新局面迎える世界情勢 「汎地球的」ルール整備が必要だ

新局面迎える世界情勢 「汎地球的」ルール整備が必要だ
ヴォルフガング・パーペ (元欧州委員会アジア戦略担当)
渡邊頼純 (関西国際大学国際コミュニケーション学部長・教授)
https://wedge.ismedia.jp/articles/-/22577

『「どちらからお越しですか?」。新型コロナウイルスが世界的に流行する前、外国に旅行するたびによくこんな質問を受け、私は「ヨーロッパから」と答えていた。ニューヨークの高校に通っていたころ、周囲の人たちが自分を「アメリカ人」と呼びながら、本来はそこに含まれるべきカナダ人やメキシコ人を無視している姿を目にしていたからだ。もちろんヨーロッパも単に欧州連合(EU)だけを意味するわけではない。EUに含まれない東側の国々も含まれる。

 だが、イギリスのブレグジットをめぐる交渉により、EU加盟国の結束はむしろ強化された。イギリスが被るマイナスの影響や損失が次第に明らかになったからだ。複数の調査によれば、ヨーロッパ統合には利点があると考えるEU市民は増えている。ドイツでは、その割合が過去15年で最高の73%に達した。脱退したイギリスでさえ、EUを支持する人が60%にのぼる(2020年8月ピュー・リサーチ・センター調査)。そんなEUをめぐる、21年の諸問題について触れていきたい。

 現在ウイルスの変異株が現れ、ヨーロッパ諸国は相次ぐ感染の波にさらされている。ドイツのメルケル首相も昨年3月に隔離を余儀なくされたが、すぐに回復し、その後の活躍で70%を超える支持率を獲得した。7月には、フランスのマクロン大統領と手を組んでEU加盟国を説得し、総額1兆8000億に及ぶ予算(21~27年)と経済回復プランを成立させた。

 メルケルとマクロンのコンビは、これらの受け入れに消極的だった「倹約4カ国」(オーストリア、デンマーク、オランダ、スウェーデン)の説得だけでなく、イタリアの動揺を一時的に鎮めることにも成功した。イタリアの人々は、ウイルスがヨーロッパ全域に広まる以前、ベルガモやミラノ、アルプス地方に押し寄せてきたウイルスとの死闘を真っ先に経験し、置き去りにされたような感覚を抱いていた。EU議会選挙前の19年5月、私が同僚と自転車でポー川流域を遊説していた際にも、現地のポピュリストの政治家から不満げに「ブリュッセル(EU本部の所在地)があまりに遠い」と言われたことがあった。

新たにイタリアの首相となったマリオ・ドラギ氏。技術官僚の「スーパーマリオ」は、多額の復興資金を割り当てられるなど経済的に苦しむイタリアを救えるか
(MONDADORI PORTFOLIO/GETTYIMAGES)
 21年初めの現在、EUは2220億(約28兆円)ものコロナ復興資金をイタリアに割り当てている。ところがイタリアは、またしても個人間および政党間の内紛に陥った。そしてまたしても、この国を救えるのはEUで経験を積んだテクノクラート(専門家、技術官僚)だけだと考えている。「スーパーマリオ」の異名を持つ元欧州中央銀行総裁、マリオ・ドラギである(編集部注・欧州経済危機に苦しんでいた11年にも同じくテクノクラートのマリオ・モンティが首相に擁立された)。

ワクチン供給の鍵は開放経済
 公衆衛生の問題については、EUの権限はまだ限られているが、EUは昨年の6月にはすでにワクチン戦略を発表し、安全なワクチンの生産能力の向上を図っていた。欧州医薬品庁(EMA)により承認されたワクチンはクリスマス直前の時期に、加盟27カ国間での不平等を避けるため、同じ条件のもと、同時に配布された。ちなみに、最初にEUの承認を得た米ファイザー・独ビオンテック製のワクチンは、マインツ(独)の移民夫婦により開発され、国境を越えたフランドル地方(ベルギー)の小さな町で製造された。これを見ても、緊急時には自由に動かせるサプライチェーンが必要なことがわかる。20年12月27日から、EU全域でワクチン接種が始まった。

