合理的で優秀、なのに「伸びしろ無し」と判断される就活生

合理的で優秀、なのに「伸びしろ無し」と判断される就活生
損得勘定がうまいことのメリット、デメリット
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00077/092800021/?P=1

『新型コロナで大波乱となった2020年の就活も、多くの企業で内定式が行われる日を迎えました。
 就活支援の特別編として、「保全性」「拡散性」「受容性」の高い学生の方々に対して就活のアドバイスをしてきました。今回は「弁別性」を取り上げます。来年以降も活用できる内容と自負しておりますので、就活継続中の方も、来年就活の方も、ぜひ引き続きご覧ください。

 「弁別性」の高い人は、何らかの根拠(データ、経験)を基に「必要」か「必要ではない」かを常に考え、「必要」と判断したものを直ちに選択します。
 合理性や投資・費用対効果を重んじ、効率的に物事を進めようとします。

 こう言うと、よくいる「コスパ」指向の人のようですが、「弁別性」が高い人は、それとはひと味違う凄みを感じさせます。

 「それって意味あるの?」が彼らの口癖です。
 そう問われた相手が、「まだ分からないけど、やってみたい」と答えようものなら、「意味のないことはやらない」とバッサリと切り捨てることも。

 「白か黒か」の線引きが明確で、幅というか、“アソビ”がないのです。

 また、自分の部屋には、機能性重視で必要なものしか置きません。最近流行のミニマリスト的な面もあります。

 自分自身に、こうした思考・行動特性を感じる方は、FFS理論(※)でいえば「弁別性」が高い人、と言えます。

※5つの因子とストレス状態から、その人が持つ潜在的な強みを客観的に把握することができる理論(開発者:小林 惠智博士)。詳しく知りたい方は書籍『宇宙兄弟とFFS理論が教えてくれる あなたの知らないあなたの強み【自己診断ID付き】』か、こちら。

 合理性を重視する「弁別性」の特性は、ビジネスの世界ではたいていの場合有利に働きます。

 「弁別性」の高い人は、好き嫌いといった感情に左右されにくく、根拠に基づき最適解を求めようとします。物事を客観的に判断し、ゴールに最短距離で到達する方法を選べる人は、組織でも高く評価されることが多いでしょう。

 ところで、「合理的」とよく似た言葉に、「論理的」があります。

 合理的思考と論理的思考。どちらもビジネスパーソンには必要な思考です。よく似た意味なので混同しやすいのですが、FFS理論ではこの2つを明確に区別しています。

 まず、2つの言葉の意味を辞書で確認してみます。

論理的=1:論理の法則にかなっているさま
合理的=1:道理や論理にかなっているさま
    2:物事の進め方に無駄がなく能率的であるさま

 どちらの言葉も、「1:論理の法則にかなう」という意味は共通していますが、「合理的」にはさらに「2:無駄なく、能率的である」という意味があります。

 1と2の大きな違いは、1の論理的な思考は、基本的に訓練によって身につけることができるのに対し、2の合理的な思考は、訓練では身につけることができない、ということです。

 FFS理論が定義する「合理的」とは、意図せずとも「ムダなく、能率的にしてしまう」状態のことを指します。無意識のうちに、ムダを省いてしまうのです。つまり、合理的思考は、訓練で身につく能力というよりも、「弁別性」という個性に起因する能力と考えるのです。

 さらに言えば、合理的思考を備えた「弁別性」の高い人は、論理的思考とも相性がいい。つまり、他の因子が高い人よりも、訓練によって論理的思考を身につけやすいのです。論理的思考は、仮説・検証を繰り返して方針を導いたり、物事を構造的に捉えて全体像を客観的に捉えたりするうえで必要な能力です。

 さて、今回のテーマである就活に話を戻すと、「弁別性」の高い学生は、就活でも論理的・合理的思考を披露できるため、一次面接くらいまでは難なくクリアしていきます。

 ところが、それより先になると、内定まで進む学生と、苦戦する学生とに分かれます。

 面接官に好印象を与えるはずの論理的・合理的思考を備えながら、就活に苦戦する学生がいるのはなぜでしょうか。

 それは、弁別性の「合理的である」という特性が、うまく活かせば強みとなる一方で、それが裏目に出ると、機械的で冷たい印象を与えたり、「損得勘定で動く、自己都合な人」と思われたりするからです。特に、未熟な人の場合、「弁別性」の特性がネガティブに出ることがあります。

志望動機に熱い思いが感じられない
 内定が決まらず、就活に苦労したTさん。面接ではこんなやり取りがありました。

面接官:「なぜうちの会社に興味があるの?」

Tさん:「御社は業界トップで、知名度があるので、もし自分が営業に配属されたとしても、楽に働けそうだと感じました。また、育成環境が整っていることも安心です。有給消化率、離職者の少なさ、報酬額とその伸び率も魅力的に感じました」

 あなたが面接官だったとしたら、この志望動機を聞いて、どんな印象を受けるでしょうか。

Tさんは、その会社の魅力を伝えたつもりかもしれませんが、面接官にしてみれば、「Tさんにとってこの会社が、いかに都合がいいかを並べただけ」に聞こえたでしょう。

 合理性を重んじる「弁別性」の高い人は、「何をやりたいか」よりも、「いかに楽に稼げるか」で会社を選ぶ傾向があります。投入する時間と労力が、効率よく換金される組織、というわけですね。

 ですので、会社を選ぶ基準は、勤務体系や教育、福利厚生など、仕事というよりも労働条件になりがちです。

 労働条件が変われば、「白(行きたい会社)」が「黒(行きたくない会社)」に変わることもあるので、会社を絞り切れないことも多いのです。

 Tさんの志望動機には、もしかしたら会社や将来の仕事に対する熱い思いがあったのかもしれません。しかし、そこを打ち出さなかったため、内定獲得に至らなかったと考えられます。

自分に必要ない人間とは付き合わない
 合理性を重視する(してしまう)「弁別性」が高い人は、面倒な人間関係を避けようとする傾向があります。

 「役に立たない」と判断した相手とは、たとえ同じサークルの仲間でも、わざわざ関係を構築しようとはしません。人間関係も白か黒かに分けるので、自分に必要ない相手と思えば、バッサリと切り捨ててしまうこともあります。

 誤解してほしくないのですが、このタイプの特性が「悪い」というわけでは決してありません。それは個人の生き方の選択肢の1つとして、十分納得できるものです。

 ただし、すべてを自己都合で切り捨てていると、本人の気づかぬうちにチャンスを逃して、よりよい結果につながらなかったりします。

 経験豊富な面接官には、そうしたこともお見通しです。「この学生は、社内の人間関係や仕事先との付き合いを「合理的」にやりすぎてしまいそうだな……」と見抜いて、「これまで人間関係を避けてきたみたいですね」と、切り込んでみたりします。

 学生側は図星を突かれて、「え?」と一瞬口ごもりますが、嘘をぱっとつける個性ではないため、「そんなに人間関係って大事ですか?」「どんな人でも、必要であれば、仲良くなることができますよ」と、言わなくてもいいことを口走ってしまうのです。

 情報を基に物事を判断する「弁別性」の高い人にとって、条件の提示は自然かつ当然の行為です。ところが、「人間関係も条件次第で判断する」ところを面接官に暴露してしまえば、「この学生は機械的で冷たい」という印象を与えかねません。

 そもそも「弁別性」の高い人が人間関係を避けたがるのはなぜでしょうか。  人間関係につきものの「感情」を煩わしく思うからです。好き嫌いといった感情が絡めば、客観的な判断がしにくくなります。

