エジプト高速鉄道計画始動

エジプト高速鉄道計画始動 独シーメンスと5000億円規模
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR07E0J0X01C21A0000000/

『【カイロ=久門武史】エジプトで5000億円規模の高速鉄道計画が動き出した。運輸省傘下のトンネル公社と独シーメンスの鉄道システム事業子会社などが9月、紅海と地中海を結ぶ全長660キロメートルの高速鉄道を建設する契約を結んだ。貨物列車も運行する計画で「陸のスエズ運河」をうたう新たな輸送ルートを目指す。

「鉄道のスエズ運河」に

「新行政首都や新都市を鉄道ネットワークに結びつけ、沿線のインフラを強化する」。エジプトのワジル運輸相は署名式で、同国初の高速鉄道に期待を示した。

紅海の港町アインソフナと地中海側のマルサマトルーフ、アレクサンドリアを結ぶ新線を整備する。シーメンスは「『鉄道のスエズ運河』のようなリンクをつくりだす」と説明し、紅海と地中海をつなぐ海運の大動脈スエズ運河になぞらえた。

高速鉄道は首都カイロの東約45キロメートルに建設中の新首都や、カイロ郊外で工業団地などがある新興の衛星都市「10月6日市」を経由する予定だ。総事業費は45億ドル(約5100億円)。このうちシーメンスの担当範囲は30億ドルとしている。エジプトの建設大手オラスコムなどが参加する。発表によると、鉄道利用客数は年間3000万人を見込んでいる。開業時期は明示していない。

ドイツ鉄道の車両ベース

旅客列車の車両はドイツ鉄道(DB)の高速鉄道車両をベースにしたシーメンスの「ヴェラロ」を導入する。同社は開業時の最高速度を明らかにしていないが、エジプトの政府系紙アハラムは時速250キロメートルだと伝えた。貨物列車にもシーメンスの電気機関車を使う計画だ。ロイター通信によると、2023年末までに車両の納入を始める。

政府は将来、全土で1800キロメートルの新たな鉄道ネットワークを築く青写真を描く。首都圏からナイル川沿いの南部アスワンを結ぶ路線などだ。

エジプトの1人当たり国内総生産(GDP)は約3600ドルと過去20年で倍増し、アジアの国ではインドネシアに近い。11年の民主化運動「アラブの春」後の混乱を経て強権的な統治のもと政情は安定し、海外からの直接投資額はアフリカ大陸で最大だ。人口は年2%のペースで膨らみ、20年に1億人を突破した。高速鉄道の需要も拡大していく可能性は高い。

シーメンスの高速鉄道車両「ヴェラロ」(2010年の国際展示会)=ロイター

投資不足で老朽化

エジプトの長距離鉄道は英国が支配を強めた19世紀に整備が進んだ。現在は国有だが投資が不足し、老朽化が進んでいる。首都カイロと第2の都市アレクサンドリアを結ぶ幹線でさえ電化されておらず、車両は古い。列車同士の衝突事故もたびたび起こっている。設備の近代化と安全の確保が喫緊の課題と言える。

政府は既存の鉄道を使いながら更新するより、外資の技術で高速鉄道の新線を整備する方が早いと判断したもようだ。電力供給の面でも環境は整っている。かつては停電が頻発していたが、発電所の増設で電気を近隣国に輸出するほどになったからだ。

現在の鉄道運賃は安い。カイロ―アレクサンドリア間の2等車は所要2時間半の最も速い特急で100エジプトポンド(約700円)ほどだ。低所得層への配慮の側面があるが、設備更新の原資の確保もおぼつかないまま陳腐化が一段と進む懸念があった。

収支の見通しに課題も

 今回着手する高速鉄道や貨物路線の運行形態や収支の見通しは不明だ。スエズ運河を通航する海上貨物の大半は、わざわざエジプトの港で鉄道に積み替える必要性に乏しい。国内の貨物輸送や輸出入に使えるとはいえ、コストに見合う付加価値がどれだけあるか読みづらい。政府は高速道路網を猛スピードで整備しており、トラック輸送との競合も予想される。
 旅客輸送では建設中の新首都への通勤などで課題となっている大量輸送の実現に一役買いそうだ。ただ、カイロ中心部は渋滞が激しいうえ再開発の余地が乏しく、高速鉄道駅へのアクセスが難題だ。運賃は既存の公共交通機関よりも割高になるとみられ、マイカーやバスでの移動に慣れた人々をどれだけ取り込めるかが焦点となる。
 一方、新たな鉄道の建設は経済のテコ入れにつながる。政府は1万5000人以上の雇用を創出し、海外の技術を吸収する好機だとみている。電車への移行で、温暖化ガスの排出抑制をアピールする手段にもなる。エジプトは次回の国連気候変動枠組み条約第27回締約国会議(COP27)の開催地に決まっている。』

中国、TPP加盟へ攻勢 ベトナム・マレーシアに秋波

中国、TPP加盟へ攻勢 ベトナム・マレーシアに秋波
ASEAN首脳会議
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM26B3O0W1A021C2000000/

『【北京=羽田野主、ワシントン=鳳山太成】中国が環太平洋経済連携協定(TPP)の加盟に向け東南アジア諸国連合(ASEAN)を切り崩している。新型コロナウイルスのワクチン供与や中国市場の開放をちらつかせ、中国のTPP参加に前向きな雰囲気をつくろうと躍起だ。米国も対抗してASEANへの関与を強めている。

「(中国とASEANの)経済の融合を深め、地域的な包括的経済連携(RCEP)協定をなるべく早く発効させよう」。26日の中国・ASEANのオンライン首脳協議で、李克強(リー・クォーチャン)首相は呼びかけた。気候変動対応、科学技術やイノベーションなどでの協力も提案した。中国国営新華社が伝えた。

李氏の「経済の融合」との発言はTPPも視野に経済の相互関係を深めるとの思惑がにじむ。ASEAN10カ国のうちTPPに加盟するのはベトナム、マレーシア、シンガポール、ブルネイの4カ国。中国にとって働きかけが欠かせない。

ベトナムとは南シナ海を巡って利害が対立する。李氏は「南シナ海の平和は中国とASEAN加盟国の共通の利益だ。双方が南シナ海での実務的な協力を実現し(紛争防止に向けた)行動規範で早期に合意することを希望する」と低姿勢だった。

9月にTPPに加盟申請してからの中国の動きは素早かった。習近平(シー・ジンピン)国家主席がベトナムの最高指導者グエン・フー・チョン共産党書記長やシンガポールのリー・シェンロン首相と電話協議。両国から中国の申請に前向きな反応を得た。

働きかけの「武器」となるのがワクチンだ。9月末には王毅(ワン・イー)国務委員兼外相がマレーシアのサイフディン外相と電話し、100万回分のワクチンを寄付すると表明。中国がマレーシアに提供したワクチンは寄付分だけで少なくとも合計150万回分になる。李氏も26日の会議で、中国とASEANの新型コロナの協力を提案した。

中国が4カ国に秋波を送るのは、国有企業が多いという共通点も理由とみられる。北京の大学教授は「TPP加盟は10年単位の時間がかかる。いまは仲間づくりが大事。国有企業が多いベトナムやマレーシアと協議して準備しておく」と明かす。

TPPは国有企業などで厳しいルールをもうけたが、国有企業が主体のベトナムには例外規定を認めた。中国が参考にしている可能性がある。

東南アジアで大使を務めた中国の元外交官は「(国有企業など)解決が非常に困難な問題は例外化を考えるべきだ。中国市場は他国には魅力的だ。相手に利益を示し、交渉を有利に進めることが大事」と主張する。

中国とASEANの貿易額は新型コロナにもかかわらず増え続ける。2020年の中国の対ASEAN輸入額は3013億ドル(約34兆円)と10年前の約2倍に膨らんだ。4カ国にとっても、中国のTPP参加による大幅な関税下げは経済効果が大きい。

中国の攻勢を目の当たりにし、バイデン米政権もトランプ前政権よりはASEAN関与に前向きだ。バイデン米大統領は26日、米ASEAN首脳会議にオンラインで出席した。米大統領の出席は4年ぶり。欠席を続けてきたトランプ前大統領から一転し、東南アジアを重視する姿勢を訴えた。

バイデン氏は新型コロナや気候変動対策などで、ASEANへ計1億200万ドル(約116億円)の支援策を発表した。米国の存在感を高めて中国に対抗する狙いだ。

もっともバイデン氏はTPPへの復帰には慎重だ。支持基盤である労働組合などが雇用流出を懸念して反対するためだ。東南ア諸国と経済関係を深めて、求心力を回復する道筋は描けていないのが実情だ。』

AIIB、環境投融資「30年までに累計5.7兆円」

AIIB、環境投融資「30年までに累計5.7兆円」
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM26BNF0W1A021C2000000/

『【北京=川手伊織】中国が主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)の金立群総裁は26日に記者会見し、「2030年までに気候変動問題に対応する投融資を累計で500億ドル(約5兆7000億円)にする」と表明した。世界の金融機関がしのぎを削る環境関連の投融資で存在感を高める。

26日からオンラインで年次総会を開いた。これまでの総投融資は案件を承認したベースで147件、累計金額は約290億ドルとなった。20年以降に2.4倍へと増えたが、新型コロナウイルス関連の押し上げも大きかった。

AIIBによると、16~18年に実施した気候変動対応への投融資は累計25億ドルだった。500億ドルの目標達成には年間の投融資額を4倍に引き上げる必要があるという。金氏は今年1月に「25年までに総投融資の5割を環境関連にする」と述べ、20年時点で41%だった比率をさらに高める意向も示していた。

AIIBは16年1月に開業した。中国が最大の3割を出資し、増資など重要案件で拒否権を握る。加盟国・地域は104となり、発足当初の57から8割増えた。加盟国の半分が南米やアフリカなど域外で、欧州の主要国も参加している。日本や米国は参加していない。』

習近平氏が崩す「住宅神話」

習近平氏が崩す「住宅神話」 恒大問題しのぐ新税の影響
編集委員 中沢克二
https://www.nikkei.com/article/DGXZQODK25CHY0V21C21A0000000/

