カンボジアで世界初のデジタル通貨を作った日本人が語る金融の近未来

https://www.nippon.com/ja/japan-topics/g01074/

『―スタートアップ企業のソラミツがアイデアを武器に一国の中央銀行のデジタル通貨を作り上げた過程は、スティーブ・ジョブズやビル・ゲイツがシリコンバレーの最初の頃を彷彿とさせます。デジタル通貨に目を向けた理由は?

ビル・ゲイツやスティーブ・ジョブズとは月とスッポンですけれども、私はソニーで長く勤めました。ソニーは世界初をやろうという文化がありましたから、とにかく世の中にないものをやりたいと思った。私はシリコンバレーでパソコンのVAIO1号機を開発したものの、大きな赤字を出した。これからはハードウェアの時代じゃない、サービスとかインターネットの時代だと思いまして、帰国して、電子マネーのEdyを始めました。

EdyはEuro、Dollar、Yenの頭文字から取り、世界の通貨を目指していた。ところが、技術の壁があって、海外で全然受け入れてもらえず、日本でしか普及しなかった。一方、ビットコインは出てすぐ、世界中で使われるようになった。これは悔しいと、ブロックチェーン(分散型ネットワークを構成する複数のコンピューターに、暗号技術を組み合わせ、取引情報などのデータを同期して記録する手法)の技術を持つソラミツに参加して、今は代表取締役をやっています。

―何かをやりたいというのをどんどん追求していったら、デジタル通貨を作るに至ったということですか。

本当に自分のライフワークになっていて。やっとこういう時代になったと。技術がやりたいことに追いついてきた時、たまたまカンボジアの中央銀行との出会いがあって、これこそ自分のライフワークだと思って取り組み始めました。

―Edyを作った頃にブロックチェーン技術があったら、Edyはデジタル通貨となったのでしょうか。

そうだと思います。Edyを始めた頃、大学の先生からずいぶん怒られたんです。『君たちは技術の使い方を間違っている』と。いわゆる転々流通(不特定の所有者に価値が引き継がれること)しないんです。これは学者さんから見ると、経済理論の見地からおかしい。単なるプリペイドカードでしかないし、電子マネーじゃないと。

ただ、当時は、転々流通できてセキュリティが高いという技術がなく、やむなく転々流通でない方式、「口座型」(利用者の口座間で振替決済)をやった。Suicaが口座型を真似して、さらにPay PayやLINE Payも真似した。だから、日本の金融業界が効率の悪い口座型になってしまって、転々流通ができなかった責任は私にもあると。私が最初に間違った方式でやって、学者さんの反対を押し切ってやっちゃったので。だからそこを直さなきゃいけないと思っていまして。要するに世直しですよね。それを何とかしなきゃいけないという気持ちは強いです。

詐欺かと思ったカンボジア国立銀行の誘い

―カンボジアの中央銀行(カンボジア国立銀行)からデジタル通貨のシステムを作って欲しいと言ってきたとき、パッと手を挙げたのは、スタートアップ企業だからこそ出来たのですか。

SNSで『国立銀行です』と名乗られて、『お宅の技術をちょっと試してみたい』と連絡してきた。最初は偽物だろうと思いました。国立銀行がスタートアップに連絡してくるわけがないと。これは絶対いわゆる詐欺じゃないかと。でも、いろいろやり取りしていると、どうも本物らしいということで、創業者と一緒にカンボジアへ行ってみたわけです。そうしたら、本当にカンボジア国立銀行だった。

私はソニーで、いろんな技術の盛衰を見てきました。昔、ベータマックスというビデオがあって、それがVHSに負けたとか、メモリースティックはSDカードに負けた。やっぱりIT技術って日本だけでやっていたら駄目だと。ガラパゴスでは絶対に勝てない。世界で勝負して、世界標準を目指していかないと残れないというトラウマを何回も経験した。

ソラミツ創業者の武宮誠はアメリカ国籍だったのですが、日本に来て日本が好きになって帰化した。彼もとにかく最初からグローバルで勝負しようということで、プロトタイプを開発していきなりスイスに行って、スイスのダボス会議に参加したりとか、ニューヨークでプレゼンしたりとか。そうしないと絶対に生き残れないという意識でやっていました。それがカンボジア国立銀行の目に留まったんだと思います。

プノンペン市のカンボジア国立銀行 提供:ソラミツ

アンコールワットの遺跡を背景に。ソラミツの創業者である武宮氏(右から2人目)と宮沢氏(左から3人目)提供:ソラミツ

―最初からグローバルで勝負し、それを成し遂げたのは技術的な裏打ちもあった。

そうですね。武宮は本当に天才です。彼は大学卒業後に米陸軍に入隊し、脳科学とかAIとかをずっと研究していた。奈良県にあるNTTの先端技術研究所に転籍して働いていた時に、ビットコインというのが世の中で生まれた。彼は『すごいけど、もっといいものを作れると思った』と言い、実際作っちゃった。彼はスティーブ・ウォズニアック(アップル創業時の天才技術者)のように、最先端のものを作ってくれた。私はどちらかというとスティーブ・ジョブズ・タイプかもしれない。自分はコードも書きますが、そんなに得意ではないので、新しい技術を理解して、それをどうやって世の中に受け入れてもらうかを考えながらやっていた。

―ソラミツは独自に開発されたブロックチェーン技術「ハイパーレジャーいろは」をオープンソースとして開放し、周辺で利益を上げるというビジネスモデル。従来の日本企業のパターンと違う。

ブロックチェーンを開発した日本企業はあるが、われわれみたいにオープンソースにして世界で戦っている企業は本当に少ない。大手のブロックチェーン開発企業は日本国内で閉じていて、なおかつオープンソースではなくて、ライセンス料で収入を得るようなビジネスモデルなので、広がらない。閉じてしまっているというのは非常に残念ですよね。

このままでは世界に遅れる日本の金融界

―バコンの話に戻りますが、カンボジアはドルが自国通貨より流通し、中央銀行は困っていた。しかし、バコンを始めると自国通貨の割合のほうが多くなった。

カンボジアは国立銀行がしっかりしている。若い人が多く、みんなすごく勉強しています。金融の人だけれども、技術にも明るく、ある意味しがらみがない。日本の金融機関ってしがらみだらけで、既存のシステムを変えられないとか、失敗したくないと考えている人が役員に多いと思う。

この調子で行くと、ますます日本は遅れていく。日本の金融界の偉い方も、『カンボジアは金融インフラがないからできた』と言う。それだけではなく、先々を見る目とか、それに対して挑戦しようという気概があった。短期間でできたのも、彼らには既に概念設計が出来上がっていたから。中央銀行デジタル通貨(CBDC)はこうあるべきだというものが、全部出来上がっていた。

日本にはデジタル通貨の概念設計がないんです。中央銀行デジタル通貨はどうあるべきか、明確ではない。これから実証実験をちょっとずつやっていきます、みたいな感じ。一方、カンボジアは確固たる考え方を持っていた。リスクとか、こういうことをやると銀行に大きな影響を与えるとか、シミュレーションを行い、全部分かっていた。それが2016年です。5年前にカンボジアでは今の日本よりもはるかに明確になっていた。

カンボジアは自国通貨リエルよりも米ドルが流通していた。ドル比率が高いのを何とかしたいと。しかし、バコンを導入したことによって、自国通貨の割合が高くなった。

デジタル通貨「バコン」の開始式典であいさつするカンボジア国立銀行のチア・セレイ統括局長 2020/10/28 プノンペン(共同)

―カンボジア国立銀行は中国のデジタル人民元に対する危機感もあった? 

そう思います。やっぱりデジタル人民元の動きが気になるわけですよね。デジタル人民元は中国の中でしか使いませんというふうに言っていますけれども、それはたぶん方便だと思っていて。中国はUAEとかタイと研究会を開いて海外での利用の可能性を検討しているわけですよ。デジタル人民元の国際連携みたいな話で、一帯一路で使わせるとか、アジア圏に普及させるということを考えている。それが広がると、米国がドルのSWIFT(国際銀行間通信協会)を活用した経済制裁を出来なくなると思います。北朝鮮やミャンマーが経済制裁されても、デジタル人民元を使って中国から資金がどんどん行ってしまう。

デジタル通貨「バコン」の使用を呼びかける看板(プノンペン市内)提供:ソラミツ

デジタル人民元の脅威

―これからデジタル人民元をはじめ、各国でデジタル通貨が普及していくと、社会がどう変わっていくと思われますか。

3つぐらいのシナリオを思い描いています。日本の金融機関がうまく正常な形で進化して、新しいデジタル技術を取り入れていくというのが1番目のシナリオです。

2番目のシナリオは、それができなかった時に、新たなプラットフォーマーが金融機関に取って変わる。〇〇Payなのか、あるいはFacebookなのか。巨大プラットフォーマー企業が新しい技術で利便性の高いサービスを提供することによって、ユーザーが『そっちでいいや』となって、どんどん日本の金融機関のシェアが下がって、その分、銀行は淘汰される。これが2番目のシナリオ。

3番目は、中央集権的なプラットフォームが支配する世の中ではなくて、分散型金融の普及で、資産を分散的に所有し、民主的に配分が決まっていく。金融機関も必要なくなるかもしれません。例えばDEX(Decentralized Exchange)という分散型交換所では資産は人手を介さず自動的に交換される。為替交換とか全部できてしまう。そういうものがより安いコストでより普及していく。これら3つの勢力が、市場を拡大しながら共存していくのかなと思っています。

―宮沢さんは日銀のデジタル通貨分科会ラウンドテーブル委員を務めている。日本のデジタル通貨はどの方向が望ましいと思ってらっしゃいますか?

2番目のシナリオはよくないと思っています。プラットフォーマーが日本の金融界を牛耳ることになると、銀行は信用創造機能を制限されて経済活性化ができなくなる。なので、1番が良いですよね。3番の、ビットコインのような仮想通貨はこれからも発展していくと思いますが、多くの日本人は、銀行のサービスが便利になればそっちを使うかなと。で、私としては、1番を応援しているという立場ですね。

『ソラミツ 世界初の中銀デジタル通貨「バコン」を実現したスタートアップ』(宮沢和正著 日経BP)書影

日本銀行は民間デジタル通貨や決済手段と日銀が将来発行するCBDCが共存・連携することを大前提としています。そのためには日本の銀行預金の使い勝手がもっと良くならなければいけない。銀行が決済性預金としてブロックチェーンなどの最新の技術を活用した民間デジタル通貨を発行し、決済コストを今までの1/10以下に下げ、即時支払や転々流通に対応し、スマートコントラクトを活用して支払方法に様々なルールを設定できる金融システムを構築する必要があると思います。そうしないと利用者は新たな技術を活用したもっと利便性の高い決済手段に流れていってしまいます。

銀行や自治体などが全国共通の民間デジタル通貨を発行するためのプラットフォームを運営する会社があります。2020年4月に設立したデジタル・プラットフォーマーという企業です。この企業はカンボジア中銀デジタル通貨「バコン」と同じ技術を活用しており、全国の銀行や自治体を繋ぎ将来は日銀の発行するCBDCとも連携して国民に低コストで利便性の高いデジタル通貨を提供する新時代の決済システムを提供してゆくと思います。

バナー写真:カンボジアのデジタル通貨「バコン」を紹介する展示物 プノンペン 2020/10/28 共同 』

GM、米にEV電池の第2工場 韓国LGと2500億円投資

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN16E4C0W1A410C2000000/

『【ニューヨーク=中山修志】米ゼネラル・モーターズ(GM)は16日、米南部テネシー州に第2の車載電池工場を建設すると発表した。韓国・LGグループと合弁で約23億ドル(約2500億円)を投資し、2023年から電気自動車(EV)用のリチウムイオン電池を生産する。EVシフトへ電池の量産体制を整える。

新工場はLG化学の車載電池部門を引き継いだLGエナジーソリューションと折半出資で設立する。23億ドルの投資額は両社が米オハイオ州で建設中の電池工場とほぼ同じ規模。1300人を雇用し、LGとGMが共同開発したEV用リチウムイオン電池「アルティウム」を生産する。

生産能力は標準的なEVの60万台分に相当する30ギガワット時程度となる見通し。高級車ブランド「キャデラック」のEVを生産するテネシー州の完成車工場に電池を供給する。LGエナジーソリューションの金鐘現(キム・ジョンヒョン)社長は同日、「テネシーはEVと電池の重要拠点になる。研究開発から原材料の調達、生産までを担う強固で安定したサプライチェーン(供給網)を構築できる」とコメントした。

GMは25年末までに世界でEV30車種を発売し、うち約20車種を北米市場に投入する計画。米国に11ある完成車工場のうちテネシー州とミシガン州の3工場をEVの主力工場と位置づけ、22年以降の本格生産に向けて電池の供給体制も整える。

米国ではGMやフォード・モーターに加え、複数の新興メーカーがEV市場への参入計画を打ち出している。バイデン米大統領は2月、半導体などとともにEV向け電池のサプライチェーンの整備を命じる大統領令に署名した。韓国のSKイノベーションも南部ジョージア州で電池工場の建設計画を進めている。

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米シティ、中韓豪など13市場から撤退 消費者向け銀行

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN15DMW0V10C21A4000000/

『【ニューヨーク=宮本岳則】米金融大手シティグループは15日、消費者向け(リテール)銀行サービスの戦略を見直すと発表した。オーストラリアや中国、韓国などアジア・太平洋地域を中心に13の市場から撤退する。富裕層向け事業や法人向け業務など成長分野に経営資源を振り向け、収益力の改善を目指す。

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アジア・太平洋地域では中韓豪のほか、インドやインドネシア、マレーシア、フィリピン、台湾、タイ、ベトナムの消費者向け市場からも撤退する。アジア以外ではロシアとバーレーン、ポーランドも撤退対象となった。法人向け業務は継続する。

