35年のガソリン車販売禁止認める 施行へ前進―EU加盟国

35年のガソリン車販売禁止認める 施行へ前進―EU加盟国
https://www.jiji.com/jc/article?k=2022062901110&g=int

『【マドリード時事】欧州連合(EU)加盟国は29日、環境相理事会で、域内で販売する新車の乗用車の二酸化炭素(CO2)排出量を2035年までに「ゼロ」とし、ガソリン車やディーゼル車の新車販売を事実上禁じるEUの規制案を認めた。禁止の施行に向け大きく前進した。

EV事業、独立採算に 生産・競争力を強化―米フォード

 欧州委員会が昨年7月に提案した原案の内容をほぼ踏襲した。これを基に欧州議会と交渉し、最終的な法案を決定する。議会も35年禁止案を支持しており、成立する公算が大きい。 』

キリンがミャンマー撤退決定 全保有株、合弁企業に売却

キリンがミャンマー撤退決定 全保有株、合弁企業に売却
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC29C4F0Z20C22A6000000/

『キリンホールディングス(HD)はミャンマー国軍系企業と合弁で運営するビール会社「ミャンマー・ブルワリー(MBL)」の全保有株式をMBLに売却する。2月にミャンマー撤退を表明して以降、国軍と関係ない第三者の企業への売却を探ったが、有力な買い手を見つけられずにいた。批判の高まりを避けるため早期撤退を優先する。

29日にMBLが株式譲渡を決議した。キリンHDは30日午後に記者会見を開く。

MBLはキリンHDが51%、ミャンマー国軍系企業のミャンマー・エコノミック・ホールディングス(MEHL)が49%をそれぞれ出資している。キリンHDは2021年2月の軍クーデター直後に国軍系企業に合弁解消を要求。22年2月に保有する全ての株式を6月末までに売却する方針を明らかにしていた。

欧米企業を含め売却先を探したが、人権弾圧を続けるミャンマー国軍への国際的な批判が強まるなか、国軍系企業以外の有望な買い手は現れなかった。国軍系企業に直接売却するとキリンに批判が集まるリスクも考慮し、MBLに買い取らせる仕組みを整えた。売却先選びが長引けば、従業員や取引先への影響も大きくなると判断した。

キリンHDは15年にシンガポールの飲料大手フレイザー・アンド・ニーブからMBL株を697億円で取得し、ミャンマー市場に参入した。キリンHDが国軍系企業に合弁解消を申し入れたことで両社の関係は悪化。21年11月に国軍系企業が現地の裁判所にMBLの清算を申し立てた。

キリンHDも21年12月にシンガポール国際仲裁センター(SIAC)に商事仲裁を提起して対抗するなどし、国軍系企業との交渉は一時途絶えた。22年1月下旬に両社の交渉は再開し、2月に入ってキリンHDがMBL株の売却とミャンマーからの撤退を表明した。

MBLはミャンマーのビール市場で8割のシェアを持つ。クーデター前の20年12月期にはキリンHDの事業利益の約1割を稼いでいた。クーデター後に事業環境が悪くなったことが響き、21年12月期に680億円の減損損失を計上した。

【関連記事】

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白井さゆり
慶應義塾大学総合政策学部 教授
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ひとこと解説

人権問題はここ最近アジアでもかなり意識されるようになっていたところに、ウクライナ問題もかさなって一段と重視されるようになっています。人権侵害がある国でビジネスをする場合に、どのようなラインを超えると企業にとって撤退を検討すべきか、はっきりしていません。またロシア制裁でも制裁対象になっていなくても撤退する企業もあれば、継続する企業もあるかと思います。このため企業は進出先でESG観点からの課題をつねに意識して情報収集を行って、リスク管理の一環と位置付けていくことが必要になっています。現地で、日本企業だけでなく、様々な国の多国籍企業とのネットワークを形成して情報交換を増やすことも重要でしょう。
2022年6月30日 12:00
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高橋徹
日本経済新聞社 編集委員・論説委員
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ひとこと解説

合弁パートナーの国軍系企業に売るよりは、国軍系企業下の合弁企業に「自社株」として買ってもらうほうがまし、という判断です。他に買い手が見つからない以上、やむを得ない措置と思います。ミャンマー国軍は外貨の強制両替、輸入ライセンスの復活など、経済統制を強めており、外資の企業活動はますます困難になっています。あるゼネコン関係者は「建設現場で工事が中断したら、我慢できるのはせいぜい3年」と言っていました。現場の資機材のメンテナンス費用ばかりが積み上がるためです。政情の袋小路が長引けば、いまは様子見の日系企業も、次第に撤退例が増えると思われます。
2022年6月30日 12:08 』

中国、「50万円EV」の販売急減速 主戦場は中価格帯に

中国、「50万円EV」の販売急減速 主戦場は中価格帯に
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM276Y30X20C22A6000000/

『【広州=川上尚志】日本円で約50万円という格安な電気自動車(EV)のブームが中国でしぼみつつある。火付け役の「宏光MINI EV」の販売台数は5月まで2カ月連続で前年同月実績を割り込んだ。原材料高などに伴う値上げや、同車種の人気をみて参入した他社との競争激化で市場が飽和した。各社とも原材料の高騰などで利幅の維持が難しくなっており、主戦場を中価格帯にシフトしつつある。

中国で格安EV人気に火が付いたのは、2020年7月に上汽通用五菱汽車が宏光MINI EVを発売したのがきっかけだ。街乗りに十分な120キロメートルの航続距離を確保しつつコストを切り詰め、2万8800元(当時の為替レートで50万円弱)からという異例の安さが話題を呼び、主に地方都市で急速に販売を伸ばした。

【関連記事】

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・中国製50万円EV、テスラ上回る人気と安さの秘密

宏光MINI EVは米テスラの「モデル3」などを抑え、EV中心の新エネルギー車の車種別販売で22年5月まで「20カ月連続首位」(五菱)とうたうが、販売は足元で陰りが出てきた。中国の乗用車の業界団体、乗用車市場信息聯席会の統計によると、同車種の4月の販売台数は前年同月比6%減の約2万5000台で、発売以来初めて前年実績を下回った。5月も2%減った。

上海市のロックダウン(都市封鎖)が影響した可能性もあるが、4、5月ともに新エネ車全体の販売台数は前年を上回っており、それだけが要因と言い切れない。理由の一つは値上げによる消費者離れだ。宏光MINI EVは3月に平均1割強の値上げを実施した。最低価格は3万2800元となり、割安感が薄れた。

下位機種ではエアコンをオプション装備とし、半導体は家電向けを転用するなどして低価格を実現した側面がある。車業界アナリストの張翔氏は「機能の向上が遅れている面もあり、競合車種に一部消費者が流れている」と指摘する。

もう一つは市場の飽和だ。中国調査会社のGGIIによると、格安EVが中心の「A00クラス」と呼ばれる小型の新エネ車の販売台数は1~5月に前年同期比5割増の約39万台だったが、新エネ車全体に占める比率は8ポイント減の25%になった。前年実績を上回っているものの「今後の成長は減速する」(GGII)という。

もともと格安EVの利幅は薄く、五菱の21年12月期の売上高純利益率は1%強にとどまる。同じ上海汽車集団の傘下である上汽フォルクスワーゲン(VW)の6%などに比べ見劣りする。それでも宏光MINI EVの好調を受け、奇瑞汽車の「QQ冰淇淋」や重慶長安汽車の「奔奔E-Star」といった格安EVの競合車種の販売も伸びた。