 しかし、やがてワクチン不足が報じられるようになると、欧州委員会の交渉や計画に対する批判が高まり、今年2月初旬にはフォン・デア・ライエン委員長が非を認めるに至った。同氏によると、効果的なワクチン開発ばかりに気を取られ、大量生産の問題を軽視していたという。実際、最近になって、サプライチェーンの問題が世界中で起きている。

 スマートフォンは、小売市場に出るまでの製造過程で100回国境を越えると言われるが、同様にハイテク薬剤の大量生産も、一国の国内だけでは調達できない特殊な物資や設備、質の高いサービスを提供する無数の企業に依存している。アメリカのような大国にもこの教訓はあてはまる。ファイザーが真っ先にワクチンを開発できたのは、ドイツのビオンテックの協力があったからにほかならない。

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『対米正常化は分野別協力から
 政治面では、バイデン政権の誕生で、トランプ政権時代には低調だった米国とEUとの協力関係は間違いなく回復するだろう。しかしEUは、危機には陥りやすいがますます自律性も高めつつあり、「貿易においても、大西洋横断貿易投資パートナーシップ協定(TTIP)においても、5年前と同じ立場には戻れない」(編集部注・米国の強い姿勢にも対抗する)とフォン・デア・ライエン委員長は言う。また欧米関係が「正常化」すれば分野ごとの協力は進むだろうが、それが大きく報じられるかは別問題である。

 今年2月のEU統計局の発表によると、中国が米国を抜きEU最大の貿易相手国となった。対中国問題については、EUが提唱するEU-米国貿易・テクノロジー評議会(TTC)が、ハイテクの規格、投資審査、知的所有権の問題での協力を進めるはずだ。昨年末、ドイツの後押しにより大急ぎで締結された中国との包括的投資協定は多大な批判を浴びたが、それ以前に米中間で交わされた貿易に関する第一段階合意にある程度従い、公平な輸出条件を確保するよう努力してはいた。メルケルが欧州理事会でこの議論を主導したのは、これが中国市場を活用して低迷するドイツの自動車産業を支援する最後のチャンスと考えたからだろう。

 ドイツでは今年9月の選挙で新たな首相が誕生する。どの政党から首相が誕生するにせよ、その人物はフランスの大統領との相互補完的な協力関係を維持し、ヨーロッパ統合の屋台骨を支えていくことになるのか?

 第二次世界大戦後にアデナウアーとド・ゴールが友好関係を築いて以来、ドイツとフランスの間には個人を超えた深いつながりがある。いまや両国の政治はあらゆる面において、地球上のいかなる二大国も成し遂げられなかったほどのレベルにまで相手国に浸透していると言ってよく、いずれかの選挙でその関係が突然変わることはないだろう。EUでは、テクノクラートが作成した委員会の提案を理事会で審議し、合意に基づいて意思決定を行う方式を採用しているが、これは、意見の対立を招きがちな米英の二大政党制ではなく、ヨーロッパ的な議会制民主主義を反映している。

 だがこうした方式は、非自由主義的で違憲の疑いさえある行為を改めようとしない一部の加盟国(ハンガリーやポーランドなど)により、重大な危機に直面している。世界的に民主主義の力が弱まっている現在、多数者支配主義による統治がさらに長引けば、競争により前進する社会に欠かせない多元性が著しく損なわれてしまうおそれがある。EUにとって加盟国の内政は、効果的な対処が難しい問題である。

 16年の米大統領選でのトランプ勝利、および英国のEU脱退決定という二つの衝撃的事件が発生すると、日本・EU間の自由貿易協定(FTA)や経済連携協定(EPA)の交渉は一気に加速した。とりわけ、米国第一主義を標榜し、多国間協調主義を攻撃するトランプ大統領(当時)の影響は大きかった。だが、05年にパスカル・ラミー氏が欧州委員会から世界貿易機関(WTO)に異動したのを機に、EUもまた韓国を皮切りに、二国・地域間連携のパートナーを探していた。そのような状況のなかで、日本との交渉も始まったのである。

