原発処理水、中韓も海洋放出

原発処理水、中韓も海洋放出 釜山は海産物が観光資源
(2021.5.9 23:43)
https://www.sankei.com/life/news/210509/lif2105090039-n1.html

『東京電力福島第1原発の処理水の海洋放出の方針が4月に決まり、反発を強める中国や韓国。今月5日の日韓外相会談でも、韓国の鄭義溶(チョン・ウィヨン)外相が「韓国民の健康や安全、海洋環境に潜在的な脅威を及ぼし得る」と懸念を示した。しかし、世界各国の原子力関連施設は原発事故前から処理水と同様にトリチウムを含む水を放出している。韓国・釜山(プサン)のように付近で原子力関連施設がトリチウムを放出しながらも海産物の名所として知られる地域もあり、専門家は反発について「科学的根拠がない」と指摘。説明や補償の必要性を訴えた上で、「釜山の事例は福島の可能性を示す」としており、復興のひとつのモデルにもなり得る。(荒船清太)

 福島第1原発に貯蔵されている処理水は約860兆ベクレルのトリチウムを含む。政府は貯蔵している処理水は大幅に希釈し、毎年最大22兆ベクレルを今後数十年に分けて放出していく方針だが、世界に目を向けると、1年でこの貯蔵量の10倍以上を放出している国もある。

 経済産業省が4月13日にまとめた資料によると、フランスのラ・アーグ再処理施設では2018年に1京1400兆ベクレルのトリチウムを海洋などに放出。英国のセラフィールド再処理施設は19年、423兆ベクレルを海などに流した。中国の福清原発も52兆ベクレルを液体放出している。

 注目されるのが近隣国の韓国だ。釜山港から約30キロの古里(コリ)原発は18年に海洋などに50兆ベクレルを放出し、約80キロ離れた月城(ウォルソン)原発では25兆ベクレルを海洋などに出している。釜山は韓国第2の都市で、工業都市であるとともに韓国最大の海産物市場を抱える観光地としても知られる。釜山港に水揚げされるタイやヒラメ、タコの刺し身にみそなどを付けて出される郷土料理は名物となり、観光客を集めている。

 福島第1原発の廃炉に携わる東京大大学院の岡本孝司教授(原子力工学)は「釜山にできて福島にできないことはない」と話す。

 反発を強める中国や韓国について、「いずれも自国でトリチウムを放出しており、科学的に冷静に対処すべきだ」とした上で、「処理水を放出すれば、今後原発から取り出されるデブリ(溶け落ちた核燃料)の管理も容易になる」と廃炉につながる点も強調する。

 ただ、放出にはいまだ忌避反応も強い。岡本教授は、分かりやすい言葉で現状を正しく伝えることが必要だと強調。「万が一、風評被害が生じた場合はきちんと補償する体制も整えるべきだ」としている。』

送電ロスなし「超電導」実用へ JR系、脱炭素を後押し

送電ロスなし「超電導」実用へ JR系、脱炭素を後押し
【イブニングスクープ】
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC164JB0W1A211C2000000/

『送電時の損失がほぼゼロの技術「超電導送電」が実用段階に入った。JR系の研究機関がコストを大幅に減らした世界最長級の送電線を開発し、鉄道会社が採用の検討を始めた。欧州や中国でも開発が進む。送電ロスを減らしエネルギーの利用効率を高められれば地球温暖化対策につながる。

送電ロスは主に電線の電気抵抗により電気が熱に変わることで起こる。送電線を冷やして超電導状態にすると、電気抵抗がゼロになるため損失をほぼなくせる。

課題はコストだ。かつてはセ氏マイナス269度に冷やす必要があったが、マイナス196度でも超電導の状態にできる素材の開発が進み、冷却剤を高価な液体ヘリウムから、1キログラム数百円と1割以下の液体窒素に切り替えられるようになった。超電導送電線の費用の相当部分を占める冷却コストが大きく減ったため実用化が近づいた。

JR系の鉄道総合技術研究所(東京都国分寺市)は送電線を覆う形で液体窒素を流し、効率よく送電線を冷やす技術を開発。世界最長級で実用レベルの1.5キロメートルの送電線を宮崎県に設置して実証試験を始めた。鉄道に必要な電圧1500ボルト、電流数百アンペアを流せる。送電線の製造は一部を三井金属エンジニアリングに委託した。

通常の送電に比べて冷却コストはかさむが「送電線1本の距離を1キロメートル以上にできれば既存設備を活用でき、送電ロスが減るメリットが費用を上回る」(鉄道総研)。複数の鉄道会社が採用に関心を示しているという。採用されれば、鉄道の送電線で超電導送電が実用化されるのは世界で初めてとなる。

超電導送電はこのほか風力発電など再生可能エネルギー発電分野でも利用が期待されている。電力会社や通信会社などに広がる可能性がある。

超電導送電は電圧が下がりにくいため、電圧維持のための変電所を減らせるメリットもある。変電所は都市部では3キロメートルおきに設置し、維持費は1カ所で年2000万円程度とされる。鉄道総研はより長い超電導送電線の開発にも取り組んでおり、実現すればコスト競争力がより高まる。

日本エネルギー経済研究所によると国内では約4%の送電ロスが発生している。全国の鉄道会社が電車の運行に使う電力は年間約170億キロワット時。送電ロス4%は、単純計算で一般家庭約16万世帯分に相当する7億キロワット時程度になる。

送電ロス削減は海外でも課題だ。鉄道以外も含む全体でインドでは17%に達する。中国では2021年11月、国有の送電会社の国家電網が上海市に1.2キロメートルの超電導送電線を設置した。ドイツでは経済・気候保護省主導で、ミュンヘン市の地下に12キロメートルの超電導送電線を敷設する「スーパーリンク」プロジェクトが20年秋に始まった。

日本は超電導送電に使う送電線を昭和電線ホールディングスが手がけるなど素材に強みがある。JR東海のリニア中央新幹線も超電導を使っており、鉄道総研の技術基盤が生かされている。

【関連記事】
・再生エネ普及へ送電網、2兆円超の投資想定 首相が指示
・超電導で電力供給、中央線E233系電車をフル加速
・超電導とは 電気抵抗をゼロに 』

カザフスタンが非常事態宣言 ロシアなどに部隊派遣要請

カザフスタンが非常事態宣言 ロシアなどに部隊派遣要請
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR05CUZ0V00C22A1000000/

『【モスクワ=桑本太】中央アジアのカザフスタンは5日、燃料高を受けた抗議デモの広がりに伴う非常事態宣言を全土に拡大した。インタファクス通信がカザフスタンの国営テレビの報道を引用して伝えた。トカエフ大統領は、ロシアが主導する旧ソ連諸国の集団安全保障条約機構(CSTO)の部隊派遣を要請した。

治安当局とデモ隊の衝突で、当局は200人以上を拘束した。ロシアメディアなどによると、警官ら8人が死亡、300人以上が負傷したという。

非常事態宣言の期間は19日までで、トカエフ大統領は先んじてアルマトイと西部マンギスタウ州、首都のヌルスルタンに非常事態宣言を出していた。年初に発生した抗議デモの動きが広がっており、デモ隊の一部は5日に同国最大都市のアルマトイの国際空港を占拠し、全便の運航が一時的にできなくなったという。

トカエフ氏は同日のテレビ演説で自身が安全保障会議の議長に就任し、これまで議長を務め2019年まで長期政権を敷いていたナザルバエフ前大統領を解任すると表明した。抗議デモは22年からの燃料高を契機に発生したが、デモ隊の一部はナザルバエフ氏を批判していた。デモが沈静化に向かうかどうかは不透明だ。

燃料として幅広く使われる液化石油ガス(LPG)の価格が年初から21年比で約2倍に引き上げられ、2日に西部で抗議デモが発生し、その後にアルマトイなどに広がった。

デモの沈静化と経済安定のため、カザフスタンはLPGに加えてガソリンなどにも一時的に統制価格を導入し、燃料価格を21年並みに抑制することを決めた。トカエフ氏はこのほか、生活必需品である食品の価格上昇を抑えるための規制の検討などを表明した。

CSTOの集団安全保障会議議長を務めるアルメニアのパシニャン首相はフェイスブックへの投稿で、CSTOの部隊をカザフスタンに一定期間派遣することを決めたと明らかにした。同国の「状況を安定させ正常化させるため」と説明している。

【関連記事】カザフスタン内閣総辞職 燃料上げでデモ、大統領宅占拠

多様な観点からニュースを考える

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上野泰也
みずほ証券 チーフマーケットエコノミスト
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別の視点

旧ソ連の一員でありロシアと国境を接するカザフスタンの政変については、ウクライナ情勢などを巡り今週開催される米国とロシアの協議への間接的な影響も注目点になる。

英経済紙フィナンシャルタイムズは6日、モスクワのジャーナリストらが今回の政変に関し、西側との勢力画定をロシアが目指す協議を控える中で国外の勢力がカザフスタンの暴徒を扇動したと非難しているという。

仮にロシアの東側の国境が不安定化すれば、そちらも警戒する必要があり、ロシアは米国との妥協に傾くかもしれない。一方で、国境を巡る安保体制構築の重要性を再認識したロシアが西側への強硬姿勢を強める結果、妥協は難しくなるとも考えられる。動向を注視したい。

2022年1月6日 8:20

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岩間陽子
政策研究大学院大学 政策研究科 教授
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ひとこと解説

アルマトイの混乱が最もひどいようで、すでにロシアの空挺団が入っているという報道もあります。

ただ、ロシア側はこの件に関して公式には表明していないので、今のところはなんとか静かに処理したいのでしょうが、事態がその程度で収まるかどうかです。

カザフスタン国内ではインターネットや携帯が通じないところが多くなっているようで、正確な情報が伝わってきません。現地アメリカ大使館はアラート情報を出していますがhttps://kz.usembassy.gov/demonstration-alert-u-s-mission-kazakhstan-4/ 日本大使館の情報は年初より全く更新されていません。

場合によっては邦人退避などにつながる可能性もあり、外務省と現地大使館は、正確な情報の迅速な発信を心がけて頂きたいです。

2022年1月6日 18:46

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秋田浩之
日本経済新聞社 本社コメンテーター
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別の視点

