エルサルバドル、ビットコイン決済拒否も 通貨名ばかり

エルサルバドル、ビットコイン決済拒否も 通貨名ばかり
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN240W50U2A820C2000000/

 ※ 結局、「通貨」の要諦は、「信用」だ…。

 ※ だれが、「ドンドン価値が下がっていく(or この先、下がることが見込まれる)通貨」を保有したり、使ったりするかね?

『【サンサルバドル=清水孝輔】中米エルサルバドルで2021年9月7日に世界で初めて法定通貨に採用した暗号資産(仮想通貨)ビットコインの普及が遅れている。国民は従来の法定通貨である米ドルを決済手段として使い続けており、1年たっても多くの店舗がビットコインに対応していない。法定通貨とは名ばかりの実態が浮き彫りになっている。

「ビットコイン?もう使えないわ」。首都サンサルバドル中心部にある携帯電話店。従業員のサンドラ・バケラノ(50)さんはこう言うと、店内の張り紙をはがし始めた。張り紙には「ビットコインで支払えます」と書かれている。法定通貨になったときに受け取りを始めたが、利用者が少ないため数カ月前に対応をやめた。

エルサルバドルの携帯電話店は以前ビットコインの支払いに対応していた(21年12月、首都サンサルバドル)

エルサルバドルは21年9月7日に発効した「ビットコイン法」でビットコインを法定通貨と位置づけた。同法は顧客がビットコインでの支払いを希望した場合、店舗は原則として拒否できないと定めている。税金もビットコインで支払える。従来の法定通貨であるドルと併用している。

【関連記事】中米エコノミスト「エルサルバドル、債務リスクが拡大」

ビットコインを法定通貨にした後も、商品やサービスの価格はドルに基づいている。商品の値札に書いてあるドルの価格は変わらず、決済時の交換レートに応じてビットコインで支払う金額が決まる仕組みだ。例えば1ビットコインが2万ドル(約280万円)のときに1ドルの商品を買うと、スマートフォンアプリを通じて0.00005ビットコインを支払う。

小規模な店舗の多くは1年たってもビットコインの決済に対応していない。法律が義務付けていても、実際には政府が店舗にビットコインの受け取りを強制していないからだ。エルサルバドルのルース・ロペス弁護士は「ビットコインでの支払いを拒否して罰則を受けた事例はない」と指摘する。

エルサルバドル商工会議所が3月に公表したリポートによると、法定通貨になってからビットコインで支払いを受けたのは調査対象の企業の14%にとどまった。全米経済研究所(NBER)による1800世帯を対象とした調査では、税金の支払いにビットコインを使ったのはわずか5%だった。

普及が進まない背景にはビットコイン価格の下落がある。米連邦準備理事会(FRB)が金融引き締めに乗り出し、ビットコイン価格は足元で2万ドル以下と直近ピークの21年11月に比べて7割落ち込んだ。足元の価格が低迷しているため、高値で買ったビットコインで支払うのは損だという考えが消費者に広がっている。

衣料品店を営むフレディ・ランダべルデさん(45)は受け取ったビットコインをすぐにドルに替えている(首都サンサルバドル)

ビットコインに対応している店側も、急激な価格変動に苦慮している。サンサルバドルで衣料品店を営むフレディ・ランダべルデさん(45)は「ビットコインを受け取ったらすぐにドルに替えている」と話す。法定通貨になる前からビットコインを取り入れてきたビーチでレストランを営むフリオ・マルティネス(40)さんは「ビットコインの場合は20%上乗せした金額をお願いしている」と打ち明ける。

エルサルバドル政府は決済インフラの整備を急いできた。専用のスマートフォンアプリ「チボ」を用意し、ビットコインとドルを両替するためのATMも設置した。政府が1人当たり30ドル相当のビットコインを配ったことで、チボは急速に普及した。ところが多くの国民は30ドルを使い果たすと、アプリから離れていった。

米ドルとビットコインを両替できるATM(首都サンサルバドル)

エルサルバドルは外国に住む出稼ぎ労働者からの送金が国内総生産(GDP)の2割超に相当する。政府は専用アプリを通じてビットコインを送れば手数料や受け取る手間を減らせると訴えてきた。だが同国の中央銀行によると、1~7月には外国からの送金額のうちビットコインの比率は1.7%にとどまった。

エルサルバドルの経済団体ANEPのエグゼクティブ・ディレクター、レオノル・セルバ氏は「ビットコイン法の実態は外交政策だ」と訴える。ブケレ大統領はツイッターでビットコインについて英語で発信し、人口約650万人の小国の国際的な知名度を高めた。法定通貨になった直後は世界各国から新興企業やメディアが相次ぎ調査に訪れた。

空港に飾られたブケレ大統領夫妻の写真

だが、この発信は既存の国際金融の枠組みにおいては通用しなかった。国際通貨基金(IMF)はビットコインを法定通貨にしたエルサルバドルに反発し、同国が13億ドルの新たな融資を受ける交渉が停滞している。同国は総債務残高がGDPの9割に迫り、米格付け会社は信用格付けをデフォルト(債務不履行)の一歩手前まで引き下げている。

在エルサルバドル日本国大使館の7月時点の試算によると、政府はビットコイン購入で約5900万ドルの含み損を抱えている可能性がある。中米のシンクタンクICEFIのシニアエコノミスト、リカルド・カスタネダ氏は「ビットコインの実験が成功すればブケレ大統領の成果だ。だが失敗すれば犠牲になるのは税金を払う国民だ」と指摘する。

【関連記事】

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・エルサルバドル、「ビットコイン都市」建設を表明 』

デジタル円、23年度にも実験最終段階 決済効率に期待

デジタル円、23年度にも実験最終段階 決済効率に期待
解剖フィンテック 攻防CBDC(3)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB171UR0X10C22A7000000/

『クレジットカードで最長1カ月程度かかっていたお店への着金期間がゼロに――。中央銀行デジタル通貨(CBDC)を使う世界では、お店で買い物をするとき、現金と同じように支払いと同時に着金できる。決済効率が上がり、お店側の資金の流動性が高まる。利用者にとっても送金などの費用が安くなることが期待できる。

新興国だけでなく、欧米も導入にアクセルを踏み始めたCBDC。日銀も現在、実証実験を進めている。第1フェーズでは発行や流通といった基本的な機能を検証し、4月に始まった第2フェーズでは自動送金予約などのサービスが機能するか検証する。早ければ来年度にも、民間事業者や消費者らが参加する最後の第3フェーズに入る。

日銀はCBDCについて、全ての機能を中銀が提供するのではなく、中銀と民間による「二層構造」を想定する。日銀は現金のやりとりを電子に置き換え、インフラ部分を整備する。一方、預金口座の管理や決済などは民間が主導権を握る見通しで、クレジットカードや「○○ペイ」などを介して買い物をする今の構図と大きく変わらない。

CBDC導入の利点の一つは決済の効率化だ。各中銀は、現金と同じ機能をデジタルで実現することを狙いとしており、買い物時に即時着金できるシステムをつくる。即時着金ならお店側に売掛金が発生せず、資金の流動性が高まる。決済効率化以外にも、民間主導でイノベーションが進めば生体認証で決済ができる未来も開ける。

特定のプログラムを組み込む「プログラマブル」な決済機能も整備されるとみられる。商品が納入された時点で自動的に決済が完了したり、電気自動車(EV)の充電ができるようになったりする仕組みも想定される。

もっとも、CBDCの導入はまだ決まってはいない。「改めて申し上げるが、日銀はCBDCを発行するか否かについて、決定していない」。4月、CBDCの官民協議会の冒頭、日銀の内田真一理事は強調した。

「CBDCを発行するとすれば」「CBDCが存在する、あるいは存在しない決済システムの将来像」――。いずれも内田理事がこれまでの協議会で掲げた講演タイトルだ。「最近、新たな日銀文学が生まれたんです」。出席したマネーフォワードの瀧俊雄フィンテック研究所長はこう話す。景気や物価の判断を示す際に日銀が用いる難解な表現になぞらえた。

2021年の日本のキャッシュレス比率は3割で、5割前後かそれ以上の海外に見劣りする。高齢者らを中心に現金信仰はいまだ根強い。CBDCは年齢や国籍、性別を問わず利用できるが、過度な匿名性を与えればマネーロンダリング(資金洗浄)や脱税などを助長しかねない。

そんななか、世界各国が導入に向けた動きを速めている。中国のデジタル人民元や暗号資産が国内で大々的に流通する事態になれば、日本の通貨の影響力は大きく低下する。「CBDCの導入には通貨主権を維持し、日本にとって望ましい通貨体制を維持する目的もある」。自民党のデジタルマネー推進PTで座長を務めた村井英樹首相補佐官は指摘する。

村井氏は「第2フェーズが終わりに近づく22年末ごろには日本版CBDCの姿が見え始める」と語る。最大の課題は国民合意を得ることだ。法改正やシステム整備にも時間がかかり、政府が導入を正式に決めても「実際の導入には少なくとも数年かかる」(日銀関係者)。

貝や石から金属、紙へと通貨は時代に応じてその姿を変えてきた。デジタル化の進展に伴い、通貨がデジタルに移行するのは歴史の必然ともいえる。CBDCが普及する未来はゆっくりと、しかし着実に近づいている。

(三島大地)』

デジタル通貨で中国足踏み 開発着手8年、なお実験続く

デジタル通貨で中国足踏み 開発着手8年、なお実験続く
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM0513Y0V00C22A5000000/

 ※ 通貨の基本は、「価値」の尺度、運搬、保存、さらには創造だ。

 ※ これが、「デジタル通貨」ということになれば、ハッキング、大規模電力・ネットワーク障害、プライバシーの問題も抱え込むことになる…。

 ※ どこの国の中銀も、「研究」は怠りなくやってるだろうが、「導入」となれば、二の足を踏んで、お互いの顔色を窺っているだけだろう…。

『中国人民銀行(中央銀行)が発行するデジタル人民元が実験の場を広げている。今春から試験地域を23へと倍増させ、日常の買い物や公共料金の支払いなど市民がお試しで使える機会を広げる。ただ開発着手から8年、最初の実証実験から1年半余りがたっても正式発行への道のりは見えない。課題を探ると「スマートフォン決済先進国」の悩みも透けて見える。

「近所の飲食店でデジタル人民元を使えたよ。今までのスマホ決済と変わらないね」。福建省の省都、福州市で食品メーカーを経営する林さんはこう話す。

人民銀は3月末に開いた会議で、デジタル人民元の実験都市の拡大を決めた。同市のほか、天津市や重慶市、浙江省杭州市が選ばれた。

人民銀は2014年、中銀発行のデジタル通貨(CBDC)を研究する組織を立ち上げた。20年10月の広東省深圳市を皮切りに各地で市民が参加する実証実験を重ね、21年末までに単純計算で総人口の2割に達する延べ2億6100万人がアプリ上で個人用の財布をつくった。人民銀関係者は「決済情報の処理速度など、課題は解決してきた」と胸を張る。

ただ「北京五輪後にも」との見方もあった正式発行に向けたスケジュールは見えてこない。

福州市の林さんが語ったように、既存のアプリ決済との違いを実感できないことが一因だ。にせ札被害が多かった中国では、スマホ決済が浸透してきた。ウィーチャットペイ(微信支付)やアリペイ(支付宝)などが、小売決済の8割超を占めるとの試算もある。

デジタル人民元の強みはある。一つは決済手数料の軽減だ。民間のスマホ決済とは異なり、デジタル人民元の支払いでは小売店側に手数料はかからない。決済機器には近距離無線通信規格「NFC」を使った支払い機能があり、通信が途絶する災害時でもスマホと決済機器を接触させれば支払いが終わる。

問題はこれらの魅力が、慣れ親しんだスマホ決済から切り替えるほど大きくないことだ。人民銀も3月末の会議で、便利さや革新性を目立たせることを課題に挙げた。

デジタル人民元は、米国と対峙する中国の国家戦略に欠かせないツールの一つとされる。欧米はウクライナに侵攻したロシアに対し、ドルやユーロの決済網からの排除を経済制裁の柱にした。中国が経済安全保障を意識するなら、海外との資金規制を緩めてデジタル人民元を決済通貨として普及させるなど、人民元の国際化はより重要になる。