シティは段階的に海外の消費者向け銀行業務を縮小してきた。日本事業は14年に撤退対象となり、三井住友フィナンシャルグループに売却した。

シティのジェーン・フレーザー最高経営責任者(CEO)は13市場について「(ライバルと)競争する上で必要な事業規模を持ち合わせていなかった」と指摘した。今後、シンガポールと中国・香港、アラブ首長国連邦(UAE)、ロンドンを拠点とした富裕層向け金融サービスに注力する。

シティはかねて高コスト体質を株主から問題視されてきた。シティのマーク・メイソン最高財務責任者(CFO)によると、13市場の営業費用は33億ドル(約3630億円、2020年)だった。撤退によってコスト削減効果が見込めるという。

フレーザーCEOはトップ就任前に出席した1月の決算説明会で、非中核事業からの撤退を含む戦略の抜本的な見直しを実施すると話していた。同氏は15日の声明で消費者向け銀行以外のビジネスでも改革に踏み切る可能性を示唆した。

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野崎浩成
東洋大学 国際学部教授
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ひとこと解説 前任のマイケル・コルバット氏からバトンを受け取って2か月弱、ジェーン・フレーザー新CEOが早くも改革に着手し始めました。
シティはGCB(Global Consumer Banking)とICG(Institutional Clients Group)の部門からなりますが、今回の事業再構築の対象はGCBとなります。
160か国超の世界最大級のグローバルネットワークを抱えているだけに、13市場という数字自体はごく一部に過ぎませんが、アジア太平洋の主要地域における小口金融に大鉈を振るうことは重要な判断といえます。

2021年4月16日 8:37いいね
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「隠れみの」リスク露呈 アルケゴスで巨額損失

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN1042Z0Q1A410C2000000/

『米投資会社アルケゴス・キャピタル・マネジメントとの取引で一部金融機関が損失を出したことをきっかけに、規制の抜け穴に注目が集まっている。同社が「隠れみの」としていたのが株式投資の損益を丸ごと移転する取引だ。米証券取引委員会(SEC)がこの取引に新しい規制を導入するのは2021年11月。導入まで10年の歳月がかかり、アルケゴス問題を防げなかった。

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SECによる監督の対象外だったファミリーオフィス(個人資産の運用会社)と並んで焦点となっているのがデリバティブ(金融派生商品)取引の一つ、「トータル・リターン・スワップ」だ。

トータル・リターン・スワップは、投資家が実際には株式を持たないにもかかわらず、株式を持つのと同じ効果を持つ。

仕組みは単純だ。投資家は金融機関に一定の手数料を支払ってトータル・リターン・スワップ契約を結ぶ。金融機関は原則その契約に従って株式を購入。名目上はこの金融機関が株主となる。ただ株価の上下に伴う利益と損失は全て投資家が負い、実質的な株主はこの投資家となる。金融機関は手数料と引き換えに投資家に「賭場」を提供するようなかたちだ。

各金融機関はヘッジファンドなど顧客に与信枠(融資枠)を設定している。アルケゴスはこの枠内でレバレッジ(てこの原理)を効かせて、投資規模を膨らませることができた。こうして100億ドル(約1兆1000億円)の自己資産に対して、その数倍のポジション(持ち高)を構築していた。

ただし金融機関はトータル・リターン・スワップ契約を結ぶ取引先の投資家に一定の担保を要求する。金融機関が保有する株式や担保価値が値下がりすれば、金融機関の安全のため投資家に追加担保の差し入れ(追い証)を求める。アルケゴスは今回、追い証に応じられず、一部の金融機関が担保として取っていた株を一斉に売却した。

銀行の自己勘定取引は金融規制改革法(ドッド・フランク法)の中核となるボルカー・ルールで厳しく規制された。今回明らかになったのは取引先が過度のリスクをとることで、結果的に金融機関が潜在的な損失リスクを負っていたことだ。取引先が破綻すれば、デリバティブ契約は無効となる。その場合、金融機関はボルカー・ルールで規制されているにもかかわらず、取引先が抱えていた価格変動リスクを「自己勘定」で背負うことになる。

問題はこうしたリスクを監督当局も金融機関も正確に把握できていなかったことだ。トータル・リターン・スワップ契約は投資家が株式を保有しないため、米国の「実質的な保有者」の情報開示義務を免れる。過去には英ヘッジファンドがトータル・リターン・スワップを使って「実質的な株式持ち高を隠した」と提訴されたことがある。

パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長は11日、米テレビ番組に出演し、「金融機関はニューヨークの5、6社の同業が同じようなことをしていることを知らなかった」と明らかにしたうえで、「(同様の事件を)二度と起こさないように決意した」と話した。

10年のドッド・フランク法で規制強化が求められ、SECはトータル・リターン・スワップを含む有価証券を裏付け資産とするスワップ取引に対する新規制策定を19年12月にようやく終え、21年11月に導入する。新しい規制では、投資家は個別取引を当局の監視下にあるデータベースに登録する。投資家のポジションが当局に一目瞭然となる見通しだ。

米議会上院は14日、SEC委員長にゲーリー・ゲンスラー氏を承認した。ゲンスラー氏はオバマ政権時代の米商品先物取引委員会(CFTC)委員長として、金融界の抵抗を押し切って金利や通貨を対象とするスワップ取引の規制をまとめた実績がある。

市場の安定に向けて規制・監督体制の強化は避けられない。金融技術の発展で次々あらわれる規制の抜け穴。ゲンスラー氏がどこまでこの抜け穴を塞げるか試されている。(ニューヨーク=宮本岳則)

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上杉素直
本社コメンテーター・論説委員
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ひとこと解説いざ大きな損失が発生すると、この記事が指摘するような妙な仕組みの存在が明らかになるというのはよくある話です。アルケゴスが使っていた仕組みのように、後から振り返れば妙な取引はまだまだあるような気もします。にもかかわらず、金融の世界はなお金余り状態にあり、実体経済の回復を背景に市場参加者の強気ムードが続いているようです。バブルを膨らませていないか、という心配が募ります。
2021年4月15日 7:32 』

いすゞが3年で3000億円投資!トラックのモデルチェンジとCASEに重点化

https://newswitch.jp/p/26753

『いすゞ自動車は2024年3月期までの3年間に合計3000億円規模の設備投資を実施する方針を固めた。21年3月期までの3カ年中期経営計画期間と比較して約30%増となる見通し。主にトラックのモデルチェンジ対応などに割り振る。海外拠点の生産最適化も進める。自動車業界で競争が激しい「CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)」関連の投資は研究開発費が中心となる。

いすゞは現在、24年3月期までの新中計を策定中。期間中にトラックのモデルチェンジなどを行い、それに伴う工場設備への投資が膨らむ見通し。

デジタル関連投資も進める。22年5月をめどに本社を現在の東京都品川区から横浜市に移転する。本社移転に合わせた情報システムの刷新などで数百億円程度を投じる方向。IT環境の改善で生産性向上を見込む。販売拠点のデジタル化も推進する。

海外ではタイを中心に好調な主力のピックアップトラック「D―MAX」について、生産拠点の整備に力を入れる。CASE関連は開発段階のものが多いことから設備投資への影響は少なく、研究開発費で対応。CASE関連分野の開発については今後3年間で1000億円程度を投じる。

ただ過度な開発投資を防ぐため、スウェーデンのボルボ・グループなど他社との連携を生かして投資効率を高める戦略をとる。

日刊工業新聞2021年4月9日』

新局面迎える世界情勢 「汎地球的」ルール整備が必要だ

新局面迎える世界情勢 「汎地球的」ルール整備が必要だ
ヴォルフガング・パーペ (元欧州委員会アジア戦略担当)
渡邊頼純 (関西国際大学国際コミュニケーション学部長・教授)
https://wedge.ismedia.jp/articles/-/22577

『「どちらからお越しですか?」。新型コロナウイルスが世界的に流行する前、外国に旅行するたびによくこんな質問を受け、私は「ヨーロッパから」と答えていた。ニューヨークの高校に通っていたころ、周囲の人たちが自分を「アメリカ人」と呼びながら、本来はそこに含まれるべきカナダ人やメキシコ人を無視している姿を目にしていたからだ。もちろんヨーロッパも単に欧州連合(EU)だけを意味するわけではない。EUに含まれない東側の国々も含まれる。

 だが、イギリスのブレグジットをめぐる交渉により、EU加盟国の結束はむしろ強化された。イギリスが被るマイナスの影響や損失が次第に明らかになったからだ。複数の調査によれば、ヨーロッパ統合には利点があると考えるEU市民は増えている。ドイツでは、その割合が過去15年で最高の73%に達した。脱退したイギリスでさえ、EUを支持する人が60%にのぼる(2020年8月ピュー・リサーチ・センター調査)。そんなEUをめぐる、21年の諸問題について触れていきたい。

 現在ウイルスの変異株が現れ、ヨーロッパ諸国は相次ぐ感染の波にさらされている。ドイツのメルケル首相も昨年3月に隔離を余儀なくされたが、すぐに回復し、その後の活躍で70%を超える支持率を獲得した。7月には、フランスのマクロン大統領と手を組んでEU加盟国を説得し、総額1兆8000億に及ぶ予算(21~27年)と経済回復プランを成立させた。

 メルケルとマクロンのコンビは、これらの受け入れに消極的だった「倹約4カ国」(オーストリア、デンマーク、オランダ、スウェーデン)の説得だけでなく、イタリアの動揺を一時的に鎮めることにも成功した。イタリアの人々は、ウイルスがヨーロッパ全域に広まる以前、ベルガモやミラノ、アルプス地方に押し寄せてきたウイルスとの死闘を真っ先に経験し、置き去りにされたような感覚を抱いていた。EU議会選挙前の19年5月、私が同僚と自転車でポー川流域を遊説していた際にも、現地のポピュリストの政治家から不満げに「ブリュッセル(EU本部の所在地)があまりに遠い」と言われたことがあった。

新たにイタリアの首相となったマリオ・ドラギ氏。技術官僚の「スーパーマリオ」は、多額の復興資金を割り当てられるなど経済的に苦しむイタリアを救えるか
(MONDADORI PORTFOLIO/GETTYIMAGES)
 21年初めの現在、EUは2220億(約28兆円)ものコロナ復興資金をイタリアに割り当てている。ところがイタリアは、またしても個人間および政党間の内紛に陥った。そしてまたしても、この国を救えるのはEUで経験を積んだテクノクラート(専門家、技術官僚)だけだと考えている。「スーパーマリオ」の異名を持つ元欧州中央銀行総裁、マリオ・ドラギである(編集部注・欧州経済危機に苦しんでいた11年にも同じくテクノクラートのマリオ・モンティが首相に擁立された)。

ワクチン供給の鍵は開放経済
 公衆衛生の問題については、EUの権限はまだ限られているが、EUは昨年の6月にはすでにワクチン戦略を発表し、安全なワクチンの生産能力の向上を図っていた。欧州医薬品庁(EMA)により承認されたワクチンはクリスマス直前の時期に、加盟27カ国間での不平等を避けるため、同じ条件のもと、同時に配布された。ちなみに、最初にEUの承認を得た米ファイザー・独ビオンテック製のワクチンは、マインツ(独)の移民夫婦により開発され、国境を越えたフランドル地方(ベルギー)の小さな町で製造された。これを見ても、緊急時には自由に動かせるサプライチェーンが必要なことがわかる。20年12月27日から、EU全域でワクチン接種が始まった。

 しかし、やがてワクチン不足が報じられるようになると、欧州委員会の交渉や計画に対する批判が高まり、今年2月初旬にはフォン・デア・ライエン委員長が非を認めるに至った。同氏によると、効果的なワクチン開発ばかりに気を取られ、大量生産の問題を軽視していたという。実際、最近になって、サプライチェーンの問題が世界中で起きている。

 スマートフォンは、小売市場に出るまでの製造過程で100回国境を越えると言われるが、同様にハイテク薬剤の大量生産も、一国の国内だけでは調達できない特殊な物資や設備、質の高いサービスを提供する無数の企業に依存している。アメリカのような大国にもこの教訓はあてはまる。ファイザーが真っ先にワクチンを開発できたのは、ドイツのビオンテックの協力があったからにほかならない。

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『対米正常化は分野別協力から
 政治面では、バイデン政権の誕生で、トランプ政権時代には低調だった米国とEUとの協力関係は間違いなく回復するだろう。しかしEUは、危機には陥りやすいがますます自律性も高めつつあり、「貿易においても、大西洋横断貿易投資パートナーシップ協定(TTIP)においても、5年前と同じ立場には戻れない」(編集部注・米国の強い姿勢にも対抗する)とフォン・デア・ライエン委員長は言う。また欧米関係が「正常化」すれば分野ごとの協力は進むだろうが、それが大きく報じられるかは別問題である。

 今年2月のEU統計局の発表によると、中国が米国を抜きEU最大の貿易相手国となった。対中国問題については、EUが提唱するEU-米国貿易・テクノロジー評議会(TTC)が、ハイテクの規格、投資審査、知的所有権の問題での協力を進めるはずだ。昨年末、ドイツの後押しにより大急ぎで締結された中国との包括的投資協定は多大な批判を浴びたが、それ以前に米中間で交わされた貿易に関する第一段階合意にある程度従い、公平な輸出条件を確保するよう努力してはいた。メルケルが欧州理事会でこの議論を主導したのは、これが中国市場を活用して低迷するドイツの自動車産業を支援する最後のチャンスと考えたからだろう。

 ドイツでは今年9月の選挙で新たな首相が誕生する。どの政党から首相が誕生するにせよ、その人物はフランスの大統領との相互補完的な協力関係を維持し、ヨーロッパ統合の屋台骨を支えていくことになるのか?

