習近平TPP戦略に思わぬ壁、英国「脱欧入亜」の衝撃

習近平TPP戦略に思わぬ壁、英国「脱欧入亜」の衝撃
編集委員 中沢克二
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGH08B3I0Y1A200C2000000/

 ※ 一口に、「政経分離」とか、「ツー・トラック」とか言うが、なかなか、うまくいかんものだな…。

 ※ そもそも、「経済活動」というものは、「双方、利得。」…、よく言う「ウインウイン」だからこそ、成り立つものだ…。

 ※ 「売買成立」とは、買い手が、「その値段ならお得。」、売り手も、「その値段ならお得。」と納得できるところに成立する…。

 ※ しかし、この「構図」の考察では、「抜け落ちていること」がある…。

 ※ それは、「一旦、約束したことを、違約した場合」の後始末…。「一旦、約束したことを、守らせる(強制する)」仕組み・基盤の考察だ…。

 ※ そこの部分は、「経済秩序」「強制力」の話しに属する…。

 ※ 昔(むかし)は、それこそ、「むき出しの暴力」「双方の武力」の強弱で、決着をつけたんだろう…。

 ※ しかし、月日は流れ、現代では、こういう「強制力」は、「国家」が独占するところとなった…。

 ※ 経済活動の本質は、今でも変わらない…。

 ※ しかし、それを支えている「国家」の制度的な仕組みには、大きな差異があるから、「すり合わせ」は難しくなる…。

 ※ 問題の本質は、「経済活動」と「それを支える国家制度」が衝突した時、どう調整するのか、というところにある…。

『米大統領に就いたジョー・バイデンと中国国家主席の習近平(シー・ジンピン)の首脳電話協議が実現しないなど米中関係膠着のなか、見逃せないのがバイデン政権が重視する同盟国英国と中国の急速な関係冷え込みである。

特に興味深いのは、欧州連合(EU)から離脱した英国の「脱欧入亜」と日本への接近が中国のアジア・太平洋戦略に大きな影響を及ぼしかねないとする中国の外交関係者らによる分析だ。一部では、1世紀以上前の2…

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一部では、1世紀以上前の20世紀初頭、アジアの力学を変えた日英同盟(1902~23年)の再来になぞらえた「日英準同盟」とみて警戒する向きもある。

「かつての英日(日英)同盟はロシアへの対抗ばかりではなく、中華復興を抑え込む隠れた意図もあったことを忘れてはいけない。英国は今、再び日本と組む『準同盟』で中国の飛躍を阻もうとしている」

「『脱欧入亜』をめざす英国が環太平洋経済連携協定(TPP)参加を正式申請したのは正直、手痛い。習が明言したように中国が真剣に検討しているTPP参加の大きな壁になりかねない」

日英接近への見方は各国で様々な議論があるが、少なくとも中国系メディアでは日英準同盟を警戒する議論が注目を集めている。

ジョンソン英首相(2月3日、ロンドン)=ロイター
英国の「脱欧入亜」とは言い得て妙である。別の言い方をすれば英国の「アジア回帰」とも表現できる。英首相のジョンソンが率いる政権は、EUのくびきから離れた英国が世界で機会を求める「グローバル・ブリテン構想」を進める。英国との貿易量も伸びている成長するアジアは重要なターゲットだ。ただし中国へのスタンスは極めて厳しい。

「日英準同盟」への警戒
中国の関係者が日英の急速な接近の証左として凝視したのが、3日の日英の外務・防衛担当閣僚協議(2プラス2)だ。今回はテレビ会議形式だったが、中身は2017年の前回協議と大きく違っていた。中国を名指しながら、かなり露骨にけん制したのだ。

香港、新疆ウイグル自治区の人権状況に「重大な懸念」を共有し、中国が先に施行した海警局を準軍事組織に位置づける海警法にも共に強い懸念を示した。防衛相の岸信夫は、英国が最新鋭空母「クイーン・エリザベス」を含む空母打撃群を年内に東アジアに派遣することを歓迎し、今後派遣に合わせた自衛隊との共同訓練を調整する方向も固まった。