習近平(シー・ジンピン)指導部は、秋の共産党大会を控えて経済社会の安定に重きを置く。新たなデジタル決済で混乱を招くことは避けるはずで、国務院(政府)関係者は「主要国に先駆けて研究してきた中国が焦る必要はない」と話す。

国家戦略の成否は、民間に勝る使い勝手の良さやお得感を生み出せるかにかかっている。(北京=川手伊織)

日本、導入時期を明示せず

日本でも日銀がCBDCの実証実験を進めている。一部の新興国は正式導入に踏み切っており、デジタル通貨に詳しい麗沢大の中島真志教授は「日本でも、実現は10年後といった悠長な議論ではないはず」と話す。

日銀は2020年にCBDCの検討を始めた。3段階に分けて進めており、今年3月には発行や送金など通貨としての基本的な機能の検討を終えた。その後、保有額の制限や取引回数、取引額などを検証する第2段階に入っている。

CBDCは紙幣や硬貨の発行コストをなくせるほか、犯罪につながる取引の履歴を追いやすいといったメリットがある。一方で取引記録が中央銀行に管理されることはプライバシーの侵害につながると懸念がある。ネット通信がない環境でも決済できるか、銀行を中心とした既存の金融システムを崩さないかなど論点は極めて多い。

カンボジアやバハマは20年に実用化のテストを終え、正式導入に踏み切った。欧州は26年の導入に向けて検討しており、米国は22年に意見公募を実施した。日銀は発行時期を未定としおり、中島氏は「日本の検討は遅くはないが、導入を前提とする欧州と比べると今後は差が出る可能性がある」と話す。(丸山大介)

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・ドル支配とデジタル人民元 カンボジアが挑む通貨独立
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日銀が実験スタート よく分かる「デジタル通貨」
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柯 隆
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ひとこと解説

中国で人民元デジタル化の実験が足踏みになっているのは、技術の問題ではない。とりわけ、既存のスマホ決済と競合するため、利用者からすれば、すでに慣れているスマホ決済をやめて、デジタル人民元に乗り換えていく蓋然性はほとんどない。どんなに優れた技術を発明しても、最終的にそれを利用するかどうかは市場が決める
2022年7月22日 8:36 』

デジタルドル「開発に数年必要」 米財務長官

デジタルドル「開発に数年必要」 米財務長官
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN07EXX0X00C22A4000000/

『【ワシントン=高見浩輔】イエレン米財務長官は7日の講演で「デジタルドル」と呼ばれる中央銀行デジタル通貨(CBDC)について「発行にはおそらく数カ月ではなく、数年の開発期間が必要になる」と話した。実際に導入するかどうかの判断は、ドルの国際的な地位を高めるかどうかによるという認識も示した。

仮想通貨などデジタル資産全般の技術革新や規制の在り方を巡って講演し、その中で米国版のCBDCに言及した。

イエレン氏はまず基軸通貨であるドルの地位が米国の政策や市場規模などに支えられているという前提を置き、それが経済や国家安全保障の面で重要な利益をもたらしていると指摘した。そのうえでCBDCの研究開発を加速するよう指示した3月の大統領令について「CBDCがこの(ドルの)役割を支援するかどうか、またどのように支援するかを考えるよう求められている」と説明した。

イエレン氏は開発には各国間の連携が必要になるとの見方も示した。CBDCが既存の国際的な決済システムを分断しないように気をつける必要があるとして「技術革新には国際的な協力が不可欠だ」と指摘した。』

エルサルバドルのビットコイン通貨、IMFが見直し要求

エルサルバドルのビットコイン通貨、IMFが見直し要求
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN2602P0W2A120C2000000/

『【メキシコシティ=清水孝輔】国際通貨基金(IMF)は25日、中米エルサルバドルに対し、暗号資産(仮想通貨)のビットコインを法定通貨にした2021年9月の決定を見直すように求めたと発表した。IMFはエルサルバドルが22年中に発行する予定のビットコインと連動した国債についても懸念を示した。

IMFは24日の理事会で、21年9月に世界で初めてビットコインを法定通貨に採用したエルサルバドルについて議論した。出席した理事は「金融の安定や消費者保護に大きなリスクがある」と指摘し、ビットコインを法定通貨から外すように関連法を修正するように求めた。

エルサルバドル政府は店舗などでビットコインを使って支払いができる専用アプリを導入している。IMFの理事はこのアプリについて低所得者層の金融アクセスを高める可能性があると一定の理解を示したが、運用については「厳しい規制が必要だ」と指摘した。

エルサルバドルのブケレ大統領は21年11月に戦略都市「ビットコインシティー」を建設する計画を表明した。22年中に10億ドル(約1140億円)分の10年債を発行し、半分を建設に投じる方針だ。残りの半分はビットコインに投資し、値上がりによる利益を得たい考えだ。IMFはこの計画に対してもリスクが高いと懸念を示している。

IMFはこれまでもエルサルバドルがビットコインを法定通貨にする政策に対して懸念を表明してきた。IMFは22年の実質経済成長率が3.2%にとどまると予測している。エルサルバドルで現在の政策が続くと、債務残高が国内総生産(GDP)比で96%に達する可能性があるという。

ビットコインの価格は24日に一時3万4000ドルを下回り、21年11月中旬の半分程度の水準まで落ち込んだ。エルサルバドル政府は法定通貨にしてからビットコインを購入しており、ブケレ氏は価格が下がった1月下旬にも新たに追加購入したことを明らかにしている。

南太平洋のトンガの政治家は1月上旬にツイッターでビットコインを法定通貨にする計画を示した。パナマでも政治家が21年9月に仮想通貨の利用を推奨する法案を明らかにしている。ブケレ氏は1月上旬、ツイッターへの投稿で「22年には2カ国がビットコインを法定通貨に採用するだろう」と述べた。

【関連記事】
・エルサルバドル、「ビットコイン都市」建設を表明
・[FT]エルサルバドル「ビットコイン債」 投資家は及び腰 』

「デジタルドル」出遅れ懸念 FRB、実現へ世論喚起

「デジタルドル」出遅れ懸念 FRB、実現へ世論喚起
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN2114O0R20C22A1000000/

『米連邦準備理事会(FRB)が「デジタルドル」の実現を見据え、じわりと前進し始めた。20日公表した報告書では想定される利点や課題を示し、一般からの意見公募や討論会を実施する方針を示した。民間デジタル通貨の普及や中国の発行計画が進むなか、米国が法定通貨ドルのデジタル化に出遅れれば世界の基軸通貨としての地位が揺らぎかねないとの焦りがにじむ。

中央銀行が発行するデジタル通貨はCBDCと呼ばれる。スマートフォンなどを使って決済や送金できる点は民間の電子マネーと同じだが、国が発行する通貨のため「いつでも、どこでも、誰でも使える」といった要件を満たす必要がある。

報告書ではデジタルドルが「決済システムの新たな基盤や、異なる決済サービス間の橋渡し役になりうる」と指摘した。民間デジタル通貨は利用できる店などが限られる場合がある。どこでも使えるCBDCが間に入ることで民間のデジタル通貨の利便性も上がり、技術革新を促進できるという発想だ。低所得層の金融サービスの利用機会拡大や国際送金の利便性向上といった利点も挙げた。

一方、報告書では実現に向けた課題やハードルも列挙した。

CBDCの利便性が高ければ銀行預金から資金がシフトする可能性がある。預金を融資などの原資とする銀行にとっては資金調達コストの上昇につながり、金融仲介機能の低下を招きかねない。ほかにも利用者のプライバシー保護や、マネーロンダリング(資金洗浄)など犯罪への利用防止、サイバー攻撃への対処など越えるべき壁はいくつもある。

それでもFRBが検討を進めるのは「通貨」をめぐる国内外の環境が急速に変化しているためだ。顕著なのが、法定通貨などを裏付けに発行することで値動きを安定させた仮想通貨ステーブルコインの市場膨張だ。コインマーケットキャップによれば、市場規模は1年前比約5倍の1600億ドル強になった。

FRBは「ステーブルコインの裏付け資産には価格が毀損しやすいものや流動性が低いものがある」とみて市場を通じた金融システムへの影響を懸念する。保有資産を担保にステーブルコインを借りたり、利回りと引き換えに同コインを貸し出すサービスを金融機関を介さずに提供する「DeFi(分散型金融)」の市場規模は1年前比約3倍の920億ドルを超えるまでに成長している。

金融機関も法人分野を中心にデジタル化を進める。米JPモルガン・チェースは2020年にデジタル通貨「JPMコイン」を実用化した。企業がブロックチェーン上でJPMコインを利用して国際決済・送金をできるようにした。米ウェルズ・ファーゴも同行内の口座間で資金を移動させられる「デジタルキャッシュ」を発行済みだ。

19年に米メタ(旧フェイスブック)が公表したデジタル通貨「リブラ(現ディエム)」の発行計画に対しては、国をまたぐ野放図な拡大を警戒した各国当局による包囲網を敷いた。だが「類似の試みは今後も出てくる」(国際金融筋)との見方が多く、国家が関与しない通貨圏の拡大は現実的な脅威になっている。

中国政府が「デジタル人民元」の開発を進めていることも米国が危機感を強める一因だ。22年の正式発行を目指し、国内での流通だけでなく他国との貿易決済や国際送金などへの展開も視野に入れる。欧州中央銀行(ECB)など他の中銀も準備を本格化させている。

日銀は現時点で具体的な発行計画を出していないが「発行しないことも大きなリスクになってきている」(関係者)として、世論や政府から導入を求める声が強まれば速やかに対応できるよう準備を進めている。

米国は覇権通貨ドルを抱え、世界中でドルが流通することで米国の個人、企業、政府が取引や借り入れにかかるコストを低く抑えられている面がある。敵対国のドル取引を絞るなど金融制裁にもドルの力を使っている。

FRBの報告書では、各国政府がデジタル通貨の開発・検討を進めるなか「これらのCBDCがドルよりも魅力的であれば、世界的にドルの使用が減少する可能性がある」と指摘した。米国もCBDCを発行することで「ドルの国際的な役割を維持するのに役立つかもしれない」としている。

FRB内では執行部メンバーのなかでも温度差があり、これまで慎重に検討する姿勢を貫いてきた。ただ、推進派のブレイナード理事がバイデン大統領から副議長昇格の指名を受け、現在は米上院の承認待ちになっている。ブレイナード氏が軸となり、CBDCの検討に加速感が出てくるかが焦点になる。

報告書では4カ月後の5月20日まで一般から意見を募るとしたが、ほかの具体的なスケジュール感は示さなかった。国民世論の盛り上がりを含め、実現には見極めるべき点もなお多い。(ニューヨーク=斉藤雄太、フィンテックエディター 関口慶太、南毅郎)』

FRB、「デジタルドル」で初の報告書 利害を意見公募へ

FRB、「デジタルドル」で初の報告書 利害を意見公募へ
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN070810X01C21A0000000/

『【ニューヨーク=斉藤雄太】米連邦準備理事会(FRB)は20日、中央銀行デジタル通貨(CBDC)に関する初の報告書を公表した。実現すれば個人や企業に安全な電子決済手段を提供できる半面、金融システムの安定やプライバシーの保護など課題も多いと指摘した。中国などで準備が先行し、民間のデジタル通貨も台頭するなか、基軸通貨を抱える米国も「デジタルドル」の検討を慎重に進める。

FRBは報告書の目的について「CBDCの潜在的な利点とリスクについて幅広く、透明性の高い対話を促進するためのものだ」と説明。「FRBによる発行の妥当性の決定が差し迫っていることを示唆するものではない」とも強調し、検討にはなお時間を要するとの考えも示した。

CBDCの利点やリスクなどに関する20以上の具体的な質問事項も用意し、5月20日までの4カ月間、一般から広く意見を募る。パウエル議長は声明で「一般市民や選ばれた代表者、広範な利害関係者との対話を楽しみにしている」と述べた。

