーリチェク教育・研究相は、ナミビアのグリーン水素製造コストが1キログラムあたり1.5~2ユーロになるとの見方を示した。「世界一、競争力の高い低価格になりうる」という。

南アフリカの産業開発公社は同国のエネルギー大手、サソールと共同研究を始める。

アフリカ諸国は、グリーン水素が欧州からの投資の呼び水になると期待する。フォンデアライエン欧州委員長は15日の演説で「私たちはグリーン水素の市場をつくるためアフリカとともに投資する」と強調した。

課題は多い。アフリカがグリーン水素の供給国として飛躍するには、欧州のほかの消費国ともパイプを築き、供給先の多様化を目指す必要がある。欧州へ輸出するには地中海を通るパイプラインや液化水素の運搬船も欠かせない。イスラム過激派の活動を抑え、治安を安定させなければならない。』

〔ノルド・ストリーム〕

ノルド・ストリーム
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8E%E3%83%AB%E3%83%89%E3%83%BB%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%A0

『背景

2005年の時点で3300億立方メートルの天然ガスを輸入していたヨーロッパは、2015年までにさらに2000億立方メートルの上積みが必要となると予想されていた[5]。

豊富な天然ガスを産出するロシアは、ヨーロッパへの天然ガス供給の経由国でありながらたびたび問題を起こしていたウクライナ(「ロシア・ウクライナガス紛争」を参照)とベラルーシを迂回するルートを求めていた[6]。それは安定した天然ガスの供給を求めるヨーロッパにとっても同じだった。一方でポーランドのラダスラフ・シコルスキー外相のように、公然と環境問題やエネルギーの対露依存を危惧する声もあった[7]。

しかし脱原発をはかっていたドイツにとってロシアの天然ガスは重要なものであった。2005年の協定では、独大手のBASFと露ガスプロムとの提携強化や、ユジノルスコエの天然ガス田開発への参加が盛り込まれるなど、エネルギー問題において密接な独露関係が目指されている。

エネルギーの対露依存度を下げたいEUが主導しているラインである「ナブッコ・パイプライン」のガスの供給元探しが難航しているのに対して、ロシアの国営企業であるガスプロムが推進した「ノルド・ストリーム」は2011年11月8日に稼働を開始し、EUへの天然ガスの供給が始まった。

進捗状況

Nord Stream ceremony.jpeg
沿岸5カ国のうち最後まで着工許可を出していなかったフィンランドが2010年2月12日に計画へ合意、2010年4月実際にスタートし、2011年11月8日に天然ガスの供給を開始し稼働した[8]。

着工記念式典に臨むメドヴェージェフ大統領

このパイプラインの2系列目に使用する鋼管は日本の住友金属が受注した[9]。

2021年9月10日、ガスプロムは工事が終わり、パイプラインが完成したと発表[10]。

批判

米国は同パイプラインがドイツを含む北大西洋条約機構加盟国に対するロシア政府の影響力を強めかねないと懸念しているため[11]、2018年7月11日、ドナルド・トランプ大統領は、北大西洋条約機構事務総長との朝食会の場でノルド・ストリーム2計画について触れ、アメリカがドイツを守るために数十億ドルも払っているというのに、ドイツはロシアに(ガス代として)数十億ドルをロシアに支払っていると批判。その場に居なかったドイツのアンゲラ・メルケル首相は、別途、ドイツは独立して決断を下しているとしてトランプ大統領の批判に反論した[12]。

2019年以降、アメリカ国会および国防省はノルド・ストリーム2パイプラインに関与する事業体が米国の制裁の対象になると警告し、直ちにパイプライン作業をやめるべきだと表明した[11]。しかし、2021年5月19日、アメリカ国務省は関連会社への制裁がアメリカの国益に反するため、解除すると宣言した。ドイツとロシア両政府は声明に歓迎する一方、ウクライナと一部のアメリカ国会議員はロシアに利するだけと批判した[13]。

また、このプロジェクトはヨーロッパのロシアへのエネルギー依存を招きかねないため、2021年4月28日に欧州議会はこのプロジェクトの工事の停止を求める内容を含む決議案を可決した[14]。』

(ロシア関連のパイプライン)

中国原油、初の備蓄放出

中国原油、初の備蓄放出 資源高けん制
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM101IN0Q1A910C2000000/

『【北京=川手伊織】中国の国家糧食・物資備蓄局は9日、初めて原油の国家備蓄を放出すると発表した。資源価格の高騰が素材や中間財の値上がりに波及し、企業収益を圧迫しているためだ。銅やアルミに続く放出で資源高をけん制するが、実際に価格上昇を抑え続けられるかは不透明だ。

市場では中国政府の発表を受けて、ひとまず原油の需給緩和につながるとの見方が浮上し、国際相場のニューヨーク市場のWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)の期近物は9日終値が1バレル68.14ドルと前日比1.16ドル(1.7%)下げた。「原油まで備蓄を放出するのは予想外だった」(野村証券の大越龍文シニアエコノミスト)との受け止めが広がった。

中国は製油所や化学工場を集中合理化した企業を主な対象として、数回にわけて競売にかける。備蓄局は放出が国内需給の安定やエネルギー安全保障に役立つと強調したが、備蓄放出の規模や時期は示さなかった。

中国政府は資源高をうけ、7月以降3回にわたり銅、アルミ、亜鉛の国家備蓄を放出した。銅の価格は中国景気の減速感が強まり、上昇に一服感が出た。アルミは中国の電力不足や原料ボーキサイトの主産地である西アフリカ・ギニアの政変をうけ価格が高騰したままだ。

中国の卸売物価指数は8月、前年同月比9.5%上昇し、2008年8月以来13年ぶりの高い伸びとなった。中間財や素材にも価格上昇圧力が加わっているためだ。石油・石炭加工、鉄鋼、非鉄金属加工、化学原料などは前年同月の水準を2~4割上回り、7月と比べても上昇した。

生産コストの上昇は企業収益を圧迫している。8月の消費者物価指数(CPI)上昇率は0.8%にとどまった。消費回復がもたつくなか、中小零細企業が多い川下では価格転嫁が遅れている。中国人民銀行(中央銀行)が3000億元(約5兆1000億円)の資金枠を設け、中小零細企業に低利での借り換えを促すなど、政府は資金繰り支援に注力している。』

INPEX、ベネズエラの権益売却し撤退へ

INPEX、ベネズエラの権益売却し撤退へ ロイター報道
https://www.jiji.com/jc/article?k=2021082800180&g=int

『【サンパウロ時事】ロイター通信は27日、複数の関係筋の話として、INPEX(旧社名国際石油開発帝石)が南米ベネズエラに保有する石油と天然ガスの権益を地元企業に売却し、同国から撤退すると報じた。国際帝石や売却先はコメントを拒んでいるという。 
 ロイターによると、国際帝石は中部グアリコ州で、国営石油会社PDVSAと共同で天然ガス事業を営んでいるほか、ペトログアリコ石油ジョイントベンチャーに参加。天然ガス事業の持ち株70%と、ペトログアリコの持ち株30%を首都カラカスを本拠とする石油会社スクレ・エナジー・グループに売却した。

 ベネズエラは反米左派政権の失政と石油価格下落、米国の経済制裁で経済が崩壊。治安も悪化しており、世界一の確認原油埋蔵量を誇りながらも、最近は欧米石油会社の撤退が相次いでいる。』

欧米石油メジャー、イラク撤退検討

欧米石油メジャー、イラク撤退検討 中国勢に権益か
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR19B920Z10C21A7000000/

『中東の主要産油国イラクから英BP、米エクソンモービルといった石油メジャーが相次ぎ撤退する構えをみせている。世界で脱炭素の動きが強まり、石油採掘事業の将来が不透明になるなか、政権が安定しないイラクでの事業を見直そうとしている。各社は中東の石油を求める中国国有企業への権益売却を検討している。