1902年の日英同盟成立は、中国共産党が創設された21年より前の出来事だ。しかし、ロシアの南下を食い止める同盟の目的は、清王朝から辛亥革命によって中華民国に移行した中国にも様々な影響を及ぼした。同盟破棄から1世紀近くたった今、中国が日英の関係強化に着目するのは、そうした理由がある。しかも日英、日米が意識しているのは今やロシアではない。台頭する中国である。

テレビ方式による日英外務・防衛担当閣僚協議で手を挙げる茂木外相㊧と岸防衛相(2月3日)=AP
バイデン政権はトランプ前政権と異なり、同盟重視の立場である。深まる日英関係が日米同盟を補完する新たな「準同盟」色を強め、さらに中国けん制の枠組みである米国、日本、インド、オーストラリア4カ国による首脳会談などに英国も加われば、中国として身動きが取りにくくなる。これは新型コロナウイルス禍で激変した後の新しい国際秩序を巡る前哨戦でもある。

一方、中国が経済安全保障の絡みで気にしているのは、英政府によるTPP加盟申請を日本が歓迎したことだった。TPPが18年に発効して以来、新たな加盟申請は初めてだ。

バイデン政権は簡単にはTPPに戻る選択肢を取れない。これは中国のアジア太平洋戦略に有利だ。だが、代わりに英国の参加が先に認められれば交渉戦術上、中国は手詰まりとなりかねない。英国の時ならぬ「脱欧入亜」は中国の鬼門なのだ。

中国としても手をこまねいているわけではない。貿易関係者は「それなりの布石は打っている。カギはニュージーランドだ」と指摘する。1月下旬、中国はTPP参加国であるニュージーランドと自由貿易協定の改定に署名した。ニュージーランドは米国主導の「ファイブ・アイズ」の一員で、中国と鋭く対立してきたオーストラリアともかなり歩調を合わせてきた。

ところが中国は過去の行動は問わず、ニュージーランドを引き寄せようと動き始めた。中国が将来、TPP参加を申請する際、その助けが必要になる。ニュージーランドはTPPに発展した原協定の4当事国の一つで、現在も大きな役割を担う。英国が2月1日に加盟意思を通知した寄託国もニュージーランドだ。中国は、米中対立の仲介者としても期待できるとみている。

 中英関係は「自由落下」

中国の習近平国家主席は2016年2月19日、人民日報、新華社、中央テレビを視察した(中国中央テレビの映像から)
我が国と英国の関係は遮るものがない自由落下(フリーフォール)の状態だ――。中国ではインターネット上の言論でも英国との歯止めのない関係悪化が話題だ。最近、取り上げられたのは、英国のメディア規制当局が、中国国営中央テレビの英語放送、CGTNについて英国内での放送免許を取り消したニュースである。実質的に中国共産党の管理下にあることが理由だった。

問題の伏線は5年前にある。習近平は2016年、中央テレビを視察し、公の場で「メディアは共産党を代弁すべきだ」と党への忠誠を求めた。かつてない強いメディア統制には党内からも「メディアは大衆の利益を代弁すべきだ」という反発が出たが、すぐに圧殺された。

CGTNは習が「党を代弁せよ」と発破をかけた後、1年もしないうちに中央テレビの各組織を統合、強化して設立された対外宣伝部門といえる。これを民主主義国家がどう扱うべきなのかは難しい。

そもそも中国は自国内で米欧メディアの視聴、閲覧や外国製対話アプリの使用を厳格に規制している。米企業が運営する最近、話題の音声SNS(交流サイト)「クラブハウス」もまさに8日、中国本土で利用できなくなった。