カザフスタンで起きている反政府デモを一歩引いてみると、「ソ連帝国」の解体プロセスがいまも続いていると言えるでしょう。

ソ連という連邦国家は20年前に崩壊しましたが、盟主のロシアは今も旧ソ連諸国を自分の裏庭とみなし、時には軍事的に脅してでも影響下に置こうとしています。

典型例がウクライナです。そのロシアが最も嫌うのが、西側的な民主化運動が広がること。

今回の抗議デモがどこまで過熱するのかわかりませんが、ロシアとっては気が気ではないはず。

同時に、近隣の中国もカザフの民衆デモが自国民にどのような影響を及ぼすか、心配でしょう。今夜のBSテレ東『日経ニュース プラス9』でも詳しく解説します

2022年1月6日 17:23 (2022年1月6日 17:38更新)

志田富雄のアバター
志田富雄
日本経済新聞社 編集委員
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別の視点

カザフスタンは有力な産油・産ガス国です。

現在、原油相場が高止まりしている理由のひとつに「一部の産油国の生産能力が低下し、OPECプラスが計画通りに生産を増やせない」ことがあり、政情不安がカザフフスタンの原油の生産・輸出に影響してくるようだと、市場が強材料ととらえる可能性があります。

2022年1月6日 11:32 (2022年1月6日 11:39更新) 』

インドネシア、石炭輸出を一時禁止 国内発電向けを優先

インドネシア、石炭輸出を一時禁止 国内発電向けを優先
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM0113H0R00C22A1000000/

『【ジャカルタ=地曳航也】インドネシアのエネルギー・鉱物資源省は1日、石炭の輸出を同日から31日まで1カ月間、禁止すると発表した。国内の石炭火力発電所で石炭の需給が逼迫しており、発電所への供給を優先させる。インドネシアは一般炭の世界最大の輸出国で、日本や中国へも輸出している。今後の輸出先国の石炭調達や市場価格への影響が懸念される。

同省は声明で「輸出禁止が強制されない場合、1万850メガワットの電力を供給する20の発電所が危機に陥り、国家経済の安定を乱す」と説明した。インドネシアでは電力を安定的に確保するため、石炭事業者に年間生産量の25%を電力企業などに回す国内供給義務を課しているが、守られていないとしている。

インドネシアは発電の6割を石炭火力に依存している。ただ、世界的な電力用の一般炭の需要拡大を受けて、輸出が伸び、国内への供給が追いつかなくなっている。インドネシア政府は2021年8月にも、石炭事業者34社が国内供給義務を順守していないとして、輸出禁止の制裁措置を科していた。

インドネシアは20年に4億トン超の石炭を輸出した。輸出先は中国が3割を占め最大で、インドが24%で続く。日本、韓国、台湾などにも輸出する。ロイター通信はアナリストの見方として「今後、数週間で世界の石炭価格が上昇し、インドネシアの顧客がロシア、オーストラリア、モンゴルに流れる可能性がある」と伝えた。』

原子力・天然ガスは「持続可能」 欧州委が方針

原子力・天然ガスは「持続可能」 欧州委が方針
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR0204G0S2A100C2000000/

『【ブリュッセル=竹内康雄】欧州連合(EU)の欧州委員会は1日、原子力と天然ガスを脱炭素に貢献するエネルギーと位置づける方針を発表した。一定の条件下なら両エネルギーを「持続可能」と分類し、マネーを呼び込みやすくする。世界の原子力政策にも影響を与える可能性がある。

「EUタクソノミー」は、どんな事業が持続可能(サステナブル)かを分類する制度だ。EUが掲げる「2050年までに域内の温暖化ガスの排出を実質ゼロにする」ことを柱とする環境関連の目標に、貢献する経済活動かどうかを示す基準と言える。

この基準に沿った事業には投資家は安心して投資できる一方、EUには民間マネーを呼び込み、排出削減目標の達成を後押しする狙いがある。欧州委は排出削減目標の達成には30年までの毎年、官民合わせて少なくとも3500億ユーロ(約46兆円)の追加投資が必要とはじく。

持続可能と分類されない事業が禁止されるわけではないが、資金集めなどで不利になる可能性が高い。EUは企業や金融機関にタクソノミーの基準を満たす事業や商品の売上高に占める割合などの情報開示を求める構えで、同制度を前提としたルール作りがすでに始まっている。環境配慮をうたっているにもかかわらず、実態は伴っていない「グリーンウオッシュ」を排除する狙いもある。

自動車の二酸化炭素(CO2)排出など気候変動関連の基準は公表済みで、一部は適用が始まった。だが原子力と天然ガスは関係者の対立から合意に至っていなかった。原子力発電は稼働中にCO2を排出しないが、有害な放射性廃棄物が出る。天然ガスは石炭に比べればクリーンだが、CO2を出すのには変わりない。

欧州委は1日の発表文で未来へのエネルギー移行を促進する手段として「天然ガスと原子力の役割がある」として、両エネルギーを持続可能と位置づける考えをにじませた。

日本経済新聞が入手した原案によると、原子力は生物多様性や水資源など環境に重大な害を及ぼさないのを条件に、2045年までに建設許可が出された発電所を持続可能と分類する方針を示した。

天然ガスは①発電1キロワット時あたりのCO2排出量が270グラム未満②CO2排出の多い石炭の代替とする③30年までに発電所の建設許可を得る――などを条件に持続可能と認める。

原子力依存度の高いフランスやフィンランドに加え、石炭への依存度が高い東欧諸国が原子力やガスをタクソノミーに含めるよう訴えていた。ポーランドは電源構成に占める石炭の割合が約7割を占め、排出減には原子力とガスが欠かせないと主張していた。

欧州委は昨年12月31日から加盟国や専門家との協議を始め、1月中にも欧州委案を公表する考えだ。その後、加盟各国との議論や欧州議会での審議を経て成立する流れだが、曲折がありそうだ。

例えば脱原発を決めたドイツやオーストリアなどが原子力を持続可能と分類することに反対しているほか、欧州議会でも緑の党を中心に根強い反発がある。欧州では環境系の非政府組織(NGO)の発言力も大きい。

EUタクソノミーは域内で事業をする企業などが対象になる。だが影響は日本を含む世界に及ぶ可能性がある。EUの基準を満たさない事業や商品はEUでは価値が下がるのは確実で、EUに売り込みにくくなるばかりか、EUの投資家からの資金を集めにくくなる。

【関連記事】

・EUタクソノミーとは 環境配慮の経済活動を認定
・欧州に原発回帰の動き 脱炭素・エネ安保で、日本は停滞 』

石油利権は誰の手に…混迷を極める「中東」国家間の争い①

石油利権は誰の手に…混迷を極める「中東」国家間の争い①
https://gentosha-go.com/articles/-/17810

『かつては「赤線協定」で石油利権が守られていたが…

「赤線協定」という、石油業界では有名な協定があった。

OPEC創設に先立つこと約30年、「トルコ石油」(のちの「イラク石油」)株主が長年の協議を経て1928年7月31日に契約調印に至った際、出資者間で合意した一種のカルテル機能を持った協定だ。赤線で囲まれた旧オスマン帝国の領土内においては、全社が共同で行うことを除いて出資各社が単独で石油利権を獲得することを禁じたものである。

「トルコ石油」創設の中心人物であり、「ミスター5%」と呼ばれたアルメニアの石油業者カルースト・グルベンキアンが中東の地図を広げ、クウェートとエジプトを除く旧オスマン帝国の領土はこの範囲だ、と赤線で囲ったことから「赤線協定」の名前がついたといわれている(図表1)。「自分は、オスマン帝国の時代に首都コンスタンチノープルで生まれた。だから、どこが旧オスマン帝国の版図なのか知っている」というのだった。

[図表1]「赤線協定」の範囲
出所:Wikipedia(一部加工処理)

すでに石油が発見されていたペルシャ(カジャール朝イラン)の西に広がるメソポタミア地域(現在のイラク)の石油利権を獲得し、独占的に開発・生産することを目的に設立された「トルコ石油」の親会社5社とは、「アングロ・ペルシャ(現在のBP)」や「ロイヤル・ダッチ・シェル」、「フランス石油(現在のトタール)」、「スタンダード(現在のエクソンモービル)がリードするアメリカ石油連合」の4社と、「ミスター5%」のグルベンキアンの会社だった。グルベンキアンを除けば、すべて現代のスーパーメジャー(国際石油資本)に変貌した石油会社だ。

それでは最盛期と第一次世界大戦が始まった1914年当時のオスマン帝国の領土はどうだったのか、以下の図表2および図表3を見てみよう。

[図表2]オスマン帝国の最盛期の領土
出所:『 サイクス=ピコ協定 百年の呪縛』、池内恵、新潮選書、2016年5月

[図表3]オスマン帝国の第一次世界大戦が始まった当時の領土
出所:『サイクス=ピコ協定 百年の呪縛』、池内恵、新潮選書、2016年5月

これらの図で明らかなように、現在のサウジアラビア(以下、サウジ)に相当する地域では、ペルシャ湾と紅海の沿岸部以外にオスマン帝国の支配は及んでいなかった。つまり最盛期でも、オスマン帝国の支配が及んでいない内陸部があったのだ。

広大な砂漠が広がるサウジの内陸部では、現在のサウジ建国の父であるアブドルアジーズ・ビン・アブドッラハマーン・アルファイサル・アールサウド(以下、イブン・サウド)が他の部族を次々と征服し、政略結婚を繰り返し、着々とサウド王国の版図を拡大しているところだった。このころ、サウジに石油があるという情報はまったくなかった。

ドイツと同盟を結んで第一次世界大戦を戦ったオスマン帝国は、折から戦略商品として重要視され始めた石油を大量に有すると信じられていたメソポタミアを版図に抱えていた。

連合国側のイギリス・フランス・ロシアの3カ国は1916年に、第一次世界大戦に勝利したあと、オスマン帝国の領土をどのように分け合うかという協議を秘密裏に行い、有名な「サイクス=ピコ協定」を締結していた。秘密協定だったが、1917年の革命によりロシアが戦線から離脱し、ボリシェヴィキ政権が同協定の存在を明らかにしたため世に知られることとなった。