 例えば、仲間と旅行に出かけるとします。
 「弁別性」の高い人は、「最短・最速でムダのない方法で行きたい」と考えます。乗り継ぎや徒歩での移動手段、宿泊施設も含めてあらゆる情報を集めて、その中から一番合理的な行き方を選択しようとします。

 一緒に旅行する仲間が皆、同じようなタイプなら問題はありませんが、中には“鉄オタ”がいて、「ローカル線でゆっくり旅したい」と言い出すかもしれません。あるいは「僕はホテルとか決めてからの旅行って全然したくないんですよ」という人もいるでしょう(例えばこの方。「『自分を嫌いな上司』の真実が分かる本」)。

 ところが、「弁別性」の高い人は、「ローカル線の旅なんて時間のムダ」と考えて、仲間の気持ちに思いを寄せることなく、仲間の意見を却下しがちです。

ビンセントは、良くも悪くも他人に容赦がない(10巻#94「いつも心に万歩計を」)
 人と交流しなくて済むように、学生時代は部活には参加せず、帰宅部を選択する人も多いでしょう。家で誰にも邪魔されず、読書三昧で過ごすこともしばしばです。

 アルバイトも、面倒な人間関係を避けて、効率重視で選びます。例えば、システム開発のアルバイトのように、自宅で一人でできて、時給の高いアルバイトを好みます。

 私の学生時代の知り合いは、「ハッカー的な仕事」を請け負っていましたが、彼も「弁別性」の高いタイプでした。時間や場所を自由に選択できて、時給も相当高いので、彼にとっては最適なアルバイトだったはずです。
 また、そのために必要と判断すれば、高度なスキルの獲得も厭いません。

「できる。でも、伸びしろがない」と思われる
 無難に何でもこなす「弁別性」の高い人は、就活でも「優秀」と評価されます。

 とはいえ、「いま優秀」なだけでは即採用、とはなかなかなりません。
 面接官が採用したいと思うのは、「地頭の良さ」は当然ですが、潜在的な可能性、すなわち「伸びしろ」のある人です。

 伸びしろとは具体的に何なのかといえば、入社後の新しい環境における対応力、つまり「素直さ」や「感受性の豊かさ」です。採用においては、これらの要素が重要視されるのです。

 ところが、最短・最速で生きて来た証としての「ムダのなさ」には、その辺りの要素があまり感じられません。
 そこが、面接官への印象を悪くしてしまうことがあります。「そこそこ優秀だけど、入っても伸びしろがないな」と思われるわけです。

 また、感情を持つ人間の営みであるビジネスには、理不尽さがつきまといます。
 誰もがスパッと物事を割り切って、投資対効果を最大化できる最適解を選んでいるわけではありません。

 例えば、一緒に働く仲間の気持ちをくみ取ったり、悩んでいる相手に寄り添い、飲みながら愚痴を聞いたりすることも時には大切です。「弁別性」の高い人には、ムダに思えるかもしれませんが、「人としての余裕」を感じられるかどうかも、採用面接では問われるのです。

ムダを嫌い、合理性を重んじるのは正しい。けれど
 就活中の「弁別性」の高い学生の方へのアドバイスとしては、まず、そんな自分を「理解」していただきたいと思います。

 就活ではよく「自己理解」という言葉が使われますが、自分の「ムダが嫌い」「コスパを意識する」ところで止めていないでしょうか。さらに奥に入って、「(他人がちょっと引くくらい)合理性を重視する」ところまで、見つめてほしいのです。
 それが、おそらくあなたが常にうっすら感じている、周囲との違和感の原因です。

(これは「拡散性」「凝縮性」が高い方にも当てはまります。「受容性」「保全性」が高い人が多数派の日本社会では、その他の3因子が高い人は、どうもうまくかみ合わないことがある、と感じがちなはずです)

 「自分は周りの人とは違う」という感覚はあっても、その違和感の原因が何なのか、はっきりと把握している人は少ないのではないでしょうか。そこを言語化できることこそが本当の「自己理解」です。

 「弁別性」の高い人は、とにかくムダを嫌い、合理性を重んじます。
 しかし、世の中は皆、そんなに合理的に動いているわけではありません。まずは、そのことを認識する必要があります。

 自己理解を深めるためにおすすめしたいのは、「他者理解」です。他者との違いを相対的に理解することで、一層の自己理解につながっていきます。

 例えば、「拡散性」の高い人は興味関心が最大のモチベーションになり、自分が「面白い」と思うことにはテンションが上がります。
 「保全性」の高い人は、効率や合理性よりも、仲間と一緒であることを好みます。
 「受容性」の高い人は、相手の幸せが自分の幸せと感じます。周りの人たちの気持ちをおもんぱかるため、周りの人たちの気持ちに影響されて、一喜一憂しやすいのです。

 以上、合理性を好む「弁別性」とは対照的な因子を紹介しましたが、このように見てみるだけでも、人の個性はそれぞれ違うことが分かります。違うということは、個性の異なる相手とは誤解も生じやすいということです。

 「合理的である」という弁別性の特性は、それがネガティブに出た場合、「機械的で冷たい」という印象を相手に与える恐れがあります。面接ではそのことに留意しながら、自分の特性をポジティブに表現できるように心がけてみましょう。

 つまり、データに基づいて先を読める先見性と、何事にも合理的に対応できる能力。これが「弁別性」の高いあなたの武器なのです。

割り切れない人間関係にも学ぶべきことはある
 就活までにまだ余裕がある1、2年生の方々には、ぜひ、矛盾をはらんだ「人」という存在との密な関係を体験していただきたいと思います。

 未熟なうちは、自分の損得だけで計算して、最適解を見つけようとします。しかし、経験の浅い自分だけの判断基準で割り切っても、いい結果が得られるとは限りません。しょせん、そこそこのレベルで終わってしまいます。

 「弁別性」の高い人が成長するには、社会で揉まれる中で、合理性だけで割り切れないことがあることを学びつつ、一見すると「役に立たない」と思うことを大切にすることで、長期的には成功に近づくことを理解する必要があります。

 そんな曖昧で割り切れないものを受け入れるのは、非合理的だと思うかもしれません。しかし、「弁別性」が高く「優秀だ」と他人から評価されている人は、自分の下手な計算よりも、計算を超えた人との縁や人間関係によって結果が最大化することを、実証により知っています。

 ですから、何事にも都合を考えず、誘われるままに体験してみることも大切なのです。しかも、できるだけ密に関わって、泥臭い体験にあえて飛び込んでみることです。

 割り切れない状況を理不尽だと感じたり、やっている意味が分からないと悩むこともあるでしょう。

 そのようなときは、自分で納得のいく新たな判断基準で線引きすれば、理不尽さを解消できます。つまり、曖昧模糊とした状況や関係にも、「何らかの意味はある」と割り切ればいいのです。

 理不尽と感じるのは、自分が決めた判断基準に合わないからです。だったら、理不尽のラインを少しずらして、「理不尽に見えるが、意味はあるはず」という認識に変えればいい。

 なんだかムチャクチャを言っているようですが、実は、合理性がないと行動するのが辛い「弁別性」の高い人は、何か「理由がある」と思えさえすれば納得でき、力を発揮する、という強みも持っているのです。

無人のはずの月基地に人影が……
 「理不尽なことにも意味がある」と認識する。これは具体的にどういうことでしょうか。

 これを教えてくれるのは、人気漫画『宇宙兄弟』に登場するNASA宇宙飛行士のビンセント・ボールドです。彼の登場シーンから、「弁別性」の高い学生が参考にすべき振る舞いを紹介しましょう。

 ビンセントはムダなことが大嫌い。「弁別性」が高いタイプです。(ビンセントの「弁別性」の高さを解説した過去記事はこちら→「褒めてくれない“冷たい上司”とストレスなく付き合うには」)。

