米国・メキシコ・カナダ協定

米国・メキシコ・カナダ協定
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『出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

アメリカ合衆国、メキシコ合衆国及びカナダとの協定
英語: United States–Mexico–Canada Agreement (米国)
英語: Canada–United States–Mexico Agreement (カナダ)
フランス語: Accord États-Unis-Mexique-Canada
スペイン語: Tratado entre México, Estados Unidos y Canadá
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種類 自由貿易協定
起草 2018年9月30日
署名 2018年11月30日(ブエノスアイレス)
発効 2020年7月1日
締約国
アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
カナダの旗 カナダ
メキシコの旗 メキシコ
言語 英語
フランス語
スペイン語

アメリカ合衆国、メキシコ合衆国及びカナダとの協定(アメリカがっしゅうこく、メキシコがっしゅうこくおよびカナダとのきょうてい、英: the Agreement between the United States of America, the United Mexican States, and Canada[1]、USMCA)は、アメリカ合衆国・メキシコ及びカナダの自由貿易協定である。「米国・メキシコ・カナダ協定」[2]、「米墨加協定」[3]、「米墨加三ヵ国協定」[4]、「新NAFTA」[5]などの様々な訳語、略語、通称があるが、以降はUSMCAで統一する。(※ 文字通り、「ユーエスエムシーエー」と発音するようだ)

これは2017年から2018年にかけて北米自由貿易協定(NAFTA)の加盟国が再交渉した結果であり、2018年9月30日に内容について実質合意がなされ、2018年10月1日[6]に正式に合意された。

2018年11月30日[7]にブエノスアイレスで開かれたG20のブエノスアイレス・サミット(英語版)の席上で、アメリカ合衆国大統領ドナルド・トランプ、メキシコ合衆国大統領エンリケ・ペーニャ・ニエト、カナダ首相ジャスティン・トルドーがこの協定に署名した。

協定の発効のために必要な手続きが各国の立法府で終了し、最後となった米国の手続終了の通報が2020年4月24日だったため、2020年7月1日に発効した[8][9]。

交渉の焦点は主に自動車輸出・鉄鋼及びアルミニウム関税・乳製品・卵・及び家禽市場に向けられた。

また条項のひとつで「データの国境を越えた流れを制限する法律を各締約国が成立をさせること」を禁止している[10]。

NAFTAと比較して、USMCAは環境及び労働に関する法制を強化し、乗用車とトラックの国内生産を奨励している[11]。

この協定はまた知的財産保護を更新し、アメリカはカナダの190億ドルの乳製品市場へのアクセスを増加し、自動車やトラックの国内生産を促進した[12]。

カナダとメキシコの自動車生産に割り当てを課し、オンラインでアメリカ製品を購入するカナダ人の免税限度額を20ドルから150ドルに引き上げた[13]。

背景及び名称

USMCAは、1994年1月1日に発効した北米自由貿易協定(NAFTA)を元としている。この協定は、アメリカによるカナダに対する個別の2国間での関税措置の導入のおそれを含む1年以上の交渉の結果であった [14]。

2016年アメリカ合衆国大統領選挙中、ドナルド・トランプの選挙公約は、北米自由貿易協定の再交渉又は再交渉が失敗した場合の協定の廃棄を含んでいた[15]。

選挙の後、トランプ大統領は他の国との貿易関係に影響を与える多くの変更を行った。

パリ協定 (気候変動)から離脱し、環太平洋パートナーシップ協定の交渉を中止し、中国に対する関税を大幅に引き上げることは、彼がNAFTAの改訂を真剣に検討していることを強く示した[16]。

USMCAの長所と短所をめぐる議論の多くは、すべての自由貿易協定(FTA)をめぐる議論と類似している。

例えば、FTAの公共財としての性質、国家主権の潜在的侵害、貿易取引の文言を形成する上でのビジネス、労働、環境、消費者利益の役割などである。

この協定は各署名国によって異なる呼ばれ方をしている。アメリカでは「United States–Mexico–Canada Agreement (USMCA)」、カナダでは英語では「Canada–United States–Mexico Agreement (CUSMA) [17] 」フランス語では「Accord Canada–États-Unis–Mexique (ACEUM) [18] 」メキシコでは「Tratado entre México, Estados Unidos y Canadá (T-MEC)[19][20]」である。

これは、非公式にこれまでの3国間協定の北米自由貿易協定(NAFTA)と比較して「NAFTA 2.0[21][22][23]」又は「New NAFTA[24][25]」 とも呼ばれる。

交渉

アメリカ貿易権限が定めたアメリカにおけるUSMCA批准プロセスのタイムライン

正式な交渉プロセスが始まったのは2017年5月18日、アメリカのロバート・ライトサイザー通商代表部代表が90日以内にNAFTAの再交渉を開始する意向を議会に通知したときだった[26]。

2017年7月7日にUSTRは貿易促進権限法に基づき交渉目的文書を公表したが、2017年8月16日に交渉が開始され、2018年4月8日まで正式な交渉ラウンドが八回行われた。

ライトサイザーは2018年5月2日、 「今月末までに合意が成立しなければ、交渉は2019年まで中断される」 と述べた。この声明は当時就任したメキシコのアンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール大統領が交渉の文言の多くに同意せず、交渉に調印しない可能性もあるとした。

これとは別に、2018年5月11日ポール・ライアン下院議長は5月17日を議会の行動の期限と定めた。

この期限は無視され、メキシコとの合意は2018年8月27日まで得られなかった[26]。

この時点で、カナダは提示された合意に同意していなかった。

2018年12月1日のメキシコのエンリケ・ペーニャ・ニエト大統領の退任前に締結するため、かつ、60日の審査期間が必要となるため、合意文書をアメリカ議会へ提出する締め切りは2018年9月30日までであった。

交渉担当者は24時間体制で作業を行い、合意文書案を作成したのはその日の午前零時から一時間以内であった。

翌2018年10月1日、USMCAの文書が合意文書として公表された。

合意文書には、2018年にアルゼンチンのブエノスアイレスで開かれたG20首脳会議のサイドイベントとして、2018年11月30日に3か国首脳が署名した[27]。

英語版・スペイン語版・フランス語版はいずれも正文となる。

この協定は、各国の立法府による協定の発効のために必要な手続きが終了し、手続終了の通報を最後の米国が2020年4月24日に行ったため、2020年7月1日に発効する[28][9]。

アメリカのLBO専門家で、ブラックストーングループのCEOであり創設者であるスティーヴン・シュワルツマンはその回想録で、USMCA交渉でジャスティン・トルドーが保護された乳製品市場を譲歩するように求めたことが明らかにした。

シュワルツマンによると、トルドーは、景気後退が2019年のカナダ総選挙期間において彼の政府の選挙見通しに影響を与えることを恐れていた。

トランプ大統領によって残留させた行政官は、2017年1月に、カルガリーで自由党内閣と招待されました。

そして、交渉が終わりに近づいた2018年10月1日、ニューヨークでの国連での土壇場での舞台裏会議で、トルドーはメディア産業と自動車免除を救うために酪農産業を犠牲にしました。

クリスティ・フリーランド外務大臣(トロントのダウンタウンのトリニティ・スパディナ選挙区、そこにはCBC、グローブ・アンド・メール、トロント・スター、トロント・サンのスタッフが多数居住している)は、「カナダの文化」をメディア産業に直接マップしている。

ロバート・ファイフ氏は選挙に関する記事で、自由党以外からは何のコメントも得られなかった[29]。

条項

USMCAの規定は農産物・工業製品・労働条件・電子商取引などを含む幅広い範囲を含んでいる。

このUSMCAのより重要な側面は、アメリカの酪農家にカナダ市場へのより多くのアクセスを与えること、自動車の製造における、3国間で製造される割合を増加させること及びNAFTAに含まれていた紛争解決システムを維持することである[28][30]。

乳製品

乳製品の規定はカナダが未批准の環太平洋パートナーシップ協定(TPP)で合意した規定と類似しているが、若干高くなっており、アメリカには152億ドル(2016年現在)のカナダ乳製品市場の3.6%が無関税で提供され、TPPでの3.25%から上昇している[31][32] 。

カナダは、国内供給管理システムを維持したまま、特定の乳製品のクラス7価格設定条項を撤廃することに合意した[33]。

カナダはアメリカから購入する際の免税限度を以前の20ドルから150ドルに引き上げ、カナダの消費者がアメリカ市場により多く免税でアクセスできるようにすることに合意した[34]。

自動車

自動車の原産地規則の要件により、自動車の価値の一定部分は、締約国内から得られなければならない。

NAFTAでは62.5%が要求された。

USMCAはこの要件を12.5ポイント増やし、自動車の価値の75%にする。

トランプ政権の当初の提案は、85%に引き上げ、自動車部品の50%はアメリカの自動車メーカーが製造するという条項が追加するものであった[26]。

合意されたのテキストには、この条項のより厳しいバージョンは含まれていませんでしたが、国内調達の増加は投入コストの増加と既存のサプライチェーンの混乱を伴うことが懸念されています[35]。

労働

USMCA附属書23-Aはメキシコに対し、労働組合の団体交渉能力を改善する法案を通過させるよう要求している[36]。

メキシコが遵守することを求められている具体的基準については、結社の自由及び団体交渉に関する国際労働機関第98号条約に規定されている。

メキシコのアンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール政権は2018年末、こうした国際基準の遵守を追求する法律を導入した。

その他の労働関連措置には自動車産業における最低賃金要求が含まれる。

具体的には北アメリカで生産される自動車の40~45%は、最低時給16ドルの工場で生産されなければならない[35]。この措置はUSMCA批准後の最初の5年間に段階的に導入される。
知的財産

USMCAはカナダにおける著作権の存続期間を延長し、70年、録音の場合は75年とする[37]。

この延長は環太平パートナーシップ協定の第18.63条で規定されたのと同じ知的財産政策を反映している[38]。

USMCAはまた、ワクチンなどの生物学的製剤の特許を10年に延長する。これはカナダでは8年、メキシコでは5年という現行の基準と比較したものである[39]。

紛争解決メカニズム

NAFTAには三つの主要な紛争解決メカニズムがあり、第20章が各国間の解決メカニズムである。

3つのメカニズムの中で最も議論が少ないとみなされることが多く、USMCAでは当初のNAFTAの形を維持しているが、そのようなケースでは、USMCA加盟国間で協定の規定に違反されたという申立てが含まれる[40]。

第19章紛争は、ダンピング防止税又は相殺関税の正当化を管理する。

第19章がなければ、これらの政策を管理するための法的手段は国内法制度を介することになる。

第19章では、USMCAパネルが事件を審理し、紛争の仲裁において国際貿易裁判所として行動することを規定している[40]。トランプ政権は新しいUSMCAの条文から19章を削除しようとしたが、今のところ合意は維持されている。

第11章は、投資家・国家間の紛争解決として知られる第三のメカニズムであり、多国籍企業は差別的とされる政策について参加国政府を訴えることができる。

第11章は、和解メカニズムの中で最も議論の多いものと広く考えられている[41]。

カナダの交渉担当者は、事実上、この措置のUSMCAバージョン、第11章から離脱した。カナダはNAFTAが終了した3年後に、ISDSから完全に免除される[41]。

サンセット

また、協定そのものについては、6年間ごとに3国間で見直しを行うこととし、16年間のサンセット条項を設けている。

この契約は6年間の見直し期間中、さらに16年間延長することができる[42]。

サンセット条項の導入は、USMCAの将来を形作る上で、より多くの管理を国内政府に委ねている。しかし、これはより大きな不確実性をもたらす恐れがある。

自動車製造のような部門は、国境を越えたサプライチェーンへの多大な投資を必要とする[43]。アメリカの消費者市場が支配的であることを考えると、企業はアメリカでの生産を増やすよう迫られる可能性が高く、こうした自動車の生産コストが上昇する可能性が高い[44]。

為替

USMCAに新たに追加されたのは、マクロ経済政策と為替レートの問題を扱う第33章である。

これは、将来の貿易協定の先例となりうる重要なことだと考えられる[45]。

第33章では、通貨及びマクロ経済の透明性に関する透明性の要件を定めているが、これに違反した場合には、第20章における紛争の訴求理由となる[45]。

アメリカ・カナダ・メキシコは現在、いずれも国際通貨基金協定に基づく実体的な政策要件に加え、これらの透明性に関する要件を遵守している[46]。

為替

アメリカのLBO専門家で、ブラックストーングループのCEOであり創設者であるスティーヴン・シュワルツマンはその回想録で、USMCA交渉でジャスティン・トルドーが保護された乳製品市場を譲歩するように求めたことが明らかにした。

シュワルツマンによると、トルドーは、景気後退が2019年のカナダ総選挙期間において彼の政府の選挙見通しに影響を与えることを恐れていた。

トランプ大統領によって残留させた行政官は、2017年1月に、カルガリーで自由党内閣と招待されました。そして、交渉が終わりに近づいた2018年10月1日、ニューヨークでの国連での土壇場での舞台裏会議で、トルドーはメディア産業と自動車免除を救うために酪農産業を犠牲にしました。

クリスティ・フリーランド外相(トロントのダウンタウンのトリニティ・スパディナ選挙区、そこにはCBC、グローブ・アンド・メール、トロント・スター、トロント・サンのスタッフが多数居住している)は、「カナダの文化」をメディア産業に直接マップしている。ロバート・ファイフ氏は選挙に関する記事で、自由党以外からは何のコメントも得られなかった[29]。

毒素条項 第32.1条

USMCAは、加盟国が将来の自由貿易協定をどのように交渉するかに影響を与えるだろう。

第32.1条は、非市場経済国との自由貿易交渉を開始しようとする場合には、USMCA加盟国に対し三箇月前までにその旨を通告することを要求している。

第32.1条は、USMCA加盟国が今後合意する新たな自由貿易協定を審査する権限を認めている。

第32.1条は、意図的に中国を標的にしていると広く推測されている。事実、ホワイトハウス高官は、USMCAの交渉に関して、 「我々は、他の国と協定を結ぶことによって米国の立場を本質的に弱めようとする中国の試みを非常に懸念している。」 と述べた。[47]。

為替相場操作への対抗

USMCA加盟国は、為替相場の操作を防ぐための国際通貨基金基準を順守することになっている。協定は市場介入の公開を求めている。両当事者が異議を唱えた場合には、IMFが、レフリーとしての役割を果たすよう求めることができる[47]。

国有企業への対抗

中国が支配権を行使するためのてことして優遇している国有企業が、民間企業と比較した場合、不当な補助金を受けることを何とかして防いでいる。.[47]

協定の修正

修正合意事項には協定実施、労働、環境、処方薬に関する内容が含まれる[48]。

協定実施

法執行の抜け穴をなくし、紛争解決システムを合理化し、貿易相手国が約束を守るようにした。

労働

規則の強化:米国の貿易協定における労働規則は、不可能ではないにしても、執行が困難であることが証明されている。ルールを強化するために、次のような重要な変更が行われた。

強制労働条項を実効的に実施不可能にしていた条項を削除。

メキシコの労働改革の実施と労働義務の遵守を監視する省庁間委員会を設置。

メキシコを拠点とし、メキシコの労働慣行に関する現場の情報を提供する労務担当官を設置。

迅速な対応の強化された労働執行:国家間の紛争解決だけでは、米国の貿易相手国が労働義務を遵守することを保証するには効果的ではない。労働者に特化した新しい強化された執行メカニズムを確立する。

迅速な期間内に、工場単位で協定の労働義務を実施する;

アメリカ合衆国とメキシコの間で取引されるすべての工業製品及びすべてのサービスを対象として、

独立した労働専門家によるコンプライアンスの検証

結社の自由及び団体交渉の義務を遵守して生産されていない商品及びサービスに対して制裁を科す。

環境
多国間環境協定(MEAs)を採択し、実施し、及び維持することへのコミットメントを追加。

MEAのコミットメントを優先する条項の復活。

MEAと貿易協定の義務を履行する。

モントリオール議定書をこの協定の対象とするために、条項を削除。

省庁間委員会を設置し、カナダとメキシコの環境の現状を評価;

メキシコシティに環境専任の駐在員を設置し、定期的にモニタリング

合法的に収穫・採取された動植物のみがメキシコを通じて取引されることを保証する新たな税関検証メカニズムの創設。

処方薬
議会の立法権の維持:安価な医薬品へのアクセスを改善するために議会が米国法を改正できるようにするため、高い処方薬価格に貢献する条項を削除。

市場で最も高価な医薬品の一部である生物製剤について、少なくとも10年間の独占権を両締約国に与えることを求める条項を削除。

既知の製品の新たな用途について特許が利用可能であることを確認することを両締約国に求める規定を削除。

以前に承認された医薬品の新たな使用に関連して提出される臨床情報について、さらに3年間の独占権を必要とする条項を削除した。

公正な競争の確保
ジェネリックおよびバイオ後続企業が特許発明を使用できる状況を明確にし、特許満了日の初日に販売承認を取得できるようにするための規制審査規定の改正。