欧米列強が「国境線」を勝手に画定…混迷の一途を辿る

終戦後の1920年、戦後処理のため連合国はオスマン帝国と「セーブル条約」を結んだ。だが、帝国を実質的に解体する内容だったため、トルコ民族のナショナリズムを刺激、ケマル・アタテュルクが先頭に立って独立戦争を起こし、トルコ領土を列強の分割から守ったのだった。「セーブル条約」は破棄され、独立したトルコ共和国は1923年、改めて「ローザンヌ条約」を締結した。

「サイクス=ピコ協定」がそのまま実行に移されたわけではないが、イラクからパレスチナに広がる「肥沃な三日月地帯」の「国境線」は、このような過程を経て、欧州列強が自分たちの利害調整の結果として勝手に画定したのだ。

「百年の呪縛」という言葉は、東京大学先端科学技術センターの池内恵准教授の名著『サイクス=ピコ協定百年の呪縛』(新潮選書、2016年5月)により広まった。100年前の第一次世界大戦の戦後処理が、いくつもの矛盾を放置したままだったことが今日の混迷の根底にあるのは事実だ。

だから、中東情勢が「サイクス=ピコ協定」を締結した100年前の事情に似ている、いや中東は今、「百年の呪縛」に囚われているのだ、との認識もけっして間違いではない。

この話は次回に続く。』

赤線協定

赤線協定
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%B5%A4%E7%B7%9A%E5%8D%94%E5%AE%9A

※ 画像、なし。

『赤線協定(あかせんきょうてい、Red Line Agreement)は、1928年7月31日に、当時のトルコ石油会社(the Turkish Petroleum Company, TPC:後のイラク石油会社 the Iraq Petroleum Company, IPC)の出資者間に結ばれた協定。この協定の目的は、TPC の企業体制を整えることにあり、すべての出資者に対して、旧オスマン帝国領において独自に石油権益を求めることを禁じた「自粛条項」を含んでいた。この協定によって、石油の独占ないしカルテル体制が築かれ、広い領域にわたって極めて大きな影響力が及ぶことになった。このカルテル体制は、1960年に結成された石油輸出国機構 (OPEC) によって成立した新たなカルテル体制に、30年以上も先んじていた。』

『経緯

伝えられるところによれば、1928年のある会合で、アルメニア人の実業家で慈善活動家でもあったカルースト・グルベンキアンが中東の地図に赤線を引き、「自粛条項」が効力をもつべき範囲を示したのだという[1]。

その上でグルベンキアンは、この範囲が自分の知る1914年時点でのオスマン帝国の領域だと述べた。

グルベンキアンはさらに言葉を継いで、自分は帝国に生まれ育ったのだから、当然それを知っているのだと言った。他の出資者たちは、その線を注意深く見た上で、これに異を唱えなかった。これは事前にそのような領域の設定が予想されていたからであった。(ただし、赤線を引いたのはグルベンキアンではなく、フランスの代表者だったとする別説もある。)

グルベンキアン以外の出資者は、今日のスーパーメジャー (supermajors) の前身企業であった。「赤線」の内側には、オスマン帝国の中東における領土が、アラビア半島やトルコも含めて入れられていたが、クウェートは除外されていた。クウェートが除外されたのは、この地域をイギリスのために残しておくことを意味していた。

後年、スタンダード・オイル・オブ・ニュージャージーのウォルター・C・ティーグル (Walter C. Teagle) は、この協定は「ひどく悪い一手」だったと述べた[2]。

いずれにせよ、この協定は、TPCを継承した後継企業イラク石油 (Iraq Petroleum Company, IPC) の事業領域を明確化した。IPCの元従業員で、後に著述家となったスティーヴン・ヘムズリー・ロングリッグ (Stephen Hemsley Longrigg) は、「間違いだらけのカルテルの悲しむべき事例であるとか、国際協力と公正な分配についての啓発的事例である、などと様々に評価されるこの赤線協定は、20年間にわたってこの方面の体制を維持し、中東の大部分における石油開発の様態や速度をほとんど決定づけた」と記している[3]。

アラビアン・アメリカン・オイル(アラムコ)やバーレーン石油会社 (Bahrain Petroleum Company, BAPCO) がそれぞれ支配的地位を占めたサウジアラビアとバーレーンを別にすれば、IPCはこの時期の赤線内における石油開発事業を独占していた。

アメリカ合衆国の石油会社であったスタンダード・オイル・オブ・ニュージャージとソコニー・バキューム社はIPCに出資しており、赤線協定に縛られていた。

両社に対して、サウジアラビアの石油開発に絡んで、アラムコから提携話が持ちかけられた際、他のIPC出資企業は協定を盾にして提携を認めなかった。

やがて、米国資本の各社は、第二次世界大戦の勃発によって赤線協定は無効になったと主張したが、グルベンキアンとの法的交渉はその後も延々と続けられた[4]。

結局、この一件は法廷外で和解が成立し、米国資本各社はアラムコにも資本参加した [5]。以降、赤線協定は死文書化したが、IPCは事業を継続した。 』

脱炭素時代、争奪戦は続く 「石油の世紀」と重なる現実

脱炭素時代、争奪戦は続く 「石油の世紀」と重なる現実
編集委員 松尾博文
https://www.nikkei.com/article/DGXZQODK22BYX0S1A221C2000000/

『2021年が終わり、新しい1年が始まる。出口が見えない新型コロナウイルス禍と、脱炭素を合言葉に速度を上げるエネルギー転換は未来をどう変えるだろう。

100年前を振り返ってみると手掛かりがあるかもしれない。第1次世界大戦を境に一変した世界の構図はエネルギー転換と密接につながっていたからだ。

「超大国」米ソの出発点

今年がソ連崩壊から30年なら、22年は誕生して100年である。99年前の12月30日、一足先に革命政権を樹立したロシアや、ウクライナ、ベラルーシ、ザカフカス(アゼルバイジャン、アルメニア、ジョージアをあわせた領域)の4共和国でソ連を形成した。

今のアゼルバイジャンの首都バクー周辺は当時、石油産業の黎明(れいめい)期を支えた産出地であると同時に、カスピ海沿岸の革命運動の中心だった。カスピ海と黒海に挟まれたカフカスの革命運動から現れたのがスターリンだ。

同じ頃、カフカスの南では13世紀末の建国以来、中東・地中海に覇を唱えたオスマン帝国が最後の時を迎えていた。第1次大戦に敗れた帝国は、英仏の手で人為的な国境線が引かれようとしていた。

分割の行方を重大な関心を持って見ていたのが米国だ。石炭から石油へのエネルギー転換に伴い、大戦をはさんで石油消費は急拡大し、自動車の登録台数は20年までの6年間で5倍に膨らんだ。

「米国は石油産業も政府も、早く行動に移さなければ、英国に世界の石油資源の残りを先取りされてしまうと信じ切っていた」。米研究者ダニエル・ヤーギン氏は著書「石油の世紀」で指摘する。

焦る米国と英仏の間を取り持った男がいる。アルメニア人実業家、カルースト・グルベンキアンは22年、のちの英BPや仏トタルエナジーズなどに、米エクソンモービルを交えて交渉を始めた。

曲折を経て28年に成立した合意は、今のイラクやサウジアラビアなど旧オスマン帝国領内の油田について共同開発を除き、抜け駆けでの利権獲得を禁じた。カルテルの色彩を帯びる排他的な取り決めは「赤線協定」と呼ばれた。グルベンキアンが中東の地図を広げ合意の対象地域を赤線で囲って示した逸話に由来する。

中東の石油に足場を確保した米国と、カスピ海を押さえたソ連。米ソ2陣営の出発点に石油があり、20世紀を通して国際秩序の底流には石油や天然ガスをめぐる国家と企業の冷徹な競争があった。そのはざまで石油確保の道を閉ざされた日本は戦争に突き進んだ。

走り出したグローバル企業

今年11月、第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)の場で、世界はカーボンゼロへの決意を新たにした。脱炭素の潮流は国家や企業を巻き込んで加速するだろう。みずほ銀行産業調査部の相浜豊参事役は「日本企業も脱炭素と企業価値向上を両立させる、説得力ある移行のストーリーを示す必要がある」と指摘する。

ただ、脱炭素がエネルギーをめぐる対立から世界を解放すると考えるのは早計だ。むしろ新たな分断と不安定を生むかもしれない。脱炭素の理想と現実の間に潜む危うさに気付き始めたからだ。

投資家が化石燃料に向ける視線は厳しさを増し、再生可能エネルギーを求める消費者や企業は増え続けるだろう。一方、国際エネルギー機関(IEA)によれば、50年にカーボンゼロを実現するには、世界の電源構成に占める太陽光と風力の比率を計7割に高めなければならない。世界最大級の太陽光発電所を毎日ひとつずつ増やし、向こう10年、毎年4兆ドル(450兆円)の投資が要る。

再生エネが順調に増えればいい。満たせなければ何が起きるか。

グローバル企業が自力で再生エネの確保に動いている。それも既存の発電所から買うのでなく、新設が条件だ。米アマゾン・ドット・コムは25年までに世界で使う電力を再生エネに切り替える。独自動車大手フォルクスワーゲン(VW)は欧州に複数の太陽光・風力発電所をつくる。

EV用電池に欠かせないリチウムの鉱床確保に動いた米テスラのマスクCEO=ロイター

みずほ銀の相浜氏は「ステークホルダーに脱炭素への姿勢を訴えるとともに、今後必要になる再生エネの安定的な確保を進めていくだろう」と見る。

再生エネを確保できるかどうかは脱炭素時代の競争力、ひいては企業の存続を左右する。囲い込みに動くさまは貪欲に石油を求めた100年前と変わらない。

日本も例外ではいられない。脱炭素の進展に伴い、50年の電力需要は1.3倍に増える。日本は再生エネ導入に出遅れたうえ山間地が多く、電力コストの低減は一段と厳しくなるだろう。

先に押さえた者が優位に

再生エネに限らない。太陽光パネルや風力発電機、電気自動車(EV)と車載電池、これらの生産に欠かせないレアメタル(希少金属)を誰が支配するのか。中国企業は太陽光パネルで7割のシェアを握る。自動車各社はEV用の電池の内製に巨費を投じる。米テスラは電池に欠かせないリチウムの鉱床すら押さえにかかる。