『中国共産党が存在する限り住宅価格は永遠に上がり続ける――。中国で長年、信じられてきた奇妙な不動産神話がついに崩れるのか、庶民の間で議論が沸騰している。きっかけは23日、全国人民代表大会(全人代)常務委員会が決めた日本の固定資産税にあたる「不動産税」の試験導入である。驚くことに、社会主義国、中国では数軒の豪邸を持つ大資産家に対しても保有にかかる資産税を課していない。

毛沢東思想とともに「共同富裕」のスローガンを掲げたデモ(2013年、広東省広州)=ロイター

不安に駆られた富裕層は中国各地で開かれている民間のセミナーに殺到している。新税の負担がどの程度になるか予測するための勉強会である。会場に掲げられた演題の冒頭には「共同富裕(みんなが豊かに)」という決まり言葉が必ずつく。国家主席の習近平(シー・ジンピン)が繰り返している格差是正の標語である。

ここ数日、中国のSNS上で交わされているやり取りも興味深い。「不動産税は思ったより早くやってきた。住宅投資で金持ちになれる時代は終わった。自分が住まない家は値下がりしないうちに早めに売ろう」「いやいや、慌てるな。今回の試験導入の価格への影響は小さいだろう」。今、既得権益を持つかなりの富裕層が慌てているのは確かだ。

風を読む「賢者」は高値で売り抜け

実のところ予兆はかなり前からあった。数年前、北京のマンションを高値で売った現金を手に中国南部に移住する決断をした50代の男性は、みえにくい最近の不動産市場のウラ事情を明かす。

「北京と上海の友人らもついに2020年から(自らは住まない2軒目、3軒目の)マンションを売り始めた。習主席は『住宅は住むためのもので、投機対象にすべきではない』と言い続けているではないか。上がりすぎた住宅価格は必ず下がる。皆、どうして信じないのか」
中国の国連代表権獲得から50年を記念する会議で演説する習近平国家主席(25日、北京)=新華社・共同

賢い人々は既に売り抜けて身軽になりつつあるのだ。売却決断の決め手は、中国政局の読みである。住宅を投機対象にするなと命じた習は、22年秋の共産党大会以降もトップの座に居続ける。権限を一手に握る習が今後も「レームダック(死に体)化」しない以上、いくら抵抗があっても住宅高騰の防止につながる不動産税の本格導入は避けられない。早めに動かないと痛手を被る。そう考えたのだ。

12年からの第1期習近平政権時代、北京の住宅価格は数年で倍になる異常な高騰が続いた。その頃、日本のバブル崩壊による土地神話崩壊を経験した日本人が、よかれと思って中国の方々に注意を促すと、こんな答えで一蹴された。

「外国人のあなた方は本当の中国を知らない。住宅は多少、変動しても必ず値上がりする仕組みになっている。それが中国の特色ある社会主義下の市場経済なんです」。確かに言葉通り住宅高騰はその後も続いた。

中国で1990年代に立ち上がった商業用住宅市場の草創期、投機に動いたのは共産党員や官僚、彼らから耳寄り情報を得られた特別な人々が多かった。信用力があり、最初の保有物件を担保に銀行から次の借金もできたからである。ここに中国の住宅問題の複雑さが隠されている。

都市部の富裕層は自ら住まない物件を賃貸に出し、かなりの額の副収入を得ている。借り手がつかない物件でも保有税はかからないから当面は放置し、転売で差益が出る水準に値が上がるまで待てばよい。いびつな構造は投機による際限なき住宅高騰を招き、大都市部では若者が一生働いても狭い家さえ買えない深刻な事態に至る。

借金してでも2軒、3軒と先に買ったもの勝ち。資本主義国でさえあり得ない弱肉強食の世界だ。新型コロナウイルス感染症が広がる前、日本を含む海外への豪華クルーズ船の旅で「爆買い」に走ったのも彼らの一部である。さほど実入りのない本業の仕事は早々に引退し、保有不動産の収入だけで食べている人も中国では意外に多い。

「寝そべり主義」の若年層対策

それでも右肩上がりの住宅価格上昇に乗った「資産効果」は中国経済を回す原動力となり、高度成長を支えてきた。今、債務危機に苦しんでいる中国恒大集団といった民間不動産開発会社は、地方政府から土地使用権を買い取って大規模マンション群を建設。地方政府も高値で売れる土地使用権から莫大な財政収入を得る受益者だった。

中国恒大集団が手がける建設中のビル(9月、中国湖北省宜昌)=共同

地方政府にとって土地使用権は打ち出の小づちである。住宅の売り手である開発業者、買い手の富裕層とも皆が得する不思議な循環が成立していたのだ。共産党がこの便利なシステムを壊すはずがない。それが住宅神話の根拠でもあった。

それから5年あまり。かつての常識が通じない世界が出現しつつある。習近平が不動産税にこだわるのはなぜか。まずは若年層対策だ。最近も明確なサインを送っている。注目したいのは「内巻」や「寝そべり主義」という中国のインターネット上で話題になった2大キーワードだ。習は8月17日、党中央財経委員会での演説に若年層の社会問題に関するキーワードを埋め込み、警鐘を鳴らした。

「内巻」は中国の教育熱、競争社会と関係が深い。中国では小さい頃からみんな頑張るから、自分もそれ以上、頑張らないと追い付けない。だが得られる対価の総量は決まっているから結局、みんなが疲れ切ってしまう。そういう矛盾がにじむ流行語だ。

「寝そべり主義」は内巻へのアンチテーゼで、社会的な競争を拒む頑張らない草食系の態度やライフスタイルである。結婚はせず、自家用車を持つといった物欲に乏しく、高すぎる住宅を買うことにも全く興味を示さない。1990年代以降に生まれた若い世代の特徴だという。

習は演説で住宅高騰対策としての不動産税導入も明言した。今、不動産市場の改革に着手できれば、2022年共産党大会で共同富裕の実現に向けた一つの成果として誇示できる。積み上がった債務の償還に追われる地方政府の多くも以前と違って、長期的な安定財源になりうる不動産税導入に前向きになりつつある。税収の一部は、安価な公共賃貸住宅の建設にもあてられる見込みだ。

かけ足の不動産税導入、年内にも対象地域を公表

不動産税の導入には長い間、反対論が根強かった。中国経済を引っ張る不動産市場への悪影響が心配されていたのだ。11年から上海と重慶で2軒目以降の住宅などへの課税を試したが、その後、動きはぱったり止まった。そして今、中国では景気減速が鮮明になっている。ここに新税をぶつければ住宅市場が一段と冷え込みかねない。

21年末までに発表される見込みの5年間の試験導入の対象地域は、当初想定より数が絞り込まれる可能性もある。しかし、これはあくまで暫定的な措置になりそうだ。「習主席が22年以降も3期目を担うなら、立法措置を経て新税が各地で広く導入されるのは間違いない」。中国の税財政に詳しい関係者は予測する。

中国恒大集団の本社が入るビル(9月、中国広東省深圳市)=共同

中国の住宅神話の崩壊はすでに現実となりつつある。不動産の流通価格も見た目よりかなり下がっている。習近平長期政権による共同富裕への急傾斜によって、長く暴利を得てきたとされた不動産業界は一気に斜陽産業となった。これで終わりではない。同じくトップの意思を反映した速足の不動産税導入の破壊力は、目下の恒大集団の債務危機よりもはるかに大きい。(敬称略)

中沢克二(なかざわ・かつじ)
1987年日本経済新聞社入社。98年から3年間、北京駐在。首相官邸キャップ、政治部次長、東日本大震災特別取材班総括デスクなど歴任。2012年から中国総局長として北京へ。現在、編集委員兼論説委員。14年度ボーン・上田記念国際記者賞受賞。』

トヨタ、中国で燃料電池システムを販売 清華大学系と

トヨタ、中国で燃料電池システムを販売 清華大学系と
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOFD2683D0W1A021C2000000/

『トヨタ自動車は26日、清華大学系の企業と協力し、商用車向けの燃料電池システム「TLパワー100」の生産と販売を中国で始めたと発表した。定格出力は101キロワットで3万時間の耐久性を持つ。トヨタの新型FCV「ミライ」に搭載した燃料電池システムをベースに開発した。

協力する企業は燃料電池システムの製造と販売を担う華豊燃料電池など。トヨタは21年、清華大学系で燃料電池システムを開発する北京億華通科技とともに華豊燃料電池を立ち上げていた。中国政府がEVとともに新エネルギー車の柱に掲げるFCVを普及させる。』

特別引出権

特別引出権(とくべつひきだしけん、英: Special Drawing Rights, SDR)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%89%B9%E5%88%A5%E5%BC%95%E5%87%BA%E6%A8%A9

『特別引出権(とくべつひきだしけん、英: Special Drawing Rights, SDR)とは、国際通貨基金 (IMF) が加盟国の準備資産を補完する手段として、1969年に創設した国際準備資産、及びその単位である[1]。ISO 4217における通貨コードはXDR。』

『概説

SDRは、1969年に発効した国際通貨基金第一次協定改正によって創設された。創設の背景としては、1960年代にアメリカ合衆国の経常収支が赤字化する中で、当時の二大公的準備資産であった金と米ドルの国際的供給は、世界貿易の拡大及び当時発生しつつあった金融フローを支えるには、不十分であるとの問題意識から、特定の一国の通貨価値に依存しない新たな準備資産としての役割が期待されていた[1]。SDRはIMFによって創出され、出資割合に比例して加盟国に配分される。

SDR配分を受けた国は、いつでもIMFの仲介を受けて、自身の保有SDRと引き換えに他の加盟国の保有する自由利用可能通貨(IMFが定める。現在はドル・ユーロ・円・ポンド・人民元)を引き出すことができる。

また、IMFへの出資やIMFによる貸し出しは、基本的にSDR建てで行われるほか、世界銀行がSDR建での債券発行を行っている。ただし、SDRの保有はIMF加盟国等の公的主体に限定され、民間取引においては使用されない。

SDRの価値は、自由利用可能通貨の加重平均によって計算され、日々更新される[2](加重平均の比重・自由利用可能通貨の選定は、5年に一度見直しされる)。 』

『価値

計算方法

SDR構成通貨とSDR価値の計算方法は5年に一度見直しが行われており、直近には2015年に見直しが行われた。2018年現在のSDRの価値は0.58252米ドルと0.38671ユーロと11.900日本円と0.085946イギリスポンドと1.0174人民元の和である[3]。