【関連記事】中国勢が新エネ車で急伸 国内販売、上海汽車は7倍

市場の活性化に加え、これらの競合があてにしたのは、中国政府が自動車メーカーに対し新エネ車の製造・販売を義務付ける「クレジット制度」だ。目標未達の企業はマイナスのクレジットが付与され、基準を超えた企業からクレジットを購入して相殺する必要がある。こうしたクレジットを売却することで利益を得られるため、各社は利幅の薄い格安EVを手掛けるメリットがあった。

ただ各社が一斉に新エネ車の製造・販売を進めたことで需給が緩み、クレジットの1ポイント当たりの取引価格は下落傾向だ。中国メディアによると21年の価格は平均2088元だった。複数の証券会社の試算では、22年に1000元前後まで下がるという。

このため、メーカー側は安価なEVから距離を置き始めている。クレジットの利益減少に加え、22年に入ってからは原料高も加速し、格安EVを手掛ける利点は一段と縮小している。中国メディアによると、長城汽車のEVブランド「欧拉」の董玉東・最高経営責任者(CEO)は2月、自社のアプリ上で、約7万元からの価格で販売していたEV「欧拉・黒猫」などの受注を停止すると通知した。「黒猫1台の赤字は1万元を超える」との理由だ。

企業のEVの競争軸は格安帯からより高い価格帯にシフトしつつある。4月に入り、QQ冰淇淋や奔奔E-Starも3万元前後の最安モデルの受注を停止した。欧拉は黒猫などの受注を止めた後は14万元超の「好猫」などに注力することを決めた。

五菱も宏光MINI EVの後継で、より高価格の初のグローバル車種「五菱Air ev」の投入を計画する。インドネシアで工場を建設中で、中国のほか東南アジアやアフリカ、欧州や日本での販売も視野に入れる。

ただ、10万~30万元の中価格帯にも比亜迪(BYD)や外資メーカーなど競合がひしめき、価格帯が上がれば安全性や品質に対する消費者の要求は厳しくなる。これまでの格安EVの製造ノウハウが生かせるかが課題となる。
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深尾三四郎
伊藤忠総研 上席主任研究員
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半導体の調達力が高い新興EVメーカーの販売が増えている。

中国では車載半導体の国内生産が増えている。ファウンドリの中国SMICが前工程を担うかたちで、投資資金を掻き集めた新興企業含む地場半導体メーカーが海外から半導体製造装置を大量に買いだめし、生産能力を拡大させているため。

これらチップメーカーの主要顧客は中国新興EVメーカー。価格帯が上のモデルを展開するメーカーが廉価EVメーカーよりも半導体を調達しやすいので、EVの価格帯が上がっている。

足元では欧州向け中国製EVの輸出が急拡大しており、国内小売台数(内需)と輸出を含む工場出荷基準の汽車工業会の販売統計(生産)に乖離が出始めていることに要注意。

2022年6月29日 13:44 』

イエレン米財務長官が初訪日へ 7月12~13日

イエレン米財務長官が初訪日へ 7月12~13日
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN2918Q0Z20C22A6000000/

『【ワシントン=高見浩輔】米財務省は28日、イエレン米財務長官が7月12~13日に訪日すると発表した。その後、15~16日にインドネシアで開かれる20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議に出席する。日本を含めインド・太平洋地域への訪問は2021年1月の長官就任以来、初めてとなる。

7月19~20日には韓国を訪問する。米財務省は公表文で「この地域と世界における米国の指導的役割を再確認する」と説明。ウクライナに侵攻したロシアへの経済制裁の強化やインフレ抑制につながるサプライチェーン(供給網)の構築に加え、「中国のような非市場的な経済がこの地域にもたらす課題」について議論すると明らかにした。』

新興国のデジタル決済拡大、成人の57%に 世銀報告

新興国のデジタル決済拡大、成人の57%に 世銀報告
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN2902V0Z20C22A6000000/

『【ワシントン=高見浩輔】世界銀行は29日、新興国でデジタル決済を使う人の割合が2021年時点で成人全体の57%になったとの報告をまとめた。人との接触を避ける新型コロナウイルス禍も影響し、14年の35%から大幅に増えた。簡単に始められるモバイルマネーの普及により、低所得層でも金融サービスを受けられる機会が増えている。

インドではコロナ禍を受けて初めてデジタル決済で商業取引をした成人が8000万人以上に上った。中国でも加盟店でデジタル決済を使う人がコロナ禍で1億人以上増え、全体で82%に達した。

銀行口座かモバイルマネーのアカウントを持つ人の数は21年に全世界の成人の76%を占め、10年前の51%から大幅に拡大した。17年ごろまでは中国とインドが増加をけん引したが、それ以降はサハラ以南のアフリカ諸国など幅広い地域でもモバイルマネーが広がった。
世銀は銀行などの口座を持たない「アンバンクト」と呼ばれる層が世界に14億人いるとしている。送金や融資などの金融サービスを誰でも受けられる「金融包摂」は貧困層の生活破綻などを防ぐ効果がある。世銀はモバイルマネーの普及により、性別や所得、教育水準による格差の縮小に向けて「進展がみられる」と評価した。

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https://www.nikkei.com/r123/?ak=https%3A%2F%2Fwww.nikkei.com%2Farticle%2FDGXZQOGN2902V0Z20C22A6000000&n_cid=DSPRM1AR08 』

テスラ、米国内の自動運転拠点を閉鎖 200人解雇

テスラ、米国内の自動運転拠点を閉鎖 200人解雇
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN29DW10Z20C22A6000000/

※ AIとか、「人工知能」とか言っても、この程度のものだ…。

※ 「データラベリング」と言えば、聞こえがいいが、要するに「人間様」が「最終的に」「画像判定して」「AかBか、判定し、ラベルを貼る」という仕事だ…。

※ そういう「最終的に、人間様が判定した、ラベルが貼られたデータ」を、「莫大な量」を集めて、「機械学習」のプログラムにかけ、巨大かつ莫大な「行列データ」を作っていくわけだ…。「教師有り学習」とか、言ってたな…。

※ そういう「行列データ」ができれば、今度は、そのデータの塊りを使って、「別の画像データ」を判定させていくわけだ。「正答率」が「90%くらい」を目指してな…。

※ そういう「データラベリング」の人海戦術も、景気後退局面となりそうなんで、「コストが見合わなくなってきそう」なんで、首切って、人減らしに着手した…。そーゆー話しだ…。

※ 何度も言ったが、「人工知能に、知能無し。」だ…。

『【シリコンバレー=白石武志】米テスラがカリフォルニア州にある自動運転技術開発の関連拠点を閉鎖し、従業員の半数強に当たる約200人を解雇したことが29日までに明らかになった。米主要メディアが一斉に報じた。イーロン・マスク最高経営責任者(CEO)は景気後退を見越して今後3カ月以内に給与所得者の約10%を削減する方針を示しており、全社的なリストラの一環とみられている。

米ブルームバーグ通信によると、シリコンバレー北部のサンマテオにある従業員数約350人の拠点が閉鎖対象となった。自動運転用の人工知能(AI)を訓練する素材をつくる拠点で、従業員らは公道を走る車両のカメラから集めた映像の中の標識や物体に手作業で注釈をつける「データラベリング」と呼ぶ業務に従事していた。

従業員の一部は近隣の施設に異動したが、約200人が6月下旬で雇い止めになった。業務の一部はニューヨーク州北部のバファローにある別のデータラベリングの拠点に移管したもようだ。物価高騰が著しいシリコンバレーに比べ、バファロー周辺の給与水準は低いとみられている。