ジェネリック医薬品の競争を促進する米国の法律の制限を組み込むためのデータ保護規定の改正。

医薬品へのアクセスを改善

規制上の承認と特許の地位の「ハードリンク」を排除するための特許関連条項の改正。

署名・批准及び発効

新協定合意に署名する、手前左からメキシコのエンリケ・ペーニャ・ニエト大統領、アメリカのドナルド・トランプ大統領、カナダのジャスティン・トルドー首相。(2018年11月30日にアルゼンチンのブエノスアイレスにて開催されたG20サミットにて。)

新協定合意への署名を見せる、手前左からメキシコのエンリケ・ペーニャ・ニエト大統領、アメリカのドナルド・トランプ大統領。右端のカナダのジャスティン・トルドー首相は拍手。
2018年11月30日、G20サミットにおいて3者全員が予定通り協定に署名した[49][50]。 協定が発効するためには、各国の立法府による批准が必要である。2018年米国中間選挙の結果、民主党が下院を制し、議会通過のため、米議会民主党とトランプ政権との協議が行われ、2019年12月10日に合意に達した[51]。

2019年12月10日、メキシコのヘスス・セアデ外務省北米担当次官、アメリカのロバート・ライトハイザー通商代表、カナダのクリスティア・フリーランド外相はメキシコ市の国立宮殿において、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)の内容を一部修正する議定書に署名した[52][53]。

各締約国は、協定の効力発生のために必要な国内手続を完了したときは、他の締約国に対し書面により通報する。協定は、最後の通告の後引き続く3箇月目の月の初日に発効すると規定されている[54]。この最後の通報がアメリカにより2020年4月24日に行われたため、2020年7月1日に発効した[9]。

米国

米国下院の次期歳入委員長のビルパーセルは、USMCAが議会を通過するための変更が必要であると主張した[55]。共和党員は、USMCAのLGBTQと妊娠中の労働者に労働権を認める現在の規定に反対した[56]。議会の共和党議員40人は、「性的指向および性同一性の言葉の前例のない組み入れ」を含む取り決めに署名することに反対してトランプを促した。その結果、トランプは最終的に「雇用差別から労働者を保護することが適切であると考える政策」のみを各国に約束する改訂版に署名し、米国は追加の非差別法の導入を要求されないことを明確にした[57]。カナダ政府は、USMCAの合意が変更された場合、合意された条件にもはや従わないという懸念をさらに表明した[58]。

2018年12月2日、ドナルド・トランプ大統領は、NAFTAの6カ月間の脱退手続きを開始すると発表し、議会はUSMCAを批准するか、NAFTA以前の取引ルールに戻す必要があると述べた。 大統領が議会の承認なしに協定から一方的に撤退できるかどうかについて学者の間で議論が行われている[59]。

2019年3月1日、米国の農業を代表する多くの団体がUSMCAへの支持を表明し、議会に協定の批准を求めた。また、新貿易協定が批准されるまでNAFTAを支持し続けるよう、トランプ政権に求めた[60]。しかし、リチャード・ニール下院歳入委員長は3月4日、議会での合意は「非常に難しい」と述べた[61]。3月7日の時点で、ホワイトハウス高官は下院歳入委員会のメンバーや、問題解決コーカス、木曜グループ、ブルードック連合といった両党の穏健な党員集会に出席し、批准への支持を得ようと努めている。議会との交渉が続く中で、トランプ政権はNAFTAから脱退するという脅威からも後退した[62]。

5月30日、ライト・ハイザー通商代表は、2015年大統領貿易促進権限(TPA)法に基づく米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA、新NAFTA)の実施に関する行政措置に関する声明案を議会に提出した。同法案は、6月29日から30日後にUSMCAの実施法案を議会に提出することを可能にするもので、ナンシー・ペロシ下院議長とケビン・マッカーシー共和党院内総務にあてた書簡[51]の中で、ハイザー通商代表は、USMCAはアメリカの通商政策・アメリカの競争力のあるデジタル貿易・知的財産・サービス条項の近代・アメリカ企業・労働者・農民のための公平な競争条件の場の創出における標準であり、これはメキシコとカナダの貿易関係の基本的な再均衡を示すものであると述べた[63]。

行政措置声明の草案提出を受けて、ペロシ下院議長は声明を発表し、USMCAがアメリカの労働者や農民に利益をもたらすことをライトハイザー通商代表と確認する作業を終える前に草案を提出したのは前向きな手段ではなく、NAFTA改正の必要性については合意しているが、労働基準や環境保護などにおいて「より厳格な執行規定が必要」と指摘した[64]。
9月25日、トランプ米大統領は自分に対する弾劾調査がアメリカ・メキシコ・カナダ協定の議会承認を混乱させ、投資家がよりリスクの高い資産から逃れようとしているメキシコのペソと株式市場を下落させる可能性があると警告した[65]。

9月26日、アメリカのナンシー・ペロシ下院議長は、メキシコとカナダとの間の通商協定の批准に向けた作業を進めていることを明らかにした[66]。

12月10日、ナンシー・ペロシ下院議長は米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)の修正について、トランプ政権と合意に達した旨を発表した。 ペロシ議長は記者会見を開き、「今回の貿易協定はNAFTA(北米自由貿易協定)よりも優れたものだが、われわれの取り組みによって、政権から当初提示されたものより飛躍的に改善した」と称賛した[51]。

12月13日、米国・メキシコ・カナダ協定実施法(H .R.5430)が、民主党下院院内総務のホイヤー、ステニー議員により下院に提出される[67]。

12月19日、米国・メキシコ・カナダ協定実施法(H .R.5430)が、下院で賛成385(民主党193、共和党192)反対41(民主党38、共和党2、無所属1)で可決される[67][68]。

2020年1月16日、米国・メキシコ・カナダ協定実施法(H .R.5430)が、上院で賛成89(民主党38、共和党51)反対10(民主党8、共和党1、無所属1)で可決される[67][69]。

1月29日、トランプ大統領は米国・メキシコ・カナダ協定実施法(H .R.5430)に署名し成立した(Public Law No: 116-113)[70] 。

4月24日、ライト・ハイザー通商代表は、すでにカナダ及びメキシコが協定発効のための国内手続の完了を通報しており、米国が手続の完了を両国に通知して協定が7月1日に発効することを議会に対し通知した[71]。

カナダ
2019年5月29日、トルドー首相はUSMCA実施法案 [72]を下院[24]に提出した。6月20日、下院第二読会を通過し、国際貿易に関する常任委員会に付託された[73]。

9月11日、カナダのジュリー・ペイエット総督は、ジャスティン・トルドー首相の助言に基づき、カナダ議会の解散を宣言[74]し、選挙戦がスタートした。カナダの下院議会選挙は、2007年選挙法に基づき、前回2015年10月の総選挙から4暦年目の10月の第3月曜日に行うこととされており、今回は10月21日に投開票が行われる。解散によりUSMCA実施法案は、廃案となり、総選挙後の新議会で、再度提出、審議されることになる。

2020年1月29日、クリスティア・フリーランド副首相兼政府間関係相は、USMCA実施法案 [72]を下院[75]に提出した。2月6日、下院第二読会を通過し、国際貿易に関する常任委員会に付託された[75]。

3月13日、実施法案は下院を通過し、同日上院を通過して総督承認がされ法案は成立した[75][76]。この異例の通過は、新型コロナウイルスの拡大に備えて手続きを前倒ししたと報道されている[77]。

4月3日、クリスティア・フリーランド副首相兼政府間関係相は、カナダがアメリカ及びメキシコに対し、USMCAの効力発生のために必要な国内手続を完了した旨通告したと発表した[25]。

メキシコ
2019年6月20日、メキシコ上院は協定を批准した(賛成114、反対3、棄権3)[78]。

12月12日、メキシコ上院は米国・メキシコ・カナダ協定を修正する議定書を賛成107、反対1で承認した[79]。

2020年4月3日、メキシコ政府がカナダ及びアメリカに対し、USMCAの効力発生のために必要な国内手続を完了した旨通告したとCBCが報道した[80]。

USMCAに対する反応

アメリカのマイク・ペンス副大統領がUSMCAを支持する。(2019年)

トランプ大統領は、しばしばNAFTAを「史上最悪の貿易協定かもしれません。」[81] と批判してきたが、トランプの新しいレトリックは、「これは私たち全員にとって素晴らしい取引です。」とし、USMCAを賞賛している[82]。

通商専門家の間では、貿易条件の変更が、ホワイトハウスの観点からこのような変更を正当化するに足るほど重要であるかどうかについて、意見が分かれている。NAFTA交渉を総括したクリントン元大統領のもとでのミッキー・カンター元通商代表は、「これは、本当に元々のNAFTAです。」とし、と批判した[83]。マサチューセッツ州のエリザベス・ウォーレン上院議員は、「新しい規則は、高齢者や救命医療を必要とする人のための医薬品価格の引き下げを困難にするだろう。」と述べ[84]、生物学的物質の特許期間を10年に延長し、新しいジェネリック医薬品の市場参入を制限する法案を熟考した。

アメリカ通商代表部は、この交渉形式のUSMCAの成果に焦点を当てたファクトシートを公表し、新たなデジタル貿易措置、営業秘密保護の強化、自動車の原産地規則の調整による製造の支援を貿易協定の利益の一部として挙げ、上述の批判者に反論を提供している[85]。

かつて支配的な地位を占めていた携帯電話会社、リサーチ・イン・モーション社の元会長であるジム・バルシリーは、2018年1月に出版された論説の中で、カナダの政治家たちの「植民地の嘆願的な態度」はUSMCAのデータと知的所有権条項に対する誤ったアプローチとなっていると述べている[10]。

2018年夏に発表されたカナダ国立研究評議会の報告書は、USMCAの規定のもとで、国内企業が外国企業のビッグデータの提供者になるリスクを懸念する「というものであった[10]。

2019年4月28日、アイオワ州選出の共和党上院議員チャック・グラスリーはウォールストリート・ジャーナルへの論説を書き、メキシコとカナダの報復関税に言及し、「連邦議会は、メキシコとカナダの報復関税発動中はUSMCAを承認しない。」と述べた[86]。

2019年夏、トランプ氏のラリー・クドロー最高経済顧問は、USMCAは批准後、GDPを0.5%ポイント、雇用を年間18万人増やすと2度主張した。国際貿易委員会は、クドローの分析は、同協定(NAFTA)が批准されてから6年間で、GDPを0.35ポイント、雇用を176,000人増加させたことを実際に確認したことを引き合いに出した分析した。アメリカ議会調査局が発表した別の調査結果によると、雇用・賃金・経済全体の成長には、この協定による測定可能な影響はない[87]。』

米英FTA棚上げ、首脳会談で議論せず EU離脱の旗印

米英FTA棚上げ、首脳会談で議論せず EU離脱の旗印
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR080650Y3A600C2000000/

 ※ 米国としては、USMCA(新NAFTA)の経済圏の利益を守る必要があるんだろう…。

 ※ その延長で、TPPからも離脱した…、とオレは思っている…。

『【ロンドン=江渕智弘】米国と英国の自由貿易協定(FTA)交渉が当面棚上げされる見通しになった。スナク英首相が7日、バイデン米大統領との会談前に「優先事項ではない」と述べ、議題にしない考えを示した。米国とのFTA締結は欧州連合(EU)からの離脱を推進した与党・保守党の旗印だった。

バイデン氏とスナク氏は8日、米ワシントンで会談。これに先立ってスナク氏が英メディアの取材に答えた。FTAが米英双方にと…

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『FTAが米英双方にとって優先事項ではないと語ったうえで「今の時代特有の課題と機会を反映した経済連携を重視する」と説明した。

貿易の促進に向けて「具体的で的を絞った方法」をバイデン氏と協議すると話した。重要鉱物やデジタル分野での協定が念頭にあるとみられる。インディアナ州などと結んでいる米国の個別の州を相手にした貿易協定の拡大もめざす。

EUから離脱した英国が望んだ米英FTAはトランプ前米政権が2020年5月に正式に交渉を始めた。新たなFTA締結に消極的なバイデン政権が21年に発足し、停滞していた。

8日の首脳会談ではウクライナに対する軍事支援や人工知能(AI)をめぐるルールづくり、政治の混乱が続く英領北アイルランド問題などを話し合う。

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鈴木一人
東京大学 公共政策大学院 教授
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分析・考察 Brexitの一つの目玉はEUの枠組みから離れて、世界各国、特にアメリカや日本との自由貿易をイギリスに都合の良いように(EUの他の加盟国に引っ張られることなく)決めることができる、ということだった。

確かに日英自由貿易協定は実現したが、基本的には日EUの協定を焼き直すものであった。
アメリカとの協定はEUも結んでいないだけに、これがうまくいけばBrexitを支持した人たちも留飲を下げると思いきや、アメリカが自由貿易に対して背を向け、まったく乗り気ではなくなった。

結果としてBrexitは期待した成果をあげることができず、マイナス面ばかりが目立つこととなった。
2023年6月9日 1:35 』

日経平均「SQ超え」で一段高 7月物オプションに先高観

日経平均「SQ超え」で一段高 7月物オプションに先高観
金融工学エディター、小河愛実
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB0915Z0Z00C23A6000000/

 ※ 『SQ算出日の日経平均がSQ値を超えられない場合「幻のSQ」と呼ばれ、弱気相場への反転サインとされる。例えば、22年6月のSQでは、SQ値の2万8122円を超えられず、その後、2万6000円前後まで下落した。オプションの買う権利(コール)の建玉(未決済残高)が積み上がりが今回と似ており、似たような動きになるとの警戒感があった。』…。

 ※ こういうことは、知らんかった…。

 ※ いずれ、底流では、ウクライナ戦争の勝敗の行方の「予測」と、戦後の世界の姿への「予測」が、激しく争闘しているものと思われる…。

『9日の日経平均株価は前日比の上げ幅が一時600円に迫る上昇となった。上昇に弾みがついたきっかけは「SQ(特別清算指数)」という数値の突破だ。5月以降の上昇相場の主戦場となってきた6月限月の株価指数先物とオプションの売買をひとまず手じまう値段になる。多くの市場関係者の相場観を集約したこの数値を超えたことが、新たな上昇相場への期待を生んだ。

「『幻のSQ』となって日経平均が弱含むとみていたが、警戒し…

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『警戒しすぎたようだ」。みずほ証券の三浦豊シニアテクニカルアナリストは9日午前の日経平均の動きにこうこぼした。

SQは先物やオプションを途中で反対売買せずに期日まで持ち続けた場合の清算価格を指す。6月物は8日が最終売買日で9日がSQ算出日だった。SQ値は日経平均構成銘柄の始値で計算し、この日の9時過ぎに速報値で3万2018円となった。市場関係者が固唾をのんで見守ったのが日経平均が3万2018円を超えるかどうか。9時15分前後に突破し、安堵が広がった。
SQ算出日の日経平均がSQ値を超えられない場合「幻のSQ」と呼ばれ、弱気相場への反転サインとされる。例えば、22年6月のSQでは、SQ値の2万8122円を超えられず、その後、2万6000円前後まで下落した。オプションの買う権利(コール)の建玉(未決済残高)が積み上がりが今回と似ており、似たような動きになるとの警戒感があった。

三浦氏は、前日までの乱高下のなかで「ポジションの調整が進んだ」とみる。6月限月の日経平均のコールの建玉は5日にピークの19万枚まで膨らんでいた。最終取引日だった8日にも18万枚超残り、ほとんどが清算されたもよう。オプションによる日経平均の大きな値動きはひとまず一段落しそうだ。

7月限月のオプションでは、静かにコールの買いの積み上げが始まっている。5日以降で1万枚増えて9万5000枚となった。現状では、3万4000円のコールの建玉が1万2000枚あるほかは、1つの行使価格で1万枚を超えるような建玉はないため、コールに関連した先物の売買で株価が大きく動くような状況ではない。

「日経平均の急ピッチな上昇への恐怖感からトレーダーが慌ててコールを買っていた5月から、7割くらいは手じまわれた。これからはじわじわ増えていく展開か」とゴールドマン・サックス証券の石橋隆行ヴァイス・プレジデントはみる。コール人気が続いており今後、残高がどこまで積み上がっていくかが焦点になる。

(金融工学エディター、小河愛実)』

仕組み債とは デリバティブで高利回り設定、元本毀損も

仕組み債とは デリバティブで高利回り設定、元本毀損も
きょうのことば
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB132VH0T10C23A2000000/