「BPはイラクを離れようとしている」。イラクのアブドルジャバル石油相は7月上旬にフェイスブックで公表した映像で、南部にある世界有数規模の「ルメイラ油田」で48%の権益を持つBPが撤退する可能性を認めた。ルメイラ油田の北に位置する「西クルナ2」を操業するロシアの民間石油最大手ルクオイルも、中国企業に権益を売却する意向を通知してきたという。

BPは2020年、契約期限切れで北部のクルド人地域キルクークからも撤退した。米エクソンモービルは「西クルナ1」で保有する33%の権益を売却する方針を示した。英蘭ロイヤル・ダッチ・シェルは18年、伊藤忠商事に西クルナ1の権益20%を売却した。BPがルメイラ事業を止めれば、欧米メジャーの脱イラクはより鮮明になる。

伊藤忠は西クルナの油田について「現時点で事業計画に変更はない」と説明している。

イラク離れの背景には「脱炭素」の加速がある。BPは30年までに石油・ガスの生産量を4割縮小し、新エネルギー分野にシフトする長期戦略を打ち出した。オランダの裁判所は5月、シェルに対し温暖化ガス排出量を30年までに19年比で45%削減するよう命じた。

アブドルジャバル氏は6月、議会で「イラクの投資環境」も同国からメジャーが離れる一因だと主張した。イスラム教の様々な宗派勢力が寄り集まる政権は指導力が弱く、過激派組織「イスラム国」(IS)によるテロや民兵組織による外国の駐留部隊への攻撃が頻発する。資金不足の政府が約束するインフラ整備や支払いも遅れがちだ。

イラクの原油は採掘が比較的容易で確認埋蔵量が豊富なため、早くから欧米メジャーが進出。一方、生産量に応じて国から報酬を得られるサービス契約方式で、外国企業が得られる1バレルあたりの報酬は低く抑えられている。

欧米勢の隙間を埋めるのは中国だ。日本エネルギー経済研究所の吉岡明子・中東研究センター研究主幹は「エネルギー安全保障は目先のもうけを度外視できる国家戦略で、欧米上場企業のような株主からの脱炭素圧力は小さい」と説明する。

エクソンの西クルナ1での権益には中国石油天然気集団(CNPC)や中国海洋石油(CNOOC)が関心を示し、実際の交渉が進んでいるとの情報がある。米紙ウォール・ストリート・ジャーナルは6月、BPのルメイラ油田権益について、BP本体から切り離し、CNPCとの合弁で操業する計画だと報じた。(イスタンブール=木寺もも子、薬文江)』

オマーン沖タンカー攻撃「断固非難」

オマーン沖タンカー攻撃「断固非難」 官房長官
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA023DZ0S1A800C2000000/

加藤勝信官房長官は2日の記者会見で、中東オマーン沖で7月末に起きたイスラエル系企業が運航するタンカーへの攻撃を「断固非難する」と述べた。「船舶の自由な航行を阻害する事案だ」と指摘した。

中東地域の平和は日本の安定的な原油調達に欠かせないとも強調し「積極的な外交努力を継続したい」と話した。攻撃を受けたタンカーは日本企業が船主とされ、英国人とルーマニア人の乗組員2人が死亡した。

中東、輸出視野にグリーン水素

中東、輸出視野にグリーン水素 脱炭素に備え、資源温存
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB224BN0S1A720C2000000/

『【ドバイ=岐部秀光】中東の産油国が再生可能エネルギーの電気で水を分解してつくる「グリーン水素」の投資を本格化する。オマーンが世界最大の製造拠点を整備するほか、サウジアラビアも欧米企業を誘致する。脱炭素時代の「輸出産業」に育てるほか、豊富な化石燃料資源を温存して残存者利益を総取りする思惑もありそうだ。

オマーンの国営石油会社OQは、香港を拠点とする水素開発会社インターコンチネンタル・エナジー、クウェートのエネルギー会社、エネルテックと協力し、国内に世界最大級のグリーン水素の生産施設を建設する。

水を分解する電気をつくる風力と太陽光の発電設備の合計出力は大型原発25基分にあたる2500万キロワット。2028年に着工し、38年に完成する予定だ。完成時には年180万トンのグリーン水素を生産する計画。アジアや欧州向けの輸出を計画している。オマーンはベルギーのエネルギー会社DEMEともグリーン水素事業で連携することで合意している。

サウジアラビアは北西部に建設中の未来都市NEOMでグリーン水素の生産を計画する。米産業ガス大手のエアープロダクツ・アンド・ケミカルズが協力するほか、ドイツなど欧州勢もサウジを水素戦略の重要拠点と位置づけ関係を強化する。

サウジアラビア国営石油会社サウジアラムコの施設内にある水素自動車の充塡ステーション=ロイター
いま世界で流通する水素の99%は天然ガスや石油製品を改質してつくる「グレー水素」だが、製造過程で二酸化炭素(CO2)を排出する。温暖化ガス排出を削減できるとして注目されるのは、化石燃料からつくるが発生するCO2を回収する「ブルー水素」と製造過程でCO2を排出しない「グリーン水素」だ。

中東は石油や天然ガスを産出するのでブルー水素にも取り組んでいる。

サウジ国営石油会社サウジアラムコは、日本エネルギー経済研究所、三菱商事などと、天然ガスから分離回収した水素をアンモニアに加工し、日本へと運ぶ実証実験に着手した。
アブダビ国営石油会社(ADNOC)も7月、日本のJERA、INPEX(旧国際石油開発帝石)、石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)とブルー水素からつくるアンモニアの供給網づくりの共同調査で契約を交わした。

ただ、本音では中東産油国はブルー水素よりグリーン水素を重視しているとみられる。サウジのある有力経済閣僚に、サウジはブルー水素とグリーン水素のどちらを有望視しているか尋ねたところ「サウジの国(旗)の色は緑だ」と答えた。

グリーン水素は中東と地理的に近い欧州向けに巨大な需要が見込める。ブルー水素は炭素に値段をつける「カーボンプライシング」が本格化すれば、コスト競争力を失う恐れもある。

中東の産油国は一般に原油の生産コストが低い。サウジはライバルの生産者が市場から振り落とされても最後のプレーヤーとして残り、残存利益を総取りする戦略とみられる。グリーン水素ならば、石油やガスを温存しつつ、化石燃料に代わる「輸出商品」の柱として育てることができる。

課題はブルー水素の2~4倍とされる製造コストの高さ。ただ、水を分解する装置の大型化とコスト低減が進んでおり、30年ごろにはブルーとグリーンの製造コストが並ぶとの見方もある。

湾岸産油国は再生エネも豊富だ。国土の大半を占める広大な砂漠に太陽が照りつけ、海岸線も長く、風力や太陽光発電の立地場所として理想的。サウジは30年までに国内エネルギーの半分を再生可能エネルギーでまかなう目標を掲げる。

高い潜在力がありながら、湾岸産油国の再生エネの発電量は世界全体の1%にとどまる。逆にいえばグリーン水素の製造に回す再生エネの余力も極めて大きい。

エネルギー調査会社ライスタッドエナジーによると、カタールのグリーン水素の生産コストは1キログラムあたり5.8ドル(約640円)。デンマークの3分の2の安さで、世界でも価格競争力がある。

製鉄や石油精製、飛行機など再生エネによる電化が難しい分野に水素を活用することで温暖化ガス排出を減らせる。いま水素のほとんどは工業原料として使われ、エネルギー源としての利用はほぼない。英石油大手BPによれば、50年に温暖化ガス排出を実質ゼロにするには、最終エネルギー消費の16%を水素でまかなう必要がある。』

石油と同等の燃料を合成できる植物プランクトン

石油と同等の燃料を合成できる植物プランクトン。海洋研究開発機構が世界初の発見
中村 真司2021年7月29日
https://pc.watch.impress.co.jp/docs/news/1340893.html