変わるAIの学習方法

今回の人員削減は、自動運転の技術開発におけるトレンドの変化を反映した動きでもある。従来は公道上で車両を走らせて集めたデータでAIに学習させるケースが多かったが、天候や安全面の制約を受けやすい。現在はコンピューター上で3次元の模擬的な道路空間を合成し、様々な交通状況を再現してAIを鍛える方法が主流になりつつある。

テスラは映像に自動でデータラベリングする技術の開発にも取り組む(2019年4月の技術発表会の中継映像から)

テスラは自動運転用AIを訓練するための大規模コンピューター「Dojo(ドージョー)」の開発を進めている。クラウド最大手の米アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)はデータラベリングの作業を自動化するツールや、コンピューター上で合成したAI学習用データの販売にも乗り出している。

テスラのマスク氏は6月21日にカタールで開かれた国際会議にオンラインで出席し、歴史的なインフレに伴う景気後退について「いずれかの時点では不可避であり、近いうちに起きる可能性が高いと考えている」と述べた。

マスク氏は世界の従業員数が約10万人に達したテスラについて、「一部の部門で増員を急ぎすぎた」と述べた。全従業員数の3分の1にあたる月給制や年俸制を適用する給与所得者については、今後3カ月以内に10%程度を減らすと説明した。同社は米南部テキサス州とドイツで電気自動車(EV)の新工場を立ち上げたばかりで、全体の3分の2を占める時給労働者については増員を続ける方針を示している。

【関連記事】

・マスク氏、Twitter買収に3条件 テスラは「正社員」削減
・マスク氏、テスラの「人員は増える」と投稿 削減一転か
・テスラが人員10%削減示唆 マスク流「ショック療法」か

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田中道昭
立教大学ビジネススクール 教授
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ひとこと解説

“宇宙レベルで考え物理学レベルで突き詰める”マスク氏は06年8月発表のマスタープラン1を全て有言実行しEVの収益化・量産化を実現、現在は20年7月発表の同2の実行に従事。その一つが「世界中のテスラ車の実走行から学び、人が運転するより10倍安全な自動運転機能を開発する」という計画。同社は世界中を走るテスラ車から走行データを収集し、自動運転機能オートパイロットを進化させています。各四半期決算では自動運転開発の進化を愚直なまでに報告し続け、直近決算ではFSDベータ版を年内に全米顧客へリリース予定と発表。今回の自動運転拠点閉鎖の意味もマスタープランを着実に有言実行してきた文脈で読み解くことが重要です。https://tesla-cdn.thron.com/static/IOSHZZ_TSLA_Q1_2022_Update_G9MOZE.pdf?xseo=&response-content-disposition=inline%3Bfilename%3D%22TSLA-Q1-2022-Update.pdf%22
2022年6月30日 5:54 』

デフォルト迫る社会主義ラオス SNSで政府批判強まる

デフォルト迫る社会主義ラオス SNSで政府批判強まる
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB277ZX0X20C22A6000000/

『【バンコク=マルワーン・マカンマルカール】言論を厳格に統制してきた社会主義国ラオスで、政府の経済政策を巡る国民の批判がSNS(交流サイト)で目立ってきた。中国などからの過剰債務で通貨が下落し、燃料不足や食料品価格の高騰が起こっているためだ。デフォルト(債務不履行)に陥る可能性を指摘する金融機関もある。

米政府系ラジオのフェイスブックのページには6月「ラオス経済崩壊」という見出しの記事が掲載された。ラオス市民らのコメントは1100件を超えた。「経済を管理できない政府はいらない」といった批判もあり、一党独裁の同国の指導者に対する不満が噴出した形だ。

ほかのSNSにも市民らの怒りの声はあふれる。首都ビエンチャンのラオスウオッチャーの多くは、1970年代半ばから政権を担ってきたラオス人民革命党に対し、なかなか意見を表明できなかった市民らが勇気を示した、まれなケースだと説明する。

ラオスウオッチャーの一人は「経済危機が日常生活に打撃を与えるようになり、市民らは(政府を)恐れず、公然と批判するようになった」と指摘する。「ラオスのような抑圧的な政治環境の国で、SNSは不満を表明できる唯一の手段だ」とも話す。

【関連記事】ラオス国家主席、世界平和の実現に「交渉と妥協必要」

ラオスの経済危機はこの数カ月で目に見えるようになった。ビエンチャンなどでは給油のためガソリンスタンドの前に自動車が長い列を作り、通貨キップの対ドル相場下落で(輸入品が多い)食料品や生活必需品の価格が高騰した。

外国の複数の格付け会社は6月、ラオスは過去数年間の財政・経常収支の赤字で支払い能力が危惧され、デフォルトの可能性が高まってきたと指摘した。ラオスと同じく中国から多額の投融資を受けるスリランカが4月、年内に期限を迎える対外債務を履行するための外貨を使い果たしたと発表したが、これとよく似た経済危機だ。

ラオス政府も自国経済の危機を認める。パンカム首相は最近、国会でSNSを通じた市民らの不満を認識していると答弁した。ブンチョム財務相は20日「10年から16年にかけて国家発展のために多額の資金を借り入れた」ため、莫大な債務が積み上がったと話した。

対外債務の年間の返済額は22年、10億ドル(約1350億円)を超えると見込まれている。「10年は1億6000万ドルにすぎなかった」とブンチョム氏は明かした。

複数のアナリストによると、ラオスの経済危機には「外部要因」も影響した。20年に始まった新型コロナウイルスの世界規模での感染拡大はラオスを訪れる外国人観光客の減少を招いた。ロシアによる2月のウクライナ侵攻で原油価格が上がり、米国の利上げでラオス通貨の相場が下がり、輸入品の価格を引き上げた。

ラオスの中央銀行総裁は最近、更迭された。

世界銀行によると、21年末時点でラオスの公的債務は国内総生産(GDP)比で88%に高まった。対外債務は推定145億ドルで、このうち対中国が47%を占める。中国はこの10年間で、ラオスにとって融資、投資、貿易の相手として最大になった。

米格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスは6月、ラオスの格付けをCaa2からCaa3へと一段階引き下げた。フィッチ・レーティングスは21年8月からのCCCを維持するが「デフォルトの可能性はある」と指摘している。

【関連記事】

・各国、経済再建急ぐ インド外相「資源高で不確実性」

この記事の英文をNikkei Asiaで読む
Nikkei Asia https://asia.nikkei.com/Economy/Laos-faces-public-backlash-as-economy-teeters-toward-default/?n_cid=DSBNNAR 』

インドの意外なIPEF参画、貿易赤字を巡る損得勘定

インドの意外なIPEF参画、貿易赤字を巡る損得勘定
編集委員 高橋徹
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCD230Q40T20C22A6000000/

『米国が新経済圏構想「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」を立ち上げ、アジアから13カ国が創設メンバーに名を連ねた。同盟国の日本、韓国、オーストラリアはもちろん、これまで地域の経済連携のハブ的存在だった東南アジア諸国連合(ASEAN)からも7カ国が参加した。意外だったのはインドが手を挙げたことだ。モディ政権下で保護主義が目立ってきた同国の利害得失をどうみればいいのだろうか。

インド参画の報が日本政府にもたらされたのは5月19日。バイデン米大統領が初来日してIPEF創設を発表する、わずか4日前だった。「ポジティブサプライズだ。入ってほしいとは思っていたが、まさか第1陣に加わるとは」と経済産業省関係者が打ち明ける。