経緯

SDR創設当初は当時の1ドルと同じ基準を採用し1SDR=金0.888671グラムと定められたが1973年の変動相場制移行を受け、1974年には標準バスケット方式と呼ばれる方式を採用した。これは世界貿易において1パーセント以上のシェアを持つ16通貨を元にSDR価格を評価する方式。1974年7月から1980年12月までは16通貨のバスケットであった。1980年にはバスケットの構成通貨を5通貨(アメリカドル、ドイツマルク、フランスフラン、日本円、イギリスポンド)に変更した。2000年にはドイツマルク・フランスフランがユーロに置き換えられ、原則5年毎に構成通貨の見直しを行うことが定められた。

2015年の見直しの年に向け、中華人民共和国は通貨バスケットへの人民元の採用を求めていた[4]。構成通貨入りには、(1)その通貨を持つ国や地域の過去5年間の輸出額が大きく、(2)IMFが定める「自由利用可能通貨」[注釈 1]に該当することとの2つの判断基準を満たす必要がある。

2010年の見直し時には、中国はすでに輸出額の基準は満たしていたが、「自由利用可能通貨」と認定されるための条件を満たさないとされ、採用を見送られていた[5]。

2015年の見直しに向けて中国は預金金利の上限規制を撤廃すると発表するなど改革姿勢をアピールし、首脳外交でも各国に人民元のSDR入りを支持するよう呼びかけた。

2010年以降の人民元の国際的な利用拡大を受け、2015年11月30日に開かれたIMF理事会で2016年10月1日から人民元のSDR構成通貨入りが決定された[6]。

なお、2016年8月31日に世界銀行は30年ぶりとなるSDR建て債券を中国で発行し[7]、同年10月14日にはスタンダードチャータード銀行は商業銀行では初のSDR債を中国で発行した[8]。

国家開発銀行、中国人民銀行[9]なども中国でのSDR建て債券発行を検討している。 』

※ イメージ的には、上記のバスケットのイラストが分かりやすい…。

※ 一種の「仮想通貨」で、その「価値」は「主要通貨」の価値によって、毎日決定される…。

※ そして、上記のwikiにある通り、引き出し権を持つのは、「加盟国」という公的主体である「国家」に限られる…。

※ 各国は、割り当てられた「SDR」の価値に応じて、主要通貨を融通し合う…。

※ 大体、そういう仕組みだ…。

※ よって、「SDR」を多く割り当てられた「国」は、それだけドル・ユーロ・ポンド・円・人民元の主要通貨と多く交換することができるポジションを得て、他国にも多く「融資」ができる…、という話しになりそうだ…。

※ ただし、上記の説明だと、あくまで「金融危機時」にのみ引き出せるもので、平時に勝手に他国に「SDR建てで貸し付け」たりは、できないもののようなところもある…。

※ そこら辺は、よく分からんな…。

※ 「Special(特別)」という用語からすると、引き出しの「要件」は、限定されているもののような感じだな…。

SDR(読み)えすでぃーあーる
日本大百科全書(ニッポニカ)「SDR」の解説
https://kotobank.jp/word/SDR-36511

 ※ この解説が分かりやすかったんで、貼っておく…。

『国際通貨基金(IMF)の特別引出権special drawing rightsの略称。IMF加盟国が外貨不足に陥った際、アメリカ・ドルなどの国際通貨を引き出せる権利のことで、国際準備資産と位置づけられる。

IMF加盟国にはIMFへの出資比率に応じて特別引出権が割り当てられ、金融・経済危機で外貨が不足した場合、特別引出権他の加盟国に売って、アメリカ・ドル、ユーロ、日本円などにかえてもらうことが可能である。

このため特別引出権は準備通貨ともよばれ、通貨単位にはSDRが用いられる。

現在、特別引出権の価値はアメリカ・ドル、イギリス・ポンド、日本円、ユーロ、中国人民元の主要5通貨の貿易量に応じた加重平均(標準バスケット方式)で決められる。

またバスケットのなかの各通貨の額は5年ごとに見直される。

このためSDRは実在する通貨ではなく、合成通貨や暗号資産の一種でもある。

特別引出権は2019年3月時点で2042億SDRが発行・配分され、その価値は2020年12月時点で1SDR=1.47638ドルである。

特別引出権は政府のみが保有し、企業や個人は入手できない。』

IMF、空前の70兆円配分 コロナ克服にどう活用

IMF、空前の70兆円配分 コロナ克服にどう活用
編集委員 西村博之
https://www.nikkei.com/article/DGXZQODK197DZ0Z11C21A0000000/

 ※ どこまで行っても、しょせんは「基金(ファンド)」なんで、「金(カネ)を貸す」という話しになる…。

 ※ 『新規の配分は高所得国が全体の6割、中所得国が4割弱を占めたが、低所得国は3%の210億ドルにとどまった。』出資額に応じて配分されるんで、こういう比率になる…。

 ※ そもそも、その各国の「出資」の原資は、各国の国民の「税金」だ…。

 ※ 「途上国・貧困国に必要なのは、”融資”じゃ無くて、”贈与”だ!」…。

 ※ お説ごもっともだが、その”贈与”にお宅の国民は、賛同しているのか?

 ※ そういうことで、最後はどうしても、「ご融資で…。」ということになってしまう…。

『新型コロナウイルス禍の克服へ国際通貨基金(IMF)がこのほど配分した6500億ドル(約71兆円)相当の特別引き出し権(SDR)が波紋を広げている。焦点はこの空前の額の「国際仮想通貨」を途上国の支援にどう有効に使うかだ。先進国からSDRを融通する新基金などの案が示されたが、課題も多い。感染拡大や経済危機を防ぐ切り札になるか。

Nikkei Views
編集委員が日々のニュースを取り上げ、独自の切り口で分析します。

SDRはIMF加盟国間の決済に使われる一種の仮想通貨で、IMFの決定を経て加盟国に配分される。ドルなど現実の通貨に交換でき、外貨が不足した国の資金調達の手段になる。

過去最大の「強力なカンフル剤」

IMFはリーマン・ショック後の2009年を含め過去に4度SDRを配分したが、今回の配分額は過去最大。コロナ禍を受けIMFがそれまでに決めた1000億ドル強の支援を大きくしのぎ、受け取る資金が国内総生産(GDP)の6%に達する国もある。

8月下旬に配分が行われた際、ゲオルギエバIMF専務理事は「未曽有の危機下にある世界経済にとって強力なカンフル剤だ」と期待を示した。

問題はSDRがIMFへの出資比率に応じ配分される点。米トランプ政権は出資額で3位の中国が多額の資金を使って途上国への影響力を強めると警戒しSDRの配分に反対した。バイデン政権は途上国支援を優先し方針転換したが、主要国ほどSDR配分で恩恵を受ける構図は変わらない。

新規の配分は高所得国が全体の6割、中所得国が4割弱を占めたが、低所得国は3%の210億ドルにとどまった。

途上国へのSDR融通に3案

先進国が受け取った使い道のないSDRを途上国に融通すれば配分の効果を高められる。そんな声が噴出し、IMFは具体策を探ってきた。

検討されている方法は3つ。第1は最貧困国向けに低利・長期の資金を貸す「貧困削減・成長トラスト(PRGT)」の規模拡大に使う案。第2は、IMFの新設する「強靱(きょうじん)性・持続可能性トラスト(RST)」を使う案。第3が世界銀行や地域の開発銀行などを通じてSDRを活用する案だ。

これらの枠組みに先進国がSDRを融通し、それを使って調達した資金を、困難に直面した国々の感染防止や経済の下支えに充てる構想だ。

途上国の「借金増」に懸念も

だが課題を指摘する声も相次ぐ。第1は資金が融資の形をとれば借り手の債務が膨らみ、先々の経済再生を難しくする、との声だ。米財務省で国際金融問題担当の副次官補だったマーク・ソベル氏は「低所得国に必要なのは贈与であり、借金増ではない」と言う。

もっともSDRは多くの国で外貨準備として扱われ、中央銀行の資産として計上される。国会で決めた援助資金などと違って贈与する場合の法律上の扱いが定かでなく、貸し出すほうが手続きが簡単だという実情もある。ここは途上国の負担を考慮した工夫が必要だ。

第2に資金の受け手に条件を課すべきか、との論点もある。IMFが融資の条件とする財政赤字の削減などは、むしろ借り手の経済の再生を遅らせたとの声もある。

新設するRSTでも融資に財政面などの条件を課す方向で、国際非政府組織(NGO)のオクスファムは「緊縮財政を求めれば貧困や格差の問題を悪化させるだけだ」とけん制している。

米カリフォルニア大学のアイケングリーン教授は寄稿で、融資条件の交渉は意見がぶつかり時間がかかるため多額の融資を迅速に実行できるかは疑問だと述べた。

代わりにコロナ対応に特化した基金を作ってごく有利な条件で融資し、資金がワクチンや医療品に適正に使われるかだけ監視する案を示す。

RSTは中長期の課題である気候変動への対応も掲げる。喫緊の課題であるコロナ禍への対応との食い違いは否めない。稼働も早くて22年末だ。

これを待つ余裕がない国も多い。チャドやボスニア・ヘルツェゴビナは100%、スリランカは85%……。外貨不足で医療品も買えずにいた国々は配分で手にしたSDRをすでに使い切りつつある。より迅速で柔軟な融通の仕組みを求める声が高まりそうだ。』

fleet(フリート)

fleet
http://exlight.net/english/words/fleet.html

『 もともとは,ある指揮官(アドミラル)に率いられている船団を指してフリートと呼んでいたようだけど, 転じてある一群の船や車などの集合体もフリートと呼ぶようになっているみたい. 例えば,会社に社用車をリースする会社をフリート カンパニー(fleet company)と呼んだり, ひとつの会社に属するタクシー群を総称して, a fleet of taxis と呼んだりしている.

ぼくの車を貸してくれている会社は“ARI Fleet Company”と称しているし, Firestoneのお兄さんも “フロントガラス(ウィンド シールド)の交換ができるかどうかはフリート カンパニーと相談しないといけない” とかいっていたので,普通に通じる単語らしい. 日本ではリース会社とかいってるけど,たぶんアメリカではフリート カンパニーのほうが通りがいいのかも.