 前回、「リモートワークのストレス」について解説した際にも書きましたが、『宇宙兄弟』の最新刊(38巻)では、主人公の宇宙飛行士・南波六太(ムッタ)と同僚のフィリップ・ルイスが、他の仲間が地球へ帰還した後も、2人だけで月面残留を余儀なくされています。いわゆる「リモートワーク」の状態です。

 しかも、彼らが取り組む月面プロジェクトは非常に難易度が高く、2人はかなりのストレス状態に追い込まれています。

 ムッタとフィリップが、滞在中のムーンベースから、少し離れた小型基地へと移動したときのこと。2人が建物に足を踏み入れると、無人のはずの基地内に、人影がありました。

「誰かがいる」と思った相手の正体は、管理用ロボットでした。2年前、この基地の建設に関わった日本人宇宙飛行士の紫三世が、後からやってくる宇宙飛行士を驚かそうと仕込んだイタズラだったのです。

“アソビ”を受け入れたビンセント
 ビンセントは、かつてムッタがアスキャン(宇宙飛行士訓練生)時代の指導教官だった人物です。ムッタが知るビンセントは、ムダをトコトン嫌い、自分にも相手にも厳しい合理主義者でした(ただし、見込んだ相手には手を差し伸べる優しさがあります)。

 普段のビンセントなら、「イタズラなど時間のムダ」と一蹴しそうです。それなのに、紫のイタズラを容認したことに、ムッタは驚いたのです。

 合理主義者のビンセントが、紫の“アソビ”を受け入れたのはなぜでしょうか。

ムッタとフィリップがストレス状態にあることは、ビンセントも気づいていました。今後の作業を成功させるためには、「何かガス抜きになるようなことが必要かもしれない」と思っていたところに、紫が2年前に仕掛けたイタズラの話を聞いたのでしょう。「これは2人にとって気分転換になる」と明確に判断したのだと推察します。

 イタズラを「馬鹿らしい」と切り捨てるのではなく、ムッタとフィリップには「意味のあるイタズラ」として、受け入れる合理に到達したのです。

「弁別性」が「素直さ」を持てば鬼に金棒
 現実の世界でも、実際に超アナログなサービス業に身を置き、「泥臭いことを受け入れることの合理」に行き着いた「弁別性」の高い人物を2人ほど知っています。

 彼らは、普段はドライな面は一切見せません。どちらかと言えば、ニコニコしています。

 相手が話しやすいよう、笑顔でうなづいたり、自ら盛り上げ役を買って出たりして、和気あいあいとした雰囲気を作っていきます。その結果、短期間に親密な人間関係を構築することができているのです。

 彼らも若い頃は、ドライな個性ゆえに損をした経験がありました。自己都合で人間関係を割り切っていては誰もついてこないことを学び、「仲間を作る合理」にたどり着いたのです。

 仲間と親密な人間関係を築くことで、仕事をスムーズに進めることができ、その結果として「最短を実現している」、ということです。

 この原稿の中ほどで、面接官が学生の皆さんに期待しているのは将来的な伸びしろであり、それは新しい環境に対応できる「素直さ」や「感受性の豊かさ」である、と書きました。

 「素直さ」や「感受性の豊かさ」と聞いて、「自分は何事にも白黒つけたい性質だから、自分には無理だ」と思う人もいるかもしれませんが、それは違います。

 私がお伝えしたいのは、自分の個性を活かすための素直さを持っていただきたい、ということです。

 何事にも合理的に対応できる能力は、ビジネスの世界では強みです。

 その合理性を、自分の損得勘定だけに使うのではなく、一緒に働く仲間や顧客の幸せのために使うことを学びましょう。割り切れない他者との関係にも意義を見出し、ある程度の理不尽も飲み込む合理にたどり着いたとき、大きく成長できるはずです。

 自己都合の割り切りをしている限り、「弁別性」の強みは発揮されません。状況に合わせて条件を変え、必要であれば曖昧さや理不尽さも受け入れられるよう視座を高めていく。これが「弁別性」の素直さだと私は考えます。

© Chuya Koyama/Kodansha
(構成:前田 はるみ)

38巻#358「National Aeronautics and Surprise Administration, NASA」
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ビジネスの成否は優先順位の見極め 試される決断力 第15回 重点思考

https://style.nikkei.com/article/DGXMZO64211970U0A920C2000000?channel=DF120320205956

『意思決定はジレンマとの戦い

私が経営スタッフだった頃、役員会にかける提案の資料づくりをよくやらされました。どこから突っつかれても説明できるよう、膨大なデータと分析を要求されたものです。何度上司に持っていっても、「○○が足りない」「△△も用意しておいてくれ」と言われ、キリがありません。

揚げ句の果てに、「これじゃあ分からん。誰が見ても判断できるような資料を用意しろ」と言われる始末。「だったら小学生に役員をやらせたら?」と思わず言いそうになりました。

もちろん、必要な情報がないと判断はできません。しかしながら、すべての情報を集めて判断することはできず、それをやっていたら機を逸してしまいます。合理性に限界がある「限定合理性」の中で意思決定をするのがリーダーの仕事です。

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それに、多くの場合、意思決定にはジレンマを伴います。感染症の拡大を防止しようとすると、経済にダメージを与えてしまう、といったように。健康と経済のどちらを優先するか、まさに決断が求められます。

方策を考えるときも同じです。打ち手をいろいろ考えても、全部できるわけではありません。総花的にやるよりは、効果的な策に集中したほうが、得られるものが多くなります。

そのために必要となるのが「重点思考」です。「今何が重要か?」「中でもどれが大事か?」と、優先順位をつけて考えるのです。そうやって、大胆にメリハリをつけ、要領よく進めていかないと仕事は回りません。

多面思考と重点思考をセットで使う

先回は「多面思考」を取り上げ、いろんな視点・視野・視座から考えること重要性をお話ししました。ところが、多面思考をやればやるほど、考えがまとまらなくなる恐れがあります。

そんなときは、「どの視点・視野・視座を優先させるか?」を決めないといけません。つまり、多面思考は重点思考とセットにして使わないと、実際にはうまくいかないのです。

たとえば、「〇〇すればもっと売り上げが伸びる」と主張する人がいたとしましょう。その考えが浅いと思ったら、多面思考で考えを広げることを促すようにします。

「売り上げだけでいいの? 利益は考えなくてもいい?」(視点)、「短期的にそれでよくても長期的には?」(視野)、「自社によくても競合はどう出るだろうか?」(視座)といったように。あるいは「他に?」だけでもよいかもしれません。

そうやって、いろんな観点で考えられたら、次は重点思考の出番です。「なかでも、どの視点が重要?」「どのアイデアが最も望ましい?」と問いかけて、考えを絞り込んでいきます。

ここで大切なのが、2つの思考をきっちりと分けることです。両者を混ぜて使うと、それぞれの良さを台無しにしてしまいます。多面思考をやっていうちに、「分かった。△△すればいいんだ」と早合点をしてしまう「飛びつき病」が悪い例の典型です。

特に大人数で議論しているとそうなりがちです。「意見を発散する(広げる)ステージと収束する(絞り込む)ステージを混ぜない」という会議の原則を忘れないようにしましょう。

重要なことに資源を集中する
重点思考を進める上で大事なのが、重要なものを見極めることです。

重要とは、物事の本質や根本に大きく関わる、価値の極めて高いことです。大げさに言えば、それによって自分たちの行く末が決まるようなものです。

ビジネスに当てはめると、目的の達成に大きく貢献したり、その成否に多大な影響を与えたりすることが、重要なものに他なりません。つまり、目的をはっきりさせることが、重要なものを見極めるための一番のポイントとなるわけです。