 ※ この手の、「藻類が、バイオ燃料を合成!夢のジェット燃料を産出!」話し、「夢のプロジェクト始動!」話しは、あまた聞くぞ…。

 ※ その後、さっぱり…、だがな…。

『植物プランクトン「Dicrateria rotunda (D. rotunda)」

 国立研究開発法人海洋研究開発機構(JAMSTEC)と、豊橋技術科学大学 生理学研究所は19日、石油と同等の炭化水素を合成する能力を持つ植物プランクトンを世界で初めて発見したと発表した。

 研究グループが発見した植物プランクトン「Dicrateria rotunda (D. rotunda)」は、炭素数10~38までの一連の飽和炭化水素(炭素と水素からできている有機化合物)を合成する能力を有しており、炭素数10~15のガソリン、同16~20のディーゼル油、同21以上の燃料油に相当する炭化水素を作成可能なことを意味する。

 Dicrateriaは海洋地球研究船「みらい」により、2013年に北極海で採取されたが、太平洋や大西洋など、ほかの海域でも広く生息している。Dicrateriaが作る飽和炭化水素の成分は石油と同等で、バイオ燃料の質としては申し分ないという。ただし、合成する量に問題があり、合成機能をいかに増強させるかが課題となる。』

ミドリムシが燃料を作る!? 石油由来の軽油を100%代替可能な次世代バイオディーゼル燃料が完成
https://www.chem-station.com/chemistenews/2020/04/euglena.html

ユーグレナでの
バイオジェット燃料開発
https://www.kindai.ac.jp/agriculture/research-and-education/collaboration/05/index.html

「一瞬の産油国」

「一瞬の産油国」カンボジアが握る巨大資源の命運
アジア総局長 高橋徹
https://www.nikkei.com/article/DGXZQODK183CP0Y1A710C2000000/

 ※ こういう記事を読むと、実は「資源開発」というものは、「究極の利害調整」であることが分かる…。

 ※ そして、調整に手間取っているうちに、「交渉」や「利益算定」の「基礎・基盤」が変更してしまう…。

 ※ 昨今大流行りの、「脱炭素」「気候変動対策」の進展は、「石油資源」から生じる「利益」の算定の基盤を変えてしまった…。

 ※ しかし、こういう「エネルギー資源」の開発には、国益がかかっており、「国益」とは「自国民一人一人の利益」でもあるから、それを「黙らせること」は、困難だ…。

『東南アジア諸国連合(ASEAN)で8番目の産油国になる夢は、半年足らずでしぼんでしまった。

6月4日、カンボジアのシアヌークビル沖の海底油田「アプサラ鉱区」で操業するシンガポールのクリスエナジーが、会社清算を申し立てたと表明した。昨年12月29日に生産を始めたものの、産出量が当初見込みの日量7500バレルの半分以下にとどまり、全社的な資金繰りに行き詰まったという。

フン・セン首相の落胆は大きかっただろう。「来る2021年を前に我々は大きな贈り物を手にした。カンボジアの全国民に報告したい。長く待ちわびた我が国初の原油生産が始まった」。生産開始の当日、首相はフェイスブックにこう書き込み、喜びを誇示した。

12月29日はかつてカンボジア内戦が完全終結した日でもある。それを記念してプノンペン市内に建設された高さ50メートルの「ウィンウィン記念塔」内の歴史博物館に、国産原油の最初の1滴が納められた。式典が開かれたのはクリスエナジーの経営破綻から5日後の6月9日。晴れの場に肝心の首相は姿を見せなかった。

アプサラ油田の曲折の歴史には、日本も浅からぬ因縁がある。

遅れた経済発展の一助にすべく資源開発を志したカンボジアは1980年代、領海内の開発権益を外資に与え始めた。94年、最初に試掘した石油資源開発が、有機物の量から原油埋蔵の兆候を発見した。97年には出光興産が探鉱に挑んだものの、翌年に撤退した。外資が失敗して権益を返還すると、政府がまた別の外資に与えるという繰り返しの末、2005年に米シェブロンと三井石油開発の連合がついに油層を掘り当てた。付加価値の高い軽質油で、期待は一気に高まった。

だが開発の段になり、カンボジア政府とシェブロン・三井連合の交渉が決裂する。当時を知る関係者によれば、所得税率や鉱区使用料を巡り、政府が当初合意より企業負担を引き上げようとしたのが原因だったという。

クリスエナジーは「アプサラ油田」の生産開始にこぎ着けたのだが…(2017年8月、カンボジア政府との契約調印式)=ロイター
割って入ったのが新興石油会社のクリスエナジーだ。シェブロンや三井から権益を引き継ぎ、17年に政府と開発契約を結んだ。厳しい条件下でも、投資を絞り込めば採算はとれる、と踏んだようだが、肝心の生産量がもくろみに届かず、万事休した。破綻直前の5月末、約30万バレルをシンガポール向けに輸出したのが、最初で最後の出荷となった。政府は今後、新たに操業を請け負う外資を探すが、前途は多難といえる。

カンボジアの18年の石油製品の輸入量は250万トンだった。原油換算で年1850万バレル、日量5万バレルだ。同3千バレル前後のアプサラ油田の産出量はその6%程度にすぎず、しかも国内に製油所がない現状では輸出するしか手段がない。「それでも100%輸入だった同国が、少しでも原油を輸出できれば、その分だけ石油市況の変動をヘッジできるはずだった」(カンボジア総合研究所の鈴木博チーフエコノミスト)

アプサラ油田の失敗で、カンボジアの産油国の夢もついえてしまうのか。カギを握る存在が、タイとの国境未画定の海域にある。

アプサラ鉱区の西側、タイ湾の真ん中を縦断する2万6400平方キロメートル、東京都12個分のエリアは、両国が領有権を主張し、独自に鉱区の権益を企業に与えている。そこにはシェブロンのほか、米コノコフィリップスや英蘭ロイヤル・ダッチ・シェル、仏トタルなどそうそうたる顔ぶれが名を連ねる。

探鉱はまだにもかかわらず、石油や天然ガスの存在が確実視されてきた。なぜか。すぐ西側に位置し、80年代以降のタイの旺盛なエネルギー需要を満たしてきた「エラワン」「ボンコット」の両鉱区と地層がひと続きで、相当量の資源が眠る蓋然性が高いからだ。

市場が近く、すでにタイへ延びるパイプラインなどのインフラもそのまま使える。あるエネルギー業界関係者は「ASEAN域内のラストリゾート。だから欧米メジャーも鉱区を手放そうとしない」と解説する。

それほどの有望な海域がなぜ手つかずで放置されてきたのか。

国境問題はひとまず脇に置いて資源開発を進めるため、タイは01年、カンボジアと重複海域南部の共同開発に基本合意し、協定を結んだ。時のタイ首相はタクシン・チナワット氏。フン・セン氏との親密な関係を生かし、具体化を進めたが、06年のクーデターで失脚した。同じく双方が領有権を主張する国境山上の「プレアビヒア寺院」の周辺の帰属を巡って両国関係が悪化すると、余波は陸から海に飛び火する。タクシン氏の政敵だったアピシット政権が09年に協定を一方的に破棄してしまった。

11年にタクシン氏の妹のインラック氏が政権を奪取すると、破棄された協定をもとに交渉再開に動いたが、14年の再クーデターでタクシン派政権はまたも崩壊する。19年末、両国は三たび交渉入りに合意したものの、直後に新型コロナウイルスの感染拡大が始まったため、たなざらしのままだ。

タイ湾のボンコット鉱区の生産施設。エラワン鉱区と共に国産ガス田としてタイのエネルギー需要を支えてきた
タイ国内の政治対立に翻弄されてきた構想は、過去を振り返れば、常にタイの側が前のめりだった。エラワンやボンコットが枯渇に向かうなか、発電燃料や化学原料の需要増をまかなうため、タイは11年から割高な液化天然ガス(LNG)の輸入を余儀なくされている。現在は7割を占める国産ガスの比重は、このままだと15年後に3割まで低下すると予想されている。