 第二次世界大戦後にアデナウアーとド・ゴールが友好関係を築いて以来、ドイツとフランスの間には個人を超えた深いつながりがある。いまや両国の政治はあらゆる面において、地球上のいかなる二大国も成し遂げられなかったほどのレベルにまで相手国に浸透していると言ってよく、いずれかの選挙でその関係が突然変わることはないだろう。EUでは、テクノクラートが作成した委員会の提案を理事会で審議し、合意に基づいて意思決定を行う方式を採用しているが、これは、意見の対立を招きがちな米英の二大政党制ではなく、ヨーロッパ的な議会制民主主義を反映している。

 だがこうした方式は、非自由主義的で違憲の疑いさえある行為を改めようとしない一部の加盟国(ハンガリーやポーランドなど)により、重大な危機に直面している。世界的に民主主義の力が弱まっている現在、多数者支配主義による統治がさらに長引けば、競争により前進する社会に欠かせない多元性が著しく損なわれてしまうおそれがある。EUにとって加盟国の内政は、効果的な対処が難しい問題である。

 16年の米大統領選でのトランプ勝利、および英国のEU脱退決定という二つの衝撃的事件が発生すると、日本・EU間の自由貿易協定(FTA)や経済連携協定(EPA)の交渉は一気に加速した。とりわけ、米国第一主義を標榜し、多国間協調主義を攻撃するトランプ大統領(当時)の影響は大きかった。だが、05年にパスカル・ラミー氏が欧州委員会から世界貿易機関(WTO)に異動したのを機に、EUもまた韓国を皮切りに、二国・地域間連携のパートナーを探していた。そのような状況のなかで、日本との交渉も始まったのである。

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『日欧EPA苦戦の背景
 しかしエコノミスト誌(09年9月3日号)によれば、二国・地域間協定が複数存在し(特にアジアに多い)、異なる基準や規則が錯綜している場合(これを「スパゲッティボウル現象」という)、貿易を促進する効果はほとんどないことが証明されているという。

 そのため最近ではアジアでも、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)や地域的な包括的経済連携(RCEP)といった多国間地域協定が締結されている。米国・EU間のTTIPの交渉の際には、大衆の猛烈な反対もあった。一方、日EU経済連携協定は、安倍晋三前首相とEUのユンケル委員長の間で交渉が進められ、19年に発効に至った。

 ところがふたを開けてみると、多大な期待に反する結果だった(編集部注・発効翌年の欧州委員会発表では、19年2~11月の10カ月間における貿易額について、EUの日本向け輸出額の増加は前年同期比で6.6%、EUの日本からの輸入額増加は6.3%であった〈20年3月、ジェトロ短信〉)。11年に日本が韓国と自由貿易協定を締結した際に、当初およそ35%も貿易量が増加したのとは大違いである。

 実際、この協定の交渉時にはすでに、両者が重視する部分の違いが明らかになっていた(日本側は関税を、EU側は非関税障壁を重視)。これは、両者の歴史に基づく古くからの関心事の違いを反映している。島国だった日本は、外国に強制的に開国させられるまで、数世紀にわたり鎖国していたため、のちには「独自性」(日本人論によく見られる)の保護を求めるようになった。

 それに対してEUは、国境を開放し、国の相違を調和させることを存在理由としている。こうした背景の相違から、交渉は複雑化した。関税や割当制(日本から見たEUの「国境障壁」)については相互授受の交渉の場で容易に数値化できるが、さまざまな非関税障壁(製品規格など)が貿易に及ぼす影響(EUから見た日本の「国内障壁」)については明確に数値化できないからだ。非関税障壁に関してはさらに、公共調達や競争に関する法律も重要な問題になる。

昨年10月、日英経済連携協定に署名した、茂木敏充外相(右)と英国のトラス国際貿易相 (KYODO NEWS/GETTYIMAGES)
重要なのは「汎地球的」ルール
 もちろん、デヴィッド・リカードの言う貿易における「比較優位」の原則(編集部注・貿易においては自国の得意な生産に特化したほうが効果的)は、相違から生まれる利益に基づく。だが最近になって、輸入(類似製品の輸入も含む)を通じて競争やイノベーションを高めるというヨーゼフ・シュンペーターの主張(「共争」)がヨーロッパで優勢になりつつあり、徐々に東アジアにも広がっている。

 この「共争」や「比較優位」は、FTAによる二国間や多国間の国益のみに左右されない公平な条件下の世界市場でこそ、その効果を発揮する。新型コロナウイルスのパンデミックで明らかになったように、グローバル化がもたらす恩恵により、あらゆる経済圏の相互依存は劇的に高まっている。もはや、多大な損失を被ることなくこの流れを逆行させることなどできない。世界に張り巡らされたインターネットに象徴されるこの相互依存関係をどう育むかは、グローバルな解決策を必要とするグローバルな問題である。

 そのためには、主権国家だけでなく、GAFAやBATX(編集部注・中国の四大IT企業のバイドゥ、アリババ、テンセント、シャオミ)などの大企業や市民社会など、あらゆる関係者がさまざまな意見を比較検討する議論に積極的に参加し、二国間・多国間・地域間という枠組みを飛び越えた「汎地球的(オムニラテラル)」(omnilateral)ルールが必要だ。万人による万人のための枠組みが必要とされている。

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『column

日本とEUは新時代の真なる戦略的パートナーになれるか?
1970年代、難題を抱えていた日欧の貿易関係。多くの障壁を超え、今後は米中を巻き込む主導的な役割が求められている。

渡邊頼純(関西国際大学国際コミュニケーション学部長・教授)

 1978年、ブリュッセルを訪問した福田赳夫首相(当時)は対日貿易赤字の拡大に悩む欧州共同体(EC=欧州連合〈EU〉の前身)首脳からの厳しい批判に直面した。続いてEC各国を歴訪した経済団体連合会の訪欧団も先々で同様に対EC貿易黒字の削減と日本市場の開放を強く求められた。

 翌年にはECの行政府に相当する欧州委員会が対日関係に関する初めての報告書において、「日本人は働きすぎの労働中毒患者(ワーカホリック)でウサギ小屋(ラビット・ハッチ)に住んでいる」と揶揄した。

 86年9月、関税貿易一般協定(GATT)のウルグアイ・ラウンドを立ち上げる閣僚会議で、ECは交渉項目の一つとして「利益の均衡」を取り上げるべきと訴えた。その核心は「日本は一方的にGATT体制から利益を得て、自らの市場は閉ざしたまま欧米の市場を席巻している、そのような不均衡は是正されるべき」という主張であった。幸い日本代表団の効果的な反対キャンペーンが奏功し、多国間交渉の中でECがシステマティックな対日輸入制限をルール化することは回避できた。

 70年代後半から日欧(以下、日EU)間にはさまざまな貿易摩擦が存在した。日本が一方的に自動車や家電製品、エレクトロニクス関連商品を欧州市場に輸出する一方、EU側は自動車はもちろん、チーズやバター、ワイン、チョコレートに至るまで日本市場への売り込みに苦労していた。自動車は関税がゼロであったため、EU側は問題は関税ではなく関税以外の措置、いわゆる非関税障壁にあると主張、軽自動車に対する軽減税率や車検制度などをやり玉に挙げた。

 日本政府が薬品についてEUの治験データを信用せず、あくまでも日本基準のテスト結果を求めるなどしたため、日本は非関税障壁のデパートのように言われた。今でも日本との通商問題が生じると「非関税障壁のせいだ」と言えば皆が納得する傾向があるのには閉口する。日本でのビジネスがうまく行かない時に欧州のビジネスマンがこのイクスキューズを使えばそれで良しとされた時代が長く続いたのである。

希望のEPAとSPA

 そのような日EU間で、2019年2月に自由貿易協定(FTA)である日EU経済連携協定(EPA)が発効した。世界の国内総生産(GDP)の約3割、貿易で約4割をカバーするメガFTAが誕生した。規模だけでなく、米国のトランプ大統領(当時)による保護主義が世界を覆いつつあった時に、あたかもそれに挑戦するかのようにこのメガFTAが合意された。トランプ氏の政策に対するいわばアンチテーゼとなった。

 またEPA発効だけでなく、政治協力を志向する戦略的連携協定(SPA)が締結されたことも意義深い。日EU双方は、民主主義、法の支配、人権など普遍的価値を共有することを確認しており、EPAとあいまって世界と地域の平和、安定および繁栄にむけて互いに協力する枠組みをもったことになる。この枠組みを通じて日EUの協力が深化することで、米国と中国の間で繰り広げられる「覇権競争」に第三の道を提示することが期待されている。

 日EUが共によって立つのは多国間主義(マルチラテラリズム)である。米国も中国も引き込んで行くことで日本もEUも「米国か、中国か」というダイコトミー(二分法的論理)から解放される。そこに日EUパートナーシップの戦略的価値がある。パーペ氏の主張するオムニラテラリズム(汎地球主義)はその延長線上に存在している。

Wedge4月号では、以下の特集を組んでいます。全国の書店や駅売店、アマゾンなどでお買い求めいただけます。 http://wedge.ismedia.jp/ud/wedge/release/20210320

■「一帯一路」大解剖 知れば知るほど日本はチャンス

PART 1 いずれ色褪せる一帯一路 中国共産党〝宣伝戦略〟の本質
PART 2 中国特有の「課題」を抱える 対外援助の実態
PART 3 不採算確実な中国ラオス鉄道 それでも敷設を進める事情
PART 4  「援〝習〟ルート」貫くも対中避けるミャンマーのしたたかさ
PART 5 経済か安全保障か 狭間で揺れるスリランカの活路
PART 6 「中欧班列」による繁栄の陰で中国進出への恐れが増すカザフ
COLUMN コロナ特需 とともに終わる? 中欧班列が夢から覚める日
PART 7 一帯一路の旗艦〝中パ経済回廊〟
PART 8 重み増すアフリカの対中債務
PART 9 変わるEUの中国観
PART10 中国への対抗心にとらわれず「日本型援助」の強みを見出せ』

G20、IMF資産6500億ドル増額 為替で「従来の考え明確化」

https://www.nippon.com/ja/news/reu20210408KBN2BU2BY/

『(検索コードを追加して再送します)

[東京/ローマ 8日 ロイター] – 20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議は7日、新型コロナウイルス禍で打撃を受けている国々を支援するため、国際通貨基金(IMF)の準備資産である特別引き出し権(SDR)を6500億ドル増額し、新たに配分する方向で合意した。

共同声明では「新型コロナの世界的大流行(パンデミック)に伴う課題に対処するため、脆弱な国々への支援をさらに強化する」とした上で、必要な限り財政や経済的な支援を維持すると改めて表明。IMFに対し「準備資産を補うという長期的な世界のニーズに応えるため、6500億ドルの新規SDRの一般割り当てについて包括的な提案を行う」よう求めた。

また、最貧国を対象とした債務支払猶予イニシアチブ(DSSI)の期限を年末まで半年間再び延長することでも一致。大手ハイテク企業など多国籍企業に対する法人税の世界的な最低税率導入については、経済協力開発機構(OECD)の取り組みを踏まえ、7月までの合意を目指すとした。声明では、トランプ前米政権時に削除された「保護主義との闘い」の文言も復活した。

為替については「強固なファンダメンタルズや健全な政策は、国際通貨システムの安定に不可⽋」とし、「為替レートは根底にある経済のファンダメンタルズを反映することに引き続きコミットし、為替レートの柔軟性は経済の調整を円滑化しうることに留意する」と明記した。

さらに「外国為替市場の動向に関して引き続き緊密に協議する。為替レートの過度な変動や無秩序な動きが、経済及び⾦融の安定に対して悪影響を与え得ることを認識する」との認識も盛り込んだ。引き続き「通貨の競争的切下げを回避し、競争⼒のために為替レートを⽬標としない」とした。

麻生太郎財務相はG20後、記者団に対し、共同声明に盛り込まれた為替に関する文言について、経済のファンダメンタルズを反映させるべきとする「従来の考え方を明確化した」と説明した。

DSSIの再延長に関しては「延長されたことを歓迎するとともに、(DSSI後の債務措置の)共通枠組みに中国国家開発銀行を含め、すべての債権者に参加してもらうことが必要」と述べた。国際開発協会(IDA)の前倒し増資検討では「12月までの合意を含め、G20が主導的役割を果たすべきと申し上げた」とした。

また、法人税の国際最低税率導入について、「法人税の引き下げ競争に歯止めかける観点から重要と申し上げた」と語った。』

中国で「48万円のEV」が大ヒット、裏にある納得の理由。

中国で「48万円のEV」が大ヒット、裏にある納得の理由。なぜ“突然”売れ始めたのか
https://www.sbbit.jp/article/cont1/56804

『2020年後半から、中国で突如として電気自動車(EV)が売れ始めている。その背景には、コロナ禍を契機にした意識とライフスタイルの変化がある。市場をリードしているのは、「代歩車」と呼ばれる小型で低価格のEV。ただ、テスラなどの400万円前後の高級車も売れている。代歩車では「クルマの玩具化」、高級車では「クルマのデバイス化」が売れる鍵になっている。中国政府が掲げる「2025年にEV化率20%前後」までには、まだまだ乗り越えなければならない課題はあるが、目標達成への道筋が確実に見え始めている。

ITジャーナリスト 牧野武文

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中国のEVの好調ぶりをリードする「宏光MINI EV(ホングワンミニ EV)」。「約48万円」という驚きの価格で、生産が追いつかないほど大ヒット商品になっている
(出典:上汽通用五菱)

<目次>

中国で「突如として」売れ始めたEV
「EVを買って後悔」、消費者の心は離れていたのになぜ?
EVの欠点を打ち消せたワケ
約48万円のEVが大ヒット、「クルマの玩具化」が進行中
テスラなど400万前後でも売れるEV、カギは「デバイス化」
「2025年に20%前後」達成も見えてきた

中国で「突如として」売れ始めたEV

 中国で2020年7月から電気自動車(EV)を中心にした新エネルギー車が売れている。その事実を多くの中国メディアが「突如として」という形容詞を使って報道している。

 自動車産業の業界団体である乗用車市場信息聯席会(CPCA)の統計によると、2020年2月から6月まではコロナ禍の影響により、新エネルギー車の販売台数は前年割れとなっていたが、7月から売れ始め、中国政府が事実上の新型コロナ終息宣言を行った9月以降、記録を更新し続けている。

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2020年の前半は、コロナ禍の影響で、前年割れが続いたが、7月から前年超えとなり、9月以降は販売記録を更新し続けている
(出典:乗用車市場信息聯席会(CPCA)の統計より作成)

 新エネルギー車とは、電気自動車(EV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)、ハイブリッド車(HEV)、その他の新エネルギー車の総称だが、85%程度がEV、15%程度がPHEVでほとんどを占める。

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 コロナ前、中国の自動車市場、新エネルギー車市場の前途は明るいものではなかった。自動車全体は、2017年の2887.9万台をピークに減少傾向が続いている。一方、これに入れ替わるようにして増えるはずだった新エネルギー車も2019年は前年割れとなり、EVシフトに黄色信号がともった。それが2020年後半の需要急増で、2020年は136.7万台と記録を更新することになった。

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ガソリン車を含めた自動車販売全体は、2017年をピークに下降の一途をたどっている。新エネルギー車(乗用車)の販売台数も2019年に前年割れとなり、EVシフトに黄色信号がともった
(出典:自動車は、中国汽車工業協会(CAAM)の統計より作成。新エネルギー車は、乗用車市場信息聯席会(CPCA)の統計より作成)

「EVを買って後悔」、消費者の心は離れていたのになぜ?