ビジネスでは、重要な20%によって結果の80%が生み出されているという「パレートの法則」が働くことがよくあります。上位20%の顧客(商品)が売り上げの80%を占めている、20%のセールスパーソンが全体の80%の販売を担っている、重要な20%の業務が仕事の80%の成果を生み出している、といったように。

だったら、重要なものに資源を集中するのが効率的です。残りは完成度を少し落としたり、アウトソーシングをしたり、もっと効率的なやり方に切り替えることを考えます。

そもそも、人はマルチタスクができるようにデザインされていません。多くの人は、シングルタスクで一点集中するほうが仕事の効率も高まります。

マネジャーの一番大切な仕事とは?
この考えを組織全体で進めていくのは大変です。目的を理解していない人がいたり、瑣末(さまつ)なことにとらわれる人がいたりして、「何が重要か?」のベクトルがそろわないのです。

そこで大切になってくるのがマネジャーです。

マネジメントを日本語で「管理」と訳したために、マネジャーの役割を勘違いしている人がいるかもしれません。部下に仕事を割りつけて進捗をチェックするのが本務ではありません。それはコントロールであってマネジメントではありません。

動詞のmanageは「どうにかする」「何とかする」というのが原意です。たとえば、海外から来たお客様に今夜の接待を申し出たとこと、I can manage by myself(自分でどうにかしますから)と辞退されることがあります。Manageとはそんなときに使う言葉です。

一番しっくりくる日本語は「やりくり」だと思います。与えられた資源(ヒト・モノ・カネ)をやりくりして、どうにか組織の目標を達成する。それがマネジャーの本務です。

そのためには、「何を目指しているのか?」「今何をすべきか?」が共有できていないと始まりません。つまり、マネジャーの一番大切な仕事は、「何が重要か?」、言い換えると仕事の優先順位をブレずに全員に徹底させることです。重点思考の旗振り役に他ならないのです。

平時はもちろんのこと、非常事態になればますますそうなります。右往左往する現場に的確に方向性を示せないと、組織の力がひとつになりません。不透明で不確実な時代に生きるからこそ、重点思考が私たちに求められているわけです。』

視点と視野と視座は何が違う? 対義語も思考ツールに 第14回 多面思考

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第14回 多面思考
https://style.nikkei.com/article/DGXMZO63676370Q0A910C2000000?channel=DF120320205956

『視点・視野・視座の違いとは?
思考力を鍛える研修で、私がよく尋ねる質問があります。「視点・視野・視座は、それぞれ何を意味していて、どこが違うのでしょうか?」というものです。できれば、読者の皆さんも、少し考えてから先を読んでみてください。

何も思い浮かばない人には、ヒントを差し上げます。「視点が新しい」「視野が広い」「視座が高い」とは言いますが、「視点が広い」「視野が高い」「視座が新しい」といった言い方はあまりしません。そこに3つの違いが現れているはずです。

会社の業績の話を例に解説するとこうなります。視点とは、業績や会社の「どこを見るのか?」です。売り上げ、利益、商品、業務、組織など、経営を見る視点はたくさんあります。

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2つ目の視野は「どんな範囲で見るか?」です。今期だけを見るのか長期的に見るのか、国内だけを見るのかグローバルに考えるのか、販売だけを見るのか経営全体を見るのか……。時間、空間、人間、システムの広がりを指すのが視野です。第6回の分析思考を思い出してください。

そして、「どこから見るのか?」が視座です。同じものを見ても、見る立場やポジションによって見えるものが違ってきます。現場の人間は細部がよく見えるのに対して、経営者は全体を俯瞰(ふかん)的に見ます。年齢、性別、国籍などによっても視座が変わってきます。

視点、視野、視座を変えて、いろんな方向や角度から考えるのが「多面思考」です。そうすることで、深く、柔らかく、緻密に物事を検討することができます。

対義語を活用して多面思考を実践する
日常生活では、3つの違いはそれほど意識する必要はありません。要は、いろんな観点から考えればよいだけです。一番お手軽なのが、相反する2つの観点で見ることです。

アイデアの採否を検討するときに使う「プロコン表」が、まさにこれに当たります。

ホワイトボードや紙の真ん中の線を書き、左のスペースに賛成の理由(Pros:良い点やメリット)を、右に反対する理由(Cons:悪い点やデメリット)を挙げていきます。左右を見比べて、トータルでどちらが優勢かを判断します。

賛成と反対をあわせて賛否といいます。メリットとデメリットは損得です。このように熟語の中には、意味が正反対の言葉をセットにしたものがたくさんあります。対義語と呼びます。

他にも、男女、長短、善悪、新旧、利害、公私、自他、入出、遠近、内外、主従、難易、増減、需給、動静、因果、攻守など、数え上げればキリがありません。

観点を3つにすれば、衣食住、心技体、人物金、知情意、守破離、報連相、正反合、走攻守、大中小などがあります。4つでは、起承転結、老若男女、加減乗除、喜怒哀楽、冠婚葬祭などがあり、時間のある方は調べてみてください。

これらはすべて多面思考の切り口として使えます。新しい事業を立ち上げるなら、人物金の3つの観点で考える、といったように。日本語は多面思考を実践するのに便利な言葉なのです。

ビジネス・フレームワークを活用する
熟語にある切り口はテーマを選ばず、一般的に使えるものばかりです。それに対して、ビジネスに特化した切り口があります。「ビジネス・フレームワーク」と呼ばれているものです。

経営学の理論や経営コンサルタントのノウハウを凝縮したもので、労せずして多面思考ができるのがありがたいです。今やビジネスには欠かせないツールと言っても過言ではありません。

フレームワークに関しては、以前の連載「フレームワークで働き方改革!」で詳しく解説をしました。そのとき取り上げなかったものをひとつだけ、多面思考の例として紹介したいと思います。

多くの企業では、これからどのようにビジネスを継続していくか、根本的な見直しをせまられています。そのためには、企業を取り巻くマクロな環境を分析することが欠かせません。

そのためには、政治、経済、社会、技術の4つの側面から多面的な分析が必要です。英語の頭文字をあわせて「PEST」と呼びます。

まずは政治(Politics)、すなわち政府の方針、政策、法改正、規制強化(緩和)などの変化やその兆しを洗い出します。次に、経済(Economics)で、成長率や失業率などの各種の経済指標が分析の手がかりとなります。

3つ目に社会(Society社会)です。ここには、人口、文化、暮らしなど社会情勢に関わる幅広いものが入ります。そして最後に、新しい技術開発や投資動向を見る技術(Technology)です。

もちろん、これ以外の要因もありますが、この4つを押さえておけば、ほぼ全体がカバーできます。大きく世の中の動きを見誤ることはないでしょう。

選択肢を多面的に考えてベストを選ぶ
ここまで述べた話とは別に、多面思考にはもうひとつ違った使い方があります。

皆さんは物事を決めるときに、どうやって決定をしますか。日々の買い物とパートナーの選択とでは大きく違ってくるとは思いますが、おおむねA・Bどちらのやり方が多いでしょうか。

A あれこれ調べたりせず、自分にピッタリなものを見つけたら、「これだ!」と決め打ちする。
B 候補を複数洗い出して、いろんな観点から比較をして、そのなかで最善のものを選ぶ。
もうお分かりのようにBが多面思考です。別にAがダメなわけではありません。私の知人に数千万円の中古マンションを、情報誌を見るなり実物も見ずに購入したツワモノもいます(しかも家族に一切相談なし!)。今も気に入って住んでいますから、よほどビビッと来たんでしょう。