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『日欧EPA苦戦の背景
 しかしエコノミスト誌(09年9月3日号)によれば、二国・地域間協定が複数存在し(特にアジアに多い)、異なる基準や規則が錯綜している場合(これを「スパゲッティボウル現象」という)、貿易を促進する効果はほとんどないことが証明されているという。

 そのため最近ではアジアでも、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)や地域的な包括的経済連携(RCEP)といった多国間地域協定が締結されている。米国・EU間のTTIPの交渉の際には、大衆の猛烈な反対もあった。一方、日EU経済連携協定は、安倍晋三前首相とEUのユンケル委員長の間で交渉が進められ、19年に発効に至った。

 ところがふたを開けてみると、多大な期待に反する結果だった(編集部注・発効翌年の欧州委員会発表では、19年2~11月の10カ月間における貿易額について、EUの日本向け輸出額の増加は前年同期比で6.6%、EUの日本からの輸入額増加は6.3%であった〈20年3月、ジェトロ短信〉)。11年に日本が韓国と自由貿易協定を締結した際に、当初およそ35%も貿易量が増加したのとは大違いである。

 実際、この協定の交渉時にはすでに、両者が重視する部分の違いが明らかになっていた(日本側は関税を、EU側は非関税障壁を重視)。これは、両者の歴史に基づく古くからの関心事の違いを反映している。島国だった日本は、外国に強制的に開国させられるまで、数世紀にわたり鎖国していたため、のちには「独自性」(日本人論によく見られる)の保護を求めるようになった。

 それに対してEUは、国境を開放し、国の相違を調和させることを存在理由としている。こうした背景の相違から、交渉は複雑化した。関税や割当制(日本から見たEUの「国境障壁」)については相互授受の交渉の場で容易に数値化できるが、さまざまな非関税障壁(製品規格など)が貿易に及ぼす影響(EUから見た日本の「国内障壁」)については明確に数値化できないからだ。非関税障壁に関してはさらに、公共調達や競争に関する法律も重要な問題になる。

昨年10月、日英経済連携協定に署名した、茂木敏充外相(右)と英国のトラス国際貿易相 (KYODO NEWS/GETTYIMAGES)
重要なのは「汎地球的」ルール
 もちろん、デヴィッド・リカードの言う貿易における「比較優位」の原則(編集部注・貿易においては自国の得意な生産に特化したほうが効果的)は、相違から生まれる利益に基づく。だが最近になって、輸入(類似製品の輸入も含む)を通じて競争やイノベーションを高めるというヨーゼフ・シュンペーターの主張(「共争」)がヨーロッパで優勢になりつつあり、徐々に東アジアにも広がっている。

 この「共争」や「比較優位」は、FTAによる二国間や多国間の国益のみに左右されない公平な条件下の世界市場でこそ、その効果を発揮する。新型コロナウイルスのパンデミックで明らかになったように、グローバル化がもたらす恩恵により、あらゆる経済圏の相互依存は劇的に高まっている。もはや、多大な損失を被ることなくこの流れを逆行させることなどできない。世界に張り巡らされたインターネットに象徴されるこの相互依存関係をどう育むかは、グローバルな解決策を必要とするグローバルな問題である。

 そのためには、主権国家だけでなく、GAFAやBATX(編集部注・中国の四大IT企業のバイドゥ、アリババ、テンセント、シャオミ)などの大企業や市民社会など、あらゆる関係者がさまざまな意見を比較検討する議論に積極的に参加し、二国間・多国間・地域間という枠組みを飛び越えた「汎地球的(オムニラテラル)」(omnilateral)ルールが必要だ。万人による万人のための枠組みが必要とされている。

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『column

日本とEUは新時代の真なる戦略的パートナーになれるか?
1970年代、難題を抱えていた日欧の貿易関係。多くの障壁を超え、今後は米中を巻き込む主導的な役割が求められている。

渡邊頼純(関西国際大学国際コミュニケーション学部長・教授)

 1978年、ブリュッセルを訪問した福田赳夫首相(当時)は対日貿易赤字の拡大に悩む欧州共同体(EC=欧州連合〈EU〉の前身)首脳からの厳しい批判に直面した。続いてEC各国を歴訪した経済団体連合会の訪欧団も先々で同様に対EC貿易黒字の削減と日本市場の開放を強く求められた。