 突如としてEVが売れ始めた理由は、何よりもコロナ禍による消費者の意識とライフスタイルが変化したことが大きい。他人と接触することなく移動できるマイカーという移動手段が再評価されている。

 コロナ禍以前、消費者の自動車に対する関心は薄れていた。特に若者の車離れが進んでいた。中国の若い世代は1日に7.5時間もスマートフォンを使うとも言われる。運転をする時は、スマホが使えないというのが最大の問題だった。

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 一方で、公共交通はQRコードやNFC(非接触通信)を使ってスマホで乗れるようになり、シェアリング自転車やタクシー配車、ライドシェアもスマホから利用でき、簡易的なMaaS(マース)環境が実現できている。

 さらに、大都市では、曜日によってナンバー末尾による乗り入れ規制、深刻な駐車場難などの問題もあり、多くの若者が公共交通を使って、スマホを使う時間にあてたいと考えるようになっていた。

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 また、EVは航続距離の問題、バッテリー発火事故に対する不安などもあり、ガソリン車もEVも売れないというのが、コロナ前の中国における車市場だった。

 中国の自動車関係メディアは、「EVを買って後悔している」というオーナーの声を頻繁に取り上げている。最大の理由は、自動車特有の自由さが失われることだ。

 ガソリン車であれば、「今日は天気がいいから山の方に行ってみよう」という気ままなドライブが楽しめる。しかし、EVではそうはいかない。事前に、充電ステーションの場所を調べておき、ドライブルートをある程度決めておかないと、バッテリー切れで立ち往生することになる。多くのオーナーが「遠出をする回数が減った」と言う。

【次ページ】EVの欠点を打ち消せたワケ
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EVの欠点を打ち消せたワケ

 これがコロナ以降、変わった。中国では新型コロナは終息したものの、長距離移動は制限がかけられ続けている。多くの都市で、省外などの長距離移動に関しては、出発7日以内に検査を受けて陰性証明を取得することや、帰ってきてからは7~14日間の自己隔離を、接触頻度の高い公務員や教員に課している。

 このような状況により「内循環」と呼ばれる現象が起きている。本来は、貿易の外循環と国内経済の内循環の二本立てで経済を回復させていくという意味だが、移動制限のない同一省内、市内でのレジャーで地元経済を回す意味でも使われる。旅行アプリ「飛猪(フリギー)」の春節休みの間の観光地情報検索ランキングを見ると、「上海ディズニーランド」「霊隠寺(杭州市)」「広州長隆野生動物世界」など、大都市を抱えている観光地が上位にきている。

 この他、フィールドアスレチック施設やスポーツアクティビティ施設なども人気で、多くの人が近隣の観光施設を訪ねるようになっている。当初は仕方なくだったのかもしれないが、それが、近隣スポットを再発見することにつながっている。

 このような近距離移動であれば、EVの航続距離の問題はあまり考える必要がなくなり、EVの欠点が打ち消される。アフターコロナの意識変化とライフスタイルの変化が、EVの特性とうまく噛み合うようになったのだ。

 EVとガソリン車は、見た目は似ているが、本質的には異なるツールで、使い方も異なったものになるはずだが、私たち消費者はそうは考えない。ガソリン車でできることで、EVではできない点を見つけては、それをEVの欠点として考えがちだ。それは、スマートフォンをPCと比較して、「画面は小さいし、キーボードもついていない」と嘆くようなものだ。

 多くの自動車関係メディアが、EVメーカーの企業努力も評価している。コロナ以前は、どのメーカーもセダン1車種というパターンが多かった。これでは、消費者はEVと同クラスのガソリン車を比較検討することになる。どうしても、EVの欠点が目立ってしまう。

 しかし、2020年になると、どのメーカーも、セダン、SUVなど数車種をそろえるようになった。すると、消費者はEVの車種、EVメーカー間で比較検討をすることになる。EVというカテゴリーの中で、車種やグレードを選んでいけるようになった。

約48万円のEVが大ヒット、「クルマの玩具化」が進行中

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五菱新能源鄭州体験センターでは、中国版Tik Tok「抖音」(ドウイン)などでライブコマースをしている。購入予約ができ、優待クーポンも配信されている。他の販売店も、それぞれにドウインや快手(クワイショウ)などのショートムービー、SNSでの配信を積極的に行っている
 EVの好調ぶりをリードしているのは、A00級と呼ばれる小型車と、中型車以上の2つのカテゴリーだ。

 A00級は、ホイールベースが2.0~2.2mという小型車で、日本の軽自動車(ホイールベースは1.8~2.5m程度)とよく似たクラスのEVだ。

 このクラスでは、上汽通用五菱の「宏光MINI EV(ホングワンミニ EV)」が、生産が追いつかないほどの大ヒット商品になっている。カタログ航続距離は約120kmと短いが、2.88万元(約48万円)という価格が歓迎されている。販売店のサイトでは、頭金0.86万元(約14万円)、月々602元(約1万円)の36回払いのプランも用意されている。

 エントリーモデルでは、暖房のみで冷房がついていないなど、いろいろ割り切ってはいるが、上汽通用五菱は米ゼネラルモーターズ(GM)、上海汽車、五菱の合弁会社であるため、品質に関してもGMの技術が活かされている。

 外装、内装はシンプルだが、デザインレベルは高い。それが若者に受け入れられ、大胆な改造がちょっとしたブームになっている。アニメキャラクターをあしらったいわゆる「痛車」や、六輪車に改造した宏光MINI EVが、SNSやTikTokに大量に公開されている。まさに、ミニカーの改造と同じで、それを実車で行っている感覚だ。いうなれば、「クルマの玩具化」が起きている。

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五菱新能源鄭州体験センターでは、中国版TikTokを通じて、宏光MINI EVの改造車のムービーを盛んに配信している。改造が一種のブームになっており、各地で改造車オーナーの集会や、SNSへのアップロードが行われている

 このような小型車は、「代歩車」と呼ばれている。「歩く代わりに使う車」という意味だ。宏光MINI EV以外にも、長城汽車の「欧拉黒猫」(猫をモチーフにした外観デザイン)、長安汽車の「奔奔EV」、合衆汽車の「哪吒V」(SUVスタイルの小型車)なども人気になっている。このような小型EVが、公共交通の発達していない地方都市では通勤、買い物用に、大都市では改造アイテムとして売れている。

テスラなど400万前後でも売れるEV、カギは「デバイス化」

 新エネルギー車市場を台数ベースでリードしているのは代歩車だが、販売額ベースでけん引をしているのが、中級車から高級車のカテゴリーのEVだ。このクラスでは、テスラのモデル3を筆頭に、テスラ、BYD、ニーオの3社に人気が集中している。テスラは25万元(約410万円)から、BYDは22.98万元(約380万円)から、ニーオは35万元(約580万円)からと決して安くない。だが、それが売れている。その鍵になっているのが「クルマのデバイス化」だ。

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大ヒット商品となっている宏光MINI EVを筆頭に、黒猫、奔奔などの代歩車が健闘している一方、テスラ、BYD、ニーオなどの中型車から高級車のクラスのEVも売れている
(出典:乗用車市場信息聯席会(CPCA)の統計より作成)

 人気の的になっているのが、3社ともに「オートパイロット機能」だ。テスラのモデル3にオートパイロットオプションをつけると6万元(約100万円)の追加出費となるが、多くの人がこのオプションを選択する。BYDもDiPilot、ニーオもNIO Pilotというオートパイロット機能を搭載し、一定条件下でのオートステアリングなどが可能になっている。

 テスラのモデル3では、ドライバーポジションを10人まで記憶する機能がある。ワンタップで、その人のシート位置、ミラー位置などに設定してくれる。乗り降りするときは、シートを下げ、ハンドルを引っ込め、乗り降りしやすくしてくれる。さらに、話題になっているのが、スマートサモン機能(召喚機能)だ。駐車場などで、スマホから呼び出せば、自動運転で車の方が自分の目の前にきてくれるというものだ。

 今、EVを購入している消費者は、本革シートや天然木ステアリングではなく、排気量や空力特性でもなく、こういう「機能」に高級感を感じている。

 また、大型タッチディスプレイを搭載し、5G通信、車内Wi-Fi、音声操作によるSNS、音楽、映像サブスク、ARナビ(カメラ撮影した実風景にナビルートをオーバーラップ表示する)も常識になっている。機能を割り切って、価格を抑えている代歩車ですら、専用スマホアプリからバッテリー残量を見られたり、上位モデルでは音声操作可能なタッチディスプレイが装備されている。

 Z世代(中国では95年以降生まれの20代前半)に対して行った、自動車に関するアンケート調査「中国Z世代自動車購入傾向調査」(OPPO他)には、面白い設問がある(調査時期は2020年10月)。それは「あなたにとっての自動車を表すのに適している言葉を選んでください」という質問で、「移動ツール」という言葉が最も多くなった。

 しかし、他の世代の回答よりもZ世代の回答が多い順に並べると、1位が「テクノロジーデバイスのひとつ」、2位が「スマート機能のある移動空間」になる。つまり、Z世代は、自動車を自動車ではなく、スマホの延長線上にあるデバイスとして見ている。「走るスマホ」だという認識なのだ。

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「あなたにとっての自動車を表すのにふさわしい言葉は?」を選択肢から選ぶ設問の答えで、Z世代の回答割合が他世代に比較して大きいものから並べた
(出典:「中国Z世代自動車購入傾向調査」(OPPO他)より作成)

「2025年に20%前後」達成も見えてきた

 EVが「突如として」売れたのは、コロナ後の消費者の意識の変化と、EVの特性がうまくシンクロをしたことも大きいが、EVメーカーが車種を増やし選択肢を広げ、デバイス化を進めるなどの努力をした面も大きい。各EVメーカーは、ガソリン車とEVは似て非なるものと位置付け、EVを商品として成熟させようとしている。

 2020年11月、国務院は「新エネルギー車産業発展規則の配布について(2021-2035)」を発表し、その中で新エネルギー車販売割合目標を「2025年に20%前後」としている。

 新エネルギー車(乗用車)を自動車販売台数で割ったものを仮に「EV化率」(注1)として計算してみると、現在のEV化率は5.40%となる。あと5年で、20%に乗せるためには、さらにEVシフトを加速させていく必要がある。

注1:商用EVの販売台数の統計がないため、ここで算出した「EV化率」は公式なものではなく、あくまでも目安となる。

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分子に「新エネルギー車乗用車販売台数」、分母に「自動車販売台数」として計算した「EV化率」の推移。2018年から自動車販売台数が減少し始めたため、EV化率があがり、2020年後半の販売増により、さらにEV化率があがった
(出典:中国汽車工業協会(CAAM)、乗用車市場信息聯席会(CPCA)の統計より作成)

 EVが売れていると言っても、それは20台に1台程度のこと。まだまだ、新しい物好きな人が代歩車を買い、経済的に余裕のある人がテスラなどのEVを購入している状態にすぎない。これを5台に1台がEVの状態にするには、一般の消費者にEVをいかに普及させるかにかかっている。それにはまだまだいくつものハードルを越えなければならない。とは言え、中国で本格的なEVシフトが始まる起点になる可能性は十二分にある。

 特に注目をしておく必要があるのは、2019年までの中国のEVシフトは補助金やEV製造割合の義務付けなど政策誘導による部分が大きかったが、アフターコロナのEVシフトは、消費者が自らの意思で選び始めているということだ。あるメディアは、このEV需要の急増は「突如として」ではなく、EVメーカーの企業努力が実り始めたもので、必然なのだと論評している。

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過去は参考にならず…大どんでん返しのバブル崩壊が到来?