その背景には3年前の苦い記憶がある。インドは2019年11月、16カ国による7年越しの協議が大詰めを迎えていた東アジアの地域的な包括的経済連携(RCEP)から離脱した。土壇場のちゃぶ台返しで全体の交渉妥結はさらに1年延び、インド抜きで協定発効にたどり着いたのは今年1月のことだ。

RCEP離脱のインド、米の新経済圏構想になびく

RCEP加盟の15カ国のうち11カ国はIPEFと共通だ。前者に背を向けたインドがなぜ後者になびくのか。貿易構造をみれば事情が浮かび上がる。

インドの最大の貿易相手国は13年度(13年4月~14年3月)から5年間は中国だった。その後、18~19年度は米国、20年度は中国、21年度は米国とめまぐるしく首位が入れ替わるが、対照的なのは貿易収支。対米は黒字、対中は赤字が定着し、昨年度は前者が328億ドル(約4兆4300億円)、後者は729億ドルといずれも過去最大だった。

直近で1900億ドルまで膨らんだ貿易赤字を改善したいインドは、中国からの輸入を減らし、米国への輸出を増やしたい。中国が中核のRCEPを離脱し、米主導のIPEFに参加する最大の理由だが、もうひとつ見逃せない要素がある。ASEANだ。

モディ首相は「自立経済圏」を掲げる=ロイター

対中は赤字全体の4割弱を占めるが、対ASEANの赤字も257億ドル、1割強とそれに次ぐ。かつてタイとの2国間の自由貿易協定(FTA)交渉で、成果を早く得ようと約80品目の関税を先行撤廃する措置を導入したところ、輸入急増で国内企業の経営破綻を招いた。そのトラウマからタイとは結局FTAを締結せず、10年に発効したASEANとの多国間FTAも自由化率は約77%と低水準にとどまる。その自由化率を引き上げるRCEPからの離脱は、中国に加えてASEANからの輸入増加も嫌った面があった。

ただ、RCEP加盟国との貿易赤字が全体の65%を占めるのに対し、IPEF加盟国とは10%にとどまる。IPEF加盟で仮に対ASEANの赤字が増えても対米黒字の拡大で十分に相殺は可能、との皮算用は働いただろう。

インドの参画で今後の交渉に火種も

「量」だけでなく「質」の違いも見逃せない。IPEFは米市場の開放を伴わないため、インドにすれば逆に米国をはじめとする他国からも市場開放を強要されない。また、貿易、供給網、インフラ・脱炭素、税・反汚職という4つの柱ごとにそれぞれ交渉し、先行して合意したものから実行に移す。特定の分野に絞った署名も可能で、供給網やインフラに関心が強いであろうインドには参加しやすい仕組みだ。

人口14億人を抱え、民主主義陣営の一角であるインドの参画は、中国抜きの経済圏づくりの性格を帯びるIPEFにとって大きい。ただ、経産省幹部は「RCEP交渉を思い起こせば、これからが大変だ」と身構える。この手の交渉は妥協なしには進まないが、RCEPでは参加国の間で何度も「またインドか」との声が上がるほど、同国のかたくなな姿勢が際立ったからだ。

インドはRCEP離脱後、国際経済からの孤立は避けようと、アラブ首長国連邦(UAE)や豪州とFTAを結んだ。ただ与党・インド人民党(BJP)の経済イデオロギーはいまも「国産優先」で、モディ政権は自立経済圏の構想を掲げる。インドとインド太平洋地域の経済圏は折り合えるのか。IPEF交渉は火種を抱えて走り出す。』

米景気後退、年内予測も 「バナナ」におびえるFRB議長

米景気後退、年内予測も 「バナナ」におびえるFRB議長
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN23F4G0T20C22A6000000/

『【ワシントン=高見浩輔】米経済の景気後退入りは、そう遠くない。こんな見方が急速に広がっている。米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は急ピッチの利上げでも経済の軟着陸(ソフトランディング)は可能だと主張するが、市場では年内の景気後退入りを予測する声も出てきた。インフレが収まらないうちに景気後退に入る「スタグフレーション」が現実味を帯びる。

FRBのシニアエコノミスト、マイケル・カイリー氏は21日、景気後退期の特徴である失業率の大幅な上昇が50%以上の確率で1年以内に起きると分析するリポートを公表した。高いインフレと低い失業率、金融環境などを勘案すると、足元で起きている需要超過は景気の減速によって解消されるという。

カイリー氏は「何事も自分の頭で考える熱心な研究姿勢と鋭い分析によってFRB内部で高い信頼を得ている」(OB職員)。リポートは今後の政策決定にも影響を及ぼす可能性がある。

「数カ月前には一般的ではなかった見解が、統計分析によってコンセンサスになっていく」。2023年の景気後退入りを予想している元財務長官のサマーズ氏は19日、米NBCでこう自信を示した。

米国野村証券は22年内の景気後退入りをメインシナリオとしている。英フィナンシャル・タイムズとシカゴ大が世界の経済学者50人弱に実施した6月調査では4割が23年前半までの景気後退を予測した。米調査会社カンファレンス・ボードの景気先行指数もすでに下を向いている。

足元の経済は国内総生産(GDP)の7割を占める個人消費を中心に堅調だ。小売大手ウォルマートなどの在庫増が懸念されているが、経済全体でみれば小売在庫の売上高比率は4月もなお1.1%台と低い。1.3~1.6%で推移していたコロナ禍前の20年間を大幅に下回る。現金給付などで約3兆ドルに膨らんだ過剰貯蓄が強い消費の背景にある。

アトランタ連銀が経済統計から自動的に逐次改定する「GDPナウ」は27日時点で4~6月期の実質経済成長率を0.3%と低く見積もる。1~3月期に続く2四半期連続のマイナスになるのではと話題になったが「自動車の生産計画などを反映しておらず、純輸出などを低く見積もり過ぎた異常値」(アマースト・ピアポント証券)との指摘がある。

「ハリケーンが来る」(JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモン最高経営責任者=CEO)のは、早くても夏場以降との見方が一般的だ。インフレで落ち込む消費者心理や、利上げによる金利上昇で打撃を受ける住宅投資など不安の芽は確実に増えている。

「バナナはそんなに遠くない」。5月のダボス会議で米カーライル・グループ創業者のルーベンシュタイン氏が使った隠語が、パウエル氏の心境をもっともうまく表しているかもしれない。「バナナ」は1970年代にカーター大統領から景気後退(recession)という単語を口にしないよう叱責された経済顧問が使い始めたとされる。

景気は気から。FRB議長が下り坂だと認めたら企業や消費者の心理は余計に落ち込み「言霊」が自己実現的に景気後退を呼んでしまう。22日の議会証言でパウエル氏は「景気後退の可能性が特に高まっているとは思えない」と否定した後、こう付け加えた。「景気後退の予測というのは、誰もが得意ではない」

最悪のシナリオはインフレが収まらない間に景気後退が始まる「スタグフレーション」だ。景気を支えるための金融緩和もできない手詰まりに陥り、景気後退の長期化につながる。嵐が来る天気予報でも、頭上に晴天が広がっているうちはインフレの沈静化を優先したい。パウエル氏の言葉にはそんな心理が見え隠れする。

多様な観点からニュースを考える

※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。

柯 隆のアバター
柯 隆
東京財団政策研究所 主席研究員
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ひとこと解説

経済学のフィリップス曲線は、物価と失業率は同時に上昇しないと仮定されている。しかし、今の世界経済はまさにインフレ再燃と失業率の上昇に直面している。FRBはインフレ抑制を急ぐあまり、景気を押し下げ、失業率が高騰するリスクが上昇している。FRBはインフレ過敏症にかかっているかもしれない。利上げをいったん先送りすべきかもしれない
2022年6月28日 7:35