 翌年にはECの行政府に相当する欧州委員会が対日関係に関する初めての報告書において、「日本人は働きすぎの労働中毒患者(ワーカホリック)でウサギ小屋(ラビット・ハッチ)に住んでいる」と揶揄した。

 86年9月、関税貿易一般協定(GATT)のウルグアイ・ラウンドを立ち上げる閣僚会議で、ECは交渉項目の一つとして「利益の均衡」を取り上げるべきと訴えた。その核心は「日本は一方的にGATT体制から利益を得て、自らの市場は閉ざしたまま欧米の市場を席巻している、そのような不均衡は是正されるべき」という主張であった。幸い日本代表団の効果的な反対キャンペーンが奏功し、多国間交渉の中でECがシステマティックな対日輸入制限をルール化することは回避できた。

 70年代後半から日欧(以下、日EU)間にはさまざまな貿易摩擦が存在した。日本が一方的に自動車や家電製品、エレクトロニクス関連商品を欧州市場に輸出する一方、EU側は自動車はもちろん、チーズやバター、ワイン、チョコレートに至るまで日本市場への売り込みに苦労していた。自動車は関税がゼロであったため、EU側は問題は関税ではなく関税以外の措置、いわゆる非関税障壁にあると主張、軽自動車に対する軽減税率や車検制度などをやり玉に挙げた。

 日本政府が薬品についてEUの治験データを信用せず、あくまでも日本基準のテスト結果を求めるなどしたため、日本は非関税障壁のデパートのように言われた。今でも日本との通商問題が生じると「非関税障壁のせいだ」と言えば皆が納得する傾向があるのには閉口する。日本でのビジネスがうまく行かない時に欧州のビジネスマンがこのイクスキューズを使えばそれで良しとされた時代が長く続いたのである。

希望のEPAとSPA

 そのような日EU間で、2019年2月に自由貿易協定(FTA)である日EU経済連携協定(EPA)が発効した。世界の国内総生産(GDP)の約3割、貿易で約4割をカバーするメガFTAが誕生した。規模だけでなく、米国のトランプ大統領(当時)による保護主義が世界を覆いつつあった時に、あたかもそれに挑戦するかのようにこのメガFTAが合意された。トランプ氏の政策に対するいわばアンチテーゼとなった。

 またEPA発効だけでなく、政治協力を志向する戦略的連携協定(SPA)が締結されたことも意義深い。日EU双方は、民主主義、法の支配、人権など普遍的価値を共有することを確認しており、EPAとあいまって世界と地域の平和、安定および繁栄にむけて互いに協力する枠組みをもったことになる。この枠組みを通じて日EUの協力が深化することで、米国と中国の間で繰り広げられる「覇権競争」に第三の道を提示することが期待されている。

 日EUが共によって立つのは多国間主義(マルチラテラリズム)である。米国も中国も引き込んで行くことで日本もEUも「米国か、中国か」というダイコトミー(二分法的論理)から解放される。そこに日EUパートナーシップの戦略的価値がある。パーペ氏の主張するオムニラテラリズム(汎地球主義)はその延長線上に存在している。

Wedge4月号では、以下の特集を組んでいます。全国の書店や駅売店、アマゾンなどでお買い求めいただけます。 http://wedge.ismedia.jp/ud/wedge/release/20210320

■「一帯一路」大解剖 知れば知るほど日本はチャンス

PART 1 いずれ色褪せる一帯一路 中国共産党〝宣伝戦略〟の本質
PART 2 中国特有の「課題」を抱える 対外援助の実態
PART 3 不採算確実な中国ラオス鉄道 それでも敷設を進める事情
PART 4  「援〝習〟ルート」貫くも対中避けるミャンマーのしたたかさ
PART 5 経済か安全保障か 狭間で揺れるスリランカの活路
PART 6 「中欧班列」による繁栄の陰で中国進出への恐れが増すカザフ
COLUMN コロナ特需 とともに終わる? 中欧班列が夢から覚める日
PART 7 一帯一路の旗艦〝中パ経済回廊〟
PART 8 重み増すアフリカの対中債務
PART 9 変わるEUの中国観
PART10 中国への対抗心にとらわれず「日本型援助」の強みを見出せ』