過去は参考にならず…大どんでん返しのバブル崩壊が到来? 富を拡大するインテリジェンス2.0(日刊ゲンダイ)
http://www.asyura2.com/21/hasan135/msg/261.html

『今、世界はバブルだと言う人と、バブルではないと言う人に分かれますが、現在は今までのバブルとは違うバブルだと判断しています。

 過去のバブル期には経済の熱狂と株式や不動産の相場の熱狂がありました。

 景気が過熱し、株式は適正価格から離れて価格上昇しましたが、今回のバブルは熱狂のないバブルです。

 経済的にも株式市場にも熱狂はなく、中央銀行の無制限の金融緩和(量的緩和)で熱狂的に株価と景気を支えています。

 株価が割高か割安かを判断するのは株価収益率(PER)です。

 昨年の春以降、コロナ騒動で各社の業績が落ちている中、株価が上昇してコロナ以前より高値になっているので日経平均のPERは23倍程度まで上昇しバブル水準になっています。

 そして株のバブルより、債券バブルの方が顕著です。

 破綻の可能性がある信用度の低いジャンク債まで買われています。10年ギリシャ国債は破綻懸念時の金利は40%を超えていましたが、現在の金利は0・87%で10年米国債より金利が低いです。

 危険度が高い債券がリスク度外視で買われているのです。

株式は管理相場

 今回の株のバブルは中央銀行が無制限の金融緩和(量的緩和)で株を買っていることが原因ですが、これは株価が管理相場になったといえます。

 景気も過熱感がないし、株価が下落しそうになったら国が買い支える管理相場なのでバブルに見えないのかもしれません。

 国(中央銀行)が支えることができなくなったらバブル崩壊で破壊的です。

 インフレになったら金融緩和ができず、株価を支えることもできなくなりますがインフレ傾向にあります。

 今回のバブルの崩壊の処理は普通ではできないので、ダボス会議ではグレートリセットという表現をして、金融や国と国の関係を大変革しようとしているのだと思います。

 常識が大きく変わる時です。

 グレートリセット時の立ち回り方を誤ると、今までのバブル崩壊の被害の比では済みません。

 今までは株や不動産を現金化しておけば何も問題なかったのですが、今回のグレートリセットという名のバブル崩壊は現金でも危険です。

 今の相場は過去の経験が参考にならずにプロが確信を持って間違えると思います。

 同時に今の相場は今の延長線上に未来はなく、大どんでん返しなども想定されるため、最近12年間に投資の世界に入って今の相場に乗っている人たちも足をすくわれ、大きなダメージを受ける可能性が高いと思います。

 知識を得て準備した人に富が移動する時なので、今後の相場を見ていき富の拡大を狙っていきましょう。』

アフリカ諸国、EV生産目指す エジプト「22年にも」

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR22BZX0S1A320C2000000/

『【カイロ=久門武史】アフリカで電気自動車(EV)生産を目指す国が広がっている。エジプトは来年にも始めるとし、ウガンダはEVバス量産を狙う。ともに中国企業と組む。EVは新興国が一足飛びに国産車を育てる手段になる。中国企業がアフリカの成長市場に浸透する糸口にもなる。

エジプトの国営自動車会社ナスルは1月、中国の東風汽車の傘下企業とEVの生産協力で合意した。東風のEVセダン「E70」を首都カイロ郊外のナ…

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東風のEVセダン「E70」を首都カイロ郊外のナスルの工場でつくる計画だ。同社は1960年設立で、伊フィアットの乗用車を組み立てていたが休止状態にある。

国営企業を統括するエジプトのヒシャム・タウフィーク公共事業相は日本経済新聞の取材に、同工場でのEV生産開始は「来年半ば」との見通しを示し、まず年2万5千台を目指すとした。バッテリーなど基幹部品は輸入するが「国産部品を50%使う」と語った。「我々のデザインで車をつくるチャンスで、いずれ自国のブランドも非現実的ではない」と述べた。

アラブ圏で最大の1億人を抱えるエジプトは人口が年2%のペースで増えるアフリカ有数の市場だ。日本や韓国、欧州のメーカーが現地生産しているが、国産ブランドは育っていない。

一方、アフリカ東部の内陸国ウガンダでは、国営の新興自動車会社キイラがアフリカ初のEVバス量産を目指している。ロイター通信によると、中国恒天集団から技術移転を受けている。同社は傘下企業がEVバスを手掛け、輸出実績もある。

EVはアフリカ諸国にとって産業振興だけでなく、大気汚染の軽減につながる。人口増と経済成長で交通渋滞が悪化し、排ガスによる健康被害は無視できない。

ケニアの首都ナイロビではEVタクシーが走り始め、モロッコでは国産の充電スタンドが登場した。ルワンダでは電動バイクをつくるスタートアップ企業が現れた。

アフリカでエンジンで走るクルマの生産は、欧州や日本の自動車大手が先行した。所得水準の高い南アフリカや欧州市場に近いモロッコに工場が集まり、ガーナなどアフリカ西部で生産するメーカーも増えてきた。中国勢は知名度が低く、EVは出遅れを挽回する手掛かりになる。

「彼らは準備が整っていた。欧州勢はそうではなかった」(タウフィーク氏)など、中国企業の意思決定の速さを評価する声は多い。他方で「後になってコストを詰める点が出てくるのでは」との見方も日本企業からは上がる。中国のEV大手、比亜迪(BYD)は17年にモロッコにEV工場を建設する意向を示したが、実現していない。

アフリカでは今年1月、大陸全体を共通市場にするアフリカ自由貿易圏(AfCFTA)が始動した。関税撤廃を掲げており、域内全体を視野に入れて製造拠点を構える外国メーカーは増える可能性が高い。

EVはエンジンが要らないため、参入障壁が低いとの期待もある。半面、アフリカで普及するには、電力供給の安定や充電設備の整備が課題だ。関税や補助金の見直しで消費者を誘導する仕掛けも欠かせない。

さらに先進国が地球温暖化対策でEVへの移行を急げば、だぶつくエンジン車の中古車が安くアフリカに流れ込む。結果として高値のEVが売れにくくなるとの懸念がある。

デジタル通貨、新興国が主導 世界の6割が実験へ デジタル通貨元年㊤

https://www.nikkei.com/article/DGXZQODF312L40R30C21A3000000/

『電子的にお金をやり取りするデジタル通貨の実用化が視野に入ってきた。世界の中央銀行の6割が実証実験に着手し、先行する新興国の動きに日米欧も重い腰を上げつつある。民間の金融機関も法人顧客や海外向けサービスでしのぎを削る。流通コストの低下につながるデジタル通貨のうねりは、米ドルを頂点にした通貨覇権を揺さぶる可能性も秘める。
クリックするとビジュアルデータへ https://vdata.nikkei.com/newsgraphics/digital-currency/

日銀が実験スタート よく分かる「デジタル通貨」

カンボジア全土のカフェでは「ここでバコンが使えます」と書かれた赤い看板が目に付くようになった。「バコン」は2020年10月に発行が始まったデジタル通貨だ。スマートフォンに専用アプリをダウンロードし、電話番号やQRコードを使って店頭での支払いに利用できる。個人と銀行口座間の送金も可能で、送金手数料はかからない。バコンは中央銀行が自ら発行・管理するデジタル通貨(CBDC)。現金と同じ法定通貨のため原則どこでも使える特徴がある。

国際決済銀行(BIS)が1月公表した65カ国・地域の調査で、20年時点でデジタル通貨を研究する中銀のうち実証実験の段階と答えた割合は約60%と1年前の42%から伸長した。実用化への歩みがさらに進む21年は「デジタル通貨元年」となる。

カリブ海8カ国・地域の金融政策を担う東カリブ中央銀行(ECCB)は3月末にデジタル通貨「Dキャッシュ」の発行を試験的に始めたと発表した。2年間の研究期間を経て、実用化に踏み込む。中銀主導のデジタル通貨は新興国の発行意欲が強い。固定電話の整備が遅れていた新興国で一気に携帯電話が普及したようにATMや銀行店舗など金融インフラが整っていない国ほど、デジタル通貨を導入する意義は大きい。その狙いには誰もが金融サービスを利用できるようになる「金融包摂」がある。

カンボジアは国民の7~8割が銀行口座を持たないとされる一方、携帯電話の普及率は150%に達する。銀行支店がない農村部でも、スマホを使った送金などができる。「金融政策のコントロールが効きやすくなる」。カンボジア国立銀行のチア・セレイ統括局長はこんな期待を寄せる。同国では預金の8割以上が信用力の高い米ドル建てだ。自国通貨の流通が少ないと、金利や通貨供給量の調節で景気・物価に働きかける金融政策の効力が弱まる。CBDCを通貨主権の回復につなげる思惑もちらつく。

長い人類の歴史で、通貨の形態がここまで劇的に変わったことはない。リアルのくびきから解き放たれた通貨のデジタル化は既存の秩序を揺さぶり、国民の暮らしから国際通貨の勢力図までを変える可能性がある。

昨年12月、中国の蘇州市で「デジタル人民元」の実証実験に10万人が参加した。通信環境が悪くても送金や決済に使えるかを試し、通貨としての機能を果たせるかを検証している。22年の北京冬季五輪までにCBDCを正式発行しようと実験を繰り返す中国。狙うのは国内の統制強化とされる。利用履歴やお金の流れを捕捉しやすいデジタル通貨を国が発行・管理すれば、国民の監視を強めることができる。

デジタル人民元はより高度な条件での実験を重ねている=ロイター
人民元の国際化という国家戦略にも沿う。中国人民銀行は2月、香港やタイ、アラブ首長国連邦(UAE)の中銀とデジタル通貨の共同研究を始めると発表した。目指すのは海外と相互にデジタル通貨を送金し、越境決済できるようにする仕組みづくり。基軸通貨のドル1強を突き崩す動きにも映る。

ドルを頂点にユーロや円など世界で流通する通貨を抱える日米欧はCBDCに慎重な姿勢を続けてきた。資金洗浄(マネーロンダリング)に使われるリスク、既存の銀行システムとの共存といった課題も多く、新興国ほどの利点を見いだせなかったためだ。

潮目が変わったのは19年。デジタル人民元に加え、世界で30億人規模が利用する米フェイスブックがデジタル通貨「リブラ」(のちにディエムに改称)の構想をぶち上げたのがきっかけだ。新たな「国際通貨」が生まれると、通貨主権が揺らぎかねない。中銀が独占してきた通貨発行益を奪われるリスクもある。

日米欧は中銀によるCBDCの共同研究グループなど国際協調の枠組みのなかで対抗策を練ってきた。デジタル通貨の技術や制度設計面で中国が国際標準を握り、後発組が不利になることへの危機意識も背中を押す。

日銀は5日から、CBDCがシステム上で機能するかを確かめる実証実験を始めた。3段階の実験の最初のステップと位置づける。欧州中央銀行(ECB)も年央をめどに「デジタルユーロ」事業を進めるかどうか結論を出す考えだ。もっとも、米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は3月に「プロジェクトを急ぐ必要はない」と語った。日米欧には既存の通貨システムを自ら崩すリスクをはらむCBDCをどこまで推進すべきか気迷いもある。

パウエルFRB議長はCBDCに慎重な姿勢をにじませる=ロイター
20カ国・地域(G20)の協議では、国境を越える送金のコストや利便性の改善に向けてCBDCを活用する案も浮上している。だが「新興国は乗り気な半面、国際通貨を抱える先進国は総じて消極的」と日銀関係者は打ち明ける。各国の思惑は交錯し、通貨覇権の行方は混沌としている。

【関連記事】
デジタル通貨、中国先行 米欧は金融安定を優先
中銀デジタル通貨 米中競争激化の兆し

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深尾三四郎
伊藤忠総研 上席主任研究員
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別の視点日本は民間デジタル通貨とのインターオペラビリティ(相互運用性)も確保したCBDCの社会実装を急ぐべき。

日本はデジタル化が急速に進む中国に加え、若者人口とSIMカードの普及枚数が多いアジアと近い。中国はCBDCとブロックチェーン(分散台帳技術)をスマートシティのインフラ基盤にしながら、サイバー空間を活用して自国民の経済活動を活発化させている。アジアでは若者が持つスマホを起点にした社会やビジネスのDXが進展し、キャッシュレスな民間デジタル通貨の普及が加速している。

暗号資産やデジタル通貨と相互運用可能なCBDCをワクチンパスポートと併せて普及させると、人の往来と経済を活性化することができる。
2021年4月6日 12:32 (2021年4月6日 13:38更新)

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梶原誠
日本経済新聞社 本社コメンテーター
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別の視点 「コロナ後、世界経済最大のリスクは主要通貨の暴落だ」。こんな話を米国の経営コンサルタントから聞きました。コロナ対策で各国の債務依存が強まり、通貨への信認が失われる恐れがあるとのこと。「ビットコインの高騰も、既存通貨に対する不信という側面がある」と顧客企業に話しているそうです。特定の通貨が暴落しても財産が守れるように、主要通貨のバスケットを裏付けにしたデジタル通貨の開発を進める民間研究者もいます。そんな通貨が普及すれば、中央銀行単独の影響力は落ちるでしょう。先進国の当局者もうかうかしていられません。

2021年4月6日 13:21 (2021年4月6日 13:33更新)
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韓国LGがスマホ撤退発表 技術流出懸念で売却を断念

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM050YV0V00C21A4000000/

『【ソウル=細川幸太郎】韓国LG電子は5日、スマートフォン事業から撤退すると発表した。外部への技術流出を懸念して売却を断念した。約3700人いるスマホ部門の人材は業績好調の家電やテレビ部門に転籍し技術を生かす。かつて日本の電機を追い込んだ韓国勢も中国企業の追い上げを受け、撤退戦を強いられ始めている。

【関連記事】

LG、CEOがスマホ撤退示唆か 「あらゆる可能性検討」
LG電子は北米や中南米、韓国中心に世界でスマホを販売。2020年12月期の販売台数は約2500万台で、売上高は5兆2171億ウォン(約5100億円)、営業損益は8412億ウォンの赤字だった。赤字は15年から6期連続で、この期間の累積赤字は5000億円規模に膨らんでいた。

7月末をメドに自社スマホの販売を終了する。LG電子は「スマホの競争激化で事業不振が続いており、主力事業に集中する」と撤退の理由を説明した。権峰?(クォン・ボンソク)最高経営責任者(CEO)は1月に「あらゆる可能性を綿密に検討している」と事業撤退の可能性について言及していた。