“フリート販売”という用語もある. フリート販売とは,レンタカー会社に買い戻し権つきで(何年後にいくらで買い戻しますという条件つきで)自動車を販売すること. 利幅が極端に薄いのが特徴. ただ,販売台数が稼げるので,大手自動車会社がしのぎを削る北米市場ではよく利用される手法らしい. 自動車メーカーは工場の稼働率が低くなると 簡単に台数を稼げる(けど利幅は薄い)フリート販売でなんとかしのごうとしたりする. その瞬間は売り上げが大きくなるが,買い戻し条件がついているので,数年後に(相場よりかなり高い値段で)売った車を買い戻す必要があり,経営悪化の原因になりやすい.

もともとは船の団体さんのことを指していたと思われるけど, 今では車や飛行機の団体さんもフリートになる.

用例

a whaling fleet: 何隻かで捕鯨に出かけたりするときの船舶の集団のこと.
a fishing fleet: 漁に出かける船団のこと.
Fleet Admiral: 海軍元帥.
fleet cars: 社員が使用する会社保有の車.』

テスラ、時価総額1兆ドル 米ハーツからEV10万台受注

テスラ、時価総額1兆ドル 米ハーツからEV10万台受注
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN25CGZ0V21C21A0000000/

 ※ 単なる、「フリート販売」だろう…。

 ※ これをやりだすと、「台数」は稼げるが、「利幅」は極端に薄くなるので、収益は確実に悪化する…。

 ※ 大量に引き取った「中古品」の販路も、確保しないといけなくなるしな…。

 ※ それがまた、コスト圧迫要因ともなる…。

 ※ 「中古市場」に大量に自社の「商品」が流れるので、新車買った人が、次に売る時の「価値が下がる」…。そうすると、新車の購入もためらわれることになる…。

 ※ そういう、「負のスパイラル」の入り口…、という側面がある…。

 ※ トヨタの「高収益」の秘密は、新車を購入した「顧客」が、次に「売る」時に、中古市場の「値崩れ」が起きにくい構造を保持しているから…、という側面がある…。

『米株式市場で25日、米テスラの時価総額が一時1兆ドル(約113兆円)の大台を初めて突破した。レンタカー大手の米ハーツ・グローバル・ホールディングスがテスラから10万台の電気自動車(EV)を購入すると表明したのが好感された。10万台は2020年のテスラの世界販売台数(約50万台)の2割に相当し、ハーツが所有するレンタカーは2割以上がEVとなる。

【関連記事】

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25日の取引時間中にテスラ株は一時、前週末比14.9%高の1045ドル02セントを付け、上場来高値を更新した。終値は12.7%高の1024ドル86セントだった。終値ベースの時価総額は自動車メーカーとして初めて1兆ドルを超え、米企業ではアップルとマイクロソフト、アルファベット(グーグル親会社)、アマゾン・ドット・コムに次ぐ5番手となっている。

ハーツの発表によると同社は22年末までにテスラ車10万台を注文し、欧米の営業拠点を中心に量販車種「モデル3」を配置する。同社は投資額を明らかにしていないが、米メディアによるとEVの購入費用はおよそ42億ドル(約4700億円)とみられる。

法人需要の大部分を占めるレンタカー業界で採用が進めば、EVの本格普及に一段と弾みがつく可能性がある。

テスラは世界的な排ガス規制の広がりを追い風にEVの販売を伸ばしている。21年通年の販売目標は75万台超とまだ自動車大手の年間販売の10分の1以下だが、高い成長力への期待から20年7月に時価総額でトヨタ自動車を抜き、自動車業界で首位に立った。

21年10月20日に発表した21年7~9月期決算は売上高が前年同期比57%増の137億5700万ドル、純利益が4.9倍の16億1800万ドルとなり、そろって過去最高を更新した。米中の既存の2つの完成車工場に加え、21年内にはドイツと米南部テキサス州で建設中のEV工場が稼働を予定する。(ニューヨーク=中山修志、シリコンバレー=白石武志)

多様な観点からニュースを考える

※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。

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深尾三四郎
伊藤忠総研 上席主任研究員
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ひとこと解説

残価率上昇がEVの本格普及を後押しする。

米自動車専門誌CAREDGEが昨年末に実施した調査によると、2017年に発売したモデル3の購入後3年目の再販売価格は新車価格の77%で、残価率が米国の非高級車の中で最も高かった(平均62%)。

レンタカー会社は数年経過した保有車両を中古車市場で売却するので残価率の高さに特に注目する。

一般的にフリート車両は大量購入によるディスカウント価格で取引されるが、今回ハーツが調達するモデル3の購入単価は最量販グレードの小売新車価格に近く、残価率の高さが評価されている。

欧英でもEVの残価率が上昇中だが、電池の性能向上で航続距離が落ちにくくなってきたことが背景にある。
2021年10月26日 7:05

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竹内薫
サイエンスライター
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別の視点

テスラの成長を見ていて感じるのは、やはり創業者の未来を読む力ですね。

実際に読んでいるというよりは、実現可能な夢を持っていると言った方がいいかもしれません。

アップルもそうでしたが、若い創業者が、科学技術の未来に賭けて「こういう社会を実現したい」と強く願う…夢と実現性のバランスがあって始めて世界的な企業へと成長するのでしょうね。

ちなみに、イーロン・マスクさんは大学で経済学と物理学を専攻していて、高エネルギー物理学の大学院を2日でやめて起業、そして、プログラミングは10歳のときに独学で習得したそうですね。
2021年10月26日 10:28

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小平龍四郎
論説委員・編集委員
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別の視点

レンタカーやカーシェアの企業は相当多くのガソリン車を保有しており、脱炭素の流れがさらに強まると、会計的には減損処理をしなくてはならなくなると聞いたことがあります。

ハーツのEV購入も、ガソリン車減損を避ける目的があると思われます。ポイントはレンタカー料金に転嫁されるEVの価格。ガソリン車に比べて競争的な料金になるのだとしたら、日本勢を含め世界中のレンタカー会社の買い替え需要が顕在化するのではないでしょうか。
2021年10月26
日 8:06』

強制労働排除の声明「大きな成果」

強制労働排除の声明「大きな成果」 政府
https://www.jiji.com/jc/article?k=2021102500464&g=pol

『磯崎仁彦官房副長官は25日の記者会見で、先進7カ国(G7)貿易相会合が中国を念頭にサプライチェーン(供給網)から強制労働を排除するとの共同声明を採択したことに関し、「G7として強制労働に特化した共同声明を初めて取りまとめたことは非常に大きな成果だ」と歓迎した。 』

快著のご紹介。

快著のご紹介。
https://st2019.site/?p=17689

 ※ 「解」とは、常に、「現実解」のことだ…。

 ※ 「言説」で、「現実をくるむこと」は、できない…。

『2021-11-10発行と奥付にあるワニブックスの『EV推進の罠』という新刊をある方から頂戴し、さっそく第1章に目を通したが、すばらしい内容だ。

 ポイントを摘記すれば以下の如し。

 日本のGDPをいちばんたくさん稼ぎ出しているのは製造業である(20%)。
 全部の製造業のなかでも、自動車が18.8%と最大である。

 ディーゼルエンジンは、二酸化炭素の排出量が、普通のガソリン車の四分の三。

 脱炭素のオプションとして、合成燃料「e-fuel」あり。二酸化炭素と水素を結合させて作る。既存の燃料に任意の比率で混ぜても使える。ひょっとすると、これが最も有望。

 にもかかわらず単純頭の政治家は「EV」しか言わない。

 トヨタの豊田章男会長は、「ヤリス」の製造工場を意図的に宮城県大和[たいわ]町に建設させた。

 大和町の人工は28万人。熱海市の人口は37万人。にもかかわらず、大和町の総生産は2815億円で、熱海市の1427億円の2倍。2017年の統計。

 つまりそれほどに、製造業が失業をなくしてくれる。

 トヨタは、為替その他のコスト的に1000億円の損になるのは承知のうえで、敢えて、日本国内で年間300万台を製造させ続ける方針。なぜかというと、そのレベルを維持していかないと日本国内では生産の技術が継承されなくなってしまうから。

 ちなみに日本国内ではすべてのメーカーを合計しても自動車は年に140万台しか売れない。

 また2017年の統計。
 那覇市は人口32万人だが、総生産は1兆4092億円。これに対して太田市は人口22万人なのに、スバル工場があるおかげで、総生産は1兆4849億円。

 すなわち、製造業がうみだす雇用は、観光業・飲食業などとは同日の談ではないのである。

 豊田会長は2021年の年始の挨拶で、自動車産業で働く550万人の人々を鼓舞した。550万人は、日本の雇用者数の10%である。

 豊田会長の2020-12-17オンライン記者会見での発言趣意。

 電動化率は日本はすでに世界第二位だ。
 一位はノルウェーだが、車両数の桁が違う。ノルウェーは10万台、日本は150万台である。
 したがって総量では日本が一位である。

 日本国内の乗用車400万台をもしすべてEV化すると、夏の電力使用のピーク時に停電が発生してしまう。そうさせないようにしたければ、国内の発電能力を10%から15%増やす必要がある。

 これは原発ならば10基、火発ならば20基の新設に相当する。それを太陽電池や風力で満たすことは非現実的で、夢物語にすぎない。

 総EV化したら、戸建住宅が充電端末を設置するのに、費用が10~20万円必要。

 集合住宅だと、50~100万円必要。

 急速充電器の場合、1台は600万円もする。

 したがって、「充電インフラ」を整えるだけでも、14兆円から37兆円のあらたな負担を国民は強いられてしまう。

 電池を国内で製造する場合、完成検査のために充放電をしてみないわけにはいかぬ。ところが、1台のEVの蓄電量は、家1軒の7日分の消費電力に相当するのだ。それを年50万台生産する自動車工場でやりだしたらどうなるか。1日あたり5000軒分の電気を1工場で毎日、充放電し続けることになる。

 この電力を供給するために発電所で余計に二酸化炭素がつくられるのは不可避である。

 したがって、カーボンニュートラル達成をもし政治家が安易に対外公約にしてしまうと、日本国内では電動自動車すら製造できないということになるしかないのだ。日本の雇用は壊滅するはずだ。