報告書では、米国でCBDCを発行する場合の前提として「家計や企業などの経済主体にとってあらゆるコストやリスクを上回る利益をもたらす」ことを挙げた。現金や民間のデジタル通貨など現状の決済手段に置き換わるものではなく、補完するものになるとも指摘。主要な利害関係者から幅広い支持を得られることも必須とした。

発行した場合に想定される利点では、安全で信頼性の高い中銀発行の通貨がデジタル形式で流通することで、既存・新規の決済サービスの基盤になる可能性を挙げた。誰でも金融サービスにアクセスできる「金融包摂」に役立ちうるとも指摘。米国では約5%の世帯が銀行口座を持たず、その多くは低所得層とみられる。デジタル通貨は銀行口座を持たない人でもスマートフォンなどの機器を通じて電子的にお金をやり取りするため、支払いや送金といった金融サービスを利用できる人の裾野が広がる。

国際送金をより早く、低コストで実現するなど国境を越えた決済の利便性向上につながりうる点も指摘した。さらに覇権通貨ドルの地位を保つ重要性にも触れた。他国で利便性の高いCBDCが生まれれば、世界的にドルの利用が細り、ドルの国際通貨の役割が低下する可能性もあるとした。

一方、課題としては便利なCBDCが流通することで既存の銀行預金から資金がシフトし、銀行の資金調達コストが上がることで金融仲介機能が低下しうる点を挙げた。利用者のプライバシーの保護や、マネーロンダリング(資金洗浄)などの犯罪防止も重要になる。サイバー攻撃への対処など安全面でのハードルも高い。

FRBが慎重ながらもCBDC研究を進めるのは官民でデジタル通貨の開発競争が活発になっているためだ。中国人民銀行(中銀)は北京冬季五輪での実験や法整備などを経て、2022年中にもデジタル人民元を正式発行する方針だ。欧州中央銀行(ECB)は昨年、デジタルユーロの発行に向けて2年間の調査を進めると表明した。日銀もシステム上で資金移動が円滑にできるかを確かめる実証実験を始めている。

ドルなどの法定通貨や金融資産を裏付けに価格の安定をめざす「ステーブルコイン」やビットコインといった暗号資産(仮想通貨)の取引も急速に伸びている。こうした通貨・決済をめぐる急激な環境変化がFRBの背中を押している。

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楠正憲
デジタル庁統括官 デジタル社会共通機能担当
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ひとこと解説

前のめりでの市中実証が進む中国、着実に研究成果を発表してきた日欧に対して長らく米FRBはCBDCへの態度を明らかにしていませんでした。

これはCBDCを取り巻く議論が中央銀行による電子マネーの発行というよりは、米国の軍事力と経済力を背景としたドル基軸通貨体制の次を模索する営みだったからです。

米国の背中を窺い覇権を狙う中国、多国間の国際金融秩序を打ち立てたい日欧に対して、米国はより難しい立場に立たされていました。今のところ消費者向けCBDCが必要か定かではありませんが、越境決済の高度化や、キャッシュレスに取り残された人々にどう手を差し伸べるかは大きな課題です。

FRBによるレポート本文はこちら
https://www.federalreserve.gov/publications/files/money-and-payments-20220120.pdf
2022年1月21日 7:54 (2022年1月21日 7:56更新)
伊藤さゆりのアバター
伊藤さゆり
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 研究理事
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ひとこと解説

昨年10月に2年間の調査段階に入ったデジタル・ユーロ。
今月18日の閣僚理事会で承認されたユーロ圏の経済政策に関わる文書には、欧州委員会が導入に必要な法整備に係る提案を行う方針であることが記載されています。

デジタルユーロ導入のベネフィットとして、経済のデジタル化の支援、リテール決済のイノベーションの促進に加えて、ユーロの国際化、そしてEUの最近のキーワードとなっている「戦略的自立」にも貢献することを挙げています。

導入を前提とした議論が前進しているように思います。

2022年1月21日 7:42 (2022年1月21日 9:21更新)
上野泰也のアバター
上野泰也
みずほ証券 チーフマーケットエコノミスト
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ひとこと解説

FRBによる今回の中央銀行デジタル通貨(CBDC)に関する報告書は、メリットとデメリットの両論を併記した上で、一般から意見を求める体裁である。

これは、FRB内部にこの問題について温度差があることの表れでもある。

仮に、個人がFRBに直接口座を保有する形になりそれが普及すれば、マイナス金利の適用を含め、金融政策の「切れ味」は格段に良くなる。

だが、そうしたCBDCは民業を圧迫する可能性が高い上に、個人情報保護の観点から問題含みである。

中国やユーロ圏などの動きもにらみつつ、米国はそろりそろりと対応を進めていくのだろう。結局、今回の報告書にもある通り、CBDCはあくまで「補完」的な存在にとどまるとみる。

2022年1月21日 8:20

蛯原健のアバター
蛯原健
リブライトパートナーズ 代表パートナー
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今後の展望

FRB副議長であり昨年の人事では議長候補として有力視されていたブレイナード氏はデジタルドルの実現は「急務」であると複数回に渡り公言している。

理由としてはこの分野における中国との競争を挙げている。内部で議論があるのは当然であろうし、このような慎重な物言いは同局の対話方式の伝統にて、それは意訳するに積極的に検討研究をしているとも解釈できるのではなかろうか。

いずれにせよ時間軸の問題であってフィアット通貨のDXたるCBDCはいずれは米国含めて各国で実現していくと考えるのが論理必然ではなかろうか。

2022年1月21日 7:49

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柯 隆
東京財団政策研究所 主席研究員
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分析・考察

民主主義の国では、ルールが決まるまで、走っていけない。

それに対して、中国では、ルールよりも、とにかく転んでもいいが走る。だから中国はさきがけでデジタル人民元を実験している。

FRBが心配しているのは、金融システムの安定性やプライバシーの保護であるが、おそらく中国人民銀行が一番心配するのはキャピタルフライトではないだろうか。

中国のデジタル人民元のスキームは簡単に越境できないものにするだろう。

なお、プライバシー侵害云々について、贈収賄を撲滅できるという論法で一部の人民の支持を得ることができるはず

2022年1月21日 7:48 』

ベストプラクティスからみるバハマとカンボジアのCBDC導入戦略

ベストプラクティスからみるバハマとカンボジアのCBDC導入戦略
(2021年8月30日)
https://www.jetro.go.jp/biz/areareports/2021/93af43aeec2839e7.html

『 中央銀行デジタル通貨(CBDC)の発行について、世界的に議論が進められている。中でもバハマとカンボジアは、世界に先行して2020年にCBDCの運用を開始した。大半の国々がCBDC導入について検討段階にあるなか、いち早く導入を開始したカンボジアとバハマにはどのような狙いがあったのか。共通点は決済機能への課題に対する1つの処方箋が早期のCBDC導入だったことだ。

世界に先駆けてCBDCを導入したバハマとカンボジア

CBDC導入の検討や実証実験が世界的に進められている現在、米国アトランティックカウンシルによると、2021年8月時点でCBDCを立ち上げた国はバハマ、グレナダ、セントクリストファー・ネイビス、アンティグア・バーブーダ、セントルシアの5カ国だとされている。バハマは、同国の法定通貨であるバハマドルのデジタル版として「サンドダラー」の運用を2020年10月に開始した。グレナダ、セントクリストファー・ネイビス、アンティグア・バーブーダ、セントルシアは、「Dキャッシュ」を2021年4月に発行した。Dキャッシュは、東カリブ通貨同盟の共通通貨である東カリブドルのデジタル版であるが、東カリブ通貨同盟加盟8カ国のうち、現在は先述の4カ国に限定して試験的に運用されている。バハマを含めたこれら5カ国で共通する目的は、「金融システムの効率化」と「金融包摂」だ。また、アジアに目を転じてみると、同様の問題意識の下での取り組みで、カンボジアが「準CBDC」とも呼ばれる決済システム「バコン」を2020年10月に運用開始した(注1)。

本稿では、先駆的な取り組みをしているバハマとカンボジアに焦点を当てて、両国のCBDC導入の背景と戦略について考察する

サンドダラーとバコンの仕組み

サンドダラーはバハマドル、バコンは現地通貨リエルと米国ドルにそれぞれ対応している。サンドダラーやバコンは、利用者が指定金融機関の専用アプリをモバイル端末にダウンロードして使う(注2)。QRコード決済などでCBDC利用加盟店での支払いが可能なほか、個人間の国内送金も可能だ。さらに、銀行口座を保有していなくても、CBDC専用デジタル口座の作成と利用ができる(注3)。一般的なキャッシュレス決済の場合はキャッシュレス決済事業者経由で入金されることになり一定の時間を要するが、CBDCでの支払いや送金は瞬時に現金と同じく取引ができ売上金が入手できるのが違いだ。なお、サンドダラーもバコンもどちらも国内のみの流通で、海外送金などはできない。

サンドダラーもバコンも、基盤技術にブロックチェーン(分散型台帳)技術を採用している。ブロックチェーン技術は、暗号化された取引データがネットワークに接続した複数のコンピュータ間で検証しあいながら共有され、合意された過去の取引データの集合体がチェーン上に記録されているものだ。そのため、セキュリティー面ではデータの改ざんが難しいとされ、中央管理者がおらず分散的に運用されているうえ、ネットワーク上の複数のコンピュータが取引データを確認・合意するために送受信するので、システムダウンが起こりにくいとされている。

災害対策の着想から金融包摂まで

バハマ中央銀行のジョン・ロール総裁は2021年3月、IMFの動画インタビュー外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで「はじめからCBDCの発行を目的としていたわけではなかった。銀行口座やモバイル口座を保有する人たちが取引するうえでの障害を可能な限りなくすことに力を注いだ」とCBDC発行の動機を述べた。同国では度々、ハリケーンによる災害に見舞われ、決済システムの断絶や金融機関店舗やATMの破壊などで大きな損害を出してきた。通貨と決済のデジタル化で、自然災害によるインフラ破壊で受ける被害の影響を最小限に抑え、災害後の決済システムの迅速な復旧が可能になるとされている。また、バハマは700以上の島から成る島国のため、現金の輸送に船などを使う必要があり、現金の流通コストが高かった。また、銀行の支店がすべての島にあるとは限らず、島民の金融アクセスに課題を抱えていた。デジタル通貨の発行により、決済システムのデジタル化、インフラ整備、金融サービスのアクセス改善、金融取引コストの節約、そして、金融システムの効率化をめざしている。

IMF外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると、2021年3月時点でのサンドダラーの流通は約13万ドルにとどまるが、利用者の反応は上々だという。また、新型コロナウイルスの影響で生活様式が非接触型にシフトしたことも、今後さらにサンドダラーの普及を後押しするとみられている。

カンボジア独自の課題はドル化にあり

カンボジアにおいても、バハマと同様に、金融システムの効率化やそれに伴う決済手段のデジタル化が求められる環境にあった。さらに同国の場合、ドル化への対策も目的の1つに含まれていた。カンボジアでは、1970 年から 1993 年まで続いた内戦により、国内政治経済の混乱が続き、自国通貨への信認が低下したことや復興援助により外貨が流入したことなどが影響し、自国通貨リエルよりも米国ドルの流通が進行する通貨代替が発生。いわゆる「ドル化」経済と呼ばれる状況となった(図1参照)。ドル化が進んだ経済では、自国の金融政策手段が限定的になり、政策のかじ取りが困難になる。新聞報道などはもとより、同国の中央銀行であるカンボジア国立銀行やIMFなどの国際機関が発行する数々のレポート外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますでも取り上げられてきたように、ドル化の是正は、政府にとって長年腐心してきた重要な政策課題である。金融包摂や金融システムの効率化といった目的に加え、バコンの流通による自国通貨利用の向上にも期待が高まっている。

図1:カンボジアの外貨預金比率

2013年95.60%、2014年95.81%、2015年94.80%、2016年94.08%、2017年94.07%、2018年93.86%、2019年93.78%。外貨預金額は2013年28876(10億リエル)、2014年38064(10億リエル)、2015年43934(10億リエル)、2016年52404(10億リエル)、2017年65553(10億リエル)、2018年83231(10億リエル)、2019年93631(10億リエル)。自国通貨預金額は、2013年1328(10億リエル)、2014年1663(10億リエル)、2015年2412(10億リエル)、2016年3296(10億リエル)、2017年4132(10億リエル)、2018年5446(10億リエル)、2019年6210(10億リエル)。