これまで国内生産の撤退や外部委託の活用などでコスト削減を進めたが、黒字化の道筋が見えなかった。事業を売却すれば自社のスマホ関連の特許が外部企業に渡ってしまうという懸念もあり、事業停止を決めた。スマホ部門の人員は家電やテレビなど他事業部への異動を進めるほか、業績が急拡大している車載電池を手掛けるLG化学でも受け入れるという。

LGのスマホ事業の売上高ピークは14年。当時は韓国サムスン電子や米アップルに次ぐシェアを確保していたものの、華為技術(ファーウェイ)や小米(シャオミ)、OPPO(オッポ)など中国勢の躍進に押される形で後退を続けていた。

中価格帯のスマホ市場で劣勢だったLG電子は1月の米家電見本市「コンシューマー・エレクトロニクス・ショー(CES)」でディスプレー画面を巻物のように伸縮可能な新型スマホを発表し、高価格帯にシフトする姿勢を示したばかりだった。

スマホ市場は上位5社のシェアが15年の55%から20年には70%となり、上位寡占が進む。技術革新の伸びしろが小さくなる汎用品(コモディティー)化が進むことで、シャープやソニーなど日本勢も含めて下位ブランドのシェア低下が続いている。

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鈴木一人
東京大学 公共政策大学院 教授
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分析・考察 スマホはアプリで製品が差異化されるデバイスになってしまったことで、付加価値を出すよりも価格競争が厳しくなった製品。サムソンのようなブランド力がないと、格安スマホと勝負するのはかなり難しくなる。LGは新しい技術を導入して差別化を図ったが、逆にそれが使いにくさにつながってしまったのではないだろうか。日本の携帯メーカーも技術に走ってガラパゴス化したが、韓国勢も同じ轍を踏んでいるような気がしてならない。製品のライフサイクルを考えると、こうなる運命なんだろうな…。

2021年4月5日 13:55いいね
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石川温
スマホジャーナリスト
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ひとこと解説 LGは、電池やディスプレイなど部材を独自に持っている中で、本来ならスマートフォンで他社と差別化できるはずだったが「ブランド」をうまく作れなかった点が敗因だったように思う。サムスン電子は「Galaxy」ブランドを作り、世界で売り、販売台数1位を誇る(もちろん、LGとサムスン電子と比べると販売力など企業の体力にはかなりの違いがある)。LGも数年前からブランドを立て直そうと動き出していたようだが、結局、名案が浮かばず、撤退に追い込まれてしまったようだ。

2021年4月5日 11:22いいね
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村山恵一
日本経済新聞社 本社コメンテーター
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別の視点 搭載するバッテリーなどキーコンポーネント進化の壁もあり、なかなか目新しさを打ち出せなくなったスマホ。一方で今年以降、テック大手などがAR(拡張現実)メガネを市場に投入すると注目されています。今後、スマホ事業とどう向き合っていくか。LG以外にも思案しているプレーヤーがいるのではないでしょうか。

2021年4月5日 12:24いいね
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梶原誠
日本経済新聞社 本社コメンテーター
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ひとこと解説 スマホというより、補助金など政府の力を背景とする中国勢と正面から競争することの厳しさを象徴するニュースです。家電で中国、韓国と競争を続けるパナソニックと、イメージセンサーなど独自市場の開拓に賭けたソニーの明暗もこうして分かれました。サムスンに対するLGのライバル心は激しく、LG幹部が展示会でサムスンの洗濯機を壊したとされる一件も話題になりました。でもそろそろ、違う道で勝負するときが来たと思います。

2021年4月5日 11:26いいね
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スズキの軽、電動化は「つなぎ」簡易HV EVは道半ば

https://www.nikkei.com/article/DGXZQODZ19BUS0Z10C21A3000000/

『スズキが急速に押し寄せる脱炭素の荒波に直面している。国内でも政府の方針を受けて、主力の軽自動車を2035年までに全て電動化することを迫られる。軽については簡易型のハイブリッド車(HV)を全車種に設定して当面を乗り切る考え。一方で、世界で勝ち残るには本格HVや電気自動車(EV)への対応が必須だ。機能の簡素化や低価格を強みとしてきたスズキの実力が試される。

「地球温暖化の問題は差し迫った危機。スズキとしても…

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スズキとしても脱炭素に向け協力していかなければならない。挑戦しよう」。2月に退任を発表したスズキの鈴木修会長は昨年末から社内でこう訴えてきた。菅義偉政権は20年12月下旬、35年までに全ての新車販売をHVやEVなどの電動車とする方針を発表。対象には軽も含まれる。2月24日の退任会見で鈴木会長は「若手のチーム力を利用して一気に30年や50年につなげる努力をしてもらいたい」と語った。

簡易型ハイブリッドを搭載するスズキの「スペーシア」
この一環としてスズキは今後、軽の全車種で「マイルドハイブリッド」と呼ばれる簡易型HVを用意する方針だ。低速時などにモーターがエンジンの駆動を補助することで燃費性能を高める。既に販売する軽の約5割に搭載しているが、残り半分にも搭載していく。

トヨタ自動車などが導入している「ストロングハイブリッド」と呼ばれるような本格HVほどの燃費改善効果はないものの、ガソリン車よりも10万円程度の価格の高さと比較的安価で導入できる。「EVなど本格的な電動車までのつなぎとしては現実解」(スズキ幹部)というわけだ。

スズキの主力商品である軽や小型車は電動化のハードルが高いとされる。EVなどに必要な電池やモーターは価格が高く、スペースも必要になる。特に軽の最大の強みである安さや車内空間が失われかねない。地方を中心に、電動化による値上げが消費者離れを招く可能性がある。

消費者がいかに価格に敏感かをスズキは知り抜いている。20年12月にフルモデルチェンジした人気の小型車「ソリオ」。16年に独自開発のストロングHVを初めて設定した車種だが、今回は外した。価格が簡易型HVよりも2割ほど高く、販売が伸びなかったためだ。

政府も簡易型HVを電動車に含めることを決定済みだ。スズキは現時点で軽の電動車を販売していない首位のダイハツ工業やホンダと比べると、一足先にハードルをクリアするかのようにもみえる。それでも、ある幹部は「いずれは来ると思っていた脱炭素の波が一気にやってきて難破しそうだ」と苦境を訴える。

世界の自動車市場ではこの1年で脱炭素の動きが加速した。新型コロナウイルス禍からの経済復興をめざす各国の補助金もEVシフトに拍車をかけた。国内販売で電動化をクリアできたとしても、スズキの世界販売の約2割にすぎない。現状では環境規制が世界でも進む欧州市場では、資本・業務提携しているトヨタから環境性能に優れるプラグインハイブリッド車(PHV)の供給を受けている。

ただ、トヨタに頼りすぎると自社の技術を磨く機会が失われるリスクもはらむ。ある幹部は国内の「ソリオ」ではあえて外した本格HVの技術についても「手放すことはあり得ない。性能を上げつつ、コストを抑える努力を続けるしかない」と語る。鈴木俊宏社長も「あくまで自社開発を進めていきたい」とする。

インドでは「ワゴンR」をベースにした小型EVでの走行試験を続ける
EV対応も道半ばだ。スズキの世界販売の5割を占めるインドでは、トヨタと共同開発したEVを20年に投入する計画で18年秋から走行試験を重ねてきた。ただ「充電インフラやニーズを見るとまだ投入すべき段階ではない」(幹部)と延期。電動化の環境が整っていないがゆえの合理的な判断とも言えるが、厳しい環境規制や他社との競争でEVを磨いている欧州や中国の自動車大手などと差がついてしまうという面もある。

中国ではいま、米ゼネラル・モーターズ(GM)などが出資する上汽通用五菱汽車の50万円程度の小型EV「宏光MINI」が飛ぶように売れている。価格帯はスズキがインドなどで販売するガソリン車と同水準。今後はこうしたEVとの競争を迫られるのは確実だ。

スズキは独自の設計技術などを強みに小型・軽量化や燃費性能を高めてきた。電動化でもこうしたお家芸を発揮できるか。今年で創立102年目の同社に大きな課題が突きつけられた。

(為広剛)

日経産業新聞の記事一覧へ https://www.nikkei.com/theme/?dw=18083101 

不二越、ベアリングをタイに集約 電動化が迫る生産再編

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGD268KC0W1A320C2000000/

『自動車用ベアリング(軸受け)大手の不二越は汎用品の生産を国内などからタイに集約する。自動車の電動化でエンジン需要が減り、エンジンに使う軸受け市場も縮む。拠点集約でコストを下げ、工作機械など車以外の顧客を開拓する。デンソーなどもエンジン関連事業の見直しに動いており、電動化にあわせた部品会社の生産再編が広がっている。

形や大きさなどの仕様が決まっている汎用品の生産をタイに移す。約100億円を投じ、タイ中部のラヨーン…

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約100億円を投じ、タイ中部のラヨーン県にある既存工場の近くに新工場を設ける。2022年2月に稼働させ、日本の富山事業所(富山市)や台湾の拠点から生産を移す。全社のベアリングの生産量のうちタイが占める比率を22年末までに4割と倍増させる。日本などの残る拠点は顧客の仕様にあわせた特注品をおもに手がける。

生産移管に伴い富山事業所の人員は契約社員の満期などにあわせ、200人ほど減る見通し。同社の有価証券報告書によると20年11月末の同事業所の従業員は臨時雇用者を含め約2200人だった。今後は耐久性や強度が高い特殊品の生産に集中する。

不二越が生産体制を再編する背景には、自動車業界の急速な電動化がある。英調査会社のLMCオートモーティブは、世界の自動車販売台数に占めるエンジン車の割合が20年の89%から30年には54%に低下すると予想する。

軸受けは機械の部品を滑らかに回転させる役割を持ち、自動車では主にエンジンや変速機の周辺で使う。エンジン車1台あたり100~150個程度使われており、電気自動車(EV)に切り替わると約3割減るとされている。

不二越の20年11月期の連結売上高2010億円のうち、軸受けは32%を占める。軸受けの6割は自動車用で、残りは工作機械など産業機械向けだ。生産集約などにより製造原価を2割以上引き下げ、産業機械向けの顧客を開拓。産業機械向けの比率を6割に引き上げる。中国製よりもなお割高とみられるが、信頼性などを踏まえれば優位性はあるとみる。

軸受け国内最大手の日本精工もEVなどで使う小型モーターや風力発電機向けを成長分野と位置づける。風力発電向けの大型製品は中国工場に今後3年間に最大50億円を投じて増産し、現地の発電設備会社に供給する。

電動化の影響は軸受けにとどまらない。動力源が複雑な部品機構を含む「エンジン+変速機」から「電池+モーター」に代わると、自動車の部品点数は約3万点から約2万点に減るとの調査もある。エンジンがなくなれば、燃料噴射装置やピストンの動きを支えるピストンリング、排ガス部品などが不要となる。

これに合わせ軸受け以外の部品会社も事業の見直しに動いている。デンソーは自動車向けの燃料ポンプ事業をグループ会社の愛三工業に移管する。電動化対応にあわせ、既存事業での重複を解消して生産や開発を効率化する。

独大手のコンチネンタルもガソリンやディーゼルなど旧来型のエンジン開発を30年までにやめる計画を表明済み。19年には電動化をにらみ、エンジンやモーターなどの動力機構を手がけるパワートレイン部門を分社化した。

もっとも電動化はモーターや電池などで新たな需要も生む。PwCの19年の調査では、40年の自動車部品市場のうちエンジンとトランスミッションが占める比率は19%と17年と比べ5ポイント下がる。一方、モーターや電池などの電動化部品は30年の9%から40年には13%へと高まる見通し。

日本電産はEV用駆動モーターを将来の主力事業と位置づけ、中国だけでなく欧州のセルビアでも約2000億円を投じる新工場の建設を計画する。EV用電池の主力であるリチウムイオン電池では、三菱ケミカルは主要4部材のひとつである電解液の生産能力を約5割引き上げる。旭化成も4部材のうち、セパレーターの増産に約300億円を投じる。

各国政府は脱ガソリン車政策を相次ぎ打ち出している。英国は20年秋に、ガソリン車とディーゼル車の新車販売を30年までに禁止すると発表。これまでからさらに5年早めた。中国も35年をめどに新車販売のすべてをEVやハイブリッド車(HV)などの環境対応車とする方針だ。東京都も30年までに都内で販売する新車すべてをEVやHVなどの電動車に切り替えることを目指す。

(柘植康文)

〔高炉〕

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%AB%98%E7%82%89

『高炉(こうろ、blast furnace)は製鉄所の主要な設備で、鉄鉱石を熱処理して、鉄を取り出すための炉。鉄溶鉱炉(てつようこうろ)と呼ばれることもある。大型のものでは高さ 100 メートルを超え、製鉄所のシンボル的存在となっている。

鉱石から銑鉄を取りだす高炉、その銑鉄を鋼鉄に処理する転炉、生産された鉄を圧延や連続鋳造で製品加工する設備を持つ、銑鋼一貫製鉄所のみが高炉を所有している。このような大規模施設を持つ鉄鋼会社は高炉メーカーと呼ばれている。』

『高炉による銑鉄生産

1.焼結鉱、石灰石 2.コークス 3.ベルトコンベヤ 4.投入口 5.焼結鉱、塊鉱石、石灰石 6.コークス 7.熱風管 8.スラグ 9.溶銑 10.スラグ車 11.トーピードカー 12.ガス分離器 13.熱風炉 14.煙突 15.冷風 16.微粉炭 17.粉砕機 18.分配器

高炉の頂部から鉄鉱石による金属原料とコークスなどの燃料を兼ねる還元材、不純物除去の目的で石灰石を入れ、下部側面から加熱された空気を吹き入れてコークスを燃焼させる。頂部から投入される原料等はあらかじめ簡単に焼かれて固塊状に加工されており、炉内での高温ガスの上方への流路と原料等の流動性が確保されている。高炉内部ではコークスの炭素が鉄から酸素を奪って熱と一酸化炭素、二酸化炭素を生じる。この反応が熱源となり鉄鉱石を溶かし、炉の上部から下部に沈降してゆく過程で必要な反応が連続的に行なわれ下部に到達する頃には燃焼温度は最高となり、炉の底部で高温液体状の銑鉄が得られる。不純物を多く含む高温液体状のスラグは銑鉄の上に層を成してたまる。銑鉄とスラグは底部側面から適時、自然流動によって取り出される。