重複海域で新たな「国産資源」を開発し、既存のパイプラインを延伸して自国内に持ち込めれば、メリットは計り知れない。タイのエネルギー省幹部は「交渉のテーブルに戻り、早期に開発に合意できれば、カンボジアよりタイの方が恩恵が大きいのは自明」と打ち明ける。

図式を単純化すれば、こういうことだ。タイには開発の意志、能力、インフラ、需要のすべてがそろう。一方のカンボジアは、たとえ意志はあっても、能力やインフラがない。製油所やガス火力発電所、化学工場がないため、需要も見込めない。とどのつまり、共同開発と言っても、タイ側へおんぶにだっこにならざるを得ない。

カンボジアは権益分の対価をタイから現金で受け取るのが現実的な方策だ。それを十分に認識し、焦るタイをじらしながら、最大限に譲歩を引き出そうとしてきたのがフン・セン氏流の外交術であっただろう。が、実はカンボジアの側にも、別のタイムリミットが忍び寄る。「脱炭素」の世界的な潮流である。

先進国が2050年を目標に二酸化炭素(CO2)の実質排出量をゼロにする「カーボンニュートラル」へ動き出したなか、30年後の鉱区に、石油メジャーがこぞって手を挙げている今ほどの価値が見込めるのか。一方で今後10~20年間は、石油・天然ガスの旺盛な需要は間違いなく存在する。虎の子の「埋蔵金」の価値を顕在化させるのは、待ったなしとなりつつある。

一瞬とはいえ実現した産油国としての自負は、首相在任36年にしてさらなる長期政権への野望を公言しているフン・セン氏に、手持ちの有力カードを切らせる触媒になるのか。それともあつものに懲りてなますを吹く姿勢に押しとどめるのか。コロナ後のカンボジアとタイの資源を巡る駆け引きは、注目点のひとつになる。

【関連記事】カンボジア、産油国入りの夢遠く 掘削企業は清算へ
=随時掲載

高橋徹(たかはし・とおる) 
1992年日本経済新聞社入社。自動車や通信、ゼネコン・不動産、エネルギー、商社、電機などの産業取材を担当した後、2010年から5年間、バンコク支局長を務めた。アジア・エディターを経て、19年4月からアジア総局長として再びバンコクに駐在。論説委員を兼務している。著書「タイ 混迷からの脱出」で16年度の大平正芳記念特別賞受賞。』

原油高もうひとつの理由

原油高もうひとつの理由 「バイデンの米国」生産停滞
編集委員 志田富雄
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB1908I0Z10C21A7000000/

『米原油先物は7月、期近取引が一時1バレル77㌦に接近し、6年半ぶりの高値を付けた。ワクチン接種が進んで人の動きが活発になり、ガソリンなどの石油需要が急回復してきたことが主因だ。石油輸出国機構(OPEC)やロシアなどが協調減産の縮小で18日に合意したことは下げ材料となりそうだが、原油市場にはもうひとつ高値を支える変化がある。相場の急回復にもかかわらず米国の原油生産が以前のように増えなくなったことだ。

米エネルギー情報局(EIA)が毎週更新する石油統計によれば、世界最大の規模を持つ米国のガソリン需要は7月2日時点で日量1004万バレルに達した。季節や週ごとに振れのある統計だが、1000万バレルを超したのはこれが初めてだ。直近9日時点の4週平均で見ても948万バレル台とコロナ前の2019年7月の同時期と並んだ。

米国の接種率は足元で伸び悩み、インド型(デルタ型)感染拡大への警戒感も強まる。それでも米疾病対策センター(CDC)によると、18歳以上の成人で1回でも接種したのは21年7月1日時点で約1億7000万人と66%に達し、新規の感染者数は大幅に減少した。行動制限が緩和されて人の移動が増え、それがガソリン需要の急回復として表れている。

主要油種の中でも米原油相場の上昇は顕著だ。19年4月末には10㌦ほど上にあった中東産ドバイ原油の相場を抜く場面も出て、品質差を反映した本来の序列に戻りつつある。コロナ禍で急落する前に米国とイランの対立で急伸した20年1月の高値も65㌦台で、71㌦台まで下げた16日時点の相場の方が高い。

ところが、米国の原油生産は相場回復の割に小幅な増加にとどまる。EIAの統計によれば9日時点でようやく日量1140万バレルまで回復した。それでも米国で感染拡大が深刻になる前に1300万バレル強まで増えた水準に比べると150万バレル以上も少ない。新規開発を示す石油リグの稼働数にもかつての勢いはない。米石油サービス大手のベーカー・ヒューズ社が発表するリグ稼働数は16日時点で原油・天然ガスを合わせ484と、1000を超えていた19年春までの半分以下だ。

国内生産があまり増えず、輸入も拡大していないのでガソリンなどの需要拡大は米国内の原油在庫の減少につながった。EIAの統計で、20年6月に5億4000万バレルまで膨らんだ原油在庫(戦略石油備蓄を除く)は直近で4億4000万バレルを下回り、過去5年レンジの下限に近づいている。需給統計を見れば、米原油相場の上昇ピッチが中東産原油や欧州のブレント原油より速いのは当然と言える。

石油産業を後押ししたトランプ政権に代わり、環境を重視するバイデン政権が21年1月に誕生した変化は大きい。脱炭素への動きは世界の奔流となり、株主や金融機関の意識を変えた。高値になると生産が急拡大し、それが原油相場を急落させた過去の教訓も影響している。マーケット・リスク・アドバイザリーの新村直弘代表は「こうした圧力が米国のタイムリーなシェール増産にブレーキをかけている」と考える。

環境重視の米バイデン政権が誕生した変化は大きい=ロイター

欧州エネルギー取引所(EEX)グループの高井裕之上席アドバイザーは「収益と配当を重視するようになった米国のシェール企業も相場上昇で生産増に動く気配はある。だが、現場の労働者や機材を確保できるかという問題もある」と話す。

このまま国内生産が大きく増えなければ早晩、米国内の需給は回復した石油需要によって逼迫する。脱炭素に力を入れても、すぐに100万バレル単位で需要を減らすのは至難の業だ。海外油種に比べ米国産原油の相場上昇が速いため、輸入増加や輸出減少につながることは考えられる。そうなると国際需給が引き締まる要因になる。

すでにガソリン価格は全米平均で1?3㌦を超えている。原油高の影響は物価や景気にとどまらない可能性もある。米ウォール・ストリート・ジャーナル紙は7日付のオピニオン面で「米国の(原油や天然ガスの)減産は、需要が急回復する中で世界の供給が削減されることを意味する。それは米国民の負担が増す中で、(米国と対立する)イランやロシアを利することにもなる」と指摘する。脱炭素の過程には複雑な要素がからみつく。』

「中東のシーレーンは自分で守れ」と安倍首相を突き放したトランプ米大統領の本音とは?