 ※ こういう説明聞いても、よく分からん…。

 ※ 大体、「デリバティブ」と聞いても、よく分からん…。

 ※ けっこう、文献も読んだりしたが、よく分からん…。

 ※ 分かっていることは、「先物」の一種だということだ…。

 ※ それで、「先物」とは、文字通り、「相場の先(将来)」の「当てっこ」するということだ…。

 ※ 「当てっこ」だから、今現在は「売買」の「資金」を持っていなくても、「保証金」だけで、「参加」できる…。

 ※ 現実に「売買資金」を持っていなくても、「これから先のある時点」での「売買」を約束するわけだからな…。

 ※ 「保証金」程度で、足りるわけだ…。

 ※ それで、その「保証金」の範囲内で、実際には「売買資金」を持っていなくても、「一定の金額内での、売買の約束」を許可するわけだ…。

 ※ そういうことで、現実の「売買資金」の少額所有者でも、「保証金」の範囲内でなら、やや大きい額の「売買の約束」ができる…、ということになる。

 ※ ここいら辺を称して、「レバレッジ(梃子)」とか言ったりするわけだ…。

 ※ 当たれば、「利益」も大きいが、当然の話しだが、外れれば「損失」も大きくなる…。

 ※ 見込みが外れても、自分の提示した(約束した)金額での「売買」を、強いられるわけだからな…。

 ※ 本来は、現実売買のリスクを「ヘッジ」したい、プロの金融屋が利用することで発展した「先物市場」だ…。

 ※ そういう海千山千の金融屋に混じって、「素人さん」が「相場を張ろう」というわけだ…。

 ※ それなりの知識と覚悟が必要となるのは、当然の話しだろう…。

『▼仕組み債 債券の一つだがデリバティブ(金融派生商品)を使い、複雑な仕組みを作り国債や社債よりも高い利回りを設定している金融商品。もともとはプロ向けに開発された商品だったが、最近では個人でも購入できるようになっていた。幅広い投資家に販売する公募型と対象を絞る私募型があり、多くの金融機関は公募型の販売を取りやめている。
デリバティブを組み込むことで投資家などのニーズに応じて満期やクーポン(利子)などを設定できるものの、オプション取引を組み込むため価格下落時に大きな損失が発生しやすい。個別株や為替相場などの参考指標があらかじめ定めた水準(ノックイン価格)を下回ると償還時に元本割れが発生したり、利益を出すことなく早期償還されたりする場合がある。

仕組み債の代表格の他社株転換債(EB)は個別株の値動きを参照にする。売れ筋は米テスラ株や米アマゾン・ドット・コム株などに連動する商品だった。テック株が調整色を強めた22年以降にノックインする事例が増えた。なかには3カ月で元本の8割を毀損した例もあった。

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クレムリンでかつてスピーチライターとして働いていたアバス・ガリャモフは2月にCNNに語っている。

クレムリンでかつてスピーチライターとして働いていたアバス・ガリャモフは2月にCNNに語っている。
https://st2019.site/?p=21199

 ※ 『外国の論者の見るところ、クリミア半島から露軍が叩き出されれば、さしものプー之介もその地位にはとどまれまい。したがってクリミア戦線が天王山である。』…。

 ※ なるほど、「プーチン政権」の命運までも、かかっているわけだ…。

 ※ しかし、そういう「重大事態」の「行きつく先」の予測(特に、核管理の問題…)は、できるのか…。

 ※ そして、そういう「危うい計画」に対して、米国及びNATO諸国は、ゴーサインを出すものなのか…。

 ※ 「債務上限問題」の収束を理由とするとされる、現下の米株市場の活況(日本株市場の活況を含む)は、既に「そういう事態」を「織り込み済み」という話しなのか…。

『Tom Porter 記者による2023-6-6記事「How a coup to force Putin from power could go down if he loses in Ukraine, according to former intel officers」。

    クレムリンでかつてスピーチライターとして働いていたアバス・ガリャモフは2月にCNNに語っている。露軍内に反戦ムードが昂じており、プーチンはひきずりおろされる可能性があると。

 プーチン権力を支える鷹派のとりまき連を「シロヴィキ」という。こいつらが実は、宮廷クーデターの潜在首謀者たり得るのだ。

 プリゴジンも、遠まわしのプーチン攻撃を繰り返している。
 ただ、現状、彼の手兵は、プーチン護衛部隊に敵わない。

 シロヴィキの大多数は、プリゴジンやカディロフのような軍閥の親分にクレムリンに来てもらいたいとは思っていない。

 外国の論者の見るところ、クリミア半島から露軍が叩き出されれば、さしものプー之介もその地位にはとどまれまい。したがってクリミア戦線が天王山である。』

世銀、世界成長率を2.1%に上方修正 23年も減速続く

世銀、世界成長率を2.1%に上方修正 23年も減速続く
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN06DI70W3A600C2000000/

 ※ 『IMFやOECDの世界GDPは購買力平価ベースで集計してます』…。
   『世銀のGDPは米ドル市場レートで集計してますので、新興国ウェイトが小さくなるため、経済成長率は低く出がちになります』…。

 ※ ここは、知らんかったぞ…。

 ※ 単純に、「数字」だけ見てても、いけないわけだ…。
 
『【ワシントン=高見浩輔】世界銀行は6日、2023年の世界の実質経済成長率を1月時点の1.7%から2.1%に上方修正したと発表した。新型コロナウイルス禍を封じ込めるゼロコロナ政策を終えた中国の回復を見込む。米欧の急ピッチな金融引き締めを背景に22年の3.1%から減速するシナリオは維持した。

23年の成長率は年初の個人消費が底堅かった米国を1月予想から0.6ポイント引き上げて1.1%とし、ユーロ圏も…

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『ユーロ圏も0.4ポイント高い0.4%とした。日本は賃金の伸びの弱さが消費を押し下げるとして0.8%まで0.2ポイント下方修正した。中国は5.6%と1月から1.3ポイント引き上げた。

急速な利上げの効果は23年を通して経済を下押しし、24年の成長も押し下げる。個人消費の大幅な減速を見込む米国は24年の成長率予想が0.8%と低い。日本もさらに0.7%まで減速する。世界経済では2.4%と予想を0.3ポイント引き下げた。低い成長率が続く見通しだ。

世界銀行グループのバンガ総裁は「貧困を減らし、繁栄を広げる最も確実な方法は雇用であり、成長の鈍化は雇用創出をより困難にする」と懸念を表明した。チーフエコノミストを務めるギル上級副総裁は、高インフレに対応する先進国などの利上げにより新興国や途上国の債務問題が深刻になっていると指摘した。

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永浜利広のアバター
永浜利広
第一生命経済研究所 首席エコノミスト
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ひとこと解説 2023年の表面上の経済成長率はIMF見通しの+2.8%やOECD見通しの+2.6%より低くなってますが、単純に比較はできません。

というのも、IMFやOECDの世界GDPは購買力平価ベースで集計してますので、新興国のウェイトが大きくなり、経済成長率が高くなりがちです。

一方、世銀のGDPは米ドル市場レートで集計してますので、新興国ウェイトが小さくなるため、経済成長率は低く出がちになりますので、注意が必要でしょう。
2023年6月7日 8:25 (2023年6月7日 8:26更新) 』

アジアの覇権めざす 中国人民元の挑戦(1)

アジアの覇権めざす 中国人民元の挑戦(1)
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO82528370Z20C15A1I10000/

『2015年2月3日 7:00

台頭する中国はアジアの覇権をめざしている。「海洋強国」の建設は、東シナ海や南シナ海であつれきを招いている。その中国の海洋戦略は通貨戦略と連動する。リーマン・ショックによる世界経済危機を受けて、中国は人民元の国際化やBRICS開発銀行、アジアインフラ投資銀行(AIIB)の設立など矢継ぎ早の戦略を打ち出している。野心的ともいえる人民元の挑戦は、米ドルを基軸とする第2次大戦後の国際通貨体制に揺さぶりをかけるものである。

海洋進出と連動

米国の国際政治学者、ジョン・ミアシャイマー・シカゴ大教授はリアリストといわれるだけに、中国をめぐる国際情勢の冷厳な現実を見据えている。「冷戦終結から25年、米国一極の時代と思われたが、中国が米国を凌駕(りょうが)するのではないかという位置に到達している。パワーバランスは時間が経てば経つほど中国有利になっていく。中国はその経済力を軍事力増強に回すだろう」と語る。そのうえで「米国が西半球で覇権を確立しているように、中国は東アジアで覇権国になろうとするだろう」と指摘する。

たしかに、日本を抜いて世界第2の経済大国になった中国の軍事力増強は急ピッチだ。その規模は2014年度で8082億元で、米国に次ぐ2位。米国の4分の1だが、日本の2.27倍だ。この10年間で4倍という急拡大である。中国の国防費は、外国からの兵器調達などが含まれないため、実際の規模はその1.3~2倍になると米国防総省は分析している。

中国は空母の建設に乗り出すなど海洋強国をめざす動きが顕著だが、それだけではない。バラク・オバマ米大統領が打ち上げた「核兵器なき世界」のもとで核保有国は核軍縮に取り組んだが、中国だけは核兵器も増強している。

東シナ海では尖閣諸島をめぐる日中のあつれきは解消できず、南シナ海ではベトナム、フィリピンなど東南アジア諸国連合(ASEAN)諸国との緊張も深まっている。この海洋進出がアジアで覇権をめざす一環だとすれば、緊張をほぐすのは容易ではない。

米国のシンクタンク、カーネギー平和財団による「2030年の中国の軍事力と日米同盟」に関する報告では、中国は日本の国防力や日米同盟による抑止力を圧倒する軍拡を背景に、日本との紛争を軍事力の行使なしに、有利に決着することになると分析している。

リーマン・ショックが転機

中国はなぜ「覇権主義」に走り出したのか。1978年、政権についた鄧小平は改革開放路線を打ち出し、現代中国の基礎を築いた。当時、鄧小平が唱えたのは「韜光養晦(とうこうようかい)」(才能を隠して内に力を蓄えよ)である。同時に、覇権は追求しない方針を打ち出した。まだ発展段階の始まりにすぎなかった中国にすれば、当然の路線選択だった。

この基本路線を転換させたのは、2008年9月のリーマン・ショックである。震源地、米国をはじめ世界経済が危機に陥り、米国の指導力がしだいに低下するという読みが中国内で強まったからだ。すかさず11月に、胡錦濤政権は4兆元の大規模な景気対策を打ち出す。胡錦濤国家主席は「中国の内需拡大は世界経済への最大の貢献になる」と胸を張った。リーマン・ショック後の大転換時代に、中国が主導的役割を担う姿勢を鮮明にしたのである。

2009年9月の四中全会のコミュニケでは、世界経済の枠組みが変化し世界のパワーバランスが変わるという認識から、国際経済システムの再建に参画する絶好のタイミングととらえていることを示した。

中華思想の復活

大国として中国は、国際社会でどう振る舞うか。胡錦濤が提示したのは4つの力である。第1に政治面でいっそう影響力をもち、第2に経済面でいっそう競争力をもち、第3にイメージ面でいっそう親和力をもち、第4に道義面でいっそう感化力をもつ。ハードパワーとソフトパワーを兼ね備えた国際戦略といえる。

胡錦濤の後を受けた習近平国家主席の主張はもっと直截である。「中華民族の復興」という言葉が繰り返される。

19世紀初頭まで中国は世界最大の経済大国だった。アンガス・マディソン・グローニンゲン大教授の推計によれば、1820年の中国の国内総生産(GDP)は、西欧全体の1.4倍、米国の9倍の規模だった。それが産業革命で流れは変わる。1870年には、中国は首位に立つ西欧の半分の規模に転落する。長い低迷の時代が続くことになる。

「中華民族の復興」とは、国際社会で中国を19世紀初頭以前の地位に戻そうという戦略といえる。それは単なる「中国の台頭」ではない。「16世紀以来の歴史的な再台頭」(ジョセフ・ナイ・ハーバード大教授)なのである。

攻めの金融戦略

リーマン・ショック前、中国の金融戦略は守りの域を出なかった。人民元改革は米国議会の不満や米連邦準備理事会(FRB)の批判に対応した受け身の改革だった。中国当局は人民元切り上げで競争力が落ちるのを恐れた。2005年、人民元は固定制から管理フロートになり、米ドルから通貨バスケットにペッグすることになった。漸進改革の域を出ていない。

しかし、リーマン・ショックで米ドルの信認が揺らいだとみて、攻めの戦略に転じる。人民元を国際的な貿易や投資の決済通貨として普及させる方針を打ち出した。中国企業の為替リスクを避けるとともに、決済通貨としての米ドル依存を抑えるのが狙いだ。

もちろん、人民元は米ドルやユーロ、円、ポンドに比べて不自由な通貨である。しかし、その不自由さを逆手に取って、人民元通貨外交を展開する。中国は本土以外で非居住者が資金をやりとりするオフショア市場での人民元取引を制限している。だから、海外から人民元を中国に送る場合、中国人民銀行が認めた決済銀行を通す必要がある。

この決済銀行は従来、香港、マカオ、台湾、シンガポールという「中華圏」に限られていた。それをこの1年に一挙に韓国、マレーシア、タイ、オーストラリア、カナダというアジア太平洋地域に、さらに独仏英、ルクセンブルクという欧州に、そして中東のカタールに拡大した。

習近平国家主席

習近平政権は人民元の国際化を重要政策に位置付けている。人民元決済は貿易、投資の拡大で需要が高まる。その「特権」を付与することによって、中国の影響力を行使する。まさに「中華思想」の復活である。

それは米ドルにばかり依存しない国際通貨体制を中国主導で構築しようという戦略の第一歩ともいえる。

3大通貨への30年戦略

中国はさらに人民元の国際通貨としての役割を高める長期戦略を構築しようとしている。それは人民元をドル、ユーロとともに世界の3大通貨とするための30年戦略である。

中国人民大学の国際通貨研究所がまとめた「人民元―国際化への挑戦」はこう指摘する。「ドルを中心に、ユーロ、ポンド、円などが国際準備通貨になっている構造から、20~30年後にドル、人民元、ユーロの均衡という新たな構造に転換する」

そのために、人民元の国際化の範囲を拡大する。最初の10年は周辺国で人民元を決済通貨とする貿易を推進する。次の10年はそれをアジア地域に広げ、最後の10年で世界に拡大する。

同時に、人民元の国際通貨としての役割を開拓する。最初の10年は貿易決済機能を、次の10年は支払い機能を、そして最後の10年で準備通貨になるという長期戦略である。

出遅れる日本

こうした人民元国際化の潮流に、日本は出遅れている。日本政府は人民元建ての債券発行、決済銀行の設置、日本の機関投資家による人民元建て投資枠の創設など他のアジアや欧州諸国並みの扱いを中国に求めている。

東京を国際金融センターにするには、人民元の国際化に対応するしかない。日本の出遅れは、尖閣諸島の国有化をきっかけとする日中関係の冷却化が響いているだろう。中国が長期戦略のなかで、ドル、ユーロと並び人民元を3大通貨と位置付け、あえて円をはずしているのも、アジアでの覇権をめざす姿勢といえる。
パワーより信認

もちろん人民元が国際準備通貨になるには、様々な条件がいる。ドル、ユーロ、円、ポンドのような世界の市場で自由に取引できる通貨でなければならない。変動相場制の導入や資本取引の自由化が求められるのはいうまでもない。自国の経済政策が市場のプレッシャーにさらされるのを覚悟しなければならない。

重要なのは、各国通貨当局と市場の信頼である。例えば、人民元の決済銀行の選定にあたって政治的恣意性を優先させるようでは、人民元の国際化にも限界があるだろう。国際通貨は、それが広く受け入れられるかどうかで存立が決まる。パワーより信認なのである。

(敬称略)
岡部直明(おかべ・なおあき)
 1969年 早稲田大学政経学部卒、日本経済新聞入社。
編集局産業部、経済部記者を経て、ブリュッセル特派員、ニューヨーク支局長、取締役論説主幹、専務執行役員主幹、コラムニストを歴任。日米欧で幅広く国際通貨を取材。早稲田大学大学院客員教授を経て現在は明治大学国際総合研究所フェロー
主な著書は「主役なき世界―グローバル連鎖危機とさまよう日本」「ベーシック日本経済入門」「応酬―円ドルの政治力学」ほか』

IPEF始動、米国は労働・環境重視 東南アジアと隔たり

IPEF始動、米国は労働・環境重視 東南アジアと隔たり
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN274AG0X20C23A5000000/

『【デトロイト=飛田臨太郎】米国が主導する新経済圏構想「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」の閣僚級会合が27日閉幕し、一部分野で先行合意した。残る交渉は難航する可能性がある。米国は貿易自由化に否定的で、労働や環境の分野に熱心な一方、東南アジアは実利を求める。

米国は中国優位に傾くアジア経済圏で、情勢挽回のためIPEFを立ち上げた。中国は東アジアの地域的な包括的経済連携(RCEP)に参加し、202…

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『中国は東アジアの地域的な包括的経済連携(RCEP)に参加し、2021年9月には米国が離脱した環太平洋経済連携協定(TPP)に加盟申請した。

サプライチェーン強化へ一定の前進
今回の閣僚級会合はサプライチェーン(供給網)強化の協定に合意し、一定の前進をみせた。中国への依存度が高い重要物資が多いのが、中国が他国に威圧的になれる背景にある。IPEF内で融通できれば抑止力になりうる。

供給網強化はいずれの参加国も反発するテーマではない。残る分野の交渉は米国と東南アジアの立場に隔たりがある。

米バイデン政権が最重視するのが労働と環境だ。協定に国際的な労働ルールを守る規定を盛り込もうとしている。強制労働などの悪質な労働慣行の排除を目指す。企業が労働基準に違反すれば、説明責任を果たすよう促す。

米国は労働ルールや環境順守求める
レモンド商務長官は閉幕後の記者会見で、IPEFの狙いは「中産階級を増やすため貿易のやり方を革新することだ」と訴えた。「搾取の上に成り立つ経済活動を遠ざける」と強調した。