初のクアッド4各カ国首脳会談終了と反中結束の強化に至るまで

北の国から猫と二人で想う事 livedoor版:初のクアッド4各カ国首脳会談終了と反中結束の強化に至るまで
http://blog.livedoor.jp/nappi11/archives/5246115.html

『日本、米国、オーストラリア、インドの4カ国(通称クアッドQUAD)首脳が2021年3月12日夜、初の首脳会談をテレビ会議方式で開いた:The QUAD virtual summit。日本が提唱する「自由で開かれたインド太平洋」構想を踏まえ、新型コロナウイルスの途上国向けワクチン支援で一致。東・南シナ海への海洋進出の動きを強める中国に加え、北朝鮮、ミャンマー情勢も協議し、4首脳は新型コロナワクチンについて、インド太平洋地域の途上国への供給などで協力していくことで合意した。バイデン米大統領は「野心的な新たな共同パートナーシップを立ち上げ、ワクチン生産を拡大する」と強調。インドで生産したワクチンを日米豪が後押ししてアジアやアフリカに提供することを目指す。今後、ワーキンググループを設置し、具体化を検討する。 菅義偉首相は会談後、記者団に「日米豪印4カ国を新たなステージに引き上げる会合だった」と評価した。

4首脳は年内に対面での会談を行うことで合意。東南アジア諸国連合(ASEAN)との連携強化も確認した。今回の会談が、宥和的姿勢に懸念が残るジョー・バイデン米大統領の対中政策を占う試金石にもなるとみられると言われる中、インド紙は、2007年の最初のクアッド会談で、当時誤って認めた中国の外交政策をに対し、今回の会談が反対と拒否のメッセージを送ることになるとの評価をしている。インドは伝統的に非同盟主義を貫いており、クアッドに名を連ねているが、あからさまな「反中国同盟」化には反対で、首脳会談への格上げにも慎重な姿勢だったが、日本が説得したと言われている。

日本と米国、豪州、インド4カ国の連携強化は、2007年8月に安倍晋三前首相が「2つの海の交わり:Confluence of the Two Seas」と題してインド議会で行った演説が端緒だった。安倍首相はそこで「太平洋とインド洋は自由の海、繁栄の海として、1つのダイナミックな結合をもたらしている」と強調した 参照記事 英文記事 参照記事。

その後、2012年に安倍前首相は日米豪印を結ぶ四角形を「セキュリティ・ダイヤモンド構想」として発表し「自由で開かれたインド太平洋(FOIP: a free and open Indo-Pacific)」という概念を打ち出した 参照記事。225d31bb

米国のドナルド・トランプ前大統領は2017年11月、安倍首相との会談後、会見でFOIPを単なる構想ではなく、中国包囲を念頭に「日米共同の戦略」として推進すると発表し、構想は一挙に加速していった。その後、FOIPの具体的な形として、4カ国のクアッドが外相会談として初めてニューヨークで開かれたのは、2019年9月だった。翌2020年10月には、2回目の外相会談が東京で開かれ、今回はそれから、わずか5カ月後の今夏、首相会談に格上げされた形になった。

すでに合同軍事訓練が実施されているクアッドは今回の首脳会議を経て、欧州の北大西洋条約機構(NATO)のように正式に機構化する可能性も考えられる。この事は、日本が、オーストラリアなど11カ国による環太平洋パートナーシップ(連携)協定(TPP)と「自由で開かれたインド太平洋(FOIP: a free and open Indo-Pacific)」という構想と合わせ、経済と防衛に於いて主導的な立場を発揮し、成果を上げたと評価できるだろう。

一方で、根拠の無い、非生産的反日にこだわった韓国は、どちらにも参加できずに発言力を失ったが、自業自得と見るだけでなく、韓国がばらまいた嘘の歴史認識を、まだ国営BBCなどは信じて疑わない論説を繰り返している。これらの間違った認識の是正には、外務省、在外公館が懸命に努力すべきだろう。EU離脱後の英国は、FOIP、更にTPPへの参加も表明している事からも、放置するのは得策ではない。 参照記事 参照記事 英文記事 過去ブログ:2021年3月アジア開発銀行がミャンマーへの資金拠出などを一時停止 3月クアッドでの首脳会談開催3月中旬の予定 外された韓国 