ところが、ビジネスの場合、Bのほうが意思決定の質が高まることが、海外の研究で明らかになっています。Aだと確証バイアス(自分の意見に都合のよい情報ばかり集めてしまう癖)が働きやすくなり、比較する選択肢がないと検討のヌケモレが発生しやすいからです。

もし、皆さんの部下で、Aの決め方をする人がいたら、柔らかく指導をしてあげてください。

たとえば、「我が社は○○をすべきです」と言ってきたら、「それはいいけど、他にどんな手を考えた?」と尋ねるのです。相手がけげんな顔をしていたら、「それしか考えないで、なぜこれがベストと言えるの?」と二の矢を放ちましょう。しつこく繰り返せば多面思考が身につくはずです。』

何が本当の問題か 論点をしっかり探り出す3つの条件 第13回 論点思考

『御社の本当の問題は何ですか?
会議の生産性を高めたいので、ファシリテーションのスキルを身につけさせたい。私のところに舞い込む研修の依頼の典型です。研修担当者は、会議の生産性が低いことや議事進行が下手なのが問題だと思っているのです。スキルを習得すれば解決できるのではないかと。

そう言われたら、依頼通りに研修をやればお金はいただけます。ところが、そんなことをすると、後で面倒がおきないとも限りません。大抵は問題を見誤っているからです。

先日も同様の依頼があり、会って事情を聞くことにしました。待ち合わせの喫茶店に行ってビックリ、連絡をくれた担当者やその上司を含め5人も打ち合わせに現れたのです。しかも、挨拶もソコソコに、フルカラーの分厚い資料を渡され、なぜこの研修をやることにしたのか、背景やストーリーを説明し出します。ひとりずつ順番に自分が担当するパートを。

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ところが、「ここにある〇〇とは何ですか?」「なぜ△△なのですか?」と素朴な質問をするとしどろもどろに。いちいち5人でコソコソと相談が始まります。要は、カタチだけ立派で中身がまったくつめられていない。私は、こういう仕事の仕方を“会社ごっこ”と呼ぶことにしています。

もうお分かりのように、会議で分かりやすく症状が出ているだけで、組織や仕事のやり方そのものに問題があるのです。1回の研修をやったからといって、変わる話ではありません。

結局、それを指摘してしまったために、この話は流れることになりました。早い話、コーヒー代650円で会社の大元の問題を気づかせてあげたというわけです。相手は「さすが先生、とても勉強になりました」と喜んでいましたが……。

事実を元にして適切な論点を見いだす
問題を解決する上で一番大切なことは、真の原因を見つけることでも、優れた解決策を考えることではありません。「何が問題か?」を正しくとらえることです。そこを間違ってしまっては、すべての努力が水泡に帰してしまいます。

物事を考えるに際のテーマ(お題)を「論点」(イシュー)と呼びます。まずは論点が何かをしっかりと吟味して、最善の論点を見いだすのが「論点思考」の考え方です。

論点は問い(質問文)で表すと分かりやすくなります。「どうやったら会議の生産性が上がるか?」「わが社の一番の問題は何なのか?」といった具合に。論点を設定することは、問いを立てることに他なりません。ちょっとやってみましょう。

仮に、「今月の売り上げが前年比50%ダウンした」とします。皆さんは、どのような論点を設定して問題解決を図りますか。言い方を変えると、この会社が解決すべき問題は何でしょうか。

多くの方は、「どうやったら売り上げが回復するか?」を考えると思います。ダメだとはいいませんが、事実の裏返しが必ずしも論点ではなく、他に考えられないでしょうか。

たとえば、「さらなる売り上げ低下を防ぐには?」という論点も設定できます。あるいは、「低成長下で収益体質をつくるには?」「落ち込む分をカバーする新たな事業とは?」でも構いません。いろんな問いが立てられます。果たして、どれが望ましい論点なのでしょうか。

優れた論点を選ぶ3つの条件
残念ながら、適切な論点を導くためのシステマティックな手法はありません。本稿で紹介しているすべての思考法は、論点が定まったあとで活躍するものです。「どう考えるか?」(How)の技法は山ほどあっても、「何を考えるか?」(What)は自分で見いだすしかありません。

センスを磨くための方法はあります。情報収集に努める、幅広い教養を身につける、現場感覚を持つ、いろんなことに疑問を抱くようにするなどなど。だからといって目の覚めるような問いが立てられる保証はなく、試行錯誤を繰り返すしかありません。

とはいえ、立てた問いを評価することはできます。良い問いの1つ目の条件は、論点が本質をついており、「考えるだけの価値があるか?」です。売り上げ低下の話で言えば、それが一過性でないのなら、事業構造の変革そのものを論点にするほうが賢明です。

2つ目に、「新しい視点で物事を問い直しているか?」です。論点がありきたりだと、結論もありきたりになります。マンネリ化した論点だと、取り組むファイトがわいてきません。みんなを「え!」と驚かせた上で、「ナルホド」とうならせる斬新な視点がほしいところです。

3つ目に、「自分事としてかじ取りできる論点になっているか?」です。新型ウイルスのまん延や世界の景気の落ち込みは、個人や一企業がどうこうできる話ではありません。「それらにどう対処していくか?」「苦境を逆手にとった新しい事業とは?」であれば自分事になり、コントロール可能です。たとえ難しくても、自分事として解決できる論点を設定するようにしましょう。

論点が持つパワーを高めるには?
だからといって、3つの条件を兼ね備えた論点が一発で出てくるわけではありません。まずは、思いつく論点を付箋などに書き出して、数を増やすことに専念します。視点を替えたり、抽象度を替えたり、前提を疑ったりしながら。この作業を「クエスチョン・ストーミング」と呼びます。

そうやって100個くらい論点がたまったら、先ほどの基準でふるいにかけていきます。10個くらいまで絞り込めればOK。残ったものをブラッシュアップしていきましょう。問いの文章を洗練させることで、論点が持つパワーが大きく違ってきます。

たとえば、「売り上げが回復できるか?」といったクローズド質問(Yes/No型)と、「何が回復につながるか?」といったオープン質問(5W1H型)を相互に転換する手があります。

文頭に、「我々は」「あなたは」と主体を加えると、考える人の当事者意識を高める効果があります。文末の「できるか?」(Can)「したいか?」(Will)「べきか?」(Should)「ねばならないか?」(must)によっても、問いの意味が大きく変わってきます。

あるいは、「もし(仮に)……」「あえて……」と仮定法を使うと、思考の制約を打ち破ることができます。さらに、「最高の」「究極の」「本当に」「圧倒的な」といったパワーワードを加えると、問いの力が大いに高まります。そうやって、考える意義が最も高く、みんなが心から取り組みたい思える論点をつくることが、優れた問題解決の出発点となります。』

西岡壱誠『「考える技術」と「地頭力」がいっきに身につく 東大思考』

『(2020/8/21)
その本は西岡壱誠『「考える技術」と「地頭力」がいっきに身につく 東大思考』(東洋経済新報社)。著者は現役の東大生。2年前、『「読む力」と「地頭力」がいっきに身につく東大読書』(同)で東大生の読書法をわかりやすく披露し、これがベストセラーになった。その後も『「伝える力」と「地頭力」がいっきに高まる 東大作文』(同)を刊行、東大在学のまま思考法や勉強法、その指導法などを教えるビジネスを展開する会社を起業している。

今回の本は東大生の思考法に焦点を当てる。著者は偏差値35から2浪して東大に合格した。その方法論はシンプルで、「頭のいい人のやり方、思考法をパクリまくった」のだという。その思考法を「誰でも再現可能な思考法、もともとの頭の出来に関係なく実践可能なテクニック」として5つの思考回路にまとめたのが本書だ。