環境対策の順守を求める規定も盛り込もうとしている。漁業など幅広い分野に焦点を当てており、鯨の捕獲を規制する案まで浮上する。レモンド氏はIPEFを「21世紀型の新しい経済協定」と説明した。

米国の新しい貿易政策は国内情勢の裏返しだ。米通商代表部(USTR)のタイ代表は25日、各国の代表団を前に1時間半にわたり講演し、従来の自由貿易は労働者に恩恵がなかったなどと説いた。

デトロイトに本拠を置くゼネラル・モーターズ(GM)など「ビッグスリー」が加盟する労働組合トップも一緒に登壇し、タイ氏と歩調を合わせた。デトロイトは海外製品の流入で製造業が衰退し、ラストベルト(さびた地帯)とも呼ばれる。

生活が苦しくなった製造業労働者の不満が17年のトランプ政権(共和党)誕生につながった。バイデン大統領は再選を目指す24年大統領選で労働者票の動向を気にかける。

実利求める東南アジア「講義より空港」
「労働問題よりも取り組むべき課題はたくさんある」。東南アジアの代表団の一人はこう漏らした。米戦略国際問題研究所(CSIS)のスコット・ミラー氏は「新興・途上国が中国と話すと空港を手に入れる。米国と話すと講義を受ける。どちらが成功するか答えは簡単だ」と指摘する。

IPEFで、先進的なデータ流通ルールを構築する期待は後退している。日本やオーストラリア、シンガポールが求めているが、米国が慎重な姿勢に転じた。

与党・民主党から「巨大IT(情報技術)の『GAFA』を利するだけだ」との批判の声がでているためだ。27日の閣僚級会合の会場の前には「ビッグテックを助けるのをやめろ」との看板が掲げてあった。

IPEFの会場の前には米国代表団に向けて「ビッグテックを助けるのをやめろ」との看板が掲げられた
米国の「ご都合主義」を見透かすようにアジアの国々は動く。シンガポールは人工知能(AI)などのデジタルルールを定める貿易協定で中国と交渉を始めた。

日本政府は米国と東南アジアの間をとりもとうと動く。IPEF交渉が停滞し、アジア経済圏で米国の存在感が薄まれば、中国の影響力がさらに増すためだ。今後の交渉で日本が果たす役割は大きい。

【関連記事】

・IPEF、27日の閣僚会合で何を決める? 対中国で供給網 』

米債務上限引き上げ、大統領ら合意案の議会通過に腐心

米債務上限引き上げ、大統領ら合意案の議会通過に腐心
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN2903B0Z20C23A5000000/

『【ワシントン=高見浩輔】バイデン米大統領と野党・共和党のマッカーシー下院議長は28日、米政府の債務上限を引き上げるための合意案について、それぞれ議会通過に自信を示した。今後反対する議員を説得し、可決に必要な票数をどう確保するかが焦点になる。

バイデン氏は28日夕、マッカーシー氏との電話会談後に記者会見を開き「議会が合意案を可決することを強く求める」と訴えた。会見の前に記者団に対応した際、法案の成…

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『会見の前に記者団に対応した際、法案の成立を確信しているかと聞かれ「はい」と応えた。

マッカーシー氏は同日朝、下院議員の95%が賛成する見通しだと話した。法案が下院で否決されるシナリオについて「狂っている」と表現した。党内の強硬派が議長の退陣を求める可能性については「全くない」と主張した。

ホワイトハウス高官によると、合意案は2024会計年度(23年10月〜24年9月)について社会保障を除く「裁量的支出」の国防費を除いた金額を23年度とほぼ同じ水準にし、25年度に1%の増加を認める。共和党は4月に下院で可決した独自法案でより金額の少ない22年度の水準まで引き下げ、10年間の抑制を求めていたが、削減幅は小さくなった。

焦点だった低所得層向けの食糧支援は、支給の条件として就労を求める対象年齢を現行の49歳から54歳に引き上げる。共和が求めていた厳格化を認めた形になるが、バイデン氏は就労を求められない例外規定を拡大して抵抗した。低所得層向けの公的医療保険「メディケイド」の支給要件は変更しなかった。

共和が求めていたクリーンエネルギー支援策の削減を回避した半面、化石燃料を含めたエネルギー開発について環境への影響を審査する期間の短縮には応じた。ホワイトハウス高官は「環境汚染を防ぐ法律は順守される」としている。

日本の国税庁にあたる内国歳入庁(IRS)は22年8月に成立したインフレ抑制法により10年間で800億㌦を投じて増強する予定になっていた計画を圧縮する。24、25年度でそれぞれ100億ドルをほかの用途に使えるようにした。

イエレン米財務長官は米財務省が臨時で実施している政府の資金繰り策が6月5日に限界に達すると警鐘を鳴らしてきた。債務上限の引き上げ案が議会で可決し、大統領の署名で成立すれば、米国債が史上初めての債務不履行(デフォルト)に陥る懸念は払拭される。

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上野泰也
みずほ証券 チーフマーケットエコノミスト
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ひとこと解説 議会採決では共和党強硬派、民主党急進派から一定の反対票が入ると予想されるものの、今回の合意は賛成多数で可決されてデフォルトが回避される可能性がきわめて高いと筆者はみている。市場も早い段階からデフォルト回避を中心シナリオに置いて動いているので、日本時間29日早朝時点でこの問題を材料にしているとみられる目立った動きはない。米国債の格付けに何らかの動きがあるかどうかも関心事だが、仮に米国債格下げが今後あるとしても、ドルが世界の基軸通貨であり、米国債市場が高い流動性とトップクラスの信用度を有している市場である事実に変わりはない。格下げを材料に米国債やドルを売る動きが出てくるとしても長続きしないだろう。
2023年5月29日 7:36いいね
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ロッシェル・カップ
ジャパン・インターカルチュラル・コンサルティング 社長
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分析・考察 法案が下院で否決されるシナリオについて『狂っている』と表現したそうですが、下院の共和党議員を見たら、実際に狂っていると思われる人が何人かいます。そのため、水曜日の投票までに、私は完全にリラックスすることができません。
この責務上限引き上げに関連するドラマは完全に不必要で、アメリカとして恥ずかしいです。トランプ時代では、支出が増加し、大幅な税金カットが行われながらも、上限引き上げは問題なく行われました。共和党のパフォーマンスに過ぎません。
2023年5月29日 6:53 』

メガFTAの進展(TPP11、日EU・EPA、RCEP等)

第4節 メガFTAの進展(TPP11、日EU・EPA、RCEP等)
https://www.meti.go.jp/report/tsuhaku2019/2019honbun/i3140000.html

『1.経済連携協定(EPA/FTA)の意義

経済連携の推進は、締結国間の貿易投資を含む幅広い経済関係を強化する意義を有するところ、より具体的には、輸出企業にとっては、関税削減等を通じた輸出競争力の維持又は強化の面で意義があり、他方で、外国に投資財産を有する企業やサービスを提供する企業にとっては、海外で事業を展開しやすい環境が整備されるという点で意義がある。輸出の面では、関税削減によって我が国からの輸出品の競争力を高められる。例えばメキシコでは乗用車に20%、マレーシアではエアコンに30%、インドネシアではブルドーザーに10%の関税が課されているが、EPAを利用した場合、これらの関税がゼロになる。海外で事業を行う企業に対しては、投資財産の保護、海外事業で得た利益を我が国へ送金することの自由の確保、現地労働者の雇用等を企業へ要求することの制限・禁止、民間企業同士で交わされる技術移転契約の金額及び有効期間への政府の介入の禁止等の約束を政府同士で行うことにより、海外投資の法的安定性を高めている。また、外国でのサービス業の展開に関しては、外資の出資制限や拠点設置要求等の禁止、パブリックコメント等による手続の透明性確保等、日本企業が海外で安心して事業を行なうためのルールを定めている。

この他にも、我が国のEPAでは、締約国のビジネス環境を改善するための枠組みとして、「ビジネス環境の整備に関する委員会」の設置に係る規定を設けていることが多い。「ビジネス環境の整備に関する委員会」では、政府代表者に加え、民間企業代表者も参加して、外国に進出している日本企業が抱えるビジネス上の様々な問題点について、相手国政府関係者と直接議論することができる。これまでの「ビジネス環境の整備に関する委員会」の成果として、メキシコとは模倣品取り締りのためのホットライン設置に合意し、マレーシアとは治安向上のためパトロールの強化や監視カメラの増設等を実現してきている。

2.経済連携協定(EPA/FTA)を巡る動向

世界を見渡すと、これまでに多くの国がEPA/FTAを締結してきている。WTOへの通報件数を見ると、1948年から1994年の間にGATTに通報されたRTA(FTAや関税同盟等)は124件であったが、1995年のWTO創設以降、400を超えるRTAが通報されており、2019年3月31日時点でGATT/WTOに通報された発効済RTAは472件に上る5。

特に、アジア太平洋地域においては、2010年3月にTPP協定交渉が開始(我が国は2013年7月に交渉に参加、その後、米国を除く11か国での交渉を経て、翌2018年3月にはTPP11(環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定)が署名に至り、2018年12月に発効)、2013年3月には日中韓FTA、5月にはRCEPについてそれぞれ交渉が開始されたほか、それらを道筋として、APEC参加国・地域との間で、アジア太平洋自由貿易圏(FTAAP:エフタープ)の実現が目指されている。

また、2013年4月には日本とEUの間で日EU・EPA交渉が開始される(交渉を経て、2019年2月に発効)など、各地域をつなぐ様々な経済連携協定の取組も同時並行で進行している。

このような多層的な経済連携協定を通じて、我が国は自由貿易の旗手として自由で公正な市場を、アジア太平洋地域を始め、世界に広げていくことを目指していく必要がある。

5 WTOウェブサイトから取得。

なお、ここでいうRTAの数は、WTOへの通報要綱に基づき、物品とサービス両方を含むRTAを二つのRTAとしてカウントしたものだが、当該RTAを一つのRTAと数えた場合、2019年3月31日時点での発効済RTAは294件となる。

3.我が国の経済連携協定を巡る取組

我が国は、2019年3月現在、21か国・地域との間で18の経済連携協定を署名・発効済みである。また、現在RCEP、日中韓FTA等の経済連携交渉を推進中である(第Ⅲ-1-4-1図、第Ⅲ-1-4-2図)。

第Ⅲ-1-4-1図 日本のEPA交渉の歴史

第Ⅲ-1-4-2図 日本の経済連携協定の推進状況(2019年3月現在)

自由貿易の拡大、経済連携協定の推進は、我が国の通商政策の柱であり、世界に「経済連携の網」を張り巡らせることで、アジア太平洋地域の成長や大市場を取り込んでいくことが、我が国の成長にとって不可欠といえる。

「未来投資戦略2018」(2018年6月15日閣議決定)においても、「RCEP、日中韓FTAを含む経済連携交渉を、戦略的かつスピード感を持って推進する。我が国は、自由貿易の旗手として、こうした新しい広域的経済秩序を構築する上で中核的な役割を果たし、包括的で、バランスのとれた、高いレベルの世界のルールづくりの牽引者となることを目指す。」こととしている(第Ⅲ-1-4-3図)。

第Ⅲ-1-4-3図 各国のFTAカバー率比較

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4.我が国が推進中の経済連携

(1)TPP協定(環太平洋パートナーシップ協定)(2016年2月4日署名)

我が国は、環太平洋パートナーシップ協定(以下、TPP協定)に関し、2013年3月に参加を表明、同年7月から豪州、ブルネイ、カナダ、チリ、マレーシア、メキシコ、ニュージーランド、シンガポール、ペルー、米国、ベトナムの11か国との交渉に参加した。その後の交渉を経て、2015年10月に米国アトランタで大筋合意に至り、2016年2月4日に署名がなされた。日本国内においては、2016年12月9日に、TPP協定が国会で承認されるとともに、関連法案が可決・成立した。その後、2017年1月20日、TPP協定原署名国12か国の中で最も早く国内手続完了の通報を協定の寄託国であるニュージーランドに対して行った。

一方、米国は、2017年1月30日に、TPP協定の締約国になる意図がないことを通知する書簡を協定の寄託国であるニュージーランド及びTPP協定署名国各国に対して発出した。

(2)TPP11(環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定)(2018年12月30日発効)

2017年1月に米国がTPP協定からの離脱を参加各国に通告した後、同年3月15日にチリにおいてTPP協定閣僚会合が開催された。閣僚会合の結果、米国を除くTPP協定署名11か国が今後も結束して対応することを確認する共同声明が発出された。

共同声明を踏まえ、2017年5月21日にベトナムでTPP閣僚会合が開催された。本会合では、原署名国の参加を促進する方策も含めた、TPP協定の早期発効のための選択肢の検討を11月のAPEC首脳会合までに完了させること等に合意。その後7月に日本、8月に豪州、9月・10月に日本で首席交渉官会合が開催された。

同11月9日にベトナムにおいて開催されたTPP閣僚会合では、新協定の条文、凍結リスト等を含む合意パッケージに全閣僚が合意(大筋合意)。翌10日の閣僚会合で、閣僚合意内容を確認、①11か国による環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(以下TPP11協定)について合意に達したこと、②TPP11協定が、TPP協定の高い水準、全体的なバランスを維持していること等が盛り込まれた閣僚声明を作成した。

2018年1月には東京で首席交渉官会合が開催され、11か国間でTPP11の協定文が最終的に確定した。TPP11協定は前文の他、7条の条文から成る。第1条においてTPP協定の組込みを、第2条において停止する項目(凍結項目)を規定。TPP協定の高い水準を維持しつつもTPP11協定に参加している国が全て合意できる内容にするという、バランスの取れた協定内容となっている。

3月8日午後3時(現地時間)、チリにおいてTPP11協定の署名を実現。この後、6月28日にメキシコが寄託者であるニュージーランドに対して通報を行った。続く7月6日に日本、7月19日にシンガポール、10月25日にニュージーランド、10月26日にカナダ、10月31日にオーストラリアがそれぞれニュージーランドへの通報を完了させたことで、協定に定める発効に必要な6か国の国内手続が完了した。なお、ベトナムも11月15日付で国内手続を完了させている。

2018年12月30日、TPP11協定はメキシコ・日本・シンガポール・ニュージーランド・カナダ・オーストラリアの6か国間で発効し、2019年1月14日以降はベトナムを加えた7か国間で効力を生じている。TPP11協定の発効によって、モノの関税だけでなく、サービス、投資の自由化を進め、さらには知的財産、電子商取引、国有企業の規律、環境など、幅広い分野で21世紀型のルールを、アジア太平洋に構築し、自由で公正な巨大市場を作り出すことが期待される。

2019年1月19日には東京で第1回TPP委員会が開催され、今後の新規参加に関する手続について議論、方針が決定された。同日採択された閣僚声明では、新たな国・地域の加入を通じ協定を拡大していくとの署名国の強い決意が盛り込まれている。

(3)日EU・EPA(2019年2月1日発効)

アジア太平洋地域以外の主要国・地域との取組として、EUとのEPA交渉が挙げられる。我が国とEUは、世界人口の約1割、貿易額の約3割(EU域内を除くと約2割)、GDPの約3割を占める重要な経済的パートナーであり、日EU・EPAは、日EU間の貿易投資を拡大し、我が国の経済成長をもたらすとともに、世界の貿易・投資のルール作りの先導役を果たすものといえる。

EUは、近隣諸国や旧植民地国を中心としてFTAを締結してきたが、2000年代に入り、韓国等の潜在的市場規模や貿易障壁のある国とのFTAを重視するようになった。さらに、2016年10月には先進国であるカナダとの包括的経済・貿易協定(CETA:the Comprehensive Economic and Trade Agreement)に署名した。また、南米南部共同市場(メルコスール)との自由貿易協定(EU-Mercosur Free Trade Agreement)を交渉中である。

日EU・EPAについては、2009年5月の日EU定期首脳協議において、日EU経済の統合の強化に協力する意図が表明され、翌2010年4月の日EU定期首脳協議では、「合同ハイレベル・グループ」を設置し、日EU経済関係の包括的な強化・統合に向けた「共同検討作業」を開始することに合意した。合同ハイレベル・グループにおける幅広い分野での作業の結果を踏まえ、2011年5月の日EU定期首脳協議において、交渉のためのプロセスの開始についての合意がなされ、日本政府と欧州委員会との間で、交渉の大枠(交渉の「範囲(scope)」及び「野心のレベル(level of ambition)」)を定める「スコーピング作業」を実施することとなった。

翌2012年にかけて実施したスコーピング作業の終了を受け、同年11月のEU外務理事会において、欧州委員会が加盟国より交渉権限(マンデート)を取得した。2013年3月に行われた日EU首脳電話会談において、日EU・EPA及び戦略パートナーシップ協定(SPA)の交渉開始に合意した。交渉において、日本側はEU側の鉱工業品等の高関税の撤廃(例:乗用車10%、電子機器最大14%)や日本企業が欧州で直面する規制上の問題の改善等を要望。他方、EU側は、農産品等の市場アクセスの改善、非関税措置(自動車、化学品、電子機器、食品安全、加工食品、医療機器、医薬品等の分野)への対応、地理的表示(GI)の保護、政府調達、持続可能な開発等を要望した。