「中東のシーレーンは自分で守れ」と安倍首相を突き放したトランプ米大統領の本音とは?
https://news.yahoo.co.jp/byline/kimuramasato/20190625-00131581/#:~:text=%E6%97%A5%E6%9C%AC%E3%81%8C%E6%9C%AC%E6%A0%BC%E7%9A%84%E3%81%AB%E3%82%B7%E3%83%BC%E3%83%AC%E3%83%BC%E3%83%B3%E9%98%B2%E8%A1%9B%E3%81%AB%E5%8F%96%E3%82%8A%E7%B5%84%E3%81%BF%E3%81%A0%E3%81%97%E3%81%9F%E3%81%AE%E3%81%AF%E3%80%811981%E5%B9%B4%E3%81%AE%E3%80%8C%E3%82%B7%E3%83%BC%E3%83%AC%E3%83%BC%E3%83%B31000%E3%82%AB%E3%82%A4%E3%83%AA%E9%98%B2%E8%A1%9B%E6%A7%8B%E6%83%B3%E3%80%8D%E3%81%8B%E3%82%89%E3%81%A7%E3%81%99%E3%80%82,%E9%A0%98%E6%B5%B7%E3%81%AE12%E3%82%AB%E3%82%A4%E3%83%AA%E3%82%92%E8%B6%85%E3%81%88%E3%81%A6%E3%80%81%E3%83%95%E3%82%A3%E3%83%AA%E3%83%94%E3%83%B3%E3%81%A8%E5%8F%B0%E6%B9%BE%E9%96%93%E3%81%AE%E3%83%90%E3%82%B7%E3%83%BC%E6%B5%B7%E5%B3%A1%E3%81%BE%E3%81%A7%E3%82%92%E6%97%A5%E6%9C%AC%E3%81%8C%E9%98%B2%E8%A1%9B%E3%81%99%E3%82%8B%E3%81%A8%E3%81%84%E3%81%86%E3%82%82%E3%81%AE%E3%81%A7%E3%81%97%E3%81%9F%E3%80%82%2090%E5%B9%B4%E3%81%AE%E6%B9%BE%E5%B2%B8%E6%88%A6%E4%BA%89%E3%81%A7%E3%81%AF%E6%88%A6%E4%BA%89%E7%B5%82%E4%BA%86%E5%BE%8C%E3%80%81%E6%97%A5%E6%9C%AC%E3%81%AF%E6%B5%B7%E4%B8%8A%E8%87%AA%E8%A1%9B%E9%9A%8A%E3%81%AE%E6%8E%83%E6%B5%B7%E9%83%A8%E9%9A%8A%E3%82%92%E6%B4%BE%E9%81%A3%E3%81%97%E3%80%81%E6%A9%9F%E9%9B%B7%E6%8E%83%E6%B5%B7%E3%82%92%E8%A1%8C%E3%81%A3%E3%81%A6%E3%81%84%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82

『世界最大のエネルギー生産国になった米国

[ロンドン発]米国のドナルド・トランプ大統領は24日、イランへの追加制裁を科す大統領令に署名し、イラン最高指導者アリ・ハメネイ師らを制裁対象に加えました。それに先立って、こうツイートしました。

「中国は原油の91%を(ホルムズ)海峡から輸入している。日本は62%だ。他の多くの国も似たような状況だ。どうして我が国が他の国々のために何年も何の見返りもなしにシーレーンを守らなければならないのか」

「(ホルムズ海峡を通って運ばれてくる原油に依存する)こうしたすべての国はいつも危険な旅を強いられている自国の船舶を自分たちで守るべきだ」

「米軍が中東に展開している必要はない。米国は(断トツで)世界最大のエネルギー生産国になった。米国のイランへの要求は非常にシンプルだ。核兵器は持たない、テロにこれ以上、資金援助しないことだ」

米国が世界最大のエネルギー生産国になったというのはトランプ大統領の言う通りです。米エネルギー情報局(eia)によると、米国の石油生産量は昨年1096万バレル/日量と2位サウジアラビアの1042万バレル/日量を上回っています。

また、米中央情報局(CIA)のワールド・ファクトブックによると、シェールガス革命によって米国の天然ガス生産量は2015年推計で7662億立法メートルと2位ロシアの5980億立法メートルを大きく引き離しています。

米エネルギー情報局(eia)のHPより抜粋

しかしペルシャ湾からの年間原油輸入量は2012年の7億8308万バレルから15年には5億4286万バレルに減少。17年には6億2593万バレルまで戻しています。eiaの予測では2020年には原油、天然ガスなどエネルギーの輸出が輸入を1953年以来初めて上回るそうです。

中東の原油は米国にとって重要ではなくなった

中東の原油は米国にとってかつてほど重要ではなくなりました。トランプ大統領になって土壇場で米ドローン撃墜に対するイランへの報復攻撃を撤回したのも、中東の泥沼に引きずり込まれるのを恐れたからでしょう。

米国がイランを警戒するのはトランプ大統領の言う通り「核兵器開発」と「テロへの資金援助」であるのは間違いありません。

国際エネルギー機関(IEA)の「世界エネルギー展望2017年版」によると、世界のエネルギー需要は2040年までに30%増えます。一方、米国は3000万toe(石油換算トン)の減、欧州は2億toeの減、日本は5000万toeの減少と予測されています。

国際エネルギー機関(IEA)の「世界エネルギー展望2017年版」より抜粋

これに対してインドのエネルギー需要は10億500万toe、中国は7億9000万toe、東南アジアは4億2000万toeも増加する見通しです。原油輸入に占めるアジアの割合は現在の50%から3分の2以上になるそうです。これは中東の原油輸出量をはるかに上回っています。

経済産業省の資源・エネルギー統計年報によると、18年、日本の中東からの原油輸入は全体の88%を占めています。

地球温暖化対策でエネルギー需要が減るとは言え、中東と日本を結ぶペルシャ湾からホルムズ海峡、インド洋、マラッカ海峡(ロンボク海峡)、南シナ海のシーレーンは日本の生命線であることに変わりはありません。

中東のシーレーン防衛から米国が撤退すると、南シナ海に人工島を造成して要塞化している中国の影響力はますます強くなってしまいます。

米国は中国に対抗するために日本やインド、東南アジア諸国と協力してシーレーン防衛を強化すべきであって、トランプ大統領お得意の「離脱レトリック」は極めて近視眼的です。

しかし安倍晋三首相がトランプ大統領の要請を受け、現職首相として41年ぶりにイランを訪問したことからも分かるように同盟国に求められる役割は大きくなってきます。

日本のシーレーン防衛

船の所有者はノルウェー人、船籍国はリベリア、管理者はキプロス人、保険会社は英国法人であり、さらに米国の保険会社に再保険が掛けられ、乗組員は船長がポーランド人で船員はバングラディシュ人とフィリピン人、用船契約はアラブ首長国連邦(UAE)で、積み荷はイタリア、フランスそしてドイツに向け――。

高井晋氏、秋元一峰氏著『海上防衛力の意義と新たな役割 オーシャンピース・キーピングとの関連で』によると、これが海の世界では当たり前だそうです。だからこそ国際的な枠組みによるシーレーン防衛が必要になってきます。そのリーダー役は米国をおいてほかにありません。

日本が本格的にシーレーン防衛に取り組みだしたのは、1981年の「シーレーン1000カイリ防衛構想」からです。領海の12カイリを超えて、フィリピンと台湾間のバシー海峡までを日本が防衛するというものでした。

90年の湾岸戦争では戦争終了後、日本は海上自衛隊の掃海部隊を派遣し、機雷掃海を行っています。2001年の米中枢同時テロではテロ特別措置法を制定してインド洋に補給艦と護衛艦2隻を派遣、米国など数カ国の艦船に給油活動を行いました。

09年にはソマリア沖海賊対策のために自衛隊の護衛艦2隻をソマリアに派遣しています。15年に制定された安全保障関連法で集団的自衛権の行使が限定的に容認された際、ホルムズ海峡が封鎖されれば、海上自衛隊を機雷掃海のため派遣できるとの政府見解を示しています。

今月13日、ホルムズ海峡近くで東京の海運会社「国華産業」が運航するタンカーが攻撃された事件では、岩屋毅防衛相は「この事案で部隊を派遣する考えはない」と述べました。
イランはまだ、ホルムズ海峡での攻撃を本格化させたわけではありません。しかし世界最大のエネルギー生産国になった米国が中東への関与を弱めていくのは想定内のシナリオです。

日本は食料の多くを海外からの輸入に頼っています。中東に原油の9割近くを依存する日本が他国と協力してシーレーン防衛を強化するためには憲法9条の改正は避けては通れません。

それともトランプ大統領は、憲法改正を目指す安倍首相と気脈を通じているのでしょうか。

(おわり)

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木村正人
在英国際ジャーナリスト
在ロンドン国際ジャーナリスト(元産経新聞ロンドン支局長)。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。masakimu50@gmail.com

masakimu41
kimura.masato.927
関連リンク(外部サイト)
公式サイト 』

発電用石炭13年ぶり高値

発電用石炭13年ぶり高値 中国の生産停滞
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB0918U0Z00C21A7000000/

