半導体「台湾依存は危険だ」 米中対立で顕在化

半導体「台湾依存は危険だ」 米中対立で顕在化
半導体ショック1
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM0892D0Y1A300C2000000/

『3月5日午前、台湾北部・桃園市。新型コロナウイルス対策で厳格な体制が敷かれた空港に、プライベートジェット機が滑り込んできた。降り立ったのは米パソコン大手HPの最高経営責任者(CEO)、エンリケ・ロレス。2週間の隔離義務を免除する特例を受けたお忍び訪問だった。

「供給を急いでいただきたい」。最低限の検査だけを済ませたロレスは半導体企業の幹部らと次々に会い、直談判を繰り返した。滞在はわずか数時間。半導…

この記事は会員限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

残り1451文字

すべての記事が読み放題
有料会員が初回1カ月無料

有料会員に登録する
https://www.nikkei.com/r123/?ak=https%3A%2F%2Fwww.nikkei.com%2Farticle%2FDGXZQOGM010QT001022021000000&n_cid=DSPRM1AR07

無料会員に登録する
https://www.nikkei.com/r123/?ak=https%3A%2F%2Fwww.nikkei.com%2Farticle%2FDGXZQOGM010QT001022021000000&n_cid=DSPRM1AR07#free

ログインする
https://www.nikkei.com/login

半導体不足への危機感が表れていた。

「9月以降、華為技術(ファーウェイ)との取引を認めない」。昨年5月、トランプ米政権の決定が世界のモノの流れを大きく変えた。ファーウェイはスマートフォンのシェアで世界首位を争っていた。制裁で最も響くのが、台湾積体電路製造(TSMC)が造る最先端の半導体だった。

ファーウェイは「あらん限りの金と力でTSMCから半導体を確保して在庫を積み増し、9月に備えた」(関係者)。こうした無理が世界の半導体の需給バランスを次第に崩していく。

ファーウェイ向けの新たな米制裁が始まった直後の9月25日。今度は米商務副次官補の名前で2ページにわたる文書が、米半導体各社に突然届いた。

「中国SMICとの取引は今後、容認できないリスクをもたらすかもしれない」。制裁の次の標的が中国最大の半導体受託製造会社、中芯国際集成電路製造(SMIC)であることを示唆するものだった。

「政府は本気だ」。これを境に、米クアルコムなど米大手の半導体幹部らは続々と台湾入りを果たす。有能な半導体企業が集積する台湾。直談判で半導体を確保するのが狙いだった。こうして半導体生産は台湾に集中。世界は本格的な半導体不足の混乱に突き進む。
米国は台湾にあまりにも半導体で依存することを警戒するが、手立てを打てないでいる=ロイター

年明けに米フォード・モーターが最大で2割の減産見通しを発表。ゼネラル・モーターズ(GM)も最大20億ドル(約2200億円)利益が下がると公表した。日米独など各国政府もたまらず、台湾に増産を求める異例の展開をみせる。

それでも状況は変わらない。2月18日、たまりかねたかのような書簡が米ホワイトハウスに届く。「事態は緊急を要する。いまが行動のときです」。差出人は17にも上る米業界団体。不満は限界まで高まっていた。

6日後の2月24日。大統領のバイデンはホワイトハウスで、親指大の半導体チップをつまんでカメラに向けた。「これが自動車の生産を遅らせ、米国の労働者に時短を迫ったのです」

精いっぱいの姿勢を見せたバイデンはこの日、半導体の供給網の脆弱性を再点検し、100日間で見直すよう大統領令に署名。誘致したTSMCの米新工場向けなど、約4兆円の支援を検討する方針も明らかにした。

そんな米国が今、気になって仕方がない企業が台湾以外にもある。大統領令の直前、大統領補佐官(国家安全保障担当)のジェイク・サリバンはオランダ政府の安保顧問に電話をかけた。会談後の声明では「緊密な連携の確認をした」だけとはぐらかしたが「半導体装置メーカーASMLの件だった」。ある米政府関係者はそう明かす。