脱炭素時代のグローバル競争はサプライチェーン(供給網)を先に押さえた者が優位に立つ。国や市場があてにならないなら、トヨタ自動車や日本製鉄が自前で再エネ発電所を整える。こんな未来図を笑い飛ばすことはできまい。

足元では化石燃料をめぐる需給のミスマッチが、石油や天然ガス、石炭の同時多発的な価格上昇を引き起こしている。エネルギーの円滑な主役交代を乗り切る広角の戦略が欠かせない。』

重油流出で船長ら実刑 モーリシャスの日本船事故

重油流出で船長ら実刑 モーリシャスの日本船事故
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM27C3E0X21C21A2000000/

『【ナイロビ=共同】インド洋の島国モーリシャス沖で昨年夏に日本の貨物船「WAKASHIO」が座礁し燃料の重油が大量流出した事故を巡り、モーリシャスの裁判所は27日、安全に航行する義務を怠った罪で有罪判決を受けていたインド人船長とスリランカ人1等航海士に対し、それぞれ禁錮1年8月の量刑を言い渡した。

2人は昨年8月に逮捕され、公判で罪を認めていた。今月20日に有罪判決を受けた。

裁判所は、船が座礁した昨年7月25日に船内で乗組員の誕生日を祝って酒を飲むパーティーが開かれていたと認定。安全を確認する見張り役がいない中、携帯電話をインターネットに接続するためモーリシャスの陸側へ近づくよう船長が指示を出したことで、事故につながったと結論付けた。

船長は公判で、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)を懸念する乗組員らが「家族と連絡を取りたがっていた」ことから、通信を確保したかったと証言した。

WAKASHIOは長鋪汽船(岡山県)が保有・管理し、商船三井が手配。座礁後の昨年8月上旬からは重油が流出し、海岸のマングローブを汚染したほか、周辺海域が禁漁となり、漁業が打撃を受けた。

長鋪汽船側の関係者によると、地元漁師らに対する個別の賠償の動きは進んでいるが、環境汚染への賠償を巡るモーリシャス政府との話し合いは、進展していない。』

中国、インドネシアに資源開発の中止要求 南シナ海

中国、インドネシアに資源開発の中止要求 南シナ海
領有権主張、尖閣式で揺さぶり
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM151KG0V11C21A2000000/

『【ジャカルタ=地曳航也、北京=羽田野主】インドネシアが南シナ海の排他的経済水域(EEZ)で進める資源開発について、同海域の主権を主張する中国が中止を求めていることがわかった。インドネシアは中国との間に南シナ海の領有権の問題は存在しないとの立場だが、中国が揺さぶりをかけている。

インドネシアは南シナ海の南にある自国領ナトゥナ諸島の周辺のEEZにある「トゥナ・ブロック」と呼ばれる海域で、7月から海底の石油と天然ガスの状況を調査する掘削作業を進めている。

インドネシア政府関係者は日本経済新聞の取材に、中国政府から「インドネシアの掘削作業が中国の主権を侵す」として複数回、抗議と掘削中止要求を受けたと明らかにした。作業現場周辺で中国海警局とみられる船の目撃情報も確認したという。

ただ、インドネシア政府は中国による抗議と中止要求を公表していない。中国との間に南シナ海に関する領有権の争いはないとの立場で、抗議を公にして反応すれば、領有権問題の存在を国際社会に認めることにつながる可能性があるためだ。

同国海上保安機構のアアン長官は22日、当面の掘削作業を11月下旬に完了したと明らかにした。

中国は南シナ海のほぼすべての沿岸国・地域と領有権を争っている。これまでにフィリピン、ベトナム、マレーシア、ブルネイ、台湾が領有権を主張している。

ナトゥナ諸島周辺のインドネシアのEEZをめぐっては、南シナ海で主権が及ぶ範囲として中国が独自に主張する「九段線」と一部が重複する。2019年末ごろから周辺海域で中国船の動きが活発化し、インドネシアとの対立が目立ち始めた。

20年5月下旬、インドネシアは九段線や中国が域内で主張する歴史的権利を否定する書簡を国連に送った。中国も南シナ海での主権を訴えつつ、交渉による解決を求める書簡を国連に送り返した。インドネシアは交渉を拒否した。

中国が一方的に領有権の問題を訴えて力を背景に実効支配をうかがう構図は日本の沖縄県尖閣諸島をめぐる日中の対立と似る。海上保安庁によると21年1月から12月26日までで、尖閣諸島周辺の領海に中国の海警局の船が計40日間、侵入した。

日本政府は尖閣諸島は固有の領土で領有権の問題は存在しないとの立場だが、中国側が領海侵入するたびに抗議をせざるを得ない。中国には日本に反応させることで、日中に領有権の問題があると国際社会に印象づけようとする狙いがある。

「習氏は自ら戦略と戦術の配置をして、さらには自ら参与した」。中国国営の新華社は11月8日、中国海警局の尖閣諸島周辺の領海侵入を巡る指示や、南シナ海の仲裁裁判所の判決などへの対処方針について習近平(シー・ジンピン)国家主席が深く関与していると明かしている。

インドネシアは中国がナトゥナ諸島周辺の実効支配の機会を探ろうとしているとみて、周辺の防衛・警備体制の強化を急いでいる。国軍は同諸島にある基地の滑走路を拡張し、戦闘機の配備を増やすほか、潜水艦の基地も建設する。地元漁民による中国船の早期通報システムも整備している。

米国との安全保障協力も進めており、周辺の海域では共同で沿岸警備の訓練施設を建設している。8月には離島防衛を念頭に、国内の3カ所で両国の陸軍が過去最大規模の軍事演習を実施した。

ナトゥナ諸島をめぐる対立も影響し、インドネシアの一部国民の対中感情は悪化している。ジャカルタ特別州警察によると、12月8日、首都ジャカルタにある在インドネシア中国大使館前で、市民20~30人が抗議集会を開いた。

ただ、インドネシアにとって中国は最大の貿易相手国だ。経済面の依存も深まっており、政府は偶発的な衝突は避けたいのが本音だ。新華社によると、11月30日に中国とインドネシアの国防相はオンラインで協議し、プラボウォ国防相は中国軍と信頼醸成に向け人的交流を拡大したい考えを示したという。』

欧州に原発回帰の動き 脱炭素・エネ安保で

欧州に原発回帰の動き 脱炭素・エネ安保で、日本は停滞
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR180F40Y1A211C2000000/

『欧州で再び原子力発電所を活用する動きが活発になっている。フランスや英国が主導する。電力の安定供給を保ちつつ気候変動対策を進める。欧州連合(EU)域外からの天然資源に依存しない、エネルギー安全保障の観点からも重視している。東日本大震災から10年を迎えた日本では原発に関する真正面の議論を避け、原発の位置づけは定まらないままだ。

EUのフォンデアライエン委員長は10月に「我々には安定的なエネルギー源である原子力が必要だ」と述べた。EUは経済活動が環境に配慮しているか判断する基準「EUタクソノミー」で原発を「グリーン電源」に位置づけるか、加盟国間で激しい議論が続く。

マクロン仏大統領は11月、国内で原発の建設を再開すると表明し、英国も大型炉の建設を進める。両国は次世代の小型炉の開発にも力を入れる。オランダは12月半ば、総額50億ユーロ(約6500億円)を投じる、原発2基の新設計画をまとめた。

原発回帰の最大の理由は気候変動対策だ。EUは2030年の排出削減目標を1990年比40%減から55%減に積み増した。原発は稼働中の二酸化炭素(CO2)の排出がほとんどない。風力や太陽光と異なり、天候に左右されない。EUは19年時点で総発電量の26%を原発が占める。

11年の日本の原発事故を受け、EUは原発の安全規制を強化してきた。17年には原発を安全に運用するには50年までに最大7700億ユーロの投資が必要との文書を作成。認可基準の擦り合わせや、原子炉の設計標準化などの対応を求めている。

ドイツは他の加盟国と一線を画し、メルケル前政権が22年末までの「脱原発」を掲げる。新政権もこの方針を堅持するものの、ロシアへの天然ガス依存やガス価格高騰で脱原発方針を延期するよう求める声もある。

日本は原発活用に向けた議論が停滞している。エネルギー基本計画では、30年度に電源に占める原発比率は20~22%を目標とする。ただ、達成には再稼働済みの10基に加えて再稼働をめざす17基を動かす必要がある。日本は長期の戦略を欠く。

9月の自民党総裁選では次世代原発の小型炉などの新増設を進めるべきだとの意見も出たが、政策の変更も含めて活用の是非の議論すら封じる流れは変わっていない。

日本では事故を受けて国民の反発も根強く、政府はより丁寧な説明が求められる。事故処理や放射性廃棄物の最終処分場も決まっていない。

日本は再生可能エネルギーの導入でも周回遅れだ。政治が責任を持って議論を主導せずに先送りを続ければ、脱炭素の取り組みは遅れるばかりだ。(ブリュッセル=竹内康雄、気候変動エディター 塙和也)

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・欧州の天然ガス調達、危ういロシア依存 最高値更新

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竹内純子
国際環境経済研究所 理事・主席研究員
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ひとこと解説

メディアが報じてきた「世界は脱原発」はあまりに単純化した論調でした。

西洋諸国において原子力の新設が停滞したのは、自由化した場合、同じ発電事業なら、より楽というかリスクの少ない再エネあるいは(気候変動問題がこんなに盛り上がる前であれば)石炭の開発の方が資金がつきやすかったから。

震災前国産化率99%と言われていた日本の原子力技術はこの10年で弱体化してしまいましたが、中国は2010年以降39基が送電開始、ロシア11、韓国6、インド4(原産協会)。

再エネポテンシャルに乏しいわが国では少なくとも、脱炭素と脱原発の二兎は追えません。安全性効率性を高めてうまく使う方法を考える必要があります。

2021年12月28日 10:00

上野泰也のアバター
上野泰也
みずほ証券 チーフマーケットエコノミスト
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別の視点

