EU・中国が首脳協議、習氏「自主的な対中政策」要求

EU・中国が首脳協議、習氏「自主的な対中政策」要求
米との協調けん制、EUは対ロシア支援で警告
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR30CQO0Q2A330C2000000/

『【ブリュッセル=竹内康雄、北京=羽田野主】欧州連合(EU)と中国は1日、テレビ電話形式の首脳協議を開いた。ロシアのウクライナ侵攻に関して、EUは中国にロシアを支援しないよう求め、制裁の抜け道を使わないよう警告した。習近平(シー・ジンピン)国家主席は欧州側の「自主的な対中政策」を要求し、米国と同調して対中圧力を加えないようくぎを刺した。

中国国営中央テレビ(CCTV)によると、習氏は「中欧は不安定な世界情勢に安定要因を提供すべき」と述べ、経済制裁などを通じた米欧主導のロシア包囲網をけん制した。

習氏は「中欧は幅広い共通の利益と深い協力基盤を有しており、協力と調和こそが問題を解決する」とも述べた。「欧州側が自主的な対中認識を形成し、自主的な対中政策を進め、中国側と共に、中欧関係の安定した発展を共同で推進することを望んでいる」と中国に対する厳しい姿勢を見直すよう迫った。

首脳協議では、EUのミシェル大統領とフォンデアライエン欧州委員長が、習氏と李克強(リー・クォーチャン)首相とそれぞれ別に話し合った。首脳同士の対話は2020年12月にEUと中国の投資協定で大筋合意して以来だ。

協議後の記者会見で、ミシェル氏はロシアによるウクライナ侵攻が世界の安全保障と世界経済の脅威となっている認識を習氏と共有したと表明。そのうえで「中国に戦争終結に向けて役割を果たすよう促した」と説明した。

フォンデアライエン氏は「中国は我々の制裁を妨げるべきではない」と伝えたと明かした。EU高官は3月31日、中国がロシアに軍事支援をしたり、制裁を回避したりしている「確固たる証拠はない」と記者団に説明。こうした行為が確認されれば「もはや(中国は)中立とはいえない」と語った。

EUは首脳協議でロシアへの協力が確認された際の制裁などには触れなかったもようだが、内部ではハイテク部品の供給制限などを議論している。

EUが中国のロシア支援を懸念するのは2つの理由がある。一つは経済大国の中国がロシアを助ければ制裁の実効性が薄れることだ。もう一つは中国がロシア側につけばすでに悪化しているEUと中国の関係の改善が一段と遠のくことだ。

このところEUと中国の関係は悪化を続けている。21年3月には中国での少数民族ウイグル族の不当な扱いが人権侵害にあたるとして中国の当局者らに約30年ぶりに制裁を科した。中国は即座に反発し、報復制裁を発動した。

リトアニアが台湾との関係強化に動き、中国は事実上の貿易制限措置を導入。EUが世界貿易機関(WTO)に提訴する事態にも発展した。関係悪化から、20年12月に大筋合意した投資協定の批准に向けた手続きは事実上止まっている。

それでもEUは中国との関係悪化に歯止めをかけたいのが本音だ。EUの20年のモノの貿易額をみると、輸入では中国はロシアの4倍、輸出では2.5倍で景気浮揚には中国との通商関係は欠かせない。

実際、ドイツなどを中心に中国がロシアに協力しないことを確認できれば投資協定の手続きを再開すべきだとの声がある。李氏は1日、投資協定の批准手続きを進めるよう呼びかけた。

気候変動や新型コロナ対策でも、中国なしに実効性のある対策を打ち出すのは難しい。3月31日にはEUと中国のエネルギー担当の閣僚がエネルギーのクリーン移行を話し合った。
もっとも、習指導部も米国との長期対立をにらむ上で、EUとの関係修復は欠かせないとみている。中国共産党系の環球時報は3月31日付の紙面で「中国とEUの首脳協議は動揺する世界のためにチャンスをもたらす」と主張した。EUが米国の「新冷戦」戦略に乗らずに中国と経済連携を進めることがお互いの経済発展につながると強調した。

中国外交を専門にする北京のある大学の教授は「カギを握るのはドイツだ。ドイツを取り込めばEUの周辺国はついてくる」と語る。自動車分野など中国の巨大な市場のさらなる開放をちらつかせて引き込む戦略をとるとみられる。

【関連記事】
・[FT]ロシア、中国に兵器供給を要請の観測 中国は否定
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日中関係、接近と緊張 陰の主役は米国

日中関係、接近と緊張 陰の主役は米国
日中国交正常化50年㊤
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA20CES0Q1A221C2000000/

『2022年は日中の国交正常化から50年の節目となる。接近と緊張を重ねた半世紀を経て両国の経済力は逆転した。中国の台頭に伴って米中対立の構図が鮮明となり、日中ともに新たな関係のあり方を探るのが難しい状況となった。

日中関係を振り返ると陰の主役は常に米国だった。50年前、日本が中国との国交正常化にカジを切ったのも1972年2月のニクソン米大統領の訪中がきっかけだ。

いつか米中が日本の頭越しに手を結ぶのではないかと考えると、おちおち眠れない――。朝海浩一郎氏は57年から6年間の駐米大使時代に警鐘を鳴らしていた。

米側は「Asakai’s Nightmare(朝海氏の悪夢)」などと呼んだが「悪夢」は現実となる。71年7月、ニクソン氏が突然、中国訪問を発表。日本側に正式に伝わったのはその3分前だったとされる。

佐藤栄作政権は情報収集能力がないと批判され求心力を失う一因となった。ベトナム戦争撤退を検討していた米国はソ連へのけん制で中国に接近した。そうした国際情勢を見誤った結果だった。

後を継いだ田中角栄首相は就任後すぐに訪中し、72年9月29日の日中共同声明で国交を結んだ。日本は政府開発援助(ODA)などを通じて中国の発展に貢献した。

89年の冷戦終結は中国を巡る環境を変えた。民主化運動を弾圧した89年の天安門事件で中国は国際社会で孤立する。米欧は制裁に踏み切ったが隣国との関係を重視した日本は距離を置いた。中国からの要請で92年には天皇陛下の訪中も実現させた。

中国側には日本との距離を密にして米欧からの包囲網を破る思惑があった。

中国経済の転機は2001年に訪れる。9月に起きた米同時テロに揺れていた国際社会は12月の中国の世界貿易機関(WTO)加盟を歓迎した。

特に米国では経済の自由化によって中国の政治体制にも好影響が及ぶとの楽観論が広がった。その半面、日本では経済面で台頭する中国への警戒感が高まり始めた。

日本が国民総生産(GNP)で旧西ドイツを抜き世界2位になったのは68年。中国は42年後の10年に国内総生産(GDP)で日本を超えて2位となった。このころから中国の周辺国への威圧的な態度が目立つようになる。

沖縄県・尖閣諸島沖での中国漁船衝突事件も10年の出来事だ。

この時期に中国の強硬姿勢を許したのはオバマ米政権下で米中関係が比較的良好だった背景がある。その間に中国は軍事予算を拡充させ、南シナ海でも領有権の既成事実化を続けた。

笹川平和財団の小原凡司上席研究員は「00年代は米国は対テロ・対中東に傾斜し、中国の脅威に関心を払ってこなかった」と指摘する。

今また米中関係が日中関係に影を落とす。17年に発足したトランプ政権は関税引き上げなど強い態度で臨み、米中関係を逆回転させた。21年にバイデン政権に代わり対立は鮮明となった。

半世紀前に米大統領補佐官としてニクソン訪中をお膳立てしたキッシンジャー氏以来、米国は中国と一定の関係を保ちながら変化を促す関与政策を取ってきた。日本もこの路線に左右されてきたが、いまや米国で対中楽観論は消えた。

日本にとっては中国は隣国であり最大の貿易相手国でもある。対応は一層難しくなる。松田康博東大教授は「日中関係は抑止力を高めながら決定的な対立を避けるマネジメントの時代に入った」と分析する。

中国の王毅(ワン・イー)国務委員兼外相は昨年11月の林芳正外相との電話協議で国交正常化50周年を機に「正しい軌道に沿って長期安定を図るべきだ」と呼びかけた。「対中、対米の関係をうまく処理するよう望む」とも強調した。

日中間には過去4つの政治文書がある。毛沢東を中国指導者の第1世代と数え、世代ごとに文書を結んできた。第5世代にあたる習近平(シー・ジンピン)国家主席とまだ5つ目の文書を交わせずにいることは先を見通せない現在の日中関係を映す。』

[FT]米国のLNGを求める中国 エネルギー・環境は協力

[FT]米国のLNGを求める中国 エネルギー・環境は協力
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB220KP0S1A221C2000000/

『天然ガスへの需要が旺盛な中国が米国の液化天然ガス(LNG)大手と相次ぎ輸入契約を結んでいる。米中関係は緊張が高まっているが、二大国のエネルギー貿易は拡大している。
中国は今年日本を抜いて世界最大のLNG輸入国となる一方、米国は今年1〜9月の中国向けLNG輸出で豪州に次ぐ2位となった(中国・大連にあるLNG輸入施設)=ロイター