永浜利広のアバター
永浜利広
第一生命経済研究所 首席エコノミスト
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ひとこと解説

そもそも、FRBの使命は物価の安定と雇用の最大化であり、通常のインフレ加速局面では利上げをやりすぎると景気悪化により雇用環境の悪化を招くために、難しいかじ取りを強いられます。
しかし現局面では、景気が良くなりすぎて、特に50台後半半以降の低賃金労働者がアーリーリタイアすることにより労働参加率の改善を阻んでいます。
このため、現局面ではむしろ急速な利上げにより経済を冷ました方が、雇用にとってはプラスに作用する可能性もありますので、適度であれば景気後退も受け入れられやすい局面にあると言えるでしょう。

2022年6月28日 7:15 』

ロシア国債利払い、猶予期間終了 事実上のデフォルト状態

ロシア国債利払い、猶予期間終了 事実上のデフォルト状態
https://www.jiji.com/jc/article?k=2022062700157&g=int

 ※ そして、最後は「こういうこと」に追い込まれる…。

『【ニューヨーク時事】複数の米メディアによると、ロシアの外貨建て国債の利払い猶予期間が26日、終了した。国債保有者の利息受け取りが確認されておらず、事実上のデフォルト(債務不履行)状態に陥ったとみられる。ロシアは支払ったと主張しているが、欧米の経済制裁により手続きができなかった。

ロシア、ルーブルで利払い ドル建て国債、「デフォルトではない」

 5月27日に期日を迎えたドル建て債とユーロ建て債の利息計約1億ドル(約135億円)は、30日間の支払い猶予期間に入っていた。ロシアの外貨建て債務のデフォルトが認定されれば、ロシア革命後の1918年以来、約1世紀ぶりとなる。

 経済制裁の一環で、米財務省は5月25日、米国人にロシア当局からの元利金支払いの受け取りを認める特例を打ち切った。ロシア政府は、デフォルトを回避するため、同月27日が期日の利払いを、特例打ち切り前に前倒しで実施したと表明していた。

 ただ、報道によると、ロシア当局は国債の利息を欧州の国際決済機関に送金したものの、経済制裁のため手続きが進まず、投資家の手元には届いていないという。 』

ロシアの外貨建て国債 “デフォルト”が起きた認識広がるか

ロシアの外貨建て国債 “デフォルト”が起きた認識広がるか
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220627/k10013660301000.html

『ロシア政府は5月27日、合わせて1億ドル、日本円でおよそ135億円のドル建てやユーロ建ての国債の利払い期限を迎え、期限までに外貨で支払い手続きをとったとしていました。しかし複数の海外メディアは、30日間の猶予期間が過ぎても投資家が資金を受け取っていないと伝えました。
アメリカ政府が先月、自国の投資家がロシア国債の利払いなどを受け取れる特例を終了させたことが影響したとみられます。

海外メディアは「ロシアの外貨建て国債がデフォルトに陥るのは1918年以来だ」と報じていて、これによってデフォルト=債務不履行が起きたという認識が市場で広がることが予想されます。』

交渉入り承認 北マケドニアのEU加盟―ブルガリア議会

交渉入り承認 北マケドニアのEU加盟―ブルガリア議会
https://www.jiji.com/jc/article?k=2022062500270&g=int

『【ソフィアAFP時事】ブルガリア議会は24日、隣国の北マケドニアの欧州連合(EU)加盟交渉入りを賛成多数で認めた。これを受け、ブルガリア政府が交渉開始を容認するか判断する。
 議会は条件として、言語や歴史をめぐるブルガリアの要求に北マケドニアが応じるようEUが保証することを求めた。ブルガリアのペトコフ首相は24日、EU首脳会議のため滞在中のブリュッセルで記者団に対し「次は北マケドニア政府が国民を説得する番だ」と述べた。』

米成長、大幅下方修正 景気後退は「回避へ」―IMF予想

米成長、大幅下方修正 景気後退は「回避へ」―IMF予想
https://www.jiji.com/jc/article?k=2022062500300&g=int

『【ワシントン時事】国際通貨基金(IMF)は24日、米国に対する年次経済審査の終了に当たって声明を出し、2022年の成長率見通しを2.9%に大幅下方修正した。4月発表の予想では3.7%としていたが、高インフレ抑制に向けた積極的な利上げの影響で「景気は減速する」と見込んだ。

経済政策のかじ取り難しく インフレ・景気後退を懸念―G7、ウクライナ侵攻が影

 IMFは23年の見通しも従来の2.3%から1.7%に引き下げた。24年は0.8%の低水準に落ち込むと予想した。
 ゲオルギエワIMF専務理事は記者会見で「米国は景気後退を辛うじて回避する。ただ、22、23年の景気下振れリスクは非常に大きい」と指摘。ロシアのウクライナ侵攻に伴うエネルギーや穀物の価格高騰など不安定要因も多く、米経済の急減速で混乱が世界に波及する事態に警鐘を鳴らした。 』

トヨタ、インドでスズキの新型SUV生産へ 輸出も計画

トヨタ、インドでスズキの新型SUV生産へ 輸出も計画
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOFD245QF0U2A620C2000000/

『トヨタ自動車は24日、スズキが開発した新型の小型多目的スポーツ車(SUV)をインドで生産すると発表した。生産した車両はトヨタとスズキがそれぞれインド国内で販売し、アフリカなどへの輸出も計画する。両社の強みを持ち寄り競争力を高める狙いだ。

高岡工場のハリアー生産の様子(2020年6月、愛知県豊田市)

トヨタの現地法人のトヨタ・キルロスカ・モーターが8月から南部カルナタカ州の郊外にある工場で年20万台生産する。同社がスズキにOEM(相手先ブランドによる生産)供給する形で、スズキ側は生産しない。販売する予定の車両の名称や価格、販売計画の詳細は7月に改めて公表するという。

トヨタの豊田章男社長は「両社の強みを生かしてインドで様々な選択肢を提供したい」とコメントした。スズキの鈴木俊宏社長は「今回の車両生産でインドの成長にも貢献できる」とした。

両社はインド政府が進める「メーク・イン・インディア」にあわせた投資活動を積極化している。トヨタの現地法人は5月、インド国内での脱炭素対応にグループ合計で約480億ルピー(約810億円)を投じると発表。工場のあるカルナタカ州で電動車部品の製造などに取り組む。スズキも同時期に、西部グジャラート州でのEVや電池生産に向けて約1044億ルピー(約1800億円)を投資すると発表した。

トヨタとスズキは19年に資本提携した。トヨタは環境関連などの先進技術を、スズキは小型車作りのノウハウを、互いに提供している。インド事業では、19年にトヨタのインド子会社が、スズキからOEM供給を受けたハッチバック「グランザ」を発売した実績がある。』

「出ばなくじかれた」 トヨタとSUBARU、新型EV販売停止

「出ばなくじかれた」 トヨタとSUBARU、新型EV販売停止
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOFD244RT0U2A620C2000000/

『トヨタ自動車とSUBARU(スバル)が5月に発売した新型の電気自動車(EV)の提供を止めた。国内では日産自動車が軽自動車のEVを投入するほか、世界でも競合がしのぎを削る。トヨタとスバルにとっては今後のEV戦略の試金石となる新型車だけに、発売後1カ月ほどでの急ブレーキに、販売店などから困惑の声が広がっている。