フランスや英国で原子力発電を推進する動きが出やすい背景には、これらの国は地震が少ないという事情もある。

日本のお隣の韓国も半島部分は地震が少ない国であり、原発積極論が出やすい。

これに対し、日本の場合、地震が多い国である上に、東日本大震災という惨禍を経験しており、国民感情として原発には一定の抵抗感があるとも言えるだろう。

気候変動対応として原発をどこまで活用するかを議論する際は、他国で積極活用の動きがあるという点にとどまらず、多面的な思考を経て国民の合意形成を図る必要がある。

2021年12月28日 7:38

福井健策のアバター
福井健策
骨董通り法律事務所 代表パートナー/弁護士
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分析・考察

上野さんのご意見に尽きるでしょう。日本では、「欧米ではこうなっている」というだけで、あたかも「そうすべき」理由になるような倒錯がよく起きます。

が、他国の事情は参考情報として活用すべきであって、それ自体は本来何らの行動決定の理由にもなりませんね。

なお、欧州に学ぶのであれば、2030年までに32.5%ものエネルギー消費の削減目標を打ち出し、「エネルギー消費の効率化(energy efficiency)こそ、最大のエネルギー源であり競争力強化策」と明言したEUの「エネルギー効率化指令」など、もっと注目されても良いと思います。

2021年12月28日 7:56 (2021年12月28日 8:54更新)

鈴木一人のアバター
鈴木一人
東京大学 公共政策大学院 教授
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分析・考察

欧州は一方で原発事故のリスクに対する根強い反原発の動きがあるのに対し、気候変動やエネルギー安全保障の観点から積極的に原発を推進する勢力もあり、完全に二分している。

しかし、近年、気候変動への関心が高まったことと、ロシアへの天然ガスの依存への懸念が高まったことで、原発推進勢力が優勢になりつつある。

これが最終的に積極的な原発活用という流れになるかどうかはこれから次第だが、少なくとも、原発を選択肢として議論が進んでいることは間違いない。

2021年12月28日 2:56 』

習氏、食料安保確保を強調 大豆や油を増産へ

習氏、食料安保確保を強調 大豆や油を増産へ
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB270B50X21C21A2000000/

『【北京=共同】26日の新華社電によると、中国の習近平国家主席(共産党総書記)はこのほど開いた共産党政治局常務委員会の会議で、農業政策を巡り「いかなる時も食べ物は自分たちの手中になければならない」と食料確保の重要性を強調した。中国は米中対立の長期化を視野に食料安全保障を強化している。

これを受けて25、26日に北京で開かれた農業政策に関する党と政府の重要会議では、輸入依存度が高い大豆や植物油などの大幅増産を指示。2022年の主食系作物の生産量を6億5千万トン以上とすることを確認した。』

ロシア、LNGに賭ける 北極海航路で8割アジアへ

ロシア、LNGに賭ける 北極海航路で8割アジアへ 
ソ連崩壊30年 産業盛衰(上)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR15E850V11C21A2000000/

『【モスクワ=石川陽平】1991年12月のソ連崩壊から30年、ロシアの経済構造は資源依存型をまだ脱せず、世界経済をけん引する民間のハイテク分野でも後れを取る。地球温暖化への対策が叫ばれるなか、ロシアは資源大国の地位にこだわり、液化天然ガス(LNG)の輸出拡大に活路を求める。

極寒のガス田開発

11月末、北極圏にあるロシア北西部ムルマンスク郊外の巨大な工場群を訪れた。あたり一面、雪と氷に覆われ、午後1時の外気気温はセ氏マイナス約20度。高台から見下ろすと、バレンツ海の入り江に面したドックに、縦152メートル、横330メートル、高さ100メートルもの巨大な建造物が白く浮かぶように見えた。

この建造物は、プーチン政権に近い天然ガス会社ノバテクが進める資源開発プロジェクト「アークティックLNG2」の生産施設だ。

ドックからプロジェクトの現場までは直線距離で約1500キロメートル。作業がしやすいドックでLNG生産施設を前もって建造したうえで、ガス田がある現場の半島沿岸までえい航する。こうした手法は世界初の試みという。土台も含む総重量は64万トン。自らの重さで浅い海底に固定される「重力式」だ。

総投資額2.4兆円

このプロジェクトは3系列の生産施設からなり、合計で年産約2000万トンの国内最大級のLNG基地になる。総投資額は213億ドル(約2兆4千億円)で、仏トタルが10%、中国企業が20%、三井物産と石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)も10%を投資する。第1系列の稼働は23年、完工は25年末を予定している。

ノバテクが照準を合わせる市場は、需要が高まるアジアだ。同社の海外販売の責任者、ユーリー・エロシェン氏は日本経済新聞社の質問に答え、「8割をアジア太平洋市場に供給する計画だ」と明らかにした。日本や韓国に加えて、インドや中国の市場拡大が見込めると指摘した。
アークティックLNG2の天然ガス採掘現場(ウトレンネエ・ガス田)

旧ソ連とその継承国ロシアは石油や天然ガスなどが豊富な資源大国で、資源価格の変動が国運を左右してきた。1980年代後半には原油価格が1バレル10ドル台に低下し、91年のソ連崩壊の一因となった。2000年代の油価高騰はプーチン政権の政治基盤を強化し、大国復活に道を開いた。

「30~35年間は競争力」

そして今度は温暖化がロシアを揺さぶる。主な資源輸出先の米欧は「脱炭素社会」にかじを切り、政治的に対立するロシアからの調達削減に動く可能性がある。資源エネルギー部門が連邦予算の歳入の4割前後を占める資源依存型のロシア経済はいずれ大きな試練に直面する恐れがある。

だが、したたかなプーチン政権は温暖化も好機の一つととらえた。石炭などに比べて二酸化炭素(CO2)排出量が少ない天然ガスの需要が高まり、「ロシアの天然ガスは今後30~35年間は競争力がある」(エネルギー省)と予想する。ロシアが特に期待するのは、同じく温暖化で恩恵を受けるようになった北極圏航路によるLNG輸出だ。
プーチン大統領は温暖化を好機ととらえた=AP

日本海に面した韓国南部のコジェにある造船所。ノバテクの発注を受け、商船三井の支援で大宇造船海洋が大型のLNG積み替え施設の建造を急いでいる。LNG積み替え基地はユーラシア大陸の東西を結ぶ北極海航路の東方にあるカムチャツカ半島と西方に位置するムルマンスクの2カ所に設置する計画だ。

温暖化で海氷減る

近年の温暖化で氷の面積が後退し、北極海航路の利用可能な期間が延び、通年輸送も可能になる見通しだ。商船三井はアークティックLNG2などから砕氷LNG船で積み替え基地にLNGを運び、在来型のLNG船に載せ替え、輸送コストや温暖化ガス排出を削減する。同社はJOGMECと組み、積み替え事業への出資交渉も急いでいる。

ノバテクによると、世界の天然ガス市場では21年、LNGでの供給がパイプライン経由を上回りつつある。市場の急速な変化を受け、ロシア政府は3月、LNG長期発展プログラムを承認し、年3000万トンに満たない現在の生産能力を35年までに最大で1億4000万トンに引き上げる目標を明記した。世界シェアも18年時点の約6%から20%以上に引き上げるという。資源国家ロシアの今後数十年はLNGが握る。』

米エクソンの大型製油所で火災

米エクソンの大型製油所で火災
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN2402M0U1A221C2000000/

『【ヒューストン=花房良祐】23日未明、米南部テキサス州ヒューストン郊外にある大型の製油所で火災が発生し、4人が負傷した。数時間後に鎮火されたが、製油所を所有する石油大手エクソンモービルは記者会見でガソリン生産設備が被害を受けたことを明らかにした。復旧時期は不明。

現場はヒューストンから東へ約40キロメートル。ロイター通信によると製油所は全米で4番目に大きい日量約56万バレルの処理能力があるほか、化学プラントも隣接する。火災は修理中だった水素化脱硫装置から発生したという。』

欧州天然ガス最高値、2割超急騰 逼迫不安が長期化

欧州天然ガス最高値、2割超急騰 逼迫不安が長期化
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR2200X0S1A221C2000000/

『【ロンドン=篠崎健太】21日の欧州エネルギー市場で天然ガスの値上がりが加速した。翌月物の取引価格は前日比で一時25%上げ、過去最高値を大幅に更新した。ロシアからの供給不足の不安が解けないまま気温が下がり、冬季の需給が逼迫するとの懸念がさらに広がっている。市場は需給の引き締まりが春以降も続く可能性を意識しており、物価高に拍車をかけて景気への逆風が強まりかねない。

金融情報会社リフィニティブによると、欧州の指標価格であるオランダTTFは2022年1月渡しの取引で一時、前日より37.55ユーロ(25%)高い1メガワット時あたり184.95ユーロまで値上がりした。10月6日につけた翌月物としての最高値(155ユーロ)を大きく塗り替えた。20年末と比べて10倍近い水準だ。

欧州では本格的な冬を迎えて気温の低下が進んでいる。英調査会社エナジー・アスペクツの欧州ガス部門責任者、ジェームス・ワデル氏は「今週に入り非常に寒くなった。1月まで低温が続けば在庫が急減して1~3月期後半に底をつきかねない」と話す。

ユーロ圏では11月の消費者物価指数の前年同月比上昇率が約5%と、統計開始以来の最大の伸びを記録した。エネルギー高は物価をさらに押し上げかねず、企業業績や家計の圧迫につながる。

21日の急騰に拍車をかけたのは、欧州が輸入を頼るロシアからの供給をめぐる新たな動きだ。ロイター通信によると主要パイプライン「ヤマル・ヨーロッパ」で、欧州方面の西向きの流量が前週末以降に急減し、21日には流れが逆であるロシア方面の東向きへと転じた。

このパイプラインはベラルーシとポーランドを経てドイツに向かう主要な供給網の一つ。独運営会社ガスケードによると天然ガスはドイツからポーランド方向へ流れ始めたが、詳しい背景は明らかにしていない。根底にはロシアからの供給減があるとみられ「ロシアでも気温低下で需要が高まっているためではないか」(市場関係者)との声が聞かれた。

欧州の貯蔵能力に占める天然ガスの在庫率は20日時点で59%と、直近10年間の平均を17ポイント近く下回る。供給が増えなければ在庫の取り崩しが加速しかねない。ロシアが国境に兵士を大量動員するウクライナとの緊張も尾を引いている。