『発電用の石炭(一般炭)がアジア市場で高騰している。指標となるオーストラリア産のスポット(随時契約)価格は約13年ぶりの高値をつけた。国内の生産が停滞した中国がインドネシアなどから輸入を増やし、アジア域内の需給が引き締まった。石炭の値上がりは日本の電力料金の押し上げ要因になる。

豪州産の一般炭のスポット価格は7月中旬時点で1トン139ドル程度。昨年末に比べ7割近く上昇し、2008年9月以来の水準にある。今年に入って上昇基調を強め、3月に97ドル程度と約2年ぶりの高値を記録。4月に下落したが、5月後半以降は再び水準を急速に切り上げている。

値上がりの主な要因と指摘されているのが、中国内での供給の停滞だ。7月1日に開催された中国共産党の創立100周年の記念式典に際し、式典前に大きな事故が発生するのを避けようと「中国内の炭鉱の操業規制が強化された」(石油天然ガス・金属鉱物資源機構=JOGMEC=の国吉信行氏)。

中国は世界の石炭需要の約半分を占め、年間で30億トン程度の一般炭を消費する。国際エネルギー機関(IEA)によると、中国の21年の石炭消費量は20年比で4%増える見通し。電力需要が20年比で8%増え、その多くを石炭火力発電が占めるとみられている。

中国の20年の一般炭輸入量は2億2千万トン強と、国内消費量の1割弱を占める。国内炭の比重が高いが規制で国内供給が細ったこともあり、海外炭の需要が強まった。

主要な調達先だった豪州からの輸入は政治的対立を背景に停止しているため、代わりに世界第3位の生産国であるインドネシアや、ロシアなどから「代替的に調達を強めている」(国吉氏)。

世界的に脱炭素の動きが進むなか、発電コストが低い石炭火力はアジアなどを中心に電源での存在感は大きい。IEAが4月に公表した予測では、石炭火力発電所の発電量は21年に約480テラ(テラは1兆)ワット時増える。太陽光発電と風力発電の合計を上回る増加幅だ。

日本も原子力発電所の再稼働が進まず、石炭火力に一定程度依存している。中国が周辺国から積極的に買い付け、購入しにくくなった日本や韓国などは豪州からの仕入れを増やしている。

引き合いが増える豪州は供給懸念が起きている。主要港で大型の船積み機械の故障が続き、今秋まで稼働できない状況が続く見通し。鉱山から港までを結ぶ鉄道の事故も散発的に起きているようだ。急増する需要に対応しきれていない。

中国共産党の記念式典が終わり今後は中国内の生産量が戻るとの観測が出ている。一方で大幅には値下がりしにくいとの見方も根強い。「年内までの契約分はすべて売り切ったと話す石炭生産者もいる」(発電事業者)など供給余力の乏しさを指摘する声がある。

アジアを中心にワクチン接種で経済正常化が進めば、電力消費も拡大する。Jパワーの担当者は「秋に相場が下落しても(電力需要期である)冬場には再び上昇するのではないか」と警戒する。

日本の電力大手は長期契約での石炭調達が主体だ。ただ今夏は平年より気温が高くなるとみられていることもあり、スポットの調達も増えているもようだ。スポット価格の高騰が続けば長期契約の価格に影響が及ぶ可能性もある。

電力各社は貿易統計から基準となる燃料価格を算定し、料金に反映する「燃料費調整制度」を採用している。石炭高を受け電力料金が上昇すると、企業や家計の負担増につながりかねない。』

天然ガスの憂鬱、米独ロの摩擦を横目にEUが包囲網

天然ガスの憂鬱、米独ロの摩擦を横目にEUが包囲網
フランクフルト支局 深尾幸生
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR068U30W1A400C2000000/

『ロシア産の天然ガスをドイツに運ぶパイプライン「ノルドストリーム2」をめぐってドイツと米国の摩擦が続く。だが、欧州全体を俯瞰(ふかん)すると、このパイプラインだけでなく天然ガスそのものへの風当たりが強くなっている。つい数年前までクリーンなエネルギーとして期待された天然ガスだが、世界が炭素ゼロへ急加速するなかで「化石」のラベルを貼られつつある。世界一の液化天然ガス(LNG)輸入国である日本への影響も大…

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世界一の液化天然ガス(LNG)輸入国である日本への影響も大きい。

「直ちにパイプラインの作業を放棄すべきだ」。3月、米バイデン政権は明確にノルドストリーム2に反対する意向を打ち出した。トランプ前政権からの懸案はバイデン政権にも引き継がれ、制裁を排除しない構えだ。ノルドストリーム2は年内の完工をめざし9割以上が建設済みだ。ドイツは原子力発電と石炭火力の終了を決めており、天然ガスの重要性は増すとして米国との妥協を模索する。

だが、独米ロの政治的思惑とは別のところでもその意味合いは変わりつつある。
「ガスは終わった」とEIB総裁

「控えめに言って、ガスは終わった」。1月、欧州連合(EU)の政策金融機関、欧州投資銀行(EIB)のベルナー・ホイヤー総裁は記者会見で言い切った。「(ノルドストリーム2のことは)ベルリンが決めること」と述べたものの、「脱ガスは過去からの重大な離別だが化石燃料の使用をやめなければ気候目標を達成できない」と強調した。

EUは2050年のカーボンニュートラル(温暖化ガスの排出量実質ゼロ)を目指すべく、30年の削減目標を強化している。インフラは耐用年数が長いため今から化石燃料への投資をやめないと50年のゼロは達成できないというのがホイヤー氏の発言の趣旨だ。

発電や都市ガスに使われる天然ガスは燃焼時の二酸化炭素(CO2)排出が石炭より約4割、石油より約3割少ない。温暖化対策の有力な選択肢として期待が集まり開発やインフラ整備が進んだが、早くもその地位が揺らぎ始めた。

ノルドストリーム2が領海を通るデンマークは20年12月、北海での石油・ガス開発・生産を50年までに終了すると発表し、新たな入札を中止した。スウェーデンやフランスの公的金融部門でもガス開発プロジェクトなどへの支援の終了時期を定める動きが広がる。

ガスの将来性に決定的な影響を与えかねないのが、EUが近く立法する「タクソノミー規制」だ。タクソノミーは持続可能な経済活動を分類し定義する。つまり、気候変動の緩和の目標に照らしてどの技術が投資対象などとしてふさわしいかを定めるものだ。

20年11月に公表された原案では、ガス火力発電はCO2排出の基準値を満たすものだけ適格と見なされると記載された。そのための基準値が発電1キロワット時あたり100グラム未満と非常に厳しい。最新鋭のガスタービンコンバインドサイクルシステムでも310~340グラムと、既存技術では不可能な水準だ。まだ確立していないCO2を回収・貯蔵する技術(CCS)などと組み合わせるしかない。

原案の公表以降、ガス業界や一部の加盟国から見直しを求める意見が噴出し、利害を反映するための最終調整が進められている。3月下旬にはガス火力の基準は緩和される方向で検討されていることが明らかになり、一部の欧州議会議員などが「科学的ではない」と反発している。EUは4月末にも最終案をまとめる見通しだ。
理想と現実のバランスは

企業の間でも、とりわけ新設に対しては対応が分かれる。独シーメンスの火力発電機部門が分離したシーメンス・エナジーは、石炭火力の新設からの撤退を決めた。だが、ガス火力は今後も新設需要は旺盛とみる。同社の取締役会を監督する監査役会のジョー・ケーザー会長は日本経済新聞のインタビューに対し、「ガスはエネルギーと電力を確保するための中期的に現実的なソリューションだ。企業は現実と理想のバランスをとる必要がある」と述べた。

一方、独電力大手のRWEは40年までにガス火力発電からも撤退する。次期社長のマルクス・クレッバー氏は取材に「ガスへの需要は北米や欧州、アジアの主要市場では30年ごろ縮小に転じる」と語った。風力などの再生可能エネルギーの方が発電コストが安いためで原則、新設はしない。ガスは冬場に数週間、風力と太陽光の電力が足りなくなることなど緊急時に備えるためだけに残るとみている。

