FRB、資金供給を大幅縮小へ バイデン陣営は反発

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO66523290R21C20A1000000/

『【ワシントン=河浪武史】米連邦準備理事会(FRB)は20日、新型コロナウイルス対策として発動した中小企業向けの資金供給策などを、2020年末で打ち切る方針を表明した。米財務省の要請を受けたもので、米経済の危機対策が一段と縮小することになる。民主党のバイデン陣営は「極めて無責任だ」などと反発している。

FRBは20日、パウエル議長がムニューシン財務長官に宛てた書簡を公表し、一部の資金供給策の打ち切りを表明した。停止するのは(1)中小企業向けの融資(2)社債の購入(3)資産担保証券への資金供給(4)州・地方債の購入――の4つの支援策だ。12月31日が制度の期限で、FRBは財務省に延長を求めていたが、認められなかった。

FRBは3月以降、金融市場や産業界を支援するため、総額で4兆ドル(約415兆円)規模の枠を設けて資金供給してきた。コマーシャルペーパー(CP)の購入など一部の支援策は21年春まで延長するが、12月末で支援規模は2兆ドル程度まで半減する。米経済は失業給付の特例などが失効しており、財政・金融政策の両面でコロナ対策が縮小。目先の景気の不安要素となる。

資金供給を打ち切るのは、ムニューシン財務長官がFRBに必要財源の返還を要請したためだ。新型コロナ対策としての緊急資金供給は、法制度上、米財務長官の承認が必要になる。米財務省は資金供給の財源として4550億ドルをFRBに与えていたが、連邦議会が検討する追加の財政出動に転用するため、資金の返還をパウエル議長に促していた。

大統領選で当選が確実になったバイデン前副大統領(民主)の陣営は強く反発している。FRBの資金供給策が12月末で打ち切りになれば、政権が発足する21年1月20日前後の金融市場が不安定になるリスクがあるためだ。陣営幹部は声明で「米財務省の支援打ち切りは時期尚早だ」などと批判。トランプ政権とバイデン陣営との対立の火種ともなってきた。

FRBが打ち切る4つの資金供給策は、実際には利用が広がっていない。中央銀行が一般企業に資金供給する「メインストリート融資制度」は極めて異例な産業支援として注目されたが、実行額は10月末時点で39億ドルにとどまる。6000億ドルの資金枠を用意したが、融資条件が厳しく敬遠された。州地方政府の支援も16億ドルと、資金枠(5000億ドル)のごくわずかしか使われていない。

FRBの資金供給が使われないのは、市中金利が大きく低下して、企業や地方政府が市場から必要なマネーを調達できるようになったためだ。米国債に対する米社債の上乗せ金利は、コロナ危機直後に平均4%まで急上昇したが、現在は1%台前半まで低下した。株価も最高値圏にあり、市場環境はコロナ危機前よりも緩和的といえる。

もっとも、市場機能が回復したのは、FRBの巨額の資金供給策による「見せ金効果」で、投資家に安心感が広がったためだ。新型コロナの感染者数は再び急拡大しており、FRBによる安全網が薄くなれば、市場が再び動揺しやすくなる懸念もある。

ムニューシン財務長官はFRBに返還を求めた4550億ドルを、追加の財政出動に転用したい考えだ。共和党の上院トップ、マコネル院内総務も21日の声明で「未使用の資金を活用するのは全く正しい。議会は追加救済策に同資金を充てるべきだ」と表明した。ただ、上下両院は選挙後も与野党対立で混迷したままで、財政出動の議論は止まっている。トランプ政権と連邦議会が追加のコロナ対策を発動できなければ、FRBから戻る巨額の資金はそのまま宙に浮くことになる。』

コロナ相場はバブルか 「バフェットの指標」警戒域に

コロナ相場はバブルか 「バフェットの指標」警戒域に
マネーの世界 教えて高井さん
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO66449730Z11C20A1I00000/

※ 今後の最大の関心事は、「いつ逃げ出したら、いいのか」「何が、逃げ出しの指標となるのか」ということだ…。

※ それを考える上で、非常に参考になった…。是非とも、一聴をオススメする…。

『米国株は史上最高値を更新し、日経平均株価も約29年ぶりの2万6000円台を付けた。新型コロナウイルスの感染拡大と同時並行で進む世界株高。市場には「カネ余りが生んだバブルでは」といった声も広がる。

「バブルかどうかは、はじけてみるまで分からない」。よく知られたグリーンスパン元米連邦準備理事会(FRB)議長の言葉だ。2008年の金融危機につながった住宅バブルを生んだ「主犯格」の自己弁護のようにも響くが、これは真実だろう。今のコロナ相場がバブルか否か、答えがあるわけではない。

確かなのは、新型コロナのパンデミックが始まる前から、世界の株式市場には過熱の兆しがあったことだ。いわゆる「バフェットの指標」は15年に警戒水準の100を超えて以降、高止まりしてきた。