出所:カンボジア国立銀行

バコンは、日本のブロックチェーン企業ソラミツが、カンボジア国立銀行と共同で開発した。ソラミツの宮沢和正代表取締役社長は2021年3月、国際通貨研究所の講演外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで、カンボジアがスピーディーにバコンを導入した目的として、同国はスマートフォン普及率の高さがあったゆえにキャッシュレス事業者が乱立して相互運用性が無かったこと、決済手数料や加盟店手数料が高かったこと、決裁事業者の倒産・不正リスクが高かったことなどから、同国が決済システムに大きな課題を抱えていたことにある、と述べた。また、これらの問題を既存の銀行ネットワークを使って対応することは、決済事業者へのシステム対応やコンプライアンスコストの負担が大きく、CBDC導入による決済システムの相互連結が図られることになったという。

バコンの立ち上げを先導してきたカンボジア国立銀行のチア・セレイ統括局長は、2021年6月に行われたハイパーレジャーグローバルフォーラム2021外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで「バコンアプリのダウンロード数はおよそ10万ダウンロードを数え、間接的な利用者も含めると500万ユーザーに上る」と述べた。また、今後はクロスボーダー取引も視野に入れており、マレーシアの金融機関とその可能性について検討段階にある、と言及した。さらに、国民識別番号・IDとバコンをひもづけて、データを管理・活用する構想も持っていることを示唆した。

カンボジアでCBDCのスムーズな普及を後押ししたもう1つの大きな要因として、「リープフロッギング」(注4)があげられるだろう。先進国では、金融インフラ網が発達していることが現金流通において適した環境をもたらしているが、逆に、新たなデジタル技術導入の足かせになっている面がある。これまで構築してきたシステムの回収にかかるコストや人々の習慣の変化によって生じるコストが大きいためだ。

他方で、カンボジアのような国では、こうしたインフラ普及が進んでいなかったことから、先進国と同じインフラ整備を目指すよりも、一足飛びにCBDC導入を躍起としたデジタル化に向かう方が、コストも節約しながら最新技術を取り入れることができる。世界銀行のデータによると、成人10万人当たりのATM台数(2019年)は高所得国平均(65.2台)に比べて、カンボジアでは23.3台と低い(図2参照)。他方、人口100人当たり携帯電話加入数(2019年)はカンボジアが129.9台で、高所得国平均129.8台と同様の水準だ(図3参照)。モバイル普及率が高かったことで、モバイル決済が可能なCBDCを受け入れる素地があり、利用者の生活様式になじみやすかったことも功を奏した。そのような背景から、さらなる金融包摂を進めるため、CBDC発行により、モバイルバンキングの口座開設やモバイル決済のさらなる普及などで金融アクセスの向上が期待される。

図2:成人10万人あたりATM台数
バハマが126.9%、カンボジアが23.3%、高所得国平均は65.2%。

出所:世界銀行
図3:人口100人当たり携帯電話加入数
バハマが109.2%、カンボジアが129.9%、高所得国平均は129.8%。

出所:ITU、世界銀行

バハマとカンボジアの事例では、経済発展の度合いが成熟していない国において、中央銀行がデジタル決済手段を提供することで利用者のコストが低減されること、さらに手軽な決済手段を提供することで金融包摂にもつながることが共通性として挙げられた。バハマとカンボジア、また東カリブ通貨同盟のうちの4カ国に続いて、今後も同様の目的によるCBDCの導入は広がっていく様相だ。

注1:
カンボジア中央銀行は、バコンをCBDCと定義しておらず、不換紙幣でバックアップされた決済システムであるとしている。そのため、バコンは準CBDCと呼ばれることもある。
注2:
サンドダラーは、モバイル端末を保有しない利用者向けに、決済カードの発行にも対応している。
注3:
取引金額の上限など適用に一定の条件がある。
注4:
社会インフラが整備されていない開発途上国や新興国において、先進国が経験してきた技術の進展を飛び越え、一足飛びに新しい技術やサービス等が取り入れられ普及することを指す。

執筆者紹介
ジェトロ海外調査部海外調査企画課
清水 美香(しみず みか)
2010年、ジェトロ入構。産業技術部産業技術課/機械・環境産業部機械・環境産業企画課(当時)(2010~2013年)、海外調査部中東アフリカ課(2013年~2018年)を経て現職。 』

フィジーなど4カ国、デジタル通貨検討 ソラミツが支援

フィジーなど4カ国、デジタル通貨検討 ソラミツが支援
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB272GT0X21C21A2000000/

『フィジーなど太平洋に浮かぶ島国の4カ国がデジタル通貨の開発・検討に入った。カンボジアのデジタル通貨の開発に携わったソラミツ(東京・渋谷)と発行に向けた調査を始める。経済がデジタル化するなかで、小国にも中央銀行によるデジタル通貨(CBDC)の流れが波及してきた。

内閣官房から大洋州諸国の金融インフラ調査・分析をNTTデータ経営研究所が受託し、一部業務をソラミツが請け負う。調査対象になるのは、フィジーのほか、ソロモン諸島、トンガ、バヌアツの4カ国。いずれも島国で、現金の輸送に船などを使っている。

まず、4カ国の金融機関同士の決済の実情やキャッシュレスの普及状況、資金移動業者の役割などについて調査・分析する。その上で、ソラミツがカンボジアの中央銀行と共同開発した「バコン」のようにデジタル通貨を実際に導入できるかどうかを検証する。

今回の枠組みのきっかけになったのは、2021年7月、日本や太平洋島しょ国の首脳が参加する「太平洋・島サミット」だ。太平洋の絆の強化と相互繁栄のための行動計画に日本の金融インフラ分野における協力が盛り込まれた。

デジタル通貨を巡っては、22年に中国がデジタル人民元を本格発行する見通し。日本は21年4月に実証実験を始めたほか、欧州中央銀行(ECB)も7月にデジタルユーロの発行に向けて本格的な準備を始めると発表した。』

分散型金融11兆円市場に 当局が警戒、通貨の未来問う

分散型金融11兆円市場に 当局が警戒、通貨の未来問う
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB167T00W1A910C2000000/

『ブロックチェーン(分散型台帳)技術を使って、金融機関などを仲介しない金融サービスが急拡大し始めた。DeFi(分散型金融)と呼ぶ仕組みで、暗号資産(仮想通貨)売買や融資など市場規模は約1000億ドル(約11兆円)と1年で約5倍に急増した。資金洗浄の温床になりかねないと当局は警戒を強める。半面で、DeFiの膨張は中央集権型でコストのかかる既存の金融秩序に変革を迫るものともなる。

DeFiの柱は銀行を介さない融資だ。インターネット上の取引の場では仮想通貨チェーンリンクを年利0.1%で借りられる。日本の住宅ローンの変動金利(0.4%程度)よりも低い。DeFiは無人の取引システムに個人が仮想通貨を預けて、これを借り手が受け取る。

信用力のある金融機関が安全な取引を仲介する従来の金融は利用者が手数料を支払う。DeFiは低コストで利用者同士を直接つなぐ仕組みだ。

仮想通貨の上昇を見込んだ投機的な貸し借りが多い。将来的には相対取引で借り手が事業資金や住宅購入に充てることも想定される。DeFiの資産総額は980億ドルを超える。日米欧の預金取扱金融機関の現預金額(6800兆円弱)の0.1%程度だが、成長スピードは速い。
モノやサービスが行き来するデジタル時代に取り残されてきたのが、国家が権力を独占する通貨だ。20カ国・地域(G20)平均の送金コストは約10%。海外送金には数日かかることもある。DeFiは365日24時間即時に取引が成立する。

2008年に通貨システムへの挑戦として仮想通貨ビットコインが登場したが、各国で登録業者での取引が義務付けられるようになった。DeFiは規制の網から逃れ、あらゆる仮想通貨を使って保険や融資などを手がけられる。米決済大手スクエアのドーシー最高経営責任者(CEO)は「グローバル通貨があればすべての人にサービスを提供できる」と語る。7月にはDeFiの新部門の設立を決めた。

理想と現実の差は大きい。DeFiでは不正取引が横行する。21年8月には取引の場を提供するポリ・ネットワークで700億円弱の仮想通貨が流出した。本人確認がずさんで、麻薬カルテルなど資金洗浄の温床になっている。

国際組織FATF(金融活動作業部会)などは監視強化に動くものの、管理主体があいまいで規制の網がかけられない。DeFi開発の非営利財団「メイカーダオ」は7月に創業者が解散を発表した。開発主体はいないのにプロジェクトは作動し続ける。

問題も多い半面、DeFiの台頭は既存の金融秩序に変革を迫ることにもなる。米フェイスブックが19年に提唱したデジタル通貨「リブラ(現ディエム)」は、主要国の反対で計画の修正を迫られた。一方で、あわてた各国中銀がデジタル化にカジを切る契機になった。

国際決済銀行(BIS)は主要7中銀とともに相互に接続可能な中央銀行デジタル通貨(CBDC)のあり方を検討する。中国やタイなど新興国同士をつなぐ決済網の実験も始まった。CBDCが実用化すれば、低コスト・短時間での送金ができる。

金融システムの脆弱性を高める無秩序なDeFiの膨張は、コストの高い中央集権型の金融からの脱却の呼び水となる可能性がある。(フィンテックエディター 関口慶太)

【関連記事】

・暗号資産の急拡大「システミックなリスクも」 IMF局長
・分散型金融、法規制で安定を(The Economist)
・仮想通貨「個人間」に死角 犯罪の温床、防止策急務

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白井さゆり
慶應義塾大学総合政策学部 教授
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ひとこと解説

仮想通貨を使った分散型金融は、スマートコントラクトで自動運営される新しい金融サービスで、ブロックチェーンをつかった金融イノベーションは目を見張るものがある。

もともと仮想通貨の開発には世界金融危機による既存の金融システムの限界を認識し、そうした金融システムを弱者・低所得者よりも優先的に救済する国家体制に不信感をもった人々が開発に携わったと言われているが、DeFiはまさに政府や中央銀行に依存しないで、世界のだれでも利用できる。

しかし個人を保護する組織がいないためリスクが大きく、各国・地域の規制当局も頭を抱えているが、それでもこの動きは止められず今後も新しいイノベーションは起きていくだろう。

2021年10月18日 7:38

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野崎浩成
東洋大学 国際学部教授
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分析・考察

いかなる市場も参加者にとって「規制」は嫌なもので、中央集権型統治システムから逃れるDeFi(分散型金融)は、効率性ばかりでなく、規制からの自由を追求する傾向は止められません。

このため、マネーロンダリングや善意のユーザーを害する行為に対する規制そのものが無力化するのは、当然の帰結といえましょう。

一方、規制が機能する範囲内で、ブロックチェーンのDLT(分散型台帳技術)がもたらす効率性向上余地は大きく、昨今報道されているデジタル証券なども社会的コストを削減するなどの貢献が期待されます。

特定の技術に白黒の色を付けるのではなく、社会性に馴染むものから積極的に取り込む発想が大切だと思います。

2021年10月18日 7:39 (2021年10月18日 7:41更新)

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楠木建
一橋大学 教授
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分析・考察

現状では結局のところ暗号資産の値上がりに対する投機的動機(だけ)がDeFi拡張のドライバーになっています。

これまで銀行が果たしてきたような普通の意味での「金融」を担うものには程遠い。

2021年10月18日 7:32

大槻奈那のアバター
大槻奈那
マネックス証券 専門役員チーフ・アナリスト
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ひとこと解説

市場規模は拡大したものの、昨年のDefi勃興時に調べたユースケースも投機かP2P貸出程度で、殆ど広がっていません。大企業から信頼を得られず、協業が進まないのが主因と思います。

Defiの本領は、投機ではなく、仲介コストをなくしスマートコントラクトで様々な情報が載せられること。銀行口座を持たない人も使えますし、晴れた日のみ送金するなど様々な条件が組み込めます。