2017年4月までに計18回の交渉会合が開催された後、同年7月に大枠合意、同年12月には、安倍内閣総理大臣とユンカー欧州委員会委員長が電話会談を実施し、交渉妥結に達したことを確認した。その後、2018年7月17日に署名、同年12月21日に日EU双方は本協定発効のための国内手続きを完了した旨を相互に通告し、2019年2月1日に発効した。なお、投資保護規律及び投資紛争解決手続きについては別途協議を継続している。

(4)東アジア地域包括的経済連携(RCEP(アールセップ):Regional Comprehensive Economic Partnership)(交渉中)

RCEPは、世界全体の人口の約半分、GDPの約3割を占める広域経済圏を創設するものであり、最終的にはFTAAP(アジア太平洋自由貿易圏)の実現に寄与する重要な地域的取組の一つである。

東アジア地域では、既に高度なサプライチェーンが構築されている(第Ⅲ-1-4-4図)が、この地域内における更なる貿易・投資の自由化は、地域経済統合の拡大・深化に重要な役割を果たす。

第Ⅲ-1-4-4図 東アジア地域におけるサプライチェーンの実態

この地域全体を覆う広域EPAが実現すれば、企業は最適な生産配分・立地戦略を実現した効率的な生産ネットワークを構築することが可能となり、東アジア地域における産業の国際競争力の強化につながることが期待される。また、ルールの統一化や手続の簡素化によってEPAを活用する企業の負担軽減が図られる(第Ⅲ-1-4-5図)。

第Ⅲ-1-4-5図 RCEP参加の意義

2012年11月のASEAN関連首脳会議において、「RCEP交渉の基本方針及び目的」が16か国(ASEAN10か国及び日本、中国、韓国、インド、豪州、ニュージーランド)の首脳によって承認され、RCEPの交渉立ち上げが宣言された。

基本方針には、「現代的な、包括的な、質の高い、かつ、互恵的な経済連携協定」を達成すること、物品・サービス・投資以外に、知的財産・競争・経済技術協力・紛争解決を交渉分野とすること、が盛り込まれている。第1回RCEP交渉会合は、2013年5月にブルネイで開催され、高級実務者による全体会合に加えて物品貿易、サービス貿易及び投資に関する各作業部会が開催された。

第1回交渉会合が開催されて以降、2019年3月までに15回の閣僚会合、25回の交渉会合が開催されている。2018年11月には、第2回RCEP首脳会議が開催された。会議後、共同首脳声明が発出され、2018年におけるRCEP交渉の実質的な進展を歓迎するとともに、現代的で、包括的な、質の高い、かつ互恵的なRCEPを2019年に妥結する決意が表明された。また、同共同首脳声明では、交渉の進捗として、これまでに経済技術協力章、中小企業章、税関手続・貿易円滑化章、政府調達章、制度的規定章、衛生植物検疫措置章及び任意規格・強制規格・適合性評価手続章が妥結したことが報告されている。

現在、貿易交渉委員会(Trade Negotiating Committee)に加え、物品貿易、原産地規則、貿易救済、サービス貿易、金融サービス、電気通信サービス、人の移動、投資、競争、知的財産、電子商取引などの幅広い分野について交渉が行われている。

(5)日中韓FTA(交渉中)

日中韓3か国は、世界における主要な経済プレイヤーであり、3か国のGDP及び貿易額は、世界全体の約2割を占める。日中韓FTAは、3か国間の貿易・投資を促進するのみならず、アジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)の実現にも寄与する可能性のある重要な地域的取組の一つである。

2013年3月に交渉を開始して以降、2019年3月までに計14回の交渉会合を実施し、物品貿易、原産地規則、税関手続、貿易救済、物品ルール、サービス貿易、投資、競争、知的財産、衛生植物検疫(SPS)、貿易の技術的障害(TBT)、法的事項、電子商取引、環境、協力、政府調達、金融サービス、電気通信サービス、自然人の移動等の広範な分野について議論を行っている。

また、2015年10月の日中韓経済貿易大臣会合及び同年11月の日中韓サミットでは包括的かつ高いレベルの協定の実現を目指し交渉を加速化していくことが確認された。加えて、2016年10月の日中韓経済貿易大臣会合では、日中韓FTA独自の価値を追求して一層努力していくことを確認した。

(6)日ASEAN包括的経済連携(AJCEP)協定(サービス貿易章・投資章について、2019年2~4月持ち回り署名)

ASEAN全加盟国とのEPAである日・ASEAN包括的経済連携(AJCEP)協定は、2004年11月の首脳間での合意に基づき2005年4月より交渉を開始し、2008年4月14日に各国持ち回りでの署名を完了し、2008年12月から加盟国との間で順次発効している。2010年10月より交渉が行われていたAJCEP協定のサービス貿易章・投資章については3年にわたる交渉を経てルール部分について実質合意に至り、2013年12月の日・ASEAN特別首脳会議において同成果は各国首脳に歓迎された。その後、残された技術的論点の調整等を実施した結果、2017年11月の日ASEAN非公式経済大臣会合において、AJCEPのサービス貿易・投資に係る改正議定書についても、閣僚レベルの交渉終結に合意。2019年2~4月に持ち回りでの署名を実施。今後は、改正議定書の早期発効に向けた国内手続を進めることとなった。

(7)日GCC・FTA(交渉延期)

バーレーン、クウェート、オマーン、カタール、サウジアラビア、アラブ首長国連邦からなるGCC(湾岸協力理事会)諸国とのFTAについては、2006年9月に交渉が開始され、2009年3月までに2回の正式会合と4回の中間会合が実施された。しかし同年7月に、GCC側の要請により交渉が延期されている。

(8)日カナダEPA(交渉中断中)

日カナダEPA交渉については、2011年3月から2012年1月までに4回の共同研究が開催され、共同研究報告書が作成された。共同研究の報告書を受け、2012年3月の日カナダ首脳会談において、両国の実質的な経済的利益をもたらし得る二国間EPAの交渉を開始することで一致した。2012年11月の交渉開始から2014年11月まで計7回の交渉会合が開催された。

(9)日コロンビアEPA(交渉中)

コロンビアは、2016年11月にコロンビア政府とコロンビア革命軍(FARC)の間での和平合意が議会で承認され、直近の成長率見通しも良好(2017年1.8%から2018年2.7%)が見込まれる人口4,900万人の市場であり、EPAを通じた貿易・投資環境の改善により輸出入及び日本企業によるコロンビアへの投資の拡大が期待される。コロンビア政府は経済の自由開放政策を掲げるなか、中南米諸国・米国・カナダ・EU、及び韓国とのFTAが発効済みである。

2011年9月の日コロンビア首脳会談において、日コロンビアEPAの共同研究の立ち上げが合意されたことを受けて共同研究が開始され、2012年7月にあり得べきEPAは両国に多大な利益をもたらすことに資するとの報告書が取りまとめられた。同報告書を踏まえ2012年9月に行われた日コロンビア首脳会談にて、両国はEPA交渉を開始することで合意し、2012年12月に第1回交渉が開催された。

その後、2018年3月末までに、13回の交渉会合が開催された。また、2016年9月に続き同年11月にも行われた日コロンビア首脳会談においては、両首脳は、交渉が最終段階にあり、交渉の早期妥結を目指すことを確認した。また、2018年8月16日の河野外相によるドゥケ・コロンビア大統領表敬の際にも、TPPと並んでとりあげられた。

(10)日トルコEPA(交渉中)

トルコは、人口8,200万人を超え(2018年末時点)、国民の平均年齢が30歳前半と若い魅力的な国内市場を持つ。加えて、欧州及び周辺国市場への生産拠点として注目されている。貿易・投資環境の改善による輸出入拡大が期待され、我が国企業の関心は高い。日トルコ間の投資・ビジネス環境の改善や、第三国に劣後しない貿易の自由化や規律の策定を目指している。

トルコと我が国は2012年7月に第1回日トルコ貿易・投資閣僚会合を開催し、日トルコEPAの共同研究を立ち上げることにつき合意した。これを受けて、同年11月に第1回、2013年2月に第2回の共同研究が開催され、同年7月に日本・トルコの両政府にEPA交渉開始を提言する共同研究報告書が発表された。

共同研究報告書を受けて、2014年1月に行われた日トルコ首脳会談にて、両国はEPA交渉を開始することで一致し、同年12月に第1回交渉会合が開催され、最近では2019年4月に第14回交渉会合が開催された。日トルコEPAによって、欧州企業や韓国企業といった競合相手との競争条件の平等化を早急に図ることを通じ、トルコへの日本企業の輸出を後押しするとともに、トルコの投資環境関連制度の改善により、トルコへの日本企業の投資促進を図る。

(11)日韓EPA(交渉中断中)

韓国とのEPA交渉は2003年12月の交渉開始後、2004年11月の第6回交渉会合を最後に中断。
(12)EPAの利用や見直し

以上、現在交渉中、交渉開始に合意したEPA/FTAを紹介したが、グローバルに展開するビジネスの要請に応えるには、このような新たな協定締結に向けた取組に加えて、EPA/FTAの利用の促進、既存EPAの見直し等も重要である。

2018年末から2019年にかけ、TPP11協定や日EU・EPAも発効に至り、以前にも増して、発効済みEPAを利用・運用する段階にあるといえる。引き続き、

①政府のみならずJETRO6、日本商工会議所7、業界団体等による積極的なEPAの普及啓発・利活用の促進・着実な執行、

②「ビジネス環境の整備に関する委員会」等の場を通じた両国政府・民間企業代表者を交えた協議8

③EPAの利活用実態やニーズ、国際的な通商ルール形成の動向を踏まえた協定見直し9等、EPAを活用し、見直すことを通じて質を高めていく取組が重要であるといえる。

6 EPA利用(日本企業の方) https://www.jetro.go.jp/theme/wto-fta/epa/外部リンク
EPA活用のための相談窓口(在海外企業の方) https://www.jetro.go.jp/theme/wto-fta/tpp/contact.html外部リンク

7 第一種特定原産地証明書の指定発給機関 http://www.jcci.or.jp/international/certificates-of-origin/外部リンク

8 ビジネス環境の整備に関する委員会 http://www.meti.go.jp/policy/trade_policy/epa/about/business.html外部リンク

9 日・タイEPA(2007年発効)、日・インドネシアEPA(2008年発効)、日・フィリピンEPA(2008年発効)については、見直しの議論中。』

ブルネイがTPPを批准 11カ国目

ブルネイがTPPを批准 11カ国目
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM15BH50V10C23A5000000/

『【シンガポール=佐藤史佳】ブルネイ政府は環太平洋経済連携協定(TPP)を批准したと発表した。批准は11カ国目となり、2018年にチリで署名された「TPP11」に参加した11カ国すべてが批准したことになる。

TPPは日本やシンガポールなどアジア太平洋地域の11カ国が参加する経済連携協定。ブルネイ政府の声明によると、13日にTPPの事務局機能を担うニュージーランドに批准を通知した。声明は「通知から60日後に発効する」としており、7月中旬に発効する見通しだ。ブルネイ政府はTPP批准により「外国からの直接投資先としてのブルネイの魅力が増す」と期待する。

TPPの原型は、ブルネイ、ニュージーランド、シンガポール、チリの4カ国で06年に発効した「P4協定」だ。米国や日本が交渉に加わり、16年に12カ国でTPPに署名したが、その後に米国が離脱。18年に残り11カ国が署名した。』

TPP11について
https://www.jetro.go.jp/theme/wto-fta/tpp/

 ※ 今日は、こんな所で…。

 ※ 『2023年3月時点で、メキシコ日本シンガポールニュージーランドカナダオーストラリアベトナムペルーマレーシアチリ(発効順)で発効済み。ブルネイでは未発効のため利用不可。』ということだったが、ブルネイでも発効したので、これで11か国全てで「発効」したわけだ…。

 ※ あとは、英国の加盟問題と、中国・台湾の加盟問題か…。

『日本を含む11カ国が加盟する「環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定(CPTPP、通称TPP11)」が2018年12月30日に発効いたしました(注)。TPP11では、日本を除く10カ国で99%の関税撤廃が約束されており、物品貿易でのメリットが期待されています。加えて、投資を促進する規定が盛り込まれている他、電子商取引などの分野におけるルール形成も行っています。本ページでは、TPP11の基本情報に加え、物品貿易のメリットを想定した特恵関税活用に関する情報を中心に提供いたします。
なお、TPP11は、米国を含めた12カ国で2016年2月に署名された「環太平洋パートナーシップ協定(TPP)」を基礎としています。

(注)
2023年3月時点で、メキシコ、日本、シンガポール、ニュージーランド、カナダ、オーストラリア、ベトナム、ペルー、マレーシア、チリ(発効順)で発効済み。ブルネイでは未発効のため利用不可。』

CPTPPの加盟申請中・交渉中の国・地域
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%92%B0%E5%A4%AA%E5%B9%B3%E6%B4%8B%E3%83%91%E3%83%BC%E3%83%88%E3%83%8A%E3%83%BC%E3%82%B7%E3%83%83%E3%83%97%E5%8D%94%E5%AE%9A

『CPTPPの加盟申請中・交渉中の国・地域

イギリスの旗 英国

2018年7月6日、イギリスのテリーザ・メイ首相は特別会議を開き、イギリス政府として初めて公式にTPPへの参加意思を表明した[308]。報道では、TPPとあるが、後述のとおりCPTPP参加の意向である。また2018年7月18日、イギリスのリアム・フォックス英国際貿易相は、中小企業団体の会合の講演でCPTPP参加について一般から意見を求める方針だと明らかにした[309]。この意見公募は、イギリス政府の公式HPで、7月20日に開始され10月26日に終了した[310]。2020年6月17日、イギリスは、環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(CPTPP)への加盟を目指す方針を改めて表明した[311][312]。
2020年9月9日、イギリスのトラス国際貿易相はCPTPP参加11カ国の首席交渉官と会談を行った[313]。正式な交渉入り表明前に意見交換を行った[314]もので、正式加盟前に、加盟希望国が、現加盟国全部との協議を行うのははじめてである[313]。会談方式は明示されていないが、テレビ会議とみられる[314]。

2020年10月23日、日本とイギリスは、日英包括的経済連携協定に署名した。この時に両国は「英国のCPTPP加入についての関心に関する日本国政府と英国政府との間の書簡」[315]の交換を行い、この中で日本は「日本国政府は、CPTPPの加入手続(委員会決定2の附属書)に従い、英国のCPTPPへの早期加入を支援する堅い決意を表明する。」との意向を示した[315]。

2021年1月20日、イギリスのエリザベス・トラス国際貿易大臣は、日英包括的経済連携協定に関する両国の会議[316]における講演のなかで、間もなく正式な加盟申請を提出すると述べた[317][318][319]。
2021年1月30日、イギリスの国際貿易省は、2月1日にイギリスがCPTPPへの加盟を正式に申請すると公式発表した[320]。

2021年2月1日、イギリスのエリザベス・トラス国際貿易大臣は、CPTPPの寄託国であるニュージーランドのダミエン・オコナー貿易・輸出振興担当大臣に対してCPTPPに対する正式な加盟申請を提出した[321]。同日、エリザベス・トラスイゴシス国際貿易大臣及びダミエン・オコナーニュージーランド貿易・輸出振興担当大臣は、2021年CPTPP委員会の議長国である日本の西村康稔経済再生大臣ととウェブ会談を行い、エリザベス・トラスイゴシス国際貿易大臣から加入要請を通報した旨、報告をした[322]。

2021年6月2日、第4回CPTPP委員会が、開催され[156]、イギリスの加入手続を開始及び加入作業部会の設置についての委員会決定を採択した[157][158]。これによりイギリスのCPTPP加入交渉の正式開始が決定した。

2022年2月18日、日本政府は、CPTPP高級実務者によるオンライン形式の協議が行われ、イギリスとのがデータ流通や知的財産などのルール分野の協議をほぼ終え、2021年9月28日に開始されたイギリスのCPTPP加入作業部会第1回会合を終了する旨、締約国間で合意がされた。今後、イギリスより市場アクセスのオファー等が加入作業部会に提出されると発表した[174][323]。今後は、関税交渉に入る[323]。英国のトレベリアン国際貿易相(当時)は「力強いTPPに加わるための画期的な節目だ。交渉のフィニッシュラインも見えてきた」とコメントした[323]。

2022年9月27日、日本の時事通信は、日本やオーストラリアなどがイギリスに対し、市場開放に関する提案内容を再考するよう求めていると報道した[324]。農業分野を中心に市場開放に慎重で、全体で90%程度にとどめているため[324]。イギリスは近く関税分野の条件を再提示する見込みであるが、審査に一定の時間が要するため、英国が目指す年内の加入合意は難しそうであるとも伝えており、日本政府関係者は「現状のままでは英国の加入は難しい」と指摘。別の交渉関係者は、昨年加入申請した中国などとの協議も念頭に、「イギリスにもルールを緩めず厳しく対応する」と強調しているとしている[324]。

2023年3月31日、CPTPP参加国各国及び英国の閣僚及び代表は、オンライン形式の会合を行い、「CPTPPへの英国加入プロセスに関する閣僚共同声明[325][326]」を発出した。この閣僚共同声明は、「CPTPP加入交渉の実質的な妥結を歓迎した[325]」と明記している。