【関連記事】トヨタとSUBARU、新型EVの販売停止 脱輪恐れ

新型EVは両社が共同で開発し、トヨタが生産する車両だ。トヨタは「bZ4X」、スバルは「ソルテラ」という車名で売る。元町工場(愛知県豊田市)で製造する。トヨタは今後、EV専用のラインを整備する方針だが、現時点ではハイブリッド車(HV)など複数の車種が流れる「混流」で立ち上げた。EVとHVは部品が違うため、混流の難易度は高いという。

今回、タイヤを車両に固定するボルトが外れて脱輪の可能性があるとして、国内ではリコール(回収・無償修理)を国土交通省に届け出た。問題がボルトの強度なのか、車両なのか、締め付け工程や設計なのか、といったことは明らかになっていない。新型EVで使われているボルトの締め方は、トヨタにとっては比較的新しい。だが、既にレクサス車に導入済みで、これまでリコールはない。

新型EVの開発が本格的に始まったのはスバルの技術者がトヨタに出向した19年で、開発期間は約3年間だ。車台から新たに開発した車両の開発期間としては短い。

ソルテラ開発責任者の小野大輔プロジェクトゼネラルマネージャーは「EVの共同開発はトヨタにとってもスバルにとってもこれまでにはない新しい取り組み。出向してトヨタの社員となることで、短期間での共同開発をやり切った」と説明していた。トヨタとスバルは今回の問題がEVならではの課題なのかどうかを含めて原因究明を進め、対策を打つ方針だ。

トヨタはグループ会社の「KINTO(キント)」を通じて、サブスクリプション(定額課金)サービスの申し込みを5月から始めていた。今回の問題を受け、東京都や大阪府、愛知県で予定していた試乗会を中止した。大阪は23日にスタート予定だったが、急きょ取りやめた。

EVは消費者にとってまだなじみが薄く、試乗会で実際に乗ってもらうことを最重要の販売戦略と位置づけていた。キントが5月に神奈川県で開いた試乗会では約200組が乗車し、約1000組に接客したという。ある販売店幹部は「やっと納車というところで納期延期の説明をしなければならない」と肩を落とす。

スバルのある販売店社長は「いよいよ納車が始まるタイミングだったので、出ばなをくじかれ非常にショックだ」と表情を曇らせる。顧客への説明はまだ。別の販売店幹部は「タイヤのボルトという初歩的なところでのリコールであり、短期間で共同開発することの難しさを感じた。これだけで終わってくれるといいが」と話す。

24日のトヨタ株は前日比1%安の2111円50銭で取引を終え、日経平均株価の1%高に対し逆行安となった。東海東京調査センターの杉浦誠司氏は「リコールの株価影響は台数規模からすると限定的。利益確定売りが先行した形だろう」と指摘する。一方、ボルトのような基礎的な箇所でのリコールに「トヨタのEVにレピュテーションリスク(評判を害する危険)が生まれてしまった」とも話した。』

ホンダ、中国・広州でEV新工場 700億円で

ホンダ、中国・広州でEV新工場 700億円で
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM20BDR0Q2A620C2000000/

『【広州=川上尚志】ホンダは20日、中国南部の広東省広州市で電気自動車(EV)の新工場の建設を始めたと発表した。投資額は34.9億元(約700億円)。生産能力は年12万台で、2024年の稼働開始をめざす。中国ではEV市場が急成長し、現地勢を中心に競争が激しくなっている。生産体制の拡充を急ぎ、中国勢の追い上げを狙う。

合弁会社の「広汽ホンダ」が、敷地面積40万平方メートルの新工場を建てる。広汽ホンダにとって5つ目の乗用車工場で、EV専用は初めて。もう一つの主力合弁会社「東風ホンダ」でも年間生産能力12万台のEV新工場を建設する。ホンダの中国でのEVを含む自動車全体の生産能力は24年に173万台と、現状より約2割増える見通し。

広汽ホンダのEV新工場は、東風ホンダの新工場とともに、中国で展開するEV専用ブランド「e:N(イーエヌ)」シリーズの主力生産拠点にする計画だ。ホンダは第1弾として多目的スポーツ車(SUV)を東風ホンダで4月に発売し、広汽ホンダでも6月20日に売り出した。27年までに同シリーズで10車種を投入して市場を掘り起こす。

4月に発売したSUV「e:NS1」は、補助金込みの実売価格が17万5000元(約350万円)からになり、米テスラなどに比べて価格を抑えた。オンライン販売を本格化し、注文から納車までネットで完結する販売にも力を入れる。ホンダのEVの中国販売は21年に約1万台にとどまっているが、30年に80万台に伸ばす構えだ。

ホンダは脱炭素に向け、世界の新車販売全てを40年にEVか燃料電池車(FCV)にする目標を掲げる。北米でもEV専用ラインを設けることを検討する。北米では米ゼネラル・モーターズ(GM)と共同開発する中大型のEVを24年に2車種発売する。27年には小型SUVを含め、300万円台からの量販EVを複数車種発売する計画だ。

【関連記事】

・ホンダ中国EV、中間層に的 テスラより安い340万円から
・ホンダ、中国で新型EV26日発売 欧州にも23年から輸出 』

[FT・Lex]新興国が窮地に、金利上昇で強まる債務圧力

[FT・Lex]新興国が窮地に、金利上昇で強まる債務圧力
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB177LD0X10C22A6000000/

『新興国債券に嵐が近づいている。米連邦準備理事会(FRB)の積極的なインフレ抑制策によって米ドルが上昇している。ウクライナ紛争によるエネルギーと食品市場の混乱も加わり、新興国経済は久方ぶりの難局を迎えている。

スリランカでは2022年に入ってから、株式市場がドル換算で大幅に下落した=ロイター

ドル建ての新興国ソブリン債のベンチマークであるJPモルガンEMBIグローバル指数と、安全資産とされる米国債の間の利回り差(イールドスプレッド)はここ数日急拡大している。ブルームバーグのデータによると、EMBI指数と米国債の利回り差はここ1年で約3%から4%以上に拡大した。

スリランカは外的ショックがいかにある国の経済にとって打撃となるかを示す典型的な例だ。スリランカの株式市場は2022年になってドル換算で64%下落した。食料とエネルギー価格の高騰に対する国民の怒りがきっかけで、5月には首相が辞任するなど政権が崩壊し、国債はデフォルト(債務不履行)に陥った。

この傾向は当分続くだろう。世界銀行は、22年2月にロシアがウクライナに侵攻する以前から低所得国の6割近くが過剰債務に陥っていたか、その危険が高かったとしている。国際金融協会(IIF)によると、新興国は22年中に5兆5000億ドル以上の債券や融資の償還を迎える。

最も脆弱な国々は多額の債務を抱え、外貨準備は限られている。国際通貨基金(IMF)に支援を要請している国には、エジプトやチュニジア、パキスタンなどが含まれる。サハラ以南のアフリカでは、ガーナやケニア、南アフリカ、エチオピアが特にリスクが高い国だ。

新興国はこれまで、西側諸国の金融緩和政策による低金利の資金に頼って問題を取り繕うことができた。しかし、もはやそれはできない。先進国の金利上昇で外国人投資家のリスク選好姿勢が後退した。IIFによると、外国人投資家の新興国債券市場への参加率は18%と09年以降最低の水準にある。

米国の個人投資家は新興国債券を敬遠している。米調査会社EPFRのデータによると、年初以来380億ドル以上が新興国の投資信託や債券ETF(上場投資信託)から流出した。資金の流出は今後も続くだろう。

(2022年6月17日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版 https://www.ft.com/)

(c) The Financial Times Limited 2022. All Rights Reserved. The Nikkei Inc. is solely responsible for providing this translated content and The Financial Times Limited does not accept any liability for the accuracy or quality of the translation. 』