20日には米ルイジアナ州で輸出プラントを2カ所建設中の米ベンチャーグローバルLNGが、中国最大のLNG輸入企業である国営の中国海洋石油(CNOOC)と年350万トンを輸出する2つの契約で合意したと発表した。

これにより今年10月以降に米企業と中国の顧客が締結した大型契約は7件となった。一部の契約期間は数十年に及ぶ。アナリストは中国が今年日本を抜いて世界最大のLNG輸入国となると見ている。一方、米エネルギー情報局(EIA)によると、米国のLNG輸出能力は来年オーストラリアとカタールを追い越す見込みだ。

新疆ウイグル自治区でのウイグル族の迫害、香港の民主化運動の弾圧、台湾近海での軍事活動など様々な問題をめぐり米中関係は緊迫の度を増している。これに対して中国は、米国が覇権主義的な行動を取り両国間で新たな冷戦を始めようとしていると非難する。
COP26の気候変動対策で合意した米中

その半面で両国はエネルギーや気候変動問題で協力関係にあり、相次ぐLNG契約はその証しでもある。先月開催された第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)でも、両国は予想に反して気候変動対策で合意した。また原油価格の高騰を抑えるため、各国と協調して戦略石油備蓄を放出した。

「米中関係は多くの面で最悪の状態にある」。米コロンビア大学気候変動研究大学院の院長で、オバマ政権でエネルギー担当の大統領特別補佐官を務めたジェイソン・ボードフ氏はこう述べた。「だが緊張や対立があっても、エネルギーと気候変動は協力を深められる可能性がある分野だ」

ベンチャーグローバルは11月、国営の中国石油化工(シノペック)と年400万トンのLNGを20年間供給する契約を結んだ。また同社の商社部門ユニペックとの間でも計350万トンを供給する複数の短期契約を交わしている。CNOOCとの契約の一つも期間は20年だ。

ベンチャーグローバルのマイク・セイベル最高経営責任者(CEO)は、中国が二酸化炭素(CO2)排出削減のために火力発電所の燃料を石炭からLNGに転換していることが契約の背後にあると述べた。シノペックとの契約はCOP26の前に良いメッセージを発信できるようタイミングが計られたという。

「中国は他のアジア諸国に先駆けて契約すべく素早く動いている」とセイベル氏はフィナンシャル・タイムズ(FT)に述べた。「だが我々が契約を発表している間にも他の国々は対応するだろうし、すでに動き始めている国もある。さもなければ中国がますます有利になるからだ」

「世界中で米国産LNGの需要が高まり、また最も早く手に入るのが米国産LNGという異例の事態が起きている」
ガス供給源の確保急ぐ中国企業
中国海洋石油は20日、米ベンチャーグローバルLNGと年350万トンのLNGを輸入する2件の契約を結んだ。このうち1件は期間20年に及ぶ長期契約だ=ロイター

米LNG最大手のシェニエール・エナジーは中国が成長を下支えしてくれると期待する。同社は最近、国有化学大手の中国中化集団(シノケム)などに合計で年間300万トンを供給する契約を結んだ。

「今後数十年にわたり、アジアのLNG需要が業界の成長を支える原動力になるだろう。中でも中国は最大の顧客だ」とシェニエールのアナトール・フェイギン最高商務責任者(CCO)は10月にFTに述べている。

トランプ政権下では米国による中国製品への追加関税の報復措置として中国が米国産ガスに関税を課したため、LNG契約や輸出は低調だったが、次第に回復しつつある。中国では電力不足により経済活動が停滞し、世界的にガス価格が高騰しており、中国企業はガスの供給源確保を急いでいる。

金融情報会社リフィニティブによると、今年1〜9月の中国向けLNG輸出で米国は2位だった。1位はオーストラリアだが、米国と同様に対中関係は悪化している。

「中国はLNGの半分を米国とオーストラリアから輸入している。中国政府には歯がゆい状況だろう」。米シンクタンク、戦略国際問題研究所(CSIS)のエネルギー・地政学部門を率いるニコス・ツァフォス氏はこう指摘した。「だが開発案件があれば行かざるを得ないのだから、致し方ない」
米国は重要な燃料供給源

中国外務省が発表した11月の米中首脳電話会談の要旨によると、習近平(シー・ジンピン)国家主席はバイデン米大統領に「天然ガス分野での協力関係を強化したい」と伝えた。中国が米国を重要な燃料供給源とみている証しだ。

しかし天然ガスの米国内価格が100万BTU(英国熱量単位)あたり6ドル(約680円)を上回り2008年以来の高値を付ける中で、ガス輸出は政治的に慎重な対応が求められる問題になりつつある。

米民主党のエリザベス・ウォーレン上院議員は米エクソンモービルや英BPなど主要天然ガス企業11社のCEOに書簡を送り、「国内価格の高騰を抑えるため天然ガス輸出の削減、一時中止または終了を検討したことがあるか」と尋ねた。

一部のCEOはLNGを輸出すれば他国が火力発電所の燃料を石炭から天然ガスに切り替えるのを米国が支援する機会になると反論した。
不都合な現実

コロンビア大のボードフ氏は輸出削減に動けば「信頼できるエネルギー供給源」としての米国に対する信頼が低下すると述べた。また欧州各国がロシアへの天然ガス依存に懸念を抱いていることを引き合いに出し、「どちらにも政治的、地政学的側面がある」と指摘した。

米経済を化石燃料への依存から脱却させようとしているバイデン政権にとって、天然ガス貿易の活況は政治的にいたたまれない面もある。CO2排出量が石炭より少ないとはいえ、天然ガスも温暖化ガスの主要な排出源だからだ。

これは世界が依然として化石燃料に大きく依存しており、米国が石油・ガスの主要生産国であるという「非化石燃料への転換を進める際の不都合な現実」を映し出しているとCSISのツァフォス氏は指摘した。「実際、この現実が米中両国を後ろめたくさせている」

By Justin Jacobs and Derek Brower

(2021年12月21日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版 https://www.ft.com/)

(c) The Financial Times Limited 2021. All Rights Reserved. The Nikkei Inc. is solely responsible for providing this translated content and The Financial Times Limited does not accept any liability for the accuracy or quality of the translation.
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【関連記事】

・[FT]中国の6.5兆ドル「グリーン投資」 世界の対策を左右
・脱炭素化へ見えぬ推進役 COP26、米欧中の協調道半ば
・COP26・米中共同宣言は「手打ち」の意味も
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中国GDPが世界首位になる可能性の考察

コロナ禍1年目2020年の米中GDP分析・総括と今後の行方。中国GDPが世界首位になる可能性の考察
(2021/03/16)
https://www.provej.jp/column/st/usa-china-2020-gdp/

※ ちょっと疲れてきた…。今日は、こんなところで…。

『 下記は2011年時点の世界GDPランキング上位に入った国のGDP推移を示したグラフです。

長年アメリカが覇権国家としてGDP首位を守り抜いてきましたが、2030年頃には2位の中国がアメリカを抜くと言われています。

米中GDP推移

https://www.meti.go.jp/report/tsuhaku2012/2012honbun/html/i1410000.html

世界経済ランク

2020年は新型コロナウイルスの世界的な蔓延によって、各国はどこもGDPが落ちてしまいました。しかし、武漢を発生源としたにも関わらず、いち早く収束に向いコロナ不況から抜け出したのは中国でした。このことはGDPの逆転に影響するのでしょうか。

ここでは、新型コロナウイルスによってアメリカと中国のGDPはどのように影響を受けているのか、日本にはどのような影響があるのかについてご説明します。

目次 [非表示]

1 2030年に起こるGDP首位の逆転

2 世界首位を目指す中国のGDP
    新型コロナウイルス感染拡大前の中国のGDP

3 感染拡大後の中国GDP回復を後押しした2つの要因
    新型コロナウイルス感染防止に関する輸出が増えた
    国有企業が主に担うインフラ投資と20年後半の輸出が好調

4 中国に後を追われるアメリカ
    新型コロナ感染拡大前のアメリカのGDP
    感染拡大後の落ち込みはリーマンショック以来

5 中国は本当にアメリカを抜くのか

6 中国が世界首位になるという意見・仮説の根拠
    新技術の開発力のレベルが高い
    あらゆる分野の研究者数が多い
    鉱物資源が豊富
    消費者の購買力がまだ成長途上にある