確かに、Defiのハッキングは昨年比2.7倍で、今年の暗号資産ハッキングの7割以上を占める等脆弱です(CipherTrace)が、現時点で「怪しいもの」と切り捨てるのではなく、長い目で見て、技術を生かす方法を模索すべきと思います。

2021年10月18日 8:41 』

中国、仮想通貨締め付け強化 資金流出の穴塞ぐ

中国、仮想通貨締め付け強化 資金流出の穴塞ぐ
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB24B690U1A920C2000000/

『中国が暗号資産(仮想通貨)への締め付けを一段と強めている。マネーロンダリング(資金洗浄)や詐欺への対応などに加え、中国の中央銀行が発行するデジタル通貨(CBDC)であるデジタル人民元の準備を進めていることも一因にある。

【関連記事】
・中国人民銀行、仮想通貨を全面禁止 海外取引も違法に
・仮想通貨業者、韓国で淘汰 半数以上は停止か廃業

中国人民銀行(中央銀行)は24日、海外の取引所からインターネットを経由したサービスも含め、仮想通貨の決済や関連サービスを全面的に禁止すると発表した。刑事責任を追及するなど踏み込んだ内容だ。

かつてはビットコインの取引もマイニング(採掘)も8割以上が中国で行われているとされていた。仮想通貨の投資家の間では「中国コイン」と呼ばれることもあった。

変わり始めたのは2017年。国内の取引所の閉鎖などが始まり、18年には中国人民元建てのビットコイン売買は全体の1%にも満たなくなった。マイニング量は21年4月時点でまだ5割近くを中国が占めていたが、締め付けにより6月にはほぼなくなったとみられている。

中国の仮想通貨市場への影響力は小さくなっている。それでも規制を強化するのは資金流出への対応がある。新型コロナウイルスの感染拡大前、中国では資金流出が続き、金融当局が海外とやり取りする資本の規制を強めていた。仮想通貨は規制をかいくぐる抜け穴となっており、当局が監視を厳しくしてきた。

もうひとつの背景が中国で22年にも発行が正式に始まる予定のデジタル人民元。仮想通貨は当局の監視が届きにくい。仮想通貨との取引を通じて貨幣供給が不安定になるのを防ぐ。野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミストは「中国内は中央銀行が発行するデジタル通貨以外の仮想通貨は禁じる措置を進めており、その延長線上の動き」とみる。

CBDCの発行は各国が準備を進めており、米国では取引所への監視強化が強まる。国際的な規制強化の網がどの程度広がるかが焦点になる。

(金融工学エディター小河愛実)』

「デジタル通貨圏」主権揺るがす

「デジタル通貨圏」主権揺るがす クーレBIS局長
通貨漂流ニクソン・ショック 私はこうみる⑤
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR26DFS0W1A720C2000000/

『デジタル通貨の登場が世界の金融を再び大きく変えようとしている。官民の競争が通貨秩序をどう変えるのか。中銀デジタル通貨(CBDC)の検討を主導する国際決済銀行(BIS)イノベーション・ハブ局長のベノワ・クーレ氏に聞いた。

――なぜ中銀デジタル通貨が必要なのですか。

「民間の決済手段が多くあること自体はいいことだ。イノベーションは民間部門の競争の中で起こる。民間のプレーヤーは利益を求め、独自の体系(エコシステム)を作って価値を高め、市場を支配しようとする。これが資本主義のやり方だ」

「ただ、通貨に関してすべてを民間に委ねてはいけない。企業による(排他的な)『壁で囲まれた庭』となってしまう。通貨システムがバラバラになり、中銀が価格の安定や金融の安定を届けられなくなってしまう。デジタルになっても、中銀マネーがシステムの中心でなければならない」

【関連記事】
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――米フェイスブックが2019年にリブラ(現ディエム)構想を発表した際、「中銀への警鐘だ」と声を上げました。

「発表まで中銀はデジタル通貨を遠巻きにみていて、規模が小さく金融政策や金融の安定とは関係がないと見下すようでさえあった。そこに突然、利用者が何億人に広がる可能性を秘めたプロジェクトが現れた。中銀は金融システムの一部が私物化され、伝統的な決済システムから切り離されるという見通しに直面し、受け入れてはならないリスクだと感じた。多くの中銀が真剣にCBDCを考え始めたのは、デジタル通貨を(自ら)提供できなければならないと理解したからだ」

――デジタル通貨は国際通貨秩序をどう変えるでしょうか。

「民間の手段が支配的になれば、混乱のリスクがある。数百万、数億の利用者がいる民間のネットワークの決済手段ができれば、米プリンストン大学のマーカス・ブルネルマイヤー教授が呼ぶところの『デジタル通貨圏』を作り出すリスクを冒すことになる。政治的な国境に基づく通貨圏の代わりに、国境を越えた民間ネットワークの利用ベースの通貨圏が現れる。これは国の主権や金融政策、資金洗浄などに重大な懸念を引き起こす」

「(デジタル化による)通貨間の競争は(国際金融秩序の)風景を変えるだろうか。確かなことは分からない。最終的には、基礎的な経済力と安定性というところに戻ってくるからだ。より構造的な問題と比べれば技術は二次的なものだ」

「小さな開かれた経済にとっては、通貨の代替という重要なリスクがある。通貨の信認が十分ではなく経済が安定していない場合、市民は自国通貨ではなくデジタル通貨に乗り換えるかもしれない。通常、ドル化やユーロ化と呼ばれる問題だ」

【関連インタビュー】
・米国の過信、ドル覇権のもろさに ロゴフ教授
・デジタル経済、人民元の国際化促す 孫立堅教授
・今も残る円高のトラウマ 行天豊雄元財務官
・基軸通貨、民主主義が必要条件 アイケングリーン教授

――大学時代に研究されていた「平家物語」の重要なテーマは盛者必衰です。ドル支配は今後も続きますか。

「この世に永遠なものはなく、支配的な通貨も、ひとえに風の前のちりに同じで、終わりを迎える。だが、かなり長い時間がかかるだろう。我々は通貨を、ほかの人も使うから使っている。置き換えることはとても難しい。米ドルの支配は近い将来も変わらず、デジタル通貨がそれを変えるとは思わない」

「経済規模でいえば、米ドル支配に挑戦しうる唯一の通貨は人民元だ。ただ、それには資本勘定を完全に開く必要がある。中国当局は金融の開放よりも国内の安定を優先している。そうであれば、近い将来にそれが起こるとは思わない」

(聞き手はベルリン=石川潤)

Benoit Coeure 仏財務省などで要職を歴任、2012年から19年まで欧州中央銀行(ECB)専務理事。20年から現職。中銀デジタル通貨(CBDC)検討の推進役
=おわり

松崎雄典、大塚節雄、大越匡洋、斉藤雄太、花田幸典、南毅郎、富田美緒、真鍋和也、粟井康夫、張勇祥、河浪武史、石川潤、土居倫之、後藤達也、川手伊織、奥田宏二、木寺もも子、南雲ジェーダが担当しました。』

米当局、ドル裏付け仮想通貨巡り協議 リスク見極め

米当局、ドル裏付け仮想通貨巡り協議 リスク見極め
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN19DC90Z10C21A7000000/

 ※ 「通貨」のキモは、人々の「信頼」だ…。

 ※ 全くのデジタル資産では、そこが「弱点」となる…。

 ※ それで、そこを「補う」ために、法定通貨の「信用力」を裏付けに発行するという発想が生じる(ステーブル・コイン)…。

 ※ しかし、そうすると、今度は、中銀や政府の通貨管理・通貨規制を脅かすことになる…。

 ※ 世の中、何でも、「こちら立てれば、あちら立たず。」なものだ…。

『【ニューヨーク=宮本岳則】米財務省や米連邦準備理事会(FRB)など米金融規制・監督当局は19日、米ドルなど法定通貨を裏付けにした仮想通貨「ステーブルコイン」について話し合う会合を開いた。今後数カ月以内にリスクや対応策を盛り込んだ提言を公表する。

イエレン米財務長官がバイデン米大統領の指示に基づき、金融市場に関する作業部会を招集した。19日の会合にはイエレン財務長官やFRBのパウエル議長に加え、米証券取引委員会(SEC)や米通貨監督庁(OCC)、連邦預金保険公社(FDIC)の各トップが出席した。

会合ではステーブルコインの利用拡大を受けて、利用者や金融システム、国家安全保障に対する潜在的なリスクについても議論した。イエレン長官は米国の適切な規制の枠組みを確保するために、迅速に行動する必要性を強調した。

パウエル議長は先週の議会証言でステーブルコインに言及し、決済で重要な役割を担うなら「適切な規制上の枠組みが必要だ」と指摘していた。』

デジタル人民元、132万カ所で実証実験 総額5800億円

デジタル人民元、132万カ所で実証実験 総額5800億円
人民銀が白書公表 正式発行時期は示さず
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM1699B0W1A710C2000000/

『【北京=川手伊織】中国人民銀行(中央銀行)は16日、デジタル人民元に関する白書を公表した。6月末までに飲食店や交通機関など132万カ所で実験し、試用した金額は345億元(約5800億円)に達した。具体的な発行スケジュールへの言及は避けた。

人民銀行は2019年末から広東省深圳、江蘇省蘇州や22年2月に開く北京冬季五輪の会場など5地域で実験を始めた。20年11月には上海や山東省青島など6地域を加えた。

デジタル人民元のお財布はスマホアプリのほか、ウエアラブル端末やICカードのなかにもつくれる。個人が開いたお財布は2087万超、法人など団体用のお財布は351万超に達した。

実験は消費者が買い物でデジタル人民元を使ったほか、公共料金や行政手続きの手数料の支払いにも試した。累計の取引回数は7075万回に達した。

具体的な発行スケジュールをめぐり、白書は「あらかじめ設けず公表しない」とだけ指摘した。関係者によると、人民銀行は冬季五輪開催時に現地で実験を重ねて、22年にも正式発行する方針だ。

当面は実証実験を拡大していく。実験地区における決済をすべてデジタル人民元でカバーできるようにし、取引の安定性を高める。中国人民銀行法の改正など法整備を進めて、デジタル人民元の発行に法的根拠を与え、データセキュリティーも強化する。金融政策や金融システムに及ぼす影響への研究も加速させる。』

デジタルユーロ、ECBが導入準備を発表 まず2年で調査

デジタルユーロ、ECBが導入準備を発表 まず2年で調査
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR148Q80U1A710C2000000/

『【ベルリン=石川潤】欧州中央銀行(ECB)は14日、独自の中銀デジタル通貨(CBDC)であるデジタルユーロの発行に向け、本格的な準備を始めると発表した。コロナ危機で現金離れに拍車がかかるなか、中銀として安全なデジタル決済手段の提供を目指す。金融システムが混乱しないように慎重に準備を進めるため、発行は2026年以降となるとみられる。
ECBのラガルド総裁は声明文で「ギアを上げ、デジタルユーロプロジェクトを開始する」と表明した。まずは2年間の調査局面に入る。使い勝手を高めながら、マネーロンダリング(資金洗浄)などの不法行為を防ぎ、金融システムや金融政策に悪影響を与えないためのデジタル通貨の設計などを進める。

その後、実用化に向けた作り込みを数年かけて実施する。担当のパネッタ専務理事はこれまで日本経済新聞の取材に、発行までに最短で5年程度かかるとの考えを示してきた。今回の決定は発行の最終判断ではなく、深刻な問題が生じれば、発行を取りやめることもあり得るというのがECBの立場だ。

ECBがデジタルユーロの本格準備に入る背景には、現金からデジタル決済への移行が加速していることがある。ラガルド総裁はデジタル時代に市民や企業が「もっとも安全なマネーである中銀マネー」を利用できるようにすることが目的だと指摘した。声明文では、デジタルユーロは現金を補完するもので、取って代わるものではないという考え方も明記した。

クレジットカードや民間のデジタル決済手段の利用が増えているが、寡占が進んで手数料が高止まりしたり、個人情報が乱用されたりするとの懸念がある。ビッグテックと呼ばれる米巨大IT企業による金融サービスの支配への警戒も強い。ECBはデジタルユーロを土台に民間金融機関が様々な金融サービスを提供できるようにして、開かれた競争を維持していく考えだ。