中華人民共和国の旗 中国

TPPが交渉されている時点で、TPPに関心を示し情報収集などを行っていたが、その後、TPP妥結までの間に参加に向けた行動はとられなかった[注釈 24]。

2020年5月28日、中国の李克強国務院総理(首相)は、記者会見でCPTPPへの参加について「積極的でオープンな態度だ」と答えた[330][331]。日本経済新聞の記事によれば、「中国首相が公の場でTPP11への参加に言及したのは初めてとみられる」[331]。

2020年11月20日、中国の習近平国家主席(総書記)は、オンライン形式で開催されたAPECの首脳会議において、「環太平洋経済連携協定(TPP)への参加を中国は前向きに検討する」と述べ、環太平洋経済連携協定(TPP)に加盟する意向を明確に表明した[332][333][334][335][336][337][338][339][340]。

2021年9月16日、中国商務省はCPTPPへの正式加入について、王文濤商務相がニュージーランドのオコナー貿易相に申請書を提出したと発表した。CPTPPへの加入は現行加盟国全ての同意が必要であるが、加盟国との南シナ海問題における摩擦、同じく加盟申請をしているイギリスとの対立もあり、加盟が困難になるのではとの見方がある[341] [342] [343][344]。

同月23日、台湾のTPPへの加盟申請について、中国は断固として反対すると反対の意思表示を示した。台湾は中国が定めた一つの中国に基づき、台湾は中国の一部であるという主張から「国家」として認めておらず、TPP加盟国にもそれを促している[345] [346] [347]。

中華民国の旗 台湾[348]

TPPが交渉されている2010年にTPP交渉参加の意向を表明したことがある[349]がこの時点では交渉に参加しなかった。

2018年3月5日、台湾の陳建仁副総統は、CPTPP参加に必要な各種準備を進め、主要貿易パートナーに参加支持を働きかける旨、意向を示した[350]。

2018年12月7日、日本の外務大臣河野太郎は、記者会見において台湾による日本産食品輸入規制について、規制緩和が住民投票で否決されてことに関して「また、TPPが年内に発効いたしますが、台湾からTPPへの参加への意思の表明をいただいていた中で、こういう事態になって、参加が出来ないということになるのは非常に残念に思っております。」と発言した[351]。

2020年11月16日、ロイター通信は、台湾の通商交渉官であるトウ振中・行政院政務委員(無任所大臣に相当)が、「環太平洋パートナーシップ協定参加に向け「比較的」順調な進展があったが、加入のルールが一段と明確になるのを待っていると明らかにした」と報じた[352]。

2020年12月14日、ロイター通信は、「台湾外交部(外務省)は、13日夜の声明で、CPTPPの申請前の既存メンバーと非公式協議を現在進めており、メンバー国の反応はかなりポジティブとの見方であり、全てのメンバー国との非公式協議が完了した段階で、参加申請を正式に提出すると述べた。」と報じた[353]。

2021年9月17日、台湾の王美華経済相は 、中国のCPTPP加盟正式申請を受けて、「台湾の加盟申請が影響を受けないことを期待して、加盟国のさらなる発展と反応に引き続き注意を払う」と述べた[354]。また「台湾は、在庫や規制の改正、市場開放など、CPTPPへの加盟に向けて多くの準備を行っていると述べ、加盟国との非公式協議を行っており、合意に達した時点で申請書を提出する予定」とも述べた[354]。

同月22日、同国がCPTPPへの加入申請を正式に提出した。先日の中国の加入申請に対抗したものである可能性が指摘されている[355] [356] [357]。この加入申請について、台湾の通信社の台北中央社の報道によると、9月23日に行政院(内閣)の鄧振中政務委員(無任所大臣に相当)兼行政院経済貿易交渉弁公室(OTN)の交渉代表は、記者会見で、加盟申請には「台湾、澎湖、金門、馬祖独立関税地域」の名義を用いたと説明し、台湾は同名義でWTOに加盟しており、物議を最小限に抑える狙いから同名義を選んだ」と述べた。またこのタイミングで加盟を申請した理由については、「台湾と密接な交流がある日本がTPPの今年の議長国を務めていることなどを挙げ、中国(の加盟申請)とは直接的な関連はない」と述べた[358]。

エクアドルの旗 エクアドル

2021年12月17日、エクアドルがCPTPPへの加盟を申請した。エクアドル外務省の公式ツイッターが17日付けで明らかしたもので、日本の日本経済新聞が12月29日に報道したところによれば、NZ外務貿易省は日本経済新聞に対し、「エクアドルから17日に正式な申請を受け取り、他の加盟国と共有した」と認めた[359]。

コスタリカの旗 コスタリカ

2021年6月13日、日本の日本経済新聞は、コスタリカのロドリゴ・チャベス大統領は、ロサンゼルスで日本経済新聞の取材に応じ、「環太平洋経済連携協定(TPP)への加盟をめざす」と明らかにした、報道した[360]。なお、この報道では、TPPとあるが、「2021年12月には南米エクアドルもTPPへの加盟を申請したと表明した。」と記事にあり、エクアドルが申請したのは、TPPではなく、CPTPPであるので、コスタリカについても、現在、未発効のTPPではなくCPTPPのことであると思われる。

2022年8月10日、コスタリカがCPTPPへの加盟の申請文書をニュージーランド政府に提出し、11日に受理された[361][362]。

ウルグアイの旗 ウルグアイ

2021年10月29日、日本の日本経済新聞は、ウルグアイのラカジェポー大統領は、都内で日本経済新聞の取材に応じ、「11月にも環太平洋経済連携協定(TPP)の加盟申請を行う」と語った、と報道した[363]。なお、この報道では、TPPとあるが、「TPPへの加盟を巡っては英国に加え、中国や台湾が加盟を相次いで申請する」と記事にあり、英国、中国、台湾が申請したのは、TPPではなく、CPTPPであるので、ウルグアイについても、現在、未発効のTPPではなくCPTPPのことであると思われる。

2022年12月1日、ウルグアイがCPTPPへの加盟の申請文書をニュージーランド政府に提出し、受理された[364][365]。一方、ウルグアイと関税同盟である南部南部共同市場(メルコスル)を構成するブラジル、アルゼンチン、パラグアイの3カ国は、単独での他国との経済連携協定の締結は、メルコスルの規定に違反するとして反発した[365]。

TPPに関心を示した国・地域

大韓民国の旗 韓国

TPP参加に前向きな姿勢を見せていた[366]が、その後TPPへの参加が自国に不利に働くとみてアメリカとの二国間交渉に切り替え、米韓FTAで合意、妥結に至っている[367]。
2011年11月16日には、外交通商部が記者会見で、TPPは国益にならない、として正式に不参加の旨を明らかにした[368]。

2013年11月29日、ヒョン・オソク経済副首相兼企画財政相が「(韓国政府が)まず、TPP交渉に参加することへの関心を示し、交渉参加各国との2カ国間協議を行う必要がある」と述べ、日本などTPP交渉参加国と個別協議を行う方針を表明[369]。これに対して2014年3月13日、米政府高官は、米韓自由貿易協定の問題が解決されるまで、韓国がTPP交渉に参加することは歓迎されないとの見方を示した[370]。

CPTPP加入に関する、韓国政府の態度表明は、2018年4月5日に「新通商戦略」において、TPP11の加入について上半期中に結論を出すと発表されていたが[371]、実際には行われず、米国のTPP11再加入及び台湾・英国のTPP11加入の行方、米中貿易紛争、米国のイラン・トルコ経済制裁など、対外情勢に不確定な要素があるため、TPP11加入についての結論を上半期ではなく、2018年内に結論を出す予定となったとの報道もあったが[371]、2019年にいたっても決定がされず、加入促進論の半面で慎重論も根強く容易に意思決定できないジレンマに陥った状態となっている[372]。

2020年12月8日、韓国の文在寅大統領は、CPTPPについて「参加も検討していく」と述べ、前向きな姿勢を示したと発言した[373][374][375]と複数のメディアが伝えた。毎日新聞は、この報道のなかで、日本政府関係者の指摘として「中国や英国、タイ、台湾などTPP加入に関心を示す国・地域が増えたことが刺激になったのだろう[375]とも伝えた。

2021年9月30日、韓国産業通商資源部のヨ・ハング通商交渉本部長は、「環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(CPTPP)関連専門家懇談会」で、「政府は協定への加盟を積極的に検討し、対内外の準備作業を滞りなく進めている」と述べたが、具体的な加盟申請の時期についは「国益の最大化という観点から協定加盟の可否と時期を決める」とし明言を避けた[376]

2021年12月13日午前、韓国の洪楠基経済副総理兼企画財政部長官は、政府ソウル庁舎で開かれた第226回対外経済長官会議においてCPTPP加盟に向けた準備を始めると明らかにした。今後国会での報告などを経て加盟申請する方針と報道されている[377][378][379]。
2021年12月15日、韓国の洪楠基経済副総理兼企画財政部長官は、外国メディア向けの記者会見でCPTPP加盟申請について、現政権の任期内(2022年5月)での加盟申請を目標として国内手続きを進める、と表明した[380][381]。日本経済新聞は、記事のなかで、「22年3月に大統領選挙が予定されており、TPP参加の是非を巡っても議論が交わされる見通し。現政権の思惑どおりに国内での合意形成が進むかは不透明な面も残る。[381]」と論評した。

2021年12月27日、韓国の洪楠基経済副総理兼企画財政部長官は、対外経済安保戦略会議の席上で、2022年4月にCPTPP加盟申請書の提出を目標に手続きを進めていく、と表明した[382][383]。その後、2022年5月の文在寅大統領の任期中の加盟申請は行われず、次の尹錫悦大統領は、加盟申請に向けた動きをしていない。

タイ王国の旗 タイ

2012年11月18日、首相のインラックは米大統領バラク・オバマとの会談後の会見でTPPへの参加を表明していた[384]。2014年5月のクーデターによりプラユット・チャンオチャが首相に就任した後、2018年3月29日にソムキット副首相(経済担当)は米国を除く11カ国による新協定「TPP11」の署名を受けて、参加表明した[385]。

2018年5月1日、タイのソムキット・チャトゥシピタク(英語版)副首相は、日本の茂木経済再生担当相との会談において、タイ政府がCPTPP早期加盟に向け準備をしていることを伝え、今後タイが他のCPTPP加盟国と協議するに当たって、日本からのサポートに期待を表明した[386]。

2019年3月2日、タイが3月中に環太平洋連携協定(TPP)への参加を申請する方針であると日本の共同通信が報道[387]した。報道によるち「タイ商業省のオラモン・サップタウィタム貿易交渉局長が2日までに共同通信に明らかにしたとなっている。日本の日本経済新聞も3月2日夕方の電子版[388]で同様の報道をしている。なお報道において「環太平洋連携協定(TPP)への参加」とあるが、日本経済新聞が「米国を除く11カ国による環太平洋経済連携協定(TPP)」とあるようにCPTPPへの参加のことである。

2020年1月7日、日本の茂木外務大臣が、タイのプラユット首相兼国防大臣を表敬し、その際、TPP11について、プラユット首相から、「タイ国内での手続きを進めているところであり,タイ政府が参加を決定した際には日本に最初に伝達する」旨発言があった[389]。
2020年2月17日、タイのソムキット副首相と日本の西村経済再生担当大臣が会談を行った。その後の記者会見で西村大臣は「副首相からは、タイ国内において、TPP 加入に向けて4月頃にも正式な決定ができるよう前向きな調整を進めているというお話がありました。」と発言した[390]。

2020年4月28日、タイのバンコックポスト(電子版)は、アヌテイン副首相兼保健相が食料安全保障や医薬品へのアクセスが阻害されるとして,CPTPPへの新規加盟申請に反対し、閣議は分裂状態となっていると報じた[391][392]。この反対の後、閣議での結論は確認できないが、4月中の加盟申請は行われておらず、その後も5月13日の日本とタイの会談において検討中と、タイ側が発言していることから結論は出ていないと思われる。
2020年5月13日、タイのドーン・ポラマットウィナイ外務大臣と日本の茂木外務大臣が電話会談を行った。このなかで、TPP11協定について、ドーン大臣から「現在、タイ政府内で検討中であり、引き続き日本政府と連携していきたい。」との発言があった[393]。
2020年5月26日、ロイターの報道によれば、タイの内閣は、CPTPPへの加盟をめぐり、下院に検討委員会を設置することで合意した。政府スポークスマンは「委員会の結論は、内閣がCPTPPへの加盟を決定するのに役立つだろう。政府としては30日以内に全て完了させたいと考えている」と話した[394]。

2020年6月11日、日本経済新聞電子版は「タイの連立政権で国軍が後ろ盾の保守派が台頭し、環太平洋経済連携協定(TPP)参加が後退する可能性が出てきた」と報道した[395]。最大与党「国民国家の力党」内のポスト配分への不満で、党首選を実施されることになったが、その結果、CPTPP加盟を推進しているソムキット副首相派の閣僚は全員、更迭される可能性があるとするものでその場合は参加機運はしぼみかねないとするものである。
2020年6月12日のタイのバンコックポスト(電子版)は、「タイの下院が、49人の委員からなるCPTPPに加入した場合の費用対効果を検討する特別委員会の設置を決定した、検討期間は30日で、下部に種苗、公衆衛生と医薬品、貿易と投資の3分野を検討するサブグループを設置する。」と報じた[396]。5月末に報道されたものであるが、設置が6月12日となったことから検討終了が7月半ばとなり、内閣による加盟申請の是非の決定はその後になる。

2020年7月2日、タイのバンコックポスト(電子版)は、オーラモン・サプタウィツム貿易交渉局長の発言として「CPTPPへの加入について今年中に正式に申請することは難しいと」と報じた[152]。

2020年9月29日、日本経済新聞電子版は、タイのスパタナポン副首相兼エネルギー相へのインタビューとして、『TPPについて「ビジネスを広げたいのならば(参加手続きを)進めるべきだ」と言明した。だが、国会審議で利害関係者の意見を聞く必要があるとも述べた。』と報道した[397]。更に『スパタナポン氏は「(改造後の内閣の)経済チームのトップはプラユット首相だ」と指摘。自身は経済政策を統括していたソムキット前副首相の直接の後任でないとの立場を明らかにした。』とも報道した[397]。

2020年11月12日、タイの下院はCPTPPに加入した場合の費用対効果を検討する特別委員会がまとめた報告書を承認した。政府に提出し、新規加盟を目指す場合にはさらなる検討を求めることになる[398]。

2020年11月24日付タイのクルンテープ・トゥラキット紙が伝えるところによると、タイは23日の閣議においてCPTPPへの加盟交渉の実施判断に向けた関係機関の調整を30日以内に実施するようドーン副首相兼外相に指示すると決定した[399]。その後、2023年2月現在で、加盟申請に向けた動きはない。

インドネシアの旗 インドネシア

2011年の段階では、「自由化品目の割合が非常に高く、対象になった品目の関税撤廃を一気に進める」としてTPPに不参加の意向を明らかにしている[400]。

2015年10月、ジョコ・ウィドド大統領が、米国訪問時に参加の意向を表明した[401]。

2016年6月12日、日本経済新聞電子版は、『ユスフ・カラ副大統領は、日本訪問時における講演で、CPTPPについて「インドネシアは参加する意思がある」と明言した。』と報道した[402]。

フィリピンの旗 フィリピン

TPP交渉参加の意向を表明したことがある[403]。

2021年4月1日、日本経済新聞は、「フィリピンが将来の環太平洋経済連携協定への参加を視野に、調査を始めた。」と報じた。

コロンビア

TPP交渉参加の意向を表明したことがある[214]。

2018年6月15日、コロンビアのマリア・ロレーナ・グティエレス(スペイン語版)商業・産業・観光相がCPTPPに公式に加盟申請したことを明らかにした[404]。なお、コロンビアはCPTPPの寄託国のニュージーランドに公式に通知しているとしているが、CPTPPの発効の前のために、TPPの現参加国の見解では公式なものではないとしている[405]。

スイスの旗 スイス

2021年2月3日、スイスの連邦参事会(内閣)は、エリザベト・シュナイダー国民議会議員から、2020年12月2日に提出されたCPTPPへの加入の検討を求める質問趣意書に対する回答[406]において、CPTPPへの加入により、既存のFTA締結国におけるEUなどとの相対的な競争環境の劣化を克服するとともに、オーストラリア、ニュージーランド、マレーシア、ベトナム、ブルネイなど、スイス(EFTAを含む)がFTAを締結していない国との自由貿易が実現、締約国間の輸出に関する規則を統一できるという利点もある一方で、特許申請後の猶予期間の扱い、地理的表示(GI)に関する制限や輸入国側による原産地証明の事後確認といった、スイス側が受け入れ難い規則が存在するとして、加入に否定的な見解を明らかにした[407]。

ウクライナ

2023年4月21日、ウクライナのタラス・カチカ通商代表はCPTPP[注釈 25]への加盟申請を行い、年内にも交渉が開始されることに期待すると表明した。環太平洋地域に領土を持たないウクライナの加盟が実現すれば、TPPの範囲は環太平洋の枠組みを大きく超えることになる[408]。』