21日は幅広い年限で天然ガスが買い進まれた。22年2月物は180ユーロ台、同3月物は160ユーロ台に乗せてそれぞれ2割超上げたほか、同4~6月物も120ユーロ台後半まで4割近く跳ね上がった。22年後半以降の期先の取引も軒並み急伸した。高騰に歯止めがかからなければインフレの長期化をもたらす。

フランスで原子力発電所がメンテナンスのため一部停止していることも、代替エネルギー源として天然ガスの需要を高めているもようだ。主要国では卸電力のスポット(随時契約)価格も騰勢を強めている。

天然ガスの値上がりを受けて世界的に液化天然ガス(LNG)の引き合いが増えている。調達で競合するアジアの相場にも波及しており、日本のエネルギー価格にも上昇圧力がさらに強まりそうだ。

英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)電子版は21日、欧州での天然ガスの値上がりを受け、LNGの仕向け先を欧州に急きょ切り替える動きが出ていると報じた。アジアに向かっていた米国発のタンカーが途中で欧州へ進路変更したり、オーストラリアから10年以上ぶりにLNG運搬船が欧州へ出航したりする行動が観測されているという。

【関連記事】

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白井さゆり
慶應義塾大学総合政策学部 教授
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ひとこと解説

天然ガスの高騰は電力料金の上昇につながっておりコロナ禍で市民生活を直撃しているのは事実だ。

ただしEUでは現在の化石燃料価格の高騰や価格変動が大きいこと、およびロシアの天然ガスへの大きく依存していることが中長期的にEUの経済にはマイナスだとの認識がある。

だからこそ再生可能エネルギーの供給拡大を急ぐべきであり、現在の天然ガス価格の高騰を脱炭素に向けた移行に責任があるとの考えは間違いだと考えているようだ。

極端な自然災害は直近の東南アジアの洪水のように毎年世界各地で見られており、再生可能エネルギーの供給の多様化や技術革新を進めることが価格低下につながっていくという基本的な考えを我々も崩してはならない。

2021年12月22日 7:37

上野泰也のアバター
上野泰也
みずほ証券 チーフマーケットエコノミスト
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別の視点

風力など再生可能エネルギーは発電量が不安定かつ現状では不十分であり、ヨーロッパ経済は発電燃料として、バックストップ的な部分を含め、ロシアという専制主義国家からの供給への依存度が高くなっているのが実情である。

今回起こった再度の天然ガス価格高騰劇はその点を如実に示している。端的に言えば、資源国ロシアに欧州経済は首根っこを握られている。

そうした中で、米バイデン政権が主導する「民主主義国家の団結・専制主義国家との対決」路線に、欧州諸国がどこまで歩調を合わせることができるだろうか。

メルケル退場後のドイツ政府の対ロシア姿勢が1つの注目点になる。

2021年12月22日 8:04

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今村卓
丸紅 執行役員 経済研究所長
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別の視点

天然ガスの需給逼迫と価格高騰が長引けば、世界の2050年カーボンニュートラル実現に向けて天然ガスをトランジションエネルギーに位置付けることも難しくなる恐れがあります。

とはいえ、この事態で世界の天然ガスの供給体制の脆弱さも露呈してしまいました。

こうなると天然ガスをトランジションエネルギーとして確立するには、その開発促進と安定供給を天然ガスを含めた化石燃料の新規開発への強い逆風が吹く中でも世界に説き前進を試みるしかないのかもしれません。

この厳しい現実を再生可能エネルギーへの転換を加速させる欧州での天然ガスの価格高騰で気付かされるとは、何とも皮肉です。

2021年12月22日 20:33

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志田富雄
日本経済新聞社 編集委員
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分析・考察

商品市場全体を見れば変異型の感染拡大や中国経済への不安、米国の早期利上げ観測といった材料が上値を抑える格好になっています。

その中で、欧州の天然ガス価格は供給不安が押し上げています。今日の別な記事でロシアのプーチン大統領が示唆する「軍事的措置」が現実になればさらなる価格高騰だけでなく、真冬の欧州が深刻なエネルギー不足に陥るリスクがあります。

日本などのアジア各国も無縁ではありません。アジア地域の液化天然ガス(LNG)先物気配値が、2023年春まで持ち上がってきていることを見ると天然ガスの需給逼迫は長期化する可能性もあります。

2021年12月22日 7:20 』

[FT]LNG船、航海途中で欧州へ進路変更 上乗せ金高額に

[FT]LNG船、航海途中で欧州へ進路変更 上乗せ金高額に
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB224N50S1A221C2000000/

 ※ 『「欧州は明らかに大量のLNGを入手できるよう価格を設定しており、それだけのLNGが必要だ。これがなければ、天候次第で供給の状況が非常に深刻になりかねない。在庫水準はすでに低く、冬の終わりまでには極端に低くなっている」』…。

 ※ ということで、なりふり構っていられなくなったんだろう…。

 ※ 口では、「キレイなことを言って」いても、やってることはこういうものだ…。

 ※ 最後は、「カネに物を言わせる」ことになる…。気候変動対策、脱炭素はどうなった…。

 ※ まあ、「ワクチンかき集め」見てても、そういうものだな…。

『欧州各地でガス価格が過去最高値に急騰するなか、液化天然ガス(LNG)を積んでアジアへ向かっていた船が、大幅なプレミアム(上乗せ)を払う用意のある欧州の消費者に供給するために航海の途中で進路を変えている。

欧州は天然ガス価格の急騰を受けて、タンカーによる調達を急いでいる=ロイター

今年はおおむね、電力を生産するために発電所で使われるLNGの出荷を巡り、中国や日本、韓国のバイヤーが欧州勢より高い値段をつけて供給を確保してきた。

だが、アジア各地で貯蔵タンクが満杯になった今、大西洋海盆からアジアに向かっていた出荷先未指定のLNGが荷主によって目的地を変更され、急騰する価格と需要に便乗するために欧州へ向けられている。主要パイプラインでロシア産ガスの供給が止まると、欧州のガス価格は21日に23%高騰し、1メガワット時あたり182ユーロの最高値を付けた。

米調査会社S&Pグローバル・プラッツのキーラン・ロウLNGグローバルディレクターは「欧州のガス市場は今、節目を突破した」と話す。「LNGの輸出先となるあらゆる主要市場が欧州の主要ガス拠点を下回っている」という。

プラッツのデータによると、欧州市場とアジア市場の価格差は現在、記録に残る限り最大に達している。

欧州向けとアジア向けLNG価格が逆転

スポット(随時契約)の欧州向けLNG出荷価格は100万BTU(英国熱量単位)当たり約48.5ドルで、アジアでは同41ドルだ。プラッツによれば、10月、11月にはアジアの価格が欧州の価格を平均5ドル上回っていた。

LNGタンカーの動向を調査している調査会社ICISアナリストのアレックス・フローリー氏は、「欧州のガス・スポット価格高騰を受け、珍しい荷動きが起きている」と話す。

アジアに向かっていた米国のLNGタンカーが進路変更して欧州の港へ向かったケースもあれば、オーストラリア産のLNGが十数年ぶりに欧州へ出荷されたケースもあった。

米国のLNGタンカー「ミネルバ・チオス」は12月15日にインドの近くを東に向かい航行していたが、その後進路変更し、今ではスエズ運河に向かう航路を進んでいる。欧州への引き渡しを示唆する動きだとフローリー氏は言う。

2隻目の米国のLNGタンカーは先週、マラッカ海峡の近くで進路変更しており、3隻目は今月、積み荷のオーストラリア産LNGの大半を中国で降ろした後、残る一部を24日にスペインのバルセロナに届ける予定になっている。

フローリー氏は「オーストラリア産LNGが欧州に入荷するのは、英国とフランスに何度か届けられた2009年以来初めてだと見られている」と話す。

大量調達のための価格設定

世界最大の独立系LNG商社グンボルの創業者兼最高経営責任者(CEO)のトルビョルン・トルンクビスト氏は、今月は通常の出荷以外に15~20カーゴ(1カーゴは約7万トン)が追加で欧州に向かい、1月も同量になると予想していると説明する。

「欧州は明らかに大量のLNGを入手できるよう価格を設定しており、それだけのLNGが必要だ。これがなければ、天候次第で供給の状況が非常に深刻になりかねない。在庫水準はすでに低く、冬の終わりまでには極端に低くなっている」

ICISのフローリー氏は、南米ペルーのパンパ・メルチョリータ地区にあるLNGターミナルと長期購入契約を結んでいる英蘭石油大手ロイヤル・ダッチ・シェルが19年以来初めてペルー産LNGを英国へ出荷していると話す。10月末以降、こうしたシェルの積み荷が7カーゴ英国に到着しており、「向こう数週間」でさらに4カーゴの到着が予定されていると言う。

大陸欧州と同様、英国のガス価格も年初来およそ650%高騰しており、24社以上の国内エネルギー業者が破綻に追い込まれた。

英国の卸売価格と連動する先物契約は15%上昇し、1サーム(約29・3キロワット時に相当)あたり4.29ポンドの最高値をつけている。今月で77%の上昇で、原油換算で1バレル320ドルに相当する価格だ。ブレント原油は現在、1バレル72.41ドルで取引されている。

ガスは英国の発電量の約40%を占め、英国家庭の大半が暖房にガスを使っている。英国は供給全体の約2割をLNG運搬船による入荷に依存している。

By Tom Wilson, Neil Hume and Valentina Pop

(2021年12月22日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版 https://www.ft.com/)

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[FT]米国のLNGを求める中国 エネルギー・環境は協力

[FT]米国のLNGを求める中国 エネルギー・環境は協力
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB220KP0S1A221C2000000/

『天然ガスへの需要が旺盛な中国が米国の液化天然ガス(LNG)大手と相次ぎ輸入契約を結んでいる。米中関係は緊張が高まっているが、二大国のエネルギー貿易は拡大している。
中国は今年日本を抜いて世界最大のLNG輸入国となる一方、米国は今年1〜9月の中国向けLNG輸出で豪州に次ぐ2位となった(中国・大連にあるLNG輸入施設)=ロイター