銀行預金からデジタルユーロへ大量の資金流出が起これば金融システムが不安定になるため、たとえば3000ユーロ(約40万円)程度の保有上限を設けることをECBは検討している。国際金融の混乱を避けるため、ユーロ圏外でのデジタルユーロの保有にも制限をかける見込みだ。

資金洗浄や脱税などの犯罪への対策も欠かせないが、当局が個人の資金のやり取りをすべて把握することには反発もある。公益とプライバシーのバランスも課題となる。

ECBが動き出したことは、ほかの主要中銀の背中を押すことになりそうだ。日銀は今年4月、システム上でお金の発行とやり取りをする実証実験を始めた。米連邦準備理事会(FRB)も論点整理した報告書を今夏にも公表する見込みだ。

中国は22年までにCBDCを導入する方針だ。各国のCBDCを連結して、いかに低コストで安全な海外送金を実現していくかも今後の焦点となる。

【関連記事】

・デジタルドル「実現に高いハードル」 FRB副議長講演
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多様な観点からニュースを考える
※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。

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伊藤さゆり
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 研究理事

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ひとこと解説 EUは、トランプ政権期の対米関係の悪化、国家資本主義の中国の世界的な影響力の強まりを背景に、経済・産業の「戦略的自立」を掲げるようになり、「ユーロの国際化」についても、導入当初の中立姿勢から積極的に推進する方針に転じています。
デジタル・ユーロに向けた入念な準備も、こうした流れの一環と思われます。
国際的な規範化への影響力を重視するEU。中銀デジタル通貨の規範が、先行する中国の人民元となることを阻止するには、対案を提示する必要があるとの判断も働いていそうです。
2021年7月15日 13:05いいね
1 』

激動の金融業界 銀行も証券もお金そのものも変わる

激動の金融業界 銀行も証券もお金そのものも変わる
教えて山本さん!BizTechの基礎講座
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC096040Z00C21A7000000/

『日本の金融業界が劇的に変化しつつあります。その象徴といえるのが、米グーグルが日本で金融事業に本格参入するというニュースです。国内のスマートフォン決済会社を200億円超で買収し、2022年をめどに送金・決済サービスを始めると報道されています。

日本の大手銀行は、ネットでの振込手数料を10月以降に引き下げる予定です。その背景には、金融業界における新興企業の台頭や異業種からの参入があります。例えば、PayPayの登録ユーザー数は21年6月に4000万人を突破しています。入金規模は違いますが、メガバンクの個人口座数を抜きつつあります。

PayPayでは、ユーザーがスマホを使って無料で素早く送金できます。こうした強力な新規参入者に対抗するには、既存顧客を従来よりも効率的なサービスに誘導する必要があります。そこで預金通帳の発行などコストがかかるサービスには新たに手数料を設定し、代わりにネットの手数料を下げているのです。

証券と銀行の境目はなくなっていく

なぜ新規参入者は、既存大手よりも優れたサービスを実現できるのでしょうか。その理由はビジネスモデルとテクノロジーの進化にあります。

PayPayは、様々な機能を内蔵する「スーパーアプリ」を目指しています。実際にPayPayのアプリは、ウーバーイーツやショッピングなどの様々な機能を既に備えています。PayPayにとっては、決済で利益が出なくても、そうした備え付けの機能で利益が出ればよいのです。また送金コストも、クラウドなどの新しいテクノロジーを活用すれば、既存の勘定系システムよりも大幅に安くできます。

私はデジタルトランスフォーメーション(DX)を「お寺の改修」によく例えます。伝統あるお寺を残したままつぎはぎで改修しようとすると、ベテランの宮大工を確保したり特定の建築資材を用意したりする必要があるため、近代的な建物に建て替えるのに比べて大幅にコストや手間がかかります。文化的な遺産であればそうしたコストにも意味がありますが、ビジネスの競争では大きなハンディになります。

金融機関の勘定系システムは、インターネットが登場する前の1960年ごろに生まれました。そこから互換性を保ちつつ何度か大きな改修を受けています。一方、クラウドなどの新しいテクノロジーを利用してゼロからシステムを開発すれば、より高機能な機能を安価に実現できる可能性があります。

こうした背景から、日本の金融機関の競争力を上げようとする動きが出ています。その一つが、全国の金融機関をオンラインで相互接続する「全国銀行データ通信システム(全銀システム)」を運営する全国銀行資金決済ネットワーク(全銀​ネット)が銀行間の送金にかかる手数料を40年ぶりに引き下げたことです。これにより一般利用者が支払う銀行の振込手数料が下がる可能性が出てきました。

国際送金の仕組みも進化しています。インターネットの登場よりも前に作られたシステムでは、海外への送金に数日かかったり数千円の送金手数料を取られたりすることもありました。

一方、英フィンテック企業のワイズ(旧トランスファーワイズ)は、格安の手数料で送金サービスを提供しています。7月にロンドン証券取引所に上場し、時価総額は約1兆2100億円に達しました。また、米フェイスブックが提供するメッセンジャーは、米国など複数の国では送金にも使えます。ユーザーが国境を意識することなく簡単に送金できるのです。

7月には米大手証券会社ゴールドマン・サックス傘下の米銀行が日本で銀行業免許を取得しました。ゴールドマン・サックスは米アップルと組み、米国で「アップルカード」という独自のクレジットカードを提供するなど、個人向け金融サービスに力を入れています。
同社のデービッド・ソロモン最高経営責任者(CEO)は「既存のシステムを持ってないがゆえに、最新テクノロジーの活用で優位に立てる」と述べています。経済学でいうところの「後発性の利益」にも近い発想を持っているのです。こうした方向性は、システム部門だけでなく経営陣がテクノロジーをよく理解して決めるしかありません。

売買手数料無料の流れを作った米スマホ証券のロビンフッドは、うまくいかなかったもののかつては預金サービスの提供を目指していました。7月1日にはナスダック上場を申請し、時価総額は4兆円規模とされています。

日本では、銀行と証券の情報共有を制限する、いわゆる「ファイアウオール規制」が1993年に設定されました。米国での最近の動きを受け、金融庁がこの規制について改めて検討する動きになっています。

米小売り大手のウォルマートやアップルも金融事業を近年拡大しています。彼らは金融そのもので収益を上げなくても他の事業で収益を上げればいいため、手数料などを安くできます。

いずれは通貨もデジタルに

そもそも私たちはなぜ銀行口座を持っているのでしょうか。

多くの人にとっては、給与の振込先が必要だからでしょう。法律により、賃金は現金もしくは振り込みで渡すよう指定されています。しかし、法律が改正されれば、PayPayなどに直接入金できるようになるかもしれません。既に公共料金は最近は多様な支払い方法に対応しており、銀行振込である必要はなくなっています。

今後、大きな波になると思われるのがデジタル通貨です。中国は人民元をデジタル化する「デジタル人民元」の実験を繰り返しており、22年の北京冬季五輪の開催に合わせて準備しています。日本や欧州の中央銀行も、中央銀行が発行するデジタル通貨「CBDC(Central Bank Digital Currency)」の検討を始めています。フェイスブックは「ディエム(旧リブラ)」というデジタル通貨の開発を主導しています。

これまで物理的な通貨の取り扱いには、ATM網の整備や警備付きの現金輸送など、多くのコストがかかっていました。また、現金がどこで使われているかはすぐには把握できないため、詳細なデータに基づく経済対策はできませんでした。

通貨をデジタル化すれば、リアルタイムに近いデータに基づいて詳細な経済政策を打てるようになります。決済サービスなどの効率や使い勝手も向上するでしょう。これは、電子メールやメッセンジャーアプリが紙のファクスをほぼ不要にしたのと似ています。

24年には新しいデザインの日本円の紙幣が発行されます。その先には、まるで空気のようにデジタル通貨が使われる未来が待っているでしょう。

こうした世界を他国に先駆けて実現するには、これまでの投資を意味する「サンクコスト(埋没費用)」に惑わされてはなりません。現状のテクノロジーの延長で考えるのではなく、最新テクノロジーを理解して最適な仕組みを一から作っていく必要があります。

山本康正(やまもと・やすまさ)
京都大学大学院特任准教授
東京大学修士号取得後、米ニューヨークの金融機関に就職。ハーバード大学大学院で理学修士号を取得。卒業後グーグルに入社し、フィンテックや人工知能(AI)などで日本企業のデジタル活用を推進。著書に『次のテクノロジーで世界はどう変わるのか』(講談社現代新書)、『2025年を制覇する破壊的企業』(SB新書)がある。
【関連記事】Google、日本で金融本格参入へ 国内スマホ決済買収』

エルサルバドル、ビットコインを配布へ 9月に法定通貨

エルサルバドル、ビットコインを配布へ 9月に法定通貨
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN05CGW0V00C21A7000000/

『【メキシコシティ=宮本英威】中米エルサルバドルは暗号資産(仮想通貨)ビットコインを9月から法定通貨の一つにすると決め、準備を始めた。電子財布(ウォレット)を設け、登録者には30ドル(約3300円)相当のビットコインを配布する方針だ。当局は前のめりだが、国民には慎重な見方が多く、スムーズに導入できるかどうか不透明だ。

エルサルバドル政府は公式の電子財布「CHIVO(チボ)」の導入を発表した。名称は「かっこいい」を意味するスラングだ。国民はチボのアプリをダウンロードしたうえで、電話番号の登録や顔認証による本人確認を済ませた後、30ドル相当のビットコインを受け取れる。

ビットコインはもう一つの法定通貨、米ドルと交換できる。そのためのATMを1500台設置する計画も進められている。

エルサルバドルの人口は650万人で、政府はその約6割にあたる400万人程度の登録を見込んでいる。ビットコインの配布にかかる費用は1億2000万ドルと推定される。

ブケレ大統領は「ビットコインの使用は任意だ。米ドルは法定通貨であり続ける」と説明する。国民は給与や年金を米ドルで受け取れる。』

『ビットコイン普及のためのインフラ整備も民間企業の協力で進める。仮想通貨のATMを手がける米アテナビットコインは100万ドル以上を投じ、エルサルバドルに1500台のATMを設置する考えを示した。

エルサルバドルの就労機会は少ない。近隣の富裕国である米国で就労し、母国に送金する人々の家族が多い地域を優先して設置する考えだ。アテナビットコインのマティアス・ゴールデンホーン取締役(中南米担当)は「持続可能な速度で事業を展開していきたい」と話す。

ブケレ氏はビットコインを法定通貨に追加する理由を「送金する人を助けるため」と指摘する。一般に金融機関を介する送金に比べ、ビットコインの送金手数料が安いため、エルサルバドルへの送金増を期待する。

エルサルバドルへの海外からの送金額は2020年が59億ドルで、同国の国内総生産(GDP)の約2割に相当。これが増えれば、エルサルバドル経済のてこ入れにつながる。

当局の思惑通りにビットコインが普及するかどうかはなお不透明だ。エルサルバドル商工会議所が1668人の市民を対象に電子媒体で実施した調査によると、ビットコインでの給与支払いには93%が反対した。送金についても83%が否定した。

米州開発銀行(IDB)の調べでは、エルサルバドルの一般家庭ではインターネットの普及率が45%にとどまる。中南米地域の20カ国ではホンジュラス(39%)に次いで低い水準だ。

価値が変動するビットコインを法定通貨に加えることには国際機関からも慎重な意見が相次ぐ。中米経済統合銀行(CABEI)は技術面で支援する意向を示すが、世界銀行は「エルサルバドル政府から支援の要請はあったが、手助けはできない」と主張した。国際通貨基金(IMF)の報道官は「マクロ経済、金融、法的に多くの問題を引き起こすので慎重な分析が必要」と指摘した。

ブケレ氏は19年6月、大統領に就任した。まだ39歳で、国民の人気は高い。ただ強権的な姿勢が目立つ。ビットコインを法定通貨に加える法案は6月上旬に議会を通過したが、十分に議論を尽くしたとはいえない状況で、野党は批判している。 』

カンボジアで世界初のデジタル通貨を作った日本人が語る金融の近未来

https://www.nippon.com/ja/japan-topics/g01074/

『―スタートアップ企業のソラミツがアイデアを武器に一国の中央銀行のデジタル通貨を作り上げた過程は、スティーブ・ジョブズやビル・ゲイツがシリコンバレーの最初の頃を彷彿とさせます。デジタル通貨に目を向けた理由は?