バフェットの指標は株式市場全体の時価総額を国内総生産(GDP、名目ベース)で割って100を掛けて計算する。株式市場と実体経済のサイズを比べるざっくりとした発想の物差しだ。理論的に適正値があるわけではないが、ITバブル時に米著名投資家ウォーレン・バフェット氏が過熱のサインと指摘して以来、注目を集めてきた。

世界取引所連盟(WFE)によると19年末の加盟取引所の時価総額は合計約93兆ドル。全世界を対象としたMSCI指数はドルベースで年初来で約8%上昇しており、足元では世界の株式時価総額は100兆ドル程度に膨らんでいる。一方、国際通貨基金(IMF)の見通しでは、新型コロナの打撃で20年の世界の名目GDPは約84兆ドルと前年比4%目減りする。

この結果、バフェットの指標は120程度と金融危機前夜の07年末の116を上回り、米国の同指標は170と異例の水準に切り上がっている。

ワクチン開発のニュースに対する敏感な反応を見ても、今の株高は「コロナの後」の経済正常化を先取りする動きとみて良いだろう。IMFはコロナ禍を乗り越えた後、世界のGDPが23年に100兆ドルを超える見通しを示している。バフェットの指標に照らせば、現状の株価は3年後の世界経済の姿に見合った水準とも解釈できる。

株式相場が「ここからさらに上」を目指せばバブルに対する警戒感はより強まるだろうが、先述の通り、バブルか否か、誰にも確信は持てない。分かっているのは、マーケットはこれまでもバブルを繰り返してきたし、今後もその本質は変わらないだろうという事実だ。

今回の「教えて高井さん」の解説動画では、過去のバブルを振り返り、そこに共通するパターンと現状の比較を試みた。

経済学者ジョン・K・ガルブレイスは名著『バブルの物語』で、投機の熱狂に飲み込まれないための処方箋は「高度の懐疑主義」を保つことしかないと喝破した。未曽有の危機下の異例の株高局面だからこそ、一息入れて、歴史の教訓に目を向けるのは無駄ではないだろう。』

iPhone12分解してみた 韓国勢部品シェア躍進、日本と差

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO66514850Q0A121C2EA5000/

『米アップルのスマートフォンの構成部品で韓国メーカーの存在感が高まっている。新型の「iPhone12」を分解調査したところ、価格ベースで韓国製の比率が27%と前モデル(iPhone11)と比べ9ポイント上昇し、日本との差が広がった。サムスン電子製を中心に有機ELパネルの採用が増えた。日本が強みを持つ分野が限られてきた。

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調査会社のフォーマルハウト・テクノ・ソリューションズ(東京・江東)による10月に発表された「iPhone12」の分解調査を、日本経済新聞社が分析した。

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アップルは複数メーカーから調達している。今回分解した端末をベースにしたフォーマルハウトの推計によると、iPhone12の原価は373ドル(4万円弱)。このうち27.3%を韓国、13.2%を日本が占めた。2019年秋に発売したiPhone11と比べると韓国は9.1ポイント上昇し、日本は0.6ポイント低下した。米国の比率は25.6%で、前モデルに比べて0.2ポイント下がった。

背景にあるのがディスプレーの主役の変化だ。12シリーズは液晶から画像が鮮明な有機ELパネルに全面的に移行した。有機ELパネルで世界シェアトップのサムスンの供給が大きく伸びたとみられる。

一方、アップルの主要ディスプレー供給メーカの日本のジャパンディスプレイ(JDI)はスマホ向けは液晶しか供給できず、12シリーズでゼロとなった。有機ELはかつてソニーやパイオニアなど日本勢が開発で先行したが、その後の韓国勢との投資競争についていけず、韓国メーカーの独壇場だ。

分解した「iPhone12」の内部
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フォーマルハウトによると、有機ELパネルの想定価格は1枚70ドルと部品原価総額の約2割を占めるという。部品で最も価格の高いパネルで韓国勢が優位性を確立したことが、部品シェア躍進につながった。

韓国勢はフラッシュメモリーでサムスン、DRAMでSKハイニックスと10ドル以上の高価格の部品供給で強さが目立つ。

一方、日本勢はカメラの画像センサーでソニー製のCMOSが使われ、電圧を安定させる機能などがある積層セラミックコンデンサーで村田製作所が高いシェアを維持している。

ただ、ソニーのCMOSの推定原価は1つ7.4~7.9ドル。コンデンサーはiPhone1台で数百個使用されるが、総額でも数ドル程度だ。

初の次世代通信規格の5G対応となったiPhone12では「対応する電波数が増え、セラミックコンデンサーなど日本勢が強い受動部品の数が拡大した」(フォーマルハウトの柏尾南壮ディレクター)という。それでも単価は低く、金額ベースのシェア向上につながらなかった。

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日韓のサプライヤー以外では、米国勢でクアルコムが通信用半導体、テキサス・インスツルメンツ(TI)がアナログ半導体の供給を維持している。全体の部品原価が上昇する中、高額品を韓国勢に押さえられたことでシェア後退を許した。米中テック戦争の影響が懸念される中国製の部品は全体の5%未満だった。