米国のトランプ前政権も20年、CGTNなどを「中国共産党のプロパガンダ機関」と認定したうえで報告義務を課し、米国内の中国人社員の人数削減を求めた。

香港市民の「英国海外市民(BNO)」旅券(左)と香港特別行政区旅券=共同

これに先立ち、英政府は香港市民に英国市民権を獲得する道を開く特別ビザの申請受け付けを始めた。中国返還前に生まれた香港市民が持つ「英国海外市民(BNO)旅券」の保持者とその家族が対象だ。英側によると香港の人口の4割弱にあたる約290万人がBNOの資格を持つ。

中国が、香港返還時の公約を反故(ほご)にする香港国家安全維持法を施行し、民主派に圧力を加え続けているのが理由である。中国外務省の副報道局長、趙立堅は記者会見で「香港の人々を2等英国民にしようとするたくらみだ」と反発し、BNO旅券をパスポートや身分証として認めないと述べている。

 対米関係はなお膠着

米国務省で外交について演説するバイデン大統領(2月4日)=AP
バイデンは7日放送の米CBSテレビのインタビューで実現していない習近平との電話協議について「話すべきことはたくさんある」としながらも「彼を形づくるもののなかに民主主義は含まれていない」と突き放した。米国務長官のブリンケンは5日、中国外交トップ、楊潔篪(ヤン・ジエチー)との初めての電話協議で台湾、ウイグル、チベット、香港などの各問題で中国に厳しい姿勢を示している。

中国外交トップの楊潔篪氏(2018年11月、ワシントン)=AP

バイデン当選以来、中国はあらゆるパイプを通じて対米関係の打開を探ってきたが、現状は道半ばだ。中国としてもバイデン政権が習近平の顔を十分、立ててくれるメドが付くまで簡単に妥協できない。まだまだ米中関係に楽観的な見通しは持ちにくい。

そこで中国は大方の予想に覆す先手を打った。20年末のEUとの投資協定の基本合意である。バイデン政権発足前に米国と欧州の間の大西洋に楔(くさび)を打ち込んだのだ。しかし見落としていた点があった。そのEUから完全離脱した英国の素早い動きである。世界を股にかけた玉突きゲームはめまぐるしい。当面、英国の「脱欧入亜」の行方から目を離せない。(敬称略)

中沢克二(なかざわ・かつじ)
1987年日本経済新聞社入社。98年から3年間、北京駐在。首相官邸キャップ、政治部次長、東日本大震災特別取材班総括デスクなど歴任。2012年から中国総局長として北京へ。現在、編集委員兼論説委員。14年度ボーン・上田記念国際記者賞受賞。
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英、TPP参加を申請 春から本格交渉へ

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR016240R00C21A2000000

『【ロンドン=中島裕介】英政府は1日、環太平洋経済連携協定(TPP)への参加を正式に申請した。発足11カ国以外の国で初めての参加申請となる。春ごろに本格的な交渉に入る方針だ。

英政府はTPPの事務局機能を担う寄託国のニュージーランドに、参加の意思を通知した。英国が参加すると世界の国内総生産(GDP)に占めるTPP参加国の比率は13%から16%に高まる。英政府によると、2019年時点での英国とTPP11カ国との貿易額は1110億㍀(約16兆円)で、ここ10年間で7割増となっている。

申請に合わせて、トラス英国際貿易相が1日、輪番議長国を務める日本の西村康稔経済財政・再生相やニュージーランドのオコナー貿易・輸出振興相とオンライン協議し、今後の交渉の進め方などについて意見交換した。トラス英国際貿易相は協議後、ツイッターにTPP参加について「英国を世界の成長の中心に置くことができる。英国全土に質の高い雇用を創出する」と投稿した。加藤勝信官房長官は1日の記者会見で「TPPのルールを世界に広めることは大きな意義がある」と語った。

英国は20年末に欧州連合(EU)離脱の激変緩和のための移行期間が終了し、EUを完全に離脱した。1月1日には日本との経済連携協定(EPA)を発効させるなどEU域外との独自の通商協定の交渉を進めている。TPPはその中の目玉協定となる。

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