7 中国は世界首位にならないという意見・仮説
    中国は2030年にGDPで米国を一旦上回ったとしてもその後失速する
    次の覇権国はインドが有力である

8 米中のGDPは日本へどのように影響するのか
    自動車関連品目は急減
    半導体等電子部品類は増加が続く

9 最後に

2030年に起こるGDP首位の逆転

2030年、中国のトップが習近平のままであるかはまだ未定ですが、誰が国家主席になろうと、中国がGDP首位になるという見解が有力です。

中国成長

2021年3月現在、中国の経済成長率は、新型コロナウイルスの感染拡大前の水準に戻っています。

早期にウイルスを抑え込むことに成功し、2020年通年も主要国で唯一プラス成長を維持しています。

GDP1位のアメリカの経済が未だに出口が見えずに苦闘している中、この中国の経済回復は、2030年に起こるとされているGDP首位の逆転を前倒しするのではないかという見解もあります。

※日本は現在3位ですが、2035年には4位に下がると予測されています。

それでは次に、今まで中国がどのようなGDPの成長を成し遂げてきたかを見ながら、実際に1位になるかどうかを様々な視点から見てみましょう。

世界首位を目指す中国のGDP
新型コロナウイルス感染拡大前の中国のGDP

中国上海

https://mainichi.jp/articles/20201019/k00/00m/020/257000c

下記のように、中国の実質GDP成長率は年々下がっています。しかし、アメリカや日本はそれ以上に下がるか、停滞するため、中国は相対的に有利になるというのが大きな理由です。

GDP推移

中国は1970年代末から、経済の改革開放路線に踏み切り始め、市場経済化や外資の導入を開始し、2001 年にはWTO にも加盟。30 年以上年平均10%近い実質経済成長を遂げてきました。

その結果、2000 年代後半に、名目ドルベースで換算した中国のGDPは欧州主要国を、2010 年には日本を抜き、米国に次ぐ世界第二の経済規模へと成長しました。特に世界経済危機後の 5 年間(2008年~2013 年)は、先進国が伸び悩む中、人民元レート上昇も影響し中国の名目ドルベースGDPは約 2 倍に拡大しています。

習近平は2015年に「中国製造2025」を掲げ、先端分野に多額の補助金を投じてきました。対米摩擦の長期化をにらみ、21年からの新5カ年計画でも国内供給網の強化を狙ってきました。

中国製造2025_3ステップ

https://www.hitachihyoron.com/jp/archive/2010s/2017/06/gir/index.html

重点分野

https://www.nikkei.com/article/DGXKZO38656320X01C18A2EA2000/

感染拡大後の中国GDP回復を後押しした2つの要因

中国国家統計局が発表した2020年10~12月の実質GDPは、前年同期比6.5%増となり、新型コロナ前の19年10~12月と比較して6.0%上回りました。

中国コロナGDP

https://www.asahi.com/articles/photo/AS20200717000270.html

GDP成長率が増えた主な理由は下記の2つとされています。

新型コロナウイルス感染防止に関する輸出が増えた

中国では低迷していた海外への輸出額が、前年同月比で4か月連続のプラスとなり、GDPを押し上げました。

特に、感染防止に関連する製品の輸出が伸びていて、1月から9月までのマスクをはじめとする繊維品は、去年の同時期に比べて37.5%増えました。

国有企業が主に担うインフラ投資と20年後半の輸出が好調

金融緩和によって溢れたマネーが不動産市場に流れ込み、マンションの投資開発も鋼材やセメントなど原材料の生産が伸びました。

海外の工場がコロナ禍で稼働率が高まらず、中国に代理生産の需要が発生しました。20年後半は輸出も好調となりました。

中国福建省

https://www.sankeibiz.jp/macro/news/190425/mcb1904250500001-n1.htm

しかし今後、中国にとって大きな悩みとなってくるのが、人口ボーナスの喪失と高齢化です。

中国人構成推移

これまで中国では、人口ボーナスで生産年齢にある人口が増加していたため、生産活動の拡大に有利に働いていましたが、今後は一人っ子政策の影響で高齢化が進むことが予測されており、経済成長の鈍化や高齢化社会への対応、社会保障の問題など避けて通れない問題に直面します。

一人っ子政策の緩和が打ち出されたものの、人口に効果が現れるまでには長い時間がかかるとされています。

中国に後を追われるアメリカ

それでは次にアメリカのGDPが近年どのような推移をしているのかを見てみましょう。

新型コロナ感染拡大前のアメリカのGDP

米商務省が発表した2019年の実質GDPは、前年比2.3%増と、16年以来3年ぶりの弱い伸びとなりました。

貿易摩擦に伴う設備投資の低迷が経済の重しとなり、資本支出の低迷が問題視されていました。

米国GDP

https://www5.cao.go.jp/j-j/sekai_chouryuu/sh19-01/s1_19_1_2.html

米中貿易摩擦の影響は、製造業を中心に表れています。輸出は、サービス輸出が伸びを維持する一方で、製造業輸出は18年半ば以降急速に鈍化し、19年4月にマイナスに転じていました。

感染拡大後の落ち込みはリーマンショック以来

米国商務省が2020年1月28日に発表した2020年第4四半期の実質GDP成長率は、前期比年率4.0%となりました。

ブルームバーグの調査による市場コンセンサス予想の前期比4.2%を下回り、前期の33.4%から大きく回復が鈍化。

2020年通年の実質GDP成長率は、感染拡大の影響で前年比マイナス3.5%となり、通年では、リーマン・ショック時2009年以来11年ぶりのマイナス成長となってしまいました。

米国GDP2

https://www.bbc.com/japanese/52481978

バイデン政権発足後初めてとなる。総額200兆円規模の経済対策の法案が可決・成立しました。

新型コロナウイルスで打撃を受けた労働者や家計を重視した内容で、日本円にして15万円の現金給付や失業保険の積み増しを2021年9月まで延長し、新型コロナの対応によって財政が悪化している州や自治体に向けても支援を強化する方針です。

バイデン政権

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO66181990T11C20A1FF8000/

バイデン政権は、ウイグル自治区の少数民族ウイグル族の人権侵害への対処を最優先課題とし、米通商代表部は、バイデン政権の2021年の通商政策課題に関する報告書において、対立する中国の不公正な貿易慣行に対して「あらゆる手段を用いて対抗する」と表明しています。

今後の対中外交関係、米中貿易摩擦の行方が注目されています。

中国は本当にアメリカを抜くのか

2030年までに、中国はアメリカを抜くのではないかという意見が有力です。

しかし、ここ最近になって、「それは不可能だ」という少数派の意見も出てきました。両者の見解を見てみましょう。

米中GDP逆転

中国が世界首位になるという意見・仮説の根拠

中国が2030年までにGDP首位になるという意見を主張する人は、どのような観点から言っているのでしょうか。

主に下記の4点が挙げられます。

1、新技術の開発力のレベルが高い

新型コロナウイルス向けのワクチンを例に取ってみると、アメリカやイギリスといった新薬開発で世界トップの国と互角に戦っており、1日当たりの製造量がそれらの国に比べて圧倒的に多いと言われています。

2、あらゆる分野の研究者数が多い

優れた大学院生など高度な研究者予備軍が非常に多いため、人材面で経済効果が期待できます。

3、鉱物資源が豊富

中国金属鉱物

http://earthresources.sakura.ne.jp/er/Rres_CH.html

中国には、世界で知られている鉱物資源で採れないものはないと言われています。海外から鉄鉱石や石炭を輸入していますが、自国にある未掘削の価値のあるものは温存しています。例えば、石炭、無煙炭や高熱炭はたくさん採取できるものの、輸入した方が安く上がるものは輸入しています。

4、消費者の購買力がまだ成長途上にある

中国の人口の半分以上の中間層以上はその購買の勢いを持ち続けており、その下のクラスの層はまだ追い付いていない状態です。中国の消費者が買いたいもので、まだ手に届いていないものに車と住宅があります。この2つが売れる社会の産業は、全体的に強さを持つ傾向にあります。

中国は世界首位にならないという意見・仮説

中国の経済力が近い将来世界一の経済大国アメリカを超えるという説は一般的です。

しかしこれを覆す意見を、ロンドンの経済調査会社キャピタル・エコノミクスが発表しています。

中国の経済は2050年になってもアメリカを上回ることはできず、永遠に2番手のままと述べています。

中国の経済的影響力はアメリカのように着実には増加することはないと主張するのは、2030年までに中国の労働人口が年間0.5%以上減少し、アメリカの労働人口は移民増加と中国よりも高い出生率によって、今後30年間で拡大すると考えているからです。

三菱UFJモルガン・スタンレー証券景気循環研究所長のも下記2つの点で、「中国は首位にならない」と見ています。

1、資本主義サイクル

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000087.000011466.html

嶋中氏の予測の詳細を見てみましょう。

2、中国は2030年にGDPで米国を一旦上回ったとしてもその後失速する

社会インフラの投資周期をもとにした景気トレンドを示す「コンドラチェフ・サイクル」で考えると、中国は11~47年まで下降局面にある

「一人っ子政策」の副作用によって30年以降は人口減少に転じ、一方アメリカは、移民流入により高い出生率を維持し、40年にはGDPで中国を再逆転する

確かにアメリカも34年にはコンドラチェフ・サイクル上ではピークを迎えるため、その後は徐々に勢いが衰えるが、そこで中国が取って代わるのが難しいのは、ポルトガルに対するスペイン、英国に対するフランス・ドイツなど、「挑戦国」が覇権国に取って代わった例はない