ビル・ゲイツやスティーブ・ジョブズとは月とスッポンですけれども、私はソニーで長く勤めました。ソニーは世界初をやろうという文化がありましたから、とにかく世の中にないものをやりたいと思った。私はシリコンバレーでパソコンのVAIO1号機を開発したものの、大きな赤字を出した。これからはハードウェアの時代じゃない、サービスとかインターネットの時代だと思いまして、帰国して、電子マネーのEdyを始めました。

EdyはEuro、Dollar、Yenの頭文字から取り、世界の通貨を目指していた。ところが、技術の壁があって、海外で全然受け入れてもらえず、日本でしか普及しなかった。一方、ビットコインは出てすぐ、世界中で使われるようになった。これは悔しいと、ブロックチェーン(分散型ネットワークを構成する複数のコンピューターに、暗号技術を組み合わせ、取引情報などのデータを同期して記録する手法)の技術を持つソラミツに参加して、今は代表取締役をやっています。

―何かをやりたいというのをどんどん追求していったら、デジタル通貨を作るに至ったということですか。

本当に自分のライフワークになっていて。やっとこういう時代になったと。技術がやりたいことに追いついてきた時、たまたまカンボジアの中央銀行との出会いがあって、これこそ自分のライフワークだと思って取り組み始めました。

―Edyを作った頃にブロックチェーン技術があったら、Edyはデジタル通貨となったのでしょうか。

そうだと思います。Edyを始めた頃、大学の先生からずいぶん怒られたんです。『君たちは技術の使い方を間違っている』と。いわゆる転々流通(不特定の所有者に価値が引き継がれること)しないんです。これは学者さんから見ると、経済理論の見地からおかしい。単なるプリペイドカードでしかないし、電子マネーじゃないと。

ただ、当時は、転々流通できてセキュリティが高いという技術がなく、やむなく転々流通でない方式、「口座型」(利用者の口座間で振替決済)をやった。Suicaが口座型を真似して、さらにPay PayやLINE Payも真似した。だから、日本の金融業界が効率の悪い口座型になってしまって、転々流通ができなかった責任は私にもあると。私が最初に間違った方式でやって、学者さんの反対を押し切ってやっちゃったので。だからそこを直さなきゃいけないと思っていまして。要するに世直しですよね。それを何とかしなきゃいけないという気持ちは強いです。

詐欺かと思ったカンボジア国立銀行の誘い

―カンボジアの中央銀行(カンボジア国立銀行)からデジタル通貨のシステムを作って欲しいと言ってきたとき、パッと手を挙げたのは、スタートアップ企業だからこそ出来たのですか。

SNSで『国立銀行です』と名乗られて、『お宅の技術をちょっと試してみたい』と連絡してきた。最初は偽物だろうと思いました。国立銀行がスタートアップに連絡してくるわけがないと。これは絶対いわゆる詐欺じゃないかと。でも、いろいろやり取りしていると、どうも本物らしいということで、創業者と一緒にカンボジアへ行ってみたわけです。そうしたら、本当にカンボジア国立銀行だった。

私はソニーで、いろんな技術の盛衰を見てきました。昔、ベータマックスというビデオがあって、それがVHSに負けたとか、メモリースティックはSDカードに負けた。やっぱりIT技術って日本だけでやっていたら駄目だと。ガラパゴスでは絶対に勝てない。世界で勝負して、世界標準を目指していかないと残れないというトラウマを何回も経験した。

ソラミツ創業者の武宮誠はアメリカ国籍だったのですが、日本に来て日本が好きになって帰化した。彼もとにかく最初からグローバルで勝負しようということで、プロトタイプを開発していきなりスイスに行って、スイスのダボス会議に参加したりとか、ニューヨークでプレゼンしたりとか。そうしないと絶対に生き残れないという意識でやっていました。それがカンボジア国立銀行の目に留まったんだと思います。

プノンペン市のカンボジア国立銀行 提供:ソラミツ

アンコールワットの遺跡を背景に。ソラミツの創業者である武宮氏(右から2人目)と宮沢氏(左から3人目)提供:ソラミツ

―最初からグローバルで勝負し、それを成し遂げたのは技術的な裏打ちもあった。

そうですね。武宮は本当に天才です。彼は大学卒業後に米陸軍に入隊し、脳科学とかAIとかをずっと研究していた。奈良県にあるNTTの先端技術研究所に転籍して働いていた時に、ビットコインというのが世の中で生まれた。彼は『すごいけど、もっといいものを作れると思った』と言い、実際作っちゃった。彼はスティーブ・ウォズニアック(アップル創業時の天才技術者)のように、最先端のものを作ってくれた。私はどちらかというとスティーブ・ジョブズ・タイプかもしれない。自分はコードも書きますが、そんなに得意ではないので、新しい技術を理解して、それをどうやって世の中に受け入れてもらうかを考えながらやっていた。

―ソラミツは独自に開発されたブロックチェーン技術「ハイパーレジャーいろは」をオープンソースとして開放し、周辺で利益を上げるというビジネスモデル。従来の日本企業のパターンと違う。

ブロックチェーンを開発した日本企業はあるが、われわれみたいにオープンソースにして世界で戦っている企業は本当に少ない。大手のブロックチェーン開発企業は日本国内で閉じていて、なおかつオープンソースではなくて、ライセンス料で収入を得るようなビジネスモデルなので、広がらない。閉じてしまっているというのは非常に残念ですよね。

このままでは世界に遅れる日本の金融界

―バコンの話に戻りますが、カンボジアはドルが自国通貨より流通し、中央銀行は困っていた。しかし、バコンを始めると自国通貨の割合のほうが多くなった。

カンボジアは国立銀行がしっかりしている。若い人が多く、みんなすごく勉強しています。金融の人だけれども、技術にも明るく、ある意味しがらみがない。日本の金融機関ってしがらみだらけで、既存のシステムを変えられないとか、失敗したくないと考えている人が役員に多いと思う。

この調子で行くと、ますます日本は遅れていく。日本の金融界の偉い方も、『カンボジアは金融インフラがないからできた』と言う。それだけではなく、先々を見る目とか、それに対して挑戦しようという気概があった。短期間でできたのも、彼らには既に概念設計が出来上がっていたから。中央銀行デジタル通貨(CBDC)はこうあるべきだというものが、全部出来上がっていた。

日本にはデジタル通貨の概念設計がないんです。中央銀行デジタル通貨はどうあるべきか、明確ではない。これから実証実験をちょっとずつやっていきます、みたいな感じ。一方、カンボジアは確固たる考え方を持っていた。リスクとか、こういうことをやると銀行に大きな影響を与えるとか、シミュレーションを行い、全部分かっていた。それが2016年です。5年前にカンボジアでは今の日本よりもはるかに明確になっていた。

カンボジアは自国通貨リエルよりも米ドルが流通していた。ドル比率が高いのを何とかしたいと。しかし、バコンを導入したことによって、自国通貨の割合が高くなった。

デジタル通貨「バコン」の開始式典であいさつするカンボジア国立銀行のチア・セレイ統括局長 2020/10/28 プノンペン(共同)

―カンボジア国立銀行は中国のデジタル人民元に対する危機感もあった? 

そう思います。やっぱりデジタル人民元の動きが気になるわけですよね。デジタル人民元は中国の中でしか使いませんというふうに言っていますけれども、それはたぶん方便だと思っていて。中国はUAEとかタイと研究会を開いて海外での利用の可能性を検討しているわけですよ。デジタル人民元の国際連携みたいな話で、一帯一路で使わせるとか、アジア圏に普及させるということを考えている。それが広がると、米国がドルのSWIFT(国際銀行間通信協会)を活用した経済制裁を出来なくなると思います。北朝鮮やミャンマーが経済制裁されても、デジタル人民元を使って中国から資金がどんどん行ってしまう。

デジタル通貨「バコン」の使用を呼びかける看板(プノンペン市内)提供:ソラミツ

デジタル人民元の脅威

―これからデジタル人民元をはじめ、各国でデジタル通貨が普及していくと、社会がどう変わっていくと思われますか。

3つぐらいのシナリオを思い描いています。日本の金融機関がうまく正常な形で進化して、新しいデジタル技術を取り入れていくというのが1番目のシナリオです。

2番目のシナリオは、それができなかった時に、新たなプラットフォーマーが金融機関に取って変わる。〇〇Payなのか、あるいはFacebookなのか。巨大プラットフォーマー企業が新しい技術で利便性の高いサービスを提供することによって、ユーザーが『そっちでいいや』となって、どんどん日本の金融機関のシェアが下がって、その分、銀行は淘汰される。これが2番目のシナリオ。

3番目は、中央集権的なプラットフォームが支配する世の中ではなくて、分散型金融の普及で、資産を分散的に所有し、民主的に配分が決まっていく。金融機関も必要なくなるかもしれません。例えばDEX(Decentralized Exchange)という分散型交換所では資産は人手を介さず自動的に交換される。為替交換とか全部できてしまう。そういうものがより安いコストでより普及していく。これら3つの勢力が、市場を拡大しながら共存していくのかなと思っています。

―宮沢さんは日銀のデジタル通貨分科会ラウンドテーブル委員を務めている。日本のデジタル通貨はどの方向が望ましいと思ってらっしゃいますか?

2番目のシナリオはよくないと思っています。プラットフォーマーが日本の金融界を牛耳ることになると、銀行は信用創造機能を制限されて経済活性化ができなくなる。なので、1番が良いですよね。3番の、ビットコインのような仮想通貨はこれからも発展していくと思いますが、多くの日本人は、銀行のサービスが便利になればそっちを使うかなと。で、私としては、1番を応援しているという立場ですね。

『ソラミツ 世界初の中銀デジタル通貨「バコン」を実現したスタートアップ』(宮沢和正著 日経BP)書影

日本銀行は民間デジタル通貨や決済手段と日銀が将来発行するCBDCが共存・連携することを大前提としています。そのためには日本の銀行預金の使い勝手がもっと良くならなければいけない。銀行が決済性預金としてブロックチェーンなどの最新の技術を活用した民間デジタル通貨を発行し、決済コストを今までの1/10以下に下げ、即時支払や転々流通に対応し、スマートコントラクトを活用して支払方法に様々なルールを設定できる金融システムを構築する必要があると思います。そうしないと利用者は新たな技術を活用したもっと利便性の高い決済手段に流れていってしまいます。

銀行や自治体などが全国共通の民間デジタル通貨を発行するためのプラットフォームを運営する会社があります。2020年4月に設立したデジタル・プラットフォーマーという企業です。この企業はカンボジア中銀デジタル通貨「バコン」と同じ技術を活用しており、全国の銀行や自治体を繋ぎ将来は日銀の発行するCBDCとも連携して国民に低コストで利便性の高いデジタル通貨を提供する新時代の決済システムを提供してゆくと思います。

バナー写真:カンボジアのデジタル通貨「バコン」を紹介する展示物 プノンペン 2020/10/28 共同 』

デジタル通貨、新興国が主導 世界の6割が実験へ デジタル通貨元年㊤

https://www.nikkei.com/article/DGXZQODF312L40R30C21A3000000/

『電子的にお金をやり取りするデジタル通貨の実用化が視野に入ってきた。世界の中央銀行の6割が実証実験に着手し、先行する新興国の動きに日米欧も重い腰を上げつつある。民間の金融機関も法人顧客や海外向けサービスでしのぎを削る。流通コストの低下につながるデジタル通貨のうねりは、米ドルを頂点にした通貨覇権を揺さぶる可能性も秘める。
クリックするとビジュアルデータへ https://vdata.nikkei.com/newsgraphics/digital-currency/