著者によれば、東大生の特徴は日常生活の解像度が高いことだそうだ。だから「一を聞いて十を知る」というように物事が相互に関連づけられ、様々な視点で発想することや目的を明確にして説明したり、事の本質をとらえたりすることができる。その思考回路を著者なりに分解すると、原因思考上流思考目的思考裏側思考本質思考の5つになる。

原因思考は物事をすべて結果ととらえ、その原因は何かを知ろうとする思考法。原因を知ることで物事が関連づけられ、丸暗記せずに多くのことを覚えておけるようになる。上流思考は原因と結果より前に、そもそも何があるのかを探る思考法で、背景まで知ることで話を簡単に要約できるようになる。このように5つの思考法を相互につなげ、日常の解像度を高めて、あらゆる局面を学びにつなげることで、問題を解決できる思考力が高まっていくと著者は書く。

※ ここいら辺は、非常に参考になると思われる…。

欄外を活用して、ちょっとした思考法の練習問題を入れたり、思考法を鍛えるのに適した本のブックガイドが本文に合わせて紹介されていたり、参考書と問題集を合わせたような、きめ細かい編集になっている。仕事を始めたばかりの人や、仕事で考えがまとまらなかったり、アイデアが出なくて困っていたりする人には、自分の思考習慣を見直すきっかけになるうえ、もう一歩進んだ学びにつなげていける一冊だ。「このところ大きく売れる本が出ていないが、この本は2週続けてベストテンに入ったので注目している」と店舗リーダーの河又美予さんは話す。』

武器としての図で考える習慣

https://style.nikkei.com/article/DGXMZO63070230W0A820C2000000?channel=DF030920184323

『(2020/8/28)
ビジネス街の書店をめぐりながら、その時々のその街の売れ筋本をウオッチしていくシリーズ。今回は定点観測している八重洲ブックセンター本店だ。目立った売れ筋は出ていないが、ビジネス書を含む法経書全体でみると、法律の本や実務書、資格取得の教科書などが幅広く売れて、売り上げを下支えしている。そんな中、書店員が注目するのは、ビジネスでは図で考えることが大きな武器になると説く元戦略コンサルタントの一冊だった。

その本は平井孝志『武器としての図で考える習慣』(東洋経済新報社)。著者の平井氏は現在、筑波大大学院ビジネスサイエンス系教授として経営戦略論を教える。ベイン・アンド・カンパニーやローランド・ベルガーで長く戦略コンサルタントとして数々の事業戦略や新規事業開発を手がけてきた、いわばビジネスを考えるプロだ。その著者が「図で考える」メソッドを整理し、紹介したのが本書だ。副題に「『抽象化思考』のレッスン」とある。

パワポではなく紙とペン1本で
「図で考える」と言われると、多くのビジネスパーソンがすぐ思い浮かべるのは、プレゼンテーションソフトのパワーポイントだろう。だが著者は、「パワーポイントには思考の流れを阻害する要因が潜んでいる」という。「画面の上の様々なコマンドボタンと図の往復作業で思考が寸断され、図形やフォントの選択で迷い、思考が途切れがちになります」と指摘する。「図で考える」とは、「手で考える作業であり、自分自身との対話」。「目の前の紙から意識がそれるのはダメで、図と思考をシームレスに、かつ瞬時に切り替えられる利便性があるべき」なのだ。それゆえ必要な道具は、紙1枚とペン1本と言い切る。

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上りエスカレーターを2階で降りた正面の特設ワゴンに陳列する(八重洲ブックセンター本店)
ビジネス書35冊をイラスト化 使える読書ガイド
ビジネス書コーナーのメインの平台に展示する(三省堂書店有楽町店)
アウトプットで成長を 精神科医が説く仕事術

全体は大きく2部で構成され、前半では「なぜ図を使うと考えが深まるか」を解き明かし、基礎的な図の書き方を紹介する。後半は実践編として図を書く上で役立つ4つの型を提示、思考の切り口に応じた型の使い方などを自らの経験や実際的なビジネス事例に基づいて解説していく。

基礎となるのは概念図
余計な情報がそぎ落とされ問題の本質が現れる。思考が見える化できる。ヌケモレのない全体像がとらえられる。これらが図で考えると考えが深められるポイントだ。基礎となるのは概念図。1枚の紙の上に丸や四角や線を書いていく図で、試行錯誤をしつつ、新たな着想を得たり、問題の構造を見つけたりするために書くものだ。基礎編では、この概念図で図を眺めては思考に戻り、また図に戻って思考を深めるにはどうすればよいか、そのやり方や注意点が語られる。

実践編で示される4つの型は「ピラミッド」「田の字」「矢バネ」「ループ」。それぞれ何を考えるのが得意な型なのかを説明した上で、論理の幅を広げたり深めたりするときの活用法が具体例と共に解き明かされる。図で考えるときの頭の働かせ方がよくわかる書きぶりだ。本書に収められた図は実に135枚。シンプルな図が多いので、参考にしたくなる例図集にもなっている。「思考法の本はいろいろと出ているが、図で考えるという切り口が意外に新鮮に映ったのかもしれない」と、ビジネス書を担当する川原敏治さんは話す。

コロナ後の世界情勢に高い関心
それでは、先週のランキングをみておこう。

(1)コンタクトレス・アプローチ テレワーク時代の営業の強化書 長尾一洋著(KADOKAWA)
(2)「話すのが苦手、でも人に好かれたい」と思ったら読む本 権藤優希著(きずな出版)
(3)お金って不思議。金運はこうして動き出すの ミラクルマネーの法則 尾崎友俐著(幻冬舎)
(4)サクッとわかるビジネス教養 地政学 奥山真司監修(新星出版社)
(5)大前研一世界の潮流2020~21 大前研一著(プレジデント社)
(八重洲ブックセンター本店、2020年8月17~23日)

1位はウィズコロナ時代の営業手法を説いた本。会わずに売れる営業手法を伝授する。2位は、口べたでも、人づきあいが苦手でも円滑なコミュニケーションができるようになる心の持ちようやスキルを解説した本だ。3位には、金運をつかみたい人に、そのための考え方や習慣を説いた女性起業家の本が入った。店頭の実売で上位だったのは4位と5位の本。ビジネス教養書シリーズの一冊で地政学をテーマに世界情勢をイラスト解説した本と、大前研一氏が世界の政治・経済・産業動向のこれからを読み解いた本だ。パンデミックが広がった世界がこれからどうなるのか、そこへの関心は高いようだ。今回紹介した「図で考える」思考法の本は7位だった。

(水柿武志)』

何が本当の問題か 論点をしっかり探り出す3つの条件

https://style.nikkei.com/article/DGXMZO63174360Y0A820C2000000?channel=DF120320205956

※ 思考方法の話しだ…。

※ また、貼っておくか…。

『御社の本当の問題は何ですか?
会議の生産性を高めたいので、ファシリテーションのスキルを身につけさせたい。私のところに舞い込む研修の依頼の典型です。研修担当者は、会議の生産性が低いことや議事進行が下手なのが問題だと思っているのです。スキルを習得すれば解決できるのではないかと。

そう言われたら、依頼通りに研修をやればお金はいただけます。ところが、そんなことをすると、後で面倒がおきないとも限りません。大抵は問題を見誤っているからです。

先日も同様の依頼があり、会って事情を聞くことにしました。待ち合わせの喫茶店に行ってビックリ、連絡をくれた担当者やその上司を含め5人も打ち合わせに現れたのです。しかも、挨拶もソコソコに、フルカラーの分厚い資料を渡され、なぜこの研修をやることにしたのか、背景やストーリーを説明し出します。ひとりずつ順番に自分が担当するパートを。