日本企業にとっても対岸の火事ではない。EUのタクソノミーは、EU域内で操業する外国企業も適用対象との議論もあり、日本企業が開示義務の対象となる可能性がある。機関投資家の銘柄選定に影響を及ぼすことも必至だ。また、EUは19年に持続可能なファイナンスについての国際的なプラットフォームを立ち上げており、国際的な基準作りへも影響を及ぼそうとしている。

ガスが化石燃料であることは避けようがない事実だ。一方でエネルギーの多様化と安定供給の重要性は変わらない。例えばCCSのような、CO2を確実に回収し閉じ込められる技術を、競争力のあるコストで確立できるかどうかがガスの将来を左右する。いずれは再エネ由来の水素に置き換わるとしても、過渡的な役割がいつまで続くのかの見極めも重要になる。

「夢の燃料」水素の覇権競う 米欧中日、供給網で火花

https://www.nikkei.com/article/DGXZQODZ281EP0Y1A320C2000000/

『脱炭素時代の「夢の燃料」と期待される水素。石油製品のように世界中で使われるようになるには、サプライチェーン(供給網)づくりが欠かせない。米国、欧州、中国、そして日本の4軸を中心にじわりと広がる水素供給網をひもとく。

供給網とはモノを「つくる」「運ぶ・ためる」「売る」「使う」の4つの目的をつなげる大きな商流を指す。水素の供給網を広く、太くする試みが世界各地で始まっている。「つくる」の世界3強は米エア…

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「つくる」の世界3強は米エアープロダクツ・アンド・ケミカルズ、仏エア・リキード、独リンデ。いずれも産業ガス大手だ。

エア・リキードの年間生産量は重量換算で約120万トンに相当する140億立方メートル。日本国内の水素供給量全体の半分以上を1社で賄える。リンデは独東部ライプチヒの近くに100キロメートル超の水素パイプラインを持つ。エアープロダクツ社は米西部カリフォルニア州、南部ルイジアナ州やテキサス州に総延長500キロメートルを超えるパイプラインを整える。いずれも水素を成長分野とみて海外展開にも積極的だ。
エア・リキードは神奈川県横須賀市に研究開発拠点を持つ

3強に続くのは中国勢だ。東華エネルギー(江蘇省)はプロパンガスから、美錦エネルギー(山西省)は石炭をガスに加工して水素を取り出す。

水素は製造過程によって大きく3つに色分けされる。天然ガスなどの化石燃料から取り出してつくる水素のうち、製造過程で出るCO2を大気中に放出するものを「グレー水素」と呼ぶ。CO2を回収・貯蔵すると「ブルー水素」、再生エネルギー由来の電気で水を分解してつくるのが「グリーン水素」だ。グリーン、ブルー、グレーの順番で環境に優しく生成コストは高い。

3強や中国勢など、多くの水素関連企業はまずグレーやブルーを使って水素の需要を増やし、市場をつくりながら技術開発を進める絵を描く。

グリーン水素の開発競争も活発になってきた。ここには技術で先行した日本勢が多くからむ。旭化成エンジニアリングは福島県浪江町の水素関連施設向けに、世界最大級の製造装置を開発した。日立造船や東芝エネルギーシステムズも既存設備の増強を進める。欧州勢では独シーメンス・エナジーやノルウェーのネルなどが装置の大型化を進める。英ITMパワーは住友商事と提携し、市場開拓へタッグを組む。

製造拠点から「運ぶ・ためる」のにも技術が必要だ。水素は気体の中でも軽く、一度に運べる量が少ない。貯蔵しやすいように液化するにはマイナス253度まで下げた状態を長時間維持しないといけない。気体のまま圧力をかけてボンベやコンテナに入れる方法もある。各社は場所や時間、量に応じて最適な方法を模索している。

川崎重工業はオーストラリアから日本に水素を運ぶ世界初の液化水素運搬船を開発した。2030年までに大型化して商用化を目指す。千代田化工建設は水素とトルエンを化学反応させてメチルシクロヘキサン(MCH)という液体にして運ぶ技術を開発した。
川崎重工業の液化水素運搬船「すいそ ふろんてぃあ」

MCHにすれば既存の石油タンクやタンカーを使え、安全性も高い。ブルネイで水素をつくり、MCHで川崎市の製油所に運んで水素とトルエンに分ける。水素は発電に使い、トルエンはブルネイに戻して再び水素の運搬に使う循環の仕組みを整えた。

運んだ水素は「売る」企業に渡される。販売場所の代表格は水素ステーションだ。水素を動力源にする燃料電池車(FCV)の普及をにらみ、水素ステーションを建てる動きが国内外で広がってきた。

ENEOSホールディングスは20年10月時点で44カ所の水素ステーションを持つ。22年春からは愛知県と神奈川県の2つの給油所内に水素充塡設備を導入する方針だ。既存の給油所を生かしてコストを抑える。岩谷産業は20年度末で約50カ所に展開する。コンビニエンスストア併設型や移動式など立地条件に合わせて今後も増設していく。
ENEOSホールディングスが横浜市内で運営する水素ステーション

韓国SKグループは1兆6000億ウォン(約1550億円)で水素関連企業の米プラグパワーの株式9.9%を取得した。プラグパワーは1997年設立。液化水素プラントや水素ステーションといった水素燃料の供給網の構築でノウハウを持つ。これを取り込み、25年までに水素ステーションを100カ所整備する。英蘭ロイヤル・ダッチ・シェルは独ダイムラー・トラックやスウェーデンのボルボなどとインフラ整備などで手を組む。

中国では手厚い補助金を受け、上海舜華(上海市)などが整備に力を入れる。国有石油大手の中国石油化工(シノペック)は3月末、25年までに1000カ所の水素ステーションを設置する計画を表明した。

「使う」先は主にFCVだ。水素と酸素の反応で発生する電気で走り、走行時に出るのは水だけ。技術の先頭をトヨタ自動車が走る。14年に世界初のFCV「ミライ」を世に送り出した。ホンダは16年に「クラリティ フューエル セル」を発売した。欧米や中国メーカーが電気自動車(EV)に注力する中、日本勢は実用化で一歩先を行く。

トヨタとホンダの国内販売台数は合計でも数千台にとどまる。今のペースでは、政府が掲げる「30年に80万台」との目標には遠く及ばない。中国は35年までにFCV100万台の普及をめざす。欧州連合(EU)は30年までにEVやFCVなどで3000万台の普及を打ち出す。

供給網は市場が大きい地域を軸につくられる。技術で先を行く日本勢がいつの間にか海外勢に追い越される――。童話「ウサギとカメ」のウサギに日本がならないように、企業は技術革新を推進する。政府は効果的な補助金や国際連携で普及を支える。技術革新のうねりを超え、水素先進国になるために待ったなしの課題だ。

カーボンゼロ
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小山堅
日本エネルギー経済研究所 専務理事 首席研究員
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ひとこと解説

CO2フリー水素のサプライチェーン構築を巡っては、記事の通り、日米欧中国の4軸が主導権争いの鎬を削る激しい競争状況にある。ただ日本にとって、世界にとって、水素の国際サプライチェーン構築に関しては、資源国とアジアという別の軸も極めて重要である。CO2フリー水素は様々な方法で製造可能だが、化石燃料由来のブルー水素・アンモニアの供給力確保という面で、中東・ロシア・豪州等の資源国は重要な役割を果たす。また石炭火力への依存が高いアジア諸国において、ブルー水素・アンモニアの混焼・専焼化で火力のゼロエミッション化に向かうことはアジアの脱炭素化のコスト効率的推進にとって重要で世界的にも極めて有意義だ。
2021年4月12日 8:16