調査会社IDCによると、20年の世界スマホ出荷台数は前年比約12%減の12億台に落ち込むもようだ。スマホ全体の成長鈍化はコロナ前から顕在化しており、iPhoneの中長期的な出荷拡大余地も限られそうだ。ある部品メーカーの幹部は「アップルの値下げ要請も強まり利益率がさらに低くなりかねない」と話す。(松元則雄)』

世界の債務残高、過去最大の277兆ドル GDP比365%

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO66424980Z11C20A1MM8000/

『世界の主要金融機関が加盟する国際金融協会(IIF)は18日、2020年末の世界の債務残高が過去最大の277兆ドル(約2京9千兆円)になるとの見通しを示した。国内総生産(GDP)比では365%と、19年末から40ポイント以上拡大する。

新型コロナウイルスの感染拡大で各国政府が財政出動を進めたことが背景にある。IIFは「経済活動に重大な悪影響を与えることなく、世界経済が将来(債務問題を)解消できるかには不確実性がある」と指摘した。

20年9月末時点の世界の債務残高は1年前から8%増の272兆ドルに達し、20年に入り15兆ドル増加した。年末に向けても減速する兆しはほとんどないとしており、さらなる増加を見込む。

7~9月期時点の先進国市場の債務残高は前年同期比8%増の約196兆ドルだった。GDP比では430%を超え、19年よりも50ポイント以上増えた。新興国は同3%増の約73兆ドルで、GDP比では約250%だった。中国で企業の債務が増加したことが響いたという。

中国を除く新興国の債務残高は為替の変動などにより29兆ドルと19年末(31兆ドル)より減少したが、IIFは新興国では歳入も減少しているため債務負担が問題になるとしている。』

米欧景気の停滞再び 経済再開、コロナで相次ぎ中断

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO66427910Z11C20A1MM8000/

『世界経済は再び停滞が鮮明になってきた。日米欧の実質成長率は7~9月期に急回復したが、消費などの最新データをみると勢いの鈍化が目立つ。新型コロナウイルスの感染再拡大による欧州の都市封鎖などで人の移動も大きく減少してきた。株高や企業業績の上方修正など明るい動きもあるものの、感染拡大が続けば景気の下押し圧力が高まる可能性がある。

フランスの首都パリ市内のショッピングモール。例年ならクリスマス商戦に向けてにぎわうはずのおもちゃ売り場は、立ち入り禁止のテープが貼られたまま。経済活動の再開が、コロナ再拡大で逆戻りした。

米グーグルが集計したスマートフォンの位置情報データによると、パリを含む仏首都圏の商業・娯楽施設や職場などへの人出は、15日時点でコロナ流行前の半分強だった。パリの人出は9月に8割超まで回復していた。

仏政府は感染再拡大で10月30日からレストランやバーの店内営業を禁じるロックダウン(都市封鎖)を再導入した。ピーク時に5万人を超えた新規感染者数は約3万人まで減ったが、まだ安心できない。カステックス仏首相は12日、ロックダウンを少なくともあと15日間続けると表明した。

人出の落ち込みは消費者の購買意欲も冷ます。仏の消費者心理指数は米調査会社モーニング・コンサルトが算出する日次データでみると、11月に入ってから半年ぶりの低水準となる60割れが相次ぐ。1カ月前に比べ約1割低下し、4月に記録した感染第1波の水準(57前後)に近づく。

11月2日から飲食店の営業禁止など部分的なロックダウンに踏み切ったドイツも、新規感染者が2万人前後と高止まりし、封鎖解除のメドは立たない。メルケル独首相は16日「行動制限は成功のレシピ。もっとやる必要がある」と訴えた。

米国でもニューヨーク州が13日、レストランなどの営業を午後10時までに制限した。カリフォルニア州も16日「緊急ブレーキ」を発動し、人口の94%が住む41の郡の規制を最高水準に上げた。

米国では17日、新型コロナによる新規死者数が8月の「第2波」の水準を超えた。例年、帰省者が急増する感謝祭を26日に控えて「感染爆発」再来への警戒が強まる。

回復が鈍かった消費への打撃も避けられない。米ハーバード大研究者らの非営利組織「オポチュニティー・インサイツ」は、クレジットカード利用状況などをもとにコロナ禍前後の消費動向を指数化している。これによると外食と宿泊の消費回復はコロナ禍前の7割、娯楽では5割にとどまる。外出規制などの影響を受けやすいサービス業の低迷が目立つ。

7~9月期の実質国内総生産(GDP)は年率換算した前期比で米国が33%増、ユーロ圏が61%増と急回復した。人出と消費心理の落ち込みは米欧景気が再び停滞するリスクを映す。欧州連合(EU)は5日、10~12月期のユーロ圏の実質成長率をマイナス0.1%に下方修正した。