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チコちゃん人気 「問いの深さ」が核心 

ところが、「ここにある〇〇とは何ですか?」「なぜ△△なのですか?」と素朴な質問をするとしどろもどろに。いちいち5人でコソコソと相談が始まります。要は、カタチだけ立派で中身がまったくつめられていない。私は、こういう仕事の仕方を“会社ごっこ”と呼ぶことにしています。

もうお分かりのように、会議で分かりやすく症状が出ているだけで、組織や仕事のやり方そのものに問題があるのです。1回の研修をやったからといって、変わる話ではありません。

結局、それを指摘してしまったために、この話は流れることになりました。早い話、コーヒー代650円で会社の大元の問題を気づかせてあげたというわけです。相手は「さすが先生、とても勉強になりました」と喜んでいましたが……。

事実を元にして適切な論点を見いだす
問題を解決する上で一番大切なことは、真の原因を見つけることでも、優れた解決策を考えることではありません。「何が問題か?」を正しくとらえることです。そこを間違ってしまっては、すべての努力が水泡に帰してしまいます。

物事を考えるに際のテーマ(お題)を「論点」(イシュー)と呼びます。まずは論点が何かをしっかりと吟味して、最善の論点を見いだすのが「論点思考」の考え方です。

論点は問い(質問文)で表すと分かりやすくなります。「どうやったら会議の生産性が上がるか?」「わが社の一番の問題は何なのか?」といった具合に。論点を設定することは、問いを立てることに他なりません。ちょっとやってみましょう。

仮に、「今月の売り上げが前年比50%ダウンした」とします。皆さんは、どのような論点を設定して問題解決を図りますか。言い方を変えると、この会社が解決すべき問題は何でしょうか。

多くの方は、「どうやったら売り上げが回復するか?」を考えると思います。ダメだとはいいませんが、事実の裏返しが必ずしも論点ではなく、他に考えられないでしょうか。

たとえば、「さらなる売り上げ低下を防ぐには?」という論点も設定できます。あるいは、「低成長下で収益体質をつくるには?」「落ち込む分をカバーする新たな事業とは?」でも構いません。いろんな問いが立てられます。果たして、どれが望ましい論点なのでしょうか。

優れた論点を選ぶ3つの条件
残念ながら、適切な論点を導くためのシステマティックな手法はありません。本稿で紹介しているすべての思考法は、論点が定まったあとで活躍するものです。「どう考えるか?」(How)の技法は山ほどあっても、「何を考えるか?」(What)は自分で見いだすしかありません。

センスを磨くための方法はあります。情報収集に努める、幅広い教養を身につける、現場感覚を持つ、いろんなことに疑問を抱くようにするなどなど。だからといって目の覚めるような問いが立てられる保証はなく、試行錯誤を繰り返すしかありません。

とはいえ、立てた問いを評価することはできます。良い問いの1つ目の条件は、論点が本質をついており、「考えるだけの価値があるか?」です。売り上げ低下の話で言えば、それが一過性でないのなら、事業構造の変革そのものを論点にするほうが賢明です。

2つ目に、「新しい視点で物事を問い直しているか?」です。論点がありきたりだと、結論もありきたりになります。マンネリ化した論点だと、取り組むファイトがわいてきません。みんなを「え!」と驚かせた上で、「ナルホド」とうならせる斬新な視点がほしいところです。

3つ目に、「自分事としてかじ取りできる論点になっているか?」です。新型ウイルスのまん延や世界の景気の落ち込みは、個人や一企業がどうこうできる話ではありません。「それらにどう対処していくか?」「苦境を逆手にとった新しい事業とは?」であれば自分事になり、コントロール可能です。たとえ難しくても、自分事として解決できる論点を設定するようにしましょう。

論点が持つパワーを高めるには?
だからといって、3つの条件を兼ね備えた論点が一発で出てくるわけではありません。まずは、思いつく論点を付箋などに書き出して、数を増やすことに専念します。視点を替えたり、抽象度を替えたり、前提を疑ったりしながら。この作業を「クエスチョン・ストーミング」と呼びます。

そうやって100個くらい論点がたまったら、先ほどの基準でふるいにかけていきます。10個くらいまで絞り込めればOK。残ったものをブラッシュアップしていきましょう。問いの文章を洗練させることで、論点が持つパワーが大きく違ってきます。

たとえば、「売り上げが回復できるか?」といったクローズド質問(Yes/No型)と、「何が回復につながるか?」といったオープン質問(5W1H型)を相互に転換する手があります。

文頭に、「我々は」「あなたは」と主体を加えると、考える人の当事者意識を高める効果があります。文末の「できるか?」(Can)「したいか?」(Will)「べきか?」(Should)「ねばならないか?」(must)によっても、問いの意味が大きく変わってきます。

あるいは、「もし(仮に)……」「あえて……」と仮定法を使うと、思考の制約を打ち破ることができます。さらに、「最高の」「究極の」「本当に」「圧倒的な」といったパワーワードを加えると、問いの力が大いに高まります。そうやって、考える意義が最も高く、みんなが心から取り組みたい思える論点をつくることが、優れた問題解決の出発点となります。』

「まだ大丈夫。なんとかなる」と考えたい空気が流れている

https://comemo.nikkei.com/n/n4ee9e7f0a3da

『「まだ大丈夫。なんとかなる」と考えたい空気が流れている
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池永寛明(大阪ガス エネルギー・文化研究所)
2020/08/26 11:53

“まだ大丈夫。うちとこは、なんとかなる。”
緊急事態宣言が解除されても、お客さまは帰ってこない。ソーシャルディスタンス対応でいろいろな場所の制約があるが、大丈夫、お客さまは必ず来てくれる。工場の稼働は2分の1、大丈夫、今までもうまくいった。来店客は3分の1だが、なんとかなる、イベントやキャンペーンをうったら、元に戻る。前期はオンライン講義、後期はなんとか大学の教室で対面講義したい、そうでないと来年の受験に影響する。インバウンドは当面無理だが、私のところは国内旅行客が中心だったから、落ち着いたら来てくれるはず、きっとなんとかなる…。実質的にコロナ禍に入った3月から、半年が経った。現況は厳しく、これからのことが予想できないが、「まだ大丈夫。なんとかなる」という空気が所々で流れている、なぜか。

サービスの現場は厳しい。
ある都心の飲食街では、2割の店がすでに閉じた。秋冬にかけて、さらに増えるという。それも突然の閉店が多い。経営者が行方不明となるケースもある。コロナ禍が心配、不安。「コロナ禍はこれからどうなるのか、いつまでつづくのか」「お客さまはいままでのように来てくれるのだろうか」「これから補助金が無くなったら、家賃と人件費は払えるのだろうか」「弁当や仕出しなど新しい分野に取り組んだが、やはり今までのやり方で頑張る。」「当面しんどいが、まだ大丈夫、なんとかなる」という声がでる。

今までどおりいくとは思えない。
多くの会社でテレワークが普通となって都心に通勤する人々が少なくなり、「ちょっと一杯」「親睦会」が減り、「接待」をしないできない状況がつづいている。それは3日とか1週間といった実験的トライアルではなく、1ヶ月2ヶ月3ヶ月半年つづき、それで普通となった。今までとちがう飲食スタイルとなったことは明らかであるのに、いままでどおりにお店が戻るとは思えない。

しかしこんな状況でも、厳しい業種のなかでも、売り上げをのばしている企業・店・人がいる。苦戦している企業・店ばかりではない。二極化・三極化どころではない。各社・各店バラバラになろうとする。今までのように、同じ方向に進んでいくという展開シナリオは描けない。なぜか。コロナ禍前とコロナ禍以降の前提条件が変わった。
各企業・各店舗・各人ごとに、状況はちがう。“コロナ禍前に、なにを考え、なにをしていたのか”と、“コロナ禍に入って、なにを考え、なにをしてきたのか”によって、それぞれの現在とこれからはちがってくる。にもかかわらず、“みんなと同じ”と考えようとする、そして“なんとかなる”と考えようとする。