  ――――第1章だけでもこの面白さ。まさに《EV災害》がやって来ようとしているわけか……。続きを読むのが楽しみです。』

ファーウェイ「入ってる」EV続々

ファーウェイ「入ってる」EV続々 部品供給、車も販売
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM2529Y0V20C21A8000000/

『【広州=比奈田悠佑】中国の通信機器最大手、華為技術(ファーウェイ)が電気自動車(EV)関連の事業を開拓している。米中貿易戦争を受けてスマートフォンなど消費者向けビジネスの世界展開が難しいためだ。電子部品やソフトを「基幹システム」としてEVメーカーに供給し、これを搭載したEVの代理販売で提携ブランドを2社に広げた。新興メーカーがひしめく中国のEV業界を足がかりに、新たな収益の柱を探る。

ファーウェイ・インサイド

ファーウェイは2021年内に、北京汽車集団傘下のEVメーカー、北汽藍谷新能源科技のEVを自社の店舗で発売する。9月下旬に北汽藍谷が発表した。

ファーウェイは車関連のより高度な部品やソフトウエアを「HI(ファーウェイ・インサイド)」と銘打ち、EVメーカーへの売り込みを強めている。今回は北汽藍谷の高級EVブランド「ARCFOX」のうち、HIを組み込んだ車種を販売する。

ファーウェイが自社店舗で扱うEVとしては、中堅メーカー重慶小康工業集団の傘下企業が生産するEV「セレスSF5」を4月に発売して以来、2社目の案件となる見込みだ。ファーウェイはHIの採用や知名度の拡大へ同様の提携企業を広げる構えだ。

ファーウェイの電気製品の店舗でEV「セレスSF5」に見入る来店客ら(北京市)=ロイター
中国メディアによると、ファーウェイ側は店舗で販売したEVの売上高の1割を得られる。そのうち7~8割が販売店の取り分となる。販売店の多くは直営ではなく、別のオーナーがいる「代理店」だ。セレスSF5の四輪駆動モデル(24万6800元=約425万円)で計算すると、1台あたりのファーウェイの取り分は10万円前後になる。

スマホ店員にEV教育

「売れ行きが良く、生産能力が追いついていない。納車には2カ月かかる」――。広州市中心部のファーウェイ販売店を訪ねると、男性従業員がセレスSF5の好調をアピールした。この店では6月下旬に販売を始め、1カ月間で10台を売った。

男性従業員はもともとスマホなどの製品を売っていたが、セレスSF5販売開始の2カ月前からEV関連の教育を受け始めた。メーカーの本拠地である重慶にも研修で足を運んだという。

4月以降、中国各地でEVを取り扱うファーウェイ店が増えている。車ディーラーなどで経験を持つ人材の採用も進めており、求人アプリを見ると、製品説明や試乗に付き添う従業員を円換算で18万円近い月給で募集している。全国の小売りや卸売り関連の平均月収が12万円程度であることから比較的良い待遇だ。

米中貿易戦争がファーウェイの大きな障壁に(同社の任正非・最高経営責任者=CEO)=ロイター

年間売上高が約15兆円に上るファーウェイにとってEV関連の収益はまだ限定的だ。それでもEVに真剣に取り組み始めた背景に、同社がHIに託す新たな戦略がある。

車関連の開発に年10億ドル

同社は21年以降、自動運転関連を含め、車分野の研究開発に毎年10億ドル(約1100億円)を投じる計画だ。スマートカーソリューション・ビジネスユニットの王軍・総裁は「ネットにつながるEVで求められる部品は従来の車部品とは異なる。市場の潜在力は大きい」と話す。車のIT化や自動化ニーズのなかで、自社のノウハウが生きるとみる。

主力としてきたスマホ事業への逆風は強い。ファーウェイは米政府が20年に打ち出した輸出規制の強化により、スマホ生産に不可欠な半導体の調達が厳しく制限された。同年11月には低価格のスマホブランド「HONOR(オナー)」を売却する事態となり、米調査会社IDCによると21年1~3月期の中国のスマホ出荷台数シェアで、トップ5位から脱落した。

既存事業が袋小路に入るなか、ファーウェイはEV販売で完成車メーカーを側面支援しながら、自社の部品やソフトの採用拡大を狙う。EV販売では大手メーカーが大通り沿いなど「ロードサイド」型の店舗でしのぎを削るなか、ファーウェイは市街地のショッピングセンターに多い自社店舗を引き続き活用する。

日系車メーカーの営業担当者は「スマホ店舗でのEV販売は時流に合っている」と話す。集客にコストをかけなくても常に多くの消費者が行き交う立地で、家電販売などとの相乗効果も期待できる。

ただ、ショッピングセンターの店舗では保守・修理への対応が難しく、試乗も少し離れた駐車場などへの移動が必要になる。部品やソフト開発での安全評価も通信機器とは異なる厳格な水準が求められ、事業を本格軌道に乗せるには課題も多い。米国などの通商規制の先行きによっては、ファーウェイの部品やシステムの搭載を避けるEVメーカーが相次ぐ可能性もある。』

中国5G基地局失速

中国5G基地局失速 住友電工など欧米シフト
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUF1378J0T10C21A8000000/

『中国で高速通信規格「5G」の基地局の整備が遅れている。中国国家統計局によると、1~8月の携帯基地局部品の生産は前年同期比で53%減り、データのある月では11カ月連続のマイナスだった。米中対立で米国製の部品調達が難しくなっているためだ。住友電気工業など部品メーカーは欧米での開発人員を増やすなど欧米シフトを進める。

中国は世界市場の6割強を占め、部品の生産量は基地局の整備動向とほぼ比例する。米国の輸出規制の強化で中国メーカーは米国製部品の在庫が無くなり生産が滞っているとみられる。日本の部品メーカーにとって大口顧客の中国の減速は痛手だ。村田製作所の村田恒夫会長は「通信障害を防ぐ部品の需要が落ち込んでいる」と話す。通信部品大手は「2020年夏から複数の中国・華為技術(ファーウェイ)向け案件がなくなった」と明かす。

住友電工は2022年3月期中にオランダなど欧米の開発人員を倍増させる。顧客の要望を迅速に開発に生かす狙い。9月には米国で5G基地局に使う半導体工場が稼働した。現在は基地局部品の海外売上高は中国が9割を占める。5年後をめどに欧米の割合を1割から5割に高める。

日本電気硝子は22年にも欧米専門の営業部隊を立ち上げる。光ファイバー部品の9割が中国の工場向けであり、欧米に注力する。

ファーウェイなどは部品の内製化を進めるが、仏調査会社ヨール・デベロップメントのアントアン・ボナベル氏は中国での部品需要の回復に「数年かかる」とみる。

ただ中国は次世代高速通信規格「6G」に積極投資する方針であり、中国メーカーが部品の内製化を進めた場合、日系メーカーは事業機会を失う可能性がある。東京大学社会科学研究所の丸川知雄教授は「いざとなったら欧米にシフトする姿勢は中国に受け入れられない。調達・製造を中国国内で完結させるなど、米中の供給網の分断を前提とした戦略が必要になる」と話す。』

分散型金融11兆円市場に 当局が警戒、通貨の未来問う

分散型金融11兆円市場に 当局が警戒、通貨の未来問う
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB167T00W1A910C2000000/

『ブロックチェーン(分散型台帳)技術を使って、金融機関などを仲介しない金融サービスが急拡大し始めた。DeFi(分散型金融)と呼ぶ仕組みで、暗号資産(仮想通貨)売買や融資など市場規模は約1000億ドル(約11兆円)と1年で約5倍に急増した。資金洗浄の温床になりかねないと当局は警戒を強める。半面で、DeFiの膨張は中央集権型でコストのかかる既存の金融秩序に変革を迫るものともなる。

DeFiの柱は銀行を介さない融資だ。インターネット上の取引の場では仮想通貨チェーンリンクを年利0.1%で借りられる。日本の住宅ローンの変動金利(0.4%程度)よりも低い。DeFiは無人の取引システムに個人が仮想通貨を預けて、これを借り手が受け取る。

信用力のある金融機関が安全な取引を仲介する従来の金融は利用者が手数料を支払う。DeFiは低コストで利用者同士を直接つなぐ仕組みだ。

仮想通貨の上昇を見込んだ投機的な貸し借りが多い。将来的には相対取引で借り手が事業資金や住宅購入に充てることも想定される。DeFiの資産総額は980億ドルを超える。日米欧の預金取扱金融機関の現預金額(6800兆円弱)の0.1%程度だが、成長スピードは速い。
モノやサービスが行き来するデジタル時代に取り残されてきたのが、国家が権力を独占する通貨だ。20カ国・地域(G20)平均の送金コストは約10%。海外送金には数日かかることもある。DeFiは365日24時間即時に取引が成立する。

2008年に通貨システムへの挑戦として仮想通貨ビットコインが登場したが、各国で登録業者での取引が義務付けられるようになった。DeFiは規制の網から逃れ、あらゆる仮想通貨を使って保険や融資などを手がけられる。米決済大手スクエアのドーシー最高経営責任者(CEO)は「グローバル通貨があればすべての人にサービスを提供できる」と語る。7月にはDeFiの新部門の設立を決めた。

理想と現実の差は大きい。DeFiでは不正取引が横行する。21年8月には取引の場を提供するポリ・ネットワークで700億円弱の仮想通貨が流出した。本人確認がずさんで、麻薬カルテルなど資金洗浄の温床になっている。

国際組織FATF(金融活動作業部会)などは監視強化に動くものの、管理主体があいまいで規制の網がかけられない。DeFi開発の非営利財団「メイカーダオ」は7月に創業者が解散を発表した。開発主体はいないのにプロジェクトは作動し続ける。

問題も多い半面、DeFiの台頭は既存の金融秩序に変革を迫ることにもなる。米フェイスブックが19年に提唱したデジタル通貨「リブラ(現ディエム)」は、主要国の反対で計画の修正を迫られた。一方で、あわてた各国中銀がデジタル化にカジを切る契機になった。

国際決済銀行(BIS)は主要7中銀とともに相互に接続可能な中央銀行デジタル通貨(CBDC)のあり方を検討する。中国やタイなど新興国同士をつなぐ決済網の実験も始まった。CBDCが実用化すれば、低コスト・短時間での送金ができる。