日本は米欧に比べ経済活動の制限が緩く、15日時点の人出もコロナ禍前の85%程度と影響は限定的だ。しかし新規感染者が最多の2000人超に達しており、今後の展開次第では経済停滞を招きかねない。

春は20カ国・地域(G20)が計11兆ドル(約1140兆円)規模の財政出動で足並みをそろえたが、今回は米欧の政策対応の不透明感が強い。米国では追加財政出動が宙に浮き、EUも域内対立でコロナ禍からの復興基金の成立が遅れている。

年内の出荷開始へ希望も見え始めたワクチンが普及するまで景気の底割れを防げるか。経済再開の本格化まで「橋を架ける」(欧州中央銀行のラガルド総裁)役割が政策に問われている。

(平野麻理子、西野杏菜、ベルリン=石川潤)』

だから開発に失敗する、AI開発会社を悩ます建設業界の甘い認識

だから開発に失敗する、AI開発会社を悩ます建設業界の甘い認識
三ケ尻 智晴 日経 xTECH/日経コンストラクション
2019.11.21
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00107/00086/

『建設業界で空前の盛り上がりを見せるAIの開発だが、決して順風満帆とは言えない。開発の途中でプロジェクトが頓挫したり、想定した結果が得られなかったりする事例が後を絶たない。AI初心者の会社が「現場で使えるAI」を開発するにはどうしたらいいのか。ロボットやAI開発を手がける知能技術(大阪市)の大津良司代表取締役に聞いた。

大津良司氏
知能技術代表取締役。横浜国立大学発ベンチャーのマシンインテリジェンス代表取締役。2000年に建設無人化施工協会を設立して事務局長となり、全国の土木現場で主任技術者として携わる。07年に知能技術、08年にマシンインテリジェンスを設立。代表取締役として、ロボットやAIの研究開発を行っている(写真:本人提供)
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建設向けのAIを共同で開発した企業から、「建設業界側のAIに関する認識が甘い」といった苦言を耳にします。勘違いや思い込みをしやすいのはどんな点でしょうか。

 AIに対して一般に抱かれがちなイメージがあります。「ビッグデータを自動で集めて勝手に処理し、思いも寄らなかったすごい結果を出してくれる」――。ここにはいくつもの思い込みが含まれています。

AIに対して一般に抱かれがちなイメージ。こうした思い込みが、建設分野でAIを開発する際に課題となる。知能技術の資料を基に日経コンストラクションが作成
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 特に、これまでデータの蓄積が少なかった建設現場では、写真を撮るだけでもデータ収集は容易ではありません。現場ごとに撮影の条件が異なる他、撮影方法が確立されていないため、AIが解析しやすい質と量のデータを集めるのは難しい。集めたデータを、AIの学習用に選別したりクレンジングしたりといった加工の手間もかかります。

 AIの出番は、技術者がこうした多くの作業を実施した後の、最後の瞬間だけなのです。その大変さを理解していないと、AIのシステム開発会社に漠然とした要望を伝えてしまいかねません。PDF化した施工文書や現場で無造作に撮った写真をたくさん用意して「ビッグデータがあります」と言う建設関連会社が相変わらず多いのも、データやAI開発に関する理解不足が一因です。

AI開発の流れ。各段階で生じやすい思い込みを赤い吹き出しに、気を付けるべき点を青い吹き出しにまとめた。取材を基に日経コンストラクションが作成
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社員を苦しめる「失敗パターン」
AIのスペシャリストを育てるため、社内でソフトウエアを開発する若手などにAIの開発を一任する会社もあるようです。

 上層部の指示でAIの開発経験のない社員を講習会に行かせたり書籍やインターネットで学ばせたりするのは、任命された社員を苦しめるだけの「失敗パターン」だと考えています。

 なぜなら、AI開発と業務系のソフトウエア開発は全く別物だからです。数学的な知識や幾多のアルゴリズムを取捨選択する力、Pythonなどプログラミング言語の習得、ハードウエアを設計する知識――。開発を始めるには上層部が思っている以上に多くのことを学ぶ必要があります。

 建設分野向けのAIはまだ発展途上なので、マイクロソフトのOfficeのように誰でも使える汎用的なAIソフトはありません。そこでAI初心者の会社は、無理して開発に取り組むのではなく、まずは“利用者”に徹するのも1つの手ではないでしょうか。

開発を丸投げしてもいいのでしょうか。AIの開発会社に迷惑がかかったり、「使えないAI」が出来上がったりしませんか。

 建設分野のAI開発に寄り添ってくれる、パートナーのような開発会社を選ぶことが重要になります。そのためには建設業界の会社側で、AIを使って効率化したい業務を具体的に考えてください。一気に業務を省力化できるとは期待せず、課題意識の高い作業や、データを集められそうな作業を部分的に選ぶのがポイントです。

 どの業務でAIを開発するかを決めたら、類似した業務での開発経験がある「AI開発会社」を探します。AI開発会社はどこも同じに見えてしまうかもしれませんが、会社ごとに得意な分野が違います。少なくとも、建設業界に関わった経験のある会社を選んだ方が、スムーズに開発を進められそうです。