20日には米ルイジアナ州で輸出プラントを2カ所建設中の米ベンチャーグローバルLNGが、中国最大のLNG輸入企業である国営の中国海洋石油(CNOOC)と年350万トンを輸出する2つの契約で合意したと発表した。

これにより今年10月以降に米企業と中国の顧客が締結した大型契約は7件となった。一部の契約期間は数十年に及ぶ。アナリストは中国が今年日本を抜いて世界最大のLNG輸入国となると見ている。一方、米エネルギー情報局(EIA)によると、米国のLNG輸出能力は来年オーストラリアとカタールを追い越す見込みだ。

新疆ウイグル自治区でのウイグル族の迫害、香港の民主化運動の弾圧、台湾近海での軍事活動など様々な問題をめぐり米中関係は緊迫の度を増している。これに対して中国は、米国が覇権主義的な行動を取り両国間で新たな冷戦を始めようとしていると非難する。
COP26の気候変動対策で合意した米中

その半面で両国はエネルギーや気候変動問題で協力関係にあり、相次ぐLNG契約はその証しでもある。先月開催された第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)でも、両国は予想に反して気候変動対策で合意した。また原油価格の高騰を抑えるため、各国と協調して戦略石油備蓄を放出した。

「米中関係は多くの面で最悪の状態にある」。米コロンビア大学気候変動研究大学院の院長で、オバマ政権でエネルギー担当の大統領特別補佐官を務めたジェイソン・ボードフ氏はこう述べた。「だが緊張や対立があっても、エネルギーと気候変動は協力を深められる可能性がある分野だ」

ベンチャーグローバルは11月、国営の中国石油化工(シノペック)と年400万トンのLNGを20年間供給する契約を結んだ。また同社の商社部門ユニペックとの間でも計350万トンを供給する複数の短期契約を交わしている。CNOOCとの契約の一つも期間は20年だ。

ベンチャーグローバルのマイク・セイベル最高経営責任者(CEO)は、中国が二酸化炭素(CO2)排出削減のために火力発電所の燃料を石炭からLNGに転換していることが契約の背後にあると述べた。シノペックとの契約はCOP26の前に良いメッセージを発信できるようタイミングが計られたという。

「中国は他のアジア諸国に先駆けて契約すべく素早く動いている」とセイベル氏はフィナンシャル・タイムズ(FT)に述べた。「だが我々が契約を発表している間にも他の国々は対応するだろうし、すでに動き始めている国もある。さもなければ中国がますます有利になるからだ」

「世界中で米国産LNGの需要が高まり、また最も早く手に入るのが米国産LNGという異例の事態が起きている」
ガス供給源の確保急ぐ中国企業
中国海洋石油は20日、米ベンチャーグローバルLNGと年350万トンのLNGを輸入する2件の契約を結んだ。このうち1件は期間20年に及ぶ長期契約だ=ロイター

米LNG最大手のシェニエール・エナジーは中国が成長を下支えしてくれると期待する。同社は最近、国有化学大手の中国中化集団(シノケム)などに合計で年間300万トンを供給する契約を結んだ。

「今後数十年にわたり、アジアのLNG需要が業界の成長を支える原動力になるだろう。中でも中国は最大の顧客だ」とシェニエールのアナトール・フェイギン最高商務責任者(CCO)は10月にFTに述べている。

トランプ政権下では米国による中国製品への追加関税の報復措置として中国が米国産ガスに関税を課したため、LNG契約や輸出は低調だったが、次第に回復しつつある。中国では電力不足により経済活動が停滞し、世界的にガス価格が高騰しており、中国企業はガスの供給源確保を急いでいる。

金融情報会社リフィニティブによると、今年1〜9月の中国向けLNG輸出で米国は2位だった。1位はオーストラリアだが、米国と同様に対中関係は悪化している。

「中国はLNGの半分を米国とオーストラリアから輸入している。中国政府には歯がゆい状況だろう」。米シンクタンク、戦略国際問題研究所(CSIS)のエネルギー・地政学部門を率いるニコス・ツァフォス氏はこう指摘した。「だが開発案件があれば行かざるを得ないのだから、致し方ない」
米国は重要な燃料供給源

中国外務省が発表した11月の米中首脳電話会談の要旨によると、習近平(シー・ジンピン)国家主席はバイデン米大統領に「天然ガス分野での協力関係を強化したい」と伝えた。中国が米国を重要な燃料供給源とみている証しだ。

しかし天然ガスの米国内価格が100万BTU(英国熱量単位)あたり6ドル(約680円)を上回り2008年以来の高値を付ける中で、ガス輸出は政治的に慎重な対応が求められる問題になりつつある。

米民主党のエリザベス・ウォーレン上院議員は米エクソンモービルや英BPなど主要天然ガス企業11社のCEOに書簡を送り、「国内価格の高騰を抑えるため天然ガス輸出の削減、一時中止または終了を検討したことがあるか」と尋ねた。

一部のCEOはLNGを輸出すれば他国が火力発電所の燃料を石炭から天然ガスに切り替えるのを米国が支援する機会になると反論した。
不都合な現実

コロンビア大のボードフ氏は輸出削減に動けば「信頼できるエネルギー供給源」としての米国に対する信頼が低下すると述べた。また欧州各国がロシアへの天然ガス依存に懸念を抱いていることを引き合いに出し、「どちらにも政治的、地政学的側面がある」と指摘した。

米経済を化石燃料への依存から脱却させようとしているバイデン政権にとって、天然ガス貿易の活況は政治的にいたたまれない面もある。CO2排出量が石炭より少ないとはいえ、天然ガスも温暖化ガスの主要な排出源だからだ。

これは世界が依然として化石燃料に大きく依存しており、米国が石油・ガスの主要生産国であるという「非化石燃料への転換を進める際の不都合な現実」を映し出しているとCSISのツァフォス氏は指摘した。「実際、この現実が米中両国を後ろめたくさせている」

By Justin Jacobs and Derek Brower

(2021年12月21日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版 https://www.ft.com/)

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中東・アフリカ、「脱炭素」が汚染招く 石油投資が撤退

中東・アフリカ、「脱炭素」が汚染招く 石油投資が撤退
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB2302M0T21C21A1000000/

『中東やアフリカの石油産業がグリーン化に逆行する懸念が強まっている。「脱炭素」で欧米企業のダイベストメント(投資撤退)が加速し、温暖化ガス削減に必要な技術の移転が進まないためだ。多くの場合、事業を引き継ぐのは産油国の国営会社や中国、ロシアの企業。株主や国際社会の監視の目が届かず、目先の利益優先で地球環境をさらに汚してしまう恐れがある。

イラク南部の石油都市バスラ。石油の生産や精製に伴って発生するフレアガス(随伴ガス)の燃焼による煙が影を広げ、硫黄のにおいが立ちこめる。「外から来た人はひどい環境に驚くが、われわれは慣れてしまった。文句を言う相手もいない」と住民のアッバス・イブラヒムさんは言う。

バスラの環境悪化を訴えてきたイラク人研究者は「環境問題への人々の関心は低い。あっても職を失うことを恐れて声を上げられない」と語る。

欧米メジャーが手掛ける油田ではフレアガスは製品化するのが一般的だ。温暖化ガスを減らせるだけでなく、事業の付加価値を高め収益にもつながるからだ。フレアガスには有毒な硫化水素が多く含まれ環境への負荷がきわめて大きい。

世界銀行グループの国際金融公社(IFC)は6月、バスラのフレアガス削減のための期間5年、3億6000万ドル(約410億円)の融資を決めた。中国銀行やシティバンク、ドイツ銀行、三井住友フィナンシャルグループなど8つの国際金融機関が参加した。IFCはこれを「グリーン・ローン」と名付け、脱炭素ファイナンスの一環と位置づけようとしている。

しかし、湾岸の金融関係者はこうした化石燃料の関連事業に今後も民間資金が集まることには悲観的だ。「たとえ環境負荷を下げる事業でも化石燃料に関わるものは一緒くたで『悪い事業』と見なされる」と話す。年金ファンドなどの社会的責任投資を重視する組織であればなおさらだ。

欧米メジャーには「脱炭素」へ株主の圧力が強まる。英BPや米エクソンモービルはイラクの石油生産事業からの撤退を検討している。

売却資産の受け皿となる中国やロシア、中東の国営企業も環境重視を掲げる。しかし、株主や環境団体、政府からの圧力は欧米に比べずっと小さい。サウジアラビアのサウジアラムコやアラブ首長国連邦(UAE)のアブダビ国営石油(ADNOC)など一握りの例外をのぞき、中東の石油会社には欧米のような環境技術がない。

化石燃料ビジネスの売却は個々の企業単位ではグリーン化の成功といえるが、こうした資産を買って事業を引き継ぐ企業は環境意識が低い可能性が大きい。世界の石油ビジネスの大半を担うのは産油国の国営企業や未公開企業だ。

再生可能エネルギーや水素といった新エネに「バブル」といわれるほどマネーが殺到する一方、既存事業の環境負荷を下げるという課題は忘れられがちだ。

ボツワナのレフォコ・モアギ鉱物資源相は日本経済新聞の取材に「われわれのベースロード電源を支えるのは石炭だ。水力も原発もない。化石燃料をグリーン経済に生かせるような技術が必要だ」と語った。

米国による制裁で石油施設が老朽化するイランは自力で増産や新規開発を目指すものの、環境配慮で欧米との意識の格差は大きい。石油省の元高官は日本経済新聞の問いに対し「石油産業のグリーン化とはどういう意味か」と尋ね返したほどだ。 

10月末から英北部グラスゴーで開かれた第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)では各国が、競うように「カーボンゼロ」の目標を掲げたが、エネルギー転換に向けた具体的な道筋の議論は不十分なままだ。

中東やアフリカは、干ばつや砂漠化など気候変動の打撃を真っ先に受ける地域でもある。その場しのぎの脱炭素目標や上辺ばかりの環境宣言は、問題を解決しないばかりか、事態を悪化させかねない。 

(ドバイ=岐部秀光)

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鈴木一人
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分析・考察

環境問題に関する南北問題は、単に先進国の勝ち逃げといった問題だけでなく、脱炭素に向けて必要な技術移転や、脱炭素に向けた設備への投資といったことが途上国だけでは賄いきれないため、支援のないまま脱炭素と言われても、出来ることが限られている、ということもあるのだろう。