高炉頂部からは一酸化炭素、二酸化炭素等を多く含む高温の高炉ガスがパイプによって取り出され、粉塵等がサイクロンで除去された後、随時切り替えられる複数組の熱風炉の1つへと送られる。高温ガスは熱風炉内のレンガ等を加熱した後、煙突より排気される。十分に加熱された熱風炉の1つが排気経路とは別に切り替えられて、外気より取り込まれた冷風が熱風炉により加熱される。熱くなった空気は炉下部の側面より粉砕された微粉末炭と共に圧入され、炉内を上昇する内に酸素が燃焼に寄与する。これらの流れにより一連のガスサイクルを形成する。

高炉にはコークス炉や鉄鉱石焼結炉が常に併設され、投入原料の事前加工が行なわれている。一度、火が入れられた高炉は常に稼動されて、数年に一度の程度の炉内壁の修理等の時以外に停止されることはない。

高炉で作られた銑鉄は保温効率と移送の利便性を兼ね備えた「トーピードカー」(混銑車)と呼ばれる細長いタンク車両に流しこまれて、次の工程へと送られる。送られた銑鉄は溶銑予備処理を施した後、転炉へ入れられ、鋼鉄へと変換される。』

日本製鉄、1万人合理化 「がくぜんとした」 瀬戸際の鉄鋼(1)

https://www.nikkei.com/article/DGXZQODZ258AC0V20C21A3000000/

『3月5日午前10時すぎ、日本製鉄本社14階。取締役会で社長の橋本英二は問いかけた。「ご質問があれば頂戴したい」

居並ぶ取締役17人に示したのは2025年度までの経営計画。橋本の落ち着いた様子とは対照的に内容は大胆だった。

東日本製鉄所鹿島地区(茨城県鹿嶋市)では基幹設備の高炉を1基休止。ほかの拠点とあわせ生産能力を2割減らし、協力会社を含め1万人規模を合理化する。

経営陣には概要を説明してあり、会議は円滑…

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経営陣には概要を説明してあり、会議は円滑に進んだ。一方、その数時間後に本社9階の会議室で橋本たちから正式に知らされた従業員側への衝撃は大きかった。

「驚きを禁じ得ない」。同日中に会社が受け取った労働組合の意見書にはこう記された。無理もない。1年前にも瀬戸内製鉄所呉地区(広島県呉市)の閉鎖など大規模な合理化を発表。高炉休止を2年続けて決める異例の事態となったからだ。

衝撃は製鉄所のお膝元に広がる。「がくぜんとした。市の人口がさらに5千人ほど減ることも覚悟しなければ」。一報に接した鹿嶋市の市長、錦織孝一もうなだれた。

日本の近代化を支えた鉄鋼業と、再編を繰り返しながら国内では最大手として君臨し続けた日本製鉄。内需低迷と中韓勢の台頭により、かつてない苦境に追い込まれている。

合理化の予兆はあった。「構造改革を断行する年になる」。1月、橋本は新年のあいさつで社員に危機感を訴えた。4315億円と過去最悪の最終赤字だった20年3月期に続き、21年3月期も1200億円の最終赤字を見込む。

特に本丸の国内製鉄事業は厳しい。在庫評価損益を除く真水の単独営業損益は20年3月期まで3年連続で赤字だった。以前は単独の損益を知るのは限られた部署のみ。それを橋本は19年5月に社内に危機感を植え付けるため初めて公表した。

その翌月、本社で一つの部署が本社12階から13階に移った。「生産設備企画」。製鉄所の設備計画を中長期で考える部門だ。同時に所管は技術を統括する部署から経営企画に移管。生産設備企画と経営企画が連携し、今回の計画をまとめた。

日鉄は事務系が経営企画を牛耳る一方、設備計画は技術系や製鉄所に任せる傾向が強かった。

「(自分は企画部門で)珍しがられている」。19年4月に名古屋製鉄所(愛知県東海市)所長から経営企画担当の常務執行役員に就いた今井正も当初、そう感じるほどに組織の壁は厚かった。

結果として両者の情報共有は遅れがちに。現場で目立つのは生産性が落ち、補修費がかさむ設備。その稼働を維持するために安値で売る悪循環に陥った。今井は「事務だ、技術だといってる時代じゃない」と訴える。

住友金属工業や日新製鋼との統合を重ねた日鉄。各地での設備の老朽化は操業トラブルという形でも出ていた。

「足場が狭く、危ない」。19年8月初旬、呉の拠点を訪ねた橋本は現場で胸騒ぎを覚えた。直後の8月末、予感は的中する。中核設備で火災が発生。自動車用鋼材の供給に支障がでた。最近では名古屋製鉄所でも火災が起きている。

採算改善にむけ、余剰設備の集約はかねて課題だった。ただ製鉄所は地域経済の要であり「鉄は国家なり」との自負もある。アベノミクスで事業環境が好転し、実力値がみえにくくなっていた。

「つくれば売れるとの発想から抜けきれなかった」。旧住金出身で統合後に副社長も務めた本部文雄は嘆く。

そこに政府の脱炭素政策が追い打ちをかける。政府は50年ゼロにむけ、炭素排出に値段をつけるカーボンプライシング(CP)も検討する。

いまの製鉄法は、石炭を使い二酸化炭素が多く発生する。そのためCPは日鉄にはコスト増と同じ。「CPは市場をゆがめる」。橋本は2月に官邸で首相の菅義偉に反対を訴えたが、CP構想がとまる保証はない。

技術革新で対応しようにも、切り札の水素製鉄などの実現には4兆~5兆円かかり、1社で負担できる範囲を超える。

内外に強まる逆風に日鉄の橋本はつぶやく。「脱炭素の競争にも遅れたら日本の鉄鋼業は存亡の危機に陥る」(敬称略)

「鉄冷え」の再来と脱炭素政策にあえぐ鉄鋼業。その最前線を追う。

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竹内純子
国際環境経済研究所 理事・主席研究員
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ひとこと解説 記事に出てくる茨城県鹿嶋市は、2050年ネットゼロカーボンシティ宣言したんですね。であれば少なくとも今の炉の存在は認められないというメッセージを自ら出したわけです。
日本は世界で唯一、鉄鋼が中国に対して輸出超過とのこと。高機能製品を作る技術でまだ優位性を持っていたから。ただ、鉄の製造プロセスからはCO2は排出されます。記事中には水素還元製鉄の課題をコストだけのように書いていますが、そもそも水素還元製鉄は商用機レベルではまだどこにも存在しません。2050年ネットゼロに向けてどう移行を進めるかを社会として考える必要がありますが、それが鉄鋼業界に丸投げされている感も。

2021年4月5日 9:28いいね
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深尾三四郎のアバター
深尾三四郎
伊藤忠総研 上席主任研究員
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ひとこと解説 日本の鉄鋼は中国に量だけでなく環境価値(質)でも大きく水を開けられようとしている。
欧州を模範にする中国は全土での鉄鋼産業向け排出権取引制度(ETS)を近い将来実施する。そして炭素国境調整措置も導入し、ETS非導入国の鉄鋼製品に対して「グリーン関税」を課す可能性がある。中国以外の主要輸出先の韓国やタイもETS整備で日本を先行している。即ち、CPで出遅れる日本の輸出競争力は中国のみならずアジアでも低下するリスクがある。脱炭素技術では、日本は水素還元法の原料(水素)のコストが高く、電炉法も電源にしたい再エネの発電量が少ない。拠点の海外移転で国内雇用が更に減少し、産業が空洞化する懸念が高まっている。

2021年4月5日 7:49 (2021年4月5日 7:49更新)
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志田富雄のアバター
志田富雄
日本経済新聞社 編集委員
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分析・考察 いま、日本の高炉は3つの競争に直面していると思います。1つは昨年の粗鋼生産で世界の56%を占める中国の存在。個別企業の生産能力でも世界の上位2社と大きな差ができました。2つ目には軽量化をめざす自動車を中心にアルミなどの非鉄金属や炭素繊維、合成樹脂製品など他素材との競争があります
3つ目は環境負荷という新たな物差しの台頭です。この物差しでは、同じ鋼材でも鉄スクラップを原料につくる電炉製品が優位になります。公共工事や需要家が、リサイクル素材である電炉製品の使用比率目標を導入してくる可能性も否定できません。高炉各社には厳しい環境が続きます。

2021年4月5日 9:04いいね
1

[FT]隠れリスク露呈、銀行の株式デリバティブ事業

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB020950S1A400C2000000/

『米投資会社アルケゴス・キャピタル・マネジメントの破綻劇は、金融機関がヘッジファンドに自己資金以上の株式・関連資産への投資をさせるという、もうけは大きいが不透明な株式デリバティブ(金融派生商品)事業の隠れたリスクを表面化させた。

元ヘッジファンドマネジャー、ビル・ホアン氏のファミリーオフィス(個人資産を運用する投資会社)であるアルケゴスの投資の失敗は、クレディ・スイスや野村ホールディングスなどに巨額の損失をもたらし、こ…

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元ヘッジファンドマネジャー、ビル・ホアン氏のファミリーオフィス(個人資産を運用する投資会社)であるアルケゴスの投資の失敗は、クレディ・スイスや野村ホールディングスなどに巨額の損失をもたらし、この種のツールが金融市場全体に波及する連鎖反応を引き起こしうることを浮き彫りにした。

アルケゴスは「トータル・リターン・スワップ(TRS)」を通じて、米メディア企業バイアコムCBSなどの株式を数百億ドル(数兆円)規模で売買できるようになっていた。TRSは、実際に株式を買うことも、現物株を保有する場合のように自分のポジションを明かすこともなく巨額の投資ができるため、ヘッジファンドに好まれている「複合」金融手法だ。

透明性がないために、アルケゴスのような会社は複数の銀行を相手に同様のスワップができる。銀行側は相手の投資の全体像を知らないため、ポジションが裏目に出るとヘッジファンドと銀行のリスクが膨らむ。

事業収益は増えたが
米コンサルティング会社ファイナディアムによると、世界の銀行は2019年にTRSを含む株式デリバティブ事業で推計110億ドルの収益を上げている。12年の2倍の水準だ。

同社の推計では、金融危機後に急拡大した株式デリバティブ事業は銀行のエクイティファイナンス事業による収益の過半を占め、旧来の信用取引に伴う貸し出しと空売り向けの貸株の合計収益を超えている。21年に入っても、複合金融はエクイティファイナンスに占める重みを増し続けている。

銀行はヘッジファンドなど契約相手の投資家から定期的に手数料を受け取り、TRSで着実に収益を上げている。投資家側は、当該の株式や株価指数などの関連資産が値上がりすれば、銀行から収益金を受け取れる。銀行は投資家に保有株の配当金も支払う。

銀行側は現物株を保有するか、反対の見方をする他の顧客と逆のポジョションを取るか、あるいは他の金融機関からヘッジを買ってリスクを相殺する。

当該の株が値下がりした場合、投資家は銀行側の損失をカバーするための支払いを定期的にしなければならない。その間隔は毎日から四半期ごとまで幅がある。

クレディ・スイスはアルケゴスとの取引で多額の損失をこうむった(同行のロゴ)=AP
「大半のスワップは想定元本が大きいため、トータルリターンを支払う側(通常は商業銀行か投資銀行)は、相手のヘッジファンドが資本不足でデフォルト(債務不履行)に陥る危険を抱えている」と監査法人デロイトは指摘している。

アルケゴスはポジションのいくつかが裏目に出てまさにこの状況に直面し、銀行側はヘッジ(株式)の投げ売りに走った。アルケゴスが複数の銀行とスワップの契約を交わしていたことが事態を一層深刻にした。

エクイティTRSは2者間の特注の相対契約であるため、取引所経由での清算や報告はされていない。株式のデリバティブ取引は現物保有の場合と異なり、投資家が米証券取引委員会(SEC)に報告する必要もない。

金融業界は大半のスワップ取引について、デリバティブに関する情報を当局に提出するデータウェアハウスに報告することを義務付けられているが、エクイティTRSに関するルールが施行されるのは21年半ば以降だ。

知られていた根本問題 
「デリバティブによる株式保有の報告に関しては、以前から知られている根本的問題がある」と指摘するのは、SEC出身で現在は活動団体「ヘルシー・マーケッツ」の代表を務めるタイラー・ジェラシュ氏だ。

「単一の顧客に5つの銀行が資金を提供していても、各行はそのことを知らないかもしれず、問題が生じたら別の銀行に売却できると思うかもしれない。だが、他行もすでに関与しているのでので、そうはいかない」

ファイナディアムのジョシュ・ギャルパー代表は、エクイティTRS市場の成長について「株式取引への融資よりもTRSの利点を高めやすいバーゼル規制とドッド・フランク法がもたらした自然な帰結」だと説明する。ともに金融危機後の金融規制改革で導入された。

銀行にとって、株式デリバティブ事業は魅力のあるビジネスだ。顧客側のポジションが拮抗する形で固まっていれば、従来の信用取引に伴う貸し出しよりも規制上の自己資本が少なくて済むからだ。

「自己資本比率、流動比率、取引のカバー率によってTRSは利点が高まりうる」とギャルパー氏は言う。

銀行の情報開示のあり方が、外部からエクイティTRSのリスクをつかむことを難しくしている。

「大手銀行はデリバティブ関連の開示に多くのページを割いているが、かなり上のレベルの内容であり、個々の契約相手や証券へのエクスポージャーに関する情報には迫れない」と、会計を専門分野にする米コンサルティング会社ジオン・リサーチ・グループのデーブ・ジオン氏は話す。

「信用リスクの集中に関する情報は業界レベルになりがち」で、市場リスクへのエクスポージャーに関しては総数のほうが役立ちうるのに「デリバティブ取引の正味債権に焦点が置かれる」と同氏は言う。

銀行の情報開示を専門とする英コンサルティング会社、リスキー・ファイナンスのニック・ダンバー氏によると、一部の銀行は会計上の目的でエクイティTRSを担保付き融資として扱っている。「行内のデリバティブ取引デスクから記帳されないため、(国際的に活動する全ての銀行に義務付けられているリスク加重資産やレバレッジ、信用リスクに関する)バーゼル3の開示資料に出てこない」

情報開示がないことで、一般的に銀行の安定した収益源になっているエクイティTRS事業は、発生することはまれながら重大なリスクを抱えていることが覆い隠されている。ある国際銀行の株式デリバティブ取引デスクのスタッフは「誰が何を持っているのかを知るのがとても難しい」ため、エクイティTRSは「(道路工事の)スチームローラーの前で5セント硬貨を拾い集めるような取引の典型例だ」と打ち明ける。

「1日中、硬貨を拾い集めることはできる。スチームローラーの動きはかなり遅い。しかし、つまずけば最後、ひかれてしまう」

By Robert Armstrong

(2021年4月1日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版 https://www.ft.com/

(c) The Financial Times Limited 2021. All Rights Reserved. The Nikkei Inc. is solely responsible for providing this translated content and The Financial Times Limited does not accept any liability for the accuracy or quality of the translation.