土木分野のAI開発に寄り添ってくれるパートナーのような開発会社を選ぶ際のポイント。取材を基に日経コンストラクションが作成
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 無理してできないことを実施するよりは開発会社に任せていいと思います。ただし、開発会社は基本的に指示通り開発を進めるというスタンスです。建設会社が「コンクリートの幅2mm以上のひび割れを98%以上検出する」などの定量的な納品の条件を、始めに明示しておく必要があります。

 そうすれば、開発会社から「こんなデータがもっと欲しい」といった具体的な指示を開発の途中でもらえるようになり、現場で使えないAIが出来上がるリスクを減らせます。

 せっかくデータを渡しても「そのデータは我々のシステムでは処理できない」と言われ、開発が頓挫することも珍しくありません。建設分野のAI開発ではデータを集めるハードウエアの開発が必要になることがほとんどなので、与えられたデータの処理に徹する会社ではなく、センサーやロボットの開発にも詳しい会社を選ぶことが重要です。

開発業務を教育の場として活用
寄り添ってくれる開発会社が見つかれば安心ですね。一方で、建設業界側でAI人材を育てなければ、認識の甘さは改善されません。

 開発会社選びの最後のポイントは、自社の社員が少しずつAI開発に携わってノウハウを共有することを契約時に依頼できるかです。AIのエンジニアの知識を全て独学で習得することは難しく、OJT(職場内訓練)で学べば疑問点をすぐに専門家に聞けるので効率的です。

 例えば、初回に開発全体の流れを理解し、2回目以降は発注側が携われる部分を開発会社と協議して徐々に増やしていく。すると、AI開発の技術や注意事項を建設業界側の担当者が学べて、自社で内製化できる部分が増えてくる。開発業務を教育の場として活用するといいでしょう。

 建設業界は、受注者と発注者のつながりが縦の社会ですが、AI開発では受発注者の捉え方を変えてみてください。自社の悩みを解決してくれる仲間と考えて、頼れるパートナー会社を見つけることが、現場で使えるAIを開発する一助になりそうです。』

統合ECU狙うルネサス、半導体の最適解を見いだせるか

統合ECU狙うルネサス、半導体の最適解を見いだせるか
木村 雅秀 日経クロステック/日経Automotive
2020.11.18
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00138/111600672/

『ルネサスエレクトロニクスの車載半導体に関するイベントが2020年10月末に開かれた。これまで「R-Carコンソーシアムフォーラム」として開催していたもので、今回は「ルネサスオートモーティブセミナー with R-Carコンソーシアム」というオンライン会議となった。クルマの電気/電子(E/E)アーキテクチャーの変化や、自動車メーカーによる基本ソフト(ビークルOS)の開発など、興味深い話題が多かった。

 クルマのE/Eアーキテクチャーは、分散型から中央型(セントラル型)やゾーン型に変化している。従来型の「クラシックECU(電子制御ユニット)」から、OTA(Over The Air)によるソフトウエア更新に対応した「アダプティブECU」への変化ともいえる。ルネサスはクラシックECU向けのマイコン事業で培った強みを、アダプティブECU向けの車載SoC(System on Chip)事業に生かしたい考えだ。

クルマのE/Eアーキテクチャーの変化
(出所:ルネサス)
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 その際に重要になるのが、ソフトの再利用性(スケーラビリティー)だという。多くの自動車メーカーや1次部品メーカー(ティア1)は長年にわたってルネサスのマイコン上で動くソフトを開発してきた。アダプティブECUになっても、ルネサスの車載SoCを使えば、そうした過去のソフト資産を再利用でき、開発リソースを節約できるというわけだ。特に過去のクラシックECUの機能を含むアダプティブECUの開発では重要になる。

ルネサスのソフトウエア再利用性
(出所:ルネサス)
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 アダプティブECUはソフトとハードを分離できる構造であり、ハード(半導体)は自由に切り替えられると思われがちである。ところが、ADAS(先進運転支援システム)や自動運転ではリアルタイム性が求められるため、「ハードを切り替えた際にソフトがきちんと動作するか検証し直す必要がある」(ルネサスエレクトロニクス オートモーティブソリューション事業本部 副事業本部長の片岡健氏)。このため、「開発プロジェクトの初期に採用されたハードがその後も使い続けられる可能性が高い」(同氏)という。

 パソコンやスマホの世界でもソフトとハードは分離可能と言いながら、実際にはプロジェクトの初期から参画していた半導体メーカーのチップがデファクトスタンダード(事実上の標準)となる場合が多い。人命を預かるクルマでは、ソフトとハードの分離が難しく、こうした傾向が一層強いのかもしれない。