覇権国に対抗して軍事拡大を急ぐあまり経済への対応がないがしろになったという多くの国の失敗事例が今の中国に当てはまる

そのため、GDPで一時的に首位に立っても覇権国になることは無理である

次の覇権国はインドが有力である

インドが最有力とする理由は、インドのコンドラチェフ・サイクルは2032年に底入れし、59年まで上昇が続くため
インドは中国と異なり人口増加が続くだけでなく、年齢構成も相対的に若い点
カースト制度の名残や性差別、不十分な衛生環境などの文化的未成熟な面が改善されれば期待ができる

インド

米中のGDPは日本へどのように影響するのか

世界3位の日本経済は昨年4~6月期、パンデミックが国内消費や輸出に打撃を与え、戦後最悪の落ち込みを記録しました。

NEEDSは、日本経済は21年度の実質成長率が0.8%と、緩やかな拡大が続くと予測しています。

日本経済推移

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2021-03-12/QPVEXEDWLU6G01

新型コロナウイルスの拡大は,世界各地で経済活動に急ブレーキをかけ、物流を滞らせました。2020年の世界貿易の状況は非常に厳しい状況に陥り、各国の貿易は大幅な後退を余儀なくされ、日本も同様に2020年1~6月期の輸出は前年同期比14.0%減と落ち込みました。
自動車関連品目は急減

特に打撃を受けたのが輸送機器で、上半期の輸出額をみると、4月以降は世界各地で工場の稼働停止が相次ぎ、自動車は前年同期比29.9%減となりました。

自動車

半導体等電子部品類は増加が続く

一方、前年同期比プラスとなったのが、集積回路などの半導体等電子部品類で、前年同月比5.3%増となりました。

もともと世界の半導体需要が上向きのトレンドにあり、2019年8月から、コロナウィルスの影響を受けつつ2020年8月まで拡大が続きました。

感染拡大によってサプライチェーンの分断などマイナスの影響があった一方で、テレワークの急速な広がりやオンラインのニーズが高まり、半導体に対する底堅い需要が増加を後押ししました。

中国が2021年のGDP成長率の目標を「6.0%以上」と設定したことは、日本経済に追い風になると期待できます。

新型コロナウイルスの感染拡大をいち早く収束させ、経済活動を再開させた中国に対して、輸出のさらなる増加が見込まれているからです。

それでは対アメリカの輸出はどうでしょう。2020年5月における日本の対米貿易収支の黒字額は103億円でしたが、これは、1979年1月以降の最低となりました。自動車を中心に米国向け輸出が前年同月比50.6%も減少となって、対米収支が赤字になったのは非常に珍しいことです。

対米貿易収支

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2020-06-17/QC1PEXT0G1KW01

しかし、農林中金総合研究所の南主席研究員は対アメリカの貿易赤字は「単にコロナの影響を反映したものだ」と指摘しており、コロナウイルスが収束すれば同時に回復するだろうと見ています。

最後に

2020年のパンデミックからいち早く脱出した中国ですが、2030年に中国がアメリカを追い抜くという当初の予定を前倒しするのでしょうか。中国がアメリカから首位奪還せず、首位になるのはインドであるという意見も非常に興味深いですね。今後中国を除く首位の有力候補であるアメリカとインドが、このパンデミックの危機からいかに脱出するかも大きなポイントになるでしょう。

<参考>

https://www.bbc.com/japanese/56066376

https://www.sankei.com/politics/news/210305/plt2103050018-n1.html

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210307/k10012902021000.html

https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2021/02/post-95677_1.php

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM185AU0Y1A110C2000000/?unlock=1

https://www.jetro.go.jp/biz/areareports/special/2020/1001/4fcbeeffe1e7a4b2.html

米中GDP、33年に逆転 昨年時点より試算後ずれ

米中GDP、33年に逆転 昨年時点より試算後ずれ
日経センター予測
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB151710V11C21A2000000/

『日本経済研究センターは15日、中国の名目国内総生産(GDP)が2033年に米国を上回るとの試算をまとめた。逆転時期は早ければ28年とした昨年12月の試算より遅れる。さらに50年には米国が再び中国を上回る見通しだ。中国政府による民間企業の規制強化で生産性の伸びが鈍るほか、長期的には人口減少による労働力不足が成長の足かせになるとした。

【関連記事】1人あたりGDP、27年に日韓逆転 日経センター予測

アジア・太平洋地域の18カ国・地域を対象に、35年までの経済成長見通しをまとめた。このうち米中両国は、60年までの長期予測も示した。

20年12月時点の試算では、米中のGDP逆転は新型コロナウイルスの感染拡大が深刻になるケースで28年、標準ケースで29年としていた。逆転時期が4~5年遅れる一因は、中国政府による民間統制の強化だ。企業の技術革新を抑え、労働生産性の伸びを鈍らせかねないためだ。

中国の習近平(シー・ジンピン)指導部は、国内不動産の過剰投資を是正するため金融規制を強めている。中期的にみても投資を抑制し、成長率の低下につながる。バイデン米政権による大規模な財政支出で21年の米国経済が急回復したことも、逆転時期が遅くなる要因となった。

中国の経済規模は38年、米国を5%近く上回るまで拡大する。40年代には米中GDPの差は縮小に転じ、50年には米国のGDPが再び中国を上回る。日経センターが19年に公表した長期予測では、再逆転の時期を実質ベースで53年と試算していた。

日経センターは再逆転の背景について「中国経済が人口減と生産性の伸びの鈍化で、成長率が急減速する」と指摘する。中国の15~64歳の生産年齢人口は13年にピークに達したが、総人口も近く減少に転じる公算が大きい。21年の出生数は1949年の建国以来、最少になるとの見方もある。

少子高齢化への危機感を強める中国政府は、1組の夫婦に対して3人目の出産を認めた。家庭の教育費を削減するため、学習塾業界への規制を強めた。ただ都市部の不動産価格は高止まりしており、生活コストを膨らませている。長年の産児制限で「子は1人」という家庭観も根付いており、市民の出産意欲が高まるかは見通せない。

人口減少は働き手の減少を通じて、成長を下押しするだけではない。急速な高齢化に対応するための社会保障制度の整備も急務だ。年金などを支える硬直的な財政支出が増えれば、政府によるハイテク産業の支援などにも影響が出る可能性はある。

(北京=川手伊織、デジタル政策エディター 八十島綾平)』

中国、「2028年までにアメリカ追い抜き」世界最大の経済大国に=英シンクタンク
(2020年12月27日)
https://www.bbc.com/japanese/55457085

バイデン政権は米中貿易戦争を継続しない?コロナをきっかけに中国が米国を逆転すると考えられる理由
(2021年1月9日)
https://weekly-economist.mainichi.jp/articles/20210105/se1/00m/020/049000c

冗談を言えない米中関係 金融にも広がる分断

冗談を言えない米中関係 金融にも広がる分断
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA081PN0Y1A201C2000000/

 ※ けっこう重要なことが、書かれている…。

 ※ 『08年秋のリーマン危機の際には、中国の金融担当副首相だった王氏が米財務長官のポールソン氏に手を差し伸べた。

米政府が危機対応で増発した国債の多くを、中国が引き受けたのだ。「彼らとの強い絆が、米国の信用を保つうえで非常に役立った」。ポールソン氏は回顧録で、王氏と何度も連絡を取り合ったと認める。』…。

 ※ リーマンの時に、中国が「巨額の財政支出」をして、「世界を救った」話しは、投稿に作った…。

リーマン・ショックの時、中国は世界を救った?
https://http476386114.com/2018/09/05/%e3%83%aa%e3%83%bc%e3%83%9e%e3%83%b3%e3%83%bb%e3%82%b7%e3%83%a7%e3%83%83%e3%82%af%e3%81%ae%e6%99%82%e3%80%81%e4%b8%ad%e5%9b%bd%e3%81%af%e4%b8%96%e7%95%8c%e3%82%92%e6%95%91%e3%81%a3%e3%81%9f%ef%bc%9f/ 

 ※ しかし、増発した米国債の多くを、中国が引き受けた話しは知らんかった…。

 ※ 金融の話しは、あまり「表面上は」見えない…。

 ※ そういう風に、世界は「水面下で」つながっている…。

『バイデン米政権が2022年2月の北京冬季五輪に外交使節団を派遣しない「外交ボイコット」を決めた。米中の亀裂はどこまで深まるのか。経済でも気になる動きがある。

冗談ではすまなかった。

「私たちのほうが(中国共産党より)長く存続するほうに賭けたい」。11月下旬、米金融大手JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)が「冗談」と断ったうえで発した言葉は、たちまち中国のSNS (交流サイト)上で批判にさらされた。