世界の半導体業界は今、台湾のTSMCとオランダASMLが飛び抜けた技術力を持つ。「この両社を甘く見て、この数年で大きな差をつけられたのがインテルであり米国だ。もう、どうにも追いつけないレベルだ」。両社との取引が長い日系装置メーカー幹部はそう語る。

「中国が台湾に脅威を与える状況でこれ以上、半導体で台湾に依存するのは危険だ」。元グーグルCEOのエリック・シュミットが主導する米議会の諮問委員会は3月1日、こう指摘し、米国の現状に警鐘を鳴らした。

安全保障にも関わり、米中対立の焦点といえる半導体。だが、技術のリード役は米中にはなく、過度に台湾に依存する実態が攻防で顕在化した。人工知能(AI)の台頭で今後、必要な量は爆発的に増えるのに、早くも不足が露呈している。各国は将来戦略をどう描くのか。世界はその入り口でつまずき、動揺を隠し切れずにいる。(敬称略)

なぜ半導体が世界を揺らすのか。国家を超えた「知」の争奪戦を追う。

【関連記事】
米、同盟国と供給網整備 半導体・EV電池で中国に対抗
半導体、持たざる経営に転機 有事に供給リスク
米が基幹産業で脱中国 半導体など、同盟国と連携模索
半導体、EUも脱海外依存 域内増産でシェア2割めざす

鴻海、インドで「iPhone12」を初生産 脱中国加速

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM105W80Q1A310C2000000/

『【台北=中村裕】台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業が、米アップルの最新機種である「iPhone12」の生産をインドで予定していることが、10日分かった。中国以外では初めてとなる。中国生産の7~10%程度を移管するもよう。「世界の工場」とされた中国に大きく依存する生産体制の見直しが加速してきた。

生産は、インド南部でチェンナイを州都に持つタミルナド州の既存工場で予定する。iPhoneの旧モデルを生産して…

この記事は会員限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

残り579文字

すべての記事が読み放題
有料会員が初回1カ月無料

有料会員に登録する
https://www.nikkei.com/r123/?ak=https%3A%2F%2Fwww.nikkei.com%2Farticle%2FDGXZQOGM010QT001022021000000&n_cid=DSPRM1AR07

無料会員に登録する
https://www.nikkei.com/r123/?ak=https%3A%2F%2Fwww.nikkei.com%2Farticle%2FDGXZQOGM010QT001022021000000&n_cid=DSPRM1AR07#free

ログインする
https://www.nikkei.com/login

iPhoneの旧モデルを生産しているが、近く最新機種の生産に踏み切る。10日、鴻海の広報責任者は「顧客の話についてはコメントを控える」とした。

アップルは現在、iPhoneの生産を鴻海のほか、和碩聯合科技(ペガトロン)、緯創資通(ウィストロン)の台湾3社に全量委託生産している。年間約2億台のうち、最も多い約6割を請け負うのが鴻海で、年間1億数千万台を生産する。大半は現在も中国生産だが、人件費の高騰や米中対立による影響の回避を狙い、アップルと協議を進め、脱中国の動きを急いでいる段階だ。

特に狙いはインドで、同国政府も米中対立が深まった昨年から、外資企業の脱中国生産の受け皿の役割が担えるように、政策整備を急いできた。特にスマホでは有力外資に対し毎年、売上高の増加分の4~6%にあたる補助金を今後5年間支払う手厚い優遇策を設けた。そのためペガトロンが昨夏、インド進出を決め、ウィストロンもインドでの生産拡大を打ち出すなど、iPhoneの生産が増える方向にある。

ベトナムでの動きも活発化する。鴻海が今年から、アップルのタブレット端末「iPad」を初めて中国以外のベトナムで生産することが明らかになり、ノートPC「MacBook(マックブック)」も同国での生産が予定される。ペガトロンも昨年3月にベトナムに進出したばかり。今後の脱中国生産の動きも、インドとベトナムの2カ国を中心に加速しそうだ。