ソフト優先に動く自動車メーカー
(出所:ルネサス)
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ルネサスの車載SoC「R-Car M3」はドイツVolkswagen(フォルクスワーゲン、VW)の新型電気自動車(EV)「ID.3」のボディー系統合ECUに採用された。これはソフトの再利用性やチップの低消費電力性が評価されたからだ。VWはビークルOS「vw.OS」を開発しており、その初期の統合ECUにルネサスのチップが選ばれた点は注目できる。

関連記事:ルネサス選ぶVW、NVIDIAのダイムラー 統合ECUから透ける戦略
VWの新型EV「ID.3」。ボディー系の統合ECUにルネサスの車載SoCを使う
(出所:VW)
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 ただ、ID.3の統合ECUはボディー系のほかに2つあり、ルネサスだけが選ばれたわけではない点に注意が必要だ。また、ID.3のボディー系統合ECUを手掛けたドイツContinental(コンチネンタル)が「ルネサスのチップでは次世代の統合ECUに必要な性能を満たせない」と述べている点も気になる。

関連記事:「半導体は持たず、こだわらず」、コンチネンタルの統合ECU戦略

 性能面の課題についてルネサスの片岡氏に聞いたところ「CPUコアを増やしたり、微細化を進めたりすれば、チップの性能自体は上げられる」という。ただ、ハイエンドのチップは出荷数量が少なく、開発投資を回収できないリスクもあるので判断が難しいようだ。

 「当初は多くの自動車メーカーがセントラルECUの演算性能を上げて、末端部のECUの性能を低くする方向だった。ところが最近では、セントラルECUだけに演算性能を集中させると、コストが高くなることが分かってきた。そのため、末端部に近いドメインECUやゾーンECUの性能を高めてバランスを取りたいと考えるメーカーも出てきている」(同氏)。

 米NVIDIA(エヌビディア)や米Intel(インテル)/イスラエルMobileye(モービルアイ)といったIT系の半導体メーカーは、高性能の車載SoCに果敢に投資している。一方、ルネサスは自動車メーカーの動向を注視しながら、ドメインECUやゾーンECUといったボリュームを稼げる市場を狙っているように見える。そこではソフトの再利用性や低消費電力性といった同社の強みを生かしやすいのだろう。コンチネンタルの担当者は「エヌビディアとルネサスの中間くらいの半導体の選択肢がほしい」とも語る。その辺りに最適解があるのかもしれない。』

自動車、今後はソフトで稼ぐ VWが投資倍増の3.3兆円

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO66355210X11C20A1TJ2000/

『世界最大手の自動車メーカー独フォルクスワーゲン(VW)が車のソフトウエアの分野に5年で270億ユーロ(約3兆3千億円)を投資する。デジタル化で先行する米電気自動車(EV)大手テスラへの対抗で、従来計画の2倍にする。背景には自動車業界が売り切りのビジネスから、ソフトで自動運転機能などを追加して収入を得る稼ぎ方に移る構造変化がある。

関連記事

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「テスラを倒す」ための投資

「この計画はテスラを倒すためのものだ」。VWのヘルベルト・ディース社長は16日、2021~25年の投資計画説明会で強調した。約2時間の説明会でディース氏ら幹部は、テスラという言葉を20回以上も発した。ライバルの名指しを控える企業も多い中、異例だ。

VWはEVに年平均60億ユーロを超える巨額投資を実施。EV専用車台を使う「ID」シリーズの出足は良く、コスト面でテスラに対抗できるとの自信をのぞかせる。一方で車のデジタル化についてディース氏は「テスラは2週間ごとにクルマをアップデートするなど顧客に新しい体験を提供している。VWはそれができていない」と認める。

テスラは19年春以降に出荷した全ての新車に完全自動運転に対応可能なコンピューター「FSD」を搭載しているとしている。現在は運転手の監視のもとで高速道路を自動走行する機能などに限るが、ソフトの更新により市街地での自動運転にも対応できるという。

従来、車は販売店や整備工場で部品の交換や追加をしてきた。テスラなどは「オーバー・ジ・エア(OTA)」と呼ぶネット経由で車のソフトを更新する技術を使う。19年9月には「モデル3」などの発売済みの自社車両に無人運転で車を呼び寄せる機能を追加した。

テスラは米国で販売する全車種で「オートパイロット」と呼ぶ運転支援機能のオプション料金を従来の8千ドルから1万ドルに引き上げた。テスラはこの機能による収益の内訳を明らかにしていないが、米国では27%の購入者がオプションを選択しているとの推計もある。仮に購入者の4人に1人が選択していた場合、20年7~9月期の自動車部門の売上高の4%をソフトで稼いだ計算になる。

機能拡充に伴い今後もオプション料金を引き上げる方針。いずれはサブスクリプション(継続課金)型のサービスとして提供する考えを示している。米モルガン・スタンレーはテスラの完全自動運転機能の月額料金は100ドルを超すケースもあると予想し、10年後に同機能が生み出す粗利益は全体の30.4%を占めると予測する。