中国共産党の一党支配はいつか終わる。そう取られてもおかしくない発言を、習近平(シー・ジンピン)指導部は放っておかなかった。ダイモン氏はすぐに「後悔している」と事実上の謝罪をした。

JPモルガンは中国と最も親しい関係を築いてきた米金融機関の一つとして知られる。今年8月には、中国当局から外資系として初めて証券事業の完全子会社化を認められた。

そのJPモルガンを率いるダイモン氏の「失言」である。少し前であれば、これほどの騒ぎにはならなかったかもしれない。

トランプ、バイデン両政権で米中対立が深まるなかでも、中国と米金融界の蜜月は続いてきた。国内の資本市場を整備したい中国と、巨大市場でビジネスを広げたい米金融界の利害が一致したからだ。

そんな関係が転機を迎えつつある。

習氏は夏以降、「共同富裕(ともに豊かになる)」をさかんに唱える。格差の解消を掲げ、国内市場で巨万の富を築いてきたIT(情報技術)や不動産関連の企業に矛先を向ける。中国の富裕層と結びついて事業を拡大してきた外資系の金融機関も、安泰でいられなくなった。

これまで中国側で米金融界とのパイプを一手に握ってきたのは、王岐山(ワン・チーシャン)国家副主席だ。米ブッシュ政権(第43代)で財務長官を務めたヘンリー・ポールソン氏と組み、米中の金融界をつないできた。

2人が親密になったのは、王氏が1990年代末に広東省の副省長を務めていたときだ。経営危機に陥った同省傘下のノンバンク、広東国際信託投資公司(GITIC)の破綻処理で王氏に助言したのが、当時はゴールドマン・サックスにいたポールソン氏だった。

08年秋のリーマン危機の際には、中国の金融担当副首相だった王氏が米財務長官のポールソン氏に手を差し伸べた。

米政府が危機対応で増発した国債の多くを、中国が引き受けたのだ。「彼らとの強い絆が、米国の信用を保つうえで非常に役立った」。ポールソン氏は回顧録で、王氏と何度も連絡を取り合ったと認める。

リーマン危機から13年がたち、王氏に以前の影響力はない。くしくも今月3日、王氏がかつて副省長を務めた広東省政府は、経営難に陥った不動産大手の中国恒大集団に経営指導のための監督チームを派遣すると発表した。

世界が注目する恒大の経営問題に、中国政府が全面的にかかわる。そこには危機が起きるたびに動いた王氏とポールソン氏のような、水面下で手を握る米中のキーパーソンは見当たらない。

バイデン米政権の外交ボイコットで、米中を結んできた金融の地下水脈は一段と細る。危機への対応力は弱まっていないか。改めて点検する必要がある。
経済部長(経済・社会保障グループ長) 高橋哲史
大蔵省(現・財務省)を振り出しに霞が関の経済官庁や首相官邸、自民党、日銀などを取材。中国に返還される前の香港での2年間を含め、計10年以上に及ぶ中華圏での駐在経験をもつ。2017年4月からは中国総局長として北京を拠点に中国の変化を報じ、21年4月に帰国した。

日本経済新聞 経済・社会保障Twitter https://twitter.com/nikkei_keizai
吉野直也政治部長と高橋哲史経済部長が2022年夏の参院選など日本の政治と経済を大胆に予測するライブ配信イベントを22年1月12日午後6時から開きます。お申し込みはこちらです。
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多様な観点からニュースを考える

※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。

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上野泰也
みずほ証券 チーフマーケットエコノミスト
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別の視点

急速な経済発展を遂げた中国は、金融危機当時と比べると、相当自信をつけたように見える。

ハイテク分野で米国から制裁措置を受けても、自国の技術力向上でしのごうとしている。
実際、極超音速兵器の開発では中国が先行しているようであり、米国の軍人を震撼させている。

金融面では、ドル経済圏にこれ以上深入りするつもりはなく、援助外交などを行いながら人民元の国際化を進めていくのだろう。デジタル人民元創設にも動いている。そうした米中関係の変容に鑑みると、米中の要人が水面下で協力してグローバルな危機を防ぐというような話は、これからの時代は起こりにくいのではないか。

2021年12月9日 13:45

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柯 隆
東京財団政策研究所 主席研究員
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分析・考察

中国人の本性はジョークが好き。中国には日本の漫才と落語と同じ「相声」があり、とても人気がある。問題は政治などを風刺できないため、乾燥無味の作品が多い。政治を風刺することは社会不安を扇動する罪に問われる状況が続くかぎり、ユーモアが出て来ない

2021年12月9日 12:11 』

米、習氏側近と対話ルート 台湾巡りなお溝深く

米、習氏側近と対話ルート 台湾巡りなお溝深く
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN2534U0V21C21A1000000/

『【ワシントン=中村亮、北京=羽田野主】米中が国防トップの対話を調整するのは、最低限の軍事対話ルートを確保して緊張緩和につなげる狙いがある。中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席は3期目入りが確実視されている。習氏への一段の権限集中を見据え、オースティン米国防長官は習氏に近い共産党中枢との関係構築を目指す。

中国国防省の報道官は25日、記者会見し「中国側は両軍関係の発展を重視し、米国側と交流協力を維持することを望んでいる」と発言し、対話に応じる姿勢をみせた。

米政府高官は15日(米東部時間)に開いた米中首脳のオンライン協議の目的について、双方が互いに意図を読み違えて軍事衝突に発展するのを防ぐ共通認識をつくると説明した。年内実施を目指す国防トップの対話は衝突回避に向けた具体策となる。

オースティン氏は共産党中央軍事委員会の許其亮副主席との対話を目指す。米国防総省のカービー報道官は8月の記者会見で国防長官の対話相手をめぐり「中国との重要な問題での議論という目的においては副主席レベル(が適切)であると明確に言ってきた」と述べた。

許氏は中央軍事委員会で主席の習氏に続くナンバー2を務める側近。中国人民解放軍の実情に詳しい関係者は「軍の日常の実務は事実上許氏が取り仕切っている」と話す。

国防長官はこれまで中国国務院(政府)に属する国防相と頻繁に対話してきたが、中国は党が意思決定の主導権を握る。習氏は11月に開いた共産党の重要会議、第19期中央委員会第6回全体会議(6中全会)で異例の3期目に向けた足場を固めた。

米政権は習氏への権限集中がさらに進むとみており、習氏の側近との関係づくりを急いでいる。今後は人工知能(AI)やアルゴリズムを駆使した戦闘が起きる可能性が高く、軍事作戦の実行スピードが上がる。偶発的衝突をきっかけとした戦闘激化を防ぐ時間的猶予は狭まり、国防トップの迅速な意思疎通が重要になる。

バイデン政権は国防トップの対話を皮切りに実務レベルの対話も活性化させたい考えだ。国防総省によると、米中の国防当局の実務者協議などは2020年に4回にとどまった。新型コロナウイルスの感染拡大の影響もあり、前年の18回から大きく減った。

21年9月末には、米国のマイケル・チェイス国防副次官補(中国担当)と中国共産党中央軍事委員会の黄雪平・国際軍事協力弁公室副主任が米中国防政策調整協議をオンライン形式で開いた。両氏は8月にも協議していたが、軍事当局の対話はなお低水準との見方が多い。

米中間で不測の事態に至るリスクは高まっている。米国防総省が11月上旬に公表した中国の軍事力に関する年次報告書によると、中国は20年後半に米国が中国との紛争を近く起こすと認識していた。

この時は米軍制服組トップのミリー統合参謀本部議長が公式ルートを通じて中国高官と接触し、中国側の懸念を払拭した。

米国防総省高官は今年11月、記者団に対し「現状の2国間関係を踏まえると誤解が起きる可能性を示すものだった」と20年当時の状況について説明した。「国防当局による効果的かつタイムリーな対話の重要性を明らかにした」とも語った。

中国も米国との偶発的衝突を望んでいない。22年2月には北京冬季五輪が控える。軍トップの対話で衝突リスクを回避し対米関係の安定を目指す。中国の軍事関係者は「中米間で安全保障分野を巡る対話のメカニズムを構築する」と話す。

それでも、米中の緊張緩和が進むかどうかは不透明だ。習氏はバイデン氏に対して「台湾独立の分裂勢力が挑発的に迫り(越えてはならない)レッドラインを突破すれば断固とした措置を取らざるを得ない」と伝えた。

米国では中台統一に向けて武力行使を排除しない立場を示したと受け止められている。中国国防省報道官は25日の記者会見で、台湾をめぐり「中国にはいかなる妥協の余地もなく、米国はいかなる幻想も抱いてはならない」と付け加えることを忘れなかった。

米海軍第7艦隊も22日、ミサイル駆逐艦ミリアスが現地時間23日に台湾海峡を通過したと明らかにした。首脳協議後も台湾をめぐり譲らないバイデン政権の姿勢を示した。中国が実効支配を進める南シナ海でも米中の緊張が続いている。』