日銀が実験スタート よく分かる「デジタル通貨」

カンボジア全土のカフェでは「ここでバコンが使えます」と書かれた赤い看板が目に付くようになった。「バコン」は2020年10月に発行が始まったデジタル通貨だ。スマートフォンに専用アプリをダウンロードし、電話番号やQRコードを使って店頭での支払いに利用できる。個人と銀行口座間の送金も可能で、送金手数料はかからない。バコンは中央銀行が自ら発行・管理するデジタル通貨(CBDC)。現金と同じ法定通貨のため原則どこでも使える特徴がある。

国際決済銀行(BIS)が1月公表した65カ国・地域の調査で、20年時点でデジタル通貨を研究する中銀のうち実証実験の段階と答えた割合は約60%と1年前の42%から伸長した。実用化への歩みがさらに進む21年は「デジタル通貨元年」となる。

カリブ海8カ国・地域の金融政策を担う東カリブ中央銀行(ECCB)は3月末にデジタル通貨「Dキャッシュ」の発行を試験的に始めたと発表した。2年間の研究期間を経て、実用化に踏み込む。中銀主導のデジタル通貨は新興国の発行意欲が強い。固定電話の整備が遅れていた新興国で一気に携帯電話が普及したようにATMや銀行店舗など金融インフラが整っていない国ほど、デジタル通貨を導入する意義は大きい。その狙いには誰もが金融サービスを利用できるようになる「金融包摂」がある。

カンボジアは国民の7~8割が銀行口座を持たないとされる一方、携帯電話の普及率は150%に達する。銀行支店がない農村部でも、スマホを使った送金などができる。「金融政策のコントロールが効きやすくなる」。カンボジア国立銀行のチア・セレイ統括局長はこんな期待を寄せる。同国では預金の8割以上が信用力の高い米ドル建てだ。自国通貨の流通が少ないと、金利や通貨供給量の調節で景気・物価に働きかける金融政策の効力が弱まる。CBDCを通貨主権の回復につなげる思惑もちらつく。

長い人類の歴史で、通貨の形態がここまで劇的に変わったことはない。リアルのくびきから解き放たれた通貨のデジタル化は既存の秩序を揺さぶり、国民の暮らしから国際通貨の勢力図までを変える可能性がある。

昨年12月、中国の蘇州市で「デジタル人民元」の実証実験に10万人が参加した。通信環境が悪くても送金や決済に使えるかを試し、通貨としての機能を果たせるかを検証している。22年の北京冬季五輪までにCBDCを正式発行しようと実験を繰り返す中国。狙うのは国内の統制強化とされる。利用履歴やお金の流れを捕捉しやすいデジタル通貨を国が発行・管理すれば、国民の監視を強めることができる。

デジタル人民元はより高度な条件での実験を重ねている=ロイター
人民元の国際化という国家戦略にも沿う。中国人民銀行は2月、香港やタイ、アラブ首長国連邦(UAE)の中銀とデジタル通貨の共同研究を始めると発表した。目指すのは海外と相互にデジタル通貨を送金し、越境決済できるようにする仕組みづくり。基軸通貨のドル1強を突き崩す動きにも映る。

ドルを頂点にユーロや円など世界で流通する通貨を抱える日米欧はCBDCに慎重な姿勢を続けてきた。資金洗浄(マネーロンダリング)に使われるリスク、既存の銀行システムとの共存といった課題も多く、新興国ほどの利点を見いだせなかったためだ。

潮目が変わったのは19年。デジタル人民元に加え、世界で30億人規模が利用する米フェイスブックがデジタル通貨「リブラ」(のちにディエムに改称)の構想をぶち上げたのがきっかけだ。新たな「国際通貨」が生まれると、通貨主権が揺らぎかねない。中銀が独占してきた通貨発行益を奪われるリスクもある。

日米欧は中銀によるCBDCの共同研究グループなど国際協調の枠組みのなかで対抗策を練ってきた。デジタル通貨の技術や制度設計面で中国が国際標準を握り、後発組が不利になることへの危機意識も背中を押す。

日銀は5日から、CBDCがシステム上で機能するかを確かめる実証実験を始めた。3段階の実験の最初のステップと位置づける。欧州中央銀行(ECB)も年央をめどに「デジタルユーロ」事業を進めるかどうか結論を出す考えだ。もっとも、米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は3月に「プロジェクトを急ぐ必要はない」と語った。日米欧には既存の通貨システムを自ら崩すリスクをはらむCBDCをどこまで推進すべきか気迷いもある。

パウエルFRB議長はCBDCに慎重な姿勢をにじませる=ロイター
20カ国・地域(G20)の協議では、国境を越える送金のコストや利便性の改善に向けてCBDCを活用する案も浮上している。だが「新興国は乗り気な半面、国際通貨を抱える先進国は総じて消極的」と日銀関係者は打ち明ける。各国の思惑は交錯し、通貨覇権の行方は混沌としている。

【関連記事】
デジタル通貨、中国先行 米欧は金融安定を優先
中銀デジタル通貨 米中競争激化の兆し

多様な観点からニュースを考える
※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。

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深尾三四郎
伊藤忠総研 上席主任研究員
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別の視点日本は民間デジタル通貨とのインターオペラビリティ(相互運用性)も確保したCBDCの社会実装を急ぐべき。

日本はデジタル化が急速に進む中国に加え、若者人口とSIMカードの普及枚数が多いアジアと近い。中国はCBDCとブロックチェーン(分散台帳技術)をスマートシティのインフラ基盤にしながら、サイバー空間を活用して自国民の経済活動を活発化させている。アジアでは若者が持つスマホを起点にした社会やビジネスのDXが進展し、キャッシュレスな民間デジタル通貨の普及が加速している。

暗号資産やデジタル通貨と相互運用可能なCBDCをワクチンパスポートと併せて普及させると、人の往来と経済を活性化することができる。
2021年4月6日 12:32 (2021年4月6日 13:38更新)

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梶原誠
日本経済新聞社 本社コメンテーター
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別の視点 「コロナ後、世界経済最大のリスクは主要通貨の暴落だ」。こんな話を米国の経営コンサルタントから聞きました。コロナ対策で各国の債務依存が強まり、通貨への信認が失われる恐れがあるとのこと。「ビットコインの高騰も、既存通貨に対する不信という側面がある」と顧客企業に話しているそうです。特定の通貨が暴落しても財産が守れるように、主要通貨のバスケットを裏付けにしたデジタル通貨の開発を進める民間研究者もいます。そんな通貨が普及すれば、中央銀行単独の影響力は落ちるでしょう。先進国の当局者もうかうかしていられません。

2021年4月6日 13:21 (2021年4月6日 13:33更新)
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急ピッチで進むデジタル人民元導入 中国の権威主義はますます強まる

https://www.epochtimes.jp/p/2021/03/70127.html

 ※ 「大紀元」発だが、よくまとまっている良記事だ…。

 ※ 特に、図がわかりやすいんで、紹介しておく…。

『3月8日、国際女性デーに合わせて、上海市の繁華街や百貨店でデジタル人民元の実証試験が行われた。中国の中央銀行・中国人民銀行は数年前よりデジタル通貨である「デジタル人民元」の導入を進めており、普及させれば主要国で初となる。いっぽう、強権的な政府が国民の財布の中身まで管理しうる点で、中国共産党による統制がさらに強化される懸念がある。
中国は政府主導で中央銀行発行のデジタル通貨が進む

中央銀行が発行するデジタル通貨は「中央銀行デジタル通貨(CBDC、Central Bank Digital Currency)」と呼ばれている。日本銀行によると、CBDCは中央銀行の債務として発行される法定通貨建てのデジタル通貨である。市中金融機関への影響等の問題から、日本を含む世界の主要国は導入に慎重だ。

いっぽう、「アリペイ」や「WeChat Pay」といったキャッシュレス決済が急速に普及した中国では、政府主導で人民元のデジタル化が推進されている。中央銀行である中国人民銀行が発行する「デジタル通貨電子決済(DCEP、Digital Currency Electronic Payment)」、すなわちデジタル人民元のパイロットテストは、中国の主要都市で行われている。市民に抽選でデジタル人民元を配布し、買い物で使用させるというものだ。これまで同行は1億元以上のデジタル人民元を配布した。2022年に開催される北京冬季オリンピックでは、さらに多くのデジタル人民元プログラムが計画されており、普及を着実に進めている。

中国人民銀行デジタル貨幣研究所の元所長である姚前氏は「中国法定デジタル貨幣原型構想」と題する文章の中で、デジタル人民元を「一つの貨幣、二つの保管庫、三つのセンター」と形容した。「一つの貨幣」はすなわちデジタル貨幣(デジタル人民元)、「二つの保管庫」はデジタル貨幣発行庫およびデジタル貨幣銀行庫、そして「三つのセンター」とは認証センター、記録センター、ビッグデータ分析センターのことだ。

デジタル人民元の運用の仕組図(大紀元)

デジタル人民元で強まる権威主義

デジタル人民元は中国人民銀行によって一元的に管理されている。さらに、デジタル人民元は共産党政権の中国政府が管理し、マネーロンダリングや汚職、そして国内での「テロ」の資金調達を排除する名目で、政府が監視を行うこともある。このため、デジタル人民元を通じて、政権による国民の統制がこれまで以上に強化される可能性がある。

世界初の社会主義国である旧ソ連では計画経済を導入したものの、国の財源の要となる国民の消費活動を正確に把握することはできなかった。21世紀に入り、デジタル化の波に乗り内外に力の膨張を続ける中国共産党は、旧ソ連が成し得なかった、国民の靴修理事情まで国家が把握する仕組みを完成させようとしている。

「ネット上で政府にとって好ましくない言論を発表したり、政府が望まない行動をとったりすると、中共が中央銀行を通して直接貯金を差し押さえることができるかもしれない。これでは一種の政治弾圧もしくは経済的な略奪になる」時事評論家の唐浩氏は、中国共産党が管理するデジタル通貨の危うさを指摘する。

米国のシンクタンクも同様の懸念を示している。新アメリカ安全保障センター(CNAS)は1月27日にデジタル人民元に関する報告書を発表、中国のCBDCシステムの内容とその問題について論じた。

「中国政府がデジタル通貨/電子決済(DCEP)と呼んでいるこのCBDCシステムにより、中国共産党はデジタル権威主義を国内で強化し、その影響力と基準設定を海外に輸出できるようになるだろう」と報告書は書いている。さらに、中国当局がデジタル人民元の取引から収集された情報を「社会信用システム」と組み合わせることで、一部の国民に懲罰を与えることも考えられるとした。

デジタル人民元のプライバシーリスク

デジタル決済は世界中で取引されているが、各国政府がその利用データを取得するためには、金融機関を経由する必要があり、一定のプライバシーは確保されている。いっぽう、デジタル人民元は中央銀行が直接発行し、管理するものであるため、プライバシー面が保護されないリスクがある。

前出のCNAS報告書によると、中国人民銀行が発行するデジタル人民元は「制御可能な匿名性」を持っている。つまり、中国人民銀行は、取引当事者間のプライバシーを維持しつつも、行われたすべての取引を監視することが可能になる。この作業を行うのがビッグデータ分析センターだ。

報告書は、世界の中央銀行や金融機関はこれほど詳細に日常の取引データを入手したことがないとし、「制御された匿名性」を持つデジタル人民元は、権威主義国家の新たな統治ツールになると警告を発している。

日本国内の動き

日本では中央銀行デジタル通貨の発行こそ計画されていないものの、国際的な技術革新を踏まえ準備を進めている。

日本銀行は2020年10月9日、「中央銀行デジタル通貨に関する日本銀行の取り組み方針」を発表、「技術革新のスピードの速さなどを踏まえると、今後、「中央銀行デジタル通貨(CBDC)」に対する社会のニーズが急激に高まる可能性」があるとした。そして「現時点でCBDCを発行する計画はないが、決済システム全体の安定性と効率性を確保する観点から、今後の様々な環境変化に的確に対応できるよう、しっかり準備しておくことが重要」だと示している。

また、NHKの3月16日付の報道によると、黒田日銀総裁は同日金融庁等が主催した会合にメッセージを寄せた。黒田氏は、現段階ではデジタル通貨を導入する計画はないという立場を維持しつつも、将来の環境変化に備えて準備をするとの考えを示した。

(王文亮)』