■「アルテミス」プロジェクトでEVに独自OS

こうした変化の波がVWをデジタル化への投資に走らせるが、その先陣となるのが、傘下の高級車ブランド独アウディで進めるプロジェクト「アルテミス」だ。

ギリシャ神話の「狩猟の女神」の名前の通り、目的は「テスラ・ハンター」となる旗艦EVの開発。関係者によると、このEVは独自開発の基本ソフト(OS)を搭載し、常にネットにつながって顧客との接点や自動運転機能を最新に保つという。24年に最上級車として発売し、グループの独ポルシェや英ベントレーでも展開する。

グループ横断のソフト開発組織をVW乗用車ブランドからアウディに移管した。現在10%のソフト内製率を60%に引き上げる狙いだ。これまではエンジンなどの走行性能や内外装の高級感で争ってきたが「ソフトが最大の差別化要因になる」(VW幹部)とみている。

ただ、ディース氏はハードからソフトの会社への転換について「スムーズな移行ができるか。ノーだ」とも認める。最近でも全面改良した「ゴルフ」の新型車の量産がソフトの不具合で遅れたほか、EV「ID.3」では当初予定していたネット経由での機能更新を見送らざるを得なかった。

■人材確保が課題に

人材確保も課題だ。ソフト会社の買収などで人材をかき集めるほか、本拠地のウォルフスブルクにフランスのプログラミング学校「エコール42」を誘致するという奇手も繰り出す。VWは資金提供し、優先的に卒業生を採用する考えだ。

「ソフトウエアで収益を上げるなど学べる点が多々ある」とトヨタ自動車の豊田章男社長もテスラを認める。一方で「リアルな世界では電動化フルラインアップをそろえる我々の方が選ばれるのではないか」と語り、ソフト最重視へとカジを切っているとも言えない。

テスラが自動車業界に投じたEV化とデジタル化という2つの大波。その流れを認めつつどこまで本気で追いつこうとするのか。トヨタ以上の覚悟を見せるVWだが、従業員60万人を超える巨艦だけにそのスピード感が重要となりそうだ。

■S&P500採用時で最大の時価総額
 テスラは株価が年初来で5倍近くに伸び、勢いが続いている。16日には米国の代表銘柄で構成されるS&P500種株価指数に新規採用すると、米S&Pダウ・ジョーンズ・インディシーズが発表した。16日終値ベースの時価総額は3868億ドル(約40兆4千億円)に上り、米メディアによるとS&P500に追加される銘柄としては過去最大規模となる。
 採用が決まったことから、上場投資信託(ETF)など株価指数に連動するパッシブ運用の資金が流れ込むとの期待が一段と高まった。16日の米国市場の時間外取引でテスラ株は急騰した。
 テスラが時価総額でトヨタ自動車を上回り、業界最大となったのが7月。販売台数ではトヨタとVWはそれぞれテスラの20倍ほどだが、時価総額は2社合計でもかなわない。トヨタ自動車の豊田章男社長も「株式市場での評価は完全に負けている」としている。
(フランクフルト=深尾幸生、シリコンバレー=白石武志)』

アジアが世界最大の貿易圏を形成した後、米国は取り残されている

アジアが世界最大の貿易圏を形成した後、米国は取り残されている:米国商工会議所
https://www.reuters.com/article/us-asean-summit-rcep-usa/u-s-being-left-behind-after-asia-forms-worlds-biggest-trade-bloc-u-s-chamber-idUSKBN27X03Q

『(グーグル翻訳文)
ワシントン (ロイター) – 米国商工会議所は月曜日、日曜日に15のアジア太平洋経済が世界最大の自由貿易圏を形成し、地域貿易における中国の支配的な役割を固めた後、米国が取り残されることを懸念していると述べた。

ファイル写真:ベトナムのグエン・スアン・フック首相(L)は、2002年11月15日にベトナム・ハノイで開催された第37回ASEAN首脳会議の仮想署名式で、中国の李克強首相の隣で署名する中国の中山商務大臣(R)が示す画面を見て、トラン・トゥアン・アン産業貿易大臣の隣に座っている。ロイター/カム

会議所は、米国の輸出業者、労働者、農家がアジア市場へのより大きなアクセスを必要としているとして、新しい地域包括的パートナーシップ協定(RCEP)の貿易自由化の利点を歓迎した。しかし、ワシントンはブロックに加わるべきではないと言いました。

RCEPは世界経済の30%、世界人口の30%を占め、アジア大国である中国、日本、韓国に初めて参加しました。これは、多くの分野で徐々に関税を引き下げることを今後数年間で目指しています。

米国はRCEPと環太平洋パートナーシップ(TPP)の後継者の両方を欠席しており、世界で最も急成長している地域にまたがる2つの業界団体から世界最大の経済を残している。

同会議所のマイロン・ブリリアント事務局長は、ドナルド・トランプ米大統領の政権は中国による不公正な貿易慣行に立ち向かう動きがあったが、アジアの他の地域における米国の輸出業者にとって限られた新たな機会しか確保していない、と語った。