「強すぎるドル」の波紋 引き締め競争、勝者なき消耗戦に

「強すぎるドル」の波紋 引き締め競争、勝者なき消耗戦に
ニューヨーク=斉藤雄太
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN16EP90W2A610C2000000/

『国際金融市場で米ドルの強さが際立っている。インフレ退治に出遅れた米連邦準備理事会(FRB)の急速利上げがマネーをひき付け、物価抑制につながるドル高を米当局も容認する。通貨安とインフレ圧力が強まる他国は対抗利上げを強いられ、危うい「引き締め競争」の影もちらつく。

「物価高が中央銀行に金融引き締めを迫り、通貨にはプラスとなる力学が働いている」。バンク・オブ・アメリカのFXストラテジスト、ジョン・シン氏は足元の外国為替相場の特徴をこうみる。

ドルは今年に入って独歩高が進み、主要な先進国通貨に対する強さを示す指数は昨年末から9%上昇した。約20年ぶりのドル高水準にある。対円では先週に1ドル=135円台と24年ぶりのドル高・円安を記録した。

FRBは想定以上の物価の強さを踏まえ15日、約27年ぶりに政策金利を0.75%引き上げるなど利上げを急ぐ姿勢を鮮明にした。マイナス金利政策の続く日欧や小刻みの利上げを続ける英国との差が意識され「ドルは引き続き強含む」(バンカメのシン氏)との見方が広がる。

強いドルはインフレ抑制を最優先課題に据えるバイデン政権とFRBにとって追い風になる。物資を安く輸入できるようになり、ドル高が進んだ4月は石油を除く輸入物価の前月比の伸びが緩やかに、5月は約1年半ぶりにマイナスになった。

JPモルガンはドル高が米国の輸入増と輸出減を招き、成長率と物価を押し下げる経路を見込む。同社のエコノミスト、マイケル・フェローリ氏は「今年下期には(ドル高の)米製造業への影響が出てくる」とみる。

「金融引き締め策が機能している証左だ」。前FRB議長のイエレン財務長官は5月、米紙主催のイベントでドル高についてこう言及した。金融環境が広範に引き締まり、過剰な需要が減って物価が下がることを期待する当局からすると、現在のドル高は思惑通りの展開といえる。

1995年にクリントン政権(当時)の財務長官に就いたロバート・ルービン氏は「強いドルは国益」と訴え、日米通商摩擦などで進んだドル安基調を反転させた。足元の米国の動きは「強いドル」志向への回帰を示唆するが、その波紋は世界に広がる。

「新興国で不確実性を高め、ボラティリティー(市場変動)を生じさせている」。ブラジル中央銀行は15日、11会合連続の利上げを決めた後の声明文で、米利上げで生じる余波に警戒感をにじませた。ドル高は米国の貿易相手国の通貨安を招き、輸入物価に上昇圧力をかける。米国への資金シフトも起きやすくなる。

各国は対抗するように利上げに踏み切っている。アジアでは5月以降にインド、マレーシア、フィリピンなどが動いた。欧州中央銀行(ECB)が7月の利上げ方針を示し、スイスの中銀が約15年ぶりに政策金利を引き上げたのも同じ流れにある。

トランプ前政権はFRBに露骨に金融緩和圧力をかけてドル安誘導と輸出の促進を狙い、他国は「緩和競争」「通貨安競争」に身構えた。現在は正反対の動きが起きている。米ハーバード大のジェフリー・フランケル教授は言論サイトで「逆通貨戦争に備えよ」と訴え、各国が通貨高をめざす展開を予見する。

FRBの政策転換が世界を揺らしてきたことは歴史が証明する。

前回、0.75%の利上げに踏み切った1994年11月のすぐ後にはメキシコが通貨危機に陥った。北米自由貿易協定(NAFTA)の成立などで成長期待の投資マネーを集めてきた同国だが、政情不安や米利上げが重なり、資金流出が加速した。メキシコの外貨準備は急減し、変動相場制に移行した通貨ペソは暴落した。

2013年5月には当時のバーナンキFRB議長が量的緩和の縮小(テーパリング)を唐突に示唆したのを機に、新興国通貨が急落する「テーパータントラム」が起きた。インドの通貨ルピーやインドネシアのルピアの対ドル相場は数カ月間で2割超下落した。

今回も既に変調の兆しがみえる。国際金融協会(IIF)によると、米利上げが始まった3月以降、新興国の証券市場からは3カ月連続で計200億ドル(2.7兆円)規模の資金が流出した。米ピーターソン国際経済研究所のアダム・ポーゼン所長はドル高が進めば「ドルで借金している国やエネルギー・食品の(輸入)代金を払っている国は厳しくなる」と指摘。「金融の脆弱性で最も心配されるのは新興国債務だ」とみる。

「ドルが世界的に広く使用されていることは金融安定の課題をもたらしうる」。17日、ドルの国際的役割を討議する会合でパウエルFRB議長はこう指摘し、危機時のドル供給の枠組みなど安全網の存在を挙げた。金融システム面での備えを説明したものだが、金融政策を通じたドル高が他国に及ぼす悪影響を和らげられる妙手はない。

新型コロナウイルス禍からの回復途上にある世界経済は引き締め競争に耐えられるほど盤石ではなく、拙速な利上げは景気減速に拍車をかける。「強いドル」は勝者なき消耗戦を引き起こす恐れがある。

【関連記事】

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・ロシアの戦後処理、通貨覇権左右 「強いドル」いつまで
・0.75%利上げのドタバタ劇、揺らいだFRBの信認
・利上げドミノ、市場揺らす スイスが震源に 』

「30年電動車5割」目標 米大統領、各国に導入呼びかけ

「30年電動車5割」目標 米大統領、各国に導入呼びかけ
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN1806H0Y2A610C2000000/

『【ワシントン=鳳山太成】バイデン米大統領は17日、主要国で気候変動問題を話し合う首脳会議をオンラインで開いた。新車販売に占める電気自動車(EV)など電動車の比率を2030年に50%に引き上げる米国の目標を改めて強調し、他国も同様の目標を掲げるよう呼びかけた。

今回開かれたのは、オバマ政権が創設した「エネルギーと気候に関する主要経済国フォーラム」。バイデン政権下では3回目の開催となり、日本や中国、欧州連合(EU)など20カ国・地域以上の首脳らが参加した。

バイデン氏は会議の冒頭で「(温暖化ガス)排出ゼロの自動車を増やすことで、変動の大きいガソリン価格の痛みを取り除き、運輸部門の排出量を減らすことができる」と述べ、電動車の販売を増やす目標を導入するよう参加国に促した。

バイデン政権はこのほか、温暖化ガスの一種、メタンに関する新たな取り組みを発表した。石油・ガスの生産で漏れ出るメタンの排出を減らすため、350万ドル(約5億円)の技術支援を各国に提供する。

温暖化ガス排出を50年に実質ゼロにする目標の実現に向け、技術開発に最低900億ドルを投じる取り組みに加わるよう求めた。ロシアのウクライナ侵攻で肥料価格が高騰するなか、肥料の効率的な利用への研究開発に資金を投じる枠組みも立ち上げた。

11月にエジプトで第27回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP27)が開かれる。バイデン氏はCOP27に向け、脱炭素政策を巡る各国の機運を高めたい考えだ。』

[FT]イランを目指すロシア企業 制裁下のビジネスに関心

[FT]イランを目指すロシア企業 制裁下のビジネスに関心
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB164WA0W2A610C2000000/