中国がドル建て国債を起債

中国がドル建て国債を起債-5年連続、40億ドル規模
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2021-10-19/R179W9T0AFB401?srnd=cojp-v2
『⇒3年、5年、10年、30年の4本立て-昨年は60億ドル発行
⇒不動産開発企業の財務懸念強まる-クレジット市場に緊張の兆し

中国は香港でドル建て国債を起債した。不動産開発企業の財務を巡る懸念が強まり、クレジット市場には緊張を示す兆候が見られる中での発行となる。ドル建て債の発行は5年連続。

  財政省は先月30日に40億ドル(約4580億円)相当のドル建て債を4本立てで発行する計画を明らかにしていた。昨年の発行額は60億ドルだった。公に話す権限がないとして匿名を条件に関係者が19日に語ったイニシャルならびにファイナル・プライス・ガイダンスは以下の通り。

 IPT         FPG

3年 T+35bpエリア T+6bp(#)
5年 T+45bpエリア T+12bp(#)
10年 T+55bpエリア T+23bp(#)
30年 T+85bpエリア T+53bp(#)

  中国は2017年に04年以来となるドル建て債を発行。それ以降は毎年ドル建て債を発行しており、需要も旺盛だ。米機関投資家は今年も購入できるようになっている。財政省は昨年、いわゆる「144A」債を初めて発行し、購入者層の裾野を広げていた。

  財政省にファクスで今回のドル建て債起債に関してコメントを求めたが、返信はなかった。

原題:
China Sells $4 Billion Dollar Bond as Evergrande Woes Fester(抜粋)』

米中首脳、水面下で進む緊張緩和

米中首脳、水面下で進む緊張緩和-台湾巡り対立でも意思疎通は保つ
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2021-10-29/R1PNR2DWRGG001?srnd=cojp-v2

バイデン米大統領は中国から攻撃されれば台湾を守ると言明し、中国側は「状況を一変させる巨大なリスク」を警告。中国軍機が台湾周辺を毎日のように飛行し、国営メディアは米国による行動が「戦争を誘発」する恐れがあると警鐘を鳴らす。

  こうしたヘッドラインだけを見ると、米中が衝突へとひたすら向かっているように思える。習近平国家主席が台湾統一に向け、今後数年以内の侵攻を準備していると指摘するアナリストも増えている。

バイデン大統領、台湾が中国から攻撃されれば米国は防衛に向かう

  だが、水面下ではトランプ前政権による2018年3月の鉄鋼追加関税で口火が切られた外交面の悪循環から、米中が抜け出し始めている兆しが増えている。

トランプ関税に中国が反撃、相互関税計画発表-貿易戦争「開戦」

  バイデン大統領と習主席は年内にオンライン会談を行う計画で、今月26日には劉鶴副首相とイエレン米財務長官が協議し、中国側は「実務的で率直、建設的」だったと評価した。両国は難題の解決に向けて作業グループも設置した。

中国の劉鶴副首相とイエレン氏が電話会談-経済や協力で意見交換

  こうした相反するシグナルは、自国経済を守るために一定の協力を必要としながらも、弱腰と映るわけにもいかないという米中首脳が直面する政治的な現実を反映している。そこで、台湾が再び両国の代理の最前線として前面に出るようになった。

  オーストラリア国立大学で講師を務める宋文笛氏は、民主的に選ばれた台湾政府を支持することで、バイデン政権は中国が影響力を強める地域で米国の信認を維持することが可能となる一方、中国側が他の問題で歩み寄ろうとする動機も強まる可能性があると分析する。

  「米中間に十分な意思疎通があり、双方が大惨事を招くことなく競争を目指せるとの安心感を抱くことができる限り、表向きに交わされる激しいレトリックに関係なく、両国の協力は今後も可能であり、望ましくもある」と宋氏は話す。

  オバマ政権時代に国家安全保障会議(NSC)中国・台湾・モンゴル担当部長を務めたライアン・ハス氏は、台湾を巡る応酬が今後も米中の緊張を高めたとしても、「意図的な」衝突のリスクは2024年まで低い状況が続くと指摘する。

  ハス氏は「衝突リスクを排除できず、米台は中国の著しい軍事増強に対する抑止力を維持する取り組みを強化する必要はあるが、短期的なリスクは米国の論調が示唆するよりもはるかに低いとみられる」と述べた。

原題:Biden-Xi Thaw Quietly Takes Hold as Taiwan Tensions Flare (1)(抜粋)』

中国の共同富裕に揺れる米金融

中国の共同富裕に揺れる米金融 ライオネル・バーバー氏
英フィナンシャル・タイムズ前編集長
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCD273FS0X21C21A0000000/

『米トップクラスの金融機関を率いる人々にとって、最高ともいえる時期が訪れている。世界的なM&A(合併・買収)の急増で投資銀行業務などが伸び、7~9月期は軒並み大幅増益となった。業界を取り巻く環境は順風で、(地域別では)中国で追い風を受けているようにみえる。

米金融大手ゴールドマン・サックスはこのほど、中国で投資銀行業務を手がける現地合弁の完全子会社化を巡り、中国当局の承認を受けたと発表した。米系では、JPモルガン・チェースに続き2例目となる。

米中は香港や台湾、あるいは貿易を巡って真っ向から対立している。中国が8月に極超音速兵器の実験をしたと報じられるなど、軍事技術でも競い合う。米中の金融部門の利害一致は、両国が特に地政学的に反目し合うのとは対照的だ。

(2001年の)中国の世界貿易機関(WTO)加盟に向けた交渉が大きく前進した1999年以降、中国市場への進出という経済的な好機が、政治的なリスクより大きいという考え方が広がっていた。欧米企業は、中国政府による外資の過半数出資や全額出資への規制、技術移転の強要などにもしぶしぶ従ってきた。中国は巨大な存在で、アジアは成長の源だった。
米政財界の有力者は、西側の資本主義国との関係構築により中国の姿勢がゆっくりと変化し、民主化にもつながるだろうとの見方を示していた。いまとなっては、期待が大きすぎたことが証明された。中国は世界経済を都合良く利用する一方、自国に欠かせない権益は守ってきた。

習近平(シー・ジンピン)国家主席の下、大事にされたのは(習氏がトップの)中国共産党の権威だ。習氏が着手した汚職取り締まりは、企業への締め付けに取って代わられている。アリババ集団の創業者である馬雲(ジャック・マー)氏ら、シリコンバレーとの競争の切り札とみられたハイテク企業幹部の言動まで問題視されたとされる。

習氏が裕福なエリート層を引きずり下ろしたことで、中国の富裕層と密接な多くの米機関投資家に戦慄が走った。ニューヨーク拠点のファンドマネジャーは「いまは中国のリスクを織り込み、(資産などの)価値低下を前提に取引している」と語る。

いままでのところ中国政府の中枢がひるむ様子はない。習氏の「共同富裕(ともに豊かになる)」を目指す新たな取り組みは、2022年秋の共産党大会で3期目続投を勝ち取るための掛け声にとどまらない。ハイテクや不動産の企業が罰を受けて当然だと位置づける意味もありそうだ。

米金融業界に残された選択肢はどれも甘くないだろう。米マイクロソフト傘下でビジネス向けSNS(交流サイト)を運営する米リンクトインのように中国から撤退すれば、自らの首を絞める。米IT(情報技術)各社に比べ、金融業界は中国で大きな権益を手にしているようにみえる。

シンガポールなどに資産や人材を移し、投資リスクを減らすのを推奨する意見もある。だが、米金融大手などは、中国に対し悪い印象を与える行為であると強く認識している。

投資家の信頼感や経済成長をリスクにさらすような改革を、習氏がどこまで断行するつもりかというのが重要な問いになってくる。中国が経済的な意味で超大国になりきれるかどうかは、人民元の国際化や中間層の成長などにかかっている。いずれの点でも、米国の資本とノウハウは欠かせない。

15~16年に中国の金融市場が不安定化した際、(人民元の国際化につながる一方で投機マネーの流入に拍車がかかりかねない)資本取引の開放が進みすぎていたと当局は認識しただろう。中国政府は、同じ過ちを繰り返すつもりはない。米カリフォルニア大学バークレー校のバリー・アイケングリーン教授らも、人民元の国際化の歩みは、緩やかに進んでいくと予測する。

米金融業界は全般的に、(リスク懸念はくすぶるものの)中国が超大国への変貌を遂げるという賭けに一段と入れ込もうとしているようにもみえる。大胆な賭けは当面、かなりの度胸を必要とするはずだ。』

ウォール街、米中金融円卓会議の年内再開を準備

ウォール街、米中金融円卓会議の年内再開を準備=ブルームバーグ
https://www.reuters.com/article/idJPL4N2PW1FQ?edition-redirect=ca

(August 25, 2021 3:41 PMUpdated a month ago)

『[25日 ロイター] – ブルームバーグは(8月)25日、ウォール街の重鎮と中国政府の高官が米中の共通した立場を探る「米中金融円卓会議」の年内再開に向けて準備を進めていると報じた。