トランプは2017年初めに、前任者のバラク・オバマがアジアへの米国のピボットの一環として交渉したTPP協定を辞めた。トランプはそれ以来、アジアで包括的な新しい貿易協定を締結していない、とブリリアントは言った。

「RCEPの欠点を考えると、米国の加盟は勧めないだろう」とブリリアントは述べ、最近の米国の貿易協定には、デジタル貿易、非関税障壁、知的財産保護などの問題に関するより強力で執行可能な規則が含まれていると述べた。

「しかし、米国は、この地域における米国の堅実なプレゼンスを維持するために、より前向きな戦略的努力を採用すべきである」と彼は言った。

「そうでなければ、私たちは世界の成長の主要なエンジンの一つとして外を見ている危険があります。

ブリリアントは、アジア太平洋市場への米国の輸出はここ数十年で着実に増加しているが、米国企業の市場シェアは低下していると指摘した。

彼は、2021年の平均成長率が5%を超え、中産階級が急速に拡大するとの予測を引き合いに出して、アジア太平洋市場の重要性を強調した。

アンドレア・シャラルによる報告;編集:サンドラ・マラー、ピーター・クーニー、マイケル・ペリー』

ドイツのインド太平洋戦略 狙いは「バランス外交」

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO66201910T11C20A1EA1000/

『「いまや世界経済の4割を占める。経済面でも政治面でも存在感が大きくなった」。アルトマイヤー独経済相は日本経済新聞に対し、「インド太平洋」に着目した理由を、こう説明した。

独政府は9月に「インド太平洋ガイドライン」を閣議決定した。具体策は年内に詰めるが、メッセージは明らかだ。「価値観を共にするパートナーと緊密に協力したい」と同経済相。日韓豪印などの国を意識する。』

『日本ではドイツは「中国と蜜月」とみられてきた。メルケル首相は足しげく中国に通い、19年までに12回に達した。日本は主要7カ国(G7)の一角なのに08年の後は15年まで訪問が途絶えた。

この空白期に重鎮ショイブレ財務相(当時)は東京に飛んだ。だが政府専用機の執務室に持ち込んだのはキッシンジャー元米国務長官の中国についての著作だった。

「親中」が原動力ではない。意見が異なる相手ほど対話を重ね、信頼関係を築こうとするのがドイツ外交。冷戦期に強大なソ連に向き合って経験を積んだ。「日本は知っているが中国はよくわからない」。外交攻勢をかける狙いを与党首脳は当時、こう語っていた。

債務危機が欧州を襲うなか、対中輸出で景気を支える思惑もあった。』

『潮目が変わったのは中国が「一帯一路」をテコに南欧・東欧に近づいた3~4年前だ。経済面に加え、欧州政治にも触手が伸びたことで警戒心が強まり、ひそかに「中国偏重」の是正に動いた。

まず外務省が「極東」とひとくくりにされていた日本と中国の担当部署を分離し、それぞれに担当課長を配した。「中国以外のアジア」に目配りする体制にし、省内で「ドイツ版インド太平洋構想」を練り始めた。

次に重要閣僚の外遊で中国優先をやめた。アルトマイヤー経済相が18年、アジアの初訪問先に選んだのは日本とインドネシア。中国も招待していたが「あえて外した」(独政府筋)。同経済相の強い意向があった。

隣国フランスが18年、「インド太平洋」重視を宣言したことも背中を押した。「パリ、デリー、キャンベラの枢軸が核になる」。マクロン大統領が仏印豪の連携をうたったことに独与党幹部は「触発された」という。

ダメ押しはコロナ禍で医薬品など「戦略物資」の中国依存が浮き彫りになったことだ。外務省が温めてきた「インド太平洋」が閣議に持ち上がり、政府方針となった。』

『ドイツは「欧州の指針」への格上げを探る。フランスは前向きだ。仏外務省報道官は取材に対し、ドイツや、インドネシア旧宗主国オランダと連携していくと明かした。』

『もっとも「特定の国を排除するわけではない」と取材先は口をそろえる。中国との摩擦は避けたいし、米国に肩入れもしたくない。企業の「脱中国」も難しい。

フォルクスワーゲンの販売は4割が中国向け。「中国は引き続き大切。インド太平洋とは、ほかの成長市場を軽んじないという意味」と保守系与党のアジア政策通、ハウプトマン連邦議会議員は解説する。

バランス外交には微妙なかじ取りがいるが、対ロシア政策などに比べてアジアでの蓄積が少ないのが弱みだ。インド太平洋の核であるはずの日韓が歴史認識で争うのをみて、ドイツは戸惑う。

それでも伝統的な関心領域ではないアジアを「包括的にみる余裕ができた」(ハウプトマン議員)のは前進だ。米国のトランプ時代が終わってもドイツは「欧州の盟主」として「世界の安定役」を意識する。日本が欧州に影響力を強めたいなら、いまがドイツに向き合うチャンスだ。

(欧州総局編集委員 赤川省吾)』