 ※ 「価値(≒利益)」は、「差異」から生じる…。

 ※ 「商行為」とは、「ある地域」と「ある地域」で、「価格が違うもの」を見つけだして、「安い地域で仕入れて」、「高い地域で売る」ことで、この間の「価格差」を取得するというのが、原型だ…。

 ※ 中国の古代の王朝である、「商王朝(「殷」ともいう)」に、そういうことをやった人が多くいて、「商人」と呼ばれた…。

 ※ だから、「規制」「制裁」の隣りには、「巨額の価値(利益)」が潜んでいる…。
 ※ アメリカ禁酒法時代には、シカゴで、アル・カポネが、酒の密造・販売やって、大儲けした…。

 ※ 今般のロシア制裁の隣りにも、「巨額の利益」が潜んでいることだろう…。

 ※ 今日は、こんなところで…。

『2月にロシアがウクライナに侵攻して以降、イランでツアーガイドをするアリさんのビジネスは好調だ。ただ、以前の顧客はペルシャの芸術や食べ物、文化に興味を持つロシア人観光客だったが、今ではそれがビジネスマンに変わった。
イランを訪れるロシア人ビジネスマンが増えている(テヘランの市場)=ロイター

欧米諸国が相次いでロシア企業などに制裁を科すなか、ロシア人は「米国の制裁下でイランの人々がどうやって暮らしているのかに興味津々だ」とアリさんは話した。

自ら事業を起こしたアリさんはフルネームを明かさないことを条件に取材に応じた。アリさんがテヘランで案内したロシア人は5月だけで160人だったが、そのほとんどがビジネスマンだったという。新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)前は観光客が中心で、通常は40人程度だった。

アリさんは「イランを訪れるロシア人ビジネスマンは以前は上から目線でイラン企業に商品を売り込んでいたが、今ではイランの商品を買おうとしている。目を見張るほどの変化だ」と話す。

アリさんはロシア人ビジネスマンをテヘラン周辺の企業に案内し、テヘランの企業関係者を紹介している。欧米の消費財企業がロシアへの商品供給を縮小するなか、アリさんの顧客はイランでアップルのスマートフォンが広く流通しているのを目の当たりにして驚き、興味を示すという。

欧米の消費財も入手可能

2015年にまとまったイラン核合意からトランプ前米大統領が離脱して以降、イランは米国の厳しい制裁を受けて世界の金融システムから実質的に切り離された状態で4年間耐えてきた。だが、イランで流通している欧米の消費者向け製品はアップルのスマホだけではない。広く出回っているのは中国ブランドだが、フィリップスやボッシュといった欧米の消費財大手の製品も購入可能だ。そうした商品がどうやってイランに入ってくるのかは定かではない。密輸の場合もあれば、個人が海外から持ち込む場合もあるだろう。だが、業者によると、トルコやイラク北部で荷を積み替えて米国の制裁を回避するのが主要ルートだという。

「ロシアは欧米の部品や製品を買える世界の闇市場とのつながりで、イランに大きく出遅れている」とアリさんは言う。

ウクライナでの戦争でイランが恩恵を受けているのは、こうして非公式に助言できることだけではない。中国への原油輸出と近隣国への石油以外の製品の輸出で成り立つイラン経済は、石油価格の急騰で潤うようになった。

イラン経済は制裁で大打撃を受け、物価は急騰し貧困が広がっている。一方で、イラン企業が制裁をかいくぐって輸出入を続けていることが制裁の影響を軽減している。

イランが核合意の再建でバイデン米政権と合意に達すれば制裁は解除されるだろうが、核合意再建に向けた外交努力は行き詰まっている。イラン政府が先週、国際原子力機関(IAEA)の監視カメラ27台を核施設から撤去すると発表したことも交渉の障害になっている。核合意の署名国であるロシアは3月、欧州連合(EU)の仲介によりウィーンで開いた交渉で米国の対ロ制裁がロシアとイランとの協力関係に影響を及ぼさないと保証するよう求め、交渉は暗礁に乗り上げた。

イランでは、ウクライナでの開戦直後は少なくとも、ウィーンでの再建交渉の行き詰まりから欧米の注意をそらす効果があったとの見方が依然として存在する。

イランの強硬派に近い政府関係者は「ウクライナ戦争はイランにとって天恵だった」と言う。「そして今、欧米諸国は高インフレと食品価格の上昇という国内問題にどう対応すべきかで頭がいっぱいだ」。さらにこの関係者は、ロシアと中国は以前は核合意復帰で欧米の大国と合意するようイランに求めていたが、今では他に懸念することがあると指摘する。「(ロシアの)ラブロフ外相から何も聞いていないのか。ロシアはもうイランに核合意復帰を求めていない」

ロシア副首相が協力拡大を明言

イラン当局は、北方に位置する近隣国のロシアは、しいて言えばイランの希望だと認めている。イランのファテミアミン鉱工業貿易相はロシアのウクライナへの侵攻開始直後に記者団に対し「イラン経済に対する悪影響より好影響のほうが格段に大きい」と述べた。

ロシアのインタファクス通信によると、同国のノバク副首相は5月にテヘランでの企業関係者との会合で「我々は貿易、経済、物流、投資、金融(および)銀行業務での協力を拡大する方向にある」と語った。さらに、2国間の貿易が22年1~3月に10%以上拡大したと述べた。

イランの関税当局によると、2国間の貿易額は3月末までの1年間で22億ドル(約3000億円)に上った。中国やロシアとの関係拡大を志向するイランのライシ大統領は、ウクライナ侵攻前でさえ2国間の貿易規模が「満足すべき水準ではない」との点でロシアのプーチン大統領と意見が一致していると述べていた。

両国はリアルとルーブルというそれぞれの通貨を貿易決済に使用することでも合意しているとイランのオジ石油相は言う。この点からは両国がドル調達に苦戦していることがうかがえる。

イランの改革派アナリストは両国の経済がエネルギー輸出に依存する点で似すぎていて、得られる恩恵は多くないとみる。イラン経済は規模でロシアよりはるかに小さい。世界銀行の20年のデータによると、ロシアの国内総生産(GDP)はイランの7倍以上だ。

イランのエテマド紙記者でエネルギー事情に詳しいアリ・シャムス・アルダカニ氏は「ロシアが戦略的パートナーになれると考えているのなら、歴史書を読んでロシアには行動理念がないことを認識すべきだ」と書いた。さらに「当局が今何も策を講じなければ、ロシアはアジアに残っているイランの石油輸出先を奪い、アジアの石油市場で主要プレーヤーになるだろう」と指摘している。

イラン・ロシア商工会議所の会員であるジャリル・ジャラリファー氏は通信社ILNAに対し、ウクライナ侵攻以降、ロシア人投資家はイランには来ていないと述べた。「彼らは我々の頭上を通り越してアラブ首長国連邦(UAE)に飛んで」投資していると語り、侵攻開始後、ロシア人が大挙してドバイを訪れていることを指摘した。

こうした反対意見はあるものの、ロシアのウクライナ侵攻がイラン企業に好影響を与えているとする点でアナリストの意見はツアーガイドのアリさんと一致している。

ロシア人ビジネスマンの目当ては通常、重機部品や建材の調達だとアリさんは言う。今はゆっくりとしか進んでいないが、いずれ2国間の協力が拡大するとアリさんは考えている。

「ロシアの需要はじわじわと(イランの)市場に向かっている。対ロ制裁が続く場合、イランとロシアの企業が効率よく協力できるようになるまでに1~2年はかかるだろう」とアリさんは語った。

By Najmeh Bozorgmehr

(2022年6月15日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版 https://www.ft.com/)

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