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中国企業封じ込め、逆効果 ウィリアム・ブラットン氏

中国企業封じ込め、逆効果 ウィリアム・ブラットン氏
元HSBCアジア太平洋株式調査責任者
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGH296KW0Z20C21A3000000/

『欧米の通信機器メーカーなどは2000年代の初めごろ、中国大手の華為技術(ファーウェイ)を軽んじ、慢心しているようにみえた。欧米企業は、自社の卓越した技術により何十年も優位性を維持できるととらえていたが、致命的な誤りだった。欧米はいまになって必死にファーウェイの影響力を抑えようとしているが、中国の技術力を過小評価するとどうなるかという一つの答えだろう。

欧米勢は様々な業界で、中国市場へのアクセスを確…

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欧米勢は様々な業界で、中国市場へのアクセスを確保する代償として(技術移転などにより)技術的優位性を手放した。結果として、競争力のある中国のライバル企業を育成することになった。欧米が対中国で、圧倒的な優位性を維持する産業は急速に減っている。

半導体や医薬品、ロボット、ジェットエンジンなどの分野で中国が相対的に弱いことが、欧米の知識の蓄積に太刀打ちできない証拠とされてきた。だが欧米が明確な優位性を誇れる産業が少なくなっているのは、中国がどれほど急速な進歩を遂げてきたかを示す。

中国の産業はいま、技術革新の最先端にあるといえる。例えばフィンテックについて、欧米の銀行は技術面などで中国に後れをとり、苦戦を強いられるとの声がある。中国の技術は人工知能(AI)や量子コンピューターから電気自動車(EV)、電子商取引まで欧米と比べて遜色がないか、勝っているものもあるようだ。

欧米勢がリードしている産業に関しても、優位性がどの程度なのかはっきりしない。議論の余地はあるものの、中国が、欧米と同水準に達することはないと考えるのは無謀だ。欧米が、中国の技術開発への熱意や能力を恒久的に制限できるという考え方は、誤っている。

宇宙開発計画をみてみよう。米国は、米航空宇宙局(NASA)と中国側の協力関係を厳しく制限しているようだ。だが中国の宇宙開発は前進している。中国は火星に探査機を着陸させ、独自の宇宙ステーションを完成させる計画を示す。米国の宇宙開発での主導的地位に対する脅威となる。

経営資源と技術支援の観点から言えば、技術革新は規模が大きいほうが恩恵を受ける。欧米企業の中国での収益機会を失わせる制限を課せば、規模のメリットは中国へと傾く恐れがある。国内総生産(GDP)世界2位の中国が米国を抜いて世界最大の経済大国となり、長期にわたって欧米諸国よりも高い成長率を維持すれば、優位性はますます高まるだろう。

中国は欧米からの制限の動きを受け、技術的な独立性と優位性を確保する必要があるという信念をさらに強くすると予想される。中国は従来の国際的な基準や枠組みから逸脱し、中国と西側の技術の分離は加速するだろう。中国の技術的な台頭を抑えようとする欧米の試みは、かえって中国が優位性を確保するのを早めてしまう。

(バイデン米政権が続けるファーウェイの事実上の禁輸措置のような)中国の技術革新を封じ込めようとする努力は、長期的には成功しそうにない。短期的には有効かもしれないが、資源や人材、能力、決意を考えれば中国が軌道を外れることはないだろう。世界的な技術の分離を加速させる西側の行動は、他のアジア諸国にとっては大きな問題となり、欧米と中国のどちらかを選ぶことを余儀なくされる可能性がある。選択は地政学的、経済的にも重大な意味を持つことになる。

関連英文はNikkei Asiaサイト(https://s.nikkei.com/3ff9gP2)に

続く東アジア式技術革新

中国の自由を欠いた政治経済体制の下では、既存概念を覆す独創的な新技術は生まれにくいかもしれないが、国外で開発された技術を応用することは可能だ。中国は軍事、宇宙産業をロシアの技術を継承し発展させた。モバイル決済などネット産業では米国の新技術やビジネスモデルを参考に、中国社会に合うように改良を重ね、産業化を加速させた。

イノベーション(技術革新)は新技術の開発が重要だが、どのように新技術を自国産業に応用するかも問われる。日本は欧米で開発された製品を改良し、生産方法を改善することで成長してきており、中国も似た道を歩む。科学や経営の情報が行き交う時代に技術移転を遮るのは不可能に近い。東アジア式イノベーションが続くのを前提に中国企業と向かい合うべきだろう。(編集委員 村山宏)

テスラのEV世界販売2.1倍 1~3月、中国生産車が好調

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN02EPC0S1A400C2000000/

『【シリコンバレー=白石武志】米テスラが2日発表した2021年1~3月の電気自動車(EV)の世界販売台数は前年同期比2.1倍の18万4800台となり、四半期ベースで過去最多を更新した。中国生産を始めた新型車が好調で、事前の市場予想(17万2000台前後)を上回った。

車種別の販売台数は主力車「モデル3」と新型SUV(多目的スポーツ車)「モデルY」が合計で前年同期比2.4倍の18万2780台だった。高級セダン「モデルS」と高級SUV「モデルX」は1~3月に生産しておらず、販売は在庫に限られたため83%減の2020台と振るわなかった。

テスラは19年末にモデル3の生産を始めた中国の上海工場で21年1月からモデルYの生産と納車も始めた。最安グレードについては20年夏時点で予告していた価格よりも3割低い約34万元(約570万円)で発売し、予約が殺到したと報じられている。旺盛な需要に応えるため、現在はフル生産体制への移行を急ピッチで進めている。

テスラは米カリフォルニア州の工場で生産する全4車種のうち、モデルSとモデルYについては近く大幅な改良を予定しており、一時的に生産を止めたとみられる。1~3月に製造工程に新しい装置を導入して試験を実施し、現在は生産再開の初期段階に入ったと説明している。

同社は21年の年間EV販売台数について具体的な数値目標を示していないが、20年実績(49万9647台)に比べ50%を上回る伸びを見込むとしている。21年中には独ベルリン郊外や米テキサス州で建設中の完成車工場も稼働させる。

自動車業界では半導体不足で車両生産を一時休止する動きが広がっており、テスラも影響を受けているとみられる。イーロン・マスク最高経営責任者(CEO)は2月下旬、部品不足を理由にカリフォルニア州内の完成車工場の操業を2日間停止したと明らかにしている。

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欧州でコロナ債務「帳消し」論 ピケティ氏ら提唱 ECB総裁「考えられない」と一蹴

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR31EWG0R30C21A3000000/

『【パリ=白石透冴】フランスを中心としたユーロ圏で、欧州中央銀行(ECB)や各国中銀が保有する国債約3兆ユーロ(約390兆円)の「帳消し」を求める議論が出ている。新型コロナウイルス対策で借金が積み上がっているためで、経済学者を中心にした賛成派は増税や緊縮を防ぐ唯一の方法と主張する。ECBは「考えられない」(ラガルド総裁)と議論を一蹴している。

「コロナ禍の借金の未来は?」(3月下旬の仏経済紙レゼコー…

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(3月下旬の仏経済紙レゼコー)。仏政財界やメディアは、コロナ禍で膨らんだ債務をいかに減らすかの議論が活発だ。きっかけは2月、ベストセラー「21世紀の資本」で知られるトマ・ピケティ氏ら仏独伊スペインなどの経済学者約150人が共同で「徳政令」を求める意見書を発表したことだ。

ユーロ圏各国が発行した国債の約3割を保有するECBや各国中銀が、償還を求めないことで、各国政府の財政を健全化すべきだとの提言だ。個人や機関投資家が保有する国債の扱いは変えない。

ピケティ氏らは、各国政府は自国の中銀とECBを直接・間接的に保有しており、ECBや中銀による国債買い取りは自分で自分に借金しているのと同じだと主張する。

賛成派の仏経済学者ジェザベル・クペスベラン氏は国債の償還を求めないことで「国が財政破綻を起こす可能性が下がり、国債の信頼性が高まる。市場の混乱は引き起こさない」と取材で語った。賛成派は経済学者が中心だが、欧州議会議長でイタリア人のサッソリ氏は2020年11月、伊メディアに「興味深い議論だ」と語った。

前例のない提案にECBや各国政府は否定的だ。ECBのラガルド総裁は2月、仏メディアの取材に「考えられない」と一蹴している。コロナ禍以前に発行した国債も対象とするのか、どのように意思決定するのかなど手続き上も不明点が多い。

反対の立場を取る仏景気経済研究所のアンリ・スタディニアク氏は「急なインフレも起きていない段階で国債の心配をする必要はない。見直すべきは財政規律を定めた欧州連合(EU)のルールだ」と語る。

議論が起きる背景には、コロナ禍で急激に増えた各国の借金がある。外出制限で影響を受けた業界への支援を繰り返し、21年の国内総生産(GDP)比累積債務はフランスとスペインがそれぞれ120%超、イタリアでは約160%に達する見通しだ。

フランスでは各党が債務の扱いについて意見表明する場面が増えており、22年大統領選で争点になる可能性がある。

マクロン大統領の与党「共和国前進」は3月下旬、「安易で非生産的な考えだ」とする声明を出して帳消し論を批判した。超低金利の市場環境では国債発行で集めた資金を成長戦略に充てるのが正しいなどと論じた。野党の中道左派社会党で前回大統領選に出馬したアモン氏らは帳消し論を主張している。

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伊藤さゆり
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 研究理事
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ひとこと解説 欧州の財政出動の規模は米英に比べて小さく、欧州域内では過剰債務国ほど対策規模が小さい。IMF(国際通貨基金)の「財政モニター」データ・ベースから、確認できる傾向です。
英米との差は、平時のセーフティーネットの厚さで説明できる部分もありますが、過剰債務国の慎重姿勢は、信用危機の再燃や、現在、停止中の財政ルールの再適用を意識せざるを得ないから。結果として危機対応として必要な対応が講じられず、傷痕がより深く、長く残る結果となることが懸念されています。

債務「帳消し」議論の背景は理解できるものの、ユーロ参加国政府の広い賛同を得ることは考えられません。
見直すべきはルール、という意見に賛成です。

2021年4月2日 15:34いいね

クリスティーヌ・ラガルド
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AF%E3%83%AA%E3%82%B9%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%BC%E3%83%8C%E3%83%BB%E3%83%A9%E3%82%AC%E3%83%AB%E3%83%89

『経歴
パリ9区にて、ロベール・ラルエットとニコル・カル夫妻の第1子として誕生。四人兄弟で3人の弟がいる[2][3]。幼年時代をル・アーヴルで過ごし、そこでカトリックの教育を受けた[4]。 10代の頃はアーティスティックスイミングの選手であり、フランスのナショナルチームに所属していた[5] [6]。16歳の時に父が亡くなり、以後母ニコルが1人で子供4人を育てた[7]。1974年にバカロレアを取得。パリ第10大学を卒業し、更に、グランゼコールの一つであるエクス=アン=プロヴァンス政治学院を卒業した。ENAの入学試験に2度失敗しているが、自身はこの失敗を後悔していないと述べている[8]。

卒業後の1981年、アメリカの国際ロー・ファームであるベーカー&マッケンジーのパリ・オフィスで弁護士として働き始める。1995年よりベーカー&マッケンジーのシカゴ本部でのエグゼキューティヴとなり、1999年よりチェアマンに選ばれた。

ジャン=ピエール・ラファランに発掘され、2005年にアメリカから帰国。ドミニク・ド・ヴィルパン内閣の農業・漁業相などを経て、2007年6月からフランソワ・フィヨン内閣の経済・財政・産業相(財務大臣に相当)に就任する。G8最初の女性財相でもある。

2006年には、アメリカの経済誌『フォーブス』が取り上げた世界最強の女性30に選出されている。反トラスト法、労働法専門の弁護士としても著名であり、ベーカー&マッケンジーの所長に女性で初めて就任した。

2011年6月28日、IMFの理事会にて専務理事に全会一致で選出された[9]。女性として初のトップ就任である。かつてラガルドと同じくフランス経済・財政相からIMF専務理事に転じたドミニク・ストロス=カーンが2011年5月に性的暴行容疑で逮捕・起訴されIMF専務理事を辞任したため、その後任の最有力候補として名が挙がっていた[10]。

2019年7月、欧州中央銀行次期総裁に就任が決定。同年11月1日に就任[11]。女性初の総裁となる。これに伴い、9月12日にIMF専務理事を退いた。』