一つの普遍的な価値を、環境や条件の異なる国々で実現することは、容易ではない。

2021年12月22日 11:23

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松本裕子
日本経済新聞社 ESGエディター
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ひとこと解説

米ブラックロックは非上場企業も含めて気候変動関連の情報開示をするべきだとしています。

この記事で指摘しているような市場の監視の目が行きわたらない企業が化石燃料事業の主体になれば、気候変動対応が進まなくなるとの懸念が背景にあります。

化石燃料関連の事業が将来的に収益を生まない「座礁資産」になると言われるなか、こうした事業をどうやって終わらせるのか、誰が最後まで責任を持つのかについては、もっとしっかり議論しなければいけない点だと思います。

2021年12月22日 10:50 』

ドイツ、「脱原発」延期論も時すでに遅し

ドイツ、「脱原発」延期論も時すでに遅し
フランクフルト支局 深尾幸生
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR13AYU0T11C21A2000000/

 ※ 一国の「エネルギー政策」、「電源構成をどうするか」は、その国の行く末を左右する…。

 ※ 安易に「再生可能エネルギー優先」に舵を切って、「電力の安定供給」が確保できなければ、「大惨事」となる…。

 ※ 大体、「医療機器」なんてのは、「電気が来なければ、ただの”ガラクタ”」だ…。
 ※ 電力供給が止まれば、まず「透析患者」から「亡くなっていく」だろう…。「電気モーター」の”カタマリ”だからな…。

 ※ 今般、コロナ肺炎で大活躍した”CTスキャン”なんてものも、ご同様だ…。

 ※ 特に、「発電事業」は、巨大装置産業だから、そうそう簡単に「方針転換」はできない…。

 ※ 左翼は、そこら辺の認識不足で、スイッチ切り替えるように”ポコポコ”電力供給が可能だと思っているから困るよ…。

 ※ 『ドイツの決断は議論が膠着しているようにみえる日本にも参考になる部分が多い。』とか言っているが、それも強固な「独仏枢軸」があればこその話しだ…。

 ※ 独が、どれくらい仏から「買電してるか」知ってて言ってるのか…。

 ※ 仏の電源構成は、7割が「原子力発電」であることを、知ってて言ってるのか…

『2022年末にドイツで全ての原子力発電所の運転が終了するまであと1年となった。11年にメルケル前首相が決めた「脱原発」は、最終盤に来て電力価格の上昇などで延期を求める声も大きくなっている。だが、新政権や電力会社は「ノー」を突きつけ、時すでに遅しの状況だ。

「一つの時代が終わる」

北西部ニーダーザクセン州のグローンデ原子力発電所。今年いっぱいで37年の歴史に幕を閉じる。同州のオラフ・リース環境・エネルギー相は1日に発電所を訪れ「この地域にとって一つの時代が終わる。何十年にわたって安全に運転してくれた従業員に敬意を表する」と述べた。

ミヒャエル・ボンガルツ所長は「大みそかに静かに発電を止める。発電所の状態が良いだけに悲しい瞬間となるだろう」と話す。同じタイミングで南部バイエルン州のグンドレミンゲン原発などほかの2基も運転を終了し、残るは22年末までの3基だけとなる。

21年12月で運転を終了するグンドレミンゲン原子力発電所(独バイエルン州)=ロイター

ドイツの脱原発は東京電力福島第1原子力発電所の事故を受け、11年5月に当時のメルケル政権が決めた。当時2210万キロワットあった独国内の原発の発電能力は年内のグローンデ原発などの停止で429万キロワットと約5分の1になる。10年は電力全体に占める原子力の割合は22%を占めていたのに対し、20年には11%に減った。

ドイツの世論はおおむね脱原発を支持してきた。19年に決めた脱石炭と同時進行させる劇的な変革だが、太陽光や風力などの再生可能エネルギーと天然ガス火力による代替がうまくいっていたからだ。

だが、脱原発の完了を約1年後に控えたこの秋以降、見直しを求める声がにわかに大きくなってきた。9月の総選挙を戦っていた当時の最大与党キリスト教民主同盟(CDU)の首相候補だったラシェット議員は「脱原発、脱石炭の順番は誤りだった」と発言、党重鎮のメルツ議員も「わが党の多くは今日、拙速に脱原発を決めたことを後悔している」と述べた。

背景にあるのは天然ガス価格の高騰だ。昨冬の寒さによる在庫不足に、新型コロナからの経済回復による需要急増、風力発電の出力低下などの複合的な要因が重なり、欧州の天然ガス価格は春すぎからみるみる上昇。指標価格であるオランダTTFは10月上旬、過去最高となる1000キロワット時あたり約150ユーロと1年前の12倍の高値をつけた。企業や家計の負担は高まった。

安定電源、脱炭素電源として再評価

ドイツを本拠とする工業ガス大手リンデのスティーブ・エンジェル最高経営責任者(CEO)は独紙ハンデルスブラットのインタビューに「安定電源として原子力は必要だ。再生エネだけだと電力価格は極端に高くなる」と政策の見直しを求めた。再評価のもう一つの理由は脱炭素電源としての原発の位置付けだ。

11月に英調査会社ユーガブが実施した調査では、ドイツの回答者の22%が原発は温暖化対策に「非常に重要」と答え、31%が「太陽光や風力ほどではないが少なからず役割はある」と答えた。「全く必要ない」と答えたのは28%だった。19年に独調査会社カンタールが実施した調査では60%が22年末かそれより早い脱原発を支持していた。

だが、世論の変化で脱原発が見直されるかというと、その可能性は限りなく低い。年末に運転終了するグンドレミンゲン原発などを運営する独電力大手RWEのマルクス・クレッバー社長に11月、延長の是非について聞いた。すると「正直に言ってこの問題を議論する気にならない。10年前から運転終了日に向け計画を立て、全てを最適化してきた。誰かが延長を望んだとしてもそれは技術的に不可能で、莫大な投資と時間が必要になる」と明快だ。他の電力大手、独エーオンと独EnBWも独メディアに「問題外」と切り捨てている。

ドイツの新政権は連立合意で脱原発の堅持を明記した=ロイター

8日に発足したドイツの新政権も延長や再検討に否定的だ。そもそも連立を組む3党のうち緑の党は1980年代の反原発運動に端を発し、ショルツ首相のドイツ社会民主党は緑の党と連立を組んだ2000年に最初の脱原発政策を打ち出した経緯がある。今回の連立合意でも「我々はドイツの脱原発を貫く。再生エネの拡大と利用を明確に約束している」と明記した。

温暖化ガス削減に原発を活用する方針を打ち出した英仏と異なる道をドイツは歩む。新政権は30年の電源構成に占める再生エネの比率を従来目標の65%から80%に引き上げた。呼応するようにRWEは30年までに再生エネや水素に500億ユーロ(約6兆5千億円)を投資し、再生エネ主体に変貌する。

将来を委ねるのは原発より再生エネ

猛スピードで風力や太陽光を整備しながら、天然ガス火力を水素活用までの「過渡的な電源」と位置付け、非常時のバッファーとして活用する。放射性廃棄物の問題を先送りしながらコストも上昇する原発に頼るよりも、再生エネに将来を委ねたほうが安上がりで国民の支持も得られるとの判断だ。

ドイツでは他の多くの国と同様に高レベル放射性廃棄物の処分場の候補地はまだ決まっていない。一度は1970年代に独北部ゴアレーベンの鉱山が最終処分場に指定されたが、長年にわたる抗議に加え、安全性に疑問が生じたため2013年に撤回し、20年に鉱山の永久閉鎖が決まった。また、独シンクタンクのアゴラ・エナギーヴェンデによると原発の新設・運用コストは太陽光や陸上風力の3倍、洋上風力やガス火力の2倍以上になっている。

電力は国家の根幹だ。安定供給が最優先であることは言うまでもない。そのうえでどう脱炭素を進めるか、原発をつなぎと見るのか新設を含めて長期に活用するのか、放射性廃棄物はどう処分するのか、論点は多い。ドイツの決断は議論が膠着しているようにみえる日本にも参考になる部分が多い。

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岩間陽子
政策研究大学院大学 政策研究科 教授
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分析・考察

やや誤解を招くタイトルで、原発に関しては、ドイツでは賛否がきれいに分かれているので、「脱原発派」の人が後悔することはありません。

延期を望むのはもともと原発推進派の人々で、メルケルの決断を非常に苦々しく思っているでしょう。

新政権には、迷いも後悔もありません。方向性は明白ですが、過渡期のエネルギー供給に危うさがあることは確かです。

そこは、ガスや欧州電力網でしのぐことになるので、フランスの原発や周辺国のそれほどクリーンでない電力が入って来ますが、逆に現時点ではドイツから輸出もしています。

20年先を考えれば、多少無理があってもここで決断することが、競争力向上につながる可能性は大いにあると思います。

2021年12月20日 14:19 』

イラン ザーヤンデルード川をめぐる水危機と人びとの暮らし

イラン ザーヤンデルード川をめぐる水危機と人びとの暮らし
西川優花
http://www.law.osaka-u.ac.jp/~c-forum/box5/vol6/nishikawa.pdf

 ※ 良い資料に当たった…。大阪大の西川優花という人のリポートだ…。

 ※ 日本学術振興会というところから、研究助成費をもらって行った研究成果らしい…。特別研究員ということで、教授とか准教授とかでは無いようだ…。現地に在住して、実地調査をやっているという感じか…。

 ※ 画像で出て来るが、ここは国内が「乾燥地域」と「湿潤地域」に分かれているらしい…。

 ※ まあ、水争いや紛争のタネになりやすいわけだ…。

※ こういう風に、年間降水量が、地域によってハッキリ違っている…。

※ 山岳国家で風向きの関係で、湿った空気が「高山地帯」に当たって「降水」となって落ちる地域と、「落ちた後の、乾燥した大気が流れて行く地域」に、分かれてしまうんだろう…。

※ ちょっと分かりにくいが、「緑の部分」が標高2000メートル地帯だ…。黄色の部分が、1500メートルから1000メートルの「それよりは低い部分」…。