2月クアッド4カ国会合で中国、ミャンマーへの懸念で一致とバイデン 2月ウィグル人証言で中国叩きの英国 EUも追従 報復に出る中国 2月日米英豪の半導体同盟と中国の台湾進攻の現実味と日本の防衛 2月英政府がTPP参加を正式表明 』

習近平TPP戦略に思わぬ壁、英国「脱欧入亜」の衝撃

習近平TPP戦略に思わぬ壁、英国「脱欧入亜」の衝撃
編集委員 中沢克二
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGH08B3I0Y1A200C2000000/

 ※ 一口に、「政経分離」とか、「ツー・トラック」とか言うが、なかなか、うまくいかんものだな…。

 ※ そもそも、「経済活動」というものは、「双方、利得。」…、よく言う「ウインウイン」だからこそ、成り立つものだ…。

 ※ 「売買成立」とは、買い手が、「その値段ならお得。」、売り手も、「その値段ならお得。」と納得できるところに成立する…。

 ※ しかし、この「構図」の考察では、「抜け落ちていること」がある…。

 ※ それは、「一旦、約束したことを、違約した場合」の後始末…。「一旦、約束したことを、守らせる(強制する)」仕組み・基盤の考察だ…。

 ※ そこの部分は、「経済秩序」「強制力」の話しに属する…。

 ※ 昔(むかし)は、それこそ、「むき出しの暴力」「双方の武力」の強弱で、決着をつけたんだろう…。

 ※ しかし、月日は流れ、現代では、こういう「強制力」は、「国家」が独占するところとなった…。

 ※ 経済活動の本質は、今でも変わらない…。

 ※ しかし、それを支えている「国家」の制度的な仕組みには、大きな差異があるから、「すり合わせ」は難しくなる…。

 ※ 問題の本質は、「経済活動」と「それを支える国家制度」が衝突した時、どう調整するのか、というところにある…。

『米大統領に就いたジョー・バイデンと中国国家主席の習近平(シー・ジンピン)の首脳電話協議が実現しないなど米中関係膠着のなか、見逃せないのがバイデン政権が重視する同盟国英国と中国の急速な関係冷え込みである。

特に興味深いのは、欧州連合(EU)から離脱した英国の「脱欧入亜」と日本への接近が中国のアジア・太平洋戦略に大きな影響を及ぼしかねないとする中国の外交関係者らによる分析だ。一部では、1世紀以上前の2…

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一部では、1世紀以上前の20世紀初頭、アジアの力学を変えた日英同盟(1902~23年)の再来になぞらえた「日英準同盟」とみて警戒する向きもある。

「かつての英日(日英)同盟はロシアへの対抗ばかりではなく、中華復興を抑え込む隠れた意図もあったことを忘れてはいけない。英国は今、再び日本と組む『準同盟』で中国の飛躍を阻もうとしている」

「『脱欧入亜』をめざす英国が環太平洋経済連携協定(TPP)参加を正式申請したのは正直、手痛い。習が明言したように中国が真剣に検討しているTPP参加の大きな壁になりかねない」

日英接近への見方は各国で様々な議論があるが、少なくとも中国系メディアでは日英準同盟を警戒する議論が注目を集めている。

ジョンソン英首相(2月3日、ロンドン)=ロイター
英国の「脱欧入亜」とは言い得て妙である。別の言い方をすれば英国の「アジア回帰」とも表現できる。英首相のジョンソンが率いる政権は、EUのくびきから離れた英国が世界で機会を求める「グローバル・ブリテン構想」を進める。英国との貿易量も伸びている成長するアジアは重要なターゲットだ。ただし中国へのスタンスは極めて厳しい。

「日英準同盟」への警戒
中国の関係者が日英の急速な接近の証左として凝視したのが、3日の日英の外務・防衛担当閣僚協議(2プラス2)だ。今回はテレビ会議形式だったが、中身は2017年の前回協議と大きく違っていた。中国を名指しながら、かなり露骨にけん制したのだ。