画像1

“コロナ禍で大きく変わらない”
という「先生」たちがいる。「コロナ禍といっても、大きくは変わらない。元に戻るよ」と語る「有識者」と呼ばれる大学教授や評論家が多い。彼らの言説は対症療法、その場対応の方法論や一般論が多く、参考にならない。「過去」に生きる先生方にとって、コロナ禍にあてはめる「過去」が見当たらず、機能不全をおこしている。
みんな同じことをいう。テレビやオンライン講義で社会的不安をあおることを避けようとしているのかもしれないが、市場・社会の現場に立っていない先生たちは「現在」がどのように成り立ち、構造が変化していこうとしているのかというメカニズムをつかめないので、人の心を打つことを語れない。

画像3

社会観・市場観・生活観がずれている。
「観」はその人・その組織がそれまで取り組んできた事柄や試行錯誤によってつくられる。現在は過去に埋めこまれている。自分・自組織だけ見て、他人・他組織・市場を見ていないと、全体が見えてこない。内と外の過去から現在の流れを見つめ、「変化」を読み解かないと、未来は見えない。
いつからか、日本は全体がどうなっているのか、過去から現在の時間軸でどうなったのかをつかみ、なにをすべきかを考えないようになった。

虫の目で自分・自組織の現在を見てばかりいては、未来は見えない。市場全体の現在がなぜそうなったのかという構造と関係性をつかまないと、未来は見えない。鳥の目で見れなくなった日本人。部分ばかり見て、全体が見えなくなった。「鳥」と「魚」の目で、市場全体を俯瞰して過去から現在の流れと構造をつかまないと、未来が拓けない。あきらかにコロナ禍前からコロナ禍に大断層(リセット)がおこっている。にもかかわらず今までどおりで、「なんとかなる」わけがない。』

ひとつ上の視点からモノ考える 大切なビジネス思考法 第1回 メタ思考

『ところが、同じやり方で考えても、さほど違った答えはでてきません。同じ考え方の人が集まって議論をしても、目新しい結論は期待薄です。それどころか、何度やっても同じ結論になり、「ほらやっぱりこれでいいんだ」と、余計に慣れ親しんだ考えから離れられなくなります。

つまり、「よく考えろ」と言われたら、まずは考え方そのものを点検し、それとは違う考え方をしなければいけません。思考法を切り替えないと、よく考えたことにならないのです。』
『そこで質問です。皆さんは、どれくらい考え方のバリエーションをお持ちでしょうか。たとえば「思考法」と呼ばれる考え方のメソッドをどれくらい使いこなせますか。その数が少ないから、いつもワンパターンの答えしか出せないのではありませんか。』
『知識や情報をいくら集めても、それ自体が答えを出してくれるわけではありません。KKD(勘・経験・度胸)に頼っていたのでは、新たな問題に対処できなくなります。今私たちに求められているのは、思考法を巧みに駆使すること。それがあって初めて、適切な答えが見いだせます。』
『一つ簡単な例を挙げましょう。先ほど、「よく考えるとは何をすることなのか?」という問いを立てました。このような考え方を「メタ思考」と呼びます。

メタ思考とは、物事を一つ(以上)の上の立場から俯瞰(ふかん)して考える思考法です。このケースで言えば、上司から「よく考えろ」と指示をされたときに、

・「何をすればよく考えたことになるのか?」(定義、状態など)
・「何のためによく考えないといけないのか?」(意味、目的など)
・「よく考えることで何が生まれるのか?」(効用、便益など)
を考えるようにします。分かりやすく言えば、“そもそも論”です。物事を考える前に、「何を考えるのかを考える」ことで、テーマ自体を問い直すのです。あたかも、2人の会話を天井から第三者の視点で眺めて見ているようにして。』
『メタ思考を駆使すれば、物事の本質や気がつかなかった食い違いが発見できます。これこそがメタ思考の一番の効果です。』
『〔俯瞰的に考えれば本当の解決策が見つかる〕
メタ思考が役に立つもう一つの場面があります。意見が対立しているときです。皆さんに簡単なクイズを出しますので、先を読む前に一度考えてみてください。

孫娘がかわいくて仕方がないお婆ちゃんは、ねだられるままにオモチャを買ってあげます。そうやって甘やかすせいで、娘は母親の言うことをちっとも聞きません。「やめてちょうだい!」と何度も言うのに、お婆ちゃんは知らん顔。どうすれば、両者の対立が解消できるでしょうか。

すぐに思いつくのは、購入量(金額や回数)を減らしたり、購入するものを限定したりして、両者痛み分けにする案です。悪くはありませんが、満たしきれなかった欲求が火種となって、問題が再燃する恐れがあります。

こんなときこそ、メタ思考で考えてみましょう。両者の言い分を俯瞰的に見た上で、共通する関心事を見つけ出すのです。』
『たとえば、「何のためにお婆ちゃんはオモチャを買うのか?」「お母さんは何を嫌がっているのか?」を考えてみます。多分、お婆ちゃんは孫娘をかわいがりたいだけです。甘やかさない方法でできればお母さんから文句が出ません。遊園地に連れていったり、大好きな料理をつくってあげたり。

さらに、もう一段レベルを上げてみましょう。「なぜ、お婆ちゃんはそんなに孫娘をかわいがりたいのか?」を考えてみるのです。

ひょっとすると、お婆ちゃんは寂しさを紛らわせたくて、何か生きがいを求めているのかもしれません。だったら、新しい趣味を持つ、ペットを買う、友人との交流を増やすなどの手が考えられます。これならお母さんも大歓迎。お婆ちゃんの問題解決にお母さんが協力することもできます。

こんなふうに、メタ思考で使うことで、両者の対立を超えた本当の解決策が見えてきます。両者の言い分を俯瞰的に眺めるメタ思考ならではの技です。』
『〔考え方の変革は生き方の変革につながる〕
こんな風に、本連載では問題解決に役立つ思考法を、哲学、心理学、教育学、経営学など幅広いジャンルから集め、応用事例とともに分かりやすく紹介していきます。

心に響いたものがあれば、とにかく一度使ってみてください。思考法を知っているだけでは意味がなく、使ってみないと自分のものになりません。そうやって、考え方の引き出しを少しずつ増やしていくのが上達の近道です。

私たちは、日々あふれかえるほどの問題に直面しています。しかも、問題が複雑化・高度化する一方で、一筋縄では対処ができない問題が山積しています。

残念ながら、すべての問題がスッキリと解決できる魔法の方法はありません。いろんなやり方を駆使して、トライ&エラーで進めていくしか手がありません。そのためには、思考法のバリエーションを増やし、試行錯誤の回数を増やすしかないのです。

「人間は考える葦(あし)」(パスカル)であり、考えることは生きることです。多彩な思考法を習得することで、働き方や人との関わり方、ひいては生き方やあり方を見直すキッカケとなれば幸いです。』

 ※ オレがいつも言っている、「世界は、層構造になっている。」にも通じるような話しだ…。
 目先の「現象」にのみ囚われるのでは無く、常に「それが拠って来たるところ」(その現象の、発生原因となっていること)を抽出するように考え続けること…、そういう「頭の働かせ方」が大切なんだ…。
 そして、「その抽出したもの」が、他の「現象」へ適用できるのか…、どの程度の「応用範囲」があるのか、常に「現象」に適用してみて「確かめる」こと…。そうやって、「抽出したもの」の精度を磨いて行くんだ…。