「美しきカローラ」 アフガンで愛されるトヨタ車

「美しきカローラ」 アフガンで愛されるトヨタ車
https://www.afpbb.com/articles/-/3463969

 ※ 『ルームミラーの下では、「この移動手段をわれわれに仕えさせた者に栄光あれ」と書かれた護符が揺れていた。』…。

 ※ そこまで言われれば、「開発者冥利」に尽きるだろう…。

 ※ 『「この車は常に庶民のために存在してきた。これで移動すれば、どこにでも連れて行ってくれる」とAFPに語ったのは、自動車整備士のモハマド・アマンさん(50)。「カローラは速く、鋼板は頑丈でよく走る。(他の自動車は)紙のように薄っぺらだ」

 アフガンではどこでもカローラを目にする。山道を駆け上がる四輪駆動車が、速度を上げるカローラに追い越されることもあるだろう。

 アフガンの多くの人々は、「幸福、それはトヨタのフィーリング」「トヨタこそがスタンダード」「美しきカローラ」といった、英語のブランドメッセージが記されたステッカーを自分の車に貼っている。』…。

 ※ そういう感じで、世界中に「支持者」がいるんだろう…。

 ※ そういう人達が、「トヨタの屋台骨」を支えている…。

『【5月15日 AFP】軍隊の侵攻や撤退、政権の誕生や崩壊が繰り返されてきたアフガニスタンでは、確実と言えるものはほとんど存在しない。だが、信頼できるエンジンを持つトヨタ自動車(Toyota Motor)製の「カローラ(Corolla)」だけは、別格の扱いを受けている。

 つつましくも信頼性の高い小型車のカローラは、世界で最も人気のある乗用車とされ、1966年以降、5000万台以上が生産ラインから送り出されてきた。

 丈夫で簡素な構造を持ち、価格も手頃なカローラは、険しい地形を道路が走り、修理は脆弱(ぜいじゃく)な調達網に頼らざるを得ず、過酷な歴史から「間に合わせ」の精神が浸透しているアフガンに見事にマッチした。

「この車は常に庶民のために存在してきた。これで移動すれば、どこにでも連れて行ってくれる」とAFPに語ったのは、自動車整備士のモハマド・アマンさん(50)。「カローラは速く、鋼板は頑丈でよく走る。(他の自動車は)紙のように薄っぺらだ」

 アフガンではどこでもカローラを目にする。山道を駆け上がる四輪駆動車が、速度を上げるカローラに追い越されることもあるだろう。

 アフガンの多くの人々は、「幸福、それはトヨタのフィーリング」「トヨタこそがスタンダード」「美しきカローラ」といった、英語のブランドメッセージが記されたステッカーを自分の車に貼っている。

■「トヨタに特別熱狂的な人々」がいるアフガン

 かつてアフガンの市場をほぼ独占していたのは、旧ソ連の国営企業ラーダ(Lada)の車だった。1989年のソ連軍のアフガン撤退やその後のソ連崩壊を経て、カローラがアフガンを席巻するようになった。

 以後、カローラはアフガンの歴史の背景となってきた。2001年9月の米同時多発攻撃を受けて米軍がアフガン空爆を開始した際には、イスラム主義組織タリバン(Taliban)の元最高指導者オマル(Mullah Omar)師が南部カンダハル(Kandahar)の隠れ家から白いカローラに乗って逃走した。

 その車は同年地中に埋められたが、22年に掘り起こされた。これを発表したタリバン報道官は「良好な状態だ」と述べ、「重要な歴史的記念物」として展示すべきだと語った。

 20年に及んだタリバンの武装闘争で、自動車爆弾に用いる車両として選ばれやすかったのもカローラだった。安価で、しかも周囲に溶け込みやすかったからだ。

 アフガンの国内各地では、定員を超える大家族がカローラに乗り込んでいる光景が見られる。

 自動車ディーラーのアジズッラー・ナザリさん(39)は「他の国々では何でも作られた目的通りに使われるのだろうが、アフガンの人々はそうした基準にはあまりこだわらない」と話した。

 ナザリさんは輸入したカローラを、顧客の予算に合わせて1500〜1万4000ドル(約20万~190万円)で販売している。多くの車両は世界各国を経由してアフガンに輸入されてきた様子がうかがえる。

 カナダから輸入されたらしい真っ白なカローラは、韓国の新聞で内装が覆われ、ガーナのナンバープレートが付いていた。別のカローラには米国の大学のステッカーが貼られていた。

 どの車も「トヨタに特別熱狂的な人々」がいるアフガンにたどり着いたのだと、ナザリさんは言った。』

『■「世界最高の素晴らしい車」

 首都カブールの自動車修理工場が軒を連ねる地域で、前出のアマンさんは「シンプルに乗る人もいれば、装飾に情熱を燃やす人もいる」と説明する。
 
 あるカローラには「高速のトヨタ。世界最高の素晴らしい車。どんな状況にも対応可能」との文字が躍る。そばにある深緑色のカローラには「ドラマあふれるクラシックカー」と記されていた。

 カブールの午後の交通渋滞の中、タクシー運転手のナキブッラーさん(27)は、自分が生まれる3年前に製造されたカローラのハンドルを握り、乗客を探していた。

 ナキブッラーさんは、周囲を走る8割の自動車がカローラではないかと言った。

「トヨタのカローラ以外、あらゆる車が結果を出せていない」とナキブッラーさん。ルームミラーの下では、「この移動手段をわれわれに仕えさせた者に栄光あれ」と書かれた護符が揺れていた。

 映像は4月24、25日撮影。(c)AFP/Joe STENSON and Qubad WALI 』

米FRBが進めるリアルタイム決済「FedNow」とは? 歓迎する業界、そうでない業界

米FRBが進めるリアルタイム決済「FedNow」とは? 歓迎する業界、そうでない業界
https://www.sbbit.jp/article/fj/36923?ref=rss

 ※ 「決済システム」というだけで、CBDCじゃ無いのでは…。

 ※ まあ、これで様子見て、徐々に導入という腹づもりなのかも知れんが…。

『 米連邦準備銀行(FRB)が現在、導入準備を進めているのがFedNowと呼ばれるサービスだ。内容はリアルタイム・グロス・セトルメント(RTGS)により、金融機関が顧客に対しエンド・ツー・エンドの支払いを24時間365日可能にする、また振り込みなどを迅速に、処理が行われれば数秒で支払いが完了するサービス提供を可能にするというもの。銀行業界、グーグル、ウォルマート、フェイスブックの反応やいかに。

米国在住ジャーナリスト 土方 細秩子
画像
ワシントンD.C.にある米連邦準備銀行(FRB)
(Photo/Getty Images)
<目次>

FedNowの5本柱
銀行業界からは冷めた視線
中小銀行、グーグル、ウォルマート、低所得層は歓迎
意義ある取り組みだが、導入時点で「時代遅れ」も?

FedNowの5本柱
 FedNowには大きく分けて5つの柱がある。

    2万5,000ドル(約263万円)以下の個人のクレジット転送については24時間365日、リアルタイム(数秒以内)の処理を可能にする。

    FRBでの金融機関のマスター口座の残高への貸方と貸方を介した支払いの決済。曜日ごとに毎日の残高を記録。

    現在のFRBのサービスと同じ条件の下、24時間365日ベースで日中のクレジットを通じて流動性を提供。

    ISO20022標準に準拠し、FedLine接続を介したアクセスを提供。

    参加金融機関がサービスプロバイダーを指定し、支払い指定の送信または受信を可能とし、当該銀行の講座での支払い決済を可能とする。

 FRBではすでに同行ボストン支部で第一副社長を務めるケネス・モンゴメリー氏をFedNowプロジェクトの責任者に指名。同氏は会見で「米国の支払いシステムの近代化にとって重要なマイルストーンであり、金融機関が安全かつ迅速に支払いを行うサポートを求める産業界のリクエストに応えるものであり、すべての国民にリアルタイム・ペイメントの恩恵を与えるものとなる」と語った。

 現在のFRBのシステムは週末には機能せず、決済には数日を要する。これを24時間365日リアルタイムにすることで、企業や小売業者が日時を問わず取引を行い、入金あるいは出金を行うことができ、金融資産のよりフレキシブルな管理及び時間に余裕のない支払いなどを速やかに行うことが可能となる。

 FRBではすでにFedwireと呼ばれるRTGSシステムを遂行している。しかしこのシステムは週日の5日間のみ機能しており、特定の金融機関のみが利用できる。また運営はコストがかかり、モバイルアプリも提供されていない。そのため、PayPalのような民間のシステムの方が一般の使用には便利という意見が圧倒的だ。

 たとえばRippleNetはブロックチェーン技術を用い、仮想通貨と同様に国際的な決済も行うことができる。RippleNetはグローバル化した現在において「ゲームチェンジャー」になる決済方法として期待されている。

銀行業界からは冷めた視線
 一方で金融システムにおいては「信頼と評判」こそが集客の基盤であり、RippleNetや新興企業にはそれが欠けている。もしFRBがシステムをアップグレードし、現在こうした新興企業が提供する新しいサービス分野に進出した場合、新興企業の成功の確率は著しく下がるという見方もある。

 というのも、FRBではこうしたアプリによる決済を「クローズド・サークル」と位置付けている。決済をする利用者は双方が同一プラットホームを利用し、一定の銀行にリンクされた口座を利用する必要がある。しかしFedNowは「ユニバーサル」なインフラであり、決済をする利用者は双方が同一プラットホームを利用する必要はなく、すべての銀行がリアルタイム・ペイメントを実行できるようになる。

 たとえばPayPalを例にとると、PayPalで決済を行うには双方がPayPalにアカウントを持つ必要がある。またPayPalがリンクできるのは一部の大手銀行のみだ。しかしFedNowではこうしたアプリを介せずとも、また取引先が中小銀行であっても、同様のリアルタイム・ペイメントが可能となる。

 もっとも注目されているのは、FedNowがBitcoinなどの仮想通貨、フェイスブックが新たに導入を試みるLibra、ブロックチェーン、デジタル通貨などについてまったく触れていない点だ。むしろFedNowは米国内の銀行をターゲットとしているという見方が多い。一方の銀行業界では、シティグループ、JPモルガン・チェースといった巨大銀行らが政府主導のこうしたペイメントシステムの導入には懐疑的だ。

 というのも巨大銀行はすでに独自のリアルタイム・ペイメント・システムの導入に向けて動いており、FedNowはこうしたイニシアチブと重なる部分がある。たとえば複数の銀行が共同で立ち上げたクリアリング・ハウスというシステムに対し、銀行はこれまで10億ドル近い投資を行ってきたが、FedNowが導入されそのシステムで統一されればクリアリング・ハウスがいわば死に体になってしまう。

 さらにFedNowは2023年もしくは24年の実施を見込んでいるが、これが遅すぎるという批判もある。クリアリング・ハウスではすでに複数のリアルタイム・ペイメント・システムを合わせたオプションの提供を始めているが、FedNowの導入が決定すれば多くの金融機関がその実施を待つ必要があり、一般の人々にとってはリアルタイム・ペイメントの実現が遅れるだけの結果になる。

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クリアリング・ハウスが提供しているリアルタイム・ペイメント・システム

 クリアリング・ハウスの上級副社長であるスティーブ・レッドフォード氏は「我々はすでにリアルタイム・ペイメントネットワークを構築しており、実際に機能している。もしFRBが独自のネットワークを築くとすれば、それは人々が迅速なペイメントシステムにアクセスするのを遅らせるだけの結果となる」とコメントした。 』

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アメリカのCBDCの呼び水、FedNowが7月から稼働

アメリカのCBDCの呼び水、FedNowが7月から稼働
http://blog.livedoor.jp/goldentail/archives/31521997.html

『各国の中央銀行が発行するデジタル通貨、CBDC(Central Bank Digital Currency)のアメリカ・ドル版が、いよいよ7月から運用が始まります。アメリカ経済の裏付けがあり、政府が発行するデジタル通貨なので、仮想通貨と呼ぶのは不適切でしょう。ここは、一般的に広まっていませんが、暗号資産と呼ぶべきかと思います。FedNowは、その決済部分を請け負うシステムで、CBDC導入の先駆けになるものです。

中央銀行が発行するデジタル通貨なので、納税に使えます。結局、法定通貨と仮想通貨の、一番の大きな違いというのは、それで納税が可能かどうかです。仮想通貨が、ある意味フリーで、価格がジェット・コースターのように乱高下しているのは、その価値に裏付けが無いからであり、そうである以上、納税する時の通貨としては、使用不可能です。

通貨の一般的な機能としては、価値の尺度、交換・流通の手段、価値貯蔵手段の提供があります。逆に言えば、それが担保されていれば、仕組みは、どうでも良くて、どんな方法でも通貨たりうるのですが(実際、ローカル通貨という特定の地域でしか通用しないポイントみたいな通貨もある)、各自勝手に発行した通貨は、納税にだけは使えません。アメリカが新大陸に建国した直後は、各地の銀行やら資本の大きい大企業が、政府の認証を受けて、勝手に通貨を発行して、種類が数千種類もありました。これらは、流通通貨と言われて、価値がそれぞれ違うので、流通通貨同士でも両替しないといけないという、信じられないような非効率な事をしていました。政府発行の唯一の合法通貨であるドルに統一されるのは、法律が制定されて、流通通貨が禁止されて後の話になります。

この状態というのは、ホワイト・ペーパーで、創立の主旨さえ説明すれば、誰でも勝手に新しい通貨を作る事ができる仮想通貨の世界と同じです。前段で説明したように、通貨というのは、3つの機能を満たしていると、利用する人が信じる事ができれば、成立します。国が認めようと、認めないと、関係ありません。だから、何千種類もあるし、詐欺通貨も多いのです。納税する為には、それでは困るので、国が認定する法定通貨しか使えません。デジタル通貨で、納税に使えるのは、国が発行したCBDCだけです。

CBDCが使えるようになると、銀行の営業時間に縛られる資金の移動や決済が、24時間・365日になります。外貨送金する時の手数料も、比べ物にならないくらい安くなるはずです。そして、国家が通貨の発行と管理に使っている莫大な費用が、必要なくなります。もちろん、しばらくは併用するでしょうし、停電があった時に使えないでは、通貨として瑕疵があるので、完全には無くならないでしょうが、流通すれば、現在の「現金」に比べて、その利便性の高さとコストの安さは、明らかなので、普及に関しては、まったく心配がいらないと思われます。

まぁ、代わりに、銀行の存在意義が、かなり縮小しますので、金融の世界で革命に近い改革が起きるのは、避けられないでしょう。ネットバンク程度で、既存の銀行はヒーヒー言ってますので、競争力の無いところは、市場から消えると思われます。

面白いのは、仮想通貨の代名詞である基幹技術のブロックチェーン技術は、使用していないのですね。中央集権型の価値の裏付けがある通貨の場合、流通にブロックチェーン技術を使う必要は、必ずしもありません。なので、暗号資産と呼んで分けて考えた方が良いです。確かに、通貨の価値担保に、中央銀行が出てきて保証する場合、ブロックチェーンという冗長なシステムを使う必要は無いわけです。

この次世代の決済システムのFedNowは、FRBが提供する決済システムで、CBDCの前準備に当たる位置づけです。実際にデジタル・ドルに相当する通貨が、供給されるまでには、ハードルがありますし、まずアメリカ議会で法案を通す必要があります。』

今年のアメリカの政府債務上限引き上げが、今までと違う理由

今年のアメリカの政府債務上限引き上げが、今までと違う理由
http://blog.livedoor.jp/goldentail/archives/31499632.html

『と、表題のタイトルにしましたが、基本的には手打ちをしないと、アメリカがテクニカル・ディフォルトではなく、本当にディフォルトして、世界経済が大混乱しますので、「経済的大量殺人者」と呼ばれたくなければ、民主党も共和党も妥協する必要があります。なので、決着するとは思っています。

今までも、「政治的な茶番」と呼ばれて、党利党略の為のショーと言われてきた、この2年に一回の行事のようなアメリカの政府の債務上限引き上げ問題ですが、今年はちょっと真剣さが違います。実際、この騒動が起きる理由というのは、まったく建設的なものではなく、近々の大統領選挙に向けて、バラ撒きをやって有権者の歓心を買いたい、その時の与党と、それを阻止して選挙を有利に進めたい、その時の野党の完全な政治ゲームなんですね。そもそも、この法律的な制限というのは、無制限に債務を膨らませて、2つの世界大戦で、世界帝国の地位から、普通の国になってしまったイギリスの失敗を見て規制されているわけです。本来、債務上限が100回以上も引き上げられる国家運営こそが問題なのですが、自分の政権の時にバラ撒きをしたいので、そこにはメスを入れないのですね。私は、アメリカの民主主義の最も醜い面だと考えています。共産国の「面子」と同じくらい本質を見失った政治ショーですね。

で、今年が一味違う理由なのですが、アメリカが歴史上有数のインフレ状態になっているからです。この状態でバラ撒きをしてしまうと、せっかく一部の経済を犠牲にして、政策金利を引き上げる事で、力技で抑え込んでいるインフレが再燃してしまうのですね。アメリカのインフレは、笑って済まされる状態は、とっくに過ぎていますので、FRBは全てを犠牲にしてインフレ退治を優先する構えです。