香港、新疆ウイグル自治区の人権状況に「重大な懸念」を共有し、中国が先に施行した海警局を準軍事組織に位置づける海警法にも共に強い懸念を示した。防衛相の岸信夫は、英国が最新鋭空母「クイーン・エリザベス」を含む空母打撃群を年内に東アジアに派遣することを歓迎し、今後派遣に合わせた自衛隊との共同訓練を調整する方向も固まった。

1902年の日英同盟成立は、中国共産党が創設された21年より前の出来事だ。しかし、ロシアの南下を食い止める同盟の目的は、清王朝から辛亥革命によって中華民国に移行した中国にも様々な影響を及ぼした。同盟破棄から1世紀近くたった今、中国が日英の関係強化に着目するのは、そうした理由がある。しかも日英、日米が意識しているのは今やロシアではない。台頭する中国である。

テレビ方式による日英外務・防衛担当閣僚協議で手を挙げる茂木外相㊧と岸防衛相(2月3日)=AP
バイデン政権はトランプ前政権と異なり、同盟重視の立場である。深まる日英関係が日米同盟を補完する新たな「準同盟」色を強め、さらに中国けん制の枠組みである米国、日本、インド、オーストラリア4カ国による首脳会談などに英国も加われば、中国として身動きが取りにくくなる。これは新型コロナウイルス禍で激変した後の新しい国際秩序を巡る前哨戦でもある。

一方、中国が経済安全保障の絡みで気にしているのは、英政府によるTPP加盟申請を日本が歓迎したことだった。TPPが18年に発効して以来、新たな加盟申請は初めてだ。

バイデン政権は簡単にはTPPに戻る選択肢を取れない。これは中国のアジア太平洋戦略に有利だ。だが、代わりに英国の参加が先に認められれば交渉戦術上、中国は手詰まりとなりかねない。英国の時ならぬ「脱欧入亜」は中国の鬼門なのだ。

中国としても手をこまねいているわけではない。貿易関係者は「それなりの布石は打っている。カギはニュージーランドだ」と指摘する。1月下旬、中国はTPP参加国であるニュージーランドと自由貿易協定の改定に署名した。ニュージーランドは米国主導の「ファイブ・アイズ」の一員で、中国と鋭く対立してきたオーストラリアともかなり歩調を合わせてきた。

ところが中国は過去の行動は問わず、ニュージーランドを引き寄せようと動き始めた。中国が将来、TPP参加を申請する際、その助けが必要になる。ニュージーランドはTPPに発展した原協定の4当事国の一つで、現在も大きな役割を担う。英国が2月1日に加盟意思を通知した寄託国もニュージーランドだ。中国は、米中対立の仲介者としても期待できるとみている。

 中英関係は「自由落下」

中国の習近平国家主席は2016年2月19日、人民日報、新華社、中央テレビを視察した(中国中央テレビの映像から)
我が国と英国の関係は遮るものがない自由落下(フリーフォール)の状態だ――。中国ではインターネット上の言論でも英国との歯止めのない関係悪化が話題だ。最近、取り上げられたのは、英国のメディア規制当局が、中国国営中央テレビの英語放送、CGTNについて英国内での放送免許を取り消したニュースである。実質的に中国共産党の管理下にあることが理由だった。

問題の伏線は5年前にある。習近平は2016年、中央テレビを視察し、公の場で「メディアは共産党を代弁すべきだ」と党への忠誠を求めた。かつてない強いメディア統制には党内からも「メディアは大衆の利益を代弁すべきだ」という反発が出たが、すぐに圧殺された。

CGTNは習が「党を代弁せよ」と発破をかけた後、1年もしないうちに中央テレビの各組織を統合、強化して設立された対外宣伝部門といえる。これを民主主義国家がどう扱うべきなのかは難しい。

そもそも中国は自国内で米欧メディアの視聴、閲覧や外国製対話アプリの使用を厳格に規制している。米企業が運営する最近、話題の音声SNS(交流サイト)「クラブハウス」もまさに8日、中国本土で利用できなくなった。