ウォール街は中国へのアクセス拡大を望んでいるという。複数の関係筋の情報として報じた。

ゴールドマン・サックス・グループに長年勤務し、バリック・ゴールドの会長を務めるジョン・ソーントン氏が現在、北京で中国政府高官と協議しているという。

ブルームバーグによると、ソーントン氏は米中金融円卓会議の議長の一人。同会議は2018年に米中関係の緊張がエスカレートした際に構想が持ち上がった。

これまでの会議にはブラックロック、バンガード、JPモルガン、フィデリティなどが参加している。』

意思疎通の維持目的 米中電話首脳会談

意思疎通の維持目的 米中電話首脳会談―米報道官
https://www.jiji.com/jc/article?k=2021091100225&g=int

『【ワシントン時事】サキ米大統領報道官は10日の記者会見で、米東部時間9日に行われたバイデン大統領と中国の習近平国家主席の電話会談について、「(首脳レベルでの)意思疎通の手段を維持しておくためのものだ」と指摘した。会談は「非常に打ち解けた」雰囲気だったと強調した。

 サキ氏は、新型コロナウイルスも会談の議題になったと説明。ただ、新型コロナの起源をめぐる調査に関しては「(バイデン)政権の一番の関心事だ」と述べるにとどめ、バイデン氏が習氏に調査への協力を直接要求したかどうかは明言を避けた。気候変動や人権問題をめぐっても議論したことを明らかにした。

 一方、10月末の20カ国・地域(G20)首脳会議に合わせた対面での米中首脳会談の可能性については「将来の会談に関し、事前に説明することはない」と述べ、確認しなかった。』

アフガンで地位固めたい中国

アフガンで地位固めたい中国 J・スタブリディス氏
元NATO欧州連合軍最高司令官
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCD3156M0R30C21A8000000/

『英国とロシアは19世紀、アフガニスタンを巡り、「グレート・ゲーム」として知られる覇権争いを繰り広げた。地政学的な競争は、アフガンの戦略的な位置付けと、同国が現在のインドやパキスタンに影響を及ぼす可能性を意識していた。英国も旧ソ連もやがて、「帝国の墓場」と呼ばれるアフガンからの撤収を余儀なくされた。

現在、米国が訓練したアフガン政府軍のあっけない崩壊やイスラム主義組織タリバンの勝利、米側の撤収を受けアフガンは2001年に戻ったかのようだ。当時は、(女性の就労などの基本的人権を侵害するような)厳格なイスラム主義者が統治していた。何かが変わり、新たなグレート・ゲームが始まるのだろうか。

James Stavridis 元米海軍大将。2009~13年北大西洋条約機構(NATO)欧州連合軍最高司令官。カーライル・グループ所属。

新しいタリバンが自国民により優しくなることはないだろうが、自国を国際的なテロ活動の基地とすることを認めれば、約20年に及んだ荒野での生活が待つことを学んだと思われる。ジハード(聖戦)を世界に広めるより、アフガンの支配に集中する公算が大きい。

だが支配は容易ではない。北部には軍閥が残り、長期にわたりタリバンに恭順の意を示すことはないだろう。タジク人やハザラ人といった主要民族は、タリバンを(多数派の)パシュトゥン人の狂信者とみなして反発している。アフガンには外敵を追放した後、内部で抗争を繰り広げた歴史がある。

米国の撤収後、他国はアフガンでどのような役割を果たすのだろうか。地域の枠組みは、突然の出来事に衝撃を受けている。中国やパキスタン、インド、ロシア、イランはアフガンと利害関係があり、今後の展開を左右しそうだ。

中国が、タリバンの主要な国際パートナーになることを目指しているのは明らかだ。中国は、アフガンの基本的人権には関心がないだろう。半導体から電気自動車(EV)の電池までのサプライチェーン(供給網)確立のため、レアアース(希土類)などの資源について地位を固めたいようだ。

パキスタンはいままでも、タリバンを支援してきた。パキスタンを脅かす反政府勢力を抑制し、新たなアフガンにインドが足掛かりを築くのを防ぐためでもあった。インドとしてはアフガンとの関係を構築することで、パキスタンに圧力をかける狙いがある。中国と密接な関係にあるパキスタンは、連携して鉱物資源を開発し、インドがアフガンで役割を果たすのを阻止しようとするだろう。

ロシアは何よりも安定を望んでいるようにみえる。イスラム過激派のテロが北側に輸出される傾向に、歯止めをかけるためだ。イランはかつてタリバンと対立関係にあった。タリバンはイスラム教スンニ派で、イランはシーア派の国だ。ただ、イランはおおむね、米軍がアフガンの基地から追放されたことを歓迎している。

米国はアフガン撤収後も、衛星による監視活動や人的ネットワークなどによる情報収集を続けるとみられる。タリバンと国際テロ組織アルカイダなどの深いつながりを示す証拠がみつかれば、米国はグレート・ゲームに再び参加するかどうか、どのように参加するかを検討することになるだろう。北大西洋条約機構(NATO)などは、米国の周辺で活動することになりそうだ。

当面、アフガンの支配的な勢力を指導するのは近隣の国々、特に中国になるとみられる。グレート・ゲームは続くが、主な参加者は周辺国になると予想される。

関連英文はNikkei Asiaサイト(https://s.nikkei.com/38eGUQm)に

過剰な関与避けられるか

中国は順調に超大国への道を歩んでいるように見えるが、インペリアル・オーバーストレッチ(帝国的な過剰関与)と呼ばれる現象が落とし穴になりかねない。過去にも膨張を続ける大国が国外の事象に関わりすぎ、負担に耐えきれずに衰退してきた。中国も国内経済の成長鈍化を前に広域経済圏構想「一帯一路」を打ち出したが、もろ刃の剣だ。

外部に経済圏を拡大するほど外部の権益を守るコストも増大するからだ。中国はアフガンを一帯一路に組み込もうと多くの投資をしてきた。権益を守るためアフガンに軍隊まで派遣する事態は想定しにくいが、追加で多額の資金を求められる状況はあり得る。行き過ぎた関与を回避し、アフガンを勢力圏に取り込めるのか。中国にとってアフガンは一帯一路の試金石となる。(編集委員 村山宏)』

「9/11, 20 years later: did the tragedy give US-China relations a respite?」

Mark Magnier 記者による2021-9-2記事「9/11, 20 years later: did the tragedy give US-China relations a respite?」
https://st2019.site/?p=17401

『9-11のあと、米国は中共に国連決議を妨害されないようにするため、中共ににじりよった。

 中共は、ウイグル人の活動グループを「テロ組織」認定するように米国に迫り、米国はそれを呑んだ。EUと国連もその米国に倣ったのである。

 さらに当時のブッシュ政権は、当時の陳水扁中華民国総統による、台湾独立運動も抑制せんとした。北京の言うなりになって。』

米はアフガン新政権支援を

米はアフガン新政権支援を 中国外相、電話会談で
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB2945K0Z20C21A8000000/

『【北京=共同】中国の王毅国務委員兼外相は29日、ブリンケン米国務長官と電話会談し、米国が国際社会とともにアフガニスタン新政権の運営を支援するよう求めた。中国外務省が発表した。

王氏はアフガン情勢には根本的な変化が生じており、各国はイスラム主義組織タリバンと接触すべきだと主張した。

ブリンケン氏は、国連安全保障理事会が足並みをそろえ、タリバンに対し外国人の退避の安全を確保するよう働き掛けるべきだと表明した。 』

秦ギャングって誰?

秦ギャングって誰?中国の駐米新大使は大いに評判が高い
https://www.newsweek.com/who-qin-gang-china-new-ambassador-usa-formidable-reputation-washington-dc-1614248

『(※ 翻訳は、Google翻訳文)

ワシントンの中国大使館には、米中関係の低い地点で初めての大使が始まり、中国政府に対する精査が高まる中で初めての大使職が始まる新しい指導者がいたが、秦剛団の記録は、特に今日も依然として論争が続いている非常に敏感な地域で、彼の政府の政策を擁護しなければ何もないことを示唆している。

30年以上のキャリア外交官である秦は、1988年に中国外務省に加わり、後にヨーロッパ、宣伝、議定書大臣を務め、習近平国家主席の外国旅行を手配し、北京で外国の要人を受け取った。

彼の最も顕著な公的な役割は、2005年から2014年の間に外務省のスポークスマンとして2つのスティントでした。そこで彼はジャーナリストを見下ろし、中国政府の政策に対する批判に背中を押したことで評判を得た。

2010年、ロンドンの中国大使館で1年間のポストのために出国する前に、秦は記者会見で記者を「反撃」した方法を地元の新聞に語り、その後スポークスマンとしての役割を果たした後継者のトーンを設定しているように見えた。

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55歳の元外務大臣は水曜日、長年務めた中国大使クイ・ティアンカイが残した欠員を埋めるためにワシントンD.C.に到着した。彼は現在、1979年に二国間関係が正式化されて以来、米中関係が最悪の状態にあると言われてきた時期に、間違いなく中国の最も重要な外国のポストであるものを占めている。