〔ナゴルノカラバフ戦争の実相〕

今回、現代戦争史上初めて、一国軍の損害の過半が、相手軍の無人システムによってもたらされた。
https://st2019.site/?p=16543

『Nicole Thomas, LTC Matt Jamison, CAPT(P) Kendall Gamber, and Derek Walton 記者による2021-4-4記事「What the United States Military Can Learn from the Nagorno-Karabakh War」。
   ナゴルノカラバフ自治区は、80年代にソ連が設けた。アゼルバイジャン領内でありながら、住民の95%がアルメニア人なので。
 ソ連が崩壊すると、ナゴルノカラバフの住民はアゼルとの完全分離・独立を欲した。

 こうして自治区軍 vs.アゼル政府軍の内戦が始まった。ロシアは双方に武器と傭兵を供給した。
 1994にロシアは両者を手打ちさせた。しかし双方が不満だった。いらい、協定侵害行為は7000を数えるという。

 2016-4に「四日間戦争」勃発。
 この結果は、アゼルバイジャン政府に、武力行使だけが情況を好転させると確信させた。
 そして4年間、イスラエルやトルコと組んで熱心に軍備改革を進めた結果が、2020に実ったといえる。

 2020年の短期決戦は、スタートから44日間で停戦となった。アゼルは、ナゴルノカラバフの「三分の一」を武力回収できた。

 2020-9-27の開戦からわずか6日目にして、アゼル軍は、250両のAFV、ほぼ同数の砲兵、39の防空システム(その中には、ロシア版ペトリオットである S-300×1も)を、破壊したと公報主張。

 アルメニア軍は、アゼル軍のUAVのために武装解除されようとしたのであった。

 アゼルとトルコの紐帯は強力だ。言語が相通ずる。そしてアゼル難民が大量にトルコ領内に居る。だからトルコ人の意識では、アゼルは近隣国だが、ネイションとしては別ではなく、ひとつだ、と思う。
 いま、アゼル国内にはトルコ国旗がひるがえりまくっている。

 アゼルがソ連邦から離れたとき、アゼル政府は「汎トルコ」アジェンダを掲げた。
 このイデオロギーが、トルコからのあらゆる援助を惹き付けた。

 1992にトルコとアゼルは軍事援助、訓練支援、合同演習に関して合意。
 さらに1999に両国は、経済開発の共通ゴールを策定した。

 トルコ、アゼルバイジャン、ジョージアは、カスピから地中海に達する原油パイプラインを共同運営している。BTC(三国の首府の頭文字)ライン、という。

 このパイプラインを通じて原油を西側に好きなように売れるために、アゼルの収益はものすごいことになった。2011年の統計では、アゼル人ひとりあたりの平均年収は7190ドル。アルメニア人は3526ドル。ジョージア人は4022ドルだ。

 ありあまる資金をアゼル政府は兵器調達に突っ込んだ。2006~2019の総額でみると、アゼルは290億ドルを軍備に投資した。かたや同期間のアルメニアは60億ドルである。

 15年間経済が成長し、余剰資金を軍備に傾注し、トルコを同盟者にもった強みが、とうぜんのように発揮されたのである。

 10種弱の無人機をアゼル軍は揃えている。今次紛争で最も活躍したのは、トルコ製の「バイラクタル TB2」であった。同機は、小型のレーザー誘導兵装(スマート・マイクロ・ミュニション)を4発、翼下に吊下できる。
 加えて、イスラエル製の自爆無人機を2種類、使った。「ハロプ」と「スカイストライカー」である。

 また「オービター1K」もカミカゼドローンとして用いた。
 ロシア製の古い「AN-2」有人機(複葉)を、無人ISR機や無人自爆機に改造したものも、複数機、投入した。

 アルメニア軍も無人機を有していたが、いずれも国産の小さなもので、偵察任務以上の仕事はできなかった。※まさしく今の自衛隊の現況だろ、それ。

 アゼル軍はまず、低空を低速で飛行できる「AN2」を囮として敵SAM陣地上空に放ち、敵SAM陣地の所在を確認した。その確認位置に対して「TB2」や自爆型無人機が差し向けられ、高空から精密攻撃した。

 つまりワイルドウィーゼルの仕事をぜんぶ、無人機のセットだけでやり遂げたのである。

 もうひとつ特筆されること。今次ナゴルノカラバフ戦争では、回転翼機の出番は無かった。

 「TB2」の高度は十分に高く、旧ソ連製の「2K11」「9K33」「2K12」「9K35」といった地対空ミサイル・システムでは、探知ができても撃墜までは無理であった。

 ロシアがアルメニアに供給していた「Polye-21」というECM装置は、アゼルのドローンを妨害した。ただし、さいしょの4日間だけであった。

 「Buk」と「トール」の2つのSAMシステムは、紛争の後半になってロシアから供給され、アゼルのドローンを数機、撃墜できたようである。しかし日が経つにつれて、これらのSAMシステムも、無人機のために撃破されて沈黙した。

 「S-300」はそもそも対無人機の機能を期待されておらず、開戦早々にロイタリングミュニションの餌食になった。

 アゼル軍は特殊挺進隊を開戦の数日前からアルメニア占領区内に浸透させ、空き家のなかなどで待機させていた。「破壊活動グループ」と称していた。

 アルメニア側では、「アルメニア人ではない謎の人々が町の中に住みつき始めた」ということだけは、わかっていたという。

 「破壊活動グループ」は、攻撃型無人機の兵装誘導補助だけでなく、精密誘導ロケット弾の火力要請もした。空地連絡係でもあったのだ。
 ※そしてじつはトルコ人であったというオチか。

 要するにNATO軍がアフガン討匪作戦で磨き上げた、挺進火力誘導員の仕事を、アゼル兵はきっちりとこなした。レーザー照準/標定装置を携行していたことは言うまでもない。

 現地ナゴルノカラバフは高山帯であって、戦車などは高速で所要点まで移動ができない。よって、歩兵+無人機のコンビが最強なのである。

 留意が必要なこと。現地は植生が乏しい。そのため対空偽装が簡単にはできない。これが無人機側をとても有利にした。地上の敵軍配置を、高空から確実にみきわめることができた。

 偵察用無人機は、「精密グリッド・コーディネーション」を味方ロケット砲兵に提供することができた。アゼルの長射程砲兵は、連絡された座標から10m以内に着弾させることができた。

 両国側によって公表されているビデオは、双方ともに地上軍の偽装についてはアマチュア級であったことを教えてくれる。どちらの軍も、上空からは丸見えに等しかった。

 無思慮に開闊地に展開しようとし、同じ場所に何十分もとどまっていたり、移動が平時ペースのノロノロ運転であったり、人員・車両・装備を蝟集させすぎていた。それで偽装ゼロなのだから、対地攻撃機にとっては好餌以外のなにものでもなかった。

 AFVが新式であるか旧式であるかは、何の関係もなかった。AFVの中に乗っている人間が、空からの脅威を油断なく意識できていたかどうかが、生死を分けている。上空の脅威に対する直感が働かない乗員は、乗っている高額な高性能戦車もろともに、吹き飛ばされた。

 アゼル側は、所定の高価値目標を爆砕してしまうや、すぐに、次等の価値ある目標を即興で探し当てて、その場で無人機で攻撃できることが、ビデオからよくわかる。
 このことはまた、トルコとイスラエルから供給されている精密弾薬/自爆無人機の数がおそろしく豊富で、タマ惜しみをする必要がアゼル側にはなかったことも教えてくれる。ふつうは、数人ばかりの兵隊がこもる塹壕をレーザー誘導爆弾で狙ったりしないものである。

 『ナショナル・インタレスト』のエピスコポス記者は、トルコ軍は事実上、参戦していたと断言する。特殊部隊員や、トルコが雇い挙げたシリア人傭兵を、戦線へ派遣していたと。』

バクー・トビリシ・ジェイハンパイプライン
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%90%E3%82%AF%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%83%88%E3%83%93%E3%83%AA%E3%82%B7%E3%83%BB%E3%82%B8%E3%82%A7%E3%82%A4%E3%83%8F%E3%83%B3%E3%83%91%E3%82%A4%E3%83%97%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%B3