米国のトランプ前政権も20年、CGTNなどを「中国共産党のプロパガンダ機関」と認定したうえで報告義務を課し、米国内の中国人社員の人数削減を求めた。

香港市民の「英国海外市民(BNO)」旅券(左)と香港特別行政区旅券=共同

これに先立ち、英政府は香港市民に英国市民権を獲得する道を開く特別ビザの申請受け付けを始めた。中国返還前に生まれた香港市民が持つ「英国海外市民(BNO)旅券」の保持者とその家族が対象だ。英側によると香港の人口の4割弱にあたる約290万人がBNOの資格を持つ。

中国が、香港返還時の公約を反故(ほご)にする香港国家安全維持法を施行し、民主派に圧力を加え続けているのが理由である。中国外務省の副報道局長、趙立堅は記者会見で「香港の人々を2等英国民にしようとするたくらみだ」と反発し、BNO旅券をパスポートや身分証として認めないと述べている。

 対米関係はなお膠着

米国務省で外交について演説するバイデン大統領(2月4日)=AP
バイデンは7日放送の米CBSテレビのインタビューで実現していない習近平との電話協議について「話すべきことはたくさんある」としながらも「彼を形づくるもののなかに民主主義は含まれていない」と突き放した。米国務長官のブリンケンは5日、中国外交トップ、楊潔篪(ヤン・ジエチー)との初めての電話協議で台湾、ウイグル、チベット、香港などの各問題で中国に厳しい姿勢を示している。

中国外交トップの楊潔篪氏(2018年11月、ワシントン)=AP

バイデン当選以来、中国はあらゆるパイプを通じて対米関係の打開を探ってきたが、現状は道半ばだ。中国としてもバイデン政権が習近平の顔を十分、立ててくれるメドが付くまで簡単に妥協できない。まだまだ米中関係に楽観的な見通しは持ちにくい。

そこで中国は大方の予想に覆す先手を打った。20年末のEUとの投資協定の基本合意である。バイデン政権発足前に米国と欧州の間の大西洋に楔(くさび)を打ち込んだのだ。しかし見落としていた点があった。そのEUから完全離脱した英国の素早い動きである。世界を股にかけた玉突きゲームはめまぐるしい。当面、英国の「脱欧入亜」の行方から目を離せない。(敬称略)

中沢克二(なかざわ・かつじ)
1987年日本経済新聞社入社。98年から3年間、北京駐在。首相官邸キャップ、政治部次長、東日本大震災特別取材班総括デスクなど歴任。2012年から中国総局長として北京へ。現在、編集委員兼論説委員。14年度ボーン・上田記念国際記者賞受賞。
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英、TPP参加を申請 春から本格交渉へ

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR016240R00C21A2000000

『【ロンドン=中島裕介】英政府は1日、環太平洋経済連携協定(TPP)への参加を正式に申請した。発足11カ国以外の国で初めての参加申請となる。春ごろに本格的な交渉に入る方針だ。

英政府はTPPの事務局機能を担う寄託国のニュージーランドに、参加の意思を通知した。英国が参加すると世界の国内総生産(GDP)に占めるTPP参加国の比率は13%から16%に高まる。英政府によると、2019年時点での英国とTPP11カ国との貿易額は1110億㍀(約16兆円)で、ここ10年間で7割増となっている。

申請に合わせて、トラス英国際貿易相が1日、輪番議長国を務める日本の西村康稔経済財政・再生相やニュージーランドのオコナー貿易・輸出振興相とオンライン協議し、今後の交渉の進め方などについて意見交換した。トラス英国際貿易相は協議後、ツイッターにTPP参加について「英国を世界の成長の中心に置くことができる。英国全土に質の高い雇用を創出する」と投稿した。加藤勝信官房長官は1日の記者会見で「TPPのルールを世界に広めることは大きな意義がある」と語った。

英国は20年末に欧州連合(EU)離脱の激変緩和のための移行期間が終了し、EUを完全に離脱した。1月1日には日本との経済連携協定(EPA)を発効させるなどEU域外との独自の通商協定の交渉を進めている。TPPはその中の目玉協定となる。

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