で、「バラ撒き」と書くと語感が悪いのですが、どんな形でも財政支出をしたらインフレの原因になるので、一応、有意義な理由が付いていても、予算を割いて、支出がある場合を、全てバラ撒きと呼ぶ事にします。例えば、CO2排出規制を進める為の補助金とか、大学生に対する奨学金の拡大とか、インフラ投資の増加とか、やる事に意味のある政策も含みます。とにくかく、インフレの厄介なところは、どんな理由でも、政府が金を市中に出したら、政策金利を引き上げて抑制しているインフレに火が付いて、今までの努力が無駄になってしまう点です。

なので、私は既に確信していますが、やがて来るアメリカ経済のリセッションをソフトランディングさせる為にも、インフレの抑制は進めなくてはならず、その為には「バラ撒き」を認めるわけにはいかないという、凄く真剣な理由があります。まぁ、たまたま、それを突き付けるのが、野党の共和党で、それを拒否するのが与党の民主党の立場になったわけですね。ただ、もともと、民主党は大きな政府で、金のバラ撒きに熱心という党としての色がありますので、役どころとしては、ピッタシです。いつもの政治ショーと一味違うのは、こうしたガチの経済的な危機が背後に控えているからです。

このブログで、いくつかの記事で、複数の視点からアメリカの経済のヤバさを説明しています。一見、経済が好調のように経済指標や株価が動いている理由も説明しています。実際、薄氷を踏む危うさで、経済が回っていて、過去にいくつもの経済動乱や戦争・紛争があったにも関わらず、アメリカ経済自体に疑問を抱いていなかった第三国が、自分たちで経済圏を構築したり、ドル覇権からの分離を試みているのは、偶然ではありません。実際、「今までを盲信しているとヤバイ」と考える、国家指導者が増えているという事です。
恐らく形としては、どこかで手打ちになると予想される今回の政府債務上限引き上げ騒動ですが、その結果によっては、アメリカのインフレが年単位で継続したり、地方銀行を中心にした末端の市民金融が修復の難しいダメージを食らう可能性があります。近年では、珍しいくらい政治ショーではなく、ガチの政策論争になるはずです。その為、両党とも、現時点での政策の開きが大きく、しかも妥協がしづらいという綱引きになっています。なので、タイムリミットのギリギリまで揉める可能性が高く、もしかしたらバイデン大統領は、日本で開催されるG7サミットにも来日できない可能性があります。』

日銀、国債補完供給の品貸料引き上げ 空売り抑え取引円滑化狙う

日銀、国債補完供給の品貸料引き上げ 空売り抑え取引円滑化狙う
https://jp.reuters.com/article/boj-10-year-idJPKBN2UQ0JW

 ※ 今日は、こんな所で…。

 ※ 直接には、コレが「引き金」だろう…。

 ※ まあ、「天下の日銀様」に逆らって、無事でいられるヘッジファンドは、いないと思うが…。

 ※ そもそも、「他国の通貨」に「空売り」仕掛けて、儲けようとか、「フテー話し」だ…。

 ※ 返り討ちにあって、「いい気味」だ…。

 ※ 全く、同情する気には、ならんな…。

 ※ ちょっと説明を、加えておく…。

 ※ 日本国債の「空売り」を仕掛けようにも、かたっぱしから「日銀様」が「買い上げて」しまわれるんで、「市場に」「タマ」自体が出回らない状況になっている…。

 ※ そこで、「編み出した」のが、「賃貸料」を支払って、「国債の入札」に参加している「国内の金融機関勢」から、「借りる」という手法だ…。

 ※ 「借りて」「空売り(先行き、売りポジションを取る)」するというわけだな…。
 ※ しかーし、「日銀様」が「お怒り」になられて、その「借りる際の賃料」を引き上げることにするという「お達し」を、発令されたのじゃー…。

 ※ それで、空売りのコストが、「利益」に見合わなくなって、投げ売り・撤退するヘッジファンドが続出し、「がん首並べて」討ち取られ―…。

 ※ 大体、そーゆー話し…。

『2023年2月16日5:30 午後Updated 3ヶ月前

[東京 16日 ロイター] – 日銀は16日、10年物国債のカレント3銘柄のうち、レポ市場で長期にわたり需給が逼迫する懸念がある銘柄を対象に、国債補完供給における最低品貸料を引き上げると発表した。日銀は国債補完供給が本来の制度趣旨から外れて利用が膨らみ、空売り圧力が高まっていることを懸念。国債補完供給の使い勝手を悪くすることで空売り圧力を抑え、円滑な市場取引の確保を目指す。

2月16日、日銀は10年物国債のカレント3銘柄のうち、レポ市場で長期にわたり需給が逼迫する懸念がある銘柄を対象に、国債補完供給について最低品貸料を見直すと発表した。写真は2013年2月、都内で撮影(2023年 ロイター/Shohei Miyano)

最低品貸料を従来の0.25%から原則として1.0%に引き上げる。2月27日以降のオペに適用する。同措置を講じる銘柄については、特に必要と認める場合、銘柄別の売却上限額を「日銀の保有残高の100%」から引き下げる。売却上限額を引き下げた銘柄については、原則として午後の国債補完供給のオファーを行わない。

また、これらの措置を講じる銘柄については、国債市場における利回り水準が0.5%に達しないと見込まれる場合には、連続指し値オペの対象としないことがあり得るとした。

<日銀、国債補完供給の利用で「大規模な空売り」懸念>

国債補完供給は本来、市場の流動性を確保する観点から国債を一時的かつ補完的に供給するものだが、日銀の国債買い入れで流動性が落ちる中、足元では10年物カレント銘柄の一部で利用が膨らんでいた。16日の国債補完供給オペでは、カレント銘柄の367回債で1兆2553億円、368回債で8082億円の利用があった。

大和総研・金融調査部の中村文香研究員は「国債補完供給オペが使いやすいために国債の空売りがしやすくなり、そうすると金利上昇圧力が高まって日銀がまた買い入れなければならないという悪循環に陥っていた」と指摘。今回の最低品貸料の引き上げはこうした悪循環を断つことを狙ったものだと話す。

日銀は「国債補完供給を長期にわたって継続的に利用することを前提とした大規模な空売りが見受けられている」と指摘。「こうした空売りの買い手となった市場参加者が連続指し値オペに応札することで、一部の対象銘柄についてSCレポ市場(特定銘柄取引)における需給が長期にわたり著しく引き締まる懸念が生じる状況となっている」とした。

その上で、今回の一連の措置を通じ「国債補完供給の趣旨に即した利用を促すことで市場取引の円滑を確保し、金融市場調節のいっそうの円滑化を図る」とコメントした。

野村証券のチーフ金利ストラテジスト、中島武信氏は最低品貸料の引き上げについて「日銀から国債補完供給で国債を借りてショートするのを難しくするだろう」と指摘。連続指し値オペはカレント3銘柄を対象としているため、現在、日銀は0.5%以下の銘柄も買わなければならないが「その必要がなくなれば、流動性も向上すると期待される」との見方を示している。

もっとも、引き上げ後の最低品貸料は、制度の「悪用」防止と流動性維持のバランスを保つ観点から微妙な判断になった可能性がある。大和総研の中村氏は原則1.0%の最低品貸料について「様子を見ながら変更する可能性もある」と話す。

(伊賀大記、和田崇彦 編集:石田仁志)』

ECB総裁「銀行監督を徹底」 AT1債まず株主が損失負担

ECB総裁「銀行監督を徹底」 AT1債まず株主が損失負担
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR099BL0Z00C23A5000000/

『【ロンドン=南毅郎、大西康平】欧州中央銀行(ECB)のラガルド総裁は「可能な限りきめ細かく、徹底した銀行監督を実施する必要がある」と述べ、利上げ継続の前提となる金融システムの安定に取り組む方針を強調した。クレディ・スイス・グループ救済で問題になったAT1債(永久劣後債)は「まず株主が損失を負担する」と語り、無価値にしたスイス当局の対応との違いを明確にした。

「最初の教訓は『バーゼル3』の枠組みを…

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『「最初の教訓は『バーゼル3』の枠組みを徹底的に適用しなければならないことだ」――。ラガルド氏は2008年のリーマン危機後に定めた国際的な資本規制(バーゼル3)と銀行監督の両輪を機能させることが重要だとして、足元の金融不安への対応で単純な規制強化論とは距離をおいた。

ラガルド氏は金融不安の教訓は①バーゼル3の適用②規制対象行の拡大③銀行監督の徹底④ノンバンクの監視強化――だと即答した。欧州を含む主要地域で取り組み、不安払拭へ協調を呼びかけた。

これまでラガルド氏は監督権限を持つユーロ圏の銀行は「強固だ」と訴えてきた。3月には米シリコンバレーバンクの経営破綻に続き、金融大手クレディ・スイス・グループの救済買収が決まった。5月も米地銀ファースト・リパブリック・バンクが経営破綻したが、いずれも米国とスイスが震源地で、現時点でユーロ圏には波及していない。

欧州域内にも変調のリスクは潜む。ラガルド総裁が「創設以来、最も速いスピードでの利上げ」と話す通り、ECBは2022年7月から今月4日の理事会まで、7会合連続で利上げを実施。主要政策金利は3.75%と米金融危機が起きた08年以来の水準に到達し、金融引き締めの効果を見極める重要な時期に入った。

金利上昇が預金と貸出金の利ざやの改善を通じて銀行の収益に寄与してきた半面、債券の含み損や不良債権に備える引当金が膨らみかねない構図は米国に通じる。クレディ・スイスなどの経営不安では、預金流出という古くて新しい問題への対処も課題として浮かび上がった。

ラガルド氏が「きめ細かい銀行監督」の必要性に言及したのは、金融システムの安定がインフレ退治に向けた継続利上げの前提になるためだ。厳しい規制の枠外にある投資ファンドなどのノンバンクをめぐっても「金融安定理事会(FSB)とバーゼル銀行監督委員会は注視すべきだ」と対応を呼びかけた。

世界の金融資産に占めるノンバンクの規模は21年時点で239兆ドル(約3.2京円)とおよそ半分にのぼる。FSBも金融当局にリスク監視の強化を求めており、資金流出など不測の事態を念頭に対応を急ぐ。

クレディ・スイスの救済買収で無価値になったAT1債の取り扱いについては、スイス当局の対応と一線を画す姿勢を鮮明にした。スイス当局はクレディ・スイスが発行した160億スイスフラン(約2.4兆円)規模のAT1債の全額毀損を決め、AT1債の投資家が株主以上に損失を被る異例の対応を取った。

ラガルド氏はユーロ圏の銀行で経営不安が起きた場合には「まず株主が負担するのが順序だ」と明言した。欧州連合(EU)で適用されるルールで「変更の余地はない」とも語り、銀行の破綻処理で株式による損失吸収を優先する考えを強調した。明快なメッセージには、市場の動揺をおさえたいとの意向がにじむ。

AT1債は銀行の財務が悪化した場合に投資家が損失を引き受ける。国際的な金融規制で自己資本として算入できるため欧州勢を中心に発行が進んできた。英バークレイズによると、欧州銀行全体の発行残高は22年時点で約1800億ユーロ(約26兆円)。利回りが1%上昇すると借り換えコストの増加で税引き前利益は0.8%押し下げられるという。

金融不安が高まった3月のECB理事会では一部メンバーから利上げ見送りを求める意見も出た。インフレ率や経済環境、考え方が異なる20カ国のユーロ圏の金融政策を担うECB理事会での合意形成は容易ではない。ラガルド氏は「私のおかげと思いたいが」と冗談を交えながら「ほとんどすべてのケースで、私たちは十分なコンセンサスを形成できたと思う」と政策運営に自信を示した。

ECBは過去の利上げ局面でも危機と重なり、前回の11年当時には欧州債務不安の高まりから一転して利下げを迫られた経緯がある。理事会内では「過去の教訓が思い出される」と急激な利上げには慎重論もある。

ウクライナ危機が長引くなか、インフレの抑制と金融システムの安定をいかに両立するか。ECBが発足してから前例のない試練の克服は「独裁的な中央銀行総裁ではない」というラガルド氏の政策手腕にかかっている。

Christine Lagarde
パリ出身で弁護士の経歴を持つ。仏経済・財政・産業相、国際通貨基金(IMF)専務理事などを歴任。2019年11月から現職。』

スリランカ、債務再編で透明性確保 日本など共同声明

スリランカ、債務再編で透明性確保 日本など共同声明
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA105R60Q3A510C2000000/

『日本などが議長を務めるスリランカの債権国会合は9日、共同声明をまとめた。スリランカが透明性のある公平な債務再編に取り組むことを確認した。最大の債権国でオブザーバーとして出席した中国には正式な参加を要請した。

日米欧など先進国で構成する「パリクラブ(主要債権国会議)」が公表した。

デフォルト(債務不履行)に陥っているスリランカは債務再編を要請した。同国は3…

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『同国は3月に債権国にあてた書簡で、債務再編に当たって債権国に対する透明性や同等性を確保し、会合外での独自の2国間交渉は控えると説明していた。

中国が今後、債権国会合で具体的な協議に応じるかが焦点になる。

共同声明によると、9日の会合にはインドやフランスなど17カ国が正式に加わった。債権をもたない国や中国、サウジアラビア、イランはオブザーバーとして出席した。』

4月米消費者物価、4.9%上昇 10カ月連続で伸び鈍化

4月米消費者物価、4.9%上昇 10カ月連続で伸び鈍化
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN100F50Q3A510C2000000/

『【ニューヨーク=斉藤雄太】米労働省が10日発表した4月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比の上昇率が4.9%だった。市場予想の5.0%を下回り、10カ月連続でインフレは鈍った。ただサービス分野を中心に物価はなお高く、米連邦準備理事会(FRB)は高止まりを警戒する。

【関連記事】続く米インフレ減速、足取りは鈍く 利下げ転換に距離

4月の上昇率は2021年4月以来2年ぶりの低水準だった。22年6月の9.1%をピークに伸びが鈍化している。

ロシアのウクライナ侵攻で22年前半に原油価格が高騰した反動が出ており、前年同月比でみたガソリン価格は下がりやすくなっている。4月は12.2%低下した。食品価格の上昇率も縮小傾向にある。

物価高の一因だった供給制約は解消している。

輸送運賃や主要国製造業の受注残・在庫といった調査項目をもとにニューヨーク連銀が算出する「グローバル・サプライチェーン圧力指数」は4月時点でおよそ14年半ぶりの低水準になった。

エネルギーと食品を除くコア指数の前年同月比の上昇率は5.5%だった。市場予想と同水準だった。コア指数の伸びは23年1月以降、一進一退が続く。

物価の高止まりを招く要因はなお多い。4月は中古車が前月比で上昇に転じた。一部のモノの価格は需要の強さを背景に下げ止まりの兆しがみえる。

アトランタ連銀が算出する「賃金トラッカー」(3カ月移動平均)は昨夏をピークに前年比の伸びが鈍化していたが、23年3月にかけて6%台半ばに再加速した。4月の米失業率は3.4%とおよそ半世紀ぶりの低水準になった。根強い人手不足と賃上げ圧力が幅広いサービス価格を押し上げる構図が続く。

10日の米市場ではCPIの総合指数の伸び鈍化に反応し、米金利に低下圧力がかかった。ドルが売られ、対ドルの円相場は一時1ドル=134円台前半とCPI発表直前より1円ほど円高・ドル安が進んだ。FRBの早期の利下げ転換期待が再び高まった。

FRBは3日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で10会合連続の利上げを決める一方、声明文の修正で利上げを打ち止めにする可能性を示唆した。

累計5%の大幅利上げで家計や企業の資金調達コストは上がり、米地銀の連続破綻で銀行による融資の絞り込みが進む可能性も高まった。経済・物価の先行きを慎重に見極める構えだ。

ただFRB高官の間では物価が2%目標に近づくまでは時間がかかり、そう簡単に金融引き締めの手綱を緩めることはできないという見方も強い。

ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁は9日「我々は利上げを終えたとは言っていない」と述べた。年内の利下げ転換にも否定的な考えを示した。サービス分野を中心に「まだ需要が供給に対して非常に強い」とみるためだ。

FRBが引き締めの長期化を迫られれば、最終的に景気の急速な冷え込みを招くリスクが高まる。

【関連記事】

・米景気に3つの崖「融資・貯蓄・財政」 迫る真の試練
・激震続く米地銀、株価3〜5割安 経営の「質」問う市場

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上野泰也
みずほ証券 チーフマーケットエコノミスト
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ひとこと解説

今回の米消費者物価指数は、ほぼ市場予想通りの結果。5月に追加利上げに動いたFRBが、6月は利上げをせず様子見に移行するという、市場の大方が想定しているシナリオを裏打ちする結果と受け止められる。総合の前年同月比は10か月連続で伸びが鈍化。+5%を下回って+4.9%になり、1ケタ台前半まで下がってきた。一方、コアの前年同月比は+5.5%。プラス幅を前月からわずかに縮小したものの、下げ渋りの印象が強い。足元の市場は年後半に0.25%ポイント幅の利下げ3回を織り込んでいるものの、パウエルFRB議長は年内の利下げには否定的である。筆者は、過去の事例も勘案しつつ、最初の利下げは24年にずれ込むとみている。
2023年5月11日 7:59 』