金融システムの脆弱性を高める無秩序なDeFiの膨張は、コストの高い中央集権型の金融からの脱却の呼び水となる可能性がある。(フィンテックエディター 関口慶太)

【関連記事】

・暗号資産の急拡大「システミックなリスクも」 IMF局長
・分散型金融、法規制で安定を(The Economist)
・仮想通貨「個人間」に死角 犯罪の温床、防止策急務

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白井さゆり
慶應義塾大学総合政策学部 教授
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ひとこと解説

仮想通貨を使った分散型金融は、スマートコントラクトで自動運営される新しい金融サービスで、ブロックチェーンをつかった金融イノベーションは目を見張るものがある。

もともと仮想通貨の開発には世界金融危機による既存の金融システムの限界を認識し、そうした金融システムを弱者・低所得者よりも優先的に救済する国家体制に不信感をもった人々が開発に携わったと言われているが、DeFiはまさに政府や中央銀行に依存しないで、世界のだれでも利用できる。

しかし個人を保護する組織がいないためリスクが大きく、各国・地域の規制当局も頭を抱えているが、それでもこの動きは止められず今後も新しいイノベーションは起きていくだろう。

2021年10月18日 7:38

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野崎浩成
東洋大学 国際学部教授
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分析・考察

いかなる市場も参加者にとって「規制」は嫌なもので、中央集権型統治システムから逃れるDeFi(分散型金融)は、効率性ばかりでなく、規制からの自由を追求する傾向は止められません。

このため、マネーロンダリングや善意のユーザーを害する行為に対する規制そのものが無力化するのは、当然の帰結といえましょう。

一方、規制が機能する範囲内で、ブロックチェーンのDLT(分散型台帳技術)がもたらす効率性向上余地は大きく、昨今報道されているデジタル証券なども社会的コストを削減するなどの貢献が期待されます。

特定の技術に白黒の色を付けるのではなく、社会性に馴染むものから積極的に取り込む発想が大切だと思います。

2021年10月18日 7:39 (2021年10月18日 7:41更新)

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楠木建
一橋大学 教授
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分析・考察

現状では結局のところ暗号資産の値上がりに対する投機的動機(だけ)がDeFi拡張のドライバーになっています。

これまで銀行が果たしてきたような普通の意味での「金融」を担うものには程遠い。

2021年10月18日 7:32

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大槻奈那
マネックス証券 専門役員チーフ・アナリスト
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ひとこと解説

市場規模は拡大したものの、昨年のDefi勃興時に調べたユースケースも投機かP2P貸出程度で、殆ど広がっていません。大企業から信頼を得られず、協業が進まないのが主因と思います。

Defiの本領は、投機ではなく、仲介コストをなくしスマートコントラクトで様々な情報が載せられること。銀行口座を持たない人も使えますし、晴れた日のみ送金するなど様々な条件が組み込めます。

確かに、Defiのハッキングは昨年比2.7倍で、今年の暗号資産ハッキングの7割以上を占める等脆弱です(CipherTrace)が、現時点で「怪しいもの」と切り捨てるのではなく、長い目で見て、技術を生かす方法を模索すべきと思います。

2021年10月18日 8:41 』

為替レート

為替レート
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%82%BA%E6%9B%BF%E3%83%AC%E3%83%BC%E3%83%88#%E5%AE%9F%E8%B3%AA%E5%AE%9F%E5%8A%B9%E7%82%BA%E6%9B%BF%E3%83%AC%E3%83%BC%E3%83%88

『為替レートと物価

詳細は「購買力平価」を参照

二国間の物価を比較することによって、適正な為替レートとおおよその為替レートのトレンドがつかめる[8]。国際的な一物一価の法則の適用により、為替レートを説明するモデルを「購買力平価説」と呼ぶ[9]。

現在の為替レートで各国の賃金水準などを比較した場合に、大きな差が出る場合がある。例えば日本は一人当たりGDPが37,000ドル程度であるが、ベトナムはおよそ500ドルである。これを単純比較すると日本の賃金水準が70倍程度高いことになるが、ベトナムは日本よりも物価が安いため、所得が低いからといって購買できる量に 70倍もの差がつくわけではない。こうした実情を踏まえ、物価を考慮した購買力平価で調整した後の一人当たりGDPは日本が30,000ドル、ベトナムが3,000ドル程度となり、その差は10倍程度になる。為替レートがこのような物価差を反映しないのは、経済構造と貿易に関係している。

A国とB国があったとする。A国は工業化が進展しており輸出工業の生産性が高い。仮にA国の輸出工業がB国の輸出工業の10倍の生産性を持っていたとする。どちらも国際市場に製品を輸出している場合、一物一価の法則により両国の輸出品価格は同一となる。これにより、A国の輸出工業労働者はB国の輸出工業労働者の10倍の所得を得ることになる。一方でA国の国内サービス業がB国の国内サービス業の2倍の生産性を持っていたとする。A国で輸出工業労働者と国内サービス業労働者の賃金に一物一価の法則が働いた場合、A国のサービス業はB国のサービス業の5倍の料金を取らなくては経営が成り立たなくなる。このため、両国では輸出工業品の価格が同一である一方、サービス料はA国のほうが高い状態が生まれ、A国の物価はB国よりも高くなる。

以上のように、輸出競争力に差があり、非貿易財が存在する場合に、実際の為替レートと購買力平価には差が生まれる。

サービスの価値が違うとの見方もある。例えば、懐中電灯はどこの国で買っても価値が等しいが、東京で散髪することと、ホーチミン市で散髪することは、投入財の価格が違うため価値が異なるという見方である。このとき、価値差が物価に織り込まれている場合は、購買力平価での比較が無意味となる。

また、国際市場における購買力比較では実際の為替レートが有効になるため、購買力平価は当てはまらない。 』

日本製鉄、トヨタと中国・宝山を提訴

日本製鉄、トヨタと中国・宝山を提訴 鋼板特許侵害で
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC1466O0U1A011C2000000/

 ※ 「品質で日本勢にせまる…」って、しょせんは「特許侵害」か…。

 ※ トヨタも、脇が甘かったな…。

 ※ 自分で地道に「研究・開発」する…、ということをやらんから、困るよ…。

『日本製鉄は14日、電動車のモーターに使う電磁鋼板に関する自社の特許権を侵害したとして、トヨタ自動車と鉄鋼世界最大手の中国宝武鋼鉄集団の子会社、宝山鋼鉄を東京地裁に提訴したと発表した。両社にはそれぞれ200億円の損害賠償を求めるとともに、トヨタには国内で対象となる電動車の製造販売の差し止め仮処分を申し立てた。

鋼材の成分など日鉄の特許に抵触する製品を宝山がトヨタに供給し、同社が国内で販売する電動車に搭載していたため、提訴に至ったという。』

トヨタ、EVで中国製特殊鋼板採用 品質で日本勢に迫る
https://http476386114.com/2020/08/11/%e3%83%88%e3%83%a8%e3%82%bf%e3%80%81ev%e3%81%a7%e4%b8%ad%e5%9b%bd%e8%a3%bd%e7%89%b9%e6%ae%8a%e9%8b%bc%e6%9d%bf%e6%8e%a1%e7%94%a8%e3%80%80%e5%93%81%e8%b3%aa%e3%81%a7%e6%97%a5%e6%9c%ac%e5%8b%a2%e3%81%ab/

量的緩和縮小、11月中旬にも着手へ

量的緩和縮小、11月中旬にも着手へ FOMC9月議事要旨
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN13DNG0T11C21A0000000/

『【ワシントン=大越匡洋】米連邦準備理事会(FRB)は13日、9月21~22日に開いた米連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨を公開した。11月初めの次回会合で量的緩和縮小(テーパリング)の開始を決める場合、「11月中旬または12月中旬」から資産購入額を減らし始め、2022年半ばごろにテーパリングを終える道筋を示した。

次回FOMCは11月2~3日に開く。パウエル議長は9月の記者会見で11月にもテーパリング開始を決める意向を示した。議事録によると「参加者は景気回復がおおむね順調なら、22年半ばごろに終了する緩やかなテーパリング手続きが適切だろうと総じて評価した」。11月の次回会合で量的緩和政策の修正を正式に決める公算が大きい。

FRBは現在、米国債800億ドル、住宅ローン担保証券(MBS)400億ドルの計1200億ドルを毎月購入している。議事要旨によると事務局が毎月、米国債を100億ドル、MBSを50億ドルの計150億ドルずつ購入額を減らす案を例示。参加者は総じて「わかりやすい道筋」と評価した。順調にいけば8カ月でテーパリングを終える計算だ。

回復ペースが鈍る景気について、会合参加者は「年前半に比べて急速ではないものの拡大を続けている」との認識を確認した。参加者は経済情勢が想定と大きく異なる場合はテーパリングの縮小ペースを調整できると指摘。これに対し、何人かの参加者は例示されたペースよりも速くテーパリングを終えることを求めた。

テーパリング開始を決める条件である最大雇用と物価安定に向けた「さらなる著しい進展」に関し、ほとんどの参加者が「基準が満たされたか、近く満たされる可能性が高い」と表明。多くの参加者が「労働市場は改善を続けている」と指摘した。

雇用が伸び悩む主因は求人減など需要側の要因ではなく、新型コロナウイルスの感染リスクの敬遠など労働供給の制約にあるとの見方から、量的緩和を続けても対応できず、むしろ「資産購入を続けるコストがメリットを上回り始めている」との指摘が出た。

インフレについては自動車関連の生産や物流の目詰まりや人手不足など「供給制約が従来の想定よりも大きく、長引く可能性が高い」と警戒を強めた。物価上昇率の見通しを前回6月時点の予測から上方修正した。

そのうえで、高水準のインフレはコロナ禍からの回復局面での需要増と供給制約という一時的な要因を反映して「今後数カ月続く」ものの、その後は緩やかになるとの見方を共有した。会合では家計や企業の長期的なインフレ期待への影響を懸念する声が出た一方、需給の不均衡が解消されれば価格上昇圧力は弱まるとの指摘もあった。

9月の会合は参加者の見通しの中央値として22年中にも利上げする可能性を示した。議事要旨によると、参加者はテーパリング開始と利上げ判断の基準は異なるとして「資産購入の抑制に向けた政策転換は金利政策に関する直接のシグナルにはならない」と再確認し、急速な金融引き締めに対する市場の警戒感に目配りした。