「私は中米の扉を信じています。既に開かれている関係は閉じられません。「これは世界の傾向、時代の呼びかけ、そして人々の意志です」と、秦は大使館のウェブサイト上の読み上げによると、彼の到着時に中国とアメリカのジャーナリストの選択されたグループに話しました。

「中米関係は再び新たな重大な局面に達し、多くの困難や課題だけでなく、大きな機会と可能性にも直面しています」と、彼は付け加え、アップビートトーンを打ち、「橋を架ける」ことを約束しました。

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一方、中国に戻って、秦の任命は、中国政府が同様に断固とした外交的見通しでバイデン政権のより厳しい路線を満たす準備ができていることを示すものとして、メディアの一部のコーナーによって描かれている。

米国との緊張関係

ベテラン外交官であるにもかかわらず、秦の記録は米国問題に関する明白な専門知識を示唆していないかもしれない。技術や影響力をめぐる激しい競争の中で、そして人権のような基本的価値をめぐって衝突し続ける中で、彼が中国とワシントンとの緊張した関係を修復できるかどうかは不明である。

彼が確かに頼りにできるのは、中国政府の内外政策を第一線から包括的に防衛しながら、中国に対する敬意を要求することだろう。

「ウルフ・ウォリアー」という言葉は、厳しい、あるいは論争を呼ぶレトリックで対応することを恐れない役人を描いたが、秦がまだ外務省のスポークスマンだったとき、まだ出てこなかった。

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しかし今年初め、彼は政府がよりタカ派的な姿勢に変わるという防衛を申し出て、2月に中国の外交官は同国に対する「熱狂的な攻撃」に立ち向かい、拒絶しなければならなかったと報道陣に語った。中国を汚そうとした人々は、本当の「邪悪なオオカミ」だと彼は言った。

スポークスマンとしての彼のよりカラフルな発言のいくつかは、チベットと新疆での中国の政策に関する反論の間に来ました, 主に最近、ウェンディ・シャーマン国務副長官が日曜日と月曜日に天津を訪問した後、まだ脚光を浴びている2つの非常に有料の主題.

2009年11月、バラク・オバマ前大統領が亡命した精神的指導者ダライ・ラマに会う計画を立てたとの報道が明らかになった後、秦は中国のチベット併合をエイブラハム・リンカーンのアメリカにおける奴隷解放と比較した。

翌年7月、秦氏は記者団に対し、チベットと新疆に関する報告書を「幻想の代わりに事実」に基づいて始めると語った。

2014年3月、秦は中国の軍事費の増加と透明性の欠如に対する国際的な懸念を一蹴した。人民解放軍は永遠に「少年スカウト」のままではないだろう、と彼は言った。

水曜日、彼は彼の住居で14日間の自己検疫を観察するとツイートした秦は、1ヶ月のウィンドウの後に前の大使を置き換えました。一方、北京の米国大使館は9ヶ月以上大使がいない。

China Appoints New Ambassador to Washington
2021年7月28日、自国の新駐米大使に就任したと発表された中国外交官秦剛のファイル写真。
ゲッティイメージズ経由のCNS/AFP 』

駐米中国大使に秦剛氏

駐米中国大使に秦剛氏
https://www.jiji.com/jc/article?k=2021072900526&g=int

『【北京時事】在米中国大使館は28日(米国時間)、前外務次官で新任大使の秦剛氏(55)が同日着任したと発表した。秦氏は外務省報道官の経歴が長く、率直な発言で知られる。米国内で中国の立場を強く発信する役割を担うとみられる。

ツイッター、在米中国大使館のアカウント凍結 ウイグル迫害、投稿問題視

 秦氏は在英大使館公使などを歴任したが、米国駐在経験はない。儀典局長時代に習近平国家主席に随行し、信頼を得たとされる。

 秦氏は談話で「中米関係の健全で安定的な発展を推進する」と強調し、「貴重な意見や提案を歓迎する」とも述べた。ツイッターのアカウントも早速開設した。』

中国の駐米大使が離任へ

中国の駐米大使が離任へ 「中米関係、重要な岐路」
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM224O10S1A620C2000000/

『【北京=羽田野主】中国の崔天凱駐米大使(68)は21日、在米中国大使館のホームページで近く交代すると明らかにした。崔氏は2013年4月に着任し、8年以上にわたって大使を務めた。後任には秦剛外務次官が起用されるとの見方がでている。

崔氏はあいさつ文で「現在の中米関係は重要な岐路に立たされている。米国の対中政策は対話・協力と対抗・衝突の間の選択を迫られている」との考えを示した。在米の中国系住民は「さらに重大な責任と使命を負っている」と指摘し、両国の関係発展の「積極的な貢献者」となるよう呼び掛けた。

崔氏は20年3月に新型コロナウイルスは米軍に由来するとする説について「誰かがばらまいた狂った言論だ」と発言して話題を呼んだ。中国外務省の趙立堅副報道局長がツイッターで根拠も示さないまま「米軍が感染症を湖北省武漢市に持ち込んだのかもしれない」と主張し、駐米大使の崔氏が火消しに回った。他国を威圧的な言動で挑発する「戦狼外交」とは距離を置いた存在とみられていた。』

米大手銀が中国シフト 成長余地大きく関係緊密

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN260EJ0W1A120C2000000/

『【ニューヨーク=宮本岳則】米大手金融機関が中国への傾斜を強めている。中国企業による資金調達やM&A(合併・買収)が活発で、米銀が得意とする投資銀行業務の成長余地が大きい。半導体や電池など重要部材の調達では中国依存を見直す動きがあるが、米銀は中国事業の拡大を急ぐ。中国政府やバイデン米政権の出方次第では、事業拡大が狙い通り進まない可能性がある。

米ゴールドマン・サックスは中国本土で働くスタッフの拡充を…

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米ゴールドマン・サックスは中国本土で働くスタッフの拡充を急いでいる。2021年は70人を採用し、24年までに現行の400人から600人に増やす計画だ。職種は投資銀行業務に従事するバンカーや証券ブローカー、技術系の人員などが中心となる。

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ゴールドマンは20年公表の中期計画で中国事業を成長の柱に据えた。20年12月には証券業務を手掛ける現地合弁会社の完全子会社化を当局に申請した。実現すれば外資系として初めてとなる。中国企業による資金調達やM&A(合併・買収)が活発で、ゴールドマンが得意とする投資銀行業務の成長余地は大きいと判断した。

JPモルガン・チェースも今年の投資計画で中国事業の拡大を盛り込んだ。同社は21年の全社の投資額を前年に比べて24%増やす。テクノロジー強化に加え、中国での資産運用・富裕層向け事業や投資銀行業務の拡大にも資金を振り向ける。米モルガン・スタンレーは現地の合弁パートナーが株式の売り出しを公表しており、完全子会社化によって事業の強化に乗り出す可能性がある。

米銀にとって中国含むアジア事業の重要性は増している。金融情報会社リフィニティブが投資銀業務で顧客が金融機関に支払った手数料の総額を集計したところ、20年に初めてアジア・太平洋地域が欧州を抜き、米州に次ぐ第2位の市場となった。「アジアは世界でもっとも成長力の高い市場の一つだ」。JPモルガンのジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)は1月の決算説明会でこう強調していた。

特に中国市場の成長は著しい。中国企業が支払った手数料は前年比36%増の総額201億ドルとなり、2000年の集計開始以降の最高となった。アジア・太平洋地域の手数料総額の7割を中国が占める。ゴールドマンは20年代半ばに1000億ドルを超えると予想する。

中国では現地資本の金融機関が圧倒的な事業基盤を確立している。中国における投資銀業務手数料の獲得ランキングをみても、中国中信集団(CITIC)など現地資本の金融機関が上位に並ぶ。それでも米銀には中国の高い成長力が魅力的に映る。

米中関係も事業の行方を左右する。トランプ前政権下の米中摩擦で産業界に混乱が広がったが、ウォール街はむしろ恩恵を受けていた。米政権側が通商協議の場で金融市場の開放を要求し、中国側も譲歩の一つとして外資系金融機関の出資規制撤廃を提案。20年1月の第1段階合意に盛り込まれた。

一方、格差是正を掲げるバイデン政権はウォール街の事業拡大を後押しする機運に乏しい。大統領補佐官(国家安全保障担当)のジェイク・サリバン氏は20年12月の米メディアインタビューで「JPモルガンやゴールドマンのために中国と規制緩和交渉をしても、米国内の中間層の収入は増えない」などと発言し、トランプ前政権の交渉姿勢を批判した。

中国では出資規制が撤廃されたとしても、様々な「参入障壁」が存在する。たとえば当局の許認可には不透明な部分が残る。米銀が現地で中国勢のシェアを大きく奪うようなことは認めない可能性が高い。米政権による後押しがないまま、現地の金融機関との厳しい競争に挑むことになりそうだ。