【関連記事】米消費者物価5.4%上昇 9月、品不足で高止まり

多様な観点からニュースを考える

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中空麻奈
BNPパリバ証券 グローバルマーケット統括本部 副会長
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今後の展望

先週の雇用統計は明らかな弱含みだったのに、メディアなどで専門家が「11月のテーパリングが可能なギリギリの線」と解説していた。

これは、11月のテーパリングは既に織り込み済みであることの証拠と見ていいのではないか。

次に織り込みに行くのは、金融引き締めの“やり方”だと考える。できれば緩やかな金利上昇としたいはずだが、それができるか。足元の世界同時エネルギー危機は、そうできない可能性をちらつかせているように思われ、要警戒レベルのリスクに見える。

2021年10月14日 9:04

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梶原誠
日本経済新聞社 本社コメンテーター
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ひとこと解説

22年半ばにテーパリングが終わり、同年中にも利上げというシナリオが浮かびます。

秋には米国でバイデン政権の行方を占う中間選挙が、中国では習近平国家主席が続投を目指す共産党大会があります。

つまり来年秋以降の世界は読めなくなるということ。成長力が弱い企業はそれまでに逆境に耐えるだけの力をつけておかなければなりません。

2021年10月14日 8:12 』

法人最低税率、なぜ15%で合意? 企業の税逃れに歯止め

法人最低税率、なぜ15%で合意? 企業の税逃れに歯止め
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA08CZ20Y1A001C2000000/

『経済協力開発機構(OECD)加盟国を含む136カ国・地域が8日、国際的な法人課税の新たなルールで合意した。法人税の最低税率を15%にするなど、国際社会が100年ぶりとも言われる歴史的な改革に踏み出したのはなぜか。3つのポイントから読み解く。

・税率の引き下げ競争はなぜ起きたのか
・国際的な課税ルールの改革機運が高まったきっかけは
・グローバル企業への課税はどう変わるのか

(1)法人税率の引き下げ競争はなぜ起きたのか

企業が事業などを通じてもうけたお金にかかるのが法人税だ。多くの国にとって法人税は、個人が稼いだ給与などに課す所得税、モノやサービスの取引にかける消費税(付加価値税)と並んで税収の大きな柱になっている。

税の徴収は国家の主権にかかわる問題だ。自国の領土内で活動する企業にどんな税金をどのくらい課すかはその国だけが決められる。企業が国境を越えて活動する機会が少なく、特定の国の領土内にとどまっていた時代は、法人税がどんなに高くてもその国の企業は甘んじて受け入れるしかなかった。

状況を大きく変えたのが、1970年代以降に加速した経済のグローバル化だ。国境を越えて世界中の国に活動の拠点を置く企業が増えた。こうした多国籍企業は事業環境がより有利な国に工場を建てたり、店舗を置いたりする。どの国で活動するかを決める際に、重要な判断材料の一つとなるのが税制だ。法人税など税負担の軽い国が企業をひき付ける。

特に80年代に入ると、サッチャー英政権やレーガン米政権が経済を活性化する切り札として法人税率の引き下げに動き始めた。背景にあったのが、新自由主義と呼ばれる経済思想だ。国家は企業の活動にできるだけ介入すべきでないという主張で、税金も安ければ安いほどいいと考える。

英米による法人税率の引き下げをきっかけに、世界的な減税競争が始まった。税金が高いままでは企業がどんどん税率の低い国に逃げてしまうからだ。日本もこうした競争と無縁ではいられず、80年代に40%を超えていた法人税率(国税)は2018年度に23.2%まで下がった。

(2)国際的な課税ルールの改革機運が高まったきっかけは

IT大手の課税逃れへの批判が国際ルール見直し機運が高まる一因となった

グローバル化に続き、2000年代に入って押し寄せたのがデジタル化の波だ。IT(情報技術)を駆使して世界中で稼ぐ米GAFA(親会社のアルファベットを含むグーグル、アマゾン・ドット・コム、フェイスブック、アップル)のようなデジタル企業が経済の中心に躍り出た。

デジタル企業は事業所など物理的な拠点を置かない国でもインターネットを通じてビジネスを展開できる。いまの法人課税には1920年代にできた「恒久的な施設なくして課税なし」という国際的な原則がある。これに基づけば、デジタル企業はある国で消費者にモノやサービスを売ってどんなに巨額の利益をあげても、その国に工場や店舗といった物理的な拠点がなければ法人税を払わなくて済む。法人税率が低い国に拠点を置き、サービスの利用者がいる別の国で税金を払わずに稼ぐやり方が広がった。

法人税率の引き下げ競争とデジタル化の流れが加速する中で、課税をうまく逃れた多国籍企業やデジタル企業は富を蓄積した。こうした企業の税逃れを問題視する機運が高まった契機は、2008年秋に起きたリーマン・ショックだ。危機を克服するために各国は大規模な景気対策を打ち出し、財政状況が悪化した。にもかかわらず、富をため込んだ多国籍企業が払うべき税金を払っていないという批判がわき起こった。

OECDは2012年に「BEPS(税源浸食と利益移転)」と呼ばれるプロジェクトを立ち上げた。各国政府が連携して多国籍企業による税逃れを防ぎ、公平な競争条件を整える手立てを話し合うためだ。

(3)グローバル企業への課税はどう変わるのか

法人税の最低税率とデジタル課税の国際ルールづくりを柱とするBEPSの議論はなかなか進まなかった。参加国が多く、利害の調整が難しかったからだ。しかし、2020年に始まった新型コロナウイルスの危機が転機となる。各国が巨額の財政出動を繰り返し、税財源の確保が必要になったためだ。法人税率の低さを競う余裕はなくなった。

21年1月に発足したバイデン米政権は5月に法人税の最低税率を「少なくとも15%」とする案を提示し、主要7カ国(G7)が同調した。OECD加盟国を含む130以上の国・地域も賛同し、8日の最終合意にこぎ着けた。

今回の合意では、法人税の最低税率を「15%」とする各国共通のルールを設けるとともに、GAFAのような巨大IT企業を念頭にデジタル課税の仕組みも決めた。全世界の売上高が200億ユーロ(約2.6兆円)を超し、利益率が10%超の企業が対象だ。

この条件に合う約100社のグローバル企業が稼いだ利益のうち、総収入の10%を超える利益を「超過利益」とし、その25%にサービスの利用者がいる国・地域が課税できるようにする。対象企業が工場や店舗などの物理的な拠点を置かない国や地域も課税できるようになるわけだ。実際の課税権は、売上高に応じて各国・地域に配分する。

1920年代にできた「恒久施設なくして課税なし」の原則をおよそ100年ぶりに転換する歴史的な改革だ。新ルールは2023年からの実施をめざす。

(経済部長 高橋哲史)』

<Q&A>法人課税強化、国際合意のポイントは? デジタル課税、最低税率15%以上
2021年7月3日 06時00分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/114283

『OECDが多国籍企業の課税逃れを防ぐため、法人税の新たな国際ルールをつくることに大枠で合意しました。このルールの狙いと中身についてまとめました。(原田晋也)

 Q なぜ、新ルールが必要なのですか。

 A 現行ルールでは、工場や支店など拠点がなければ、その国は企業に課税しないのが原則です。しかし、拠点を世界各国に置かなくても、インターネットを使って事業を展開する「GAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)」などの巨大IT企業が登場。これらの企業に対し、課税ができない国が増えました。サービスを展開しているのに拠点がないとの理由で課税を逃れる企業が増え、経済の変化に税制が追いついていませんでした。
 「タックスヘイブン(租税回避地)」と呼ばれる法人税率が低い国に拠点を置く多国籍企業が増えたことも理由です。企業誘致のために各国で税率引き下げ競争が起き、財政悪化や格差拡大を招いたとの批判が根強くありました。

 Q 合意の内容は。

 A 巨大IT企業を想定した「デジタル課税」と、「最低法人税率」の二つがあります。デジタル課税では、多国籍企業の拠点がない国でも、サービスが行われていたら、消費国(市場国)として課税できるようになります。具体的には、巨大IT企業の利益率のうち10%を超える部分に、20~30%の税率が適用され、市場国に税収が分配されます。
 Q 最低法人税率の方はどんな仕組みですか。

 A 最低法人税率を「15%以上」とすることで合意しました。仮に、多国籍企業が税率がより低い10%の国に子会社を置いても、親会社が所在する国からも、15%から10%を差し引いた5%分を追加的に課税できるようになります。タックスヘイブンを使った課税逃れが難しくなるかもしれません。

 Q 各国はなぜ合意に向かうことができたのでしょうか。

 A 米国は従来、多国籍企業に対する課税強化には否定的でした。しかし、バイデン政権が誕生し、税の公平性に重きを置くようになり、最低税率導入を推進するようになったためです。また、新型コロナウイルス対策で大型の景気対策を打った各国の財政状況が厳しくなっているという事情があります。

【関連記事】デジタル税、日本も数社対象か OECD大枠合意 』

中国は静観、米の貿易協議再開方針 TPPで揺さぶり

中国は静観、米の貿易協議再開方針 TPPで揺さぶり
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN0527V0V01C21A0000000/

『【北京=川手伊織、ワシントン=鳳山太成】バイデン米政権が中国と貿易交渉を再開する方針を表明したことを巡り、中国は静観している。半導体の対中輸出規制の行方など米国の出方を見極めるためだ。米国不在の環太平洋経済連携協定(TPP)の加盟を正式申請するなど、米国への揺さぶりも見せる。

米通商代表部(USTR)のタイ代表は4日の演説で、数日以内に中国の劉鶴(リュウ・ハァ)副首相と電話で協議する方針を明らかにした。

タイ氏は「中国は国家主導の経済制度を強化している。有意義な改革をやるつもりがないのは一段と明らかだ」と批判した。一方で「直接対話以外に(懸念に)対処できる方法があるとは思えない」と語り、まずは対話で臨む姿勢を示した。

中国は国営新華社が5日午前にタイ氏の演説を伝えたのみで、政府は今のところ反応していない。1日から国慶節(建国記念日)を祝う大型連休に入っていることに加え、米国側の意向を見極めたいとの考えも透ける。

バイデン政権も青写真を描いているわけではない。米政府高官は「中国があっさりと変化するとは考えていない」と述べ、最初から期待値を下げている。「中国がどう反応するかを見て、我々の対応も修正する」と手探りだ。

米中貿易協議の第1段階合意は中国がモノやサービスの輸入を2000億ドル(約22兆円)増やす条項のほかに、知的財産の保護や金融市場の開放、技術移転の強制防止など7分野で構成する。

USTRの分析によると、第1段階合意は「特定の分野は約束が守られ、企業の利益も出ているが、不足している分野もある」(タイ氏)。具体的な分析結果は公表しないが、交渉の場で米中の意見の隔たりが浮き彫りになれば妥結は難しくなる。

中国は対米協議とは別に、TPP加盟に積極姿勢を示す。9月16日に正式に加盟を申請した。国有企業優遇の是正をはじめ、中国がTPPの要求水準を満たすのは容易ではない。それでも申請を急いだのはTPPに背を向ける米国を揺さぶるという意味合いが大きい。

「TPPには安全保障を理由にした例外規定がある」。中国の専門家には、例外規定を多用すれば改革をしなくても加盟できるとの論調も多い。中国商務省の束珏婷報道官も30日の記者会見で例外規定の積極活用について見解を問われると「さらなる情報があれば速やかに公表する」と言及を避け、否定しなかった。ハイレベルの貿易投資協定を骨抜きにしようという思惑も見え隠れする。』

EVのリアル、ノルウェーは街ごと

EVのリアル、ノルウェーは街ごと スタンドから家まで
EVのリアル 先駆け欧州を歩く(2)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR210AK0R20C21A9000000/

 ※ こういう、「リアル」じゃ無い記事が蔓延るから、困るよ…。

『北欧ノルウェーで政府や企業が交通インフラを「脱炭素仕様」に塗り替えようとしている。給油所は電気自動車(EV)の急速充電設備に置き換わり始め、タクシーやトラック、フェリーに至るまで電動化が進む。EVを生活のメインとして普及させるためには、住宅も含めて街のインフラをまるごと脱炭素社会に合わせる必要がある。最先端のノルウェーで、EV仕様に変貌しつつある街の未来を探った。

首都オスロから西に約80キロメートル、5月に開業したガソリンスタンドとコンビニエンスストアの複合店「サークルKコングスベルポーテン店」を訪ねた。日本でも親しまれた、円の中にKのロゴが見える。

客がミニバンを止めようとしたが、けげんな顔で出て行った。並んでいたのは全てEV用の急速充電設備だったからだ。6基の充電器が計12台に充電できるようになっている。1基の出力は300キロワット。急速充電でも22キロワットや50キロワットがまだ多いなか、乗用車向けでは世界最速クラスだ。

ガソリンは店の奥

韓国・現代自動車「アイオニック5」を充電していたイェンスさんに聞くと「80%までなら18分」と教えてくれた。18分で約350キロメートル走れる。敷地内には子供が遊べる遊具や50席の飲食スペースがある。店員のビヨリグさんは「『ガソリンはどこにいった』と聞かれることもある」と話す。ガソリンも給油できるが敷地の奥で目立たない。
サークルKコングルベルポーテンに並ぶ18口の急速充電器のうち12口は300キロワットと非常に速い

サークルKはノルウェーで450カ所のガソリンスタンドを運営し、そのうち約90カ所に600台分の急速充電設備を備える。主要な幹線道路には設置を完了した。サークルKのeモビリティー事業のトップ、ホーコン・スティクスレッドさんは充電ステーションについて「成長の速度は速い」と手応えを感じる。

コングスベル店の給油と充電の売上高の比率は7対3だが、ノルウェーではEVシフトで2年前から燃料販売量は毎年数%ずつ減り始めた。スティクスレッドさんは「来るべきエネルギー構成の変化に備える必要がある」と語る。

ノルウェーEV協会のスべイヌン・クオーレ上席顧問は「EVがメインの車として日常から休暇までカバーする過程で、インフラの充実がカギになる」と話す。ノルウェー政府は2017年に主要幹線道路の50キロメートルごとに少なくとも2口の急速充電器を設置するプログラムを開始し、民間企業のために基金を設けた。

欧州代替燃料オブザーバトリー(EAFO)によると、最新のノルウェーの高速道路100キロメートルあたりの公共急速充電器(22キロワット以上)の口数は1200以上と5年前の約5倍。欧州連合(EU)全体の26、ドイツの70をはるかに上回る。スべイヌンさん自身も「電池残量10%を切らないと不安に感じない」と話す。
スマホで充電操作

集合住宅も変わり始めた。4年前の取材ではオスロ市役所のEV推進担当、ストゥア・ポトビックさんは「人口の7割が住む集合住宅が課題」と話していた。再会したポトビックさんと市郊外にある集合住宅「ロベコレン・ボレスラグ」を訪れた。
集合住宅「ロベコレン・ボレスラグ」のガレージ(写真中央)には屋上に太陽光パネルを敷いた(オスロ)

ガレージでは屋上に太陽光パネルがあり、中には蓄電池が置かれていた。住人理事会のキェティル・ヘトランド会長は「スマート充電システムを導入し充電時間の管理が簡単になった」と話す。

現在246戸の住人のうち約4分の1がEVを保有する。19年に保有者がガレージで充電器を設置できるようにした。だが、充電の際に容量の問題で15台までしか同時に充電できず、誰がいつ充電するかを決める必要があった。

そこで21年5月にスマート充電システムを導入した。何%まで充電したいのかや車を使う時間などをスマホのアプリで入力するとシステムが最適な配分をするので、住人はプラグを差すだけでいい。

太陽光パネルで発電した電気を蓄電池にためて売電もすることで、電気代を下げられる。負荷を分散すれば電力網への高額な投資も不要だ。ヘトランドさんは「EVに乗り換える住人が増えても対応できるし、住宅の資産価値も上がる」と胸をはる。
蓄電池も設置し電力料金を抑える

今後、ロベコレンのような事例が増えるのは確実だ。ノルウェー政府は20年12月、集合住宅の住人が共用部分の駐車場に充電設備がほしいと要求した場合、集合住宅の理事会はそれを拒否することを禁じる法律を定めた。充電ボックスの費用は個人の負担だが、理事会は配線などを整備しなければならない。

オスロ市はインフラ整備費用の20%と個人の充電ボックス費用の50%を補助する。ポトビックさんは「街中に充電用ポールを立てるのに比べれば安く済む」と話す。ノルウェーで見た変化は、需要が高まると新たな問題解決方法が生まれることを示している。
トラックもフェリーも電動化

オスロから南に広がるオスロ・フィヨルドの交通の要衝、モス。対岸のホルテンとをつなぐフェリーのルートはノルウェーでも最も忙しい海路とされる。フェリー乗り場の岸壁で工事が進む。高さ4メートルほどの黒い箱には「フェリーチャージャー」の文字。このルートで運航する世界最大級全長139メートルの電動フェリー「MFバストエレクトリック」を充電するためのものだ。

フェリーは完全電気駆動に

同フェリーは現在はディーゼルエンジンとのハイブリッドで運航しているが、モスの充電設備が完成すると、ホルテン側で稼働中の充電器と合わせて完全電気駆動に移行する。MFバストエレクトリックの電池容量は4300キロワット時と日産自動車の電気自動車(EV)「リーフ(通常モデル)」107台分だ。

現在は5隻のうち1隻だけで、22年夏に全運航を電気フェリーに切り替える。二酸化炭素(CO2)削減効果はガソリン車1万台分にのぼる。運航会社バスト・フォーセンのオイヴィンド・ルンド最高経営責任者(CEO)は「地域全体のグリーンシフトに貢献する」と意気込む。
フェリー用の充電器の出力は9000キロワット。停泊中に約10分充電すればディーゼルエンジンの使用は不要に(ノルウェー・モス)

船舶向けの充電システムを開発する独シーメンス・エナジーによると、ノルウェーでは2021年末までに70隻の電動フェリーが運航する予定だ。運輸部門のCO2排出では乗用車に注目が集まりがちだが、バスやタクシーを含んでも約半分で、船舶は航空と並んで約1割を占める。

■商用バンの充電拠点整備

残りの3割がトラックなどの商業輸送だ。オスロではこの分野でも実験が進む。オスロ港の一角にコンテナを積んで作った仮設風の建物が白、黄、赤と並ぶ。ドイツ鉄道系のDBシェンカーのコンテナでは三菱ふそうトラック・バスの電気トラック「eキャンター」が充電されていた。

ここは「オスロシティーハブ」。その名の通り市外から荷物を運んでくる大型トラックが荷物を下ろし電動の小型トラックやバン、自転車に載せ替えて市内に運ぶハブだ。
大型トラックで運ばれてきた荷物は、配送用EVに載せかえて市内各地へ(オスロシティーハブ)

オスロでは30年までにすべての商用バンや重量輸送を原則CO2排出ゼロにすることを義務付けている。そのため19年にDBシェンカーが市に協力を要請しその後、黄のドイツポストDHL、赤の地元郵便会社ポステンが加わり大手5社のうち3社が集まる。

ポトビックさんは「オンラインショッピングが増えるなかでCO2削減の目標を達成するには、商業輸送のインフラ整備が重要だ」と話す。
タクシーは非接触で充電

ポトビックさんのチームはタクシーの充電にもメスを入れた。非接触充電だ。英ジャガー・ランドローバーや充電技術スタートアップの米モメンタム・ダイナミクスなどと協力してテストを進める。改造したジャガー「Iペース」25台を使い、市内3カ所に充電ポイントを設けた。

タクシー運転手は道路に埋め込まれた青い充電パッドの上に車を止めれば、ケーブルの抜き差しをすることなく客を待つ間に充電ができる。充電出力は50キロワットを突破し、さらなる高速化を目指す。

ポトビックさんは「非接触充電はゲームチェンジャーになりうる」と期待する。オスロ市や第2都市のベルゲンは24年に新規登録だけでなく営業するすべてのタクシーを温暖化ガスを排出しないゼロエミッションにすることを決めている。インフラ整備の支援と規制の導入という、アメとムチを駆使して、脱炭素を目指す壮大な社会実験から目が離せない。
(オスロで、深尾幸生)

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